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タイトル未設定 - Magic28:ユーテキ帰郷す

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Magic28:ユーテキ帰郷す

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ツァールハイト城の北西にある橋を渡り、そのまま更に北西に進んだ場所にある…ウェルスの町。

この町には、“町”としてならとりわけ目立った箇所がないだろう。

しかし、建物単体で見るなら一つだけ…

一見大きなボロ屋敷に見えなくもないそこには、屋根の上に何やら大きな装置が取り付けられていた。

そここそ、ミカ達が会おうとしているタルボット博士の自宅兼研究室で…遠くから見ても、その異質な形に目を奪われていた。


「なんていうか…」

「…えーっと」

「……色んな意味で、凄いな」

「屋根についているものも、発明品なんですよね。…何なんでしょうか…?」


凛子・コヨミ・晴人・瞬平の4人は、まさしく「開いた口が塞がらない」と言った様子。

だが、これはミカ達にも言えることで、色んな意味で目立つその建物を傍観していた。

一方でユーテキは、人目を気にしながらコソコソとバーガーや晴人のような長身の人間の後ろに隠れている。

…いつもの彼ならば、あの装置を見た次点で「あれってどうなっているんだろう」と目を輝かせているはずだ…

しかし今日のユーテキは、いつにも増して警戒心が強い。

一体何やってるんだろう…ミカやルルがそう思っていると、一人の男がユーテキに気付き、声を掛けていた。


「――おぉい、お前、ユーテキじゃないか!エルダさんとこの!!」

「「「え?」」」

「と、トーマスさん!?…ちょっ、声…声小さく…」

「おおい、皆!ユーテキが帰ってきたぞ!!」

「…何だって?」

「本当だ、ユーテキだ!」

「久しぶりだなぁお前、もう帰ってきたのか?」

「何だかんだでホームシックになったんだなぁ」

「ねーねー、ウェルテクス社ってどんな所だった?」



トーマスという男の呼びかけで、町の人達は「わあっ」とやってくる。

どうやら、ユーテキと彼らは知り合いらしいが…

近くにいたミカは小声で尋ね、ユーテキも渋々ながらに話していた。


(…ちょっと、どういうことなの?)

(……ここ、僕の故郷なんだよ)

(ここが!?…何でそういう大事なこと、今まで黙ってたの!!?)

(ウェルテクス社からスカウトされたのに、帝国から狙われる一味になって里帰り…君が僕の立場ならどう思う、ミカ……?普通は帰ってきたくない、できれば町の人達に会いたくないって思うじゃん!)


ボソボソ話は彼らが思っている以上に大きく、近くにいた晴人達には丸聞こえだった。

だが…

確かに、ユーテキの言うように『ウェルテクス社からスカウトされた』人間が、『帝国に追われる集団の一人』になっているなど……普通は、見知った顔の人達には知られたくないだろう。

その一方で、凛子は少し気になったのか、ユーテキに尋ねる。


「ここの人達って、…帝国…というかウェルテクス社に割と好意的みたいだけど、帝国に関しては……」

「特に悪いイメージは持ってないと思うよ。ウェルスの町はツァールハイトにある町の中でも結構田舎で、サブルムやその周辺の村と違って資源に溢れた炭鉱があるわけでもないから」

「じゃあユーちゃんも、リーリエリヒトに初めて来た頃は…特に悪いところでもないって思ってたの?」

「そう…だね。実際はとんでもない場所だったけど、……ミカも含めて」

「ちょっとそれどういう意味!?」


最後の言葉だけは聞き捨てならぬとばかりに、ミカはユーテキの耳を引っ張る。

ついでに捻る。

「ぎゃあああああああー…」と言う絶叫が聞こえ、相変わらずの彼の扱いに晴人達は失笑。

町の人達も笑っている辺り、――恐らく彼の不憫は、昔からこうだったのだろう…

アーメン、とバーガーは十字を切りながら、ユーテキに尋ねていた。


「…ってことは、お前の家もここにあったりするのか?」

「そ、そんなとk…ぎゃあああああああー!ミカ、もうやめて、耳が千切れ…僕【耳なし法一】になっちゃうううううううううう!!」

「煩いわね、セイバーで耳切り落とすわよ!?」

「やぁぁめろぉぉぉぉぉー!!!」

「何偉そうに言ってんのよ馬鹿!」

「いやこれ異世界のファイズの……あだだだだだだだだ、止めてミカ、それ以上は…それ以上は僕の耳がァーッ!!」




「―――ちょっと!あんた、ユーテキじゃないの!?」



ミカ並みに騒がしい声が聞こえ、全員声のした方向を見る。

すると…

そこにいたのはユーテキと同じ栗色の髪をした女性で、長い長髪。

「げ」とユーテキは顔を顰め、女性はずかずかと向かってくると…容赦なき言葉のアクセルクリムゾンスマッシュ。


「何?なんでこんないきなり帰ってくんの?帰ってくるなら前もって連絡しなさいよ!しかもこんなにもたくさんの人を連れて…しかも女の子5人も連れてるなんてどういうこと!?しかもイケメン2人とダンディなおじ様まで…本当にあんたリーリエリヒトで何してんの!!?何、もしかして変なところに目をつけられて借金とかしてるんじゃないわよね?っていうかあんたウェルテクス社でうまくいってないんじゃない??やっぱあんたヒョロいし小さいから、他の人から馬鹿にされてるとか苛められてるとかで」

「り…リィア姉さん、……落ち着いて…落ち着いて話そう……ね…?」

「…あの…何気に僕、スルーされてますよね……?」

「「「……瞬平(君)はなぁ……」」」


何気に一人だけスルーされてしまった瞬平、ドンマイ。

「シュンペーショーック!orz」と泣き叫ぶ瞬平は無視して、とにかく立ち話もなんだと、タルボット博士の家よりも先にユーテキの家に行ったらいいのではと、晴人が提案。

帝国も、まさか自分達がタルボット博士と接触するとは思っていないだろう…

ここは体を休める意味でも、ユーテキの実家に行って旅の疲れを軽く取るべきだ。


「……とにかく、立ち話もアレだし…ユーテキの家で少しお茶してから行ってもいいんじゃないか?」

「あ、それ賛成!」

「えぇぇ…いいよ晴人さん、さっさとタルボット博士の家に行こうよぉぉぉ…!」

「何言ってんの!ミディアやエルダ姉さんに顔合わせないで帰ろうなんて、そうは問屋が卸さないわよ!!」

「ってリィア姉さんそこさっきミカが引っ張っ…イギャアアアアアアアアオンドゥルルラギッタンディスカアアアアアアアアーッ!!!」






〜〜〜






ユーテキの生家。

リィアの話だと、両親は既に他界しており…3人の姉とユーテキで暮らしていたのだそうだ。


「姉さん!ユーテキが帰ってきたわよー!!」

「 」

「ねぇはるとん、ユーちゃんから魂が抜け落ちてるよ?」

「とりあえず拾って戻してあげような、ルル」

「…えっ、ユーテキが!?帰ってくるにしても早すぎでしょ、あんたやっぱりウェルテクス社でうまくいってないんじゃない?っていうかあんたは昔から何かあるとメソメソベソベソギャアギャアウジウジしてるのよねー…大きくなってもホント変わらないんだから!むしろ何で女の子5人も連れてるのよ、ちょっと都会に出れば簡単に汚れるのね!!」

「まあ…ユーテキ、本当なの?あの可愛かったユーテキが……それに、ウェルテクス社でうまくいっていないの?それだったら、手紙の一つぐらい寄越してもいいのに…あぁそうだユーテキ、今ちょうどおやつのクッキーが焼けたところなの。よければ、皆さんもどうですか?」



「なんというか…」

「どう言うべきか…」

「ユーテキ君…」

「――お前色々、大変なんだな」

「うんそうなんだよホントそうなんだよね、分かったらあまり僕を弄らないでくれないかな悲しくなってくるから」


同情心に満ちた眼差しで、バーガー・晴人・瞬平・ザウバーがユーテキを見ている。

そんな彼らに、ユーテキは嘆きつつ陳情…

果たして彼の明日は何処だ。

「クッキー」と聞いて喜ぶルル、そんな彼女の横で、ミカは棚の上に大事に置かれている機械を見て一番上の姉・エルダに尋ねていた。


「あの、すみません。これって一体、何なんですか?」

「あぁ…それは、ユーテキが昔作った、全自動皮むき機なんですよ」

「全自動皮むき機?」

「ええ。――うちは両親を早めに亡くしていますから、家事は私がやって…ミディアやリィアはツァールハイト城下町のほうで売り子をしているんです」

「そうそう!それで、確かエルダ姉さんの誕生日に…ユーテキが『少しでも楽になるように』って、作ったんだっけ?」

「小さい頃から機械弄りが好きだったもんね。流石に、ジャガイモを実ごと全部剥いた時は笑ったわ〜もしかして今でも、そんな失敗してたりして」

「ちょっ、リィア姉さんそういうの言わないでよ!……それに、今ならちゃんと作れば実が残るようにできるから!!」


あっはは、と笑いながら昔を思い出す姉3人。

そんな彼女達の話を聞いて、晴人達は知られざるユーテキの過去を聞き、感心する。

出来自体は散々たるものであったが、エルダにとっては「自分達を気遣って作ってくれただけでも嬉しかった」とのこと。

と同時に…

彼もまた、生前のミカの両親らウェルテクス一族の『自分達の技術を世界中の人々の幸せのために』という理念に近いものを持ってリーリエリヒト社で働いていたのだと、知った。




晴人達はとりあえずテーブルに座り、ミディアやリィアの話すユーテキの昔話に耳を傾ける。

エルダは紅茶を淹れながらくすくす笑っており、ユーテキはてんてこ舞い。

そして…

ミディアは、牛乳を飲みながらぶっちゃけていた。


「で、あんた、正直誰が好きなの?」

「ぶっ!?」

「あ、それ気になる!あの中に好きな子とかいるの〜?」

「まあ…確かに、少し気にはなっていたけれど…」


ミディアの発言に、ユーテキはオレンジジュースを鼻に詰まらせる。

「おぉう容赦ねぇ…」とバーガーは静かに瞬平と一緒にクッキーを貪り、コヨミとザウバーは我関せずの姿勢を取る。

イーヴリンと凛子も目を逸らし、晴人もトイレに立ち、ルルなど姉3人の味方をする始末。

唯一ミカだけは、ジュースを飲みながら話に聞き耳を立てていたようだが…

誰も止めないせいで、収拾のつかない会話がここに展開される。


「ルルも気になる!もしかしてユーちゃん、ルルが好きだったり?」

「やだユーテキ、あんた、ロリコンだったの?」

「まあ…あのユーテキが…」

「エルダ姉さんしっかり!ちょっとユーテキ、本当なの?あんた何してんのよ!」

「ない、絶対ないから!絶対ありえないからー!!とにかくルルは話をややこしくしないで、大人しくポポとクッキー食べててよ!?」

「だったら…凛ちゃんやイヴお姉ちゃんは?」

「うーん…年上か……」

「年齢的には私と同じか少し下ぐらいねぇ」

「やめときなさいよー、特に黒い女の人は。あんた大人の色香に騙されてるだけなのよ」

「ちょっリィア姉さん、イヴさんに失礼!それ絶対失礼発言だよ!?」

「コヨちゃんは?」

「あの大人しい子?…ないない、それはない」

「そういえば、何も食べてないけど…クッキーは嫌いだったのかしら…」

「っていうか、あんたも隅に置けないわねー」

「…だからルルは大人しくクッキー食べててよ…それとエルダ姉さん、コヨミちゃんはちょっと特別な体質で……ちょっと食べなくても大丈夫らしいから、気にしないでいいよ…」

「じゃあ……ミカちゃん?」

「あの気の強そうな子?あんた私とリィア姉さんでああいうタイプ懲りてない?」

「いやいや、ミディア…案外きっとユーテキって、Mっ気あるんじゃない?甚振られることに会館を覚えているとか」

「……ユーテキ………」

「ねぇちょっと…もうそろそろやめようよ、このままじゃ今回の話以内にタルボット博士に会えなくなっちゃうよ…」



「じゃあ…ザウちゃん?」

「「ユーテキあんた…男が趣味だったの……?」」

「あの可愛かったユーテキが………」

「ない!」

「それは一番ありえない!」

「いいからルルは暫く黙ってて!」

「確かにユーテキとザウバーは同じ平川さんだけどな!?」

「こんなのサッカーとザウバーが泣いてるよ!」

「もうユーテキ君のHPは0だよ!?」

「瞬平、……ザウバーもかなりHP削られてるから…HP残り1ってぐらいに」

「………ルル、お前後で、チョップの刑…!」

「チョップなんだ!?チョップで済まされるんだ!!?」

「……もぉぉぉ…一転してシリアスになってもいい、だから早く話を進めようよぉぉぉ…!orz」






〜〜〜






ユーテキがシリアスを要望したため

…というか、これ以上のルルの暴走(※無自覚)に付き合ったらユーテキとザウバーの残機が危うい。

とにかくユーテキの家を後にし、晴人達はタルボット博士の家へ向かう。

近くで見てみると、やはりその大きさはかなりのもの…

特に屋根の上に取り付けられた装置は、屋根の大半を占領している。

凛子は装置を指差しながら、ユーテキに尋ねていた。


「さっき聞きそびれたけど…あの装置って、一体何なの?」

「あれはシールド発生装置なんだ。タルボット博士はアムニスフィールドについて研究しているから…その片手間で、簡易式のシールド発生装置を作ったみたいだよ」

「「「片手間…」」」

「お陰で町の人からは変人扱いされてるけど、でも結構凄いことなんだよね。……さて、どう言うべきか」


ユーテキはドアの前で唸りながら、どう顔を合わせればいいのか悩んでいる様子。

無理もない。

タルボット博士は、現在のウェルテクス社のやり方に反発している…そんな彼が、ウェルテクス社に入ったユーテキと顔を合わせれば、どうなるか。

恐らく、町の人や姉達以上に顔の合わせづらい相手であることは、確か。

しかし…

ミカはドアをノックし、大声でタルボット博士を呼ぶ。


「――あの、すいません!私、ウェルテクス一族のミカって言います!!」

「「「わああああああああそんなはっきりとおおおおおおおおお!?」」」

「だってタルボット博士もウェルテクス一族のこと知ってるんだから、名乗ったほうがいいじゃない!これから一緒に戦っていく人なんだから尚更!!」

「それはそうなんだろうけど、ミカ、自己紹介にいきなりそれは…」



「―――誰じゃウェルテクス一族の名を騙る不届きモンはぁぁぁぁぁ!!」



ドアがいきなり開いたかと思えば、

…ミカを止めるために真正面に来ていた晴人に、大量の塩がぶっ掛けられた。

『これが本当の、salt(=ソルト=そうま)晴人』…

そんなことをバーガー辺りが思っていると、ドアの前に立っていたのは、バケツを持った健脚な老人。

どうやら、彼がタルボット博士のようだ。

晴人は突然掛けられた塩を払い落とし、タルボットはユーテキに気付いたのか皮肉満載で彼に言う。


「ぺっ、ぺっ!?……こういうの、瞬平かユーテキの役目じゃん普通…!」

「晴人さん!?」

「何や、騒がしい兄ちゃんらやな。……ん?そこのお前、エセウェルテクス社にノコノコスカウトされおった馬鹿ユーテキやないか。今更どうしたんじゃ」

「…タルボット博士、その、……耳に痛いです…えっと、――ごめんなさい…」

「で、さっきウェルテクス一族の名前を騙ったんは誰や?そこのオッドアイの兄ちゃんか」

「声で違うだろ」

「あの…私です。ティエラの町から来ました、ミカっていいます」


タルボットは追加の塩入りバケツをザウバーに向けるが、その前にミカが名乗り出る。

その出で立ちを見て、タルボットは先代のウェルテクス一族を思い出したようだ…

納得したようにミカを見ながら、用件を尋ねる。


「成程、確かにステラっちゅー人にそっくりやな。で、一体何しに来たんや」

「実は私達、タルボット博士に力を借りに来たんです!」

「帝国に目をつけられているあなたなら、逆に帝国の動向を探っているでしょう。……いいお土産もあります、とりあえず中でお話しましょうか」

「土産?悪いが、菓子やそういうモンじゃこのワシは動かされへんで」

「……アムニスフィールドの重大な秘密に関する、ウェルテクス一族の研究資料だとしたら?」




――こういう交渉ごとの場合、やはり情報屋であるイーヴリンのほうが駆け引きが上手い。

彼女はタルボットに対し、交渉の切り札をすぐさま明かした…

初対面でいきなりバケツで塩をかけるような短気な人物だ、焦らしすぎると逆効果だと思ったのだろう。

“焦らし”は交渉術において非常に有効的なテクニックだが、使いどころを誤ると交渉が決裂してしまう場合がある。

大事なのは、空気を察する能力なのだ。

とにかく、タルボットはとりあえず話を聞こうという気にはなったのか、家の中に晴人達を入れる。

そして、少しばかりボロい椅子に座りながら、ミカから手渡された研究資料の中身を見る。


「……ふむ、アムニスフィールドは遥か昔、古代人が作ったエネルギーシールドで…その技術は悪用されんよう海に沈めるなり隠すなりした、っちゅーことか」

「それで…」

「それでも何も、こういうのはとっくの昔に分かっとるわい。ワシを舐めたらあかんで、あんたら」

「「「えっ!?」」」

「もうそこまで、アムニスフィールドのことを調べ上げていたのか…」


タルボットの言葉に、他でもない晴人達が驚く。

しかし、今まで誰も『神からの贈り物である』アムニスフィールドについて詳しく調べたことがないだけであって、『無尽蔵のエネルギー源である』アムニスフィールドの謎について誰かが調べてこなかったはずがない。

これは流石に計算外だった。

貴重な等価交換品でもある【アムニスフィールドに関する研究資料】が無意味となれば、この後の説得は難しくなるだろう…

だが、そんな予想に反してタルボットは、こんなことを話していた。


「……しっかし、帝国の奴らが有難がっとるシンボルストーンも、その古代人によって作られ…アムニスフィールドのエネルギーをコントロールできるっちゅーのには、興味があるわい」

「やっぱりそこまでは、博士も知らなかったんですか?」

「シンボルストーンを調べるなんてバチ当たりなことしてみぃ。国外追放ならまだ軽いで?即刻死罪や」

「「「…確かに」」」

「何故アムニスフィールドを古代人が作ったのか、【石】はともかく…全エネルギーを開放するための【鍵】とは何なのか。……興味が尽きんわい」



どうやら、シンボルストーンの秘密に関してまでは、タルボットも知らなかったのだろう。

確かに彼の言うとおり、『ラディス教のシンボル』でもあるその石を調べようなど、罰当たりもいいところ…

ラディス教について研究しているアイザックですら、確かめようとはしないだろう。

ふむ、とタルボットは資料に目を通りながら、ミカ達に話していた。


「で、――確か帝国と戦いたいからワシの力を借りたい言うとったな。一族の敵討ちか?」

「それもあると思う…だけど今は、帝国によって苦しんでいる人達をたくさん見てきて…一人助けるだけじゃ駄目なんだって分かった。だから私達は、何としても帝国を倒したいんです!」

「それに…今の帝国の暴走には、ファントムと言う怪人が裏で糸を引いている可能性もある。このまま黙って見過ごせば、この世界は絶望に包まれて……大量のファントムが生まれかねないんだ」

「成程。あんたらの話が本当なら、ウェルテクスの力と魔法…そりゃそんなけったいなモン使えば、帝国に捻り潰されずに生きてこれたのにも納得や」


ところがやな、とタルボットはリモコンを操作する。

そうすると、突然部屋が真っ暗になり、更に瞬平とユーテキの座っている後ろに液晶モニターが現れる。

そして、そこに映されたのは…

ミカ達も訪れたことのある、セラピアの町の静止画。


「この町も、当然見てきたんやろ?」

「「「あ、はい」」」

「セラピアの町は、ウェルテクス一族によって旱魃から救われたんですよね」

「そうや、…町を丸ごと作り変えるっちゅー技術を利用して、帝国や今のエセウェルテクス社は大変な兵器を造っとる。問題は……や」


次に現れたのは、ルキナとアムニスフィールドの簡単な図解。

暫くしていると、アムニスフィールドを意味する円がギザギザとした形になり、ある一点に落とされる。

これは一体どういう図なのだろう?

ルルが首を傾げていると、タルボットが静かに説明を始める。



「アムニスフィールドのエネルギーをレーザー砲のように発射し、狙った場所は町一つ簡単に消し飛ばされる。出力を上げれば、大陸一つ消し飛ばすことだって可能やろな」

「「「…!」」」

「もしそんなことをしたら、…タルボット博士…世界はどうなるんですか!?」

「そうよ。それに、アムニスフィールドのエネルギーを直接使うってことは…アムニスフィールドだってただじゃ済まないじゃない!」

「そこの嬢ちゃん達の言うとおりや。こんなもん使われたら、世界中だけやあらへん…アムニスフィールドかて大変なことになる。世界とドンパチやりたい奴らが、そこまで研究してればええが……」


まあ無理やろな、とタルボットは凛子とコヨミを見ながら言う。

…タルボットの話では、ウェルテクス社が現在造っている兵器はアムニスフィールドに相当の負荷をかけてしまい、ヘタをすればアムニスフィールドの存在自体が危うくなるそうだ。

更に彼の話では、現在リーリエリヒトはダティーバ大陸の部族達と戦争をしている…

彼らとの戦争に決着をつけるのならば、様々な部族が集まり形成される国【グリュッグ国】を狙う可能性が高いとのこと。

戦力の要であるグリュッグ国の部族達を失えば、リーリエリヒト帝国の勝利は確実。

そうすれば今度は、カルラを中心に反乱の狼煙を上げたツァールハイト国が狙われる可能性が出てくるのだ。


「だが、逆に言えば…こちらが帝都にさえ入れば自分の国で大きな兵器を使うわけにも行かなくなる。そうすればウェルテクス社の兵器は、ただの大きな鉄の塊だ」

「タルボット博士、ウェルテクス一族の力と遺志で戦えるのは…今、世界にあなたしかいないんです。帝国に入るまででいい、私達のサポートをしていただきたい」

「私の家族だけじゃない、この世界にいる人々のためにも!……タルボット博士!!」


ザウバーやイーヴリン、さらにはミカも説得に乗り出す。

このまま、交渉が上手く行ってくれれば…

ユーテキや瞬平はそう祈り、誰もが真剣な面持ちでタルボットを見ていた。




だが…

そんなところへ、地下のモニタールームにいた助手のマルグリットが、大慌てで駆け出してきた。


「博士ーっ、大変、大変やぁっ!」

「なんやマル、どないしたんねん?」

「そんなのんびりしてる暇あらへんよ!……ウェルテクス社の通信を受信してたら、ててててて、帝国軍が…ウェルスの町に来るって話やったねん!!」

「「「帝国軍が!?」」」


マルグリットの話では、いつものようにウェルテクス社の通信内容を常時チェックしていると…

突然皇帝イシュトヴァーンの声が聞こえ、通信相手でもあるヴィルギニアとこんな会話をしていたそうだ。

『ウェルスの町に、ウェルテクスの娘と異国の呪術者がいるとの情報が入った』

『厄介なのは、タルボット博士の持つシールド発生装置。もしもそれを使われれば、外から入り込むことは不可能になるだろう』

『ロートゥス塔という塔の最上階に、シールド発生装置の要となる電源装置があるはず』

『その装置を破壊し、シールド発生装置を無力化させ…ウェルテクスの娘を捕まえるのだ』

…もしもそんなことになれば、ウェルスの町で激しい戦闘になる。

彼らの身を守るためにも、ロートゥス塔に向かってシールド発生装置の要となる電源装置をミッドノクスらから守らなければならない。


「――あの帝国め、こっちが何も出来へん思って好き勝手やりおって!」

「向こうさんの話やと、ヴィルギニア元帥とオフレッサー隊長は既にロートゥス塔に登り始めてるらしいねん!……他の帝国軍も後からやってくることを考えると、…もう時間あらへんよ!!」

「だったら…私達、今すぐその塔に向かいます!」

「あいつらの狙いは俺達なんだ、電源装置を壊される前に着きさえすれば…短気なあいつらのことだ、俺達と戦おうとするだろうから…余裕で時間が稼げる」

「…確かに、年老いたワシが行ってもどうにもならんからな……任せたで、ウェルテクスの娘さんら」


その言葉に、ミカと晴人は大きく頷く。

今回はかなりの急行軍となり、同時に、凛子達非戦闘員を守っている余裕はない…

凛子・コヨミ・瞬平の3人と…もし帝国軍が来た時のためにザウバーとルルをタルボット博士の家に残し、晴人達はロートゥス塔に向け、足を進めていた。






***




前半→ギャグ

後半→シリアス

ギャップが凄い28話。

凄いと言うよりも、その差がむしろ…恐ろしい。


ユーテキwww

ウェルスの町は、ユーテキの生まれ故郷なんですよねー。

そして今明かされる、ユーテキの家族事情。

長女・エルダ、次女・リィア、三女ミディア、長男・ユーテキという家族構成。

そりゃあんな弟になるわ…←



マシンガントークが好きなユーテキのお姉さん達w

とりあえず他のキャラで例えるなら

エルダ→スータトママン

リィア→ウォドラさん

ミディア→ヒナ

…リィアとミディアが見事に性格キッツいなw

ちなみにこの2人は、ミカでも亜樹子でも美羽でも通ります。


タルボット博士は…

ゲームだと時々ああいう喋り方になるんですけど、漫画のほうが印象あったんで終始あの喋り方になりました。

晴人w晴人が塩まみれにww

Salt晴人ってwww

帝国の軍事兵器はかなり恐ろしいもののようで。

しかしそれを仮に放った場合、アムニスフィールドはどうなってしまうのか…




次回は

――久々のアレやります。アレ。