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タイトル未設定 - Magic38:アンギュロス族

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Magic38:アンギュロス族

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イーヴリンが17年前、帝国によって滅ぼされたアンギュロス族の末裔…

その話を聞いたミカ達は、驚いたように彼女の顔を見ている。

一方で、イーヴリン本人はふうと一息つき

…ベスティアに何故そう思ったのか、尋ねていた。


「――どうして私がアンギュロス族だと思ったんだい?」

「アンギュロス族は、銀の瞳に黒い髪を持つ一族だ。君は、私が幼い頃に出会ったことのある、アンギュロス族の族長に似ている…」

「……、…まあ、間違いではないんだけどね」

「イヴ…どうして今まで、そのことを黙っていたの?」

「特に言う必要がなかったからさ。私も当時の記憶は曖昧でね、覚えている範囲でいいなら話すよ」





――17年前。

当時5歳だったイーヴリンは、族長の娘と遊ぶのが好きだった。

族長の娘は自分よりも3つほど年上だったが、イーヴリンはそんな彼女を姉のように慕い、彼女もまたイーヴリンを妹のように接していたという。

アンギュロス族は赤子の頃から酒を飲ませる風習があり、子供である彼女達も酒の席に加わることが多かったという。

そして…

イーヴリンはよく、祖母からこんな話を聞かされていた。


『いいかい、イヴ。……私達はね、【救世主】を守るために存在しているんだよ』

『きゅーせいしゅ?』

『そう。…蒼き光に守護されし者、紅き光を受けて世界を救う者とならん……これがどういった人物なのかは分からない。だけど、伝承によれば…我らアンギュロス族が信仰する、ミカファール神の生まれ変わりとも言われている』


ミカファール神。

アンギュロス族にとって、尤も敬うべき女神の名前だ。

武力と英知、そして勇気を兼ね揃えたミカファール神は、【救世主】たる存在を守護するために存在するアンギュロス族が信仰するに足る神。

族長の娘はミカファール神への信仰心が深く、毎日お祈りを欠かさないほど。

…ミカファール神から守護と使命を受けている、誇り高き部族

…我らの力と命は、【救世主】のためにある

大人達は口々にそう言うが、幼かったイーヴリンはよく分からなかったそうだ。



――だが、アンギュロス族に使命を遂行する時は来なかった。



ある日、皇帝イシュトヴァーン直々に指揮する帝国軍によって、アンギュロス族は攻撃を受けていた。

彼らが突如襲って着た理由は、一つ。

『ラディスの神を蔑ろにし、事もあろうに女神の崇拝をしている』からだ。

熱心なラディス教徒でもあるイシュトヴァーンにとって、女神を崇拝するアンギュロス族は気に入らなかったのだろう…

火矢が飛び交い、テントが火に包まれる。

更に帝国軍は集落の周辺に油を撒き、炎でアンギュロス族達の逃げ場を奪っていたのだ。

それだけではない。帝国軍は、少し離れた先にある井戸に毒を仕込み…一族で一番強い族長を含めた何人かの者達が、満足に動けなかった。

大人達は最後まで帝国に抗おうと戦い、幼い子供達を逃がそうと馬車を走らせる。


『お父さん、お母さん!』

『ばあさん…娘を、イヴを任せた!』

『イヴ、心配しないで、後で必ず迎えに行くわ!!』

『…やだーっ!』

『イヴ、逃げなさい!……アンギュロス族の血を絶やすわけには行かない!!』

『あなたや他の子達が生き延びて、子供を作り…アンギュロス族を再興するの。……そして、帝国の支配からルキナを救ってくれる、【救世主】を…守るのよ!』


泣き叫ぶイーヴリンを何とか祖母と一緒に馬車に押し込め、彼女達を乗せた馬車は炎を突っ切る…

アンギュロス族の集落から逃げる際、族長の娘とは離れ離れになってしまった。

彼女だけではない。

何人かの子供達も散り散りになり、その後の生死は不明だった…




「――私が情報屋をしていたのは、一族の生き残りを探すこと…そして一族の言う【救世主】とは何なのかを知るためだった。……まあ、自分が生きるためって言うのも間違いじゃないけどね」



何とか逃れたイーヴリンと祖母は、自分達の身を隠すべく、リーリエリヒト大陸に向かった…

帝国も、まさかアンギュロス族の生き残りが自分の国内にいるとは思わないだろう。

黒髪に銀の瞳など、どこかの紅と蒼のオッドアイをした男よりありふれている…一目見て『アンギュロス族の生き残りだ』と言うものなど、いないだろう。

そうでなくとも、ダティーバの部族の多さはかなりのもの…市井で安穏と暮らす住人は、帝国に他のダティーバの部族に対する見せしめとして滅ぼされた部族だとは思わない。

イーヴリンは祖母と二人で生きていくために、アンギュロス族としてのフットワークの軽さを利用して、情報屋になっていた。

そうすれば自分以外の生き残りのことも分かるし、【救世主】とはどのような人物なのか調べることも可能。

ルピートともそうした情報屋家業の中で知り合っており、彼は年老いた祖母のいたイーヴリンによくしてくれていた。

JMハンターズギルドは様々な情報を持っている、その情報を他の者に売って生計を立てていたのだ…

その話を聞いていたコヨミは、首を傾げながらも…小声でザウバーに尋ねていた。


(……もしかしてザウバー、あなたイヴと知り合いなんじゃないの?)

(まあ…そこまで頻繁に会うことはなかったが、時々は見かけた。――俺はJMハンターズギルドではよく左目を眼帯で隠していたから、あいつはそのガキが俺だと知らないはずだ。ギルドは18の時に出て行ったしな)

(そうなの?)

「それでイヴさん、…生き残りの人は…見つかったんですか?」


瞬平が、イーヴリンに尋ねる。

ミカやユーテキも、それがずっと気になっていた。

もしも生き残りがいるとしたら、共和連合結成と言う話を聞きつけ、加勢してくれるだろう…

しかしイーヴリンは首を横に振りながら、視線を下に向けつつ話す。




「…17年前に逃がされた子供の数は、私を入れて11人。だけど、そのうち7人は……17年前の時点で、帝国の追っ手から逃げ切れずに死んだ」

「「「……」」」

「残った3人の生死は未だ不明、…族長の娘は最後まで族長の傍にいたみたいだから、彼女もまた…」


7人は帝国にその命を摘み取られ。

3人のアンギュロス族の行方は知れず。

族長の娘は、恐らく確実に命を落としている。

…彼女の心中は、辛いものだろう。凛子は「ちょっと」と瞬平を腕で小突きながら注意していた。

しかし…

晴人の口から、こんな意見が飛び出ていた。


「――もしかすれば、ユディーヌ審問官は…アンギュロス族の可能性が高いのかもしれない」

「「「えっ!?」」」

「晴人、どういうこと?」

「…実は俺、前にユディーヌ審問官がガナドール族の集落にいたとき…破れたフードの隙間から、銀色の瞳を見たんだ」


晴人によれば…

銀の瞳など珍しく、また、僅かに見える隙間から黒い髪も見えていた。

更に、アンギュロス族に伝わる言い伝えにも精通していたところを見るに、ユディーヌはアンギュロス族と関わりがあるのではないのだろうか…

彼の話を聞いていたベスティアも納得したように頷き、イーヴリンに言う。


「……確かに、もしも審問官がアンギュロス族の生き残りと仮定するなら…アンギュロスの遺跡に向かったと言う話も、納得できる」

「だけど、イヴさんの話が本当なら…アンギュロス族はイシュトヴァーン皇帝によって滅ぼされたんでしょ?」

「あ…そうですよ!なんでそのユディーヌさんって、帝国に従っているんでしょう…?」

「うーん、もしかすると、皇帝の信頼を勝ち得てグサリ…とか」



ベスティアの後に、凛子と瞬平、ユーテキが思い思いに意見を口にする。

確かに、ユディーヌがもしもアンギュロス族の生き残りだとすれば、どうして自分の家族や仲間を滅ぼしたイシュトヴァーンに付き従うのか…

ザウバーも腕組みをしながら、ユーテキの意見を否定する。


「――それはないな。ユディーヌ審問官は、幼い頃から皇帝に付き従っていたそうだ…それも、皇帝はユディーヌ審問官の命の恩人だとか」

「「「命の恩人?」」」

「結構有名な話だよ。物心もつかないほど幼い頃に、皇帝に命を救われ…それ以来絶対の忠誠を誓っている。……もしかすれば、自分の部族を滅ぼした犯人だと知らない可能性もあるわけだ」


更にはイーヴリンも溜息混じりに語る。

…そもそも、帝国軍が攻めてきたと言う事実は、彼女の祖母から聞いた。

イーヴリンのように事件の詳細を知る大人が傍にいれば、帝国を憎む気持ちも多少は芽生え、一族の復興と使命を優先させていたのだろうが…

そうでなければ、理由(わけ)も分からないまま馬車に乗せられ、家族と離れ離れになって暮らさざるを得なくなる。当然、一族を滅ぼしたのが誰かも分からず。

下手をすれば、一生その真実に辿り着けない可能性もあるだろう。山賊などの仕業だと思えなくもないのだから。

ミカは少し考えた後、こんなことをイーヴリンに尋ねていた。


「……ねぇイヴ、アンギュロスの遺跡に行けばユディーヌ審問官に会えるんだよね?」

「そうらしいけど…ミカ、あんたまさか」

「ユディーヌ審問官がもしアンギュロス族だとしたら、真実を話してあげないと!自分の家族や一族を滅ぼされたのに、皇帝に騙されて利用されて…そんなの放っておけない!!」

「そっか。真実を知ればきっと、ユディーヌ審問官も帝国と戦う力になってくれるかも!」




「…それはまず、無理だろうな。それにミカ、お前の今の言葉は……自分の家族を殺した特務機関Gを纏める人間を、受け入れるということだぞ」


ユーテキとミカの言葉を、ザウバーが一刀両断する。

その上ザウバーは、「俺なら無理だな」と感情を押し殺したような声で言葉を付け加えていた。

ミカも特務機関Gのことを…自分の家族を殺したグラントのことを思い出し、拳を握り締める。

だが…

彼女は首を横に振りながら、言い放つ。


「……確かにそうかもしれない、だけど、何も知らないで皇帝に利用され続けるなんて…駄目に決まってる!真実だけでも、教えてあげたいの」

「真実を教えてどうする。…ユディーヌ審問官はイシュトヴァーン皇帝に深い忠誠を誓っている、それを簡単に覆せるものか」

「だけど!」

「――はいはい、議論はそこまで。とにかく、一番重要なのは【ユディーヌ審問官は本当にアンギュロス族の生き残りなのか】。……それを確かめるために行くのは悪いことじゃない」


ミカとザウバーの議論を止めるべく、晴人が両手で待ったをかける。

しかし晴人も、意見としてはほぼザウバー寄り。

ユディーヌ審問官がそう簡単に、イシュトヴァーンと敵対する位置につけるはずがない…物心もつかないうちから傍に仕えていたのなら、尚更だ。

そして、真実を知ったとして…それを受け入れられるのかどうか。

ミカ自身ですら「ウェルテクス一族は帝国によって謀殺された」と言う事実を知って、ショックを受けていたのだ…

ユディーヌの場合はアンギュロス族の人間として暮らしていた時間と、イシュトヴァーンの元にいた時間に大きな差がありすぎる。真実を認めるのは、難しいだろう。


「だけど、…ユディーヌ審問官は敵でもあるんだ。アンギュロスの遺跡で戦うことも、念頭に置かないと……今度は味方の視力を奪われるだけじゃすまないぞ」

「……うん、分かってる。真実を話すだけだもの、何も知らないでいるよりは…知ったほうが、ユディーヌ審問官のためだと思うから」






〜〜〜






その頃…

ルルとポポは、エミィやリノンの村の子供達と一緒に遊び回っていた。

今は、皆で達磨さんが転んだをしている最中。

そんな彼女達の楽しそうな姿を見ながら、バーガーはシルエラと話していた。


「…エミィは明るく育ってるな」

「あなたに似たのかしら。とにかく元気だったわ」

「そうか。……シルエラ、時々でいいから…エミィの顔を見に来てもいいか」

「いいけど、そんなこと言っていいの?これから帝都に戻って戦うんでしょ、死亡フラグみたいなの立てて大丈夫かしら」


苦笑交じりに皮肉を言うシルエラに、「おいおい」とバーガーは頭を抱える。

確かに、若干死亡フラグみたいなことは言ったが。

…そもそもバーガーの存在自体、漫画ではなかったことにされているのに…

というメタ発言はさておき、シルエラはフラグを連発するような言葉をバーガーに言い放つ。


「…その約束、絶対よ。破ったりしたら、今度こそ許さないんだから。エミィのためにも、必ず生きて帰ってきて」

「お、おい…シルエラ?」

「そうだわ、総てが終わって、またこの村に来たら…何がしたい?」

「カレーが食べたい…ってちょっと待てシルエラ。……さっきから、なんでフラグがバリバリダーなことを…」

「あら。フラグを立てまくれば、一周回って生き残ると思ったんだけど」

「そうかもしれねぇけどな?――むしろ今、結局生き残れなかったパターンを出さなかったか?神々の砲台の引き金になったパターンを言わなかったか!?」

「大丈夫よ、あなたバトスピしないじゃない」

「そりゃあ確かにしないけどよ!今はもうソードアイズだぞ、何年前のネタ引きずってんだ!!」



そんな漫才をしながらも…

最終的には互いに笑いあい、そんな二人を見てポポは「楽しそうポポ」と微笑ましげに見ている。

それはルルやエミィも同じで、ルルは彼女にバーガーについて尋ねていた。


「ねえエミィちゃん、おじちゃんのこと好き?」

「うん!エミィのこと助けてくれたし、面白いし、お母さんもおじちゃんといると楽しそうだもん」

「そうなんだぁ」

「エミィのお父さんも、おじちゃんみたいな人だったらいいなあ」

「…いや、実際そうなムグムグ」

「ポポー、静かにしてないと駄目なのー!」


余計なことを言おうとしたポポの口を、ルルが慌てて塞ぐ。

そんな彼女達に、エミィは首を傾げながらも、気にせず遊びを続けていた。

そうしていると、シルエラの家からベスティアが宝珠を持って出てくる。

どうやら、ガナドールの集落に戻り…更にそのままグリュッグ国に向かうつもりなのだろう。

ベスティアはシルエラに気付き、彼女もまたベスティアに気付くと、深く頭を下げていた。


「…申し訳ありません、大事な宝珠を盗んでしまって」

「いや、構わない。それに、考えようによっては…あなたは聖海騎士団に奪われる前に、ガナドールの宝珠を保護してくれたということにもなる」

「ベスティアさん」

「あなたは我々の大事な宝を守った勇敢な女性、そういうことにしておこうではないか」


ベスティアはベスティアなりに、シルエラを庇おうとしているのだろう。

それに、彼女がいなければ今頃、聖海騎士団がガナドールの宝珠を奪っていたのも事実…

他の仲間に説明するのに、これ以上の【いい言い訳】はない。

シルエラは彼女の優しさに感謝しつつ、去っていくベスティアにもう一度頭を下げる。

バーガーも、ベスティアが今回の件で色々と考え方を変えてくれたのだろうと思うと、感慨深く思っていた。




暫くして、ルル達も家に戻る。

エミィは子供達とまだ遊んでいるので、込み入った話を聞かなくていい…

そしてミカ達はルルとバーガーに『アンギュロスの遺跡に向かう』ことを話し、2人もそれでいいと納得してくれた。

ベスティアがグリュッグ国にいるウォルフガング達と合流するには、3日ほど掛かる…

その間にできることは、やっておきたい。

問題はベックフォード達との合流をどうするか、だが…それに関しては、パヴェルから通信JMによる連絡が入ってきた。


『話は総て、聞かせてもらいました』

「「「うわっ!?」」」

「…いきなりだな」

「あの人、どっかの紅い龍を使役する鉄板顔ライダーなんじゃない…?」

「俺達の情報、簡単に掴んでるしな」

『初代紅いドラゴンライダーはさておき。……それなら、私達とスムーズに合流するための“おつかい”をしてくれる人間を、そちらに寄越します。用事が終わり次第、あなた達の元に送りますから遠慮なく』


そう言って、パヴェルからの通信は一方的に切れる。

…この人も大概、局地的暴風だな…

ユーテキはそんなことを思いつつも、“おつかい”とはどういう意味なのだろう。

そう考えていると、ルルがあっさりと答えてくれた。


「多分、転移魔法を使える人だと思うの。範囲はその人の魔力と、運ぶ人数によって変わるけど…ルルもいればパヴェル様達と合流するのはすぐなの!」

「あ、そういうことか」

「移動面も問題なくなったし…早速、アンギュロスの遺跡に行こう!」

「「「おー!」」」






〜〜〜






リーリエリヒト帝国。

そこでは、ダティーバ大陸に向かったまま戻ってこないユディーヌを心配している、グラントの姿があった。

…一体あの方は何をしているんだ

…ノーマンとグリエルモからの連絡も途絶えた以上、特務機関Gを再編しなくてはならないのに

特務機関Gは暗殺技術に長けた人間を選出し、更にそのトップの実力者を隊長に据える。

グラントはまさにその隊長であり、貴重な部下を4人も失った以上、次のメンバーを選ばなければならない。

そして、それを任命するのは…上司でもあるユディーヌ審問官に決定権がある。

そんな心配事をしていると、彼の元にシラスが現れる。


「おや、グラント殿。こんな所にいましたか」

「…シラス宰相、何の用だ。言っておくが、この間のような雑務は帝国軍にでも頼んでもらおうか」

「そうではありません。――ユディーヌ審問官を追いかけなくてよろしいのですかな?」

「その必要はない。あの方はかなりの実力をお持ちの方だからな」


ユディーヌ審問官は、体全体を覆い隠すほどのローブを身に纏っている。

しかし、槍を振るえばかなりの腕前で…その身軽さは、動きにくいローブを着ている人間とは思えないほど。

グラントもユディーヌの実力は高く買っており、心配は要らないと思っている。

だが、そんな彼にシラスはこんなことを話していた。



「…相手が、ウェルテクスの娘や異国の呪術者……ならびに、そのどれとも違う…妙な力を持つ男だとしても、ですかな?」

「……」

「特にその男のほうは、紅と蒼の光を放つ不思議な腕を持っているとか。私も猊下も、その男の力はアムニスフィールドの力を全解放するための【鍵】ではないのかと疑っております」

「…猊下はラディスの予言を実現するために、異教徒達を殲滅しようとしているはずだが?」


おっと失礼、とシラスは軽く謝罪する。

…イシュトヴァーンの心は既に、『全世界をラディス教による統一をする』ことから『【神の剣】の力を使い、己がラディスの神の子となる』ことに傾いている。

つまりは、自分をラディスの神と言える存在…すなわち、総ての世界を統べる者になろうとしているのだ。

人間の心は容易い、とシラスは思いながらも、イシュトヴァーンが世界の支配に向けて全力を注ぎ、そのために必要なウェルテクス社の技術を高く買っているのも事実。

シラスは自分の研究がしやすくなり、代わりに、帝国軍や聖海騎士団と言った者達は蔑ろにされやすい。


「とにかく、猊下の目的を達成するためにも、その男の力は必要なのです。……そこであなたには、オッドアイの男を捕まえてきてもらいたい」

「…」

「おや、信用しておりませんな。不安でしたら、ウェルテクス社の開発した武器を貸しましょう…それと同時に、スムーズに移動を行うための“手段”も。……当然、他言してはならないものなので、あなたには黙っていてもらう必要があるわけですが」

「……まあいい。私自身、そろそろユディーヌ様を呼び戻したいところだったのでな、だがシラス殿…あなたの命令で動くのは、これで最後だ」

「構いませんよ。…さあ、こちらです」

「……」





一方で、ラディス大聖堂の地下。




そこでは、イシュトヴァーン皇帝の教育係を勤めた人物でもある、ジュリアス枢機卿が息を荒げていた。

彼は1週間も前から、大聖堂の地下にある一室で床に伏せている…

表向きでは流行り病と言うことにされていたが、何者かが彼の飲み水に毒を盛り、それが原因で病になったそうだ。

その命は、もはや尽きようとしていた。

そんな彼の部屋に、ルーク枢機卿が入ってくる。


「…お加減はいかがですかな、ジュリアス枢機卿」

「ルーク…枢機卿、……もはや、私は…命が残されていない。……せめて、私の手で――――の、――を…見つけて…差し上げたかった、のだが」

「ご安心を。ジュリアス枢機卿…後は私が、引き継ぎましょう。……それらしき人間を、つい最近知りました」

「お、…おぉ…本当ですか、……よかった…これで、……彼も…」

「……しかし、何故そこまであの者に肩入れを?」


ルーク枢機卿は病で弱り果てたジュリアス枢機卿を見ながら、尋ねている。

半年ほど前から、ジュリアス枢機卿はラディス教を広めることやイシュトヴァーン皇帝の傍で付き従うだけでなく、それとは別の用事でこの大聖堂の地下に入り浸っていた。

最初にその話を聞いたときは、ルーク枢機卿も驚きを隠せなかったが…

“それ”に肩入れする理由までは聞いたことがないためか、ジュリアス枢機卿が自らに課した【使命】を果たせないことを知り、事切れる前に聞こうと思ったのだ。



「……彼は…ラディスの神によって守られている。だからこそ、……あの戦いを…一人……」

「…」

「私は…ラディス教のために、人生の総てを捧げてきました…彼は、ラディス神の奇跡を……私に見せてくれた。だからこそ…何としても……」

「ラディスの神の加護が…彼にあると、本当にお思いで?」

「……えぇ…彼は、ラディスの神の祝福を、受けている。――今となっては…イシュトヴァーン猊下は、選ばれた者ではなかった…と思えるほどに」

「――どういう意味ですか?」


ルーク枢機卿の問いに、ジュリアス枢機卿は静かに話し始めた。

…自らの病の原因を。

…そして、イシュトヴァーンがラディス教の教義を逸脱するような行動に出ていることを。


「……私は、猊下に毒を飲まされたのだ。――前々から、あの方のやり方に対して色々と言っておりましたので…厄介払いも、兼ねていたのでしょう……」

「猊下が…そのようなことを?しかし、何故…」

「ルーク枢機卿。…もう一つ、お願いしても宜しいですかな…」

「…何ですか?」

「あの方は…アムニスフィールドの力を利用した、兵器を使って…世界を支配しようとしている。……私はそれを偶然聞いてしまい、…今のような姿になっているのです」

「アムニスフィールドの……ならば、あの話は本当だったのか…」




『帝国は今、他でもないアムニスフィールドの力を使って…たくさんの人々を殺す兵器を作り上げているんです』

『同時にそれは、あなたがた聖海騎士団が守るべきアムニスフィールドを破壊している』

最初にその話を聞いたルーク枢機卿は、とても信じられなかった。

一度は自分に嘘をついているようにも思ったが、現にウェルスの町上空のアムニスフィールドが未だにヒビ割れている状態であることを思い出し…

半信半疑ながらも、事の真相を確かめようとイシュトヴァーンに謁見を申し出ようとしていた。


「…頼みます、ルー…枢機……、…私の代わりに、猊下を…お止め……」


そう言い残し、ジュリアス枢機卿の命のともし火は…消えた。

ルーク枢機卿は彼の瞼を静かに閉じさせながら、黙祷を捧げる。

それと同時に、自分はこれからどうすればいいのか、迷いつつもあった。

未だにイシュトヴァーンがラディス教を捨て、世界を支配する野望に駆られていることに疑問を感じていた。

もしも、そのためにアムニスフィールドを利用しているのだとしたら。



『本当にアムニスフィールドの…ラディス教の、ルキナのことを考えているのなら……少し考えていただけませんか』


『今のラディス教の在り方と、これから聖海騎士団がどうあるべきかを』



――その言葉を思い出したルーク枢機卿は、「そうだ」と思い直す。

自分はラディス神に使える教徒、迷う必要などない。

皇帝猊下がラディス教を逸脱し、そのためにラディス神から贈られしアムニスフィールドを汚すようなことをしているのだとすれば

…彼の身の在り方、そして、これからの聖海騎士団やラディス教の在り方は……決まっていた。


「ラディスの教徒はラディス神の忠実な僕、聖海騎士団はラディスの神より賜ったアムニスフィールドを守る剣、――すべきことは…ただ一つ」






***




ルーク枢機卿の仲間フラグクルー?

な、38話。

あれ…おかしいな、ソウセイさん影の主人公になってるぞ…?

でも実際、あの説得ってミカ達だと聞き入れられなかった可能性が高いんですよね。

その理由は、まあ5章になってからで。

……と言っても、根本的な理由としては、ミカ達ってラディス教というか聖海騎士団にとっては、反逆罪ってレベルではないことしちゃってますしw

その点ソウセイは、――聖海騎士団には何もしてないもんな…


明かされるイヴさんの過去。

17年前の真相。

ミカファールって名前は「アンギュロスの信仰する神様の名前何にしよう」→「アンギュロスじゃ安直だしな」→「ララファエルかミカファールにしよう」で決まりましたw

ちなみに、ミカファールもララファエルもバトスピの天使系Xレア。

なので…

ミカとは何の関係もないです。多分。

なお、ミカの名前って「ミカエル」と言う神様から捩って名付けられたみたいですね(公式)。



シルエラさんによる死亡フラグの乱立w

あんたはバーガーさんを生かしたいのか殺したいのか、どっちなんだww

あぁでも、「ライフで受ける」とか「お前がいなくなって、これでも結構ダメージあったんだぞ」的な会話がないからいいのか…?

決定的になるのは、「引き金は引くものじゃない、なるものだったんだ」とか「ありがとうございました、いいバトルでした」ですけど。

…あの最終回は、いい意味で想定外だった。そしてむしろスタッフスゲェと思った。

こういうブラックなラストって、今のご時勢あんまりないですからねー。


そしてベスティアさん、いい人になったな…

いや、これ実はフィルギニア公爵にも言えるんですけど、……何人かのキャラは原典より美化されてるんですよね…

原典と違って何故か死んでいる人(シェリー、ジークフリード、ジュリアス)もいますけどw

記憶で書いているからなのか、そうなのか。

何でこっちのベスティアさん、大事な宝珠盗んだシルエラに対して「聖海騎士団から守ってくれたことにする」ってカッコいいこと言えるんだw


敵も敵でフラグを立ててきたなw

シラスも本格的に怪しくなってきましたし…

グラントは下手すれば退場しかねない勢いですし…

なんか早速新キャラ出てきて死んでますし…

ルーク枢機卿も、真相を知って死亡フラグ臭漂ってますし…

ところでソウセイって、何気にラディス教と因縁強い気がする。

元隊長でもあるバーガーほどじゃないと思いますが。




次回は…

久々に誰かが離脱します。いや、多分バレバレでしょうが。