晴人とミカの二人が、アンベラの洞窟でクレイデーモンと戦闘を開始した同時刻…
コヨミ・凛子・イーヴリンの三人は、ジェイクの彼女であるシェリーの家に向かっていた。
彼女は母親と一緒に赤い屋根の家に住んでおり、庭には白くて可愛い花が咲いている。
庭の花はシェリーが毎日丹精込めて育てていたのだが、数ヶ月前から病気になって以降は恋人のジェイクが水をやっていた。
だからだろうか…水を与えてくれるはずのジェイクがいなくなり、花は少し元気がない。
イーヴリンがグリニッジの村の住人に聞いたところ、シェリーは誰にでも愛想がよく、突然病気になるまではいつでも優しい笑みを浮かべていた。ジェイクは、そんな彼女の優しさや笑顔に惚れたらしい…とも聞いている。
「シェリーさんって、どんな人なのかしら」
「さあ…」
「それよりも、ちょっと気になることを聞いたよ。……シェリーは元々、年老いた母親と暮らしていたんだけど…彼女が病気になる前に、魔物に殺されたそうだ」
「えっ、魔物に!?」
「じゃあ、もしかしてシェリーって人が病気になったのは…」
「魔物に母親を殺されたショックじゃないのか、って皆噂してるよ。だけどもっと気になるのは、葬儀はすべてジェイクや村の者任せで、シェリーは葬儀の日に村を出ていた」
イーヴリンの得た情報に、凛子もコヨミも『心優しい笑顔の素敵な女性』と言うシェリーの印象と大きく食い違いが生じていることに気付く。
本当に心優しい人間ならば、例え病気であっても母親の葬儀を他人任せにするはずがない。
しかも、その日にどこかに出かけていたなど…ありえるのだろうか?
村の者も「きっと町のほうの診療所で検査を受けたんだろう」と言っていたが、どうも引っかかる。
嫌な予感を感じつつ凛子がシェリーの家のドアをノックしようとしていると、騒がしい声が2つも聞こえて来た。
「―――あーっ!イヴさんにコヨミちゃんに凛子さん…いたーっ!!」
「み、皆酷いよ!僕達を置いていくなんて〜っ!!」
…瞬平とユーテキだ。
“ああそういえば、宿屋に忘れてきたままだった”
凛子達はそんなことを思いつつ、ぎゃあぎゃあ文句をいう二人を黙らせながら詳しい話を説明していた。
そして…
底抜けにお人よしなこの二人は、コヨミ達の危惧していることに気付かないままノックをする。
「そういうことだったら、ジェイクさんが来るまで僕達が彼女の看病をしないと!」
「ユーテキ君の言うとおり!…あのー、すみませーん。シェリーさんいますかー!!」
「ちょ、ちょっと二人とも!」
「あ、そうだ…知らない人間がいきなりやってきても怖がるだけだよ」
「じゃあ僕、お見舞いの果物を何処かで買ってくるよ!」
「「「いや、だから…」」」
凛子の静止をまったく聞かず、勝手に暴走しまくる二人。
晴人早く帰ってきて、とコヨミが頭を抱えていると…
鍵がガチャリと開き、中から不機嫌そうな顔をした栗色の髪の女性が出てくる。
きっとこの人がシェリーなのだろう、と誰もが思っていると
――コヨミは目を見開き、叫んでいた。
「……ちょっと、誰なの?さっきから家の前で騒がしくして…」
「ああああ、すみません!僕達、シェリーさんのお見舞いに…」
「待ってユーテキ。…この人、ファントム!」
「「「えっ!?」」」
“ファントム”
そう言い放ったコヨミの言葉に、凛子と瞬平は驚いたような目でシェリーの姿をした女性を見ていた。
コヨミは、人間に擬態したファントムを見分けることができる。
基本的にコヨミは【面影堂】から出ないようにしているため――人と関わることを避けているか、体を動かしている魔力の余計な消費を控えるためかはコヨミしか知らない――、それを生かす機会は少ないのだが…一目見れば確実に分かる以上、それを疑うことは凛子も瞬平もできなかった。
一方で、シェリーの姿をした女性も…一度は驚いたような顔をしていたが、コヨミを何とか言いくるめようとする。
「…い、いきなりやって来て人を化け物呼ばわりだなんて…どうかしているんじゃないの。あなた」
「とぼけないで。私は、普通の人間とファントムの区別ができる…それに私は『ファントム』と叫んだだけで、ファントムのことを『化け物』とは呼んでないわ!」
「……参ったわね、まさか、こんな小娘に知られるなんて思いもよらなかったわ」
シェリーの姿をした女性はそう言いながら、姿を人とは違うものに変えていく。
その姿はまるで神々しく、普通のファントムとは違い“光”が似合うほど美しい姿…
レムと呼ばれるファントムはその姿を露にし、いきなり姿を変えたそれにイーヴリンが咄嗟に両手剣を構える。
ユーテキも慌てて両足のホルダーにある二丁の拳銃を取り出すが、その腰は低い。
「…やっぱりかっ!」
「えっ、え…どういうことっ!?怪物がシェリーさんの姿になっているって、どういうこと!?」
「ファントムは魔力の高い人間…“ゲート”を絶望させて、ファントムを生み出すの。そうやって生み出されたファントムは、ゲートの姿も記憶も奪って…ファントムを生み出してしまったゲートは、まるで雛が孵った後の卵の体のように壊れてしまう……つまり、」
『簡単に言えば、【ゲートは死ぬ】って事ね』
説明するコヨミの後に非情な現実を告げたのは、レム本人だった。
ファントムを生み出したゲートは死ぬ…
その事実にイーヴリンやユーテキは動揺しつつも、あれはシェリーの姿をした怪物であって、シェリーではないと認識していた。
レムは宙に浮かび…くすり、とコヨミを見ながら尋ねる。
『それにしてもあなた、ファントムに随分詳しいと言うことは…オリジン様の言っていた魔法使い?……にしては、随分と弱そうだけど』
「…私は魔法使いじゃないわ。ファントムに詳しいのは確かだけど」
『まあいいわ…私の邪魔をするというのなら、全員纏めて消してあげる!』
レムはそういうと、何かの種のような物を撒き散らす。
…そこから“グール”という使い魔が生まれ、槍を携えながらゆっくりとコヨミ達の元にやってくる。
得体の知れない魔物に驚きながらも、ユーテキは二丁拳銃を正面に向かって同時に撃つ“クラッチショット”で応戦。
また、イーヴリンも非戦闘員である凛子・瞬平・コヨミを守るため、ユーテキの攻撃の合間を潜り抜けてやって来たグールに剣を振るう。
「…“迅空断”!」
『さあて、こうなったら予定より早めにゲートを絶望するしかないわね。魔法使いが来たら、厄介だわ』
「ど、どうしましょう凛子さん!?」
「どうするって、晴人君に連絡するしかないでしょ!?あーでも、バイクに乗ってたら電話に出てくれるはずないしー!」
「…」
わあわあと混乱する瞬平と凛子をよそに、コヨミは考えていた。
…このファントムにもきっと、狙いのゲートがいるはず
…もしかして、このファントムが狙っているゲートって…
そうしている間にも、イーヴリンの後方支援をしていたユーテキが攻撃を抜けてやってきたグールの振り下ろした槍で負傷し、肩から血が流れる。
“そうだ、この人達は生身で戦っているんだ”
そのことに気付いた凛子と瞬平は、負傷したユーテキを手当てするため彼の体を引きずって戦いの場から下げようとする。
「大丈夫っ!?早く、手当てしないと!」
「え、あ、大丈夫…アップルグミ、アップルグミさえくれれば回復…」
「こんな時におやつなんて駄目に決まってるじゃないか!凛子さん、足持ってください!!」
「分かったわ!」
「いや、ちょ…ああああああああああああー!?」
――その際、なにやら戯言を呻いていたが…正直コヨミもイーヴリンも、どうでもよく思っていた。
何故なら…
「な、…なんだこの化け物達は…!?シェリー、シェリーは…!」
アンベラの花が入ったケースを抱えた男が、青ざめた顔で叫ぶ。
…シェリーを知っている上に親しげな男性…つまり、恋人のジェイクに他ならない。
その姿を見たレムは口元に笑みを浮かべ、それを見たコヨミはレムの狙いが分かったのだ。
しかしコヨミがそれを止める前にレムがジェイクの前に現れ、彼は足を震わせながらも道の怪物にシェリーの生死を訊ねていた。
『やっと見つけたわ。まさかあなたがゲートだったなんて、思いもしなかった』
「げ、ゲート…?それより、シェリーは…シェリーは無事なのかっ!」
『あっははははは、もしかしてまだ信じているの?あなたってとんだお馬鹿さんねぇ!』
「な…?」
『シェリーは……私よ』
そう言いながら、レムはジェイクの目の前でシェリーの姿となる。
目の前の化け物が、自分の恋人の姿になり…当然ジェイクは混乱。
――きっと、まやかしか何かだ
――魔物が俺を騙そうとしているんだ
しかし、そんな儚い希望もすぐに打ち砕かれてしまう。
「シェリーはねぇ、ちょうど3ヶ月ぐらい前だったかしら?あなたの子供を身篭っていたのに、自分の不注意で死なせてしまったの。それが彼女の【絶望】」
「な…?そんな、シェリーはそんなこと一言も…」
「言おうとする前に死んだのよ、子供もシェリーも。絶望した彼女は私を生み出し、死んだ!皮肉よねぇ、自分の血の繋がった子供は死んで…その後を追うように自分も死ぬ形で、ファントムの私を生み出したなんて」
「しぇ、…シェリーが…死んだ……?そんな…」
『――もっといいこと、教えてあげましょうか?』
レムは元の姿に戻りながら、ジェイクに話を続ける。
…シェリーの体が内側から壊され、レムを生み出した姿を彼女の母親が偶然目撃していた。
その光景を見ていようが見ていまいが、レムは母親を殺すつもりでいた。
これから行動するに辺り、彼女と一緒に暮らす母親の存在はどうしても邪魔になってしまうからだ。
シェリーの母親は魔物に殺されたと偽り、シェリーという死んだ人間自体も“突然の重い病気に罹った”と偽り…
母親の葬儀の日には、新たなファントムの誕生を察知したオリジンと接触していたそうだ。
オリジンはレムに、なるべく怪しまれないよう機が熟すのを待てとだけ命令した。
『そして…遂にあなたを絶望させる日がやってきた。残念だったでしょうねぇ、恋人を助けるためにアンベラの花を持ってきたのに、無意味になっちゃって。だって流石のアンベラの花でも、死んだ人間は生き返らせないでしょ』
「あ、あ…」
ジェイクはがくがくと体を震わせ、持っていたアンベラの花のケースを落とす。
それを見たレムは、持っていた杖の先でケースごと花を壊してしまう…
その瞬間、ジェイクの心の支え…“アンダーワールド”に紫の亀裂が入り、ジェイクは倒れてしまう。
「ジェイクさん」と瞬平が叫ぶが、――ジェイクの体にはゆっくりと紫のひびが入り、レムは高笑いする。
「「ジェイクさん!」」
『あーっはっはっは!これであなたはオシマイ、絶望ルート一直線ねぇ!!』
「…こんな、こんな酷いことを…よくも平然と……!」
「あれがファントム、か。――成程…普通の魔物より知恵もある分、……いけ好かないな!」
ジェイクを苦しめて喜ぶレムに、ユーテキもイーヴリンも沸々と怒りを込み上げている。
しかし、自分達ではどうすることもできない現状…
グールは今も周囲を混乱に陥れ、イーヴリンだけでは被害が増大する。
コヨミは両手を合わせ、目を瞑り、晴人の到着を祈っていた。
すると…
「――成程、そういうことか」
そんな言葉が聞こえたかと思うと、グールの集団に銀の銃弾が放たれる。
…晴人だ。
更に大きな水が数体のグールを押し流したと思えば、ミカが駆けつけ、ユーテキを一発殴る。
そして傷ついた彼に気の力を送り、もう一発殴る。そしてチョップする。
「…もう!何あんな雑魚相手に怪我してんのよっ」
「み、ミカ…肩の傷を治してくれたのはいいけど、……パンチ2発とチョップは要る…?」
「煩いわね、そのマフラーで首絞めるよ!?」
「すいませんでした!」
被害者なのに謝らなければならないユーテキ。もはや不憫を通り越して【可哀想】だ、これは。
それはさておき、晴人は一刻も早くレムを片付けるべく、指輪を構える。
<シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバd>
「ミカ、イヴと協力してグールを抑えてくれ!…ファントムは俺が倒す」
「分かった!」
「変身!!」
<フレイム、プリーズ ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!>
晴人は炎の魔方陣を出現させると、仮面ライダーウィザードへと変身し、ウィザーソードガンでレムを狙撃する。
魔法使いの登場に舌打ちしながらも、レムは空中に飛び上がり、杖の先から光の玉を放つ。
ウィザードFSは“ディフェンド”の魔法で相手の攻撃を防御すると、ウィザーソードガンによる攻撃を試みるが…当たらない。
――空中にいる敵を片付けるためには、これしかないか!
晴人は緑の魔宝石を使った指輪を指に嵌め、ハリケーンスタイルに変身する。
<ハリケーン、プリーズ フー、フー、フーフーフフー!>
「空を飛べるのは、俺も同じでね!」
『なっ!?』
ウィザードHSは空高くジャンプすると、風を纏って空を飛ぶ。
レムは追いかけてくる相手から必死で逃げながら攻撃するが、スピードはハリケーンスタイルのほうが速く、攻撃もことごとく避けられてしまう。
こうなれば、とばかりに特大の光の玉をウィザードHSにぶつけ、直撃。
上空には煙が舞い、地上にいた誰もがウィザードHSの身を案じていた。
「…晴人!」
「「「晴人さん!?」」」
『あははっ、大したことないわねぇ魔法使い!……ん…?』
<ハリケーン、ドラゴン ビュー、ビュー、ビュービュービュビュー!>
<チョーイイネ! スペシャル、サイコー!>
「――終わったと思った?残念、…まだ生きてるぜっ!」
煙の中を突っ切るように現れたのは、――ハリケーンドラゴン。
自分の中にあるファントム“ドラゴン”の力を最大限に生かせるスタイルの1つで、空中戦に特化している。
更にスペシャルリングを使うことで背に翼が生え、専用のサンダーリングと併用して使うことで強力な攻撃を放つことが可能なハリケーンスタイルの強化系。
ウィザードHDはウィザーソードガンを逆手持ちにしながら、神速にも近い速さでルナを切り伏せる。
圧倒的なスピードに翻弄され、レムは手を出すこともできない。
『くうっ…こ、これが…指輪の魔法使いの力…!?』
「…これでフィナーレだ!」
<チョーイイネ! サンダー、サイコー!>
ウィザードHDはレムの周囲を旋回すると、彼女を囲むように巨大な竜巻が巻き起こる。
更にその竜巻は緑色の雷を纏い、やがて雷の渦は凝縮され、レムとの間隔を狭めていく。
何とか脱出しようにも、光の玉はあまりの暴風に弾き飛ばされ…体当たりで抜けようにも、触れただけで強力な雷が襲うのは目に見えている。
しかも天高く竜巻は発生しているため、竜巻を抜けられる高さまで移動する頃には完全にやられている頃。
…文字通り、手も足も出せないまま…レムはウィザードHDの最大攻撃の前に敗れ去っていた。
『なあっ!?――きゃああああああああーっ!』
「ふぃー。……さてと、今度はゲートだ!」
ウィザードHDが地上に降り、フレイムスタイルに戻る。
ジェイクの紫のヒビはかなり進行しており、このままではファントムを生み出すのも時間の問題と言ったところか。
ウィザードFSはエンゲージリングを取り出し、ジェイクの左手の薬指に嵌める。
…その際、ジェイクがこんなことを話していた。
「……シェリーが死んじまったなんて、…これから俺は…どうやって生きていけばいいんだ……」
「「「…」」」
「諦めるな。…あんたはまだ、生きているんだろ…だったら希望を捨てるな!シェリーの分まで生きて、幸せになれ!!」
「シェリーの…分まで…?」
「ああ、きっと彼女もそれを望んでいるはずだ。あんたの未来は俺が繋いでみせる…俺が最後の希望だ」
<エンゲージ、プリーズ>
ウィザードFSはそう言うと、ジェイクの指に嵌めたエンゲージリングをベルトに翳す。
すると、ジェイクの上に魔方陣が現れ、ウィザードFSはその中を潜り抜けるように入っていく…
当然ミカ・ユーテキ・イーヴリンの三人は驚き、そんな彼女達にコヨミと凛子が説明していた。
「「「えええ!?」」」
「…晴人はエンゲージリングを使うことで、ゲートのアンダーワールド…つまり心の支えとなっている空間に行けるの」
「そう。そして、そこで暴れているファントムを倒せば…ゲートはファントムを生み出すことなく、助かる」
「晴人さん…頑張ってください…!」
ジェイクのアンダーワールドにやって来たウィザードFSは、周囲を見渡す。
シェリーとの幸せな時間。これこそが、ジェイクのアンダーワールドなのだろう…
そう感慨に耽っていると、突然大きな紫の亀裂が走ったかと思えば、巨大なファントム“グリズリー”が亀裂を蹴破ってやってくる。
いきなりの大物にウィザードHSはマシンウィンガーを呼び出し、更にドラゴンファントムをも呼んでいた。
『ガァァグアァァァ!』
「随分と凶暴なの飼ってるな!?…まあいい、ジェイクのためにもすぐに倒す!」
<コネクト、プリーズ>
<ドラゴライズ、プリーズ>
『……グオォォォォン!』
アンダーワールド上空から、ウィザードラゴンが飛来する。
ウィザードラゴンは口から強力な火を吐き出しながら、グリズリーを攻撃。
対するグリズリーは暴れ者の気質なのか、ウィザードラゴンを相手にせずジェイクのアンダーワールドを破壊し尽くそうとする。
このまま暴れ続ければ、ジェイクのアンダーワールドは崩壊し、グリズリーが生まれてしまう…
何としてもそれだけは止めたい。
ウィザードFSはマシンウィンガーに跨り、尻尾を伝ってウィザードラゴンの背に乗った後、ウィザードラゴンとマシンウィンガーをドッキングさせる。
暴れまわるグリズリーを追いかけるべく、ウィザードFSはウィザードラゴンを操り空を飛ぶ。
『ウガァァァ!』
「外に出させて…たまるかよっ!」
『グオォォォン!』
ウィザードラゴンの吐き出した火の玉は連続でグリズリーに直撃し、その巨体は地面に倒れる。
――今だ
そう思ったウィザードFSは右手の指輪を付け替え、留めに入る。
アンダーワールドで“キックストライク”の指輪を使うことにより、ウィザードラゴンは上空で変形・ウィザードFSの右足にドッキングした状態でファントムに突っ込んでいく。
当然、そんな規格外・常識外のキックなど…食らってただで済むはずがない。
グリズリーは大きな爆発を起こして消滅、地上に降り立ったウィザードFSは手をパンパンと叩きながらアンドの溜息をついていた。
「…ふぃー」
『グオォォォォォーンッ!』
〜〜〜
ジェイクのアンダーワールドから、ウィザードFSが帰還する。
ゲートの体のヒビも収まり、「やった」と瞬平と凛子は大喜びしていた。
その一方で…
ミカとユーテキは呆然とした様子で晴人を見ており、イーヴリンは失笑するばかり。
「…す、凄い。一体どうなってるの?これって夢…??」
「ぼ、僕に言われたって…って、痛い痛い!ミカなんで僕の頬を引っ張るのさー!?」
「魔法使いにファントム、ねぇ。……ははっ、これは今まで私が情報屋家業で手に入れてきた情報の中でも…とびっきりの代物だよ」
「……う、ううん…」
ジェイクはゆっくりと目を覚まし、起き上がる。
「大丈夫か」と晴人は訊ね、ジェイクは少し暗い顔をしながらも、レムに潰されたアンベラの花に目をやる。
花びらは完全に散ってしまい、蜜ももはや使い物にならないだろう…
しかし、花粉だけはまだ残っている。雌蕊も、受精をする分ならまだ機能できるはずだ。
ジェイクは大事そうにアンベラの花を拾い上げると、少しばかり吹っ切れたような顔で晴人達に言っていた。
「その花…」
「――俺、さ。……このアンベラの花…人工で受精させてみるよ。そして、昔みたいにこの村でもアンベラの花を見られるようにしたい」
「ジェイク」
「「「ジェイクさん…」」」
「…シェリーが昔、よく言ってたのを思い出したんだ。『お母さんが若い頃は、この村にたくさんアンベラの花が咲いていた。それがもう一度見られたらいいのに』って」
『そうしたら、アンベラの花も絶滅しなくて済むし…いいお薬がたくさん作れる』
『それに何より、私自身がその光景を見てみたいの』
『村いっぱいに咲き乱れる、アンベラの花を…』
シェリーは昔から花が大好きだった。庭の花の手入れも、死ぬ直前までずっと欠かさなかった。
そんな彼女が希望を夢見たその一欠けらが、アンベラの花なのだ。
だったら自分は、その希望を繋ぎたい。シェリーの願いどおり、グリニッジの村いっぱいのアンベラの花を咲かせたい。
そんな彼の新たな決意に、晴人は背を叩いていた。
「そうか。…あんたならできるさ」
「ありがとう。……そういえばあんた達、旅の人かい?」
「ああ、この村から南の方角に…ちょっとした用があってね」
「南…って言うと、ウェルテクスのお屋敷かい?あそこを訪れる物好きもいるんだなぁ…そこの弱そうな男2人の肝試しかい?」
「「「…」」」
「「なんで僕達を見るの!?」」
弱そうな男二人、と聞いた晴人と女性4人は…一斉にユーテキと瞬平を見る。
凝視された二人は心外だとばかりに叫ぶが、……ジェイクも二人を凝視している上に
「間違ってないでしょ」
…と言うコヨミの鋭いツッコミを貰い、撃沈。
とにかく、晴人達はジェイクと別れ…ウェルテクス屋敷に向かっていた。
そんな彼らの姿を見ていた、二つの影。
一人はセルシウスと言うファントムで、もう一人は4つの腕を持った金のファントム
…オリジンだった。
『――あれが指輪の魔法使いだ』
『…』
『セルシウス。お前は特務機関Gの邪魔をしないよう、魔法使いだけを狙うのだ。お前の力ならば、そのまま倒すこともできる』
『……』
セルシウスは小さく頷くと、そのままふらりと晴人達を追跡する。
それを見送ったオリジンは、ふむ、と顎に手をやりながら考えていた。
『奴らはウェルテクス屋敷に向かった。ということは、…上手くいけば面白いことになりそうだな』
***
第4話。
前回の伏字の答えは、「エンゲージ」でした!
…ハリケーンも間違っちゃいない気がしますがw
偶然とはいえ、ハリケーンドラゴン使うことになっちゃいましたし。
予想できていた人もいるかもですが、今回は
ファントム→シェリー
ゲート→ジェイク
…でした。
ち、ちなみにブレイカー本編ではシェリーさんちゃんと生きてますよ!生きてジェイクとリア充オーラ出してました!!←
シェリーの母親も生きてますよー!!!←
……それでもウィザブレはどっちも死んじゃってますけどね、シェリーの胎児のオマケ付きで☆←
今回はブレイカーメンバーへの、ファントム誕生の仕組みとアンダーワールドの説明回。
なので、テイルズ要素は低いです。
ちなみにミカがユーテキに使ったのは、『獅髪候(しはつこう)』と言う回復術。
凄い序盤の…しかもLv2の段階で覚えてくれる上に、体力回復+味方の状態異常回復で重宝しました。
優先順位が先頭のキャラ、と言うことに気付くまでが辛かったですが(※ブレイカーは携帯アプリゲーという都合から2D方式)
ユーテキは“リザレクション”という体力大幅回復の術も序盤で覚えてくれますけど、……TPめっちゃ食うんですよねw
それでも、後に覚えるディープステージやシルフィスティアよりは低いですが。
アンダーワールドキター!
グリズリーは精霊じゃないです、明らかに思いついたものをアンダーワールドにぶち込んだ感満載ですw
しかし今回のゲートの絶望理由、重いなぁ…
いや、これよりキッツイのもいそうですけどね。×××とか××××とか。
(※×の数は本当の数と一致していない可能性があります)
ウェルテクス屋敷編は、もっと重くなる予定だけどね!
でも大丈夫、多分DCDRWは越えないw
逆に…DCDRWか、フェニックスゾディアーツ回orドランとジリスの過去発覚回を超える重さが来たら相当まずいですから…