イーヴリンと合流し、彼女からの情報でウェルスの町のタルボット博士に会うことになった。
だが…
「――それだったらお土産に、アムニスフィールドに関するウェルテクス一族の資料を渡すのもいいんじゃない?」
そう言いながら、瞬平の後ろから現れたのは、……サウルだ。
相変わらずの幽霊的所業に、その場にいた全員が全力で引く。
ルルすら引く。
何も知らないイーヴリンは、誰よりも長い距離で引く。
通算3回目の遭遇となるザウバーは、非常に慣れた様子でサウルに尋ねていた。
「また来たか幽霊…それで、ウェルテクスの研究資料がどうとか話していたが?」
「タルボット博士は偏屈で、普通には会ってくれないと思う。だけど…彼が尤も知りたいであろう、アムニスフィールドに関する資料を、君達が持ってきたとしたら?」
「…成程、それと交換条件に協力してもらうというのも…一つの手段だな」
「そうね、それに私も、ウェルテクスの研究資料なら…見てみたい」
晴人達の考えは、纏まった。
タルボット博士と共同戦線を張るためにも、アムニスフィールドに関するウェルテクスの資料を手に入れるべき。
そして、それがありそうな場所は…
「……やっぱり、前のあのお屋敷…なのかな……」
「「「…」」」
「ツァールハイト国から、パテオ付近まで戻るって…相当だぞ……」
「あぁ、安心して。研究資料は…初代ウェルテクス一族が、この付近に隠しているらしいから。こっちだよ」
誰もが閉口する中、サウルは一足先に進む…
「待て」と晴人が追いかけ、そんな彼を不思議そうに見ながら、ミカ達も遅れて追ってくる。
サウルは一度ミカのほうを振り返ると、
(……似てるなぁ)
とだけ、考え…
後はなるべくミカを見ないよう、歩き続けていた。
〜〜〜
ツァールハイト王国から南西に進んだ場所にある、海岸沿いの森の中…
その中を、ミカ達は進んでいた。
道中のモンスターは彼らが倒し、サウルは道案内するのみ。
あくまで「自分は研究者であって、戦う力はない」とのことだとか。
それでよく今まで無事だったな、とイーヴリンは思いながら、サウルに尋ねていた。
「あんた、ウェルテクスについて詳しいらしいけど…ミカの両親と会ったことは?」
「ないよ。僕が詳しいのは、初代ウェルテクスについてだからねぇ」
「やっぱり、その頃からもウェルテクス一族って、平和のための研究をしていたの?」
「そうじゃないらしいぞ、ユーテキ。確か…一人の女性を喜ばせたくてあんな庭作って、その時の『誰かを喜ばせたい』って想いが次の代を担うウェルテクス一族に受け継がれていったんだよな」
「そうとも言えるね。でも、ユーテキ君の言っていることも…ある意味間違いじゃあない」
ユーテキと晴人の言葉に、サウルは苦笑しながらも先へ進む。
「そういえば」と晴人とザウバー、コヨミは前にサウルから聞いた話を思い出していた。
――先代ウェルテクス一族は、世界各国から集められた高名な科学者チームの一員として参加
――その科学者チームはある重大プロジェクトのために集まり、シールドやJMの作成はその時に学んだ
その話をユーテキにすると、予想していた通り激しく驚いていた。
「もっ、もしそれが本当だとしたら…ちょっとおかしいよ。そんな凄いプロジェクトを抱えていたチームの研究者なら、ウェルテクス一族以外にもいなきゃいけないはずなのに!」
「そういうものなの?ユーテキ」
「だってそうじゃない!…どういうプロジェクトだったのかはさておき、何で自分達の技術を後世に伝えるようなことを避けたんだろう…」
「……でも、その技術が伝わっていたら…現在帝国が抱えているウェルテクス社の兵器以上の物が完成する可能性だってある。そういうの専門のチームなら大喜びだろうけど、サウルの話を聞いてると…どうもそうじゃなさそうだし」
「そう。ウェルテクス一族も、初代はひっそりと…ただ愛した女性と暮らしたかっただけ。……でもまぁ、4代目になるとそういった“理由”が薄れちゃうから、全面的に外に出て行ったんだろうけどね」
ユーテキの疑問に関しては、イーヴリンが溜息交じりに話す。
…確かに、初代ウェルテクス一族の住んでいた研究設備から考えて、今より凄い技術だったことは明らか。
それなのに、その技術を伝えなかったとなると…
やはり、今起こっている現ウェルテクス社の暴走を今以上のものにしてしまいかねないからだろう。
ウェルテクス社だけで済めばまだいいが、もし他の研究者一族も軍事兵器作成に加担したとなれば……帝国の目的でもある【ラディス教の予言の実行】が成されていたことだろう。
サウルはいきなりユーテキ達のほうを振り返りながら、クイズを出していた。
「――さて、ここで問題です。アムニスフィールドは、どうやって作られたものでしょうか?」
「「「…えーっと…」」」
「ラディスの神が与えたものじゃなかったか?俺はそう聞いているが」
「やっぱり、ラディス教関係の人はそう思うよねぇ」
「…違うのか!?」
バーガーは驚いた様子で、サウルを見る。
それはそうだ。
彼は今までラディス教との一人として、アムニスフィールドはラディス神から贈られた万物のエネルギー体として信じていた。
聖海騎士団の隊長として、ラディス神から賜ったアムニスフィールドを守るべく、異教徒と戦っていた時期もあった。
しかし、サウルはそれを全否定する。
ここに狂信的なラディス教信者がいれば、「異教徒だ」と騒ぎ立てるぐらいに。
ううーん……と誰もが考えていると、瞬平は「はっ」と何か閃いたらしい。
「もしかして………魔法でできてるとか!」
「「「…」」」
「…すいません夢見すぎでしたそんな冷めた目で見ないで下さいお願いします」
瞬平の一言には、誰もが冷たい視線を向ける。
唯一、ルルだけは「そんな凄い魔法あるのかなぁ?」と首を傾げるだけであったが…
凛子はメモ帳に纏めていた内容を見ながら、唸る。
「うーん…ラディスの神様からのものじゃない、魔法でもない、だったら……魔法以上にありえないけど、誰かが作ったとか…」
「「「作った!?」」」
「つまり…アムニスフィールドは人工物、凛子はそう言いたいの?」
「いやっ、消去法で考えたらそうなんじゃないのかなぁーって思っただけ!だけど、空にある大きなものを作るなんてありえな……」
「…いや、凛子ちゃん、たぶん凛子ちゃんの勘……当たってるんじゃないかな」
「「「えっ?」」」
唯一凛子の意見を肯定したのは、晴人。
ラディスの神から与えられたものではない…
魔法で作られたものではない…
そうなってくると、考えられることはただ一つ。――【アムニスフィールドは人工物説】
普通で考えれば、ルキナと言う星を覆う水の膜のようなエネルギー体を、人間の力……それも現代に残る技術で作られるのかと考えれば、不可能。
だが…
先程ユーテキ達に説明したばかりの、【研究者達のプロジェクトチーム】
彼らがいた頃の科学技術は今よりも発達していて、彼らがアムニスフィールドを作ったとすれば
――成程。それに触れるような資料が発覚すれば、世界は大騒ぎだ。
イーヴリンとザウバーは、頭を抱えながら互いに話をしていた。
「……だとしたら、ウェルテクス一族以外に昔からある研究者一族の名前を聞かない理由が分かったよ。そんなとんでもないものを作れるほどの技術だ、今の世に伝わっていたら…確実に、帝国に利用されていたね」
「帝国に限らず、彼らの子孫の誰かが、どこかで…自分達の技術を悪用する。その可能性を視野に入れて、後世に残さなかったのだろう」
「そう、その通り。…さて皆、そろそろ着いたよ」
サウルの声に反応し、ミカ達は前を見る。
すると…
目の前にあったのは、随分と古い建物。
森に隠れるようにしてひっそりと溶け込んでいるため、今まで誰にも知られることはなかったのだろう。
「ここが、アムニスフィールドに関する研究資料のある…場所?」
「そうだよ」
「よし、入ってみ…あれ?あれっ!?」
ミカが取っ手に手を掛けるが、長く使われていないせいだろう…
扉が錆付いており、開きそうにない。
バーガーが力任せに引っ張るが、やはり開くはずもなく。
ルルが魔法の力で壊そうとすると、ユーテキや瞬平が必死で止め。
……殆ど、成す術がなかった。
「…なあ、サウル…お前、開け方知らないのか…?」
「まさか、ここまで錆付いてるとはねー…」
「やっぱり、扉を壊すしかないの!」
「駄目ーッ!気持ちは分かるけど、ここが万が一帝国に知られたら、まずいから!絶対まずいからー!!」
「…」
ザウバーは難しげな顔で、扉に近づく。
このパーティの中で力自慢とも言える、バーガーが無理だったのだ…
何かスイッチのようなものがあるのでは、そう思いながら周囲を散策していると
――彼はある考えに至り、「そんなことはない」と思いながらも、取っ手を握り
引き戸を開けるように、横にスライドさせていた。
「あ」
「「「開いたあああああああああああああ!?」」」
「おい…待てよ、そんなのアリかよ……オーバーテクノロジーと見せかけて、ただの引き戸式かよ…!?」
「そりゃ、……押しても引いても、開くはずないよねぇ…」
「ミカ…僕、ウェルテクス一族がだんだん分からなくなってきた」
「私に言わないでよ!?」
「「「いやいや、ミカに言うしかないよこれ」」」
晴人・バーガー・コヨミが、声を揃え…同時に手を横に振りながら、離す。
とにかく、拍子抜けしつつも…
サウルが先頭を歩き、それに続く形でザウバー・晴人・コヨミ・凛子・バーガー…といった順で、ウェルテクス一族の研究資料を求めて足を踏み入れていた。
だが…
『…ッ!?』
ある人間の影の中に入っていたシャドゥだけが、外に弾き出されてしまう。
最後尾のミカに姿を見られる前に、近くにあった木陰に逃げ込むことで、尾行がばれずに済んだが…
あのようなセキュリティも何もあったもんじゃない建物なのに、自分だけが弾かれたことに、シャドゥは驚きを隠せない。
とにかく、報告はするべきだろうと…シャドゥは人の姿になり、オリジンに連絡を取る。
「…オリジン様、ウェルテクス一族の研究資料があると思わしき場所を発見。……しかし…」
『入れなかった、ということか』
「……Yes」
『恐らく、先代ウェルテクス一族が…他者にその資料を見られないよう、何かしらのプロテクトを取ったのだろう。例えば……ウェルテクス一族の人間しか踏み入れられないとか』
「しかし、指輪の魔法使い達も中に入って行った」
『…もしかすれば、ウェルテクス一族の人間が複数いて…それを挟む形で入ることで、他者の侵入を可能にした……?』
オリジンは通信機の奥でそう話しながらも、「ありえない」と思っていた。
…ウェルテクス一族は、11年前にミカ以外の者は死んだ
…兄もファントム・セルシウスを生み出し、ゲートの肉体は消失したはず
…一つだけ可能性があるとすれば、それは…
そう考えれば、“あの存在”にも多少納得がいく。そうだ、だから奴は。
『――これを帝国が知れば、…さて…どうなるやら。とにかくシャドゥ、お前はそこで待機しろ……情報は無理に入らずとも、自分達からやってくる』
「Yes」
〜〜〜
中は薄暗く、道は狭い…
晴人は“ライトウィザードリング”による魔法で視界を確保しつつ、サウルの案内に従って進む。
ミカ達も、前を歩く光を見失わないよう歩く。
そして、たまにユーテキと瞬平は足を滑らせこけていた。
「「うわっ!?」」
「ちょっと二人とも、こんな狭い道で転ばないでよ!?」
「そ…そんなこと言ったって…」
「うう、鼻ぶつけた…」
「――おーい、後ろ…大丈夫かー?」
晴人は足を止めながら、後続を気に掛ける。
「大丈夫」とユーテキと瞬平は立ち上がり、慌てて先頭との距離を詰めようと早歩き。
急ぎすぎてまたこけるなよ、と思いながらも、前のほうに明かりが見えてくる。
晴人はライトの魔法を解除し、前に進むと…
そこにあったのは、彼らの住む世界でも見たことのないような、特殊な装置が置かれていた。
部屋の中は思ったよりも広く、11人と1匹が入っても余裕がある。
晴人やザウバーは「凄いな」と正直に思ったことを呟き、ユーテキは目を輝かせている。
「…こんなの、俺達の世界でも見たことないぞ…?」
「そういえばお前達は、別の世界の人間だったな。……どういう場所なんだ?」
「そうだな…“車”っていう乗り物が道路を走っていて、“携帯電話”で遠くの人とも話をしたりメールができたりする。後は…この世界にもパソコンがあるみたいだけど、“インターネット”を使って様々な情報を供給できるんだ」
「「「…???」」」
「晴人さん達の世界って、そんなに技術が進んでるの!?…一回行ってみたいなぁ…今後の参考になるかも」
晴人の説明には、ミカ達ルキナの人間は首を傾げるばかり。
だが、ユーテキだけは…自分の知らない技術があることを聞き、関心を示していた。
サウルも晴人達の世界の技術に多少の興味を持ちながらも、棚に乱雑に入れられた本を掻き分けながら資料を探している。
しかし、本棚の数も尋常ではなく…一人で探していては、日が暮れるだろう。
ミカ達も一緒にそれを探すことになり、コヨミも何か力になろうとある機械の近くを通りかかろうとしていた…その時だった。
「…?」
コヨミは何かに気付き、その機械をじっと見ている。
そんな彼女の様子に気付いたザウバーと晴人が、「どうした」と近寄る。
すると…
そこにあったのは、ここにある機材の中でも取り分け珍しいもの。
起動している様子はなく、「一体どんな機械なんだ」と興味深げにそれを見ていた。
「なんだこれ、動いてないのか?」
「そうみたい…」
「相当昔からあるやつだからな、今も動き続けている他の機械のほうがおかしいんだろう」
とにかく、ウェルテクスの資料とは関係がなさそうだ。
そう思った彼らは、本棚捜索組の手伝いをしようとしていたが…
突然ザウバーの左腕が蒼い光を放ち、晴人とコヨミがそれに驚いていると、今度は今まで止まっていた機械が動き出す。
「…!」
「今度は蒼い……って、なんか動いてる!動いてるぞこれ!?」
「どうして!?さっきまで止まって…」
そして………
気付いた時には、彼らはこことは違う…別の研究室の中にいた。
周囲には、白衣を着た人間が大勢集まり、何かを作っているようにも見える…
彼らが自分達に気付いていないどころか、触れようとした晴人の手がすり抜けた辺り、干渉することはできないのだろう。
「一体、どうなっているんだ…?」
「それに…ミカ達は?」
「…待て、あそこのモニターを見ろ」
ザウバーに言われ、晴人とコヨミが指で示された先を見る。
すると…
そこにあったのは、緑色の円を囲むような、水色の丸い囲み線。
恐らく緑の円はルキナという星を、水色の囲み線はアムニスフィールドを指し示しているのであろう。
不思議そうにそれを見ていると、一人の初老の男性が前に立ち、話を始めている。
『――諸君、アムニスフィールド計画は…順調に進んでいるようだな』
『はい。エネルギーフィールドを展開するための、発射衛星の製作も順調です!』
『それから…アムニスフィールドの全エネルギーを安定させるための【鍵】と【石】の経過も、順調です』
『これなら、“あの日”までに完成が間に合います!』
『これでルキナは救われるんだ!』
「これって…もしかして」
「サウルの言っていた、研究チーム……の記憶なのか…?」
「じゃあやっぱり、アムニスフィールドは人工物だったのか……おいっ、コヨミ…ザウバー!」
晴人が何かに気付いたのか、ある場所に駆け出す。
一体どうしたのだろうか。
そう思って晴人の後をついていくと、その先にあったものに目を見開く。
そこにあったのは、大きなJMとも言える…真円形の石。
蒼く綺麗な輝きを持つそれに、晴人達は見覚えがあったのだ。
リーリエリヒト帝国にある大聖堂…そこに掲げられている、ラディス教のシンボルストーンだ。
「これって、ラディス教のシンボルストーン…?」
「ラディス大聖堂にあるべきものが、何故、ここに…」
「考えられるのは一つ、……アムニスフィールドだけじゃない…シンボルストーンもまた、――彼らによって作られたんだ…!」
晴人はそう声を漏らしながら、目の前にあるシンボルストーンを見る。
薄々、予感していたのだ。
アムニスフィールドが人工物だとしたら、シンボルストーンも…ただの石ころか、人工物の可能性さえある。
事実、それは当たっていた。
それに…最初に帝国のミサに参列した時に見たシンボルストーンは、後々ルピートに見せてもらったJMと……大きさ以外は非常によく似ていたのだ。
「それじゃあ、アムニスフィールドとシンボルストーンはあの人達が作って…」
「それを、何らかの形でラディス教によって崇め奉られるものになった…ということか」
「そういえばさっき、アムニスフィールドの全エネルギーを安定させるための…【鍵】と【石】って話があった。【石】がシンボルストーンとして……【鍵】は、一体」
だが、彼らがその場で結論に至ることは、できなかった。
3人の意識は、気付けばミカ達のいる研究室。
先程までいた大勢の白衣の人間は…どこにもいない。
彼らが突っ立っているように見えたのか、ミカは「どうしたの」と声を掛け…サウルは彼らの後ろにあった機械を見て、目を見開いていた。
「ちょっと!晴人、コヨミ、ザウバー…そんなところで立ってないで、探すの手伝ってよ!!」
「え、えーと…」
「私達、戻ってきたの…?」
「…一体なんだったんだ…」
「――君達、もしかして……その記憶装置の内容を、見たんじゃ」
「「「記憶装置?」」」
サウルの言葉に、全員が振り返る。
彼の話では…初代ウェルテクス一族が遺したと言われる、ある研究チームとの研究に関する記憶データが内蔵されているそうだ。
しかし、機械自体は相当古く…メンテナンスも充分ではなく機材は風化し、まったく動かない“はずだった”。
「だけど、何らかの形で再起動して…君達に、かつてのウェルテクス一族の記憶の断片が見えたのかもしれない。……恐らくその中に入っているデータは、研究資料よりも信頼性の高いものだと思うよ」
「じゃあ、私も見てみたい!」
「あっ、僕も!」
「ルルも〜!」
「それなんだけど…さっきも言ったとおり、機械自体がかなり古い。……恐らく、もう見ることはできないだろうね…だけどおかしいな、完全に止まったと思っていたものが…急に動き出すなんて」
その言葉に、ミカやユーテキなどは肩を落としていたが…
コヨミはむしろ、別の場所に着目していた。
『完全に止まったと思っていたものが、急に動き出すなんて』
それに近い状況を、彼女は知っている。むしろ、彼女でないと分からないのだ。
…しかし、その場でそのことについて問うことは…しなかった。
一方で、資料探しに専念していたイーヴリンと瞬平だが、瞬平が高い場所の本を取ろうとすると、棚も老朽化していたのか…上にあった本が頭の上に落ちてくる。
「ぎゃーっ!?」
「おい瞬平、大丈夫か!?」
「本棚も古かったからね。……ん?」
近くにいたバーガーはすぐさま本をどけ始め、イーヴリンはその手伝いをしながら…ある物を見つけていた。
…それこそ、自分達の探していた…ウェルテクス一族の研究資料。
「見せて」とミカとユーテキは急いで集まり、その内容を全員で確認する。
そうしていると…
ルルが何かに気付いたのか「あれ?」と声を上げる。
「ねぇ、あのお兄ちゃんは?」
「「「えっ?」」」
晴人達は、その言葉で慌ててサウルを探し始める。
だが…やはり、どこにもいない。
いつの間に消えたんだ、とバーガーは思いながらも…資料の内容を見て、頭を掻いていた。
その内容とは…
『アムニスフィールド計画の実現において、最重要なのは…人間の悪しき私利私欲からアムニスフィールドを隔絶させなければならなかったこと』
『そこで、アムニスフィールドの総てのエネルギーを開放するための【鍵】の役割と、それらをコントロールするための【石】を別々に作ることになった』
「――で、晴人達の話が正しいとしたら…その【石】はラディス教のシンボルストーン、か…」
「バーガーさん…大丈夫?」
「心配すんなって、凛子。……だが、ちょっと納得できる部分もある。アムニスフィールドとシンボルストーンは、密接な関係にある…だから、アムニスフィールドが人工物なら……シンボルストーンもそうなんじゃねぇかってな」
「そうね…気になるのは【鍵】が何なのか、だけど……晴人君達がそれを知る前に、機械が駄目になっちゃったみたいだし、この資料にも書かれていないから……やっぱり別の資料を探すしか、ないのかも」
バーガーと凛子の話を聞きながら、晴人達は頷く。
残りの資料の場所は、サウルならば知っていそうだが…風のように消えたので、知ることもできず。
そうしていると、イーヴリンは「ちょっといいかい」と全員に言う。
「そういえば前に、アーヒバルド公爵や…輪島さんと、ラディスの予言について話していたことがあるんだ。その際、輪島さんは凄く面白い解釈をしてくれた」
「おっちゃん…何してんの…?」
「あの人は、古き世から【聖なるもの】はアムニスフィールドじゃないかと言っていた。その話が正しいとして、もしもシンボルストーンが巨大なJMだと仮定して、アムニスフィールドの力を使うことができるとした場合…」
――アムニスフィールドから生まれしその力は、蒼き石に封じられるが如く消え去らん
この場合、“力”とは…“アムニスフィールドの全エネルギー”と言う解釈ができる。
そして、“蒼き石”は…やはり、シンボルストーンのことだろう。
――英姿を再び拝まんとするならば、古き世から伝わる【聖なるもの】をその手に持て
――ルキナに存在する総ての生き物が、真にラディスの神の子となり
――輝かしい蒼き光を放つ【聖なるもの】が紅き光へと変わる時、神の国への扉は開き、我らは再びラディスの神の御身へと辿り着かん
蒼き光を放ち紅き光へと代わる【聖なるもの】とは…アムニスフィールドの力をコントロールする力のある、シンボルストーン。
シンボルストーンならば『その手に持つ』ことも可能だし、アムニスフィールドの力を制御できる力を持っている。
その上で、輪島の解釈…“聖なるものはアムニスフィールドそのものではないのか”を含めるとなると…
アムニスフィールドが紅き光を放つその時こそ、予言にある【神の国への扉】が開くのではないか?
確かに、シンボルストーンから神の扉が開くはずもないし、本当に神がいるとして…彼らが扉を開くことがあるとすれば、やはりそれはアムニスフィールドが開く……ということなのだろう。
「――問題は、実際アムニスフィールドもシンボルストーンも人工物。…シンボルストーンはさておき、アムニスフィールドが“開く”となったら……やっぱり、それも異常なことだと思うけどね」
「そうか…今までずっと、ルキナという星を包み込むように存在していたんだから、それに穴が開くってことなんだよね」
「でも……本当に神様がやって来ちゃったら、どうなるのかなぁ?」
ますます分からなくなってくる、予言とシンボルストーン…そして、アムニスフィールドとの関連性。
とにかく、ここで考えていても仕方がない。
だが、アムニスフィールドについて調べているタルボット博士ならば、きっと。
そう考え、晴人達はウェルスの町に向かうため…研究所を後にしていた。
その頃…
ウェルテクス社に、イシュトヴァーン皇帝が来訪していた。
突然の皇帝猊下の来訪に、研究員達は全員慌てて頭を下げたり、道を空けたりしている。
そして、社長室に訪れると…シラスの話を聞いていた。
「猊下。【神の剣】、完成いたしました…まずは威力を試してみるためにも、どこかに撃ってみるのがよろしいかと」
「対象は既に決めてある。――その前に、シンボルストーンについて何か判明したと聞いたが」
「ええ、そのことでしたら…我がウェルテクス社が総力を挙げて調べたところ、シンボルストーンは……人工的に作られた、制御装置であることが判明いたしました」
その言葉に、イシュトヴァーンは「何だと」と声を荒げる。
彼自身も、熱狂的なラディス教の崇拝者…
神からの賜りものと教えられてきたシンボルストーンが人工物など、信じられるはずがないのだ。
しかしシラスはそんな彼を宥めるように、こう話す。
「ですが、人工物とはいえ…我々ウェルテクス社でも見かけない、かなりの技術力で作られておりました…それこそ、神の仕業とも言えるかのような」
「……それで、何の制御装置だというのだ」
「そう。シンボルストーンは、アムニスフィールドの力を使うための制御装置…つまり、“予言成就に必要なもの”と“アムニスフィールドの総ての力を手に入れるのに必要なもの”……これら2つは同じものでもあるのです」
――そう、そしてシンボルストーンこそが
――我々ウェルテクス社の目指す、究極兵器完成に必要なもの…!
――だが、シンボルストーンだけでは総ての力を手に入れることはできない
――もっと何か別の、そう、【鍵】とも言えるものも揃ってこそ、
――私はアムニスフィールドの全エネルギーを、掌握することができる……!!
***
ギャグらしいギャグ→魔法ボケと扉ボケ
しょうがないよ…
今回、物語の核心にやや触れてるんだから…
(と言っても、大半は作者の解釈。参考資料は漫画)
ここに来てラディス教全否定w
いや、そりゃあそうだろうなぁ…
アムニスフィールドが人工物となったら、それ知ったら一般の信者は大騒ぎだろうし。
バーガーさんですら動揺したのにね!
引き戸に関しては、ミカに言うしかないよなぁ…晴人達にとってはw
おい昔のほうがオーバーテクノロジーってw
まあ、しょうがないですよね…
そんな技術が今でも伝わっていたら、そりゃシラスの求める究極兵器も簡単にできちゃいますもん。
だから、昔の人たちは自分達の技術が悪用されないよう、歴史から自らの存在ごと抹消したようで。
しかし…なんでウェルテクスの生き残りなのに、重要部分(=記憶装置の内容閲覧)からハブられてしまうのか、ミカよw
(※しかし行っても分からなかった危険性がある)
20話における、輪島さんの発言+イヴの解釈は、今回へのフラグでした。
そりゃあ、「その手に持つ」ことができるのは、シンボルストーンだけ。
そのシンボルストーンが、JMと同じ…アムニスフィールドの力を使う(と言うよりは、コントロールできる)ことができるとすれば、【聖なるもの】=シンボルストーンとなりますよね。
問題は、【鍵】ですが…
実は【鍵】の正体は、かーなーり、身近なものなんです。
次回は…
ユーテキの不憫がwww