ウェルテクス社。
シャドゥから得たデータを元に、ミカの新しい聖獣の姿を確認したシラスとギリオン。
特にシラスは、新しい聖獣ということでかなり嬉しそうにしている。
一方で、ギリオンはシラスにこんなことを話す。
「シラス様。――イフリート、何とか生きていたようです」
「そんなことどうでもいい、それよりも、新たな聖獣…あの娘には、後どのぐらいの数の聖獣の姿があるというのだ……興味深い、実に興味深い実験対象だ!」
「面白い研究対象を見つけるのはいいですが、本来の業務をお忘れなきよう。依然、イシュトヴァーン猊下もそう仰られたはずです」
「それは問題ありません。【神の剣】は無事完成しました…後は猊下に報告するのみ、いつ何処に発射するのかは……猊下の決めることですから」
くっくと笑みを見せながら、シラスは完成した“兵器”を見ている。
そんな彼に、ギリオンは溜息をつきつつも…
少し不安だったのか、キルベルトについて尋ねていた。
「それから、…キルベルト公爵ですが…使い物になりますかね。一応、『新しいペットを買った、これで奴らも一網打尽だ』と息を巻いていたようですが」
「まあ、ウェルテクスの娘の力を引き出してくれればそれで構いません。所詮あれは、単なる使い捨ての駒ですからなぁ」
〜〜〜
リーリエリヒトへの対抗組織を名乗る、【ルーキス】と言う集団。
そのリーダーでもあるカルラに連れられ、やって来たのは…この大陸の中心でもある、ツァールハイト王国。
カルラと他のルーキスの一員は、話し合いの準備のため先にアジトのほうに向かい、1時間ほどしたら中心地にあるブリュンヒルド公爵邸に訪れて欲しいとのこと。
ユーテキはこの大陸の出身ではあるが、実際にこの国の城下町に訪れたのは初めてだと言う。
ソウセイは観光ガイドの都合上、訪れることは何度かあったのだろう…
彼の案内を頼りに、晴人達はツァールハイト城下町を進んでいた。
「あちらにあるのが、星占いの館です。最近当たると評判で、主に女性客に人気なんですよ」
「おっ、いいねぇ。俺も一度行ってみたかったんだ!」
「ば、…バーガー…」
「それ…本気で言ってるの…?」
「しょうがねぇだろ。聖海騎士団の鎧を着たままじゃ、行けるはずもないし」
思いもよらぬ人物の発言に、若干顔を引きつらせていたのはミカとユーテキ。
どうやらバーガー、星占いが大の趣味なのだとか。
“ギャップ激しすぎるだろ”
晴人やザウバーがそんなことを思っていると、ルルははしゃいだように何かを指刺している。
「あーっ!ねぇねぇソウちゃん、あれ何?緑のウサギさん!」
「植木だね。ツァールハイト大陸は緑豊かな国…特に城下町にあるブリュンヒルド公爵邸や王城周辺は、ここよりも立派で綺麗な植木があるんだ。今の季節だと、花をつけて凄く綺麗だって」
「へぇ〜。あっ、あっちにはクマさんもいる〜!」
「ブリュンヒルド…そういえば、カルラって人がその名前を出していたけど、知り合いなんだろうか」
「前に話した5色の貴族の一人、緑の貴族・ブリュンヒルドだ。5色の貴族の中で一番大らかで、行動力のある人だ…今の帝国の暴走についても、よく思ってないだろうな」
ブリュンヒルド、という名前を聞いた晴人が、星占いの館に行きかけたバーガーの足を止めるかのように尋ねる。
彼の話によれば…
ブリュンヒルド公爵は聡明な人柄で知られ、現在の帝国のやり方について疑問を抱いているだろうとのこと。
そんな彼がルーキスと関係があるということは、やはり、いずれリーリエリヒト帝国と戦うつもりなのだろうか?
凛子やコヨミがそう考えていると、今度は瞬平が「わああっ」と声を上げる。
「凄い、晴人さん!ハンバーガーショップがありますよ!!」
「へぇ〜、こんなところにもハンバーガーがあるんだな。……ドーナッツはないのに…」
「レシピにないんだからしょうがないでしょ。なんか、見てるとお腹空いてきちゃった」
「ソウちゃん、お勧め知ってる?」
「そうだなぁ……女性に人気なのはヘルシーな野菜バーガーやフィッシュバーガー、男性にはボリュームのある月見バーガーやチキンバーガーかな。俺が好きなのは、チーズバーガーだけど」
「あ、じゃあ僕、チーズバーガー!」
「私はフィッシュバーガー!」
「俺、照り焼きバーガーとナゲット」
「そうねぇ、私は…うん、野菜バーガー!」
「ルルもミカちゃんと一緒でいいよ!」
「お前ら……バーガーのことも少しは考えろ。ちなみに俺は凛子と同じ野菜バーガー」
「そうよ。共食いできないバーガーさんの身にもなって…あ、私はウーロン茶で」
「おいザウバーとコヨミ一番ヒデェ。……あー、俺は月見バーガーとポテト」
なにやらバーガーネタが飛び交うが…
晴人達は互いに好きなものを注文し、ソウセイも何気にチーズバーガーを注文。
皆で軽い昼食を取った後、そろそろいい時間帯だろうとブリュンヒルド公爵邸へ足を進めようとハンバーガーショップを後にしていた。
ツァールハイト城下町を歩いていると、ソウセイの言ったとおり緑や花がまず目に付く。
特にブリュンヒルド公爵邸に近づくに連れて、その景色はかなりのものになっていく…
「綺麗」と目を輝かせるミカや凛子、ルルにコヨミ。
男である晴人達もそれに目を奪われ、「ほー…」と感心する始末。
そうしていると、緑の屋根の大きな屋敷が目の前に現れ…まさに緑の公爵のお屋敷といった風貌。
「あれがブリュンヒルド公爵邸です。…俺も、流石にここまで近くに来るのは初めてですけど」
「しっかし、立派だなー…あの中にハリケーンリング投げたら、緑過ぎて分からなかったりして」
「物を投げ込んだら怒られると思いますよ…」
「分かってる、冗談だって。……あれ?」
屋敷の前の門には、ルーキスの人間が着ていたレザープレートを装備している人間。
彼らは晴人達に気付くと、予めカルラから聞いていた特徴を確認し、本人だと分かると門を開ける…
ブリュンヒルド公爵とルーキスのメンバーは、やはり何かしらの関わりがあるのだろう。
そんなことを思い、先頭にいた晴人がドアをノックし、扉を開けると…
そこで待っていたのは、整った緑の服装をしている男性。
彼こそがブリュンヒルド公爵だ。
「君達が、カルラの言っていた人達か。……ん?」
「あの、私の顔に何か…?」
「君は…もしかして、……ミカちゃんかい?」
「えっ、ブリュンヒルド公爵、ミカのこと知ってるんですか!?」
ミカを知っているかのような口ぶりに、最初に声を上げたのはユーテキ。
ああ、と彼は優しげな顔で頷くと、懐かしげにミカのほうを見ている。
対するミカは、会った覚えがないのか首を傾げていたそうだが…
「無理もない」とブリュンヒルド公爵は言いながら、ミカに説明してくれた。
「僕が君と会ったのは、10年前だから…覚えていないのも無理はないだろう。僕はね、君を育てていた…クラウスの従兄弟なんだ」
「おじいちゃんの!?」
「クラウスのことは、人づてに聞いたよ。……残念なことだよ、まさか、特務機関に殺されるなんて」
「ええと…凄く失礼なことを言うかもしれないですけど、…喜んでは…いないですよね?」
「勿論。クラウスが死んで喜ぶのは、彼が組織していたフライハウト団を目の敵にしている帝国や…彼と仲の悪かったキルベルト公爵ぐらいだ」
すいません失礼なこと聞いて、とユーテキは必死で頭を下げる。
しかし、クラウスが死んだことを真っ先に知らせるなら弟のキルベルトだろう…その彼の反応を見て疑心暗鬼だったのだろうと、ブリュンヒルド公爵は許してくれた。
一方でブリュンヒルド公爵は、ミカにクラウスについて色々と話しをしていた。
…昔はセイバーの名手で、この公爵邸にも彼の使っていた愛用のセイバーが眠っていること
…頑固で厳しいが、何よりもミカのことを心配していたこと
…もしも自分がこの世を去った時、ミカの力になってやってほしいと数年前から頼まれていたこと
それらを聞いたミカは、ブリュンヒルド公爵にあることを尋ねていた。
「ところで、ブリュンヒルド公爵も…ルーキスを組織して、戦っているんですか?」
「組織したのは僕じゃない、カルラさ。僕は彼女達の支援をしているだけだよ」
「「「支援…」」」
「この辺りの話は、カルラ達も交えよう。――地下室があるから、そこで話を」
〜〜〜
ブリュンヒルド公爵によって連れてこられたのは、地下室。
地下といってもかなり広く、昔は単なる倉庫だったそうだが…ルーキスのメンバーのためのアジトに改装したのだそうだ。
大きめのテーブルには既にカルラを始めとした何人かが座っており、彼女の隣の空いた椅子にブリュンヒルド公爵が座る。
続いてミカ達も椅子に座り始め、カルラが話を始めていた。
「……私達【ルーキス】は、ツァールハイト国をリーリエリヒト帝国からの支配から救い、国を挙げて戦うべく組織されたものです」
「支配って…確かこの国って、中立の立場なんですよね?だったら戦争なんてする必要ないんじゃないですか?」
「表向きは中立ですが、実質的に帝国に服従しているも同然…その結果が、あなた達も知っている……帝国による強制労働です」
瞬平の問いに、カルラは苦虫を噛み潰すような顔ではっきり答える。
…確かに、『中立』と言う言葉は『どの国にも属さない故に戦争には干渉しない』と言う意味でもあるが…
別の言い方に例えれば、『戦争をして勝てる気がせず、尤も力の強いリーリエリヒトに傾倒している』に過ぎないのだ。
晴人とソウセイもパテオの町でのことを思い出し、何度も頷く。
あの町でもそういえば、ラディス教のことをよく思っていない上、ベルムやリオナと言う子供達の父親が「帝国のせいで帰ってこない」と言っていた…
今思えば、彼らの父親もまた、ババックのように強制労働に連れて行かれたのだろう。
「このままでは、ツァールハイト国は帝国に完全に支配されてしまう。リーリエリヒトも、いつまでもツァールハイトを中立のままでいさせるわけにも行かないでしょう」
「なんで?」
「ラディス教によってルキナ全土を支配するのなら、中立国にもラディス教を浸透させなければならない。今はよくても、いずれ戦争になるのは目に見えている」
「…そこのオッドアイの方の言うとおりです。ですが、この国の国王は帝国と戦う気がない…それどころか、万が一戦争になった場合……真っ先に降伏しようとしている!」
カルラは拳を握り締めながら、言い放つ。
なにやら、国王に恨み辛みでもあるのだろうか…
晴人達がそう思っていると、そんな彼女をブリュンヒルド公爵が落ち着かせ、彼らに言う。
「…僕も、今の帝国のやり方には前から疑問を持っている。まるで何かの目的のためならば、武力による世界制圧をもしかねない」
「あなた方は帝国と戦っているのですよね。…何か、その辺の理由などは知りませんか?」
「理由……といえば、ラディス教の予言の実現、かな」
「ああ。イシュトヴァーン猊下は、【神の国への扉】を開こうとしている…それが何なのかは、俺達にもサッパリだが」
ユーテキとバーガーが、困ったような顔をしながら話す。
ルキナの民総てをラディス教の忠実な教徒とし、予言を実現されることで開くであろう、【神の国への扉】…
予言が実現すれば、ルキナに住まう総ての民が幸せになる…
その言葉を聞いて、ルーキスの一員の一人が「そんなことのために」と声を上げていた。
彼の意見には晴人達も同意するところがあり、カルラも頭を抱えながら尋ねていた。
「このまま帝国の思い通りにしていたら、帝国の力はルキナ全土に渡り…大変なことになるでしょう。それも、予言で伝えられている“約束された幸せ”なんて、今の帝国からして訪れるとは思えない」
「じゃあやっぱり、…あんた達だけでも戦う気なのか?」
「そうしたいところですが、やはり問題となるのは、ツァールハイト国が未だ中立宣言を続けていること…そのせいで我々ルーキスの行動も制限され、同志を募るのみなのです」
「それでも、結構な数が集まっているけどね。…家族を強制労働に連れて行かれた者、異端者としてリーリエリヒトを追われた者、皆様々だ」
カルラとブリュンヒルド公爵の言葉に、「そうだろうな」とザウバーは仕方のなさそうな顔を見せる。
国が中立として標榜しているだけに、表立った行動ができないでいるルーキスの現状…
彼らとしても、ツァールハイトを愛しているからこそ戦う覚悟を決めている。
それなのに戦うことを良しとしないツァールハイト国王・ジークフリードのやり方には、痺れを切らし始めているのだ。
だが…
突然門の見張りをしていたルーキスの一員が、手紙のようなものを持って駆け込んできた。
「カルラさん!――国王から、謁見の手紙が!!」
「何ですって!?」
「…今、読んでみます」
手紙に書かれていた内容とは…
『明日の午前12時、ツァールハイト王城にて謁見の機会を設けたい』
『しかし、この謁見の場に顔を出すのはルーキスのリーダーと、国外の人間のみとする』
『我々としても、国内外…特にリーリエリヒトからの人間の話を直に聞き、検討したい』
…とのことだった。
これは誰の目から見ても、明らかな罠だ。
“国内外の人間がルーキスと接触している”前提で謁見をしたいと言っているのならば、尚更。
ザウバーは手紙の内容を一蹴し、カルラも罠だと確信している。
「…どう考えても罠だな。まさか、行くつもりじゃないだろうな」
「私も、これは怪しいと思います。……今まで私の言葉を、聞き入れる気のなかったあの国王が…」
「でもでも、ルルに言わせれば…すっごいチャンスだよ?」
「そうだよ!だって、罠さえどうにかしちゃえば…カルラさんや僕達の話を聞いて、戦うことを決めてくれるかもしれないし!!」
「それに私も…この国の人達が苦しんでいるのに、戦わないなんておかしいって思う。本当にこの国の人達のことを思うなら、戦うべきだって……はっきり言ってやりたい!」
ルルやユーテキ、ミカの言葉に…
「相変わらず無謀な奴らだな」と、晴人やバーガーも乗り込むことを決意する。
どんな罠があったとしても、晴人の魔法さえあれば窮地は窮地でなくなる。その確信があるからだ。
更には凛子やコヨミ、瞬平も「行こう」とカルラとザウバーを説得。
最終的には二人のほうが折れ、ブリュンヒルド公爵も難しげな顔をしながら、カルラに話していた。
「大丈夫か、カルラ。…何だったら、僕も行ったほうが」
「大丈夫です、公爵。……公爵が来れば相手もそれだけ警戒するでしょうし、ここで待っていてください」
「…分かった。だが、何かあればすぐに撤退してくれ。逃げることは悪いことじゃない、次に繋げるための一手の1つだからね」
「ところで、ソウセイ…お前どうするんだ?」
「俺は…ちょっと気になることがあるので、残ります。晴人さん…皆さん、頑張ってください」
任せとけ、と晴人が笑う。
今日のところはもう遅いため、そのままブリュンヒルド公爵邸で休むことになる。
割り当てられた部屋で、ゆっくりと体を休めている晴人やザウバー…
明日のことについて、コヨミや凛子と話しているミカ…
何故か風呂で犬神家の一族状態になっているユーテキ…
石鹸で足を滑らせ風呂桶にストライクをかました瞬平…
星占いの館に直行するルルとバーガー…
色々な形で、わずかな休息を満喫していた。――だが……
「……報告。奴らは明日の12時、ツァールハイト国王ジークフリードと謁見する模様」
通信機のようなもので、シャドゥと思わしき人間がオリジンに報告していた。
オリジンはと言うと、そのことは既に知っていた様子。
むしろ彼の目を通し、見ることができたゲートを絶望させることを優先させていた。
『それに関しては、あっちに任せればいい。……それと、お前はあるゲートを絶望させろ』
「…ゲート?」
『お前の目を通して、見ることができた。仲間を増やす意味でも、お前はそいつを絶望させることに集中するのだ』
「…御意。ところでマスター、イフリートは」
『何とか生きていたそうだ。……あれは馬鹿だからな、使いどころが逆に難しい』
その点、お前やセルシウスは優秀で助かる…とオリジンは愚痴を漏らす。
とにかく今回に関しては、晴人達の監視をする必要はなく、ツァールハイト城に着けば別の陰に隠れて頃合いを見計らい、ゲートを絶望させろとのこと。
シャドゥはその命を受けると、通信を切り、影の中に消えていった。
〜〜〜
翌日。
ツァールハイト王城に、カルラや晴人達が訪れる。
ソウセイは朝からおらず、ブリュンヒルド公爵もよそよそしい。
一体何なのだろうと思いながらも、彼らは約束の時間通りにツァールハイト城を訪れ…国王のいる謁見の間に顔を出していた。
ツァールハイト国王・ジークフリード。
見るからに温厚そうで、戦争を起こしそうにも見えない人間だ。
ここからどう説得するか、と晴人が思っていると…ジークフリード国王は、俯きがちに話していた。
「…すまない、――」
「え?」
「――さてさて、詳しい話は私のほうからしましょうかなぁ」
隣の部屋から、どこかで聞いたような声が聞こえてくる。
そして、後から現れたその姿を見て…「あ」とミカやユーテキが声を上げていた。
そこに現れたのは、キルベルト公爵。
彼だけではない…港町パテオで会った、フィルギニア公爵もそこにはいた。
「そういえばこの国にいるって言ってたな」とバーガーは頭を抑えるが、キルベルトは高笑いをしながらミカ達に言い放つ。
「ふはははは!まんまと罠にかかりおって、流石はお人よしのクラウスに育てられた娘だ!!」
「あの凶暴な魔物に『マロンちゃん』って名付けてる人に言われたくないわ!」
「っていうか、いたんだ!?」
「生きてたんですね!」
「むしろ、まだ存在してたの!?」
「息しなくていいのに」
「まったく煩い蝿が」
「うえー、なんか変な人がいるよぉ」
「ポーポ…」
「相変わらず変人で狂人だな、キルベルト公爵」
「あんまりしつこいと嫌われるぞ…ってもう遅いか!」
「本当に、キルベルト公爵ってば嫉妬深くて執念深い上に面倒くさい人なんですのよ?」
「――コラァァァ!好き勝手なことを言うんじゃない!!むしろフィルギニア公爵も混ざるんじゃない!!!」
ミカ・ユーテキ・瞬平・凛子・コヨミ・ザウバー・ルル・ポポ・バーガー・晴人・フィルギニア公爵の順で形成される、キルベルト公爵フルボッコの構図…
しかも味方(とはあまり言えない人間)にまで言われる辺り、哀れすぎる。
ぐぬぬ、とキルベルトは苛立ちながらも、一体のモンスターを連れてくる。
鋼鉄の体を持ったアイアンゴーレムという個体だが、ミカ達の知っているそれよりも一回り大きい。
キルベルトはそれのことを『ベティちゃん』と呼んでおり、その似つかわしくない名前に…
代表して凛子が叫んでいた。
「―――マロンちゃんといいベティちゃんといい、名付けセンスなさすぎじゃない!?」
「ええい、この名前のよさが分からんとは…凡人め!」
「あの巨体でゴツい見た目で『ベティ』って名前をいいと思うぐらいなら、私…凡人凡骨凡才刑事のままでいいわよ!っていうかあなたみたいにはなりたくない!!」
「確かに!凛子ちゃんいいぞ、いいこと言った!!」
「僕だったら、『アイアンマン』とか『ゴーレン』とかいい名前をつけますって…」
「瞬平のセンスもあれだけど…ベティちゃんよりはいいわ!」
「おーまーえーらー!!!」
凛子の激しいツッコミには…晴人も拍手喝采。
更には瞬平やコヨミからの同意も貰い、キルベルトは怒り狂ってベティちゃんに指示を出す。
その拳はジークフリード国王の手前で止まり、フィルギニア公爵は呆れたような顔でミカ達に尋ねていた。
「こんなやり方、私は好きじゃないんだけど…うまくいけば猊下に取り成すとキルベルト公爵が煩くてね。どうするの、大人しくしないとツァールハイト国王の命はないわよ」
「くっ…!」
「どうします、晴人さん!」
「こうなったら、エクステンドで何とかするしか…ッ!?」
晴人がそう言いながら指輪を填めると
…その背後から、電気の弾が晴人に襲い掛かる。
目立った外傷はないのだが、体が痺れてまともに身動きが取れない。
後方には、特務機関Gのメンバーでもあるイレナとヤナの姿。
彼女達の手に握られていたのは、ウェルテクス社が昔開発した…モンスターを捕獲する際に役立つ銃。
「晴人さん!晴人さん!!」
「大丈夫、晴人君!?」
「あなた達…晴人に何をしたの!?」
「別に死んではいないわ。ただちょっと、動けなくしただけ」
「それよりも…大人しく言うことを聞かないと、全員どうなるか分からないわよ」
――やられた。
単純な罠なら、まだ力ずくで窮地を脱することができた。
だが、まさか隠密行動を得意とする特務機関Gまで関わっていたとは…
結果として晴人は暫くまともに動けず、キルベルトによってジークフリード国王の命も危ない。
…大人しく従うしか、ないのだ。
すぐに兵士がやって来て、ミカ達を地下牢に閉じ込めようとする。
その際カルラはミカ達とは別の場所に連れて行かれながら…国王に向かって叫んでいた。
「これが…これが正しいことだと思うの?帝国に服従して、それで…それでツァールハイトの民が幸せになると思っているの!?」
「……お前には分からないだろう。いいから、連れて行け…」
「ご協力感謝しますわ、ツァールハイト国王」
「ツァールハイト王国も、ますますよい国となるでしょう。尤も、帝国の支配の進んだ国として…ですが」
イレナとヤナの言葉に、ジークフリード国王は顔を上げる。
「!…どういうことです、異国人を捕まえる手助けをすれば…強制労働に連れて行かれた人間を、解放するという話では」
「あぁそれ?残念ですけど、それはキルベルトの狂言…そもそもあの矮小な男に、そんな権限があると思います??」
「だけど結果的に、あなた様はツァールハイトを救ったことにもなります。彼らはリーリエリヒトにおける罪人、その罪人をのさばらせていては…それこそツァールハイトは駄目になっていたでしょう」
「――そんなの嘘よ!帝国に傾倒したままのほうが、この国は駄目になる…だからカルラさんは、戦おうとしていたのにっ!!」
「あなたは…自分の国の人を裏切って、リーリエリヒトに売ったの!それと同じよ!!……帝国に頭を下げることが、この国の人達への裏切りだって…まだ気付かないの!?」
連れて行かれる中、凛子とコヨミが大声で叫ぶ。
その言葉に、ジークフリード国王は何かを考えていたようだが…
――コヨミ達は完全に、地下牢に連れて行かれた後だった。
***
バーガーさんとキルベルトで笑いを取れるって…
逆に色んな意味で才能です、あんたら。
瞬平とユーテキも安定してたけどね!地の文だったけど!!
そしてイフリートの扱いェw
実はちょっとやりたかったこと→テイルズ恒例・ウエイトレスのバイト
特にコヨミや凛子ちゃんでね!
でも、たぶん尺がなくなるのでやめました。
星占いに関しては…バーガーさん、結構マジな設定です。
運勢を占う→何らかのフラグが立つもしたかったんですが、やっぱり尺がなくなるのでやめました。
瞬平は「お祓いに行ったほうがいい」と言われたりするんですがねw
さて、ここで出てきたブリュンヒルド公爵ですが…
彼は表裏もなく、協力者ポジションです。
カルラもそうなんですが。
やっぱり、ツァールハイト国民としては…中立と言いつつやや帝国に傾倒している国の姿勢に、憤りを隠せないようで。
そして…
シャドゥの動きも活発化してきましたねー。
やっぱり罠でした。
と言うか、キルベルト公爵…今度はベティちゃんかよw
アイアンゴーレムが泣いてるよ!←
ちなみに、ベティちゃん…本当は瞬平の言っていた『ゴーレン』を凄く気に入ってます。そんな地味な裏設定。
次回は…
・ソウセイ、離脱に向けての大仕事
・ザウバーw
・シャドゥww
の、3本でーす!(笑)