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タイトル未設定 - Magic47:裏切れない想い

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Magic47:裏切れない想い

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翌朝。

JMハンターズギルドで一夜を過ごしていた晴人達の元に、レヴィーから通信が入ってきていた。


『――い、…おいっ!皆、起きてるか!?』

「ん…ふあああ……」

「一体、どうしたんですかあ…れヴぃーふぁん……」

『寝ぼけてる場合じゃないんだ!……ああ、そっちにすぐゾゾを寄越す!!』


かなり焦っているような、レヴィーからの通信。

一体、何があったと言うのだろうか…

ユーテキと瞬平が眠い目を擦っていると、転移魔法でギルドにやって来たゾゾは、大きなメガホンで叫んでいた。


「――起っきろおおおおおおおおおー!!!」

「「うわあああああああああ!?」」

「…ちょっと、ユーテキに瞬平、煩いわよ!」

「急に大声出さないで!?」

「ふああ…もう、煩いよぉ……」

「…何なんだ、一体…?」



ユーテキと瞬平だけではない。

ミカや凛子、ルルにバーガーと言った面々も起き上がり、騒がしくしている2人を睨む。

「僕達じゃない」と必死で弁解するユーテキだが、聞き入れてもらえず。

途方に暮れていると、ゾゾが大慌てで彼らに話をしていた。


「…暢気に起きてる場合じゃないんだって!」

「あれぇ?ゾゾだー…」

「ふああ…なんで、ゾゾがここにいるポポ…?」

「大変なんだよ!……今さっき、リーリエリヒトにあるラディス教の大聖堂に…帝国の兵器が落ちたんだ!!」

「「「…何だって!?」」」


帝国の兵器が、ラディスの大聖堂に。

いずれ兵器が使われることは予測できていたが、こんなにも早く撃ってくるとは。

…それも、ラディス教の大聖堂に。

かなり大きな騒ぎになっているとのことで、ゾゾは説明させる間も朝食を食べさせる時間も与えることなく、リーリエリヒト城下町にミカ達を送り飛ばしていた。




――リーリエリヒト城下町。

そこでは、帝国の兵器が落ちたせいで、大聖堂が倒壊している姿が見える…

運よく怪我をしたものはいなかったらしいが、突然大聖堂が破壊され、ラディス教の信者だった民達は大パニック。

晴人達は被害の確認に来ていたレヴィー達や、眉を寄せながら崩れた大聖堂を見ているルーク枢機卿と合流し、詳しい話を聞いていた。


「……どういうことなんだ!?ウェルテクス社の兵器が、大聖堂に落ちたって…」

「昨日、皇帝が帝都に残っている可能性を話したよな?それが見事に当たっていたのか…今朝方、大聖堂に兵器が放たれたんだ」

「…実は昨夜、私の元にイシュトヴァーンが現れてこう言っていたのだ。『【神の剣】を持つ私こそが、ラディス神に代わるルキナの新たな神となる。再び忠誠を誓うのなら、命を保障しよう』……と」

「それで、…ルーク枢機卿はその話を断って、――こんなことに」


ルーク枢機卿の横で、コハクが俯きがちに話す。

…どうやらイシュトヴァーンは、文字通りの「最後のチャンス」を与えに来たのだろう。

自分に従えば、【神の剣】の対象にはしない。

しかしそれを断れば、容赦なく剣を振りかざすだろう…

大聖堂の様子を見た凛子は、「酷い」と呟く。


「……何が神様よ…アムニスフィールドの力を手に入れた気になって、力で捻じ伏せようとしているだけじゃない…このままじゃ、アムニスフィールドも壊れちゃうかもしれないのに!」

「そう、問題はそこなんだ。……幸い、今のは『警告』程度に撃ったから…建物が崩れるだけで、死人は出なかった。つまり、出力エネルギーをかなり抑えていたんだ」

「…ということは…」

「――次は警告では済まされない、と言うことだな。……イシュトヴァーンも、次は本気で撃ってくるだろう…間髪入れずに兵器の力を使えば、アムニスフィールドは間違いなく崩壊する」



ルーク枢機卿の言葉に、全員息を呑む。

それと同時に、何とかしてイシュトヴァーンを止めなければ、手遅れになってしまう…

リーリエリヒト帝国上空にあるアムニスフィールドの亀裂は、前に見たときより酷くなっている。

恐らく、今崩壊せずに持ち堪えているだけでも奇跡と言うべきだろう。

更にコハクの話では、リーリエリヒト帝国軍は全員、【神の剣】の破壊力を身を以って知ったことで心の中に恐怖心が根付き、イシュトヴァーンに従ってしまったのだという。

となれば、もう一度帝国軍と共和連合軍がぶつかり合う事態になりえる…ということだ。


「…まあ、無理もない話か。帝国軍は皇帝への忠誠心が高い…それに、あんな兵器を使う相手に従わなければ、自分達がどうなるかって考えれば……当然の反応だ」

「問題は、帝国軍を抑えられる兵力が…今、共和連合と聖海騎士団にあるのかって所だな」

「……難しいだろうな。私を含め、未だ重傷者が多い…だがそれは帝国軍も同じ」

「――所謂、泥仕合でしかない…ってところだな」


ルーク枢機卿の後に言う形でやってきたのは、ウォルフガングだった。

彼は愛用の斧を持ち、戦う準備を万全にしている…

その近くにはベスティアやベックフォードらもおり、全員腕に包帯を巻いていたり、体を引きずるようにして歩いていたりとまだダメージが残っている様子。

しかし、このままイシュトヴァーンの暴走を放っては置けないと、立ち上がったのだ。

そしてウォルフガングは、晴人達にこんなことを頼んでいた。


「…我々が帝国軍を押さえている間に、君達はリーリエリヒト城の中に侵入して…奴を倒して欲しいんだ」

「大丈夫なのか?」

「城の中に入るのは、少数精鋭で行けるはずだ。……イシュトヴァーンのいる場所は…ルーク枢機卿、分かるか」

「恐らく、玉座の間か…そうでなければ、寝所だろう。本当に城にいれば、の話だが」

「…とにかく、時間がないのも事実なんだから…その方法で行こう。どの道皇帝を止めないと、大変なことになる!」




ミカも攻め込む決意を見せ、それに他の仲間達も頷く。

晴人も、オリジンのいる可能性を考えてか、一緒に攻め込むことを決意。

一方でレヴィー・コハク・ゾゾ・カルラも共和連合軍の仲間達との戦いに加わり、ソウセイはルーク枢機卿と共に後方支援に徹するとのこと。

全員大きく頷くと、代表してベックフォードの掛け声で…気合いを入れていた。


「…いいか、この戦いがアムニスフィールド…そしてルキナの行く先を決める!……絶対に、皇帝イシュトヴァーンを倒すぞ!!」

「「「おおっ!」」」

「――ついでに、この世界で暗躍しているオリジンってファントムもな。…あいつには、聞きたいことが山ほどある」






〜〜〜






リーリエリヒト城では、共和連合軍と帝国軍の戦いが再び行われていた。

逆らおうものならば自分達に再び兵器が落とされる、と脅された帝国軍は全員必死の思いで戦っている…

人の心の弱みに付け込むやり方に苛立ちつつも、ミカは仲間達と共にリーリエリヒト城に侵入しようとしていた。

大きな戦いが起こっているお陰で、城の侵入は容易い。

そうしていると、瞬平は何故イシュトヴァーンは再び聖海騎士団や帝国軍を呼び戻そうとしたのか、疑問に思っていた。


「……でも、どうして皇帝は、もう一度ルーク枢機卿達に戻ってくるよう頼んだんでしょうね?」

「「「…言われてみれば」」」

「ウェルテクス社の兵器もあるし、オリジンも残ってる…それなのに呼び戻したってことは、やっぱり、兵器の力でもう一度共和連合軍を根絶やしにするために……?」

「――それもあるんだろうけど…もしかしたら、別の意図があるのかもしれないな」


凛子の言葉に、晴人が付け加えるように言う。


「「「別の意図?」」」

「ああ。……いくら兵器があると言っても、乱発はできないし…人数で押し切られる危険だってある。こっちには、アウデンティアの魔法使いもいるんだから……全員をイシュトヴァーンのいそうな場所に飛ばすことも可能だ」

「です、よね?」

「…そうか、そういうことか」

「イシュトヴァーンの狙いは、兵器の恐怖でもう一度兵達を服従させて…攻め込まれた時のための兵力確保をすること。……それから、城に入ってくる人間を確実に絞らせる…ことも狙いに入るかもな」

「待って、それじゃあ」



コヨミが待ったをかけるように、言い放つ。

晴人も、彼の言いたいことが分かったザウバーやイーヴリンも、大きく頷く。

――皇帝の狙いは、最初から自分達だったのだ。

もしくは、自分達の持っているであろうシンボルストーンに。

「まんまと嵌められた」と悔しがる凛子であるが、逆に、自分達を待ち構えようとしているのならばそれを利用して倒せばいいだけの話。

…だが晴人は、できれば殺すことなく…人々の謝罪の場に立たせてやったほうがいいとのこと。

殺すのは簡単だが、それはイシュトヴァーンが自分の犯した罪の責任から逃げるということにもなる…

生かして罪の責任を取らせたほうが、これまで犠牲になってきた人々にとってもいいと話していた。


「…結構手厳しいですね、晴人さん…」

「俺なんかよりも、もっと手厳しいことをするのは世の中にたくさんいるって。……それよりも、着いたぞ」


苦笑いする瞬平に、あっけらかんと言い放つ晴人。

そして、彼らの目の前には玉座の間への扉…

ちなみにバーガーの話に寄れば、玉座の間に入って右手側の扉は王の寝所に繋がる道があると言う。

念のために晴人はフレイムリングを指に填め、ミカが勢いよく扉を開ける。


「――イシュトヴァーンっ!覚悟しなさい!!」




だが…

そこで待ち構えていたのは、ユディーヌだった。


「ふ…悪いが、猊下はここにはいない」

「「「ユディーヌ!」」」

「…ユディーヌ、あんた…」

「私は猊下から賜った使命を果たす、それだけの話だ」

「待って!――皇帝は、あなたを捨て駒にする気でいる…それでもいいの!?」


コヨミが、ユディーヌに言い放つ。

…確かに、帝国軍や聖海騎士団がいるのに兵器を放ち…

今も自分達を誘き出すための囮として、帝国軍を脅して恐怖で協力させている。

それだけではない。

イシュトヴァーンはユディーヌらアンギュロス族の滅亡にも関わっており、各地のアムニスフィールドの亀裂も、ウェルテクス一族の殺害も総て、彼が一枚噛んでいる。

だが、ユディーヌは首を横に振り、言い放つ。


「…私は猊下に仕える身。私は17年前、確かに猊下に命を救われた…あの方こそルキナを救う、救世主なのだ」

「違うよっ!イシュトヴァーンは、あんたを利用しているに過ぎないんだ!!」

「それに…自分の仲間もいるのに、何食わぬ顔で兵器を放つ人なのよ?……そんな人が救世主なわけないじゃない!」

「ああ、それに、…このまま奴を放っておけば、アムニスフィールドは駄目になる。そうなれば……あんたが今まで皇帝と一緒に守ってきたラディス教の教徒達が、暴徒となる……それでもいいのか?」


ユーテキや凛子、晴人が説得しようと試みる。

しかし…



「――私は、私の信念を貫く。……覚悟するがいい」


ユディーヌはそう言いながら、槍を構える。

そんな彼女に舌打ちしながら、晴人達は前に出るが…

それよりも先に、イーヴリンが前に出ていただけでなく、こう言い放っていた。


「……悪いね、こいつだけは、私にやらせて欲しい」

「イヴ!」

「だけど、イヴさん一人じゃ…」

「心配だよぉ!」

「そうポポ、赤信号と同じように…皆でいけば怖くないポポ!」

「……それはちょっと違うんじゃないかな、ポポ。それはさておき、…止めたいんだ。何としても」


その言葉に、ミカ達は3歩ほど引く。

…戦うことでしか分かり合えないのならば

…そうでなければ、ユディーヌを止められないのならば

…同じアンギュロス族である私が、あいつを止めなくちゃいけない

イーヴリンの気持ちが、伝わったのだろう。

彼らは不安そうにしながらも、イーヴリンとユディーヌの戦いを傍観することにしていた。

その際、ルルは心配そうにバーガーやザウバーと話す。


「……ねえねえ、イヴお姉ちゃん…絶対勝つよね?」

「そう信じたいところだが、――ユディーヌ審問官の槍捌きは相当なもんだ。果たして、イヴに勝ち目があるか…」

「だが槍はリーチが長い分、どうしても剣より動作が遅れがちになる。…そこを上手く突けば、或いは」




――次の瞬間、互いの持つ武器の刃がぶつかり合う。

ユディーヌは大きく後退すると、一歩踏み込むようにして槍を突き出す。

だがイーヴリンはそれを何とかかわすと、まるで槍で滑らせるようにしてすばやく振るう。

それを察知したユディーヌは再び退き、相手の攻撃の隙を与えないかのような連続突きを放っていた。


「…何故お前達は猊下に逆らうのだ!」

「あんたがイシュトヴァーンをどれほど妄信的に慕っているかは分かった。だけどね、……奴は多くの人達を悲しませてきた…だから皆、帝国の支配から逃れるために戦っている!」

「それは…お前達がラディス教を、あの方が崇拝するラディス神を受け入れないからに過ぎない!」

「じゃあ聞く。――イシュトヴァーンに仕えてきた帝国軍も、ラディス教やアムニスフィールドを守るために作られた聖海騎士団も、ラディス教を崇拝する教徒も、……どうして今苦しめられている!ラディス教を信じていれば、幸せが来るんじゃなかったのか!?」


それは、とユディーヌが言葉を濁す。

…帝国軍は、猊下の期待に添えなかったから

…聖海騎士団は、猊下を裏切り反乱を起こしたから

身内の言い訳はいくらでも考え付く。だが、帝都内にいたラディス教の信者達は…


「ラディス教の信者達はね、来る日も来る日もラディスの神様に祈りを捧げてるんだよ。…イシュトヴァーンによって、帝都の大聖堂を破壊されてもね!」

「…ラディス教徒なら…当然のことだッ!」

「だがその皇帝は、ラディス教の教皇としてその教えを広めることではなく…世界を支配することを目論むことに傾いている!本当にイシュトヴァーンに心から仕えているのなら、――それを止めるのが本当の臣下じゃないのかっ!!」



『猊下。ラディス教を広めるのも大事ですが、少しやり方を変えてはいかがですか』

『今の貴方様のやり方では、改宗する者もいつまで経っても増えません』

『力ずくばかりでなく、その土地の人間にもう少し目を向けてやったらどうですかな』

ジュリアス枢機卿は、いつもそのような小言を口にしていた。

幼き頃の猊下の養育係を務めたことのあるジュリアス枢機卿は、それだけあの方と親身な存在とも言える。

だからこそ…その小言が腹正しい部分もあったのだろう、猊下はいつしかジュリアス枢機卿を遠ざけ、そして……病と偽るように殺すよう特務機関Gに依頼した。

猊下のやり方に批判するからこうなるのだ、と私は思いつつ、彼に毒を一服盛っていたが…

――本当はジュリアス枢機卿こそ、本当の意味で猊下を心から心配していたのかもしれない

小言も言うし、顔色を覗って接するのではなく、気に入られようとするのではなく…嫌われてもあの方のためになるのなら構わないと言う気心で。


「……私は…」

「――はああああああああああッ!」


イーヴリンの装備していたジェネレーターに填められていた、JMが作動する。

一瞬彼女は分身したかと思えば、目にも留まらぬ速さで何度も切り裂いていく…

【ブラッディルージュ】

油断していたユディーヌはそれを総て受けてしまい、その場に倒れる。

そして、イーヴリンはトドメの一撃を振るおうとするが

…その剣を、振り下ろすことができなかった。


「……何故、止めを刺さない」

「…。……あんたはここで死んでいい人間じゃない、からかな」

「どうしてそう思う!」

「私達はね、イシュトヴァーンを殺す気はない…ただ、正当な裁きの場に出して、自分のした罪を償わせたいだけなんだ」

「…」

「……それは恐らく、死ぬよりも辛い…だからこそ、あんたが支えて一緒に償ったほうが、皇帝もいくらか救われるはずだ。臣下総てを失って、皇帝の地位も奪われ…何も残らなくなるであろうイシュトヴァーンの、唯一の救いとして」




その言葉に、ユディーヌは槍を収める。

…どうやら、話を聞く気にはなってくれたようだ。

ほっと胸を撫で下ろすミカ達。

彼らもユディーヌやイーヴリンの元に向かい、ルルは“ヒール”でユディーヌの傷を癒す。

そんな彼女を鼻で笑いながら、ユディーヌは呟く。


「……とんだお人よしだな、君達も」

「元々こういう集団だ」


はあ、と呆れ気味に話すのはザウバー。

「自分だってやや感化されてるくせに」というコヨミの一言には、軽く眉間にシワを寄せつつも…

仲睦まじげな晴人達を見て、何か思う部分もあったのだろう。

ユディーヌは少し考えた後、ルルに尋ねていた。


「……君達の言うことにも、一理ある。分かった、猊下の居場所を…教えよう」

「ホントに?」

「その前に、…ラディスのシンボルストーンの安否が心配だ。シラスが奪ったままだと聞くから、兵器に利用されるのではないかと」

「だいじょーブイだよ!シラスって人はやっつけちゃったし…シンボルストーンも、安全な場所に隠したの!!」

「でもまさか、JMハンターズギルドの床下に隠すなんて、誰も思わないよねっ」

「そうそう。しかも事もあろうに、今までワインのあった場所に置くんだから…盲点だよねー」

「そうか。……よかった、そのことがずっと気がかりだったのだ」



ルルとミカ、そして瞬平の言葉に…

ユディーヌは安心したかのように、一息つく。

それを見ていた晴人とザウバーは首を傾げていたが、凛子がユディーヌに皇帝の居場所について尋ねていた。


「…ところで、皇帝の居場所は?」

「この城にはいない。今はウェルテクス社で隠れている…一昨日の騒ぎで、立ち入り禁止になったからな」

「隠れ場所には持って来いね…」

「それじゃあ、ユディーヌお姉ちゃんも行こっ!」

「……私は…すまないが、まだダメージが残っている。必ず来るから、君達だけで先に向かってくれ」


その言葉を聞いたミカ達は、「分かった」と頷く。

疑問を抱いていた晴人やザウバーはユディーヌに付いていようとしたが、彼女は「一人で大丈夫だ」と言い張り…

強引にミカや瞬平が連れて行こうとするものだから、仕方なくその場から離れていた。

……その際、晴人はガルーダを静かに放って。





「――でも、ユディーヌさんが分かってくれてよかったですよねー!」

「本当に。これで後は、皇帝を捕まえるだけね」


達成感に満たされている瞬平と凛子。

ユーテキやバーガーなども、皇帝と対峙した時のために装備を整えている…

だが、考えるかのように黙っている晴人に気付いたコヨミは、首を傾げながら尋ねていた。


「簡単に上手くいけばいいんだけど…。……晴人?」

「コヨミ、……ちょっと水晶玉でガルーダの様子を見てくれないか。気になることがあるんだ」

「分かった。――えっ、これって…!」


晴人に頼まれ、水晶玉でガルーダの視点を見るコヨミ。

しかし…

そこに映っていたのは、ユディーヌがイシュトヴァーンに会っている姿。

――ウェルテクス社に隠れているはずじゃ

コヨミの言葉に全員が覗き見るようにして水晶を見、「やはり」とザウバーが頭を掻く。


「騙されていた、と言うことだな。……誰か、余計なことは話してないだろうな」

「そ、それなら…」

「さっき私達…」

「…シンボルストーンの場所を…」

「「「ばらしたの!!?」」」

「――このトリプルバカキリバッ!?」


ルル・ミカ・瞬平の自白に、晴人達は絶叫し…

ザウバーはどストレートに怒りをぶつけていた。アホと押すはいなかったが。

とにかく、全員すぐに玉座の間に引き返し、王の寝所に続く扉が開いていることに気付き、急いでその中を通っていた。






〜〜〜






晴人達が気付いた時には、既にユディーヌはシンボルストーンの在り処をイシュトヴァーンに伝えていた後だった。

…そもそも、ユディーヌが一人で待ち構えていたのは、在り処を聞き出すための作戦に過ぎなかった…

シンボルストーンの在り処が分かり、イシュトヴァーンは早速、近くにいたオリジンの力でJMハンターズギルドまで向かおうとしていた。

だが…

そこへユディーヌが、こんなことを尋ねる。


「猊下、……差し出がましいようですが…ウェルテクス社の兵器を、放棄しませんか。このままでは、アムニスフィールドが破壊されてしまいます」

「何だと?ユディーヌ、貴様はこの私に意見すると言うのか!」

「そうではありません。…猊下、あなたはラディス教の教皇でもあるのです…このままアムニスフィールドを破壊してしまえば、あなた自身の手でラディスの教徒達を裏切ることになります」

「……ふは、」


ユディーヌの忠言に、イシュトヴァーンは声を上げて笑い出す。

その様子を見て、オリジンは目を細めるばかり…

一体何がおかしいのか。

ユディーヌがそう思っていると、イシュトヴァーンはこんなことを言い始めていた。


「もはやラディス教など必要ない。――【神の剣】を使えるのは今、この私のみ……私こそが、新たなルキナの神となる」

「猊下…」

「ところでユディーヌ、昨夜お前はこう言っていたな…17年前アンギュロス族を殺したのは、と」

「……まさか、猊下」

「お前が思っているとおりだ。――奴らはラディスの神を敬うことなく、女神を崇拝していた…私が神となろうとしている今となっては、つまらないものだがな」



その言葉に、ユディーヌの心臓はドクン、と大きく跳ね上がるような音を上げる。

…それと同時に、忘れかけていたかつての記憶が蘇りつつある…

女神像の前で祈りを捧げていた自分。

父親に抱かれている自分、少し歳の離れた妹のような存在と手合わせをしている自分、アンギュロス遺跡に父とお参りに行く自分…

そして。

燃え盛る炎と、たくさんに連なった骸。その中にいる自分の父。

一人で泣き叫んで、歩いて、そうして出会った恩人とも言える男の服は……

炎に照らされてよく分からなかったが、――僅かに返り血が付いていた


「…では、あなたが私を拾ってくださったのは……アンギュロス族の力を、利用するためですか」

「そうだ。それ以外に理由などない」

「……私を…騙していたのですか……」

「騙してはいない。お前が私を信じてこれまで仕えてきた、それだけの話だ」


『自分の持つ記憶の総てが真実だと、言い切れるか?』

…アンギュロス遺跡でザウバーに言われた言葉が、頭の中に去来する。

ああ、この方はずっと私を騙していたのだ

私を利用していたのだ

私の家族を殺して、仲間も…妹のように仲の良かったあの子も

――ユディーヌは槍を握り締め、走り出す。

それに反応したイシュトヴァーンは剣を抜き、一閃…そして




「……ユディーヌッ!」



晴人達が、王の寝所に飛び込むようにして入る。

だが、彼らの目の前に映っていたのは…

腹を深く裂かれている、ユディーヌの姿だった。

その手に槍はない。……どうやら、イシュトヴァーンを殺そうとする一歩手前で…投げ捨てたようだ。近くの壁に、彼女の愛用の槍が突き刺さっている。

イシュトヴァーンはユディーヌに剣を突き刺したまま、尋ねていた。


「…何故、武器を捨てた」

「――私は確かに17年間、あなたに騙され続けてきた…ですが、……どうやら真実を知っても私は…あなたを裏切ることはできなかった、ようだ」

「ユディーヌ、」

「これ以上あなたに利用されたくない…だが、あなたを裏切れない……そんな私が選んだ、最期の選択が、……これしかなかった」


どんなに憎くても、

…それでも、17年間仕えてきた記憶は自分にとっての真実の1つで

…その間に自分の中に生まれた思慕の念もまた、自分にとっての真実で

その結果、――彼女は最後までイシュトヴァーンを裏切らないための最善策を取ったのだ。

敵討ちをしようとは思えなかった。

殺してやりたいという殺意すら湧かなかった…ああ、自分は心の底までこの男に染められていたのだと、ユディーヌは内心笑っていた。

そんな彼女を貫く刃を、イシュトヴァーンは顔色一つ変えずに勢いよく抜き…



「……最期まで、愚かなことだ」


その言葉が、ユディーヌが最期に聞いたイシュトヴァーンの言葉だった。

床に叩きつけられるように倒れる彼女の元に、ミカ達が駆け寄る。

…もう、既に息はない。

それを見たユーテキは「そんな」と震えた声で呟き、晴人は変身しながらイシュトヴァーンに言い放つ。


「待てよ。愚かなのは、どっちだ…あんたは多くの人間を苦しめ、多くの人間の人生を壊してきた……あんたは王様なんかじゃない。力に魅せられた、とんだ大馬鹿野郎だ!」

「ふ…シンボルストーンの在り処が分かった今、貴様達に用はない」

「待てって言ってんだろ!……変身!!」

<フレイム、プリーズ ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!>

<バインド、プリーズ>


ウィザード・フレイムスタイルの放った鎖が、イシュトヴァーンを捕まえようとする。

だが…

その前にオリジンが彼を連れてそのまま姿を消し、鎖は空を切る。

「くそぅ」と舌打ちするウィザードFSだが、殆ど疑わしかった人間が消えた今…オリジンの正体を掴んでいた。

――ギリオン宰相補佐、あれがオリジンの正体だ

一方で場所が知られた今、急がなければJMハンターズギルドが危ない。

そう思ったウィザードFSは、ルルに叫ぶ。




「ルル、お前、転移魔法は使えるか!?」

「一応使えるけど…こんなに多いと、そこまで遠くは飛べないよ?」

「JMハンターズギルドに直接飛べればそれに越したことはないが…無理なら、なるべく近くの場所まででいい。……急いでくれ!」

「分かった!」


ルルは大きく頷くと、JMハンターズギルドの近くまでウィザードFS達を移動させる。

――ルピート、どうか無事でいてくれ…!

そんな祈りを胸に、一行は王の寝所から完全に姿を消していた。






***




※教訓:心を許した相手でも重大な情報を渡してはいけない

原典でもガチでこれやりますからね、ユディーヌさんw


皇帝も見境なくなってきました。

そりゃあ、いくら兵器落とされても、聖海騎士団と違って皇帝に忠誠を誓っていたんですから従わなきゃですよね帝国軍…

寝返った、と言うよりは、脅されて仕方なくでしょうね。

あんな物まともに食らったらやばい、ってのは充分分かってますし。

むしろそれでも戦えるほうg(ry



ユディーヌとの戦闘…

まあ、一人相手に寄って集ってもあれですしね。

ファントム相手ならともかく。

一番因縁のあるイーヴリンでやりました。

…イヴよりルルのほうが本当に扱いにくい気がしてきた…


トリプルバカキリバめw

しかしユディーヌも、いくら皇帝が酷い奴でも結局裏切れなかったと言う…

皇帝を裏切る=17年間帝国で育ってきた審問官たる自分を裏切る、ということですしね。

ギリオン=オリジンも晴人にばれたことですし、ここから大詰め

…になっていくにはまだ話数がかなりあるんですぜw




とりあえず次回もまともな変身と戦闘はないかもしれない。

まあ、残っているファントムの数少ないしね…




※ちなみに、原典のイシュトヴァーンはまだユディーヌに対して【だけは】良心的でした