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タイトル未設定 - Magic42:強襲

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ラディス大聖堂の地下。

そこでは、ユディーヌが頭を抱えながら考え事をしていた。

…イーヴリンとの戦いの時から、頭痛が止まらない

…それだけではない

…彼女と戦うと、どうしてか懐かしい気持ちになってくる

…もしかすれば、自分は本当にアンギュロスの

だが、ユディーヌは首を何度も横に振り、その考えを否定する。


「駄目だ。奴らの言葉に騙されるな、――私にとっては、猊下が総てなのだ…私は猊下に仕え、お守りする身……余計な感情に流されるな……!」


そんな彼女の前に、一人の男が現れた。

…グラントだ。

彼の姿を見たユディーヌは、「何の用だ」と冷たくあしらおうとする。

しかし、グラントはユディーヌの前に跪きながら、頭を垂れていた。


「な…?」

「……ユディーヌ様、心が落ち着かないようであれば、暫くここでお休みください」

「何の真似だ。それに、私の心配など無用だ!」

「今のユディーヌ様は、心の迷いが大きい。その状態で、お役目を果たせると思うのですか」



グラントの言葉に、ユディーヌは悔しそうな顔を見せる。

…当たっているのだ。

今のユディーヌは、突きつけられた真実と皇帝への忠誠心の狭間で葛藤している。

その状態で、自分に課せられた使命を果たせるはずがないのだ。

しかしユディーヌは、自分が女だからそう言っているのではないのかと邪推してしまう。

結果としてグラントに冷たく当たるが、彼は頭を垂れたまま話を続けていた。


「…それは、私が女だから言っているのか?女は戦場に立つべきではないと?」

「……確かにあなたが女性だと知って驚きはしました。ですが、あなたが思い悩むまま戦う姿など私は見たくない」

「…」

「今は、心が落ち着くまでお休みください。ユディーヌ様」


あの冷徹無情と言われた男が、ここまで。

ユディーヌはグラントが命令を遂行するためならば、表情すら変えずに対象を殺害することを知っている。

そんな彼が、自分を気遣っている。

…ユディーヌは「やはり女だから見下しているのでは」とも思うが、グラントの言うことにも一理ある。

ここは素直に暫く、平常心を取り戻すことにしていた。


「……分かった。私がいない間、猊下をお守りしろ…分かったな、グラント」

「御意」




その頃、某所では。

ザウバーの左腕を調べていたギリオンの元に、イシュトヴァーン皇帝とシラス宰相が現れていた。


「…おや、お二人ともお揃いで…どうしたのですか」

「ギリオン。――それが、例の“蒼と紅の光を放つ腕”の持ち主か」

「グラント様からの連絡を聞いた時は、驚きましたなぁ…せめて、報告ぐらいはしていただかねば」

「申し訳ありません。ですが、せめて私のほうで調べてみてからでも…と思いまして」


そう言いながら、ギリオンはザウバーの服の左腕の裾を下ろす。

麻酔の効果が切れたのか、薄っすらと目を開けるザウバーであったが…

その直後にイシュトヴァーンの姿を見、目を見開いていた。

そのまま立ち上がろうとするが、体の自由は完全ではなく、目の前の皇帝を睨み付けることしかできない。

一方でシラスはザウバーの顔を見て、首を傾げていた。


「?この男、どこかで…」

「知っているのか、シラス」

「…いえ、恐らく人違いかと思われます。それに紅と蒼のオッドアイの男など、非常に覚えやすい特徴でありますし」

「そうか。……それでギリオンよ、分かったのか…この男はアムニスフィールドのエネルギーを解放するための、【鍵】だと」

「――そこまでは判明しておりません。とにかくまずは、シンボルストーンとこの男を引き合わせなければ」



ギリオンの言葉に、ザウバーは先程の彼の証言との食い違いに気付く。

…さっきは「【鍵】ではない」と言い切ったというのに

…何故今は、「【鍵】かどうかは分からない」という曖昧な言葉を

しかし、イシュトヴァーンやシラスはそれに気付いていないのか、すぐにシンボルストーンを安置している場所までザウバーを連行しようとする。

だが、彼は自分の腕を掴もうとするイシュトヴァーンの手を振り払いながら、言い放つ。


「…お前達も気付いているんだろう?このままウェルテクス社の兵器が、アムニスフィールドのエネルギーを食らい尽くせばどうなるのか」

「ほっほっほ。これは異なことを仰る……アムニスフィールドは無限のエネルギー体の膜、我がウェルテクス社の兵器でエネルギーが枯渇することなどありえはしないのです」

「アムニスフィールドの力は無限ではない!…確かに使った後のエネルギーは多少は還元されるだろうが、それでもお前達の造った兵器はエネルギーの消費が尋常じゃなさすぎる……このままだと、アムニスフィールドが壊れる可能性が出て来るんだぞ!!」

「…話になりませんなぁ。猊下、参りましょう」


完全に聞く耳を持たないシラス。

イシュトヴァーンも事の重大性に気付いておらず、ザウバーは拳を握り締めながら呟いていた。


「――こんな奴らに、…俺の……父さんや母さんは…!」



イシュトヴァーンに向け、紅い光の力を放とうとするザウバー。

だが…

その手を鷲掴みにしていたのは、ギリオン。

更にはグラントもイシュトヴァーンらに合流し、軽く後頭部を殴って気絶させる。

「何の騒ぎだ」と振り返るイシュトヴァーンにギリオンは、


「……なんでもございません。この男は我々で運びますので、どうぞ先をお歩きください」


とだけ、告げていた。






〜〜〜






所変わって、【面影堂】。

アーヒバルド公爵邸から2人の貴族を救出してきたミカ達は、晴人達を待つのみだった。

その間、輪島の出してくれたコーヒーを飲みながら、アーヒバルド公爵はフィルギニア公爵に尋ねていた。


「しっかし、あんたが絡んでくるのは予想外だな。厄介ごとは嫌いじゃなかったっけ?」

「えぇ、確かに。だけど…可愛いお人形さんのためですもの」

「可愛いお人形さん?」

「ええ。お人形みたいに可愛らしい子だから、私はそう呼んでいるのだけど」

「へぇー、そいつは会ってみたいもんだ」

「「…アーヒバルド公爵?」」


ぎろり、とイーヴリンやフィルギニア公爵からの鋭い視線を貰い、アーヒバルド公爵は自粛していた。

そもそも、この男…

自分とブリュンヒルド公爵を助けに来たメンバーに女の子が3人もいると知って、早速口説き始めていた。男であるユーテキとバーガーは無視して。

黄色の貴族なのに、どこかの赤いワイルダーさんみたいなことをする人である。

しかし、そんな彼の暴走をイーヴリンが止めてくれたお陰で、ここまでスムーズに辿り着くことができた。

状況をバーガー経由で聞いたブリュンヒルド公爵は、「そうか」と腕組みをしながら話していた。


「……まずは、帝国のどこかにある装置を切らなければ、カルラ達が攻め入ることは不可能…というわけか」

「一応聞くが、あんた達は心当たりはないのか?」

「…すまない。まったく」

「俺もそういった話は聞いてないな。多分、ウェルテクス社か大聖堂、リーリエリヒト城のいずれかとは思うんだが」



「……装置なら、ウェルテクス社の最上階にあります」



そんなことを話しながら、面影堂の扉を開けたのは…

以前、アーヒバルド公爵に助けを求めた、セラピア出身の若い男の研究員だった。

更に後ろから、アーヒバルド公爵と仲のいい女性の研究員も現れ、レヴィーや凛子、瞬平もやってくる。

輪島は久々に見た凛子と瞬平に「元気だったか」と声を掛け、アーヒバルド公爵は凛子を口説こうとして足を踏まれる始末。

…ちなみに凛子の物理的ツッコミは、ミカ達女性陣が大拍手。

苦笑いをしながらも、ウェルテクス社の研究員2人は詳しい話をアーヒバルド達にする。


「実はここにいる彼女、ミランダは…2ヶ月ほど前から【神の剣】のプロジェクトから外され、代わりに何らかの妨害装置を作っていたようなんです」

「はい…ギリオン様の命令で。でも、何の装置かまったく分からなかったし…あの方も特に説明はしなかったから、反乱軍が攻め入った時のシールド装置なのかと」

「つまり、2ヶ月前からギリオン宰相補佐は…アウデンティアの魔法使いの介入を予想していた、ということになるか」

「そもそも、ギリオン宰相補佐ってよく分からないんだよなぁ…ウェルテクス社に入った経緯にしても、謎が多いし。……それよりも、設置した場所って詳しくは分からないんですか?」

「いや、分かるには分かるが…ユーテキ……」

「…あなた、何でここにいるの?」

「――って、僕がいなくなってたことに気付いてなかったんですかーっ!?」


酷いよユウリさんにミランダさん、と嘆くユーテキ。

しかし、そんな彼を華麗にスルーしつつ、ミカは詳しい場所をユウリ達から尋ねる。

ミランダの話では、装置こそ別の研究室で作ったが…設置自体はウェルテクス社最上階にある、空中庭園。

ウェルテクス一族が昔、社のほうで泊りがけで研究をしている時…子供達が退屈しないようにと、空中庭園に作り変えたそうだ。

ユーテキも研究の息抜きに訪れたことがあるが、そこから見る景色はかなりのもので、…そんな場所に無粋な装置を作ったギリオンを許せなかった。


「ところでミカって、空中庭園に行った記憶は…」

「全然ない。…たぶん、お兄ちゃんだったら覚えていたんだろうけど…」

「そっかぁ。庭の花や噴水も凄く綺麗だし、見晴らしもいいから絶対気に入ると思うよ」

「…でも、今は楽しんでる暇なんてないよ。何としても、装置を切って…ザウバー達を助けないと」




そう話しているミカ達の元へ、再び面影堂の扉が開く音が聞こえる。

そこから現れたのは、晴人にソウセイ、コハク…そしてコヨミ。

コヨミの姿を見た凛子達は大喜びし、アーヒバルド公爵は「確かに人形みたいに可愛い子だな」といった瞬間、フィルギニア公爵に足を踏まれていた。

しかも、ハイヒールなので威力はかなりのもの。

足を押さえて悶えるアーヒバルド公爵を無視して、晴人達も自分達の状況を話す。

そして…


「「「ルーク枢機卿が、セデギウス隊長!?」」」

「…らしい。で、今は俺達に協力して、皇帝を止める手伝いをしてくれている。と言っても、まずは妨害装置を切らなきゃだけどな」

「だ、だけど…その人信用できるの?セラピアの水源JMを奪った人なんだよ!」

「私は信じる。……ルーク枢機卿は誰よりもラディス教を愛していた、だからこそ、今まで自分のしていることがラディス教のためだと信じて多少行き過ぎた行為をしてでも…教義を守ることに必死になっていたのだろう」

「それに、父さんのことも助けてくれたし…俺の言葉を信じてくれているみたいでした。……大丈夫、あの人は嘘なんてついてない」

「…まあ、今までセデギウスであり続けられたのが珍しいほど、嘘つくのが下手くそなんだよな。ルーク枢機卿は」


コハクやソウセイだけでなく、バーガーもルーク枢機卿を信じるようだ。

ユーテキやルルは複雑そうな顔をしながらも、確かにルーク枢機卿もセデギウスも嘘をついたことはなかったと思いつつ、納得させていた。

…勘違いすることはあれど、だが。

問題は、何処にザウバーが捕まっているのか。

ルーク枢機卿はラディスの大聖堂では見かけなかったが、リーリエリヒト城かウェルテクス社のどちらかの地下にいるのではないかと思っている。

流石に妨害装置とザウバーを捕らえている場所が同じであるとは思えない。自分達に攻め込まれたときのために分断していることだろう、というのはソウセイの意見。

それを聞いていたレヴィーは暫く考えながら、こんな案を出していた。



「…フィルギニア公爵、もう一度だけ力を貸していただけませんか」

「あら。まだ何かあるのかしら」

「リーリエリヒト城に侵入する手助けをしてもらいたいんです。あなたの護衛としていけば、ほぼ確実に入れる」

「……まあ、もうここまで来てしまったんですもの。私に危害がなければ、別に構いませんことよ」

「レヴィー、どうするの?」

「いくつかにメンバーを分けるんだ。…ウェルテクス社に進入して装置を切るのもそうだが、早くザウバー…だったかな。彼を助けなければ、大変なことになるんだろう?」


確かに、とイーヴリンは納得したように頷く。

問題は、装置を切るメンバーと救出に行くメンバーの分け方だが…

装置解除チームは晴人とレヴィー、瞬平と凛子、コヨミとコハク。

ザウバー救出チームはミカとユーテキ、イーヴリンにルル、バーガー…それからソウセイ。

フィルギニア公爵の護衛に関しては、バーガーに任せれば問題ないだろう。

「何でウェルテクス社への侵入なのに僕ハブなんだろう」と思いつつも、ユーテキは通信JMと一緒に自分の社員証でもあるIDカードを晴人に渡す。


「社長室や空中庭園といった上の階層に行くには、IDカードを使って動かすエレベーターに乗る必要があるんだ。これ持ってって!」

「分かった。…だけど、お前の使って大丈夫か?」

「……ユウリさんやミランダさんが、僕がいなくなってることに気付いてないから…たぶん、登録は消されてないはずだよ。……本当にそうだとちょっと複雑だけど」


陳情をもらすユーテキに、晴人は苦笑い気味。

アーヒバルド公爵やブリュンヒルド公爵は輪島に任せ、輪島も晴人の肩を叩きながら、こう言っていた。


「…知らない間に、大変なことに巻き込まれたみたいだが……頑張るんだぞ、晴人」

「ああ、分かってるよ。おっちゃん」






〜〜〜






ウェルテクス社。

顔を知られているレヴィーのみは顔を隠すようなフードを被り、ウェルテクス社に入っていく。

1階は見学用に解放されているようで、そこまでなら晴人達も難なく通れる。

ジェネレーターを始めとした様々なウェルテクス社製の製品を展示しており、晴人達も感心するようにそれを見ていた。

問題は、警備ロボが見張りを行う2階以降…

どのようにしてあれらを切り抜けるかレヴィー達が考えていると、晴人はプラモンスターを3匹呼び出し、ガルーダ達にロボを引きつけてもらおうとしていた。


「少しの間でいい、あの見張りロボットを引きつけておいてくれ」

『ピィィ』

『ヒヒン!』

『ビッチビチ』

「お願いね」


晴人達に見送られ、ガルーダらプラモンスターは警備ロボを引き付け始める。

見たこともないものを発見し、警備ロボはウェルテクス社から追い出そうと動き始めていた。

受付や研究員、ウェルテクス社の製品を見に来た者達は「なんだなんだ」と大騒ぎ。

その混乱に乗じて晴人達も2階に侵入し、他の警備ロボが来る前に階段を駆け上がっていた。

しかし…



『侵入者発見、侵入者発見』

『ピ、ピー、ガガガ』

「うわっ!?」

「まだ警備ロボがいたの!?」

『ココハ一般見学者の立チ入リヲ禁ジテイマス。直チニ出テ行キナサイ』


階段を通った先にも、警備ロボの姿。

恐らく、ガルーダ達を追いかけるために投入したロボと鉢合わせてしまったのだろう…

晴人は慌てて防犯カメラに向かって“ライト”の魔法を使い、映像に障害が起こったかのようにカモフラージュ。

その間にレヴィーとコハクが警備ロボを剣と斧で斬り伏せ、晴人達は駆け出していく。


「――瞬迅剣(しゅんじんけん)!」

「空旋連斧(くうせんれんぶ)!」

『ガ、ガガ…ピー』

『ピー、ガガガ、ピガー…』

「よしっ、今のうちだ!」


ドタドタと急ぎ足でエレベーターまで向かう晴人達。

IDカードの差し込み口のあるエレベーターを見つけると、ユーテキのIDカードを使い入ろうとする。

…何とかそれを認証し、他の警備ロボが来る前に急いで扉を閉め…

凛子はすかさず、最上階行きのボタンを押していた。

ここから暫くは、エレベーターが到着するのを待つしかない。

瞬平がほっと一息ついていると、突然エレベーターが停止し、「一体どうした」とレヴィーが叫ぶ。




すると、突然強引にエレベーターの扉が開いたかと思えば…

不気味な形をした怪物が、鋭い牙を向けていた。


『ギシャアアアアアアア!』

「うわああああー!?」

「こ、これってモンスター!?」

「何でこんなところに野放しに…きゃあっ!」

「くそっ……レヴィー、コハクさん、装置の破壊はあんた達に任せた!」


晴人はそう言いながら、レヴィーに通信JMを投げ渡す。

そして、そのまま変身しながら…

ウィザード・フレイムスタイルが謎の怪物に飛び蹴りを浴びせていた。

その攻撃で怪物が扉から手を離したのを見ると、瞬平とレヴィー、コハクは協力してエレベーターの扉を閉め、エレベーターは再び最上階へと昇り始めていた…

一方でウィザードFSはフレイムドラゴンリングを指に嵌めながら、何故この場にこのような怪物がいるのか疑問に思っていた。


「何でウェルテクス社にこんな化け物が…まさか、誰かが予め解放していたとか…?」

『ギシャアアアアアアッ!』

「考えている暇はない、ってか。……くそっ!」

<フレイム、ドラゴン ボー、ボー、ボーボーボー!>


フレイムドラゴンに変身したウィザードは、コネクトでウィザーソードガンを取り出す。

更に、その状態でコピーを使い剣を増やした彼は…

尽きない疑問を胸に抱きながらも、謎の怪物を相手に戦い始めていた。



――その頃、リーリエリヒト城の地下室。

…その途中の道で、ギリオンはくすりと笑っている。

そんな彼の様子に気付いたのか、グラントが声を掛けていた。


「…何を笑っている?」

「グラント殿。いえ、今頃面白いことになっているのではないかと思いまして」

「何?」

「あなたには関係のないこと。それよりも、早くシンボルストーンの置いてある場所まで向かいましょう」


笑みを浮かべるギリオンに対し、グラントは不信感を募らせながらも…

ユディーヌの命を最優先するべく、黙って歩いていた。

そんな彼の感情など、知ってか知らずか…

ギリオンはくすりと笑いながら、


(さて、自我のない合成獣を相手に何処まで頑張れますかね)

(しかしあの生物兵器も、シラス様の目的には及ばなかった失敗作)



(――何しろあの方は、人工的にファントムを作ろうとしているのですから…ね)






〜〜〜






リーリエリヒト城前では、フィルギニア公爵が現れていた。

彼女の来訪に、兵士達は動揺…

フィルギニア公爵はすぐさまイシュトヴァーン皇帝への謁見を求めるが、兵士達は困り顔で追い返そうとしていた。


「困ります、フィルギニア公爵!」

「現在、イシュトヴァーン猊下はお忙しいのです!」

「一応、城にはいらっしゃるのね?」

「はい、先程お戻りになられました…ですが、いくら赤の公爵様でも!」

「構いません。用事がお済みになるまで、中のほうで待たせていただきますから」

「「「公爵!」」」

「……何の騒ぎだ、騒々しい」


城の中から出てきたのは、ルーク枢機卿。

その姿を見たミカ達は、味方と分かっていても警戒してしまう…

一方でソウセイは少し甲冑のバイザーを開き、大体の事情は察したのか、フィルギニア公爵とその護衛を通すよう兵士に告げる。


「「「ルーク枢機卿!」」」

「(あれは…ソウセイ。ならば、他の奴らは)…貴婦人をこのような場所で待たせていいと思っているのか。今すぐ、空いている部屋にお連れするのだ!」

「しっ、しかし…」

「あのお方は赤の公爵様だ。もしも無礼を働いたとなれば、どうなるか…分かっているのか?」

「話の分かる方がいて助かりましたわ。さあ、通してもらいますよ…どうせならあなたのエスコートでお願いしますわ。ルーク枢機卿?」



フィルギニア公爵はそう言うと、護衛の兵士に扮したミカ達と共に城内に入る。

そして、ルーク枢機卿はフィルギニア元帥を人目につかない場所にある部屋に案内すると…

「変装を解け」とミカ達に言い、彼女らもそれに従う。


「私は、合図があるまでセデギウスとして待機しておこう。……君達は早く、地下に急ぐのだ。先程、イシュトヴァーン達が君達の言っていた青年を連れて、地下に向かった」

「…ザウバーだ!」

「急いで助けに行かないと!」

「あいつの刀も返してやらないといけないからね。ルル、落としたりはしてないかい?」

「だいじょーブイ!だよ!!」

「一応、フィルギニア元帥についていたほうがいいか?俺」

「ご冗談を。私は大丈夫ですから、さっさとお行きなさいな」

「…とにかく、皆さん。こっちです!」


あぁそうですか、とバーガーは苦笑がちに笑いながらも…

ソウセイはルーク枢機卿から地下の道のりを記した地図を貰い受け、先頭に立って案内し始めていた。





ウェルテクス社の最上階に到着した瞬平達は、空中庭園の中央に取り付けられた装置を見て驚いていた。

…それはまるで、巨大なアンテナ。

元々噴水が置かれていたであろう場所に設置されたそれは、周囲にある花壇の美しさを壊してしまっている。

コハクとレヴィーはそれらを破壊する準備に取り掛かり、凛子は「酷い」と荒れ果てた空中庭園を見て呟いていた。


「……ミカちゃんのお父さん達が作った、憩いの場なのに…こんなの」

「とにかく凛子さん、僕達は離れてましょう…」

「そうよ…それにしても晴人、大丈夫かしら……」


あのような怪物に後れを取るわけがないのだが、それでも不安だ。

それにあの怪物は、どこか禍々しい…

複数の生物が入り混じっているだけではない。もっと何か、別の。

コヨミがそう考えている間に、レヴィーとコハクが協力して装置を壊し始める。

流石に頑丈な素材でできているのか、簡単には壊れはしない。


「…駄目だ、硬すぎる!」

「このままでは、先に武器のほうが駄目になってしまうな…」

「そんな!」

「晴人さんだったら、ドラゴンの力を借りて壊せたんでしょうけど…」

「…晴人…」



――その時、下から物音のようなものが聞こえてくる。

何かを砕くような音。

風を切るかのように上昇してくる音。

嫌な予感を感じた凛子達は慌ててその場から離れ、レヴィーとコハクも装置の破壊を一時中断して逃げ出していた。

すると…


『グギャアアアアアアアッ!』

「…うおおおおっ!?」


何枚もの天井をぶち破ってここまできたのだろう。

下から先程の怪物が、花壇の一部に大きな穴を開けるかのように現れる。

更に、それを追いかけていたウィザード・ハリケーンドラゴンスタイルも、落ちてくる瓦礫を避けながら上昇。

晴人さん、とエレベーター近くまで避難していた瞬平が叫ぶ。

どうやらあの合成獣は空を飛ぶことも可能なようで、空中で激しく暴れ始める。


「ははは、晴人さん…ホント何なんですかあの化け物ーッ!?」

「俺が知りたいよ!まあいい…ちょっと危険だから、そこで大人しくしてろよッ!!」

<チョーイイネ! サンダー、サイコー!!>


ウィザードHDは緑の雷撃を放ちながら、合成獣を攻撃。

しかし雷への耐性があったのか、効果はいまひとつ…

それどころか、目の色を変えてウィザードHDに向かってくるではないか。

ウィザードHDは相手の突進攻撃を何とかかわしながら、「そうだ」と目の前にある妨害装置を見る。

コハクやレヴィーがどれほど頑張っても、傷一つつけられないほど頑丈な装置…

しかし、あんなデカブツが突進して来ればどうなるか。

ギリギリまで相手を引き付け、後1mほどで自分とぶつかる寸前に、ウィザードHDは急上昇


――すると合成獣は見事に妨害装置に激突し、巨大なアンテナは音を立てて壊れ始める。

「やった」とコヨミと凛子が喜び合い、それを見ていたレヴィーはグリュッグ国にいる共和連合軍に連絡を取っていた。


「「やった!」」

「…こちらレヴィー!妨害装置は破壊した、これでリーリエリヒトに直接飛べるはずだ!!」




次の瞬間。

アウデンティアの魔法使い達の力によって、リーリエリヒト城の前に突然、大軍が現れる。

ミッドノクスで唯一生き残っていたデュラも、突然の光景に驚きを隠せずにいた。

先頭に立っていたカルラは巨大な旗を掲げ、言い放つ。


「――今こそ、帝国の支配からツァールハイト大陸の民を…ルキナ全土の民を解放する時です!」

「「「おおおおーっ!!」」」

「はっ、反乱軍だと…!?」


それだけではない。

共和連合軍の奮起の声を聞いたルーク枢機卿…否セデギウスも、内部で反乱を起こしていたのだ。


「……ラディスの神を愛する聖海騎士団達よ、皇帝猊下はもはやラディスの教皇に有るまじき行為に走った…ラディス教の教義を、そしてアムニスフィールドを守るため……帝国を討てーッ!!」

「「「うおおおおおーっ!!」」」

「なっ…聖海騎士団の奴ら、裏切ったというのか…!?」

「ど、どうしますデュラ隊長!」

「数が…圧倒的すぎますっ!聖海騎士団も裏切った以上、どうすることも…」

「――くっ…お前達はそれでも、誇り高き帝国軍の一員か!裏切り者の聖海騎士団もろとも、迎え撃て!!」



帝国軍対共和連合軍。

その戦いの火蓋が、今、切って落とされていた…






***




まさかグラント→ユディーヌまで詰め込めるとは思わなかった。

原典じゃあ、女と知った瞬間にグラントさん、惚れてしまったみたいですが…

そこのところの描写が薄かったので、あんまりしっくりこなかったんですよね。

なので、何としても…次回のグラント戦までにはやりたかったんです。


ギリオンも謎が深まってきたなーw

そういえば、オリジンが誰かってまだ判明していないんですっけ。

まあ、それよりも…

ザウバーは次回・次々回で伏線を大幅に回収するとはいえ、この辺で正体が分かった人も

…いるんだろうか。

いたりするんだろうか。

自分は人造人間とか思ってたけど、読者の皆さんは大丈夫ですよね!?←



アーヒバルド公爵ェw

とりあえず、凛子ちゃんやフィルギニア公爵は英雄。

そしていなかったことを知られていなかったユーテキェw お前の存在感どうなってんの!?

…まあ、ルーク枢機卿って…

水源JMを強奪したりガナドールの宝珠を奪いかけてはいても、嘘はついてないわなw

そこら辺は、流石神に仕える人間と言いますか。


コハクさん何気に使えるw

そりゃあ生き残れるよ…生き残れて当然だよ、あの人…

フィルギニア公爵は相変わらず強引w

ピーチにまともな感性を付け加えた、って感じなんでしょうか。

ちなみに、ルルがザウバーの刀を預かっているのは漫画ネタ。

…そもそもルルは、バトンあってもなくても魔法使えるもんな…そりゃあ預かり役にいいわ。




次回、ザウバーの正体が明らかに

…なるといいね☆←