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タイトル未設定 - Magic36:火山の咆哮

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Magic36:火山の咆哮

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「――俺は、コヨミと同じだ。……ファントムを生み出して、なお…生きている」




ザウバーのその言葉に、晴人は信じられないような目で見る。

…が、同時にコヨミが彼のことを気にしている理由も、分かった。

ザウバーは以前、コヨミに触れられたことがある。

だがそれは同時に、コヨミもまた、彼も人では考えられないほどの体温だったことに気付いたことだろう。

だからこそ、あまり触れてもらいたくなかったのか…と思いながらも、晴人はザウバーに尋ねていた。


「…だけど、そうなると…お前は一体どうやって生体活動の維持をしているんだ?コヨミは、俺の魔力を分け与えないといけないのに……」

「――タルボット博士の家に行く前、ウェルテクス一族の研究資料があるという場所に向かっただろう」

「ああ、それが?」

「その時、俺の腕の光が壊れて動かなかったはずの機械を動かした…それが答えだ」


その話を聞いた晴人は、納得したように頷く。

…壊れた記憶装置が、一時的に再起動する蒼い光の力

…その力を、俺がコヨミに魔力を与えているように、自分の生体活動の維持に使っているのだとしたら

…成程、魔力なしでも自由に動けるはずだ

そう考えながらも、同時に晴人は、ザウバーが生み出したというファントムは一体何なのか、気になっていた。

オリジン……は到底考えられないだろうが、セルシウスもミカの兄がゲートである以上、まだ出てきていないファントムの可能性が高い。

そのことについても尋ねるが、ザウバーは首を横に振っていた。



「……悪いが、自分がどんなファントムを生み出したのか…記憶がないんだ」

「そっか、そういえばコヨミも、自分の記憶を失っていたな…」

「その話は前に聞いている。――まあ、俺はまだ運がいいほうなのかもしれないな」

「どういうこと?」

「…俺が記憶にないのは、自分がどんなファントムを生み出したのか…どうしてファントムを生み出してしまったのかだ。一時的に記憶の殆どが抜け落ちていたのも事実だが、それは時間が経てば戻った」


そう言うザウバーであったが、

…少し視線を泳がせている辺り、大体の心当たりはあるのだろう。

しかし、今まで出会ったファントムの中にそれらしいものがいなかったことを考えると…晴人やコヨミも、これからまだファントムが出てくるかもしれないという考えに、至っていた。

そうなった場合、彼はどうするのだろう。

やはり…倒したいと思うはずだろう。自分の姿を利用してやりたい放題やられるなど、プライドの高い彼が許すはずがない。


「……問題は、セルシウスが素直にバーガーの作戦に乗って、カロル火山に行くか…だ」

「そうか、ミカ達がカロル火山から戻ってきたところを狙う…ってことも、ありえるわけか」

「…確かに。どの道、ガナドールの宝珠を返すために下山はしないといけないし…ずっと火山にいるわけにも行かないから、それを狙ったほうが確実なのも確かね」


一応このことは、凛子達に知らせておいたほうがいいだろう。

そう思った晴人はガルーダを使い、手紙を括りつけてカロル火山に向かっているメンバーの下まで飛ばす。

その一方で…

ザウバーは複雑そうな顔を見せながら、考え事をしていた。





その頃…

ウェルテクス社では、オリジンが“あるもの”を眺めていた。

それはウェルテクス社の破壊兵器【神の剣】ではなく、ある特殊な培養液に漬けられた怪物。

その姿は、これまでルキナで確認されているどのモンスターとも違う。

…ファントム、と言ったほうが近いだろうか。


『“奴”も面白いことをする。……さて、“コレ”は使えるかどうか…』






〜〜〜






カロル火山に向かっていた凛子達の元に、ガルーダからの手紙が届く。

その手紙の内容を読んだ凛子は、どうするべきかイーヴリンに尋ねる。

しかし、彼女は聖海騎士団のことも考えると迷っている暇はないと、予定通りカロル火山を進み…シルエラとガナドールの宝珠を保護することを最優先としていた。

…その一方で…

火山道を進むミカの顔は沈みがちで、そんな彼女を見たユーテキも心配そうにしている。

やはりまだ、セルシウスと戦うことを迷っているのだろうか。

そんなことを考えつつも、どう声を掛けたらいいのか分からず、黙々と進んでいた…




今日は火山の麓まで来たところで、キャンプを張り…明日カロル火山に登ることになった。

夕飯の支度は凛子が行い、瞬平やユーテキもそれを手伝う。

ルルも魔法で焚き火要らずの光の珠を出し、バーガーはユーテキと共にテントを組み立てている。

その一方で…

ミカは一人、キャンプから少し離れた場所で考え事をしていた。

彼女の様子がおかしいことに気付いていたイーヴリンは、その横に座り、話をしていた。


「…まだ、セルシウスと戦うことに迷いを感じているんだね?」

「……イヴ」

「あいつとの戦闘は私達に任せな、…あんたは凛子達と」

「…私、ザウバーに悪いことした」


その言葉に、イーヴリンは目を見開く。

セルシウスのことも引きずっているが、――自分を庇う形で視力を奪われたザウバーのことについて、引け目を感じているのだ。

それだけではない。

何度も自分の目を覚まさせようと、必死で説得していた彼の言葉を拒絶し…自分を利用していたセルシウスに加担していた。

少し考えれば、分かるはずだったのに。

どちらが正しくて、何が間違っていて、自分はどうするべきだったのか。

…私があの時ルルの邪魔をしなかったら、セルシウスを倒せていた

…私がもっと早くに割り切れていたら、ザウバーはあんなことにならなかったのに



「――私、馬鹿だった。…あいつはお兄ちゃんのフリをしたファントムだって、分かっていたはずなのに。……名前を呼ばれた瞬間、お兄ちゃんが人の心を残しているんじゃないかって、思い込んでた」


『感情で行動するから、いつも失敗するんだよね』

セラピアの町で以前、ミカがザウバーに対して話していた言葉。

…何も変わってなかった

…反省しているつもりでも、何も変わろうとしていなかった

ザウバーはそれを「人である証拠だ」と言ってくれたが、…肉親の情に流されてファントムのほうを信じてしまったミカにとっては、心に突き刺さる。

イーヴリンもその時の話を覚えているのか、こんなことを話していた。


「あんたは間違っちゃいないよ、…ミカの立場だったら、きっと私だってああなっていた」

「イヴ」

「簡単に割り切れる人間なんて、いないんだ。……ソウセイだって、口じゃ割り切っている感じだったけど…心のどこかでは、複雑だっただろうね」

「……」

「ファントムはミカの優しさを利用した。自分の欲するものを、手に入れるために…人の心があったらそんなことはしない」


それに、とイーヴリンはミカの頭を撫でながら、話を続ける。


「…ザウバーはあんたのせいで視力を失ったことを、恨んじゃいないよ」

「でも…」

「あいつは自分の心に従って動いた、ミカを庇うために動いた。……それはザウバー自身が決めたことであって、あんたのせいじゃない。だから、これ以上悩む必要はないんだ」

「……」

「一番大事なのは、ミカ自身がどうしたいのかだよ」




――私自身が、どうしたいか

その言葉に、ミカは暫く考えていた。

自分の記憶の中に薄っすらとある、優しい兄の姿。

自分が転んで、怪我をして泣いていた時も、おんぶしてお父さん達のところまで連れて行ってくれた。

顔はぼんやりとしか思い出せないが、それでも、いつも優しい笑顔で見守ってくれていた。

そして…


「……ごめん、イヴ。私のやるべきこと、やらないといけないこと、…そんなの最初から決まってた」

「ミカ」

「私は、…もう何も迷わない。お兄ちゃんの姿で私を騙したあいつは、お兄ちゃんなんかじゃない……倒すべき、敵なんだ」

「その通りだ、ミカ。――そして、帝国を利用してファントムを生み出している奴のことも、忘れちゃいけない…これ以上の悲劇を、生まないためにもね」


うん、とミカは大きく頷く。

とにかく、いつセルシウスが襲ってくるかも分からない以上、体を充分に休めるべきだろう。

それに、ガナドールの宝珠のこともある。

やるべきことがたくさんある以上、迷えば迷うほど…やらなければならないことが疎かになるのだ。


「さ、そろそろ夕飯もできる頃だし…戻ろう。ミカ」

「うん。…ありがと、イヴ。思えば私、いつもイヴに支えられてばかりだね。――イヴだけじゃない、晴人や凛子、ユーテキ……他の皆からも」

「人は支えあって生きている。そういうものなんだよ、人ってのはね」






〜〜〜






翌日。

ミカ達はカロル火山への登山を始めていた。

火山道はかなり険しく、マグマも流れているせいか蒸し暑い。

その上、モンスターも数多く生息しており、その殆どが火山の環境に適したものばかり。

ミカとルルが先頭に立ち、モンスターに有効な水や氷の術で撃退していくことで、何とか中腹まで差し掛かっていた。

瞬平は予め近くの川で汲んでおいた水を飲みながら、バーガーと凛子に話す。


「でも…本当に、こんな場所にシルエラさんがいるんでしょうか?」

「さあな。それよりも、一番心配なのは…ほら、あっち見てみな」

「え?……きゃあっ!?」


バーガーの指によって示された場所を見た凛子が、声を上げる。

「どうしたんですか」と瞬平が叫ぶと、その先にあったのは…モンスターの死骸。

剣のようなもので切り裂かれた痕を見るに、相当の手練が倒したのだろう。

それを自分達の知っている者に当てはめると、――聖海騎士団ぐらいしかいない。

「まさか先を越されたんじゃ」と焦るユーテキだが、バーガーによるとカロル火山はいくつかの道に分かれており、モンスターも多いためそう簡単にシルエラ一人を見つけることはできない…とのこと。

暫く歩いていると、複数の分かれ道を見つけ…何処に進むか、瞬平とユーテキは迷っていた。


「うーん…分かれ道がいくつもありますねー…」

「ちょっと危険だけど、いくつかのチームで行ってみる…?」

「馬鹿、セルシウスが来た時どうすんだ。今度はこっちに有利な環境とはいえ、人数が少なければ相手の思う壺だぞ」

「バーガーに賛成。出来れば、全員一緒に行動したほうがいいね。……それと同時に、人数の多い聖海騎士団に比べて、圧倒的に捜索面で劣ってしまうわけだけど」



バーガーやイーヴリンの言葉に、更に悩む一行。

「刑事の勘で何とかならないんですか」と凛子を頼る瞬平だが、「いくらなんでも無理」と返されてしまう。

すると…

ルルがユーテキに通信用JMを出すように、提案していた。


「ユーちゃん、通信用JM貸して!」

「いいけど…パヴェル様に連絡しても、多分分からないんじゃあ…」

「こういうのは、詳しそうな人に聞いてみるといいの!――パヴェル様ー」

『あらあら、ルル。おはよう…いえ、こんにちはになるのかしら?』

「こんにちはなの!……パヴェル様、ソウちゃんいない?」

「「「ソウセイに聞くの!?」」」

「いや、確かにあいつガイドだけど…ガイドだけどよ!カロル火山の内部まで案内できるガイドがいるか!?」


まさかの『困った時のガイド頼み』に、その場にいた全員絶叫。

通信JMの奥からも、ソウセイからの悲鳴に近い声が聞こえ…

暫くすると、通信の相手がソウセイに代わっていた。


『あの、もしもし…でいいんですよね?』

「ソウちゃん、分かった?」

『俺はそこまでは行ったことはないんですが…ダゴイさんの話だと、正しい道は1本のみで、他はモンスターの巣に繋がっているそうです』

「それで…」

「どれが正解か、分かる…?」

『はい。一番右の道から、4番目にある道が正しいものだそうです。そこはカロル火山の頂上に繋がっているらしく、滅多に人は立ち入らない場所みたいですが…今、何してるんですか……?』

「……要点だけ言うと、ガナドール族説得のために、ね」




あぁ成程、とイーヴリンの説明に納得するソウセイ。

正しい道を進んでも、洞窟の中はまた入り組んだ迷路になっているとのことで…

ダゴイの話を聞きながら、ソウセイが場所を指示すると言う方法で、ミカ達は確実に進んでいた。

そして…

道が開け、彼女達は無事にカロル火山の頂上に辿り着くことに成功していた。

やはり火山の頂上だけあってか、大きな火口があり、マグマがボゴボゴと噴き出している。


「「「出口だ!」」」

『着きました?』

「うん!ソウちゃんありがとね!!」

「持つべき者はガイドの友達ポポ!」

「…ちょっとあんた達、あれを!」


喜ぶミカ達に、イーヴリンが叫びながら前を指差す。

そこには、亜麻色の綺麗な髪をした女性の姿。

更に、その手には紅く綺麗に輝く宝石…アレがガナドール族に伝わる宝珠なのだろうと、ミカ達は納得していた。

それを持ってここにいるということは、あの女性は。


「……シルエラ!」

「!…あなた…どうしてここへ」

「どうしても何も、どうしてガナドールの宝珠を盗んだりしたんだ!しかも、エミィを一人家に置いて…」

「…家族を捨ててラディス教を選んだあなたが、それを言うの?」



シルエラの言葉に、バーガーは視線を反らす。

「待ってください」と凛子はバーガーを弁護しようとしていたが…

そんな彼女達の背後から、セデギウスとフォスター、ガルシアが現れる。

他の聖海騎士団のメンバーは、恐らく外れの道を通ってモンスターや迷路に四苦八苦しているのだろう。

セデギウスは一歩前に出ると、シルエラにガナドールの宝珠を渡すよう声を掛ける。


「…反逆者の妻は反逆者、とはよく言ったものだ。そのガナドールの宝珠をこちらに渡すのだ」

「……嫌だと言ったら?」

「反逆罪で、この場で処刑する」

「そもそもお前は、オリジナルJMを奪ってはこの火山の火口に投げ込むと言う、とんでもないバチ当たりなことをしているらしいからな!渡しても渡さなくても、決定は覆らん」

「「「オリジナルJMを!?」」」

「お前達…何も知らなかったのか?あの女と一緒に始末するついでだ、教えてやろう」


セデギウスの話では…

シルエラは聖海騎士団の下からオリジナルJMを盗み出し、更にそれをカロル火山の火口に投げ捨てるという所業をしてきた。

しかもそれは数回、と言う生易しい数字ではない。

オリジナルJMやシンボルストーンはラディスの神からの贈り物、と伝えられているラディス教としては、シルエラのしていることはラディス神への冒涜となる。

「何でそんなこと」とユーテキが叫ぶと、シルエラはバーガーを睨みつけながら、言い放っていた。




「――せめてもの復讐よ」

「「「復讐…?」」」

「どういうことだ、シルエラ!」

「あなたは!……あなたは私とエミィを捨てて、ラディス教を選んだ…私達家族より、聖海騎士団としての使命を選んだ。それが許せなかった!!」

「だから…オリジナルJMを奪って、火山の火口に投げ捨てていたってのか…?」

「そうよ。私達を裏切ったあなたに、私が出来る…復讐よ!」

「聞いてくれ、シルエラ!…俺は聖海騎士団を抜けたんだ、俺のしていたことは間違いだったと…お前達を失って初めて、気付いたんだ。よりを戻そうとは言わない、だがせめてその宝珠だけはガナドール族に返してやってくれ!!」


バーガーはシルエラを説得しようとするが、彼女は頑なに返そうとしない。

それどころか、宝珠を火口に落とす準備を始めているのだ…

“火口に投げ込まれる前に、シルエラを殺してでも奪い取るしかない”

そう思ったセデギウスとガルシアは走り出し、それを食い止めようとミカ達が応戦。

その際、凛子と瞬平はシルエラのところに向かい、彼女を説得しようとしていた。


「シルエラさん!……バーガーさんが聖海騎士団を抜けたのは、本当なの…彼は今、ラディス教と対立する立場にいるの!!」

「そ、そうですよ!…それに、そのガナドール族の宝珠は…帝国と戦うために必要なものなんです!!」

「だけど、そんな話…到底信じられないわ…」

「だったら…見て!バーガーさんは今、聖海騎士団の人達と戦っている…それが答えよ!!」


凛子の言葉に、シルエラはバーガーを改めて見る。

自分に手出しをさせまいと、セデギウスと戦うバーガーの姿…

――彼女の話が本当なら、あの人は

そんなことを思っていると、他の聖海騎士団のメンバーが現れ、一斉にミカ達に襲い掛かる。

狭い場所での混戦。

状況は一気に相手側に傾き、セデギウスとガルシアがバーガー達の合間を抜ける。

「しまった」とユーテキが叫んだ瞬間、通信JMからソウセイによる連絡が入ってきた。



『皆さん!ガナドールの宝珠について、分かりました!!』

「ソウセイさん…今、ちょっと通信してる場合じゃ!」

『確かに古くからガナドール族に伝わる宝珠ですが…オリジナルJMのような力がないどころか、ガナドール神に豊作の祈りを捧げるための……ただの石だそうです!』

「ちょっ…それ何処情報なんですか!?」

『俺個人、ガナドールの宝珠について気になって…ダゴイさんから、昔の文献を借りて調べていたんです。古代から現代までそのままの姿で残る文献の話です、間違いはないかと!』


通信を聞いていたセデギウスは、ピタリと止まる。

だが、それはガナドールの宝珠がオリジナルJMでなかったと言う話ではない…

通信JMを使って伝えている相手の名前に、反応していたのだ。


「…ソウセイ、だと?まさか、いや、そんなはずは…」

「はっ、古い昔話など信じられるか!」


セデギウスの動きは止まったが、ガルシアは「信じられん」とばかりに突っ切る。

そして、凛子達ごとシルエラを斬り殺そうと剣を振るった

…その時だった。




瞬平達は目を瞑っていたが、3人に外傷はない。

それもそのはず、

――彼女達をガルシアの剣から守っていたのは、バーガーを深く信頼していた…フォスターなのだから。

フォスターはそのまま地面に倒れ、シルエラ達が駆け寄る。

腹は深く斬られており、術で治せる傷ではない。


「「フォスターさん!」」

「あなた、どうして…あなたは聖海騎士団の、一員じゃ」

「シルエラさん…俺は、……俺はずっと…バーガー隊長と、ラディス教について…疑問を抱いていました。……これが聖職者のすることなのか、他人を苦しめてまで予言を推し進めるべきなのか、と」

「「「…」」」

「俺は…ラディス教を抜けてまで戦う勇気はなかった、バーガー隊長のように…自分が正しいと思ったことを貫く覚悟はなかった。だけど、――最期にやっと…自分が正しいと思うことが出来た、隊長の…大事な人を、……守る…ことが………」


そのままフォスターは力なく首を傾け、そのまま息を引き取っていた。

ガルシアは「邪魔しやがって」と舌打ちしながら、もう一度シルエラを殺そうとしていたが…

周囲の聖海騎士団の者達を蹴散らしながら、怒りの形相でバーガーが向かってくる。

自分のジェネレーターに装着していた、JMの力を解放しながら。


「――ガルシアァァァァァーッ!」

「なっ!?」



拳を連続で叩きつけ、更に目にも留まらぬ速さで蹴り技を決める。

更に、気を込めた波動を拳に蓄積させ、衝撃波として放つ…

【ペンタクライシス】

その攻撃を受けたガルシアは軽く吹き飛ばされ、その先にあったのは――マグマの煮えたぎる火口。


「……ぐああああああああああああーっ!?」


ガルシアは叫び声を上げながら、火口の中に落ちていく。

そして、『ドボン』と激しい音を上げ、落ちていった…

この高さから、しかも摂氏1200度以上のマグマの中に落ちたのだ、命はまずないだろう。

しかしガルシアを倒しても、戦況は聖海騎士団が有利であることに変わりはない。

マグマの熱で互いの体力は削がれているが、それでも、人数で攻められる聖海騎士団のほうが勝てる可能性が高いのだ。

だが…

セデギウスはユーテキから強引に通信JMを奪い取ると、通信相手に話を聞いていた。


「あっ、ちょっと!」

「…これを聞いている者に問おう、君の名前は何だ」

『……ソウセイ…ソウセイ・ドラジウですが、それが…?』

「…そうか、――君は何故ラディス神に歯向かう反逆者達と行動を共にしているのだ」


何故そんなことを自分に聞くのだろうか。

そう疑問を感じながらも、聖海騎士団の隊長と話せる機会はそうそうないと思ったか、素直に話していた。




『…俺は、父を帝国によって奪われました。それで、自分も徴兵されかけたところを…晴人さん達に』

「……」

『あの、こんなこと聞くのも失礼だとは思いますけど。――帝国は今、他でもないアムニスフィールドの力を使って…たくさんの人々を殺す兵器を作り上げているんです。同時にそれは、あなたがた聖海騎士団が守るべきアムニスフィールドを破壊している』

「何?……猊下がそのような物を許すはずがない、現に私は何も聞いて…」

『アムニスフィールドの力を使った兵器の事を聖海騎士団に話せば、恐らく反乱の危険が出るからだと。――本当にアムニスフィールドの…ラディス教の、ルキナのことを考えているのなら……少し考えていただけませんか。今のラディス教の在り方と、これから聖海騎士団がどうあるべきかを』


ソウセイはあくまでも、アムニスフィールドとシンボルストーンが人工物であることを、言わなかった。

真実を話せば、セデギウスらは聞く耳を持たなかっただろう。

話を聞いてもらう方法としては正しい、とイーヴリンは思う一方で…

セデギウスは通信JMをユーテキに返すと、聖海騎士団に引き上げるよう話す。


「……全軍に告ぐ、直ちに帝都に戻れ!私は今回の件を、ルーク枢機卿に説明する」

「しかし、セデギウス隊長!」

「あいつらをみすみす逃がすことに…」

「私の言葉はルーク枢機卿の言葉と思え!…我々ラディスの教徒が重んじるべきは、その教義とラディス神から贈られしアムニスフィールド。本当にアムニスフィールドを兵器に利用しているとしたら、ラディスの神に仕える者として……放っておくわけにはいかない」


セデギウスは既に撤退を始め、他の聖海騎士団の面々もその後を追いかける。

「一体どうなっているんだ」と思いつつも、バーガーはフォスターの遺体を持ち上げていた。

…このような場所では、とてもではないが埋葬できそうもない。

火山を降りてすぐに小さな花畑があった、せめてそこに埋めてやろう…そう思っているのだろう。

そんな彼の背中を見ながら、シルエラは少し考え…



「…これ、返すわ」


と言い、近くにいた凛子にガナドールの宝珠を返していた。

凛子は驚きながらもそれを受け取り、シルエラに話を聞く。


「シルエラさん…どうして?」

「あなたの言うとおり、あの人は聖海騎士団を抜けたのは…分かった。結婚した頃と変わらない、優しくて…他人を思いやれる人のままだったんだって、分かった」

「「「…」」」

「ラディス教に入信してからのあの人は、別人のように変わってしまった。私の愛したあの頃のあの人はいないと思っていた…だけど、あなたやフォスターって人のお陰で、根本的な部分は変わっていなかったんだって分かったの」


…もう復讐なんてする必要ない

…だから、これを返すの

シルエラの話を聞き、凛子や瞬平はうんうんと何度も頷く。

だが、やはり長年の溝はそう簡単には埋まらないようで、再婚までには至らないらしい。

それでも、今のバーガーのことを理解してくれたのだろうと思ったミカ達は、「よかった」と互いに話す。

バーガーも背を向けた状態でその話を聞いていたのか、少しばかり…照れくさそうにしていた。





だが…

イーヴリンはここに来て、2つほど疑問を抱いていた。

まず1つ目はセデギウスの態度。

ソウセイの名前を聞いた瞬間から、どこか様子がおかしかった…

普段なら帝国に逆らう立場にいる人間の言葉は耳にしないはずなのに、どうして。

それから2つ目。


(セルシウスは結局、攻めてこなかった…やはり自分の不利な場所での戦闘は避けているのか。……それとも…)






***




※フォスターがカロル火山で死ぬのはブレイカーのシナリオ通り

なので、ツァールハイト国王やシェリーさんとは別パターン。

むしろ別パターンと言うべき展開は、フォスター殺したのは(ブレイカーのシナリオだと)本当はセデギウスなんだけどガルシアになりました…という部分。


ザウバーもまぁ、解決したかと思いきやまたフラグを…

と言うか、この人のフラグって5章にならないとほぼ全部回収されないんですよね。

まあしょうがないよ…

×××××で、このウィザダンでは××××××××××でもあるし、6章じゃ×××××××××××なんだから……(※文字数と実際の内容は一致しておりません)



カロル火山でのソウセイコントw

流石に火山にまで行けるわけないよ…そんなガイドだったら、ソウセイも戦力にならないと不自然じゃん…!←

ちなみに彼は持たせるとしたら、弓か槍ですかね。持たせませんが。

持つべき者はガイドの友達…いや、うん、そうなんだけど…そうなんだけどなポポw


シルエラさん…

下手したらウォドラさんかシンジじゃねーか……いや、あの2人は戦闘能力が異常すぎるからまったく持って違うんでしょうが!

フォスターは…いい人です。いい人なんですけどね…

ソウセイのファミリーネーム【ドラジウ】ですが、Wizardを逆にしてるんです。

Draziw、と言う感じで。

かなりウィザードに拘ってるのは、やっぱり父・コハク(=ランド)、母・ヒスイ(=ハリケーン)、長男・ソウセイ(=ウォーター)、次男・シンク(=フレイム)だからです。




次回は…

VSセルシウス、最終戦!