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タイトル未設定 - Magic56:再誕

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――それは死闘というよりは、泥仕合だった



自分と同じ姿の影。

自分と同じタイミングで技を放ってくる存在。

それでいて、それの先を行こうとしてもまるで“その手”を読んでいたかのように、更に先を行く。

思った以上に強敵だった。……死神、と言うのは。

死者の魂を、因果の狭間の先…輪廻転生の理まで送り届けなければならない死神は、こうやって魂の転生を待たずに生き返ろうとする魂を食い止めなければならない。

だからこそ死神は、最低でもその魂の生前の実力ほど強くなければならないのだ。そうでなければ、体を失った魂が現世に蔓延して、次の命に宿すための魂が無くなってしまう可能性がある。


生命の誕生と言うのは、所謂魂のリサイクルによってなりたっている。

『生まれ変わり』『前世』と言う言葉を耳にすることがあるだろうが、それは間違いではない。

魂は無限に生み出されているわけではない。決まった数の魂をリサイクルして、現世の新しい器に宿す…それが【輪廻転生の理】なのだ。

だからこそ、魂は一つも無駄に出来ない。ただでさえこの世に未練を残して現世に留まっている魂…所謂“自縛霊”もいると言うのに、その数を余計に増やすわけにはいかないのだ。

死神が強いのはそういった理由。

そして、現世に戻ろうとする魂と同じ姿を取るのは…相手の攻撃の癖・思考回路などを読み取り、常に一手先を行くようにするため。

それに…『自分のことは自分がよく知っている』と言うのも、あながち間違いではないだろう。

自分の使える技、術…それがどんな技なのか、その効力はどういったものなのか……死神は知らない。だが、現世に戻ろうとする魂は知っている。

そういった不利をなくすためにも、相手の姿をコピーして術技に関する知識を得る必要があるのだ。



…だからこそ、泥仕合になりやすい。

傍目から見れば自分VS自分。

同じタイミングで攻撃を仕掛けてきたかと思えば、自分の一手先を行き効率的に攻撃を決めてくる…

そんな死神相手に、ザウバーも苦戦していた。

しかし、そうそう時間を掛けてはいられない。

『レイズデッド使用後』、この因果の狭間で49時間…現世に至っては3時間以内に死神を倒して門をくぐらなければ、生き返ることは出来ないのだ。

既に戦い始めてかなりの時間が経過しているが…どう足掻いても死神に勝てる気がしない。

一旦退いて態勢を整えるため、ザウバーは現世への門から離れる。

ある一定の距離を離せば死神も深追いはしないのか、安全圏で体を休めながら考えていた。


「…もう時間がないというのに…どうすればいいんだ……!」

「噂には聞いていたけれど、やっぱり厄介だね。死神って言うのは」

「……ところで、何でこっちで49時間なんだ。やけに中途半端だが」

「中途半端、ってわけじゃないよ?ほら、よく言うじゃないか…【死者の魂は49日まで】って。死後49日経過後、大抵の魂は未練を断ち切って輪廻転生の理に入る…49日って言うのは、死者が心の整理をつけるための時間制限。そういうのに倣っているんじゃないかな」


ああ、成程…と適当に返すザウバー。

そして…ふと彼は、疑問に感じていた。

少なくともここにいるサウルは、サウル・ウェルテクスのアンドロイド…自分達の知っているサウルだ。

この場所は、生と死が入り混じる因果の狭間…

どうしてこの因果の狭間に、サウルまで存在しているのか?

……そう考えた瞬間、ザウバーは全てを理解した。


「……お前、もしかして、既に」

「…まあ、それが生と死を裏返す禁断の術……レイズデッドだからね」

「…お前」

「言っておくけど、僕は生き返る気はないよ。と言うか、体がもうない以上は戻れないんだけれど」

「体が…もう、ないだと?」

「レイズデッドによる魂の呼び戻しを行った瞬間、僕の体は崩壊した。……元々、“彼女”と違って完璧な製法で造られてはいないから…こうなる運命だったけどね」




――サウルは既に、この世の者ではない

それも、元々の肉体を失って。

しかしそれを知っていた上で、サウルはレイズデッドを行いザウバーを組成させようとしていた。

どうしてそこまでするのか…

そんな疑問を口にすると、サウルはくすりと笑いながら話をしていた。


「…さっきも言ったとおり、君には守るべきものがある…生きる理由がある」

「お前を犠牲にしてまで生きろと言うのか?」

「犠牲、って言葉は使ってもらいたくないな。僕は“彼女” …初代ウェルテクス一族の愛した女性のために造られた。その女性の子孫が、君やミカちゃん」

「…」

「でもそういった製作者の都合とか関係なく、僕はただ純粋に、自分としてできることを選んだ。何もしなくても崩壊する運命だったのなら、せめて君達のためにこの命を使いたかった。……僕個人の意思としてね」


そこまで言われてしまえば、ザウバーにはもうどうすることも出来なかった。

いや、既に手遅れなのだから仕方ないのだが。

サウルは犠牲になるために甦らせようとしたのではなく、彼自身の意思で選んだ行為。

どの道サウルの体は長く持たなかった以上、『自分が最後に、誰かのために出来ること』を選んだだけの話…ただ、誰かの死の上に成り立つような犠牲とは違う。

…犠牲という安直な言葉を使っては、いけなかったのだ。


「僕は望んで犠牲になるわけじゃない。自分が後悔しないために、自分の体の状態を考えて、自分が考えて自分で決めた…決断。希望」

「……」

「ステイアを何としても止めなければならない。だけど、僕ではそれは出来なかった…だけど君には、君達には出来る。君達はルキナに残された最後の希望であって、僕の最後の希望でもある」

「だが、ステイアというのは話を聞く限り、俺達が束になっても敵わない相手かもしれないんだぞ」

「かもしれない。けれど、諦めないで希望を持ち続ければ…未来を望み続ければ、絶望の化身と化してしまったステイア皆を……救い出せる。絶望の反対は希望、そして絶望や希望の先にあるのは……自分達の力で切り開くべき未来。前を向いて生きなければならないのは、絶望していても希望を持っていても同じことじゃないか」



相変わらずの長話。

だが、サウルの言葉にはどこか、納得できる節があった。

確かにステイアの実力は…ザウバーは直接は知らないものの、ルキナ中を焼くほどのものと考えるとかなりの力。

怒りや悲しみ、失望といった絶望の触れ幅が大きすぎるのだ。

しかし、絶望に立ち向かう術をザウバーや…ミカ達。そして、他でもない晴人達は知っている。

――【希望】

どんなにちっぽけでも、希望を持ち続ければステイアの絶望を救えるかもしれない。


「…そうか、そうだな。……だが俺は自分が希望になるつもりでは生き返らない、俺は…ミカやユーテキ達、そして晴人達……それらの希望を守るために、この刀を振るう」

「…」

「俺は…お前の分まで、希望を守るための刃になってやる。――そのためにも、まずは奴に勝つ必要がある」


ザウバーはそう言いながら、門の前で待つ死神を見据える。

しかし、殆どの手は尽くした。

【識閾命突覇】も同じ技で防がれてしまった以上、まともに使えないだろう。

せめて、相手の情報にない技が使えれば…

そんなことを思っていると、ふと何かを思い出したかのように懐を漁る。

そして…出てきたのは、シンボルストーンを隠すためにJMハンターズギルドに向かった際、ルピートから受け取った……JMだ。

深海のように綺麗な蒼は、――ザウバーにとってこれ以上にない希望となっていた。


「……そうか、この手があったか…!」

「何か掴めたみたいだね、死神を倒すヒントが」

「ああ。…親父と…親父の我侭に付き合わされたであろう晴人には、感謝しないとな」





そう言いながら、再び門の前に近づくザウバー。

それを見た死神は再び攻撃の構えを取り、出方を伺う。

2つの影は同時に走り出すと、同時に刀を振るい始め、そのまま激しい剣戟が再開する。

やはり攻撃の速度、方向、全てが瓜二つ。

間合いを取る距離もその判断も同じではあるが、戦術面についてはやはり相手の手の内を完全に知り尽くした上で先を行ける死神のほうが有利。

だが、ザウバーには一発逆転の切り札があった。

正直それがどんなものなのかは、使わなければ分からない…だが、その『使わなければ分からない』がこの圧倒的不利な状況を覆せる唯一の手段となる。


「親父、晴人、…ミカ……力を貸してくれ。――【靱哭無銘剣】ッ!」

『!』


先程ジェネレーターにセットしたばかりのJMが、強く輝く。

まるで分身を出したかのような速さで相手に切りかかり、高速の刃を連続で叩き込む技だ。

死神は何度も言われているように、相手の考えを理解し、一手先に攻撃できる。

しかしそれは、相手の出す技や行動を“相手自身が把握できている”場合。

…ザウバーは先程出したJM技がどのようなものかは、知らなかった。

何が起こるのか分からない…それは一歩間違えば諸刃の剣ではあるが、相手を完全にコピー『している』はずの死神にとっては完全な予測外となる。

自分の情報にない技を出され、死神の予測が狂い始めていた。

更に彼は自分の姿を見て驚く。右足の膝をつくようにして、相手を見ていることに。

このまま押し切れば、そう思ったザウバーはすぐさま返す刀で相手を攻撃するが…

――その前に、死神が姿を消していた。


「!?…どういうことだ」

『……我がこの任に就いて以来、初めて膝をついた…それを評価したまでのこと』



声がザウバーの頭上から降り、急いで見上げると…そこにいたのは黒い装束の何者か。

話の内容からして先程戦った死神だろう、とザウバーは思っていた。

その一方で、「評価」とはどういうことなのか尋ねる。


「評価…それはどういう意味だ?」

『言葉通りの意味だ。我に膝をつかせたのはお前が初めてだ、…その実力と不屈の精神を認めた。それだけだ』

「つまり、…俺を現世に還すということか…?」

『そうだ。……そもそもこの門を通って生き返ろうとする魂など、現世に未練があり…その大半が自己中心的なものばかりであった。イシュトヴァーンと言う男も…その1人だったか』

「……」

『だが、お前の場合…未練は未練でも自分の守るべきもの、そして自分の代わりに輪廻転生の理に魂を送ったもののために現世へ帰ろうとしていた。確か、希望を守る…だったか』


死神の話では…

ルピートから受け取っていたJMで不意を突かれていたにしても、剣を交わすうちにザウバーは生き返らせてもさほど問題ないと感じつつあったそうだ。

その魂を宿す器が短命なのもあるだろうが、これまで自分のことしか考えずに現世に戻ろうとしていた邪な魂とは違い…ザウバーは自分の守るべきもののために戻ろうとしていた。

自分に全てを託したサウルの希望を叶えるため、自分にとっての希望を守るため、そして……ステイアの絶望を救うため。


「お前は知っているのか?ステイアを」

『……ステイアはルキナを愛し、ルキナのために力を尽くした者達。しかし、ルキナを愛するがあまり…死んだ後も魂がルキナに留まってしまった。当然、回収専門の死神が魂の回収を試みても……この因果の狭間に送ることさえ出来なかった』

「そこまでして、ルキナに留まっている…だと?」

『奴らはルキナを守るために、アムニスフィールドと言う希望を造った。彼らにとってルキナとは愛すべき星…そのルキナを隕石群で失わせまいと、そして自分達の未来を生きる命のために残すべきと考え、そうしたのだ』

「――だが、そのアムニスフィールドを…【ステイア】の希望を、俺達……今を生きる人間が壊した」

『勿論全ての人間がそうでないことは、お前を見れば分かる。だがステイアにとっては似たようなものだ、奴らはアムニスフィールドを壊した人類に怒り、絶望し、……怨念に近い形で甦ったのだ。絶望によって誕生した異形…ファントムとなってな』




それほどまでに、【ステイア】の怒りと執念は凄まじかったのだろう。

既に肉体のない魂だけの存在でありながら、自分達がルキナを、そしてそこに生きる人類を守るために造ったアムニスフィールド…それを破壊した今の人間に怒り、悲しみ、絶望した。

その感情を糧に【ステイア】は巨大なファントムとして甦り、人類に制裁を与えている。

その過程において新しいファントムが誕生したとしても、愚かな人類から誕生したそのファントムも含めて滅ぼす。

…しかしそれほど長く表の世界で行動できないのは、やはり肉体のない魂から生まれたファントムだから…であろう。

だからこそステイアは自らの力で作り出した【界域】に戻る。エミルビス塔の戦いで、ミカ達を消さず撤退したのもそのためだ。

魂が集まり絶望の力でファントムとなるほどの、ルキナへの愛。

そんな彼らに共感する部分があるのか、ザウバーは頷く。


「……分からなくはない。俺も…何だかんだで、ファントムを生み出した状態で生きていたからな。…だが、共感は出来ても同意は出来ない。俺には大事な仲間が、家族がいる…それを守るためならば、どんな理由があったとしても…斬る」

『人間はみな、そういうものだ。自分自身のエゴのために何かを犠牲にする…それは永遠不変の連鎖、魂に刻み込まれた因果なのだ』

「…確かに」

『それよりも、――戻るのなら早く行け。我に勝ったのに時間切れで戻れない、と言う滑稽な道化師(ピエロ)になりたくなければな』


死神に言われ、ザウバーはようやく今すべきことを思い出す。

…何をするにしても、まずはあの扉をくぐること…

その際サウルのことが気になり振り返ろうとしたが、――その姿はもうどこにもなかった。

せめて最後に別れの言葉でもかけてやればよかった。

そう思いながらも、彼は自らの希望を守るために…扉を抜ける。






〜〜〜






そして――




「……ザウ、バー?」


コヨミは自分を敵の攻撃から守った人物の顔を見て、驚きを隠せない。

それはそうだ。

その人物は本来なら既に死んでいるはずの人物で、生き返る術など一つしかないのだから。

それはウィザード・ウォータースタイルやミカ達も同様。

人物――ザウバーはコヨミ達のほうを振り返りながら、声を掛ける。


「……間に合ったようだな」

「本当に…ザウバーなの?」

「い、いいいいいいいいいい…生きて……生きてたんですね!?」

「嘘…でも、確かザウバーはあの時…」

「その話は後だ。状況自体はまだ掴めていないが…とにかく、この場を切り抜けることが先決なのは間違いないはずだ」

「…確かにな!」


ザウバーに同意する形で、バーガーが拳をグラキエスに叩きつける。

現在残っているファントムは、グラキエス・アクア・テネブラエ・ウェントス・そしてオリジン…

数は少なくなっているとはいえ、気が抜けない状況に変わりはない。

ミカはセイバーでアクアを追い詰めつつ、援護に来たイーヴリンと共に連携攻撃を放つ。

素早い突きでミカがアクアを攻撃し、イーヴリンはその背後から迫りミカが右に避けた瞬間にアクアに“月長皇”と呼ばれる三段突きの技を放つ。

最後の一撃に込められた波動でアクアは吹っ飛ばされ、それを狙っていたミカの“疾空狼焔衝”の連続攻撃によってアクアは完全に倒されてしまっていた。


『そんな…この、この私がぁぁぁぁぁ!!』

「…よし!」

「まだだよミカ、まだ敵は残っている!」

「そうね、…私は晴人の援護に行く!イヴは、ルルとレヴィーを援護して!!」

「OK、任せな!」



その間にも、ユーテキとウェントスの戦いも激しさを増していく。

ウェントスはウィザード・ハリケーンスタイルのように暴風を纏いながら飛行するため、攻撃が届く前に銃弾が打ち落とされてしまう。

こうなったら、とユーテキは銃口をウェントスよりも高い場所に向け、そこに銃弾を放つ。

自棄になったのかと油断するウェントスであったが、――これがユーテキの狙いだった。

銃弾は上空で分散し、豪雨のように降り注ぎ…唯一の無風地帯とも言えるウェントスの頭上に大量に落とされる。

“ディープステージ”

かなりの広範囲を攻撃できる射撃技で、分散されているためか殆どの銃弾は暴風によって弾かれてしまうが、ウェントスの頭上を攻撃できるのはこれしかない。

更に、攻撃を受けたことによってウェントスを守っていた風が解除され、無残に落ちていく。


『うわああああ!?』

「よし…今だ!“スパイラルショット”!!」


両手の銃から放たれた光線が螺旋を描くようにして、ウェントスに放たれる。

それを直撃したウェントスは、あっけなく撃破…

一方で、テネブラエとルル・レヴィーの戦いはイーヴリンの参加によって大きく彼らに有利となる。

ルルの魔法で足止めしている間にレヴィーとイーヴリンの攻撃が決まり、テネブラエは「こうなれば」とルルの影に入り込む。

テネブラエは影から影へと移動することが出来るファントム。

だからか…ルルの影に入ったからと言って、そこから出てくるとは思えない。

一体どこから…とレヴィーが警戒していると、彼の背後にあった木陰からテネブラエが切りかかってくる。


「ぐうっ!?」

『ふふ…お馬鹿さんですね』

「馬鹿なのは…どっちだろうなぁ!」

『何ッ!?』


テネブラエが振り返ると、そこにいたのは“ホーリーランス”を詠唱済みのバーガー。

光の術を使えるのは現状、彼以外にはいない。

ライサは回復の際に癒しの光を与えることが出来るが、光の攻撃術ではない。ランドドラゴンに呼応した覚醒である以上は、地属性と言う扱いなのだろう。

だからこそ光が苦手なテネブラエは、バーガーとまともに相手することを避けていた。ルーメンと組んでいたのも、光の術を吸収する能力があったからだ。

だが、バーガーがルーメンを倒した後はすぐグラキエスが相手をしていたはずなのに。

そう思っていると、【乱入者】とも言える男の存在に気付き、振り返る。

――するとそこでは、ザウバーが既にグラキエスを撃破する姿が見えていた。


『なっ…!』

「相手が悪かったな。あいつ、氷のファントムには色々とあって…『俺が相手をする』つったもんだから、任せてきたんだ。――これで終わりにしようぜ!」

『そんな…これが、……絶望なのね…』




残されたのはオリジンただ一人。

せっかく増やしたファントムを失っても、オリジンは顔色一つ変えない…

恐らく、ステイアの暴走によって世界のどこかにいるゲートが絶望し、大量のファントムが生まれるからだろう。

その絶望を止める術は、ない。それこそ神の所業でしかないのだ。

ウィザードWDとミカ、更にウェントスを倒してそのまま合流したユーテキは一斉にオリジンに攻撃するが、効き目は薄い。

そうしていると、今度はバーガーとイーヴリン、ザウバーも攻撃に参加し、ルルは負傷したレヴィーの手当てをした後で援護に入る。


『無駄なことを…そこまでして守る価値がこの世界にあるとでも言うのか?』

「あるに…決まってるじゃない!」

「ここは、僕達の住む世界なんだ!僕達が守らないで……どうするんだよっ!!」

『その守るべき世界を破壊したのは、このルキナに住む人間達。その事実に変わりはない…だからこそ、【ステイア】は絶望し、魂の集合体となり…ファントムとなってまで、粛清しようとしている。違うか?』

「…確かに、人間は身勝手かもしれない。だけど!」

「そうじゃない人だって沢山いるの!アムニスフィールドのお陰で…笑顔で暮らしている人達がいる町を、ルル達は知ってるんだからあ!!」

「そうだ…それにルキナには、シルエラやエミィ…俺達にとっての大事な奴らが、今を必死に生きている!それを守らないわけにはいかねぇだろうが!!」


ミカやユーテキ、イーヴリンにルル、バーガーがオリジンと対峙しながら言い放つ。

だが…

オリジンは彼らの会話を聞いた上で、言い放つ。


『成程、お前達の言いたいことは分かった。だが………大事なことを忘れていないか?』

「大事なこと?」

『【ステイア】とはアムニスフィールドを造った研究者達の総称。そして、アムニスフィールドを造った理由は……自分達の愛するこの世界を守るため。当然その中には、――この世界に生きる者達も含まれる』

「「「!」」」

『お前達と同じだったのだ、【ステイア】は。ファントムと隕石…違いはあれど、強大なものに立ち向かい、それらからルキナを…ルキナに住む人間達を守るために戦った。お前達と同じ希望を持って、――その希望に裏切られたのだぞ?』



オリジンの言葉に、ミカ達は声を失う。

…彼の言うとおり、【ステイア】は自分達と何ら変わりなかったのだ。

『今を、そして未来を生きる人達のためにルキナを守りたい』

その気持ちがあったからこそ、彼らは協力してアムニスフィールドを作り上げ…そして、ルキナを守った。

しかし時間の流れは皮肉なもので、【ステイア】の存在は元々秘密裏にされていたこともあってか、どうしてアムニスフィールドが造られたのか…何のために存在しているのか、その理由は時が経つにつれて薄れていったのだ。

更に【ステイア】の有する技術を悪用されないため、隠れ蓑として作り上げた“ラディスの神”により…『ラディスの神が万能たるエネルギー源・アムニスフィールドを作り出した』として広く浸透してしまったため、真実を知るものなど誰もいなかった。

【ステイア】はアムニスフィールドの真実から遠ざけるべく、それを見越した上でラディスの神を騙ったのだが……結果として、そのラディスの神を祭るラディス教の関係者によって、アムニスフィールドは破壊されてしまった。ステイアの希望は、ステイアが守ろうとした人類によって砕かれてしまったのだ。

「自分達のしていることは、かつて【ステイア】がしていたことと同じ」と言われたミカ達の動きが止まるが、ザウバーとウィザードWDは尚も言い続ける。


「……迷うな。確かに俺達のしていることは【ステイア】と同じかもしれない、だが、今【ステイア】がしていることを肯定してしまえば…俺達に協力してくれた人達を、見殺しにするのと一緒だ」

「確かに…【ステイア】が怒る気持ちも痛いほど分かるさ。けれど、それでも戦わなくちゃいけないんだ…人は過ちを犯すけれど、その過ちから何も学ばないわけじゃない。その過ちを二度と起こさないように伝えていくのが…今を生き残った人達の使命だ。平和になった世界で、真実を知るミカ達がやっていかなくちゃいけないことなんだ」

「ザウバー、晴人…。……そうだよね、きっとお父さん達も、それを望んでるよね」

『…』

「確かに【ステイア】は間違っていないかもしれない。だけど、私にとってはやっぱり間違ってるよ…こんなやり方でルキナが平和になるなんて思えない、ルキナを守るために人間を消すなんて……絶対間違ってる!」

「そういうこと。――オリジン、俺達はもう迷わない…何があってもこの世界を守る。俺達はこの世界の希望になってみせる!これ以上の邪魔はさせない!!」

『愚かな。特にウェルテクスの娘…お前がそれを言える立場ではないと思うのだがな』



オリジンの言葉に、ユーテキは引っ掛かりを覚える。

――どうして、“ミカだけに”「言える立場じゃない」って言ったんだろう

――ウェルテクス一族の生き残りは、ザウバーもなのに

しかしそんな疑問を口にしている暇などない。

オリジンは瞬間移動を駆使して縦横無尽に飛び回り、攻撃がなかなか当てられない。

だったら、とばかりにユーテキはあるJMをジェネレーターにセットし、その力を発動させる。

すると、彼もまた瞬間移動するようにオリジンの周囲を取り囲み、狙いを定め、無数の光線を発射する。


「「「絶望を穿て!――【ファントムスナイパー】!!」」」

『くっ、だがその程度の攻撃で…』

「俺たちがいることを忘れちゃいないだろうな…【ペンタクライシス】!」

「【ブラッディルージュ】!」

「【靭哭無銘剣】!」

「行くよぉ、ポポ!……【ポポズジャッジメント】ぉ!!」

「「「いつもより多めに突撃するポポー!!」」」

『!』


ユーテキの攻撃に続く形で、バーガー達が攻撃を放つ。

その殆どが瞬間移動や分身を駆使した技で、ルルに至っては前にタフィーから貰ったJMをセットして、7対に分裂したポポがオリジンに襲い掛かる。

――広範囲に移動できる敵を相手にする時は、こちらも広範囲に及ぶ攻撃をすればいい。

現にオリジンは防戦一方で、障壁を出して防ぐしかない。

だが…

【ポポズジャッジメント】によって障壁が破られ、その中に飛び込む形でシアーズとなったミカが切りかかり、ウィザードWDも“スペシャル”リングによって呼び出したドラゴンの尾でオリジンを貫こうとする。


「……はああああああああっ!」

『がッ、』

「晴人!」

「分かっている、――これで最後だ……オリジン!」




鋭いドラゴンの尾の先端が、オリジンの胸にある第三の目を貫く。

だが、完全に貫かれる前に…オリジンは、ある未来を見ていた。


『――なんだ、どの道ワイズマンの野望は敗れ去るのか…は、はは……』

「オリジン…?」

『指輪の魔法使い。…お前は難儀な奴だ、お前もお前以外の魔法使いもワイズマンも、とんだ道化師(ピエロ)だ。その時が来るまで、頑張って“希望のために戦う”道化師を演じているんだな……』

「おい、それはどういう意味だ!……オリジン!!」


ウィザードWDが問いかけるも、その前にオリジンは完全に消滅する。

その後に残されたのは、彼が持っていた古代のJM…

オリジンの話が本当ならば、これを使えばミカの聖獣の力は今よりも格段に強くなる。

ステイアを倒せる希望が、見えてきたことになるのだ。

しかしこれは、この村に住むねこにん達のもの。

これを貰えるかどうかは彼ら次第と言ったところだろうか…ユーテキは頭を悩ませるも、ソウセイは「大丈夫ではないか」と話す。


「うーん…このJMがあればステイアに勝てるかもしれない。けど、これってこの村のものだしなぁ…」

「だったら、長老に直談判してみたらどうかな。一応こっちは村の危機を救ったわけでもあるし、ねこにん族は温厚でこんな隠れ里に住んでいるけど人間には好意的だと聞くから…頼んでみれば何とかなるかも」

「それに、積もる話もあるわけだしな。休憩がてらに、長老達に話をしてみようぜ」


ソウセイ、更にはバーガーの意見に誰もが賛成する。

オリジンを倒し、一筋の希望が見えたミカ達はネコマタ森を後にする…

しかし、オリジンの最期の言葉を聞いた晴人は、頭を悩ませる。

『道化師』

その言葉の意味はまったく分からない。だが、きっとオリジンの負け惜しみなのだと自分に言い聞かせながら、その言葉を記憶の片隅に追いやる。

――その言葉の意味が今後、自分の世界の戦いの中で分かっていくことになるとは、微塵も思わずに。






***




Ωイグニッション(イーヴリンのJM技の1つ)ェ…

まさかのガリナ(インフィニティーがいなかったため覚醒できなかった雷・光の聖獣)ルートになるなんて……

ポポズジャッジメントですら出たのに!


ま、泥仕合になっちゃいますよねー。

と言うか、ならないとおかしいw

けれども、前々から(その漢字の読みの難しさから)ネタにされていた靭哭無銘剣で逆転勝利!

ルピートのブラカワニ親父が…役に立った、だと…?←

相手をコピーするタイプって、やっぱり相手の情報にない技だと対処しきれないってことなんでしょうね。

しかしこの死神、チート。



なお。

本当は因果の狭間に咲いている花=魂と言う設定で、最終的にサウルが尚も足掻いて現世に戻ろうとするシラスの魂(の花)を踏み潰して輪廻転生の理にすら入れなくする、と言うネタをしたかったのですが…

やめました。尺がなかったw

今頃は普通に地獄に落ちているでしょう。

あと、原典の因果の狭間ではユディーヌやバグバード・ステラ夫妻が出てきたりするんです。が、これも尺がないのでやめました。

ちなみに、プレイしていた当時は夫婦のグラがモブの使いまわしであることに噴き(ステラさんはそうでもなかったような気がしなくもなかった)、更にモブ男性(=緑の髪)使いまわしのせいで「ザウバーと髪の色違うじゃないかよw」と突っ込んだのはいい思い出。

多分あの夫妻に関しては………漫画版で補足するしかないわ…ステラさんは当然として、バグバードさん(髭面であることを除けば)ザウバーの面影あったし。


オリジン撃破ー!

…なんですけど、まあ、最後の最後で余計なことをw

オリジンは多分、最初に邂逅された時点で気付いてはいたんでしょうね…12話の段階で意味深なことを言ってましたし。

まあ、あの台詞って、本編の展開がどう転んでもいいようにしてましたし…

でも『お前ら魔法使い全員ピエロでしかないんだよ!』発言は、本編のあの展開だと色んな意味で正解な気がしてきたw




ラスト4話。

どうなっていくんでしょうねー。うち一つは、今回オリジンが新たに建てたフラグの回収回ですが。