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タイトル未設定 - Magic10:ペット屋敷の共闘

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Magic10:ペット屋敷の共闘

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――昔から私は、クラウスが憎くて仕方がなかった。

憎たらしいほど善人ぶっていて、自分の矮小さ以上に反吐が出そうになる。

何をやってもあいつと比べられ、あいつだけが人に好かれ、私は“貴族”と言う肩書きがなければ誰にも相手されることはなかっただろう。

人間には心がある。

だからこそ、同じ血を分けた兄弟でもえこひいきされる者とそうでないものに分かれる。

…人間は信用できん

…信用できるのは金と権力のみ

そう思い、アビエスの林の奥で屋敷を構えて静かに暮らすようになったのだ。

そんな時私が偶然見つけたのは、当時はまだ小さく、人間に襲われたのか怪我をしていたマロンちゃんだった。

マロンちゃんはすぐに私に懐き、初めて私を好いてくれた。

そこで思ったのだ…人でなければ、私は好かれるのだ。人間相手に感じていたような、劣等感を感じなくて済むと。

私は早速マロンちゃんのために“遊び場”でもある大きな屋敷を建てさせ、マロンちゃんが寂しくないように他のペットを集めてきた。

時折逃げ出すペットもいたが、近くの村の人間と一通り遊べばちゃんと帰ってくるいい子達だ。


そして、クラウスと会わなくなって20年…

ようやく!

ようやくあのクラウスが死んだのだ!!

ああ、何と幸せなことだろう。さぞ惨たらしい最期だっただろうな。ざまあない。

この幸せが続けばいい…私はそう思っていた。

だが……

何たることか、クラウスが育てたと言うウェルテクス一族の娘がやってきたではないか。

恐らく、シラス様から預かった【例の研究資料】目当てに来たのではと思ったが…どうやらクラウスの訃報を伝えるためだけにやってきたそうだ。

しかし…ええい、血の繋がりはないとはいえ、クラウスを思い出させるような真っ直ぐな目をしおって…!

しつこい奴らを追い返し、私は疲れた心を癒そうと、マロンちゃんの遊び場に向かおうと、遊び場への鍵がある部屋に入った………が、



「――ひいいいいいいっ!な、なんだこれはッ!?」




屋敷からキルベルト公爵の悲鳴が聞こえ、コヨミを探そうとしていた晴人達は反射的に振り返る。

一体何が…?

しかし、彼に構っている間にも、コヨミは危険に晒されているかもしれない。

くそっと舌打ちする晴人に、イーヴリンと凛子、瞬平がこう言ってきた。


「…晴人!あんたはコヨミを追いかけな、私が様子を見に行く!!」

「それなら私も!」

「僕も残ります!晴人さん達は、コヨミちゃんを!!」

「……ありがと。ミカ、ユーテキ、コヨミを探すぞ!」

「うん!」

「分かった!」


晴人・ミカ・ユーテキの3人はすぐさま来た道を戻り、イーヴリン・凛子・瞬平はどうやって屋敷の中に入るか考えていた。

鍵は掛けられており、窓から侵入しようにも強化ガラスであるせいかなかなか壊れない。

瞬平が「どうしましょう」と慌てふためき、凛子は何度もドアを叩いて中のキルベルト公爵に呼びかけていたが…そんな彼女に退くよう言ったのは、剣を構えたイーヴリンだ。


「キルベルト公爵!何があったんですか、開けてください!!」

「凛子、ちょっと退いてな」

「え、あ、はい。……ってイヴさん何を!?」

「――こうなれば武力行使ってね。迅空断!!」


イーヴリンは思いっきり剣を振り下ろし、扉を派手に破壊する。

いいのかな…と瞬平は思っていたが、いくら陰険な人間とはいえ、誰かのピンチに手段を選んでいられないのも確か。

恐らく晴人やミカが残っていても、同じことをしただろう。

3人は屋敷の中に入ると、キルベルト公爵のいそうな場所を探す。

すると、ある部屋の前で腰を抜かしているキルベルト公爵を発見し、イーヴリン達は急いで階段を駆け上がり、様子を見ていた。



すると、その部屋の中はかなり荒らされており…窓は強引に開け放たれている。

書類のような紙は部屋中に散乱し、引き出しのあるものは机にタンスと総て開けられている状態…

これは誰が見ても、【強盗に入られた】と思うだろう。

凛子は刑事としてのスキルを存分に発揮するチャンスとばかりに、部屋を操作し始める。

「勝手に入るな」とキルベルト公爵は叫ぼうとするが、その前にイーヴリンや瞬平の質問攻めに遭ってしまう。


「…キルベルト公爵、一体何が?」

「モンスターが暴れたにしては、あんまり壊れたものがないですけど…」

「わ、私のペット達が私に危害を加えるわけがなかろう!……貴様らには関係ないわ!!」

「いや、しかし…」

「――イヴさん、瞬平君、ちょっとこれ見て!」


凛子が何かを発見したのか、二人を呼ぶ。

イーヴリンと瞬平が向かうと、凛子が指を刺したのは、何か小さなものを掛けるかのように壁に取り付けられた小さなフック…

壁掛け用の絵かとも瞬平は考えるが、絵は壁に掛けるせいか、普通なら絵の後ろにある壁紙だけ色褪せてなければおかしい…しかしこのフックのある壁紙は、周りとほぼ同じ褪せ方だ。

頻繁にその“フックに掛かっていたもの”を使わなければ、そういうことはないはず。

そう思っていると、凛子があることを思い出し、「もしかして」と尋ねる。


「……キルベルト公爵のペット屋敷の鍵、とか」

「ええっ?そ、そんなもの盗んでどうするんですか!?」

「それは…私に聞かれても…」

「ま、――まさかウェルテクスの研究資料を…はっ!」

「…ウェルテクスの研究資料?」


キルベルト公爵が口を滑らせ、その言葉にイーヴリンは反応する。

当然、凛子や瞬平も同じように…

しかし当の本人はと言うと、「ウェルテクスなんて知らん」「どうせドロボウは私のペットに頭から食われている、さっさと帰れ」と追い返そうとする始末。

だが、その表情に余裕はなく、ペット屋敷にウェルテクス一族に関係する何かがあるのは確かなようだ。

これ以上本人に聞いても分かることはないだろう。

そう思った3人は素直に屋敷から出て行くと、晴人達と合流するためアビエスの林を駆けていた…




一人残された、キルベルトは…

頭を抱え、考えていた。


「――しかし、ああ言った手前…もしもウェルテクスの研究資料が奪われるようなことがあれば……いやいや!私のペット達は…マロンちゃんはとても強い。そんなことなどありえん…」






〜〜〜






凛子達は何とか晴人達を見つけ、ウェルテクスの研究資料について話す。

キルベルト公爵の屋敷に、ウェルテクスの手がかりがしっかりとした形であったことに驚くミカだが、問題は例のペット屋敷の中にあるということ。

その一方で、凛子はコヨミの手がかりはなかったか晴人に尋ね…

彼は複雑な表情をしながら、ある方向を指差していた。


「ところで晴人君、コヨミちゃん見つかった?」

「いや。…でも、何処に向かったかは大体」

「あそこにあるのって…もっ、モンスターの死骸!?」

「恐らく、この後を辿って歩いている可能性はある。万が一はぐれたとしても、『俺達が道中モンスターに襲われた』と思って…この死骸を目印に歩けば、」

「でもこれ、一体誰が…?」

「俺達の中の誰でもないのは確かだ。…しかしこの太刀筋、どこかで…」


しかし、気にしているだけでは埒が明かないと思ったか…晴人達はモンスターの死骸を辿って先に進む。

そして…

辿り着いたのは、キルベルト公爵の屋敷よりも一層不気味な、まさにモンスターが住処にしていそうな屋敷だった。

というより、むしろ廃屋に近い。

こんな場所にコヨミが一人で向かったのか…?

晴人は不安そうな顔でペット屋敷を見上げていたが、ふと、扉の前でクラーケンとユニコーンがジャンプして待っているのを見かける。



『ヒヒン』

『ビチビチ…』

「お前ら!……ここにコヨミがいるのは、間違いなさそうだな」

「何でこんな場所に…?」

「とにかく、早く行って助けないと。キルベルト公爵の屋敷から鍵を盗んだ奴もここにいるなら、コヨミが危ないもの!」


ユーテキが瞬平の後ろに隠れながら屋敷を恐る恐る見、ミカはそんな彼の背中を叩きながら先へ進もうとする。

ちなみに、ミカが背中を叩いた衝撃でユーテキは瞬平を突き飛ばす形になり…二人して、派手に倒れる始末。

しかも倒れこんだ先には、人かモンスターか分からない白骨が…ごろりと転がっていた。

当然二人は声にもならない悲鳴を上げ、それを無視して進む晴人・凛子・ミカ・イーヴリンは……むしろ、ペット屋敷の中に転がっている大量のモンスターの死骸に驚いていた。

一体のワーヴァルチャーが腹部に大きな穴を開けられていることを除けば、後は屋敷に行くまでの間に転がっていた死骸と同じ太刀筋…

イーヴリンは難しそうな顔をしながら、アナコンダの死骸を見て唸る。


「……間違いない、ここに入り込んだ泥棒は…二刀流使いだね」

「二刀流…確かルピートも、昔やってたって聞いたな」

「誰かは知らないけど、これだけの数を相手にやれるんだ。…特務機関にいてもおかしくない腕の持ち主だよ」

「相手が複数犯って可能性は?」

「ない。どの傷も、同じ人間がやったとしか思えないものだ。……参ったね、こいつにコヨミを人質に取られることがあったら…数の暴力でも勝てるかどうか」

「……とにかく、コヨミを探そう。俺と凛子ちゃんとミカとクラーケンはこっち、ユーテキ・イヴ・瞬平・ユニコーンはあっちを探してくれ」


戦力になる数と非戦闘員、プラモンスターが各チーム2:1:1になるように、晴人はすぐにメンバーを分ける。

晴人達のチームはモンスターの死骸を追って屋敷の奥に進み、ユーテキ達のチームは周辺の部屋の扉を開けてコヨミの名前を呼びかけていた…




その頃…

コヨミはザウバーと名乗った男と一緒に、屋敷の奥に進んでいた。

念のためにユニコーンとクラーケンは自分の居場所を晴人達に伝えるよう残し、ガルーダだけを連れながら。

基本的にモンスターはザウバーが倒してくれるので、コヨミに危害はない。

…時々まだ息のあるモンスターがコヨミに襲い掛かることはあったが、その都度シャドウエッジによって完全に止めを刺されていた。


「……結局守ってくれてるじゃない」

「勘違いするな。俺は、自分に降りかかる火の粉を払っているだけだ」

「それよりも、ザウバーは何をしにこんなところに来たの?」

「…逆に聞く。お前は何でここに来た」

「……さっき、ヴィオラの村でモンスター騒ぎがあった際…一人だけここに向かっている人の姿が見えて、モンスターの死骸を辿った先でその人がこの屋敷に入り込んだのを見たから」

「…余計なことに首を突っ込むと、命を落とすぞ」

「それであなたは?私もちゃんと話したんだから、話してよ」


それは俺のことか、と言うような顔をしながら頭を抱えるザウバーに、コヨミは尚も説明を要求。

何度「話すつもりはない」と言っても、「話せ」と要求してくる彼女に遂には諦めも出てきたのか…

ザウバーは大きな溜息をつくと、コヨミに説明していた。


「……この屋敷には、ウェルテクスの研究資料がある」

「ウェルテクスの…?何でこんな場所に」

「さあな、資料と言うからにはまだあるんだろうが…俺が掴んだのは、ここにその一部があると言うことだけだ」

「…どうしてウェルテクスのことを調べているの?」

「……JMハンターとして興味があるだけの話だ。内容によっては、取引にも使えるしな。それよりも、お前もまるでウェルテクスのことを調べているような口ぶりだが…何者だ?」



それは、とコヨミが説明しようとした…その時だった。

なにやら大きな鼾が聞こえ、一体なんだと二人は少し開いた扉から様子を伺う。

すると…

そこにいたのは、ザウバーの身長は軽く越えているであろう巨大な毛むくじゃらな犬が、寝ていた。

ただの犬ならいい。しかし、その牙は鋭く…爪も犬にしては太すぎる。

コヨミとザウバーは小声で話しながら、扉の向こうにいる巨大なペットについて話していた。


(…何、あのモンスター…)

(あのデカさ…見たところ、キルベルトお気に入りのペットだな。……!)

(どうしたの?)

(あいつの寝ている先を見ろ。……あそこに一冊だけ本の置かれた、棚がある)

(もしかして、あれが例の研究資料?)

(可能性は高い。……おい、お前、ここでおとなしく待っていろ)


そう言いながらザウバーはゆっくり扉を開け、資料を取りに行く。

どの道コヨミは、万が一あの怪物が起きて襲われたとき…対処することができない。

仕方なく、ここで待っているしかないのだ。

ザウバーは何とかモンスターを起こさないように移動すると、資料に手を伸ばし、それを手に入れていた。

…後はここから出て、ついでにあいつを安全な場所に送り届けるだけか

そう思ったザウバーはすぐさま部屋を出ようとするが、予想だにしない事態が起こった。




「――いたっ、コヨミちゃん!」

「も〜っ、心配したんだよ!?」

「まったく…はぐれるなって言ったじゃないか」


凛子とミカ、晴人がコヨミを発見し…大声を上げたのだ。

特に凛子とミカが騒がしく、コヨミはザウバーのいる部屋と晴人達を交互に見ながら『大声出しちゃ駄目』とジェスチャーで伝えようとする。

凛子はコヨミのただならぬ様子のせいか大体は分かってくれたが、ミカが軽く空気を読めない(ただし何処かの不憫漫才コンビよりはマシ)のは痛かった…

更に大声でコヨミに尋ね、ザウバーも必死で「黙らせろ」とジェスチャーでコヨミに伝える事態に。


「えっ、何?全然聞こえないよ!」

(…おいっ、コヨミ、静かにさせろ…こいつが起きる!)

「(わ、分かった)……み、ミカ…声、声小さく…」

「そうだ、コヨミ、何処かでウェルテクスの研究資料見なかった!?どうやら、このペット屋敷にウェルテクスの手がかりが――」

『グゥゥ…、フガッ?……バオォォォォン!』


ミカの声が煩く、遂に巨大なペットが目を覚ましてしまう。

その怒号に近い咆哮には、晴人達も肩を弾ませる始末…

それには別の場所を探していたイーヴリン達も合流し、なんだなんだと急いで扉を開ける。

するとそこには、片手に資料を持ったオッドアイの男と…それと対峙する、巨大な犬の怪物。

全員口々に叫ぶが、この中で一番怒りたいザウバーは彼らを一喝すると、コヨミに研究資料を投げ渡し、腰にある二刀の刀を抜く。



「あっ、もしかして、――そいつが鍵泥棒!?」

「コヨミ、大丈夫だったのか!?」

「怪我とかなかった!?」

「コヨミちゃん…本当に心配したんだよ〜…無事でよかったー!」

「ね、ねえ、あの怪物何!?何がどうなってんの!!?」

「たぶんあれが…“マロンちゃん”なんだろうけど、……いや…名が体を現してなさすぎでしょアレは…」

「――お前らいい加減その口閉じろ!それとコヨミ、邪魔だからこれ預かっていろ…言っておくが預けるだけだからな」

「あ、うん…。……晴人、あのモンスター倒すの手伝ってあげて!」


資料を投げ渡されたコヨミは晴人と合流すると、驚くような発言をする。

ミカ達としては、ここに入ってきた泥棒を助ける義理はない…

それどころか資料がこっちに手に入ったのなら、それを持って逃げるべきではないのか。少なくともあんなでかいモンスター、手に負えるはずがない。

しかし、コヨミは詳しい説明を始め、それを聞いた晴人やミカは武器を構える。


「…ザウバーは私を助けてくれた、ここまで勝手に付いてきてもずっと……だから晴人!」

「まあ…あんな怪物がもし逃げ出したら、それこそヴィオラの村はやばいだろうし……コヨミの頼みだからな。助太刀するぜ、オッドアイの泥棒さん」

<ドライバーオン、プリーズ シャバドゥビタッチ…>

「うーん…なんかまだ信用できないけど、…見捨てることもできないし」

「変身!」

<フレイム、プリーズ ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!>




晴人はウィザード・フレイムスタイルに変身すると、ウィザーソードガンでマロンちゃんを狙撃し始める。

しかしそのでかい図体からか効き目は薄く、逆に攻撃をしてきたウィザードFSを噛み砕こうと突進し始めていた。

ミカも“スプラッシュ”で応戦するが、効き目がまったく薄い…

こうなればと右手の薬指に嵌めた指輪型ジェネレーターにある、オリジナルJMの力を借りようとするが

…何をやっても反応する様子はなく、「どうして」と叫ぶ。


「なんで!?ジェネレーターがあれば、使えるんじゃないの!?」

「やっぱり、ジェネレーターとは別の要因があったか…!」

「――!」


ウィザードFSはそう叫びながらシューティングストライクの体勢に入るが、炎の弾丸を受けても尚倒れないマロンちゃんの頑丈さ。

…いや、これ、絶対「マロンちゃん」じゃないって…!

ウィザードも、イーヴリンやユーテキもそう思いつつ見ていると、ザウバーはミカのオリジナルJMを見てとっさに彼女の右手を掴む。

その顔は、驚きに近い。


「ちょ、ちょっと何するの!?」

「…お前、このJMを何処で手に入れた?」

「え?これは…お母さんの形見なの、ピアスと一緒に渡された、お母さんの形見…」

「……形見?」

「そう。ここにあるって言う、ウェルテクスの研究資料も同じ…私の家族について知るための、手がかりでもあるの!」



“私の家族”

それを聞いたザウバーは、「もしかして」と思考を張り巡らせる。

ピンクの髪、水のように透き通った蒼の瞳。

それを持つ人間で“ウェルテクス”といえば、11年前に死んだステラ博士と…その娘。

生きていれば、目の前にいる少女と大体同じだろう。


「もしかしてお前、…ウェルテクス一族なのか?」

「最後の一人だよ。家族は皆、11年前にリーリエリヒトに殺された…育ててくれたクラウスお爺ちゃんも、私を守るために……」

「…」

「私、家族のこと何も知らない。自分の中にある力さえも…だからお願い!あの資料はあなたにあげてもいい、だけど、中身は見せて欲しいの!!」

「――ちょっ、ミカ手伝ってぇぇぇ!?」


わああ、と女の子のような悲鳴を上げるユーテキ。

ミカは「何してんの」と言いながら、虎牙破斬で援護に入るが…ダメージは薄い。

どうにかできないのか、とウィザードFSが考えていると、ザウバーが大きく踏み込み、“霊鋼剣(れいごうけん)”でマロンちゃんを切りつける。

更にそのまま連続で斬りつけ、それに続く形でウィザードFSも“エキサイト”リングを使って肉体を強化し、ラリアットでマロンちゃんを大きく仰け反らせていた。


「…よしっ!」

「随分と不可思議な力だな…」

「言っておくけど、手品じゃなくて魔法だからな」

「いや、手品にしてはおかしいだろう。……魔法と言うのも信じがたいが、それが一番近い例えだろうな」

「……ああっ、ルピートのおっさんもこのぐらい…物分りがよかったら…!!」

<フレイム、ドラゴン ボー、ボー、ボーボーボー!!>



ウィザードFSは仮面の奥で涙を流しながら、フレイムドラゴンへとチェンジする。

しかし、「ルピート」と言う名前を聞いたザウバーは目を見開く。

一方のウィザードFDはコピーリングでウィザーソードガンを2つ召喚しながら、ザウバーに尋ねる。


「あんた、コヨミを守ってくれたんだってな」

「…あいつが勝手について来ただけだ」

「それでも、礼は言わせて貰うよ。無愛想で素直じゃないけど、優しいところもあるんだな」

「ばっ、…馬鹿なことを言ってないで目の前の敵に集中しろ!」

「はいはい!」


意外と照れ屋な面があるのか、感謝の言葉を告げるウィザードFDから目を反らしつつ言い放つ。

…素直じゃないの!

意外と弄りがいのありそうな性格に苦笑しつつも、ウィザードFDはマロンちゃんを相手に二刀のウィザーソードガンで応戦する。

流石にダメージは蓄積しているのか、マロンちゃんの動きが鈍くなる…

これでトドメだ、と言わんばかりにウィザードFDはスペシャルリングを取り出し、胸にはウィザードラゴンの頭が出てくる。某ど根性ガエルのピョン吉の如く。


<チョーイイネ! スペシャル、サイコー!!>

『バウゥ…』

「さあて…ミディアム、レア、ヴェルダンと焼き加減はあるが……こいつの場合は、ヴェルダンでいいだろッ!」


そう言い放つと、ウィザードラゴンから強力な火炎放射が放たれ…マロンちゃんの巨大な肉体を包む。

苦しく悶えるマロンちゃんではあるが、もはや体力の限界に近い。

そのままマロンちゃんは爆発し、ウィザードFDは「ふぃー」と一息ついていた。






〜〜〜






キルベルトのペット屋敷に勝手に入った上に、そのペット達を…お気に入りもろとも(主にザウバーが)倒したとなれば、確実に面倒なことになるだろう。

当然、ウェルテクスの研究報告書についての情報は貰えなくなる…

しかし大事なのは、今手に入った報告書の内容を調べること。

そう思った晴人達はヴィオラの村の宿屋に行くと、コヨミが預かっていた研究報告書の内容に目を通していた。


「ええっ、【アムニスフィールドとJMの関係について】!?…嘘だろ、JMはアムニスフィールドから力を貰ってるの!?でも確かに、そう考えないとああいう色々な使い方はできないだろうし……だとすると、やっぱりミカのあの姿は、JMを通してアムニスフィールドの力を使っているってことになるのか…」

「…あー…ユーテキって、そういえばウェルテクス社の一員だったわね……半分死に設定だけど」

「死に設定じゃないからね!?」

「だけど、私が気になるのは……ほら、ここ。『JMの性質を利用し、砂漠の町を水で溢れる豊かなオアシスの地にする実験に成功した』って部分」

「本当ですね…砂漠の町を、水で溢れた町に…?」


ミカとユーテキの漫才を無視しつつ、凛子は報告書の一文を指差して話す。

それには瞬平だけでなく、晴人やコヨミも驚くばかり。

――報告書によれば、先代のバグバード・ステラ夫妻はウェルテクスの技術を使い、水源が枯れ果ててしまったはずの砂漠の町を救うべく、新しい水源ともなるJMを開発し、それを使うことによって砂漠の町の水源を復活させたという…

しかもこれは、アムニスフィールドの力の一部しか使っておらず、アムニスフィールドさえあれば半永久的に水を湧かせることができるという。

魔法でもないのに、こんなことが可能なのか?

晴人達はそう思っていたが、この世界は自分達の世界の常識が通用しない部分がある…それに【成功した】と書かれている辺り、本当にそんな町があるのだろう。

他には何も書かれていないこともあってか、ミカは次の目的地を決めていた。



「…私、この砂漠の町に行ってみたい。そうしたら何か、分かるかも」

「賛成だよ!僕も、間近でその技術を目にしたいし…」

「決まりだね。ところで、ザウバーだっけ…あんたはこれからどうする?」


大はしゃぎするミカとユーテキだが、イーヴリンの言葉に、「そういえば」とザウバーのほうを見る。

彼も、理由は定かではないがウェルテクスの研究資料を探している…

コヨミ曰く「JMハンターとして興味がある」とのことだったが、もしも別の研究報告書があると言う情報を手に入れ、ミカ達が向かった先にザウバーと出会うことがあれば……今度は敵同士として戦うことにもなるだろう。

晴人ならそこそこ渡り合えそうだが、相手の底が知れないのも確か…

そう思っていると、瞬平が「あ」と何かを思いついたのか、ザウバーに尋ねていた。


「ザウバーさんもウェルテクスについて知りたいんですよね?」

「…ああ」

「だったら、僕達と一緒に来れば問題ないんじゃないですか?仲間が増えれば晴人さん達の負担も減るし、目的が同じなのに行く先々で取り合うって言うのもアレですし…」

「「「えええっ!?」」」

「瞬平君。……それ、すっごくいい案よ…!」

「瞬平にしては冴えてるじゃない。互いの利害は一致しているんだから、無駄なことは互いに避けるべきよ」

「腕も立つしな。…まあ、こればかりは本人しだいだけど…ぶっちゃけどうなんだ?」



瞬平の案に驚いたのは、ミカ・ユーテキ・イーヴリンであったが…

むしろ凛子とコヨミはそれに賛同しており、晴人もなるべくならそうしたほうがいいと思う節もある。

だが、結局決めるのはザウバー次第。

しかし、意外と彼は瞬平に言われる前にその提案を出すつもりでいたのか、出鼻を挫かれたような複雑な顔をしながらも、同行させるよう話す。


「…俺はそれでも構わない。コヨミの言うように、互いの利害は一致している以上…同行したほうが片方に情報を独占されなくていい」

「じゃあ、決まりだな」

「でも、なんか偉そう…」

「大丈夫、ミカも負けてないよ!」

「……ユーテキ〜…?」

「あっ、すいません、失言でしt…あぁぁぁぁぁぁぁー!!!」


余計なことを言ったユーテキ、…ミカにマフラーを掴まれ、部屋の外へ。

晴人は失笑し、ザウバーは呆れながら、それを見送り…

帝国に追われている以上は早めに行動したほうがいいだろうと、宿屋を後にしていた。





その頃…



「な、何と言うことだ…!?」



キルベルト公爵は嫌な胸騒ぎがしたのか、ペット屋敷に足を踏み入れる。

だが…

そこで彼を待ち受けていたのは、自慢のペット達が無残に殺されている姿。

しかも、自分の唯一の心の友であるマロンちゃんも丸焼きになった死体で見つかり、更にはウェルテクスの研究報告書も盗まれている。

犯人は分かる。

クラウスが育てたと言うウェルテクスの娘と、その連れだ。


「よ、よくも私の大事なマロンちゃんを……いやっ、それよりも、あの報告書が奪われたとシラス様に知られれば…どうなるか。……おのれ…ウェルテクスの娘め、ただで済むと思うなよ…!」






***




凛子ちゃんが刑事として仕事してる……←

いや、本職なんですけどねw


キルベルトェw

この人はある意味鳴滝っぽいです。いや、鳴滝より性質が悪い気がしますが。

とりあえず分かっていること…

案外騒がしいのは晴人達側だったってだけで、ザウバーとコヨミは普通でしたねw

互いに会話が少なそうなコンビですが。

それでも、あのこよみんが積極的に話しかけるのは珍しいよ…!



ミカェw

あんたが一番騒がしいんだから自重してあげなさい…

まあそんなことはさておき、マロンちゃん…予想していた方もいたかもしれませんが、モンスターです。

すっげぇ不気味ですw

漫画版のほうが可愛いですが…あれほぼただの子犬(ただし口が2つある)です。

ミカ・イヴ・ユーテキの反応なんて


ユーテキ「ぺ…ペットか。この子の飼い主は何処かな」

マロンちゃん「ワフッ」←喉元からもう一つの口がデバァ

ユーテキ「゜□゜ 」

ミカ「OДO」

イヴ「 ゜д゜」

ユーテキ「ギャアアアアアアアー」

ミカ「何この犬ー」

イヴ「イャアァアアアアア」


……だったんですからねw

いや、漫画版で一番恐ろしかったのは、キルベルトが部屋に戻った瞬間、キルベルトの後ろにある扉に刀を投げつける(しかもキルベルトの右耳スレスレ)上に、それを「チッ」と舌打ちしながらやらかしたザウバーなんですがww



ルピートとのボケツッコミ合戦がトラウマになっている晴人w

まあ、ザウバーはその辺分かってくれる人ですが…

ちなみにザウバーは公式で皮肉屋だけど照れ屋でもあります。

漫画版なんて見ると特にそんな感じ…いや、アプリゲー本編のほうが相当弄られてますが。

尚、ザウバー弄りはルルが出てからが本番です。

コヨミにも弄られたらもはや危ないです。

でも、ザウバーはそもそも今回で、ミカに言われるはずの【あの称号】がなかったからなぁ…次回に回そう。うん。


ちなみに瞬平がザウバーさんと呼ぶのは違和感ないけど、凛子ちゃんがイヴさんって言うのに若干違和感を覚える(個人的に)理由って…

やっぱ晴人の年齢にもよるけど、瞬平は同い年でも「○○さん」って呼びそうな印象だからでしょうか。

凛子ちゃんのイーヴリンに対する呼び方は「イヴ」のほうがしっくりきそうだけど、今まで「イヴさん」だったからなぁ…

そもそも彼女と凛子ちゃんの年齢差が分からない。ヘタすれば凛子ちゃん>イヴだし。

まあ、イーヴリン辺りが凛子>自分と分かれば「さん付けはいいよ」って言ってくれそうなんですが。

尚、ザウバーとイーヴリンは同い年らしいです。個人的にも衝撃的だった。

イーヴリン、25歳ぐらいに思ってたもん…!←




ザウバー加入〜砂漠の町到着の間しか、今後のシナリオ的にも暫くの間は色々やる余裕はないと思うので…

ウィザード的な内容をするか、それすら外れて脱線するかしたいですw

まあ、1〜2話だけ本編に関わりそうな話になりそうですが…

っていうか、その分合流の遅れそうなウォータードラゴンェww