深い森の奥にある、ウェルテクス屋敷…
ここは11年前の惨劇以降、誰一人として近寄るものはいなかった。
ここに至るまでの道のりや屋敷の周辺には茂みが鬱蒼と生い茂り、『人のいなくなった家は廃れる』と言う言葉通り…屋敷自体の老朽化も進んでいる。
そんなウェルテクス屋敷に、11年ぶりに足を踏み入れたのは……
「…あの日から11年、か」
その1時間後に、晴人達一行はウェルテクス屋敷に足を踏み入れていた。
途中の木の根に足を取られそうになったコヨミだが、前を歩いていた晴人がすかさず彼女の体を支える。
「おっと、大丈夫か。コヨミ」
「…ありがとう、晴人」
「どういたしまして。…しっかし…思った以上に深い森の中にあるんだな」
「そうね……ミカ、この辺りのことは覚えていないの?」
「ううん、全然。…私がまだ、物心つく前のことだし…」
コヨミに尋ねられ、ミカは首を横に振る。
…確かに、11年前ともなると…ミカはまだ5歳。
あまり覚えていなくても、無理はないだろう。
ミカによれば、兄の顔もよく覚えていないようで…養祖父のクラウスに写真がなかったか尋ねても、『写真が嫌いな子だったから、兄が写っている写真は1つもない』とのこと。
祖父・タルムードや父・バグバード、母・ステラの写真はクラウスのアルバムに挟まっていたお陰か、顔をいつでも思い出せるようだが…兄だけはどうしても、顔がなかなか思い出せないでいる。
「一緒に遊んでいたことは覚えているの。そういえば…昔、お兄ちゃんとかくれんぼをしていたような気がする」
「かくれんぼ?」
「うん。何だか珍しく外が騒がしくて、何なんだろうと思ったら、お兄ちゃんがかくれんぼしようって言って…私が隠れることになったんだけど、全然迎えに来てくれなくて…そしたら、クラウスおじいちゃんが」
ミカの話を聞いていた晴人や凛子、コヨミにイーヴリンは悟っていた。
――その“兄とかくれんぼをした日”こそ、11年前のウェルテクス一族暗殺事件のあった日なのだ…と。
恐らくミカの兄は、ただならぬ騒ぎに気付き…ミカだけでも生かそうと、彼女を安全な場所に隠したのだろう。
そして、彼女が見つからないように兄自身は…
そんな推測を晴人がしていると、後方で何かに躓いてこける音が2つも聞こえる。
…しかし、晴人は振り返らない。
ミカも、イーヴリンも、コヨミも、凛子もだ。
転んだ人間は分かる。だが、彼らに構っていては文字数がいくらあっても足りない(メタ発言)と…
「置いていかないで」とユー何とかが叫んだ気がするが、ミカと凛子は華麗に無視してウェルテクス屋敷の門を確かめていた。
「鍵は掛かっている、のかな?」
「さあ…?随分と古いみたいだから、無理やり開けられそうな気がしなくもないけど…」
「確かに。凛子ちゃんとイヴはそっち側頼む、俺達はこっちから引っ張る」
「「OK」」
晴人はすぐに指示を出し、イーヴリンと凛子は鉄製の柵の門の左側を、晴人・ミカ・コヨミは右側を持って力を入れて引っ張る。
引っ張ってもなかなか開かったが、「だったら今度は押して見る」とばかりに門を押し…そして、少し門が開く。
3cmの隙間が開いた頃にはユーテキと瞬平も合流し、全員の力で錆びた門を何とか押し開け、次に待っていたのは屋敷の扉だ。
11年前に閉じられた屋敷だ、恐らく鍵は掛かっていることだろう。
鍵穴のサイズを見ながら、晴人は両手を挙げる。
「……駄目だ。“スモール”じゃこの鍵穴は抜けられないな」
「無理やり壊しちゃえばいいんじゃないですか?」
「何言ってんの瞬平!ここ、一応私の家でもあるんだから!?」
「そうよ!瞬平君は自分の家のドアノブが壊されていたら、どう思うの!?」
「…最低…」
「そいつはちょっと考え物じゃないかな」
「え、何このフルボッコ…?orz」
「壊せばいいんじゃないか」という瞬平の軽い意見に対し、ミカや凛子、コヨミにイーヴリンから言葉のフルボッコ。
あまりのダメージに瞬平は倒れ、ユーテキは「危うく自分がああなるところだった」と安堵の溜息。
晴人はというと、どうしたもんだか…と考えながら扉に手を触れてみるが
――軽く手を扉に置いた瞬間、ギィィ…とゆっくり扉が開いていく。
「「「えっ?」」」
「は、晴人さん…どんな魔法使ったの?」
「いや、俺は全然…」
「元々鍵が開いてたってこと?なんか人騒がせなお屋敷だなぁ…」
ユーテキが小声でぼやいていると、そのマフラーを笑顔で掴む者がいた。
…ミカだ。
その笑顔は既に恐ろしい。“笑顔”と言う言葉の意味はなんだろうか、と疑問を抱くほどに。
ズルズルと引きずられるユーテキをよそに、イーヴリンと晴人は話をしていた。
「…怪しいね」
「ああ。普通なら、誰も立ち入らないように鍵をかけておくはずだ…それがこの世界で有名な研究者一家のお屋敷って言うなら、尚更だ」
「じゃあ…誰かが、何かの目的で…この屋敷の鍵を開けて入っているってこと?」
二人の言葉に大体察しがついたのか、コヨミが尋ねる。
イーヴリンも晴人も頷くが、その表情は暗い…
当然だろう。
このウェルテクス屋敷に訪れる人間が、自分達以外にいるとしたら…それはミカと同じように【ウェルテクス一族のことを調べたいもの】か、【帝国の手の者】だろう。
そして、この状況では…後者の可能性が高い。
「そうなるね。ただ、その『誰か』が私達の味方なのか敵なのかは…分からないけど」
「まあ、9割方敵さんって思っていたほうがいいかもな」
〜〜〜
敵がいるかもしれない状況ではあるが、ここまで来れば後には引けない。
それに、何かあっても晴人の魔法で窮地を切り抜ければいいだろう…彼には動きを拘束する“バインド”や、相手の視界を遮る“ライト”・“ディフェンド”、強烈な匂いを出す“スメル”がある。
屋敷の中に足を踏み入れ、暫く廊下を歩いていると…ミカはしきりに周囲を見回し、頭にでかいタンコブを作ったユーテキが尋ねていた。
「どうしたのさ、ミカ」
「この先。…確か、リビングがあったはず。大きなテーブルで、皆で食事を囲んで…」
「全部思い出せそう?」
「…全然。懐かしい感じはするんだけど、ここに来ただけで全部思い出すとまではない…かな」
ミカは不安げな顔を見ながら、屋敷を見る。
晴人達もその後をついてきながら、“鍵を開けた何者か”への警戒を怠らないよう心がける。
そうしていると、ミカは不意にリビングに続く扉を見つけ、その扉を開く。
そこには“ブッシュベイビー”という動物の人形が小さな机の上に飾られていたり、大きな絨毯は埃が溜まって歩くだけでも軽く舞い上がるほど。
コヨミは不思議そうにブッシュベイビーの人形を眺めており、ミカもそれのことは覚えていたのか話していた。
「これは?」
「確か…私が小さい時、落として割ちゃって…同じものをお父さんと一緒に買いに行ったことがある」
「他には、何か思い出せないの?他の家族のこととか…」
「お父さん達はよく、研究室で何かの研究をしていた…気がする。皆が研究室にいるときは、私はお兄ちゃんと遊んでいたけど…外は迷子になったら危ないからって、家の中でしか遊べなかった」
「――やはり、ここに来おったか」
突然声が聞こえてくる。
晴人は“コネクト”でウィザーソードガンを取り出す準備をし、イーヴリンやユーテキも戦闘の構えを取っていたが…
現れた人物を見て、ミカが「待って」と声を掛けた。
「…クラウスお爺ちゃん!?」
「クラウスさん…って、確か、ミカちゃんを育ててくれたっていう?」
「そう。でも、何でお爺ちゃんがここにいるの?」
クラウス、という名前に聞き覚えがあった凛子はミカに尋ねる。
そのミカも、まさかここにクラウスがいるとは思わなかったのか、驚きの声を上げていた。
確かに、ティエラの町でミカを待っているはずのクラウスがここにいるのは…少しばかり怪しい。
ユーテキや瞬平がそう思っていると、イーヴリンがクラウスと親しげに話し始めていた。
「クラウスさん。そうか、鍵を開けたのはあなただったのか」
「イヴ、知り合いなの?」
「知り合いも何も、私は情報屋だよ。リーリエリヒトの情報を買いたいって人間はいくらでもいるけれど…その中でもクラウスさんは、結構なお得意様なんだよ」
「…一族の生き残りであるお前を育てるためには、帝国の動向を常に知る必要があったからな。しかし…」
「「「しかし?」」」
「この11年間で帝国最大の騒動の原因がお前とは、――まさかこんな末恐ろしい娘に育つとは、一体何処で育て方を間違えたと言うのか……」
頭を抱えながら話すクラウスに、晴人達はこれまでのミカの行動を思い出していた。
帝国のミサの場で、堂々と皇帝に「家族を殺した」と言っただけでなく…
聖海騎士団相手に大暴れしたり…
深夜のウェルテクス社に乗り込み…
シラスとギリオンの話を盗み聞きし…
――クラウスが頭を抱えながら話すのも無理はない、と誰もが思っていた。
「「「…あぁ〜…」」」
「ちょっ、な、なんで皆して納得してるの?誰か一人ぐらいフォローしないの!?」
「いや、ミカ…それは無理だって自分でも分かってるよね…?」
「うっさいユーテキ後で殴るわよ!」
「まったく…。……しかし、手紙の封が開けられていたからもしや…とは思っていたが、……その様子だと…ウェルテクスのことを、知ったようじゃな」
ミカの暴走に溜息をつきつつも、クラウスは彼女に尋ねる。
…ミカがウェルテクス社に忍び込んだ日、クラウスは親の命日だと言うのに暗くなっても帰ってこないミカに不安を募らせていた。
そして届いた郵便物をしまっておく棚に不意に手を掛けると、そこには既に封の開けられた手紙が。
内容を確認し、クラウスは手紙の差出人と…ミカがどうして遅くなっても帰ってこないのか考えていた。
“あのミカのことだ、一度ウェルテクスについて触れてしまえば総てを知るまで家には帰ってこないだろう”
現にその考えは当たっていた。
いずれここに来ると踏んで、クラウスはウェルテクス屋敷に向かい…そして、ミカは現れた。
何人か見知らぬ顔を連れ歩いていたようだが、恐らく彼らもミカに振り回され、この帝国に不信感を持ち…協力してくれているのだろうと分かった。
今まで黙っていたことを謝罪しながらも、ミカに総ての真実を話そうと…クラウスは話を始めようとする。
「随分と話す人数が増えてしまったが、お前ももう16歳…何があっても受け止められるだろう」
「……うん。教えて、お爺ちゃん…11年前、一体何が…!」
…その時だった。
ドタドタと慌しい音が聞こえたかと思えば、晴人達のいる部屋に数人の男達が詰め掛けてきた。
その先頭には、水色の長髪を靡かせた…氷のように凍てついた顔をした男がいる。
彼らの姿を見たイーヴリンは剣を構え、クラウスも腰に携えていたダブルセイバーに手を掛ける。
「話はそこまでにしてもらおうか」
「あれは…特務機関G!まさか帝国の奴ら、私達の追っ手にあんなのを差し向けてくるなんて…」
「あやつは…」
「我々は猊下の勅命により、帝国ミサで不敬を働いたそこの娘を抹殺しに来た。しかし…成程、見れば見るほど母親に似ている」
そう言いながら、その男…グラントはミカを見て呟く。
その発言に、「母を知っているのか」と思ったミカは声に出そうとするが…
彼女の口が開くより早く、瞬平はイーヴリンに尋ねていた。
「確か、特務機関Gって…審問官が指揮を取る特殊部隊の人達、でしたっけ?」
「表向きはね。しかしその実態は、ミッドノクスや聖海騎士団が表立ってできないような…例えば、暗殺と言った裏の仕事を任されている」
「暗殺…?ひょっとして、――私の家族の…お父さんやお母さん、お爺ちゃん…お兄ちゃんが殺されたのは……」
「そうだ、11年前…我々特務機関Gは、皇帝猊下よりとある命を賜った」
――11年前。
特務機関Gは皇帝の勅命により、“ウェルテクス一族の暗殺”を行った。
一族はこの屋敷で研究をしている最中だったようで、我々は帝国の使者を装い、家の外にステラという女性とタルムードという老人を呼び出した。
二人は「帝国のためにウェルテクスの技術を使え」という最後の要求に応じることはなく、それを拒否した瞬間、私はステラという女性を刺し殺したのだ。
タルムードという老人が取り乱し、逃げようと背中を向けたところ…控えていた他の部下が銃で頭を撃ち殺し。
いつまで経っても戻ってこない二人を心配し、バグバードという男がのこのこと現れ…
目の前で起こっている惨状に動揺し、取り乱しているところへ袈裟斬りにし。
男もピクリと動かぬ屍となったところへ、銃を持った一人の部下が尋ねていた。
『そういえば、子供も殺せと言う命令でしたが…』
『そうか。屋敷の中や周辺を探し、それらしい子供を見つけ次第…その場で殺せ』
『『『はっ!』』』
子供は予想よりも早く見つかった。
子供が故か、それとも…今思えばそこの娘を生かすためにやった行為なのか、奴らの息子は森の中で見つけ…
逃げ足が速く一時は見失ったが、他の部下が屋敷から少し離れた場所で発見した。
――首から上を無くした状態で。
『…これはお前がやったのか?』
『いえ、見つけた頃には既に…魔物にでもやられたのでしょうか』
『頭だけ魔物に食い千切られた、か。なんともあっけないものだ…』
我々は4つの死体を持ち帰り、それらは総て『事故で殉職したウェルテクス一族とその子供』として国葬を執り行うことになった。
その際、頭のない息子の死体には苦労したが…
「事故の際に機材に頭を押し潰された」と言い繕うことで、それ以上の言及は避けられた。
〜〜〜
グラントの話を聞いたユーテキや凛子達は、顔を青くする。
…どうしてそんな酷いことが
ウェルテクスの技術を利用する。ただそれだけの理由で、ミカの家族は奪われた…
特にミカの兄は、一番無残な死に方で…
これを聞いて、一族の生き残りであるミカが落ち着いていられるわけがない。
「―――うああああああああああッ!」
グラントの話を聞いたミカは、怒りに任せ、ダブルセイバーを振るっていた。
しかし、それは容易く受け止められ…逆にミカの腕に剣が掠る。
流石にこれ以上は黙っていられないとばかりに、イーヴリンやユーテキも応戦を始める。
が、ミカの援護に行く前に他の特務機関Gに行く手を阻まれてしまう。
…裏の仕事をしている、という時点で予測はできていたが、強い。
流石にこれはまずいと思ったか、晴人もウィザードに変身し、特務機関Gをこの場から退けるべく戦おうとする。
「…晴人!」
「分かっている!とりあえず、相手の動きを止めるッ!!」
<シャバd…ウォーター、プリーズ スィ〜スィ〜スィ〜スィ〜♪>
<ルパッチm…バインド、プリーズ>
晴人は“この場は魔力の高いウォーターで切り抜ける”事を前提とし、ウォータースタイルに変身する。
右手の指に“バインド”のリングを嵌め、この場にいる特務機関G全員の動きを止めようとしていた…
――だが。
水の鎖が突然凍り始め、グラント達を止める前に砕かれてしまう。
一体誰が、とウィザードWSが周囲を見渡す…その近くで、瞬平や凛子が凍えていた。
「り、凛子さん…寒くないですか…?」
「た…確かに、ちょっと寒すぎるような気が…」
「……!晴人っ…あそこ!!」
コヨミが指を差した先にいたのは、――ブッシュベイビーの人形が置かれた机の上に座っている、一体のファントム。
そこから放つ冷気は尋常ではなく、どうやらあの冷気で水の鎖が凍りつき、砕かれたのだろう。
…セルシウス…
オリジンの送り出したファントムで、顔と左腕が所々砕けている。
その手にはブッシュベイビーの人形が抱えられており、セルシウスはそれを床に勢いよく叩きつける。
人形は激しい音を立てて壊れ、右手でウィザードWSを挑発。
『……』
「成程、どうやら帝国側にファントムがいる…って読みは間違いじゃないのかもな。わざわざ俺のために送りつけてくるなんて」
『…』
「喋れないのか…あいつ?まあいい、相手が氷なら…!」
<フレイム、プリーズ ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!>
ウィザードWSは相手が【冷気使い】と分かり、自分の有利な火属性に切り替える。
その際、“青”のウォータースタイルから“赤”のフレイムスタイルへと変わったウィザードを見たグラントは、目を見開いていた。
だが戦いから目を背けているわけではなく、ミカの攻撃を容易く受け流し続けている。
「青い姿から、赤い姿へ…?まさか、ラディスの予言にある【聖なるもの】と関係が…」
「……あなたが…あなたが、私の家族をッ…絶対に許せないッ!」
「…まったく、そんなに死に急ぎたければ…すぐにでも家族の下に送ってやろう」
「うああああああああっ!」
ミカは改心の一撃…“虎牙破斬”をグラントに叩き込む
……も、その攻撃は総て簡単に受け止められ、逆にグラントの剣の一振りで弾き飛ばされてしまう。
完全にやられる前にセイバーで防御したのだが、あまりの威力に真っ二つに折れてしまうほど…
ミカに止めを刺そうとゆっくりと歩くグラント、しかし、その前に現れたのは…特務機関Gの人間を相手に潜り抜けてきた、クラウスだ。
彼はセイバーを静かに構え、グラントに言い放つ。
「……グラント…お前は11年前のあの悲劇の日から、何人の人間の血で特務機関Gのトップの座についたのだろうな」
「さてな。斬り捨てた屍のことなど、覚えているはずもあるまい」
「そう言うと思ったわい。…ワシはタルムードの孫を、そして自分の孫…ミカを守る。そのためならば…」
「…おじ、いちゃ…」
一方でウィザードFSはウィザーソードガンによる最大の攻撃“シューティングストライク”を放つが、セルシウスが右手から放つ冷気の前に総て吹き消されてしまう。
どんな攻撃をしても、表情を変えず…声一つ上げない。
そんなセルシウスにウィザードFSは底知れぬ恐ろしさを感じていたが、ここで負けてはいられないと自らを奮い立たせる。
『…』
「こいつ…小柄なのに強いな、……だったら…!」
<フレイム、ドラゴン ボー、ボー、ボーボーボォォォー!>
<チョーイイネ! スペシャル、サイコー!!>
ウィザードフレイムスタイルは、ドラゴンの力を借り、ウィザードフレイムドラゴンとなる。
更に、“スペシャル”の指輪によって胸部にドラゴンの頭が出現し、先程とは比べ物にならない火力の炎が吐き出されていた。
――これなら倒せる!
瞬平や凛子、コヨミはそう確信していた…が。
セルシウスは前方に氷の盾を展開し、ウィザードFDの攻撃を完全に受け止めてしまう。
ドラゴンの力を借りても勝てない敵…それには他ならぬウィザードFD自身が、一番驚いている。
「なっ…!」
『…』
「くそッ、だったら今度はランドドラゴンで…!」
ウィザードFDが別のリングを使おうとしていた、その時だった。
セルシウスは無数の氷の矢を前方に展開したかと思えば、コヨミ達に向けてそれを放つ。
…暫く戦って分かったのだろう。
あの3人は戦えない、あの3人を狙えば無抵抗でやられるしかないと。
くそっと舌打ちながらも、ウィザードFDは放たれた氷の矢からコヨミ達を守るべく…自ら盾になる。
氷の矢が直撃したウィザードFDはそのまま変身を解除しながら倒れ、その際にウォータードラゴンのリングが勢いよく転がり落ちていく。
それに気付いた特務機関Gの一員・レナが拾い上げ、くすりと笑う。
「あーら、いいもの拾っちゃった」
「しまっ…!」
「まあ、そこで大人しくしていなさいな。どうせあなた達、ここで皆死ぬんだから」
「…ぐうっ!」
「うわああっ!?」
イーヴリンとユーテキも、特務機関Gのノーマンやイレナを相手に善戦するも…力及ばず、倒されてしまう。
もはや、戦える味方で立っているのは…クラウスのみ。
クラウスは老いても尚、鋭いセイバー捌きでグラントと接戦を繰り広げる。
そんな彼の背中を見ながら、ミカはクラウスとの思い出を…何故かこんな状況であるにもかかわらず、思い出していた。
…厳しくも優しい、クラウス
…自分にいつも「女の子らしくしなさい」と口煩かったクラウス
…いつも温かい料理を作ってくれたクラウス
…「魔物に襲われてもいいように」と、セイバーの扱いを教えてくれたクラウス
「おじいちゃん…」
失いたくない。
家族を失って、おじいちゃんまで失いたくない…
ミカは何とか体を起こし、立ち上がろうとする。
――しかし…そんな彼女の目の前に広がったのは、大事な祖父・クラウスの腹から真っ赤な血が飛び散る光景。
グラントの剣の一突きが、クラウスの腹部を深く刺したのだ。
「―――おじいちゃぁぁぁぁんッ!!」
だいじなたからものがありました
きらきらかがやく、だいじなたからもの
こばこにいれて、だいじにしまっておきました
『――、』
『おにいちゃん!ねぇ、おそと…』
『あのな、――、これから二人で…かくれんぼして遊ぼう。お兄ちゃんが鬼だ』
『うん!』
『お兄ちゃんに見つからないよう、隠れられるかな?いっつも――はすぐ見つかるから』
『――、ちゃんとうまくかくれるもん!!』
『分かった。それじゃあ…何があっても、声を出さないで上手く隠れるんだよ』
『わかったー!』
けれども、こばこがこわれたら
なかにあったたからものも、みんなこわれてしまいました
『おとうさん、おかあさん、おじーちゃん、おにいちゃん……みんな、どこ…?』
『おにいちゃん、――、ちゃんとうまくかくれたよ?』
『だから…はやくみつけにきてよぉ……』
かなしくてないていると、やさしいひとがやってきて、きれいないしをくれました
おんなのこはそれをこんどこそ、こんどこそだいじにしようとしていました
『ミッシェル、お前は今日から【ミカ】という名前だ』
『どーして?クラウスおじーちゃん』
『お前を守るためじゃよ。…ミカ、何か食べたいものはあるか?』
『うん!あのね、クリームシチュー!!』
ケレドモマタ、タカラモノハコワレテ
ヤサシイヒトモ、メノマエデコワレテ
「――ワシは11年前…あの事件の日、……この屋敷にやって来て…屋敷の前に散った血を見て、目を疑った」
「――生き残りはいないか探したところ、ブッシュベイビーの置物の下に…お前の兄が最後に残した手紙を見て、お前が隠れていること……そして、帝国の者がステラを…家族を手にかけたことを、知った」
「――恐らくあの子は、2階から…総て見ていた。その上で…お前を守ろうと、自分から犠牲になる覚悟で…」
「――すまない、ミカ。ワシが、もう少し早く到着していれば…もしかすれば家族みんな、生きて…平和に……暮らし………」
そう言い残し、クラウスの命の灯は…完全に消えた。
「―――あ、あぁぁ…うわああぁぁぁぁぁ……!!」
ミカが声にならない叫び声を上げ、激しく嗚咽を漏らす。
その瞬間、ミカの片耳にあったピアスにぴしりとヒビが入り、粉々に砕けてしまう。
凛子はそれに驚くが、ミカはそれに気付かない。
それどころか彼女の海のように澄んだ綺麗な瞳が、炎のように真っ赤な赤へと変化していく。
ミカの体を光が包み込み、光が晴れた瞬間
――ミカ“だったもの”は水の獣のような姿に変わり、誰もがその姿に驚いていた。
「み、ミカ…ちゃん…!?」
「凛子さん、危ないです…下がって!」
「何なの、この感じ…晴人の魔力とも、ファントムとも全然違う…!」
ミカ“だったもの”が放つ膨大な力に気圧され、コヨミはゆっくりとその場に座り込んでしまう。
魔力を敏感に感じ取れる彼女だからこそ、だろう。
晴人の中のドラゴンもそれを感じているのか、激しくざわめく。
それと同時に、晴人の持つウォーターリングとヘラルディナに奪われたウォータードラゴンリングがミカ“だったもの”に呼応しているかのように、淡く光っている。
「…リングが…光っている……?」
「これは…ますます、報告しがいがあるわねぇ……ッ!?」
そんなレナに、ミカ“だったもの”が水流を放つ。
彼女は壁に勢いよく叩きつけられ、ノーマンやイレナも応戦しようとするが…結果は彼女と同じ。
次にミカ“だったもの”が向かったのは、クラウスを殺したグラントの前に現れる。
グラントは剣を振るうが、ミカ“だったもの”が自らの水を使って具現化させた水の剣によって勢いよく折られ、更に至近距離から重い蹴りを食らう。
あまりにも圧倒的。
そう思わせるほど強大な力を持つミカ“だったもの”に少し畏怖しながら、凛子がふと窓の外を見ると…
―――この世界【ルキナ】を覆う水の膜、【アムニスフィールド】がミカの変化に呼応するかのように蒼く光り輝いていた。
***
ウィザブレ初登場&通算5話でかませにされたフレイムドラゴンェ…
名前だけだったランドドラゴンェ…
名前だけ&敵に奪われたウォータードラゴンェ…
あれ、これってもしかしてハリケーンドラゴン一人勝ち?←
ちなみに作者は
・ベースカラー
ハリケーン(緑)>ランド(黄色)>ウォーター(青)>フレイム(赤)
・スタイルごと
ウォーター>ランド>フレイム≧ハリケーン
・オーズ兄弟
ハリケーン>ランド≧ウォーター>フレイム
・上位互換スタイルごと
ウォドラ>ハリドラ>フレドラ>ランドラ
・オーズ兄弟上位互換Ver
ウォドラ>ランドラ=ハリドラ>フレドラ
……って感じで好きです。
かなりの確率でウォーターかハリケーンが上位にいるというw
うん、変人だけどハリちゃん好きです。ランドさん(26歳ただいま彼女募集中)も好きです。
ウォータードラゴンさんは色んな意味で好きです。
ウィザブレにはかなり関係ない話なんですけど、赤+青と緑+黄色はどうしてもコンビ組ませたくなるんです…!
だからオーズ兄弟におけるウィザード系の扱いも、そういう感じで分けちゃいました。
でも色ごとに家族を分けたら、まぁ全員愛着湧いちゃいましてw
特にランドさん。
ウィザブレ重いw
そしてお兄ちゃんマミっt(ry
いや、でもまあ、
……ウィザブレもウィザダンも、目指すところはDCDRW以上の惨劇ですから…(目指さんんでいい)
ウィザダンなんて、今のところジュプトルのハートにフルボッコ食らわせる展開が予定されたりしているんですよねw
ミカの姿が…変わった、だと…?
もはや敵のほうにはウィザード・ミカ・アムニスフィールド…と、フラグが超乱立してますねw
読者からしてみれば、この世界にやってきただけのウィザードはまったく関係ないと分かりますが…ねぇ…?
ところでウォータードラゴンは、オーズ兄弟世界のウォドラさんが最強すぎるからDCDRWよろしく奪われたんだろうか。そうだとしたらマジとばっちり。
次回は…
今回のラストの続きと、まあちょいちょいと。