共和連合軍と帝国軍の戦い。
帝国軍はありったけの戦力で応戦するが、聖海騎士団の裏切りもあってか苦戦する一方…
両陣営の怒号とも言える掛け声。
剣と剣がぶつかり合う音。
…そんな激しい戦いの様子は、地下にいるミカ達の耳にも届いている。
ユーテキは拳銃を構えながらも、横にいたイーヴリンと話していた。
「凄いなぁ…ここまで聞こえるよ」
「この地下室も含め、城の守りに就いていた兵士も全員出たみたいだね。……それでもイシュトヴァーンが動かないのは、気になるけど」
「…もしかすれば、ウェルテクス社の兵器を使ってドカン…もありえるな」
バーガーが、ポツリと呟く。
…そもそもウェルテクス社の兵器は、何処に設置されているのかユーテキはおろか…ユウリやミランダも知らない。
恐らくパーツや回路は下っ端の研究員に作らせ、組み立てなどはシラスやギリオン、更には現ウェルテクス社における兵器製造派の研究員がやっていたのだろう。
更に、あのシラスのことだ。遠隔操作でウェルテクス社の兵器を使えるようにしていることだろう。
バーガーの言葉を聞いていたルルとポポは、「そんなの駄目」とばかりに声を上げる。
「そんなことしたら、大変なことになっちゃうの!」
「そうポポ、ただでさえアムニスフィールドが壊れかかってるのに!」
「…何としても、それだけは避けないと。帝国の兵器を壊して、ザウバーも絶対に助け出す!」
「――問題は皇帝達の居場所ですが…この通路自体、かなり入り組んだ構造になっているので、地図を見ながらでも難しい部分があります。慎重に、確実に進んでいきましょう」
その頃。
地下道を抜けた先にある大部屋に、【神の剣】はあった。
更にその中央部には、シンボルストーンを嵌め込んだ機械が設置されている。
周辺にいくつかあるモニターは現在、リーリエリヒト城周辺を映している状態…
当然、今起こっている騒ぎはイシュトヴァーンの目に映り、群がる蝿を見下すような目でシラスに告げていた。
「…帝国に仇為す虫けら共が。シラスよ、奴らに目に物見せてやれ」
「心得ております」
「よろしいのですか?あの場には、聖海騎士団や帝国軍もおります」
「構わん。神の作る世の礎になるのならば、奴らも本望だろう」
「……」
部下を見殺しにするようなイシュトヴァーンの言葉に、グラントは疑念を抱きつつあった。
…ウェルスの町に【神の剣】を落としてから、別人のようになってしまった
…しかし、いくら変わられてもこの方はこの国の皇帝
…そして、ユディーヌ様が敬愛し、仕えている方
…ならば私は、ユディーヌ様の命に従い、守るのみ
――ウェルテクス社の空中庭園では、ウィザード・ハリケーンドラゴンと合成獣が激しい戦いを繰り広げていた。
肉食獣のように鋭い爪と牙。
竜のように頑丈な鱗。
鳥のように逞しい翼。
頑丈な肉体の合成獣を相手に、ウィザードHDは相手の攻撃をかわすのに精一杯で、打開策を見つけられずにいる。
そうしていると、彼は、空がいつもより激しく渦巻いていることに気付く。
「…あれは…?」
空の異変は、当然凛子達にも見えていた。
特に、凛子・瞬平・コヨミの3人はこれと似たような光景を、ウェルスの町で見ている。
――“アレ”は空が渦を巻いているのではない
――空に浮かぶ膜状のシールド、……アムニスフィールドが渦巻いているのだ
「あ、あれってもしかして…」
「ま…間違いないですよ!ウェルスの町の時と同じです!?」
「もしかして帝国は、……自分達の仲間を消し飛ばしてまで兵器を使おうとしてるの!?」
「…何だってっ!?それは本当なのか!」
「ではあれが、――ウェルテクス社の大量破壊兵器…!」
コヨミ達の言葉に、レヴィーやコハクが声を上げながら空を見る。
…あんなものが落とされれば、大変なことになる
…だが、あの兵器の発動を阻止することはできない
ウィザードHDもチッと舌打ちしながらも、レヴィー達に言う。
「……あれはアムニスフィールドからエネルギーを掻き集めている段階なんだろ…実際に撃たれるには、まだ時間が掛かるはずだ……ウェルスの時がそうだった!」
「じゃあ、晴人さんの言うように、アレがエネルギーチャージの段階だとして…」
「それが完了して、兵器が発射されるのは…」
「――ウェルスの町なら15秒後って話だから…たぶん、帝都から離れれば離れるほど時間が掛かるのよ。そしたら、……チャージさえ終わればすぐに撃てる事になるッ!」
凛子の言葉に、レヴィーは拳を握り締めつつも…
急いで連絡すべきと思ったか、通信JMで共和連合軍に兵器発射の報せを出していた。
防衛用のシールドを持っていたウェルスの町を半壊させるほどの威力、それを人間相手に使えばどうなるかは分かっている。
帝国軍は恐らく、何も知らないと思われている共和連合軍を一網打尽にするための“囮”。当然彼らは、そのことを知らない。
知らないで、共和連合軍と共に滅ぼされる…
いくら帝国軍といえども、ウェルテクス社の兵器によって…しかも自分達の仕えていた皇帝の手によって、犠牲になっていいはずがないのだ。
「くそっ!――ベックフォードさん、俺だ、レヴィーだ…ウェルテクス社の兵器がそこに落とされる!急いで、全員を避難させてくれ!!」
『なんだとっ!?』
『だが避難させると言っても、協力してくれている聖海騎士団や、帝国軍まで飛ばすことは不可能だ!』
『…パヴェル殿ッ!』
『分かっています。――アウデンティアの魔法使い達に命じます、今すぐ魔法による障壁を!私も全力で行きましょう!!』
その話を聞いていて、ウィザードHDは「もしかすれば」と思いつつあった。
…恐らくあの合成獣に“ストライクウィザード”を叩き込んでも、大した効き目はない
…だが、相手を勢いよく蹴り飛ばすぐらいならできる
…兵器発射のタイミングに合わせて、あの合成獣を蹴りつければ!
そう思ったウィザードHDは、大きな翼を広げ、合成獣を誘き出す。その際、凛子達には下に降りるよう言い残して。
「皆!俺のことは気にせず、そこから脱出するんだ!!」
「だけど…晴人君はどうするの!?」
「俺は大丈夫だ!――こいつを倒すためのいい手段を思いついたんだ、それより早く出ないと、それこそ面倒なことになるぞ!!」
そう言うと、ウィザードHDは“サンダー”リングによる魔法で、再び合成獣を刺激させる。
やはり頭脳は発達していないのか、合成獣は咆哮を上げながらウィザードHDを追いかけていた。
凛子達も急いでウェルテクス社から脱出しようとしていたが、IDカードを認識しているのにエレベーターが開かない。
…どうやら、合成獣との戦いの衝撃で壊れてしまったようだ。
「そんな」と誰もが絶望しかける中、――彼らの目の前に、ゾゾが現れていた。
「あんたら、大丈夫か!?」
「「ゾゾ君!」」
「あなたこそ、どうしてここに…?」
「俺はパヴェル様に、事前にあんた達やルルの救出を頼まれてたんだ。分断して行動してるから、やりにくいことこの上ないけどさ…【面影堂】って場所までなら飛ばしてやれるぜ!」
頼む、とコハクが声を上げる。
その言葉に、ゾゾは大きく頷きながら…
空間転移の魔法で、ウェルテクス社の空中庭園から凛子達を脱出させていた。
ウィザードHDは縦横無尽に飛び回りながら、“その時”を待つ。
既にリーリエリヒト城の前では、魔法使い達が魔法の障壁を張り巡らせている…
パヴェルも魔力の殆どを使う気でいるが、ウェルテクス社の兵器は恐らく最大出力で来るだろう。
空に架かるアムニスフィールドの様子を見ながら、ウィザードHDは合成獣の攻撃を避ける。
そして…
渦の部分が大きく膨らみ始め、それを見たウィザードHDは自分に接近しつつあった合成獣の突進攻撃をかわしながら、“キックストライク”の指輪を右手に嵌める。
『ガアッ!?』
「…悪いが、お前の硬い体で威力を少しでも和らげさせてもらうぜ!」
<チョーイイネ! キックストライク、サイコー!!>
「……はああああっ!」
ウィザードHDの、突風を纏いながらのキックストライクが放たれる。
自らの進行方向に蹴り飛ばされ、勢いよく飛んでいく合成獣。
ウィザードHDは自分の出せる全速力で、その場から退避していく。
遂にアムニスフィールドから、巨大な光線が放たれ
――合成獣に直撃する形で、リーリエリヒト城前に落とされていた。
〜〜〜
…ズドォォォォン…
地鳴りにも近い衝撃は、当然地下にも届いている。
ウェルテクス社の兵器が、放たれた…
自分の悪い予感が当たってしまったことに、バーガーは舌を鳴らす。
「きゃっ!?」
「ポポー!?」
「…くっそ、本当に撃っちまったのか!」
「だけど…自分の国の兵もいるのに、……こんな…っ!」
「――晴人達が上手いことやってると、信じたいよ」
「許せない。人の命を、簡単に…!」
ユーテキが悔しがる横で、イーヴリンは頭を掻く。
ミカも、他者の命をなんとも思わないようなやり方に、憤りを感じつつも…
ソウセイはむしろ、こんなことを話していた。
「パヴェル様のことですから、何らかの形でアムニスフィールドの異常を知って…帝国軍ごと魔法障壁で守ってくださっている可能性が高いです」
「「「…」」」
「アムニスフィールドのエネルギーの再チャージには時間が掛かるどころか、エネルギーの大量消費で次に使えるのは…当分先でしょう。そうなれば、次に問題となるのは…」
「そうか、帝国はザウバーの腕の力を、アムニスフィールドのエネルギーを解放する【鍵】だと思い込んでる…」
「共和連合軍に止めを刺すべく、ザウバーさんの力を無理に引き出そうとすると思います。…人質であるコヨミちゃんがいない以上、言うことを聞かせるために、四肢の一つを奪うことも…」
「――!早く、助け出さないとっ!!」
地上での破壊音で、ザウバーは再び目を覚ます。
そして、自分の周囲を見…
ウェルテクス社の造った兵器と、シンボルストーンを収めている機械、そしてモニターに映る光景。
特にモニターに映っていた惨状は、共和連合軍のみならず自国の兵士をも巻き込んでいる。
全員辛うじて生きてはいるが、まともに動くことはできないと言ったところか。
「貴様ら…この期に及んで、……まだ兵器を使い続けるか…!」
「ほう、目が覚めたか。ちょうどいい…貴様の力で、アムニスフィールドの全エネルギーを解放してもらおうか。それで総ての片がつく」
「断固断る!」
「貴様の力を使うのは、五体満足でなくとも構わん」
イシュトヴァーンはそう言いながら、剣を抜く。
ザウバーは左腕を押さえ、舌打ちしながらも、イシュトヴァーンの奥に見える【神の剣】を見ていた。
…最低でも、アレだけは破壊しなくては
すると、突如シンボルストーンが蒼い輝きを放ち、イシュトヴァーンも振り返る。
「今だ」
そう思ったザウバーが腕の力を使おうとした瞬間、ギリオンがその腕を掴み、冷たい笑みを見せながら話す。
「……あなたは薄々、【鍵】がどういうものなのか…気付いているのでは?」
「何だと…?」
「あなたなら、お分かりになると思いますがね。この中の誰よりも」
「…」
一方でシラスは、「おかしい」と思い始めていた。
シンボルストーンは何かに共鳴するように、光を放ち始めている。
しかし…
その共鳴している相手は、ザウバーの腕ではない。
現に彼の腕はシンボルストーンに共鳴する様子もなく、沈静化している状態。
――何かがおかしい
そうシラスが思っていると、ギリオンはザウバーに尋ね続けていた。
「しかしあなたも、本当にしぶとい。一度ファントムを生み出すほどの絶望を経ても、なお生きているとは」
「……」
「ですがそれは、あなたの覚醒した力によるもの。…本当に不思議ですね、あなたの一族は」
「回りくどい言い方はよせ。――俺の正体に見当がついているのなら、はっきり言えばどうだ」
その言葉を聞いたギリオンは、にっこりと笑みを見せると…
「それでは」と声を大きくしてザウバーに言い放つ。
「本当に皮肉なものですよ、まさか、セルシウスが自分を生み出したゲートに倒されるなど」
「そしてあのウェルテクスの娘…ミカも、自分の兄のファントムを庇おうとして、自分の兄を窮地に陥れていた」
「そうでしょう?――ウェルテクス一族の、もう一人の忘れ形見さん」
その瞬間、勢いよく扉が開く。
そこから出てきたのは、ミカ達。
「どうしてここに」とグラントが剣を抜くが、ミカはそれを気にすることなく、ザウバーに尋ねていた。
「……それ、本当なの?ザウバーが、私のお兄ちゃんだって」
「えっ、で、でも、ミカのお兄さんって両目とも蒼かったんじゃ…」
「カラコン?」
「「ルル空気読もうか!」」
「…。……ああ」
一部、シリアスすぎる空気を破壊するものがいたが…
ザウバーはミカの問いかけを否定することなく、頷いていた。
一方で、死んだはずのバグバード・ステラ夫妻の息子まで生きていたことに、驚きを隠せない帝国側。
だが、彼らをもっと驚かせたのは…
シンボルストーンは突然紅き光を放ち、それに合わせてミカの目も紅くなっていく。
それを見ていたシラスは、高笑いをする。
「ふ、はは…これはこれは。……まさか、【鍵】が…ウェルテクスの娘、お前だったとは。シンボルストーンの光に共鳴する形で、目の色を変えたのが何よりの証拠!」
「「「何だって!?」」」
「つまり貴様さえいれば、ウェルテクスの兵器は次のチャージを待つでもなく使えるということ!そしてシンボルストーンと貴様が揃った以上、私の求める究極の兵器はすぐそこにある!!」
「まだ気付いてねぇのかシラス!お前の造る兵器は、アムニスフィールドを破壊し続けている…仮にミカが【鍵】だったとして、そんな兵器を造ってみろ……世界より先に、アムニスフィールドが終わるぞ!!」
「無駄だ、バーガー。……こいつらは目先の野望に囚われ、俺達の話を聞くつもりがない」
暴走するシラスを諌めるバーガーだが、ザウバーがシラス達を睨みながら無理だという。
ギリオンはくすりと笑いながら、ザウバーの手を離す。
彼の行動の一部始終に疑問を持ちながらも、ザウバーはすぐにそこから退き、ルルに刀を渡すように叫ぶ。
「ルル、刀を渡せ!」
「はいなの!…でもザウちゃん、体…だいじょばないみたいだよ?」
「それでも構わん。……セルシウスもそうだが、俺が倒したい相手は…まだ目の前にいる!」
その目が見据える先は、グラント。
――ザウバーがミカの兄であるなら、当然、自分達の家族を奪った特務機関Gを…
直接家族を手にかけたグラントを、許せるはずがない。
ユーテキは以前、セラピアの町にいるジョージに頼まれルルを探しに行った際、特務機関Gと戦闘になった時のことを思い出す。
あの時のザウバーも、鬼気迫る勢いでグラントと戦っていた。
「……だったら、グラントはミカとザウバーが戦って!僕達は、皇帝やシラスを何とかする!!」
「ユーテキ…お願い!」
「貴様を斬るために…家族の敵を討つために、11年間生きてきた。俺がファントムを生み出し…ウェルテクスの力が覚醒し、人とは違う体となってまでも生き延びたのは……今、このためだ!」
「……いいだろう。お前達ウェルテクス一族との因縁、ここで断ち切らせてもらう」
グラントはそう言うと、まずはザウバーに向かう。
体力の疲弊が激しいのは、彼のほうだ。
前のように身軽な動きと鋭い一閃を放つ力がないと、判断したのだろう。
しかし、その前にミカが立ち、セイバーで受け止める。
その間にもザウバーが接近し刀を振るうが、グラントはそれを何とかかわす。
更にその状態で剣を振るい、ザウバーはそれを交わそうとするも、額の左側が剣の切っ先に触れたのか…そこから血が流れてしまう。
血のせいで視界が狭まれ、見ていたミカも声を上げる。
「ッ!」
「ザウバー!……獅髪…」
「させん!」
ミカはすぐに回復術で傷を癒そうとするが、グラントが鋭い突きを放つ。
それはミカの右肩に辺り、肩当てに深い亀裂が入るほど…
しかし、それでも気にせずミカはセイバーを構え、グラントの次の攻撃を受け止める。
だが相手の力が強く、押し負けかけていた。
…そこへ、一陣の風が吹く。
「…がはっ…!?」
「……両目は流石に無理だが、片方の視力を奪った程度で…ハンデにはならないッ!」
グラントの腹を、懐に入り込んだザウバーが深く切り裂いていた。
更に二本目の刀で切り上げるが、グラントはそれに反応し、攻撃を受け止める。
すぐさまもう片方の刀で攻撃するが、グラントは腰に帯刀していた短刀を抜き、また止める。
だが、そこまで迫っていたミカのセイバーの一撃は、止められなかった。
鋭い突きが何度も決まり、グラントの身が揺らぐ。
「……“閃空裂破(せんくうれっぱ)”!」
「ぐっ!?」
「…ザウバーッ!」
「任せろ!!」
――小さい頃、バグバードから7歳の誕生日に貰ったのは…
その時はまだ新しい型の、ジェネレーターだった。
バグバード曰く、モンスターは年間増加傾向にあり…それを退治するためのJMハンターも徐々に増え始めている。
そのため、JMの力を引き出すべく開発したのがジェネレーター。
しかしそれは、戦争で人と人が争うためのものではなく…JMハンターがその身を守るために、そして誰かを助けられる力となるように作ったのだ。
『お前にはきっと必要のないものだろうが、持っていて欲しいんだ』
『そして、覚えておいてほしい』
『力とは…何かを守るために使うべきものなのだ。今は分からなくとも、分かる日は必ず来る』
――10年前。
ルピートに拾われて1年経ったその日…ではなく、次の日にルピートはJMを1つ譲ってくれた。
前の日は自分にとって忌々しい日でもあり、それを察したルピートも、その翌日を『記念日』と言ったのだ。
ルピートには血の繋がった息子はいない。
だからこそ、自分を本当の息子のように可愛がってくれた。時々某コブラカメワニ親父並みにウザかったが…それでも大事な、もう一人の父親だった。
『なーに、遠慮すんなって。このJMはなぁ…昔、二刀流のルピートとして恐れられた俺様が使っていたやつなんだ』
『…え?不吉すぎる?……おいおい、そりゃねぇだろ!』
『いいから貰っとけよ。折角いいジェネレーター持ってるんだから、使ってやらないと宝の持ち腐れってもんだ』
2人の父親から貰った、宝物。
…大事な妹を、仲間を守るための力
…そして、ウェルテクス一族の誇りを守るための力
港町パテオでユーテキにジェネレーターを直してもらったのは、ある意味でよかったのかもしれない。
今この瞬間のための、一撃を放てるのだから。
「――【識閾命突覇(しきいきめいとつは)】!」
「!!」
二本の刀による突きが、何度も放たれる。
そして、最後に鋭い一閃を放ち…返す刀でもう一閃。
グラントの肉体からは血が流れ、もはや剣を残る力も残されていない。
そんな彼が、最期に思い浮かべた顔は
――ユディーヌだった。
「……ユディー…ヌ、様……申し訳…ありま…」
グラントはそのまま倒れ、地に伏す。
…もう既に息を引き取っている。
それを見たミカは、ようやく両親の敵を討てたのだと思う一方で、まだ戦いが終わっていないことを思い出す。
…シラスとギリオンは、既にこの場から逃げた後。
イシュトヴァーンも、やはり国を統べる王ゆえか、手ごわい剣の使い手。
バーガーとイーヴリンを中心に、ルルとユーテキが援護をしながら戦うが、それでも苦戦を強いられる。
しかし…
そんな彼らの前に、ファントム・オリジンが現れていた。
「「「オリジン!?」」」
「そんな…こんな時にっ!」
『お前達と遊んでいる暇はないのでな。……とにかくこの場は、退くぞ…皇帝猊下』
「貴様、もしやシラスの言っていた…ファントムか?」
『ご名答。――それではさらばだ、指輪の魔法使いの仲間よ』
そう言って、オリジンはイシュトヴァーンを連れてその場から逃げ出す。
それだけではない。
いつの間にか、ラディスのシンボルストーンまでなくなっているのだ。
ソウセイの話では、グラントやイシュトヴァーンと戦っていた間にシラス宰相が持ち出し、行方知れずとのこと。
追いかけようにも、自分では返り討ちに遭うと思ったためか動けずにいたことを、ソウセイは素直に謝るが…
バーガーは彼の肩を叩き、むしろ正しい判断だと言っていた。
「さーて、問題はこれからどうするか…だな。流石に帝国にはいられない以上、猊下達の行き先は分からねぇし」
「「「…」」」
「とにかく、上に戻ろう。皆のことが心配だから」
考えてもどうしようもないと思ったのか…
ミカの案に乗り、ユーテキ達は地上に向けて来た道を戻っていた。
当然、ウェルテクス社の兵器を二度と使えないよう、破壊した後で。
その途中、ミカは気になっていたことをザウバーに尋ねる。
「ねえ、…ファントムを生み出した人間は…死ぬんだよね」
「…らしいな」
「それで、どうしてザウバーは生き延びることができたの?それに…」
「……今ここで、この状況で話すことじゃないだろう。…少し落ち着いてから、ゆっくり話そう」
「…。……せめて後一つだけ、聞いていい?」
「何だ」
「…どうして、最初に会った時…お兄ちゃんだって、言わなかったの?」
「……言っても受け入れられるはずがない上に、こんな体だ。今はウェルテクスの力で繋ぎ止めてはいるが、いつその力が消え失せて完全に死ぬか分からない…兄と教えて悲しませるぐらいなら、黙っていたほうがいいと思った」
ザウバーは、キルベルトのペット屋敷の時点でミカが自分の妹だと、気付いていたようだ。
…母・ステラの容姿を色濃く受け継いでいるのだ、分からないはずがない。
一方でミカは、ザウバーの目が紅と蒼のオッドアイであることもそうだが、兄の記憶も曖昧で写真もなかったこともあってか、ザウバー=兄とはすぐ結びつかなかったらしい。
そこはユーテキも疑問に感じていたのか、尋ねる。
「そう、問題はそこなんだよ。――セルシウスの人間態は、どっちとも蒼い目…でもザウバーは片方だけ紅い目じゃない。どうしてそんなことに?」
「確かに…」
「やっぱりカラコン?」
「その意見から離れようぜルル!」
「…。……同じことを言わせるな、ここで話す話じゃない」
ちゃんと話を聞いていたのか、こいつら…
そんなことを思いながらも、ザウバーは自分の左腕に目を落とし、考え事をしていた。
(――ギリオン宰相補佐…一体、あいつは……)
リーリエリヒトより遠く離れた地、ツァールハイト大陸。
そこにある、初代ウェルテクス一族の屋敷で…サウルは佇んでいた。
未だにヒビ割れた、空に浮かぶアムニスフィールド…
それを見つめる彼の目は、悲しそうでもあった。
「…もはや時間がない。……“彼ら”の審判は…もうすぐそこまで、迫ってきている」
「――『僕ら』ウェルテクス一族は、やはり、ここから出るべきではなかったと言うのか…」
「そもそも、―――存在自体が間違っていたとでも言うのか…」
そう呟きながら、サウルは左目の眼帯を外し、それを捨てる。
眼帯は風に身を任せるかのように、ゆっくりと飛んでいく…
そうして現れたサウルの両目は、
――海の如き蒼を宿す右目に対し、炎の如き紅を宿す左目が露わになっていた。
***
サウルさんが全部持っていった気がする。
いや、本当に久し振りだったし…
最後に出たのってMagic30ですよね?
二回目の兵器発射て…
しかも自分の臣下を見殺しにするような一撃、ですからね。
こりゃあ流石に、今まで戦っていたベックフォードさんらも放って置けませんよ。
そして、兵器を利用して合成獣を撃破するウィザード。
…相変わらず【お使い】ばかりのゾゾw
ソウセイの言葉を翻訳すると、『パヴェル様マジ龍騎』。
そして…
発覚するザウバーの正体。更に増える謎。
まあ、この辺は次回で明らかにしたいですね。
カラコン発言するルルw
ザウバーのはカラコンじゃないですよ、後天的になっただけですよ!
そりゃ片目封じるだけじゃザウバーは止められんですわ…
今まで散々フラグ立ててきたというのにw
更に、今回で22話のジェネレーターの回収もしてます。
…そりゃあ、魔改造された日にはブチ切れるってレベルじゃねーですわ…
ユーテキ、よかったな、元の形で直しておいて!←
次回はザウバーの過去とか、兵器発射後の城前の様子とか。