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タイトル未設定 - Magic59:希望の蒼海

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Magic59:希望の蒼海

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外の世界では、突如空が暗雲に包まれていた。

雲の色は闇のように暗く、崩壊したままのアムニスフィールドも相俟ってか、心をどこか不安定にさせる…

空を見上げていたリーリエリヒトに住む人々は、「世界の終わりだ」「一体どうして」と狼狽えているばかり。

突然アムニスフィールドが壊され、イシュトヴァーンが兵器を乱用し、ステイアと名乗る者が世界中を焼き始めた以上仕方がないことなのだが…

外に出ていたソウセイやタルボット、アーヒバルドに輪島は、空を見て思い思いに話していた。


「……始まったんですね」

「そうやな。しかし、送り出したはええが…あんなけったいな化け物に勝てる保障は、正直言って……ないで」

「おいおい、それは困るって。……とはいえ、俺達には何も出来ないのも事実だし」

「……晴人、コヨミ、凛子ちゃん、瞬平…必ず無事で帰って来るんだぞ……」


そうしていると、暗雲から稲光が発生し、近くの建物に落とされる。

どうやらステイアの界域での戦いの激しさに呼応する形で、こちら側にも影響が現れているらしい。

雷が直撃した建物は崩れ、人ごみの中に振り落とされてしまう。

人々はパニック状態となり、我先にと逃げようとして混乱は加速する一方。

最終的には母親とはぐれた子供だけが取り残されてしまい、母親らしき女性が子供の名前を叫ぶが…



――その瓦礫が子供を押し潰す前に、魔法の炎が瓦礫を粉々に砕いていた。

そして魔法の発動者…ゾゾが子供に駆け寄り、声を掛ける。

遅れて女性もやってきて、何度もゾゾに頭を下げていた。


「大丈夫か?」

「う、うん…」

「コータ!ああっ、ありがとうございます…本当にありがとうございます!!」

「いいって、いいって。…それより、中央の広場のほうに集まってほしいんだ。そのほうがパヴェル様も守りやすいって話だし……おーい、ワジマさん達も来てくれよ!中にいるよりは安全だから!!」


ゾゾに声を掛けられ、輪島達も中央広場に集まる。

そこではアウデンティアの魔法使い達が、円陣を組む形で待機しており…

更に、その円陣より内側には集められたリーリエリヒトの人々がいる。

なお、予め他の地域を見に行っていた魔法使いからの報告によれば、落雷はリーリエリヒト帝国近郊のみのようで…ステイアの界域での戦いの影響だということは、すぐに分かった。

住人を避難させようにも、先程のことからパニック状態になっている彼らを逃がすのは難しいだろうという判断になり、パヴェルら魔法使い達の魔法障壁で人々を守ることにしたのだ。

広場には既にルーク枢機卿とフィルギニアが来ており、訝しげな顔で黒い空を見上げていた。


「…これが、聖なる海を……アムニスフィールドを穢した代償だというのか」

「まさしく世界の終わり、とでも言うのかしら。…私としては、まだ終わりと決め付けたくはありませんけれど」

「それは誰しも同じこと。…彼女達を信じるしかない」

「そうですわね。良くも悪くも…彼女達が、このルキナに残された最後の希望……ということでしょうね」






〜〜〜






――少し時間を遡り。




「――変身!」

<フレイム、ドラゴン ボー、ボー、ボーボーボー!>


晴人は変身を終え、ウィザード・フレイムドラゴンへと変身する。

そして、誰もがステイアへ向けて攻撃を開始しようとしていた…

その時だった。

突如ステイアの界域に大勢の人間が現れたかと思えば、その中のいくつかの顔に見覚えがあった。

…エミルビス塔で出会った、プロトとヤムニだ。

「どうして彼らがここに」と思っていると、ヤムニが前に出てフレイムドラゴン達に言い放った。


「……あなた方と塔で会った時から、こうなることは…分かっていたのかもしれません」

「…ヤムニ?」

「私達は【ステイア】の皆様にとって作られた。彼らの悲願が私達の願いであり、…【ステイア】が今の人類を滅ぼすというのが願いであれば、それに従わなくてはいけません」

「えっ、ど、どういうことなの!?…プロト!」

「……我々アンドロイドは人間を超越しうる存在。人間より優れた生命体。…だからこそ、人間との共存はできない。そして、自我と感情を手に入れた【鍵】とは違い……【ステイア】の命を絶対に遂行する使命を優先するのです」

「…まさか!」


ヤムニの言葉の意味が分からず、ユーテキはプロトに話を振る。

彼は相変わらず無表情で無機質な答えを返し、その言葉を聞いたイーヴリンが叫ぶ。

…すると。

現れた大量のアンドロイド達はスライムのように溶け、一つに集約し、ステイアの体と合体してしまう。

おぞましき肉体を持った存在。

絶対的としか言いようのない…見れば見るほど気がおかしくなりそうな、だが目を背けることの出来ないもの。

ステイアと彼らは融合し、2つの存在となる。

上半身部の“ステイア・グリード”と、下半身を構成する“ステイア・レス” …

あまりの圧倒的存在感に瞬平と凛子はその場に座り込み、コヨミも膝が震えてしまう。



「な、な、な…」

「嘘…アンドロイド達と、…」

「合体、した…?」

『アンドロイドもアムニスフィールドも、シンボルストーンも…そしてそこのウェルテクスの娘も。全て【ステイア】が作り出したもの…』

『そもそも我々は、この界域の中でなければ長く存在することは出来ない』

『我々は愚かな人類を滅ぼす。そのためにも…』

『残っていたアンドロイド達を使い、肉体を再構成する必要があった』

「…成程。【鍵】以外のアンドロイドを廃棄しないでコールドスリープ状態で残していたのは…このためだった、ってことか」


フレイムドラゴンは軽く俯きながらも、ステイアに尋ねる。

…そもそも、疑問だったのだ。

自分達の技術を軍事兵器に利用されることを嫌った【ステイア】が、どうして人類を超越する存在であるアンドロイド達を『コールドスリープモードに留めたのか』。

今なら分かる。

人間がアムニスフィールドを破壊するような、愚かな手段を取った時に備え…霊体となった自分達のための“器”として残していたのだ。

尤も、今の人類に対しての怒りや恨み、絶望が相当強かったのか……そしてオリジン達ファントムの存在もあってか、実体のないファントムになるという形で甦ったようだが。


『さあ、ウェルテクスの娘。――お前も還るのだ、もはやお前の力…存在は、必要ない』

「……そう言われて、『はい』って答えるわけ…ないでしょっ!」


ミカは自慢のセイバーを振るい、ステイア・レスを攻撃する。

だが、ステイア・レスにその攻撃は届かず、ぐっちょりとした謎の感触がするだけだ。

それだけではない…

ステイア・レスに攻撃した瞬間、ミカの頭の中にこんな声が響いてきたのだ。




『…タシ…チノ、………ハ』

『……ダッタ…カ』

『………ドケ…ハ、……ノカ…』

「――ッ!?」


慌ててセイバーを抜き後退するも、ステイア・レスの触手がミカの左足を捕らえる。

ユーテキは急いで“クラッチショット”で触手を攻撃し、近くにいたイーヴリンがミカの肩を引っ張る。


「…大丈夫かっ!?」

「う、うん…ありがと。……だけど、何なのあの声…」

「「「声?」」」

「うん。…あいつに攻撃したら、頭の中に声が響いてきて…ぐちゃぐちゃして、よく聞き取れなかったけど……たぶん、ステイアに取り込まれたアンドロイド達の声なんじゃないかな…」


ミカはそう言いながら、ステイア・グリード、ステイア・レスを睨み付ける。

アンドロイド達の声、と聞いてユーテキ達も「そんな」と驚いていたが…

フレイムドラゴンはどうも、そうには思えなかった。

しかし、そう考えている間にもステイア・グリードから放たれる炎が彼らを襲い、フレイムドラゴンは“スペシャル”ウィザードリングによる火炎放射で凌ごうとする。

それを援護する形でルルも【フレアンインフィニティ】を放つが、相手の火力が圧倒的過ぎて完全に押し負けてしまう。

だが、その間にザウバーとバーガーが相手に接近することができ、それぞれ“華煉想無”と“瓦錬撃”で直接攻撃するが…

彼らもミカと同じような感覚、そして声が聞こえ、ステイア・レスから離れる。


「……ッ!?何だ、今の声は…」

「しかも、殴ってる…っていう感覚じゃなかったな。……くそっ…どうなってやがる!?」

「こうなったら…一気に決めるしかない!だけど、相手から距離を離して攻撃するんだ……“インディグネイション”!!」

「【ファントムスナイパー】!」

「ルルもいくよぉ!…“グランドダッシャー”!!」

「“ホーリーランス”!」

「“メテオスウォーム”!」

「“スプラッシュ”!」

「今度はこれで…どうだッ!」

<ハリケーン、ドラゴン ビュー、ビュー、ビュービュービュビュー!>

<チョーイイネ! サンダー、サイコー!!>



イーヴリンを筆頭に遠距離からの攻撃を試みるウィザード・ハリケーンドラゴン達。

その攻撃はステイア・グリードをも巻き込むが…

やはり効き目は、薄い。

それどころか、ステイア・レスの触手がユーテキやルルの首に巻きつき、それを解放するべくイーヴリンとザウバーが剣で攻撃し、バーガーも力任せに引き剥がそうとする。

その間にも、ミカは風の聖獣・ツァターンとなり…荒れ狂う暴風でステイア・グリードを攻撃していた。

だが、ステイア・グリードは動かず…何かを唱えるのみ。

今が攻撃のチャンスだとばかりにツァターンは攻めるが、何かがおかしいと直感的に感じ取ったハリケーンドラゴンは「待て」と叫ぶ。

しかし…


『――滅びよ、人間………“トワイライト・アルファ”』


無数の光の閃光が放たれ、それはツァターンに直撃する。

更にはステイア・レスの触手に捕まっていたユーテキ達をも攻撃し、その光は後方にいたコヨミたちにも及ぶ。

だが、彼らへの攻撃はハリケーンドラゴンが背中で受け止め、彼はそのまま地面に墜落していた。


「晴人ッ!」

「晴人君!?」

「は…晴人さん!大丈夫ですか!?」

「…なんとか、な…。あの攻撃は、ステイアから離れていればいるほど威力が弱まるみたい、だが……」


攻撃が直撃し、ミカ達は地面に倒れ伏している。

特に、先程の攻撃をまともに食らったミカは到底動ける状態じゃないだろう…

唯一起き上がれるハリケーンドラゴンは、防御と火力に優れたランドドラゴンスタイルへと変身し、ミカ達が動けるようになるまでの時間を稼ぐ。

辛うじて左腕を負傷するだけだったザウバーもゆっくり起き上がり、“コーラルゲイン”でミカ達を回復させるが…完全回復には至らない。

“スペシャル”ウィザードリングで呼び出したドラゴヘルクローでの肉弾戦を行うランドドラゴンだが、ステイア・レスの胴体を貫いた瞬間……頭の中に声が響いてきた。




『……我らステイアの希望』

『アムニスフィールド計画は…』

『間違いだったのか』

『我々の愛したルキナは』

『守られる価値など、なかったというのか…』

『我々のしてきたことに、意味など無かったのか』

『――希望は…存在しなかったのか…』



その言葉は、ランドドラゴンの耳にはっきりと聞こえていた。

…それと同時に彼の腹部をステイア・レスの触手が貫き、後方からコヨミ達の悲痛な叫びが響く。

だが、それが皮肉にも…ステイアの内に眠る絶望の声を、届かせたのだろう。

ザウバーと同じく軽傷で済んだバーガーは、すぐさま起き上がるとランドドラゴンに“キュア”をかける。

“コーラルゲイン”よりも範囲は狭く一人しか回復できないが、回復量はかなりのもので、ランドドラゴンの重傷もすぐに回復できていた。


「――おいっ!大丈夫か、しっかりしろ!!……晴人!!」

「…聞こえたんだ」

「?…ああ、そりゃ俺やザウバーもそうだったからな。しかし、アンドロイド達があんなに苦しんでるってのに…」

「……違う」

「…何だって?」

「あの声は…【ステイア】自身の声なんだ。……【ステイア】達の絶望の、声なんだ…」


“ルキナに住む人々を守りたい”

その希望を胸に、ステイアはアムニスフィールドを作り上げた。

それを悪用されないように、シンボルストーンと【鍵】を作り上げ、世界に隠して。

しかし…彼らの願いは、希望はその人間自身によって壊されてしまった。人間の身勝手な思惑が、思想が、アムニスフィールドを崩壊に追いやったのだ。

しかもシラスの兵器開発は、11年前のウェルテクス一族殺害を機に強まっていき…【神の剣】ほどでないとしても、アムニスフィールドのエネルギーを過剰消費していたことだろう。

…ルキナを心から愛していた【ステイア】を絶望させるには、充分すぎるほどの仕打ちだった。

たった数人の犯した過ちとはいえ、自分達が救おうとした人類が齎した結果に……絶望し、怒らないはずがない。

恐らくアンドロイド達も…【ステイア】の持つルキナへの愛を、アムニスフィールド計画に抱いていた希望を理解していたからこそ、彼らに従う形で融合したのだろう。

ランドドラゴンはゆっくり起き上がりながらも、ステイア・グリードとステイア・レスに言い放つ。



「……確かに、あんた達の言い分も分かるよ…俺はあくまで、希望を守るための魔法使いだから……さ」

「…晴人」

「俺だって、あんた達と同じ立場なら…自棄になって、道を踏み外すかもしれない。人間は完璧にはなれない……間違いを犯す、不完全な生き物なんだ。俺も、ミカ達も、そして…あんた達【ステイア】も」

『……』

「だけど、間違いから何かを学ぶことができる。間違いを通して、成長することも…自分の過ちを反省して、前に進むこともできる。……それが人間の可能性なんだ、人間の持つ力なんだ」

『…何が、言いたい?』

「――俺は、この世界のために尽くした研究者…【ステイア】の希望を、絶望で終わらせたくない。俺が……最後の希望になってやる!」


次の瞬間、ステイア・グリードから2度目の“トワイライト・アルファ”が放たれる。

バーガーとザウバーはそれぞれイーヴリンとミカを担ぎ、回復が済んだユーテキとルルもその場から離れる。

だが、ランドドラゴンは“ディフェンド”で1発目を防いだが…岩の盾は破壊されてしまい、すぐさま2発目の光が襲い掛かる。

その前にウォータードラゴンにスタイルチェンジし、“リキッド”で攻撃を往なすと…

ウィザーソードガンを構えたまま、向かって来ていた。

そしてその剣でステイア・レスを一突きにすると、自らの中のドラゴンに声をかけていた。


「生憎と、魔法使いってのは諦めが悪くてね。――聞こえてるんだろ、ドラゴン…お前の力を貸せッ!」






〜〜〜






晴人は暗い空間の中にいた。

しかし、いつもとはちがいまるで深い海の中にいるような…そんな不思議な感覚だった。

そして、服のポケットから小さな光が漏れていることに気付き、取り出す。

そこにあったのはワンネス・ジェネスミグレイト…

更にはどこからともなくウィザードラゴンが現れ、晴人に声を掛ける。


『――操真晴人。ファントムと変わりない、怒りと絶望で動く怪物の希望をも…助けたいとでも言うのか?』

「ああ。それに、ステイアは…絶望したくて絶望したんじゃない。大事なものを守るために尽くしたのに、守ったものに裏切られた」

『ある意味ではお前の末路かもしれないだろうな。誰かの希望を守るためにその身を削り、結果的にその希望に裏切られる……可能性としてはありえなくもない話だ』

「…そうかもしれない。だからこそ俺は、ステイアを助けたいのかもしれないな……絶望を絶望のままで終わらせたら、いけない。俺は……希望を取り戻したい、他でもなく、ステイアの希望を」

『…』

「ドラゴン…お前ならできるはずだ。このワンネスJMの力を制御するには、他でもないお前の力が……必要だ」


“仁藤の中にいるキマイラなら、余剰エネルギーを魔力代わりに食えるかもしれない”

以前、晴人がヤムニからワンネスJMの事を聞いたとき…こう呟いていた。

その発想を軸にして考え、得た結論が…自身の中にいるドラゴンの力で、ワンネスJMを制御してもらうことだ。

魔力を食うことはできないが、ドラゴン自身強い魔力を持っている…その力で制御してもらうことも可能だろう。少なからず、この戦闘で確実に減っている魔力の回復は十分に可能だ。

その話を聞くと、ドラゴンは笑い…晴人に尋ねる。


『断る、と言えば?』

「それはない。お前だって、ここで俺に死なれたら面倒なんじゃないのか?」

『…確かにな。早速力を貸してやろう……と言いたいところだが、お前に客だ』

「客?」



そう言って、ドラゴンが軽く浮いて退くと…

そこから現れたのは、桃色の髪に透き通った綺麗な青の瞳を持つ少女……フューレだった。

フューレは見れば見るほどミカに似ており、彼女は晴人の元に近づくと、彼の手に持つワンネスJMに触れる形で、手を握っていた。

その手からは淡い赤色の光が毀れており、フューレは悲しげな顔をして晴人に話していた。


「お前は確か…」

「……ステイアの悲しみを、理解してあげて。あの人達は…確かにやり方は間違っているけど、それでも、ルキナのことを…ルキナに住む人達のことを考えていたのは、確かだから」

「……ああ、分かってる。だからこそ俺は…戦うんだ。ステイアの希望を救うために、悲しみや絶望のままで……終わらせないために」

「…ありがとう」


フューレは少しばかり微笑むと、薄っすらと姿を消していく。

そして、晴人の手に残ったのは…フューレの力によって生まれ変わった、ワンネスJM。

その形状はウィザードリングに似ており、アムニスフィールドを連想させる美しい海の色。

ステイアの希望…アムニスフィールドを象徴する、奇跡の蒼。


「――さて、希望を救うとしますか」





ミカ達は、目を疑った。

突然ウィザード・ウォータードラゴンが叫んだかと思えば、蒼い光が視界を覆い隠し…

次の瞬間そこに立っていたのは、まったく別の存在だった。

姿形こそはウォータードラゴンにこそ似ているが、どこか水の聖獣・シアーズを連想させる…

その両手に持つ剣も、シアーズの持つ水の剣と同じなのだ。

アムニスフィールドから生み出されたワンネスJM…そして、フューレの力を受けて生まれ変わったそれは、アムニスフィールドを思い出させる蒼。

仮面ライダーウィザード・アムニスタイル…とも呼ぶべきそれは、尾の一閃でステイア・レスを攻撃する。


『その、姿は』

『シアーズ…いや、違う』

『どうなっている』

『どうして貴様が、聖獣の力を』

「別に不思議じゃないはずだ。……アムニスフィールドと同じ水のエレメントを持つなら、尚更な」

「晴人…?」

「…綺麗…」

「えーと、あれってミカちゃんのシアーズに似てます…よね?よね??」


コヨミと凛子がアムニスタイルに見惚れ、瞬平が何度も彼女達に尋ねる。

しかし、その間にもアムニスタイルはステイア・レスの触手と激しい攻撃を繰り広げ、その姿に怯んだステイア・レスが押し負けてしまう。

ステイア・グリードが三度“トワイライト・アルファ”を唱えようとするが、彼らの中に声が響く。

…それは紛れもなく、アムニスタイルの声だ。


――思い出してほしい、あんた達の希望を

――あんた達の…【ステイア】のしてきたことは、決して無駄なんかじゃない

『なんだ…これは』

『何が、起こったと言うのか』

『この力は…【鍵】、……フューレが力を貸しているとでも…!』

「――俺は、倒すために来たんじゃない…【ステイア】の希望を救いに来た。……力で解決するべきことじゃなかったんだ…だから」


突然、ステイア・グリード、ステイア・レスの動きが止まる。

それと同時にアムニスタイルの動きも止まり、何があったのか誰もが不安の声を上げる。

今がチャンスではないのかとイーヴリンやバーガーは思うが、不意にそれを止めたのは…ミカだ。

彼女は何となくではあるが、分かったのだろう。

…アムニスタイルがどうしようとしているのか、自分達はどうするべきなのか。


「待って。……攻撃しちゃ駄目」

「ミカ?」

「つっても…アレ、どうすりゃいいんだ?」

「…晴人を信じよう。それからでも…遅くはないよ」






【ステイア】の眼前に広がったのは、白い空間だった。

彼らは生前の姿のままで、これから何が起こるのか立ち尽くすことしかできない…

すると、そこへアムニスタイルが現れ、床にはある光景が映される。

――そこにあったのは、ウェルテクス一族の技術によって救われたと言う、セラピアの町だ。


『これは…』

「セラピアの町だ。この町は、旱魃によってオアシスの水源を失い…ウェルテクスの技術、もっと言えば、あんた達が遺した技術によって救われた町だ」

『…それが、どうしたというのだ』

『こんなものを見せて、どうするというのだ!』

「確かに人間の中には、アムニスフィールドを兵器として悪用した悪い奴もいる。だけど、こうやって…誰かのために、誰かの笑顔のために使う人達もいる。あんた達の希望は…技術は、セラピアの人達にとっては紛れもなく【希望】なんだ」


アムニスタイルはそう言いながら、セラピアの人達の笑顔を見せる。

…アムニスフィールドが見てきた、人々の歴史。

アムニスフィールドに干渉できるその能力で、【ステイア】に直接見せているのだ。

そして、次に見せたのは…ある一人の少年。

彼は3人の姉と暮らしており、姉達の喜ぶ顔が見たくて研究に没頭していた。

それはいつしか、『誰かの笑顔のための研究をしたい』と言う思いに繋がり、彼はある希望を持ってウェルテクス社の門をくぐった。

皆が笑顔になれるような研究。

世界中の皆を笑顔にする夢。

それが彼の希望。彼が研究員としてやってきた理由。

…結果としてその想いは無下にされたが、それでも彼は希望を取り戻し、そして……この最終決戦の地に足を踏み入れている。



「『僕の携わったウェルテクス社の兵器のせいで、苦しむ人が出てくるかもしれない。だけど僕は、その人達に償いをする意味でも、研究者として、皆の笑顔のために尽くしていきたい』……こいつの言葉だ」

『…』

「こいつもある意味では、お前たちが憎んでいる兵器開発に携わった…恨むべき奴なのかもしれない。だけど……自分のしたことをきちんと受け止めて、それを償うために戦っている」

『……それが、』

『なんだというのだ…』

「あんた達も同じはずだ。片やルキナを災害から救うため…片やルキナの人々を笑顔にするため、そう……誰かのために、何かのために研究をしていた。…思い出してくれ、あんた達はどうして……アムニスフィールドを造ったんだ?」


――何故、アムニスフィールドを造ったのか

その問いかけに、【ステイア】達は考える。

そして……暫く立った後、大勢いた中の誰かが答えた。


『……ルキナを、愛していたから』

『ルキナを…守ろうとしていた』

『だから、……私達はルキナを守ろうと…』

「…だよな。だけど、あんた達が今していることは…あんた達が愛したルキナを苦しめてる。人を滅ぼす衝動に駆られて、家を焼き…大地を傷つけて、……あんた達がやっていることは…あんた達自身が、守ろうとしたものを壊そうとしているんだ」

『……』

「それじゃあ、有史以前にルキナに降り注がれた隕石群と…変わらない。ルキナを救おうとした【ステイア】が、ルキナを壊そうとしてどうするんだよ……自分達の希望を自分達で壊して、どうするんだよ」

『では、どうすればよかったのだ。――どうすればルキナは、救われるというのだ…』


一人の老人が、問い詰める。

【ステイア】としても、彼ら自身が考えて行動した結果なのだろう…

アムニスタイルは少しばかり考えた後、静かに話していた。



「――信じてほしい。人の、可能性を」

『人の…』

『可能性、だと?』

『何度も言うようだが、人は何度でも過ちを繰り返す。もはや…信用するに値しない』

「だったら俺も、何度でも言ってやるよ。……人は間違いから成長できる、反省して次に進める…それが人間の可能性なんだ」

『…』

「今のルキナを救えるのは、今ルキナを生きる人達しかいないんだ。…人の可能性を、人の作り出す未来を信じてほしい…そして、あんた達と同じ気持ちで研究者になった奴もいるってことを、念頭に置いてほしい」






暫く経って、アムニスタイル・ステイア共に現実世界に引き戻される。

アムニスタイルは一度退くが、ステイア・グリードとステイア・レスは何も仕掛けてこない。

一体どうしたと言うのか…

そうしていると、ステイア・グリードがユーテキに尋ねる。


『――少年よ』

「えっ、…ぼ、僕?……しかいないよね…」

『お前に問おう。……お前はアムニスフィールドを崩壊に導く兵器の手伝いをした、人の愚かな欲望に利用される形で。……それでも人の可能性を信じられるか、人に未来はあると思えるか』

「晴人さん、一体…」

「ステイアは…お前の答えを聞きたいんだ。自分達と近しいお前の答えを。だから……答えてやるんだ、お前自身の答えを」


アムニスタイルに言われ、ユーテキは何がなんだか分からないまでも…

暫く考えると、ステイア・グリードを見てはっきりと言い放っていた。


「僕は、僕の答えは――」







***




答えは3番のアムニスタイルでした。

いや、だって、6はないとしても3しかなかった気がしますよ…

()の説明がなかったというメタを除いても。

フューチャーは(出せるかどうかは別として)他の人に考えてますし、1と4と5はその場の思い付きですし。

なお、ジュプトルの最終スタイル名は“ファイナルスタイル”の模様。

だってジュプトルだと「どんだけミライ引きずってんだw」になりますしおすし。


ゾゾも地味に役に立ったな!

地味に!!←

しかし、アンドロイド達ェ…

描写的にSANチェック入りそうですよね。特にミカは成功で2、失敗で1D2+2のSAN値喪失。

と言うか、ランドドラゴンの扱いw

どうしてランド系はこんな扱いなのか……ただ、オーズ兄弟のランドラさんならステイア・レスの触手を鷲掴みにしそうな気がする。ランドさんは知らん←



アムニスタイルについての解説。

ウォータードラゴンベースですが、所々シアーズの衣装が見られる。

尻尾なんて特にシアーズのそれ。

いつかのULTIMATUMでのウォドラさんの絵を参考にしてくれれば、それで。

スペック的にはウォドラの上位互換というか…オールドラゴンとほぼ同等。

ステイアと不思議空間に行った時の力は、アムニスフィールドが見てきた光景を見せていると言う感じですね。

…当然ですが、このスタイルはルキナ限定でしか使えません。

名前の由来としては、アムニスフィールド+スタイル。

ポケモンXYでフシギバナ専用のメガストーンが「フシギバナイト」と略されてるような感じの由来です。


最終的にユーテキが世界の命運を握ると言う…

頑張れユーテキ!

お前次第で最終回の展開が変わるんだ!!←メタ

なお、タイトルの蒼海は「うみ」と読みます。




そういうわけで、次回最終回!

あと、ちょっとしたゲストも出る予定…ユーテキが予定通りの展開にしてくれればな!←