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タイトル未設定 - Magic52:Despair

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【神の祭壇】で激しい戦いが行われていたのと、同時刻…

面影堂にてアムニスフィールドを観測していたタルボットは、頭を抱えていた。

彼は計測器と睨めっこをしながら、叫んでいた。


「かーっ!ユーテキ達は何しとんねん、アムニスフィールドの崩壊が止まるどころか……完全に壊れおった!!」

「えっ…博士、それ、ホンマなんですか!?」

「ホンマも何も、嘘だと思うなら外でも見てみい!……帝国の奴らめ、欲に駆られてご先祖さんの代からあるアムニスフィールドを壊しおって……何が起こっても知らんで!!」


タルボットがぐちぐちと文句を言う横で…

マルグリットと輪島は、二人揃って窓から空の様子を見る。

すると、リーリエリヒト帝国上空のアムニスフィールドは完全に崩壊し、神の怒りを象徴しているかのように透明な膜は紅く光り始めていた。

外にいた人々は大騒ぎを始め、帝都の混乱は一層激しさを増すだろう。

しかし、輪島はそれとは違う危険を、危惧し始めていた。


「……まずいなぁ…」

「まずいって、そりゃそうですやん。よりにもよってアムニスフィールドが壊れたんや、ウチだって混乱しとるんよ…熱狂的な信者さんはもっと」

「そうじゃなくて。……もしもアムニスフィールド、ってものの崩壊にファントムが絡んでいるとしたら…相当まずいことになるんじゃないかな、と」

「どういうこっちゃ、ワジマ」

「…アムニスフィールドが突然崩壊して、この世界にいるゲートが絶望して、ファントムを生み出してしまうんじゃないか……って思って。でも流石に、話が出来すぎ…」


輪島が冗談交じりにそう話していると…

突如リーリエリヒト城の方角から、ガリガリガリと何かを抉るような音が聞こえてくる。

更に、時を同じくして、大きな叫び声が聞こえてくる。

一体どうしたのかとタルボットが外に飛び出し、マルグリットと輪島もそれを追うようにして面影堂から出ていた。



すると…

崩壊したアムニスフィールドから、今頃ミカ達が見ているであろう“モノ”と同じものが現れる。

見たこともない、まるで巨大な死神のような姿。

人々は怯え、逃げ惑い、パニックになり、呆然として立ち尽くし、泣き叫ぶ。

当然、タルボット達も突然現れたそれに頭が付いていくことができず、ボケッと眺めることしかできなかった。

そうしていると、突如空に浮かぶ存在……【ステイア】が、語りかけていた。


『人間よ』

『お前達は大罪を犯した』

『私達の希望を』

『私達の願いを』

『貴様ら人間が壊した』

『アムニスフィールドは貴様らが壊したのだ』

「な、なんや…あのバケモンは!?」

「は…博士ぇ……」

「あれはファントム…なの、か……?」


複数の人間の声で喋るように話すステイア。

彼らに不気味さを覚えるタルボット、怯えて彼の服の袖にしがみ付くマルグリット。

空に浮かぶ存在はファントムなのか疑惑の眼差しを向ける輪島。

自由連合軍の者達も、反応は様々だった。

しかし…


『世界のためのウェルテクス一族の使命は、最早失せた』

『我ら【ステイア】の手で』

『――この星から人間を殲滅する!』




――ステイアがそう言い放った瞬間、リーリエリヒト城に黒い霧が発生する。

しかも、これはただの黒い霧ではない…

今現在、人工ファントム・マクスウェルを容赦なく焼き殺すほどの威力。もしも普通の人間が触れたら、一瞬のうちに消滅してしまうだろう。

それらはリーリエリヒト城を包み込み、当然、城は黒い霧に触れた瞬間燃え上がる。

これには流石のタルボットも、マルグリットや輪島も、困惑するばかりだ。


「……一体どないなっとんのや…」

「あ、あわわ…こ、これって…」

「ど…どうなっとるんだ、一体…?」

「――大変だーっ!ウェルテクス社が…ウェルテクス社が、燃えているッ!!」

「……何やてぇ!?」


ウェルテクス社に資料を取りに戻ろうとしていたユウリが、息を切らしながらやってくる。

その言葉を聞いて、レヴィーやベックフォードが現場に向かうと…

…ユウリの言うとおり、ウェルテクス社もウェルテクス社も黒い霧に覆われ…燃え始めているではないか。

それだけではない。

ゆっくりと後から現れたパヴェルは、信じられないような顔をしながら、ウォルフガングやカルラ達に伝えていた。


「……念のため、他の場所に待機させていた魔法使いからの情報では…世界各地の、至る所に謎の霧が発生し……集落や建物を燃やし始めているそうです」

「なっ…なんだとっ!?」

「そんなことが、可能なのですか…!?」

「私も俄かには信じられません。ですが…今、目の前で起こっている事柄。それは、はっきりと分かる真実です」



普段から朗らかな笑顔で、考えが全く読めないパヴェル…

しかし今、彼女の表情は、真剣そのもの。

一体、世界中で何が起こっているのか。

それは、【ステイア】と呼ばれる存在が起こしたものなのか…【ステイア】とは一体何なのか。

どうして人間を滅ぼそうとしているのか、あれは本当に神なのか?

とにかくレヴィーは通信JMを使ってユーテキ達と連絡を取ろうとするが、誰も反応しない。


「……くそっ!駄目だ、誰も反応しない」

「アムニスフィールドが崩壊したせいで、JMも使えなくなっているというのか…?」

「それはないと思います。アムニスフィールドが完全崩壊したのは、リーリエリヒト大陸全体のアムニスフィールド……他の場所は、多少崩れることはあっても、ここよりはまだマシなほうです」

「ということは、アムニスフィールドは完全に無くなったわけではない…ということですか?」

「ええ。ですから、JMが使えないわけではないのですが…もしかすれば、通信が取れない状況なのかもしれませんね」


パヴェルの言葉に、カルラやレヴィー、輪島は最悪の事態を考えてしまう。

…もしも、あのステイアという奴にやられたとしたら

サッと血の気が引くような思いでそんなことを考えていると、一人の女性が泣き崩れながら空を見ている。

彼女は熱狂的なラディス教の信者で、毎日、ラディス神からの贈り物であるアムニスフィールドに祈りを捧げるのが日課だった。

しかし…

そのアムニスフィールドが崩壊し、自分が信仰していたものが穢され、壊されたと思ったのだろう。

彼女の体からは紫色の亀裂が入り、「いかん」と輪島が叫ぶが…女性は豹のような姿をしたテネブラエ・ファントムを生み出して死んでしまう。

人としての体が粉々に砕け散り、怪物のような姿が生み出されるその光景に、レヴィーを始めとしたファントムをそこまで知らない者達は叫び、輪島は嘆き…

自らもファントムを生み出しかけたカルラは、「ソウセイがいなければ自分もこうなっていたのか」と思いながら、テネブラエを見ていた。


「「「なっ!?」」」

「ああっ…ファントムが、生まれてしまった…」

「あれが…ファントムを生み出す、行為」

『――あぁ〜、やっと窮屈な場所から出られたぁ〜』

「…とにかく、晴人さんがいない以上、私達で何としてでも倒さないと!……ただ、世界各国で似たようなことが起こっていると考えれば…パヴェル様の力で戦力を送りましょう!!」


自由連合軍の中で、唯一ファントムのことに詳しいカルラが、すぐさま指示を出す。

この場合は彼女に従ったほうが一番だと思ったか、ベックフォードやウォルフガング、パヴェルも頷き…

各地で生み出されつつあるファントムの鎮圧に、全力を注いでいた。






〜〜〜






……あの壮絶な一日から、一夜明け。

晴人は、ぼんやりと目を開け、ゆっくりと起き上がる。

その隣にいたのは、コヨミ。

――俺、何していたんだっけ

――そうだ、確か、ミカを助けに行って


「……!そうだ、ザウバー…!!コヨミ、あいつはどうなった!?それにここは」

「晴人、落ち着いて!…ザウバーは……マクスウェルが放ったウェルテクス社の兵器で、…」

「…悪い、コヨミ……言わなくて、いい」

「……それからここは、ピリアーの村にある…ティリアさんの家。どうやら私達、あの後……ここにいたみたいなの」





コヨミの話では…

晴人達が気を失った後、“ステイア”と呼ばれる存在がアムニスフィールドから現れ、マクスウェルを焼き払っていた。

ステイアの放った黒い霧で、シンボルストーンも砕け、石碑の形に作られた兵器の本体も黒い霧に包まれ燃え始める…

ミカはザウバーを失ったショックでそのまま気絶し、ソウセイとコヨミも、ただステイアを見上げることしかできない。

しかし、オリジンだけは、ステイアを恐れることなく…彼らにこう言い放っていた。


『――無念の集合体、ステイア…実際に目にするのは初めてだな』

『誰だ、お前は』

『――異世界のファントム、オリジン。……アムニスフィールドを破壊した人間は、罪深い…お前達なら分かるだろう。私が関わらずとも、遅かれ早かれ人間はアムニスフィールドを壊していた』

『確かに』

『私達の想いを知らずに』

『まさか、人間がここまで愚かだったとは』

『私達のしてきたことは、何だったというのか』

『なんとも嘆かわしい奴らだ』

『――お前達の事情は知らないが、ルキナに住む人間に絶望しているのは分かる。…人間に制裁を与えるというのなら、力を貸そう』

「…そいつを信用しちゃ駄目!」


コヨミは咄嗟にそうステイアに叫ぶが、次の瞬間、オリジンの攻撃で軽く吹き飛ばされてしまう。

「コヨミちゃん」とソウセイは急いで駆け寄るが、コヨミは既に気を失った後。

ここから先は、ソウセイから聞いた話となるのだが…

ステイアはそう簡単にオリジンを信用してはおらず、むしろオリジンは、それでもいいと言っていた。

…彼としては、ステイアがその圧倒的な力でルキナに住まうゲート達を絶望させ、大量のファントムを生み出すのが狙い。

だから、ステイアと協力体制を取らずとも、ステイア自身が思うままに動いてくれれば、オリジンはそれでいいのだ。

そして、そのファントムを率いて元いた世界に戻り…ワイズマンの念願でもある、大量のファントムを傘下に治めさせることができる。



その際、ソウセイはずっと心の中で引っかかっていたことがあった。

…【ステイア】、その名前に聞き覚えがある

…つい最近のことだ、思い出せ

必死で思い出そうとしていると、ステイアはサウルを見ながら、言い放つ。


『お前は、サウル・ウェルテクスのアンドロイドか』

「…そう。あなた方【ステイア】に所属していた彼が、……ある女性を悲しませまいと作られた」

『だが、彼女は死んだ』

『サウルと暮らすうちに、年老い…静かに息を引き取ったサウルを見て、彼女は人間として生きるための“生命サイクル”の存在を知った』

『しかしそれは正常なこと、彼女の学習機能は完全だった』

『だが…』

「それ以上は言わなくていい。――ステイア…確かに人間は愚かなのかもしれない、先人の想いを忘れてアムニスフィールドを利用するだけ利用し、壊してしまった。それでも……反省し、二度と同じ事を起こさないための努力はできる」


サウルの言葉に、ソウセイは思い出す。

…そうだ、確か【ステイア】って

…アムニスフィールドを作った、研究者チームの総称…

…じゃああの人達は…

ソウセイが答えに近づきつつあると、ステイアの一人が大声を張り上げ、サウルに言い放つ。


『お前は“サウル・ウェルテクス”の記憶を受け継いだだけのアンドロイド…お前は人間の醜さを知らない!奴らは何度でも、同じ事を繰り返す…何度でも同じ過ちを続ける!!』

『そう。もはや我々は人間に期待していない』

『人間は滅びるべき…これは、私達全員の総意だ』

「…ステイア!」

『貴様に用はない』

『消え去れ、人間と共に』

「……!」





その後、強大な爆発が起こり…

ソウセイが気付いた時には、晴人達と共にピリアーの村に倒れていた。

サウルの姿も、オリジンも、ステイアの姿もない。

ただ、ラディウスの街にもステイアの虚像が見えていたのだろう…異常事態を知ったゾゾが疲れた体に鞭を打って駆けつけ、転移魔法で自分達を安全な場所まで運んだのだろう。

ゾゾはルルの近くで派手に倒れており、ソウセイはとにかく晴人達を手当てできる場所を探し、――そうして見つけたのがこの家だそうだ。


「…そんなことが…」

「オリジンの口ぶりから言って、リーリエリヒトに協力していたのは、ステイアを生み出すことが目的だったみたい」

「しかし、ステイアって何なんだ…今の話を聞く限りだと、アムニスフィールドを作った研究者チームの名称なのは間違いないんだろうけど」

「それに関しては、ソウセイが知ってると思うわ。…サウルから何か聞いていたみたいだから」

「ところでコヨミ、…ミカは…」

「ミカなら…今、凛子と瞬平がついてる。……目の前で肉親を失ったんだもの、…辛いわけない」


コヨミは俯きがちに、そう告げる。

その言葉を聞いて、晴人はミカの気持ちが分かる気がしていた…

彼自身、事故によって両親が重体を負い、晴人の目の前で息を引き取った。

大事な肉親の死は、良くも悪くも心の中に残る。

晴人の両親は彼に対し、「私達の希望」と言い残して命を落としたのだから、まだ多少なり救いがある。

だが、ザウバーは…


「俺も行ってみるよ。……ミカを放っておくわけには行かないし」

「そうね。…じゃあ私は、ユーテキ達の容態を見てくる」




晴人はベッドから起きると、ミカのいる部屋に向かう。

すると、凛子と瞬平が部屋の前で話をしているのを見かけ、声を掛ける。

彼らの話では…

ミカも無事に目を覚ましたが、彼女の意思で「暫く一人にして欲しい」と言われてしまい、二人は部屋から出ているのだとか。

実の兄を失ったショックが、相当堪えているのだろう。

晴人は瞬平達に無理を言ってミカの部屋にはいると、無造作に置かれていた椅子の1つに座りながら話をしていた。


「……ミカ」

「晴人。…一人にして欲しいって、瞬平達に言っておいたはずなのに」

「今のお前を放って置けるわけないだろ。それに、…少なからず俺も…お前の気持ちが分かる。俺も小さい頃、事故に遭って……目の前で両親の死を目の当たりにした」

「…」

「流石に、お前の時とは状況が違うけど。――少しでもお前の力になりたい、そしてそれは、瞬平や凛子ちゃんも同じなんだ……状況は違えど、皆、お前を支えたいって思ってる」


晴人の言葉を聞き、ミカは暫く考えた後…

自分の胸の中にある“後悔”を、明かしていた。


「……私ね、一度も…ザウバーのこと、『お兄ちゃん』って言えなかった」

「……」

「頭では分かっているんだけど、どうしても…言えなくて。ザウバーも特に強制はしなかったし。だけど、」

「…ミカ」

「――こんなことになるなら、一度でもいい…お兄ちゃんって呼べばよかった。……お兄ちゃんって呼んであげればよかった…!」



ミカの胸の中にある、後悔。

「何故兄だと言わなかったのか」と問いかけたことはあるが、それ以外の…日常で呼びかける際に、『お兄ちゃん』と呼んだことはなかった。

ザウバー本人も、11年も離れていた以上すぐに呼ぶのは難しいだろうと思ったか、ミカ自身が状況に慣れてくるまで待っていたのだ。

しかし…

正体が発覚してから、ミカが一度も兄と呼ぶことなく、ザウバーは命を落とした。

それも、一番残酷な形で。


「…そうか。辛いよな、そういうの」

「ねえ、晴人…これから私達は、どうすればいいんだろう」

「?」

「シラス…マクスウェルをも圧倒した、あのステイア……そんな怪物を前に、私達、どうすればいいのかな。まだ、オリジンだって残っているのに…」

「……確かに。あのステイアって奴らは、尋常じゃない力を持っていた…それこそ、オリジンを超えかねない力を」


マクスウェルをも簡単に無に帰した、ステイア。

しかもステイアは、このピリアーの村の外れにあるアルテナ岬の灯台をも、黒い霧で破壊したらしい…

それに…凛子が持ってきた情報によれば、リーリエリヒト城にも黒い霧が発生し…他の地域に発生したものとは違い、未だに黒い霧が留まっているとのこと。

世界各地で黒い霧の被害が出ており、しかもそれは、ほぼ同時刻に起こった。

そんなこと、神でもなければ不可能だ。

そのような存在に、一体これからどうやって立ち向かっていけばいいのか…

晴人もコヨミから聞いた話を思い出し、ステイアについての対抗策が見えないまま、頭を抱える。

…そうしていると、廊下からドタドタと騒がしい足音が聞こえたかと思えば、ゾゾが勢いよく部屋の扉を開けていた。

その際、立ち居地の悪かった瞬平は…扉に顔をぶつけられる始末。


「――大変だーッ!?」

「ぎゃあああああー!!?」

「ゾゾ!…瞬平は……大丈夫か?」

「何かあったの?」

「何かあったも何も、…この村にある時計台の上に、女の人が登って…飛び降り自殺しようとしてるんだ!!」

「…何だって!?」






〜〜〜






ゾゾから話を聞いた晴人とミカ、瞬平に凛子は…

すぐさま時計台に集まり、先に来ていたイーヴリン達と合流する。

すると、そこでは今すぐにでも飛び降りかねないほど、危ない足取りの女性が一人。

…少しお腹が張っている辺り、中に子供がいるのだろう。

「一体何してるんだ」と晴人がハリケーンリングを指に填める一方で、ユーテキがおろおろとしながら女性について話す。


「あの人、リリーナさんっていうんだけど…灯台で仕事していた恋人が、例の黒い霧に巻き込まれて死んだみたいで……」

「愛する人を失ったショックで、自分もその後を追おうってか。…よくある話だけど、それでも、目の前で死なれてもらっちゃ……後味が悪すぎるだろ」

<ハリケーン、プリーズ フー、フー、フーフーフフー!>


そう言いながら、晴人はウィザード・ハリケーンスタイルに変身…

しかし、普通に飛んで行っては女性をびっくりさせ、その際に足を滑らせて落ちる…ということになりかねない。

そうしている間に、リリーナは本当に飛び降り始め…彼女を説得しようと集まっていた村人達は、悲鳴を上げたり目を反らしたりしていた。

だが…

完全に地面に落ちる直前に、“ディフェンド”によって巻き起こる風の盾の風圧がリリーナを優しく受け止め、落下時の運動エネルギーをリセットする。

そしてそのままゆっくりと地面に下ろし、リリーナはがくりと膝をついた状態で、ウィザードHSに言い放っていた。


「…どうして、どうして死なせてくれなかったの。――あの人を失った今、私も…お腹の中の子供も!これ以上生きている意味なんてない……あの人がいなくちゃ、生きている価値なんてないのっ!!」

「そんなこと言うな!……あんたが死んだところで、その人が生き返るわけじゃない…しかもあんたのしようとしていることは、お腹の中の命を道連れにした自殺だ!!」

「それでも構わない!」

「構わないわけないだろ…折角、宿った命……あんたと、死んだ恋人の中に生まれてきた【希望】なんだ。その子供は、あんたとその人が愛し合っていた証…あんたの恋人が残した、最後の希望なんだ。こんな形で、――最後の希望を失おうとするなッ!!」



ウィザードHSの言葉に、リリーナは目を見開いた後、自分のお腹に手を触れる。

…あの人の残した、最後の希望

ユーテキ達も、ウィザードHSの説得には思うところがあるようで、何度も頷く。

そして…

ミカもリリーナの隣に向かうと、彼女の手を優しく握っていた。


「……私も、ね。大事な人を失ったばかりなの…大事な、大事な家族を……私自身のせいで」

「あなた、も…?」

「…あなたの気持ちも分かる。だけど、正しいのは晴人だよ。――あなたのお腹の中の赤ちゃんは、まだ生きてる…それをこんな形で殺してしまったら、……リリーナさんは…自分で大事な人の子供を殺すことになっちゃうの」

「……私、」

「死なないで、生きて。そして元気な子供を生んで、……それが…希望を繋ぐってことだと思うから」

「…私、……なんて、馬鹿なことを…。……ごめんなさい、ごめんなさい…!」


…そう

…遺された人は、死んでしまった人の分まで生きないといけない

…希望を、繋がなくちゃいけない

…大事な人の死を、絶望のままで終わらせちゃいけないんだ…!

リリーナを説得しながらも、ミカ自身、大事なことに気付いたようだ。

今、この世界に生きている自分達ができることは…何か。

ステイアにオリジン、強大な力を持つ敵を相手に……自分達がしなければならないことは、何か。

リリーナのお陰で気付けたミカは、変身を解除した晴人や他の仲間達のほうを見ながら、迷いのない目で言い放つ。


「…皆も、心配掛けさせてごめん。私ならもう、大丈夫」

「ミカ」

「ザウバーの分まで、――何としてもこの世界を…救おう。それが、……お兄ちゃんの願いでもあるって…私は、思う」

「……そう、だね。…そうだよ、ミカ!」

「私達も、最後までついていくよ」

「ルルも!地の果てまでついていくの!!」

「これ以上、ステイアって奴に好き勝手されるわけにもいかねぇしな!」

「ああ。…ザウバーの分まで、この世界の希望を……守ろう」

「そうね…」

「私達、戦うことはできないけど…でも!」

「ここまで来たんだから、最後までミカちゃん達と一緒に戦うよ!」


ユーテキ、イーヴリン、ルル、バーガー、晴人、コヨミ、凛子、瞬平…

彼らの言葉に、ミカは、胸が温かくなっていた。

勝ち目のない戦いかもしれない。

だが、それでも、オリジンやステイアの好きにさせては…いけない。

ゾゾもあまり状況が読めないながらも、大体の事情は察したのか、協力は惜しまないと言ってくれた。

…問題は、これからどうすればいいのか。

リーリエリヒト帝国に向かっても、恐らくステイアやオリジンの消息は掴めないだろう。

そうしていると、……ようやくこの場に現れたソウセイが、晴人達に告げていた。




「――ステイアの手がかりなら、掴めるかもしれないです」

「「「えっ!?」」」

「それ、本当なの!?」

「はい。……エミルビス塔、そこにステイアの手がかりがある…サウルさんは以前僕に、そう話していました」


アパロス島の研究施設で別行動をしていた間、ソウセイはある程度のことをサウルから聞いていた…

そして、【ステイア】はかつてアムニスフィールドを作った研究者チームの総称であること。

彼らの持つ技術は、エミルビス塔という場所に隠されていること。

そのエミルビス塔の場所は、ビスマルク港の海面上に存在していた霧の奥にあること。

それらの話を聞いて、晴人と凛子は信じられないような顔をしながら、互いに話していた。


「…その話が本当だとすると、ステイアは古代人のアムニスフィールド研究と関わりがある…ってことなのか?」

「そうとしか思えないわね。だって、アムニスフィールドを作るほどの研究者チームの名前と同じなんて、偶然にしては出来すぎているもの…」

「確かに。……でも、そのステイアと【神の祭壇】に現れたステイアが、同じって保障はあるのか?」

「同じ、とは言い切れないですが…関係はあると思います。サウルさんのことを、知っている口ぶりですし……それにもしかすれば、ウェルテクス一族とステイアは…何らかの繋がりがあるのかも」

「ウェルテクスと…ステイアが……?」


ソウセイの言葉に、ミカは信じられないような様子で考えていた。

…確かにステイアは、ウェルテクス一族に『世界のためのウェルテクス一族の使命は』と口にしている…

しかし、それは即ち…ミカやザウバーが【ステイア】と名乗るあの怪物と何か関わりがある、と言うのと同じ意味だ。

一体自分達とステイアに、どんな関係があるというのか…

だがそれは、ピリアーの村に立ち止まったままでは分からない。それを知るためには、エミルビス塔に行くしかないのだ。


「……ゾゾ、」

「分かってるって。でも、魔力はあまり回復しきってないから…ビスマルク港までしか行かせられないぞ?」

「それでも構わない。後は、何とかして海を渡ってみせる……私達を、ビスマルク港まで連れて行って!」

「…ああ、それじゃあ、全員ちゃんと手を掴んでろよ!」



ゾゾはそう言うと、晴人達を連れ…

ビスマルク港まで、転移魔法を使って移動させていた。

――それと同時刻。

コハクはこれまでどうするべきか悩んでいたが、意を決し、晴人の仲間でもある輪島のいる【面影堂】に訪れていた。

面影堂ではミラ・ユウリ・マルグリット・タルボットが、世界各地の黒い霧にてんてこ舞いになっており、輪島はそんな彼らにコーヒーを入れている。


「すみません」

「あぁ、あなたはえーと…確か、コハクさんでしたっけ?」

「はい。…店主、あなたは確か、操真晴人君の知り合い…でしたよね」

「まあそうですが。…晴人に何か?」

「実はちょっと、預かり物がありまして。――恐らく晴人君ならば、使い道が分かるかと思い……」


そう言って、コハクが輪島に見せたのは…

以前、サウルから手渡された、直径15cmほどの不思議な石。

魔宝石にも近い見た目を持つそれは、―――サウル曰く……“オリジナルJM”だった。






***




テネブラエw

センチュリオンまで出すのかー!!(参考&出典:TOSラタトスクの騎士)


今回の冒頭は、晴人達がいないリーリエリヒトでの視点ですね。

輪島さんも変なところで鋭いなぁw

そして生まれるテネブラエ…CVはデネブの人じゃないぞ!生み出したの女性だし!!

しかし黒い霧の脅威は、世界中にあるようで…

本当に神様レベルじゃね?



晴人は目の前で両親を失っている分、ミカの気持ちが分かる…現在、一番ミカに近いキャラですよね。

しかし瞬平…お前w

ちなみにハリケーンになってディフェンドをした理由は、風を巻き起こす盾でリリーナを受け止める前提にあります。

…なお、リリーナの恋人の名前はロイではありません。たぶん。

恋人を失ったリリーナの気持ちも分からなくはないですが、それで一番たまらないのは他でもない、お腹の中の子供なんですよねぇ。

そういう意味では晴人、一番正論だわ。


ステイアとウェルテクス一族の関係…

ステイアとは何者なのか…

古代の研究者グループと関係があるのか…

色々な謎が錯綜する中、遂に輪島の手元に「もうこれ魔宝石だろw」疑惑の高いオリジナルJMが!

コハクさんも今まで、よく面影堂に来なかったな…

あ、タルボットが所狭しと駆け回っているからか?←




次回は…

ステイアの秘密について、ちょっとばかり迫ります。

本当にちょっとですが。