――ウェルスの町に、帝国の破壊兵器が放たれた。
その光景はロートゥス塔の最上階から、はっきりと見えており…
あまりの威力に全員、言葉を失っていた。
晴人はマシンウィンガーを使ってすぐさまウェルスの町に急行すると、町の光景は変わり果てていた。
数時間ほど前は、小さい町ながらも人々が多く賑わっていた。
新鮮な野菜も並び、子供達も元気に走り回り、おばさんたちが井戸端会議をするほど、平和だったウェルスの町…
しかし今は、その面影は何処にも残っていない。
建物の殆どが半壊状態となり、ユーテキの実家やタルボットの研究所も例外ではないだろう。
町の人々は一瞬、何が起こったのか分からず…子供達はあまりの衝撃に泣き叫び、崩れた瓦礫に足を挟まれている人もいるほど。
だが、一番衝撃的だったのは…
ウェルスの町上空のアムニスフィールドに、目に見えてはっきりと亀裂が入っていること。
前に水色の綺麗な膜が広がっている光景を見たことがあるが、今回はその膜に痛々しい傷跡が残されている…それも、簡単には修復不可能なほど。
タルボットによる、帝国の破壊兵器の仕組みを思い出した晴人は…「マジか」と呟きながら空を眺めていた。
そんな彼の元へルルが合流し、晴人は彼女から詳しい話を聞こうとする。
「ルル!…一体、何があったんだ」
「はるとん!……それが、ルルにもよく分かんないよぉ…急にお空がぐるぐる〜ってなったと思ったら、そこからいきなりビームみたいなのが『ドカーン!』……って」
「ポポォ〜…」
「ってことは、……やっぱり帝国の造った兵器で間違いないか…なんっつー最悪なもの造り出してるんだよ、あいつら…!」
「――そうやろ、そらそうや!けどなぁ…一番怒っとんのは、天国のウェルテクス一族に違いないで!!」
更には、タルボットも自宅から出てくるなり憤りを抑えきれずにいる。
遅れてマルグリットやザウバー、コヨミ達も現れ…ミカやユーテキらとも合流。
そして…
タルボットは怒りを近くにいた瞬平にぶつけるかのように、塩を撒き散らしていた。
「ウェルテクス一族が夢見とった、平和のための技術をこんなことのために使いおって!それだけやない、ワシらの祖先が作ったアムニスフィールドまであんなにしおってからに!!」
「ちょっ、博士、塩!何で僕に塩撒くんですか!?」
「博士〜、このお客さんは帝国とは関係あらへんよ〜!ちょっと落ち着いてぇ!!」
「これが落ち着けるかい!……しかも奴ら、世間一般にはワシの研究中の事故として伝える気や…神様の名義で好き勝手やりおってからに!!」
「だっ、だから塩…うぶっ!?口、口の中…ゲホゲホ」
「あぁもう、毎日電磁波漬けの引きこもり老人を刺激すると、ロクなことにならんわぁ〜…」
タルボットの近くにいたばかりに、怒りを発散するための的にされてしまう瞬平と…何気に凄いことを言い放つマルグリット。
そんな彼らの漫才には目もくれず、凛子やミカはアムニスフィールドや町の惨状を見て声を失っている。
バーガーやルルは瓦礫の下敷きになっている人達の救助活動を優先し、ユーテキは、家が心配になってすぐさま走り出す。
ユーテキの家も、殆ど崩壊していた。
シールドと帝国の兵器がぶつかり合った瞬間、自身に近い揺れをもたらす衝撃が起こったのだろう…
リィアとミディアは机の下に急いで避難していたが、キッチンにいたエルダは逃げ遅れてしまい、瓦礫の下敷きになっていた。
「姉さん達!」
「あっ、ユーテキ!」
「こっち来て手伝って!エルダ姉さんが!!」
「…ッ!分かった!!」
エルダの上に落ちてきた屋根の一部をどけようと、リィア・ミディア・ユーテキが力を合わせて持ち上げようとする。
…が、やはり3人だけでは難しいだろう。
パラパラ…と砂状のものが上から落ちてきており、ユーテキが上を見上げると、大きく亀裂の入った屋根。
早くエルダを助け出さなければ、全員屋根の下敷きになってしまうだろう。
そこへ晴人とミカがやって来て、晴人はランドドラゴンに変身する。
「これは…っ、待ってろ今助ける!」
<ランド、ドラゴン ダンデンドンズドゴン、ダンデンドゴン!>
<チョーイイネ! グラビティ、サイコー!>
ウィザードRDは瓦礫を浮き上がらせると、ユーテキやミディア・リィアは急いでエルダの腕を手に取る。
足を怪我して動けないのか、その肩をユーテキとミディアが支えて歩き、リィアとミカが続く。
そして…
――全員が家から脱出した瞬間、屋根が完全に崩れ落ちていた。
あそこで晴人が間に合わなければ、今頃ユーテキ達は生き埋めになっていただろう…
リィアは一体何が起こったのか、事情を知っていそうなユーテキに問い詰める。
黙っていても仕方がない。
そう思った彼は、3人の姉に詳しい話をしていた。
「「…ウェルテクス社の造った兵器が、ウェルスに落ちてきた!?」」
「そんな…ウェルテクス社では、そんなものを造っていたの…?」
「ごめん、姉さん…僕の、僕が関わったプロジェクトが…まさか、この町の人達を傷つけることになるなんて……!」
「ユーテキは悪くないんです!悪いのは、ユーテキや他の皆を騙していた…今のウェルテクス社のトップ、シラスなの!!」
「…ねぇ待って、その言葉で思い出したんだけど……以前ベックフォードさんが言っていた、『ウェルテクス一族は帝国の依頼を断って暗殺された』って話、…もしかしたら、ウェルスに落ちた兵器のことなのかも」
ミカがユーテキを庇おうとすると、その言葉で凛子は手帳を取り出しページをいくつかめくる。
すると…
いつかベックフォードが話していた、ウェルテクス一族暗殺についての話と何か関係あるのでは、と意見する。
あまりの話に、一瞬ルルや瞬平は「え?」と首を傾げるが、ザウバーやイーヴリン、ウィザードRDらは彼女の言いたいことを理解したようだ。
――ウェルテクス一族は帝国から“何らかの依頼”を受けていた
――それを断ったせいで反逆罪という名目で、特務機関Gによって暗殺された
その“何らかの依頼”が、もしも今回ウェルスの町を襲った破壊兵器の製造なのだとしたら…
成程、先代のウェルテクス一族が…ミカの家族が断り続けていた理由も、分かる。
そして帝国はウェルテクス一族暗殺を決行し、ウェルテクス社のトップの座にシラスが君臨することで、念願だった武力兵器の開発に乗り出したのだ。
「…その推理は、当たっているだろうね。ようやく辻褄が合った、というべきか…」
「しかし…、……ウェルテクス一族の技術やアムニスフィールドを、こんなことに使うなど…」
「アムニスフィールドを怪我しているのは、異教徒でも何でもねぇ、帝国の奴らじゃねぇか…!」
「それに、アムニスフィールドも相当のダメージが残っているみたい…空の亀裂が、全然戻らないわ」
イーヴリン・ザウバー・バーガーが帝国への怒りを募らせる中、コヨミが心配そうに空を見上げながら言う。
帝国の兵器がアムニスフィールドに相当の負荷を掛けるのは事実のようで、修復するのに時間が掛かるのだろう。
もっと言えば、このまま修復するのかどうか…
ウェルテクス一族の暗殺やアムニスフィールドの亀裂云々など、ユーテキの姉達は分からない。
だが…
自分の弟を、こんな兵器を作るために手伝わせていたというのは理解できたのか、ミディアとリィアが「許せない」と叫ぶ。
「人の弟をスカウトしておいて、こんな兵器を造らせるために利用したっていうの!?」
「この町はタルボットって博士のシールドで助かったんでしょ?それなら、皆生きてるだけでも儲けものだけど…他の場所に落としたら、どうなるっていうのよ!」
「ミディア姉さん…リィア姉さん……」
「そうだわ、ユーテキ。……これ」
エルダは懐からある物を取り出し、ユーテキに渡す。
そこにあったのは、彼が最初に作った…全自動皮むき機。
それを見たミカ達は「まさか」と、エルダを見る。
彼女が逃げ遅れたのは、キッチンにいたからというだけではない…何としてもこれだけは守ろうと、全自動皮むき機を持っていこうとしていたのだろう。
ユーテキは「何で」と叫ぶが、エルダは優しい笑顔で話していた。
「どうしてこんな物のために…危ないって分かってるのに!」
「それでも、あなたの大事な【原点】だもの」
「…僕の…【原点】?」
「そう。――あなたが夢を持って、ウェルテクス社に入れるまでの研究者になった、大事な一歩。その原点。……これがあったから、今のあなたがあるのよ」
その話を聞き、ユーテキのアンダーワールドを見ていたウィザードRDは…「そういえば」と声を漏らす。
彼の中にあったのもまた、初めて作った発明を喜んでくれた姉達の姿。
ユーテキにとっても大事なものであるように、エルダ達にとってもまた、大事な“希望”だったのだろう…
「そして今は、あんな兵器を造って…だけど、自分の道や夢を失わないための道しるべになってくれる。希望になってくれると私は思うわ」
「エルダ姉さん…」
「そうよユーテキ、あんたの夢、帝国なんかに負けるんじゃないよ!泣かされても苛められても、しぶとく立ち上がるのがあんたの取り柄なんだから!!」
「うちのことは大丈夫だから、ウェルテクス社に文句言ってきな!」
「リィア姉さん、ミディア姉さん…」
姉達からの励ましに、ユーテキは目を潤ませる。
そんな彼女達の逞しさに、ミカ達が感心する一方…
とにかく今は救助活動の手伝いなどをしつつ、帝国の状況を覗うべきだろう。
誰もがそう思っていたところへ、「待った」の声を掛ける者がいた。
「――いいえ、あなた方にはこれから、ダティーバ大陸に向かってもらいます」
そこに現れたのは、カルラ。
そして…
彼女率いる、ルーキスの面々だった。
〜〜〜
【神の剣】がウェルスに放たれ、リーリエリヒト国民には『ウェルスの町に住むタルボットという、異教徒の博士が行った実験による暴発』と伝えられていた。
当然、その話は【面影堂】にいる輪島や、最近そこに入り浸っているアーヒバルド公爵も耳にし、「世の中物騒なものだ」と話している。
「研究中の事故で町ごと…って、何だか凄いなぁ」
「なんでも、アムニスフィールドの突然の亀裂も、その博士の事故によるものだっていうしねぇ」
「ところで公爵、公爵邸にいなくていいんですか?」
「いーよいーよ、どうせやることないし。自由気ままなのが、この俺“黄の貴族”アーヒバルドなのさ」
「――その件についてですが、お話があります」
カランカラン、と面影堂に入ってくるなりそう告げる者。
「お客さんかな」と思い、輪島が席を立つと
…そこにいたのは、白衣を着た一人の男だった。
それを見たアーヒバルドは、一目でウェルテクス社の研究員だと気付く。
何故ウェルテクス社の研究員がここに、と思っていると、彼はアーヒバルド公爵に頭を下げながら、頼み込んでいた。
「……お願いします、シラス様を…帝国を止めてください!」
「え?な、なんだって?」
「無礼なのは承知で頼んでいます。ですが、僕に頼れるのはもう…5色の貴族の一人である、あなたぐらいなのです!」
「と、とりあえず、話を聞こうか。…ほら、座って座って」
輪島の計らいで、研究員の男はソファに座り…
詳しい話を、2人に話し始めていた。
「……世間には、タルボットという博士の研究中の事故で町もアムニスフィールドも崩壊したという話になっていますが…本当は、シラス様やギリオン様による帝国の破壊兵器が作動したせいなのです」
「えっ、それじゃあ、実験中の事故って言うのは…」
「帝国の、嘘です。…兵器の実験も兼ねて、シラス様達は前々から意見の相違があったタルボット博士のいる町を狙ったのです……アムニスフィールドの突然の亀裂も、その兵器によるもので」
「はー…成程。自分達の失敗の隠蔽をするために嘘をついた、ってわけじゃなく…反乱勢力に喜んで力を貸しそうな偏屈爺さんに一泡吹かせるためにやったってことか」
アーヒバルド公爵はそう呟きながら、考えていた。
今回の兵器開発の成功は、かなり大きい。
難航していたグリュッグ国との戦いに大きな一石を投じることにもなるし、あんな町ひとつ滅ぼしかねない兵器を相手に…戦えるものなどいないに等しいのだ。
青年は偶然その話を聞いてしまったそうで、彼もまた、何も知らされずに兵器の部品を造っていたうちの一人だという。
「僕は…セラピアの町の出身で、ウェルテクス社の人には恩があるんです。だから、研究者になったのに……こんな…」
「そうか…しかし、どうしたらいいんでしょうかねぇ。公爵」
「それを俺に言われても。あんな兵器を相手に戦えるはずないし」
うーん、と輪島とアーヒバルド公爵が考えていると…
そこへ、また別の訪問者が現れていた。
【フライハウト団】のレヴィーと、その仲間達だ。
今日はお客さんが多いなぁと輪島が思っていると、レヴィーは輪島の顔を見て頭を軽く下げていた。
「輪島さんですね。ソウセイ経由で、あなたの話は聞いています。なんでも…操真晴人という人の、魔法の指輪を作った方だとか」
「もしかして、晴人の知り合いかね?」
「それだけじゃあないと思うがな。……お前ら、もしかして帝国に反旗を翻しているって噂の、フライハウト団だろ?」
流石に公爵の一人であるアーヒバルド公爵が、このような場所にいるとは思わなかったのだろう。
レヴィーや他のメンバーも驚きを隠せなかったが、彼もいるのならちょうどいいと思うところもあったのかもしれない。
研究員の話を聞いていたのか、レヴィーは話を進め始めていた。
「はい。――そして、先程言っていた帝国の破壊兵器の件ですが……奴らも、そう連発は出来ないはずです」
「そりゃまた、どうして」
「帝国自体が兵器を使うチャンスを、遅らせているんです。……アムニスフィールドを異常消費するのもそうですが、何より奴らは…」
「「「自分達で兵器を乱発できないことをした?」」」
ウェルスの町にやって来たカルラの言葉に、瞬平達は声を揃える。
カルラは大きく頷き、ある手紙を一番信用の利きそうなザウバーに渡しながら、話を説明していた。
「はい。――帝国は今回の件を、タルボット博士の事故として片付けたいのです…つまり、暫くの間はあのような兵器を撃つことはできない」
「そうか…タルボット博士の事故の後で、またすぐ他の国で兵器を使ったら、逆に帝国側が怪しまれるしな」
「それに、彼らとしてもアムニスフィールドの持つエネルギーの回復をある程度待つ必要があるでしょう。今度はグリュッグ国かツァールハイト国を狙うつもりならば、尚更」
「じゃあ、その間に帝国に攻め込むことも出来るんじゃ?」
ミカの質問を、カルラは首を振って否定する。
彼女によれば…
殆どがルーキスのメンバーで構成されるツァールハイト国と、リーリエリヒト国内の反乱組織でもあるフライハウト団だけでは、帝国相手に勝つことは難しい。
そこで、彼女は帝国が兵器を撃ち込むことが出来ない『空白の時間』を利用して、ダティーバ大陸にあるグリュッグ国に共同戦線の申し込みをしたいとのことだった。
永きに渡り、リーリエリヒト帝国と戦ってきたグリュッグ国…
同じ敵を持つ者同士、共同戦線を組むことに異論はないだろう。そう想定しての、今回の交渉だ。
「しかし、交渉なら自分達で行けばいいんじゃないのか?」
「そう思ったのですが、…ウェルスの町がこんなことになっている以上、放ってはおけません。ウェルスの町の復興作業を最優先させることもまた、…父上の跡を継いだ私の役目です」
「そうか…そうだ、カルラさん。あんたの中にはファントムがいるはず、それを倒してからでも遅くはないと思うんだ」
ウィザードRDはフレイムスタイルに変身しながら、カルラに出した提案。
…彼女の中に誕生した、ファントムを倒すということだ。
確かに彼女は絶望を乗り越えたが、中にファントムが生まれた状態…
もう一度絶望するようなことがあれば、今度こそ完全にファントムを生み出してしまう可能性が高い。
それに、ゲートでなくなればファントムから必要以上に狙われることもなくなる。安心して、リーリエリヒトとの戦いに専念できるということだ。
カルラも晴人ともう一度会う機会があればそうする予定だったのか、快く了承してくれた。
「…前は葬儀や王位継承で色々あったので、時間がありませんでしたが……元々、お願いする予定ではいました」
「それじゃあ、早速」
<エンゲージ、プリーズ>
ウィザードFSがカルラのアンダーワールドに入り、ファントムと戦っている間…
少しでも復興作業の手伝いが出来ればと、ミカ達は動いていた。
……料理は、主に凛子とコヨミに任せて。
そうしていると、ユーテキは未だ亀裂が走ったままのアムニスフィールドを見上げながら、ミカと話していた。
「…予想はしてたけど、まさか、ここまでアムニスフィールドが傷付くなんて…」
「ねえユーテキ、このまま帝国が兵器を使い続けたら…どうなっちゃうの?」
「……当然、アムニスフィールドは崩壊すると思うよ。それだけじゃない、そんなことになったら、…このルキナはどうなるか……誰も分からないよ」
「…ところでユーテキ、」
「どうしたの、ミカ」
「――やっぱり、なんでもない」
首を横に振りながらそう言うミカに、「何なんだろう」と呟きながらもユーテキはバーガーの手伝いにいく。
だが…
ミカは不安そうな顔で空の上の亀裂を見ながら、考え事をしていた。
(皆には、聞こえないのかな。――アムニスフィールドの奥から聞こえてくる、声みたいなものが…)
「……こーえが〜、きっこーえーるぅー♪」
調子の外れた歌を歌いながら、ミカの後ろからサウルが現れた。
相変わらず謎の登場をする彼に、ミカは当然飛び上がるように退避…
近くにいたユーテキやザウバー、コヨミに瞬平らも「また出た」と叫ぶ始末。
むしろ、ここまで来ると幽霊ではなく生きているようにも感じる。足もあるし、実体あるし。
そうしていると、サウルは心臓が飛び出そうになっているミカを見ながら、尋ねていた。
「…聞こえるんだね、彼らの声が」
「聞こえるって……もしかして、あなたも?」
「いや、僕には聞こえない。だけど…君ならもしかしたら、って思ってね。ウェルテクスの娘さんだからかな?」
「……うん、何を言っているのかはよく分からない…だけど、声のようなものは聞こえるの。もしかして、これもウェルテクス一族に何か…関係があるのかな」
ミカの言葉に、サウルは暫く考えると…
『今はとにかく、自分の出来ることをしないとね』と、彼にしては珍しく長話をすることなく短く要点を纏めていたのだ。
確かに、分からないものを気にしていてはどうしようもない。
今は、自分に出来ることをやるしかないのだ…
そんなとき、ふとミカは今度サウルに会ったら聞きたかったことを思い出し、風のようにいなくなる前に尋ねていた。
「そうだ!……サウルって、もしかしたら…私と同じ、ウェルテクス一族じゃないの……?」
「どうしてそう思うのかな?」
「だって、……ウェルテクスについて詳しいし…お父さんやお兄ちゃんに、どこか似ているから」
「ウェルテクス一族は基本、初代の奥さん…つまり君や君のお母さんの容姿を濃く受け継ぐ傾向があるんだよ。ほぼ女性しか生まれないしね。それでも僕が君のお父さんに似ているのなら、それは僕が君のお父さんの従兄弟かどうかって質問になってくると思うけど、それだと」
「――あー、ごめん、言い方間違えた!確かにお父さん達には似ていると思うけど、たぶん全然違う!!……っていうか違っててお願いだから!!!」
……そりゃ、あんなのが同じ一族だったら泣きたくなるよな…
バーガーはそんなことを思いつつ、彼もまた、サウルに質問をしていた。
「ところで、お前はどう思うんだ?…アムニスフィールドの状態について」
「……結構まずいとは思うよ。ウェルテクス社の技術を、こんなことに利用して…しかも、……“彼ら”の希望をこんな形で裏切って……」
「「「彼ら?」」」
「あ。――アムニスフィールドを造った、古代の研究者達のことだよ。自分達の作ったものが、兵器に利用されるなんて…彼らが生きていたらどう思うんだろう、って」
「それは…そうよね。皆のために作った、大事なアムニスフィールドだもの」
「でも、……どうしてあの人達は、アムニスフィールドを作ったんだろう。石炭みたいな資源に困っていないなら、尚更」
サウルの言葉には凛子が同意し、ユーテキらも頷いていたが…
コヨミの鋭い意見には、誰もが彼女のほうを見る。
確かに、アムニスフィールドが人工物だというのは分かったが、――どうしてそれを造ったのかという理由は、分からない。
万能のエネルギー物質だからエネルギー問題の解決では、と思おうにも、炭鉱などから石炭といった化石燃料の類が発掘されているのを見るに、エネルギー枯渇が原因ではないのだろう。
だとすれば、一体どのような目的で…
謎が謎を呼ぶ一方で、瞬平が何かに気付き、声を上げる。
「あの、……またあの人…いなくなってません…?」
「「「また!?」」」
「「「いつの間に!」」」
「もはや忍者だな、アレは…」
いつの間にか消えていたサウルに、誰もが驚きの声を上げる。
その一方でザウバーは、彼のことを「忍者」と表現していたが…
ある意味、キルベルトの屋敷に忍び込んでペット屋敷の鍵を盗んだザウバーの手際も、忍者と思えるのではないだろうか。
そんなことを、コヨミや凛子らは考えていた。
そこへカルラのアンダーワールドから帰還した晴人がやって来て、声を掛ける。
「どうした?」
「あ、晴人さん、……そのー…」
「…実は…」
「なんと言うか…」
「…またと言うか」
「非常にあれな…うん、あれな…」
「そのうちハヤテ丸という鳥に乗ってきそうな…」
「…むしろ緑のソードアイズに覚醒していそうな…左目隠してるし」
「トルネードのように現れハリケーンのように去っていくと言うべきか…」
「忍者さんがまた来たんだよ!」
仲間の口々の説明に、晴人は首を傾げるばかり。
…いやバトスピネタやってもいいけど元ネタの人間は一人に統一しようぜ、光と闇がごっちゃじゃん
…トルネードとハリケーンってどっちが被害やばかったっけ
…忍者ってなんだよだからイヴがハヤテ丸って言ったのか
そんなツッコミが色々と浮かんできたが、とりあえず晴人が一つだけツッコミ入れたのは
「――左目隠す必要があるのは、左目にソードアイズのあるゴーディじゃないか?バーガー」
「「「えっそこ!?そっちにツッコミ入れるの!!?」」」
「どうせサウルにでも会ったんだろ、言わなくていいよ分かってるから…つかここまで頻繁に会うと、誰かあいつに呪われてるんじゃないか?いつか呪滅撃食らうぞマジで」
「カオティックセイメイ!?あの人カオティックセイメイなの!!?」
相変わらずのサウル・クライシスはともかく…
カルラから手紙を受け取った晴人達は、一路港町パテオへ向かう。
そこからならグリュッグ国への船が出ているため、それを使って渡ってほしいとのこと。
乗船するためのチケットも既に彼女が準備しており、後は向かうだけだ。
ウェルスを離れた後で見た空も、僅かながらに亀裂が見える…
帝国がもう一度兵器を使ってしまえば、恐らくアムニスフィールドは完全崩壊してしまうだろう。
そうなる前にも、帝国を止めなければ。
「ダティーバ大陸か…どういうところなんだろう。イヴは知ってるの?」
「様々な部族が、その部族ごとの文化で暮らしているんだ。……中には女神崇拝を行っている部族もいてね、それが帝国の目につけられたんだろう」
「そっか。確か、ラディス教では多神教も女神崇拝も禁じられているんだっけ」
「まあな」
パテオまで戻るまでの道中で、ミカやイーヴリン、ユーテキにバーガーが話をする。
これから向かうダティーバ大陸が、どんな場所なのかは分からない。
だが…
共に帝国と戦ってくれるかもしれない相手なのだ、何としても今回の交渉は成功させたい。
晴人も未だ不安定さを見せるアムニスフィールドを見上げながらも、今は目の前のことに集中するべきだと…視線を前に戻していた。
***
次回以降は、ブレイカーのシナリオ的には折り返し地点になります。
このまま、全6章構成になってくれるのか!
それとも…またなんか余計なことしちゃうのか!!←
章のタイトルは、大体の雰囲気で決めちゃってますが…
4章は
・セルシウス、シャドゥ撃破
・ルル云々
・イーヴリン云々
・バーガー云々
って感じなので、実は全然決められてないですw
セルシーが割と絡んでくる予定ではいるから、氷にまつわるタイトルにしてもいいですけどねー。
どうなるかは、次回の更新でw
カルラさん再登場!
で…
やっぱ前々から気になっていた、彼女の中のファントム。
倒しちゃいます。倒させちゃいます。
ファントムがいたままだと、彼女を絶望させようと色んなファントムが来るわけですし…もしも彼女がファントムを生み出してしまえば、それこそ厄介なことこの上ない。
なので、戦闘は割愛しましたが倒させます。
…まあどうせ、この世界には独自の魔法使いがいるので(例題:ルル)、ファントムが中にいる魔法使いとは意味合いも何もかも変わってくると思いますけど。
サウルw
あんたが出てくると途端にギャグだな…
しかもバトスピネタがwいや、神々の砲台引っ張るよりはいいよ…いいんだけど!!ww
ちなみにサウルさんは左目に眼帯をしています。
次回からは新章!