聖地ラディウスにある、ラディスの聖窟…
限られた者しか入れないその通路を登っていけば、ラディス神への信仰が深い者しか辿り着けないと言われる、【神の祭壇】がある。
この祭壇の造られた場所は、ラディウスが高い山脈の上に作られた町という事もあってか、空に…そしてアムニスフィールドに一番近いとされている。
今現在もアムニスフィールドは亀裂が走ったままであり、その空の下で…
シラスは究極の【神の剣】が誕生する瞬間を、今か今かと待ちわびていた。
ギリオンは【神の剣の本体】――万が一ルーク枢機卿がここを訪れても違和感がないようにするため、ラディスの教えが刻まれた石碑の形にしてあったもの――にミカの両腕を取り付け、兵器の機動確認を行う。
「くく…ここまで来るのは、長かった……これでようやく私が、世界を手に入れることができるでしょう。……このアムニスフィールドの力を以って、私はこのルキナの絶対な者となる!」
「シラス様…ウェルテクスの娘、兵器への設置が完了しました」
「ギリオン殿。あなたも、本当に不思議な方ですなぁ…」
「と、言いますと」
「このような兵器が誕生すれば、私もそうですが…その絶対なる力に見入られ、何としても奪い取らんとするもの。それなのに、あなたはこの【神の剣】を『いらない』と言って私に近づいてきた」
それは、12年前…
まだウェルテクス社が民営の会社、つまりミカの両親であるバグバード・ステラが全権を担っていた頃。
シラスはミカの祖父・タルムードがウェルテクス社を経営していた時代から、ウェルテクス社で研究をしていた。
しかし、『祖先から受け継がれてきた技術を世界中の人々のために』を経営理念とするウェルテクス一族の思想は、彼にとっては邪魔でしかなかった。
シラスはアムニスフィールドの持つ強大なエネルギーに惹かれ、そして、これを兵器として利用すれば自分がこの世界…ルキナの神に近い存在となれるのではと考えていた。
だが、それを簡単に許すウェルテクス一族ではない。
…何の特にもならない慈善活動をして、どうなる
…いつの世も戦いが起きているのだ、ならば兵器を造って大国に売ればいい金になるのに
…いいや、そもそもこの技術を最大限に利用すれば、自分達がルキナを支配できると言うのに
…奴らさえいなければ、私の望む兵器が作れるというのに
『――そのお手伝いを、私にさせてもらえないでしょうか?』
シラスの野望が、少し口に出てしまっていたのだろう。
一人の男にそれを聞かれ、こう返される。
…その男こそ、ギリオン……この世界にやってきたファントム、オリジンだ。
最初はシラスも、異世界から人とも魔物とも違う“存在”がやってくるなど、到底信じられなかった…
しかしギリオンは、その力をシラスの悲願のために使うと言ってきた。
そして、今現在リーリエリヒト帝国がウェルテクス社に、何度か使者を送って兵器生産の要求をしていること。
それをウェルテクス一族が拒み続け、帝国側としても、痺れを切らしつつあることを話し始める。
『…そこで、あなた様が直々にウェルテクス一族暗殺のための案を……イシュトヴァーン猊下にお伝えするのです』
『何?しかし、私のような者にあの皇帝が謁見するはずが』
『しますよ。……“ウェルテクス一族個人の情報”と、“彼らの死後のウェルテクス社を私に任せていただければ、あなたの望む究極の兵器を造ります”という言葉さえあれば。…後の細々としたことは、私にお任せを』
そうして、シラスは内密にイシュトヴァーンと謁見していた。
最初はイシュトヴァーンもシラスを何処まで信じられるか疑問に思い、シラスの持ってきた情報を特務機関Gに内密に調べさせていた。
そして、ウェルテクス一族が暮らしている屋敷の場所や家族構成など、個人的な部分にまで踏み込んだシラスの情報が正しいと分かると、協力を結び…
『反逆罪』としてウェルテクス一族の暗殺を、特務機関Gに命令していた。
しかもただ殺すだけでは、いずれ暗殺の可能性を疑われ、帝国…引いてはウェルテクス社を相続するシラスが不利になりかねない。
そこでオリジンは、研究中の事故として報道するようイシュトヴァーンに働きかけ、対するイシュトヴァーンもウェルテクス一族の葬儀の場で、ウェルテクス社を国営化すると発表。
…その際シラスはウェルテクス社の社長兼リーリエリヒト帝国宰相として迎えられ、ようやく待ち望んでいた兵器開発に着手することができたのだ。
総てがうまく行き過ぎていて、シラスは一瞬、ギリオンが横から自分の研究成果を盗んで自分の物にするのでは…という疑問を持った。
だが、ギリオンは冷たい微笑を浮かべると
『私は、この世界には同胞…ファントムを生み出しに来たのです』
『そのために、リーリエリヒト帝国の力を借りたい。ウェルテクス社を乗っ取りたいあなたとは、利害が一致していただけの話です』
『なので…私はその兵器を横から掻っ攫うような、無粋な真似はしません』
『私の元いた世界には、アムニスフィールドのような無限のエネルギー源がありませんので』
…とだけ、話していた。
最初のうちはシラスもその言葉を半信半疑で聞いていたが、長い年月を重ねるごとに、それは嘘ではなかったと知る。
その上、ギリオンことオリジンもファントムの力をシラスのために使い、その力にシラスは強い興味を示す。
そして、生物研究にも目をつけていたシラスは、現在製作している合成獣をファントムとして進化させることができないか、考えるようになった。
それに関してはギリオンも協力的で、どのモンスターをどの媒体と融合させるか、どのような力を生み出すのか研究を続けていた。そして、失敗作は即座にオリジンが始末する。
「――そんな、ことの…ために、……お母さん達を…」
意識の戻ったミカが、ギリ、と歯を噛み締めながらシラスとギリオンに言い放つ。
彼らを鋭く睨みつけるその目は、一転の曇りもない。
それを見たシラスは「おお」と怪しい笑みを見せ、ミカに近づき、その眼前まで寄る。
「気がついたのか。ちょうどいい、あの獣のような姿になって…アムニスフィールドの全エネルギーを、解放していただきましょうか」
「誰があんた達なんかのために!」
「いずれそうする時は来る。そうそう…あなたの大事なお仲間を、今からギリオン殿に呼んできてもらって、一人ずつ殺していくのもいいでしょう」
「なっ…!……その前に、舌を噛み切ってやる!!」
「できるかな?今ここで、親の仇も取れずに死ぬのは犬死も同じ…そういうことだ」
遅れてやってきたギリオンの言葉に、ミカはぐっと悔しそうな顔を見せる。
…今の一言で、勝気でお転婆な性格で…これまで家族のために旅をし、リーリエリヒトと戦ってきたミカは自害する選択肢を失った。
相変わらず口の上手い男だ、とシラスは思いながらも、シンボルストーンを【神の剣】にセットする。
だが、やはりそれだけでは【石】も変化を見せない。
シンボルストーンが唯一変化を見せるとすれば、やはり、ミカが聖獣となり…その目を紅く光らせること。
そうすれば【鍵】も【石】もそれぞれの役割を果たし、アムニスフィールドのエネルギーを解放する。
怒りのあまり聖獣が暴走するようなことがあっても、その時はアムニスフィールドのエネルギーをコントロールできると言う、シンボルストーンの力で沈静化できるだろう。
そうシラスは考え、究極の兵器が完成する瞬間がもうすぐ近づいていると、口元に笑みを浮かべる。
しかし…
その後ろでは、ギリオンがにやりと笑みを見せていた。
(そう、これでいい。――これでようやく、私の望むものが…誕生するだろう)
〜〜〜
聖地ラディウス。
町にゾゾを残し、そこにある大聖堂まで一気に駆ける晴人達。
…ちなみに、瞬平は普段着に戻っていた。と言うか、戻した。
何としてでもシラスとギリオンの野望を止めたい彼らの前に、ステファン枢機卿が立ち塞がった。
「枢機卿ってまだいたんですね」と正直に呟く瞬平の横で、イーヴリンは、「まあこの枢機卿、原典でも影薄いしね」とメタなことを言う始末。
「何の騒ぎです!騒々しい」
「悪いね。ちょっと、緊急事態なんだ」
「【神の祭壇】に行かせてほしいの!」
「何ですって?…あの場所は、我々のようにラディスの神に認められた者しか立ち入ることはできません。信仰心の薄いものは、何人たりとも入れさせるわけには行かないのです」
「……アムニスフィールドを覆う、亀裂の原因があるといってもかい?」
「異教徒が実験を行って、そのせいでアムニスフィールドが悲鳴を上げているのでしょう。全く嘆かわしい…それに、ラディスの神が生み出したアムニスフィールドを傷つけるような罰当たりなものを、神聖なる【神の祭壇】に置くわけがないでしょう」
緊急事態だというのに、晴人や凛子、イーヴリンの言葉に耳を貸す気のないステファン枢機卿。
頑固者、と小声で呟くユーテキ。…その視線は、落ち着かない。
ルルも何とかして魔法で強行突破しようとするが、あまり騒がしくするとそれこそ危険だとバーガーが注意。
コヨミもバーガーに何とか説得してもらえないか頼むが、彼は現在でもラディス教を裏切った反逆者として認識されている。
特に帝都から離れているこのラディウスの地では、ルーク枢機卿や聖海騎士団とバーガーの関係は柔和されていることは知らず、ステファン枢機卿もバーガーを反逆者として思い続けたまま。
そうしていると…
ザウバーが溜息を軽くつくと、近くにいたソウセイやコヨミと軽く打ち合わせをし、二人は驚きの行動に出ていた。
「――そのような無礼な態度を、この方の前で働いてもいいんですか?」
「こちらにいるのは、…えっと…ラディスの神の声を聞くことのできる、ラディス神の生まれ変わりよ」
「「「え?」」」
「ら、ラディスの神の生まれ変わり…?そんな馬鹿な、そのようなことが」
ステファン枢機卿は動揺しながら、ソウセイとコヨミを問い詰める。
…事もあろうに、信仰心など11年前に豪快に投げ捨てたザウバーを“ラディス神の生まれ変わり”と騙るとは。
本当にラディスの神がいれば、罰当たりもいいとこだろう。
しかし、真顔で演技を続けるソウセイと、多少自信はなさげだがコヨミも援護射撃をし、更にザウバーもステファン枢機卿に言い放つ。
「こちらにおわす方の眼をよくご覧下さい。アムニスフィールドを象徴するような蒼、そのアムニスフィールドが輝きを見せたと同時期に紅くその色を変えたシンボルストーンの如き紅。まさしくラディスの神の子たる証です」
「ええ…それに、この人の予言は……百発百中。総てを見通すその目、その耳、しかとご覧あれ…」
「――お前のことは知っているぞ、ステファン枢機卿…お主は影でシラス宰相と内通し、兵器製作の援助を行っていたそうだな」
「なっ!…何故、それを」
「えっ、イヴさん、…本当なの?」
「その筋じゃ有名な噂だけどね。ステファン枢機卿はラディス神以外の神を信仰する教徒達を力ずくで言い聞かせるべく、宗教戦争の際ウェルテクス社が開発した武器を使わせていたとか」
イーヴリンが言うのなら、本当なのだろう。
ユーテキは納得したように頷き、ザウバーはステファン枢機卿になおも言い放つ。
「…どうせ、シラス宰相に金でも詰まれて、内密にこの場所に入れるようにしていたのだろう。一時期、祭壇付近の通路の補修作業という名目でイシュトヴァーンすら入れなかった時期があった…恐らく、その時に兵器を作らせていたのだろう」
「うぐっ!?」
「イヴさん、あれは?」
「通路の補修作業は本当の話だよ。……というか、ステファン枢機卿、あまり嘘つけない性格みたいだね」
「ザウちゃん…名探偵なの!」
「というか、嘘から出た誠ってやつじゃあ…?」
「ラディスの神は総て見通している。――神から与えられし聖なる海を穢す手伝いをするとは、何事だ…真にラディスの神に仕える者なら、今すぐここにいる全員を通してもらおうか!」
「そうよ。…今なら特別に、ルーク枢機卿に黙っていてあげてもいいけれど…?ここにいるソウセイ君は、ルーク枢機卿とは【と・く・に!】懇意にしてもらっているから」
最終的にはザウバーと凛子に押し切られ、ステファン枢機卿は【神の祭壇】への道を明け渡してしまう。
こういう時、頭と口が回る舌先三寸で生きてきたような男は偉大だった。
後、ソウセイの演技力とコヨミの援護射撃と、凛子ちゃんの脅し。
晴人は失笑しながらも、ソウセイの案内を元に通路を進み…
――聖窟を抜けた先には、山を削って作られた階段があった。
それらを一気に駆け上がり、待ち受けていたのは……シラスとギリオン。そしてミカ。
「「「ミカ!」」」
「シラス…貴様!」
「オリジン…今日こそここで、決着をつける」
「くっくっく……わざわざ自分達のほうから来るとは、何と愚かな。その分、手間も省けましたがなぁ?」
「私としても、喜ばしい限りですよ。…さて…それでは我々の目的達成のため、何人か死んでいただけないでしょうか」
「…変身」
<シャバドゥビタッチ、ヘンシーン! …フレイム、ドラゴン ボー、ボー、ボーボーボー!!>
そう言い放つと、シラスはマクスウェル…ギリオンはオリジンとしての姿を見せる。
晴人も、今回は一気に決着をつけるべく、最初からフレイムドラゴンへと変身。
更に、その状態から“コネクト”の魔法でウィザーソードガンを増やすと…
一気にオリジンの元へ駆け出し、剣を振るっていた。
「…はっ!」
『どうせ無駄だと言うのに。もうじきこの世界は、絶望で満たされる』
「そうはさせないさ。……俺は、魔法使いだからな!」
『いくら魔法使いであっても、――世界中で起こる絶望の嵐は止められはしない!』
オリジンの剣がウィザードFDの剣を受け止め、残りの2本で切りかかる。
しかし…
即座に割って入ってきたザウバーが2本の刀でそれを受け止め、更にルルが魔法で岩の鎖を作り出す。
恐らく、晴人の使う“バインド”の魔法を参考にしたのだろう。
それはオリジンの4本の腕を縛り付け、その効力が持続している間に、ウィザードFDとザウバーが同時に切り払う。
「…すまない!助かった」
「4本の腕を相手にしている以上は、こうする他ないだろう」
「だけど、手ごわいよぉ。全く効いてないみたいだし…」
『くくっ。――私の相手に3人も使っていて、いいのか?』
「……うわああああああーっ!?」
突如ユーテキの悲鳴が聞こえ、ウィザードFDとザウバーが振り返る。
そこでは、マクスウェルが圧倒的な力を以ってして、イーヴリンやバーガーに襲い掛かっている姿。
ユーテキは既に左腕を負傷しており、ルルが急いで“ヒール”で回復させる。
しかし、その間にもマクスウェルが巻き起こす雷でイーヴリンが吹き飛ばされ、その間に懐に潜り込んだバーガーの攻撃も対して通用せず、炎が彼を襲う。
…あまりにも圧倒的な力。
それを岩陰から見ていた凛子や瞬平、コヨミにソウセイは口々に言う。
「ちょっと、…あれ…反則過ぎない!?」
「も、もしかしたら、オリジンより強いのかも…」
「それに、ただの人工ファントムじゃない。……たぶん、キルベルトでも制しきれなかったあの力を…シラスは、自分の中の野望でコントロールしているのよ…!」
「…俺達でミカちゃんを助けに行くつもりだったけど、……戦いが激しすぎて…石碑に近づくことすら……!」
疑問に思っていたのは、彼らだけではない。
ウィザードFDもだ。
彼はイーヴリン達の治療をザウバーに任せ、ルルは彼の援護をするべく魔法の障壁で守りを固める。
その間にウィザードFDは“コピー”で自らも増やし、息の合った連携攻撃でオリジンと戦いながら、訊ねる。
「……あんな力をシラスに与えさせてどうする!?自分でも止めきれないと分かっている力を、どうして…」
『答えは簡単。――いずれ用済みになるからだ』
「何だと!?」
『……私の能力は、空間転移と異なる世界を渡ることだけではない…。私の真の能力、それは、――真実を見通す目』
そう言い放つと、オリジンは胸から第3の目を開き…
その目はぎょろりと、ウィザードFDを見る。
突然の光景にウィザードFD、更に凛子達は驚きながらも、オリジンは話を続ける。
「…その目で、ゲートを見極めていたのか…?」
『それだけではない。…強い絶望を感知することのできるこの目は、この世界に募る深い絶望を見ていた』
「深い…絶望?それって、一体…」
『その絶望は、日に日に強まってきている。そして、引き金を引けば…今すぐにでも誕生するだろう。そして、シラスはそれによって……死ぬ』
「!?」
『言っただろう、真実を見通す目だと。――そうでなければ、この世界でファントムを生み出しつつ…上手く事どおりに動けるはずがない』
それでも、多少の計算外はあったがな…とウィザードFDを見るオリジン。
…彼の目は、この世界が本来辿るべき【未来】を…見ていた。
しかしオリジンの登場、そして彼がリーリエリヒト帝国を隠れ蓑にしてファントムを増やし続けたことにより、未来の道筋どおりに動きながらも多少は違った流れになっているそうだ。
つまり、オリジンが介入してもしなくても、シラスやイシュトヴァーンはウェルテクス一族暗殺を企てただろうが……その場合は、ザウバーが絶望しファントムを生み出すと言うことはなかった。
オリジンが介入し、間接的ではあるがゲートからファントムを生み出す条件を満たしたことによって、本来辿るべき【未来】とは異なり、ファントムを生み出す結果となった…
『言っておくが、私が介入せずともいずれシラス達自身の手で、ウェルテクス一族は暗殺されていた。……私は、私が関わることで発生する未来の道筋を歪めることなく、動いていたに過ぎない』
「一体どうして、そんな回りくどいことをしてまで…本来の道筋に拘ったんだ……?」
『――いずれ分かる』
「!」
オリジンの重い一撃が、2人のウィザードFDに放たれる。
一方は強い衝撃を受けたせいで消えてしまうが、もう一方は地面に激しく叩きつけられ、変身を解除してしまう。
「晴人」とコヨミは駆け寄ろうとするが、あまりに危険なため、瞬平と凛子が必死で止める。
そして…
マクスウェルの、イシュトヴァーンを一撃で葬った破壊光線がルル達に襲い掛かり、ルルの魔法障壁が破壊されてしまう。
その攻撃によってユーテキ達も大きなダメージを受け、地面に倒れ伏す仲間達を見て、ミカが叫んでいた。
「ユーテキ、…皆ああああああッ!」
「ミ、カ…」
「まさか、これほど…とは…」
「…守りきれなかったの…」
「く、そぉ…!」
『さて、誰を最初に殺してやろうか…ん?』
「――シ…ラスッ!」
何とか起き上がり、マクスウェルに一矢報いるため向かっていったのは…ザウバー。
…そういえばあれは、あそこにいる人形のようなものだったか
オリジンはそう思いながらも、“筋書き”どおりに事が運んでいることに、笑う。
それを見た晴人は「まさか」と悪い予感を感じ、声を上げようとしたが
『――ちょうどいい…忌まわしいウェルテクス一族の血を持つ、貴様から血祭りにあげてやろう』
マクスウェルはそう言い放つと、この場で【神の剣】を発動させる。
恐らく、ウェルテクス一族の技術を利用して作られた兵器の一撃で…終わらせるつもりなのだろう。
ミカの聖獣の力が解放されず、シンボルストーンも無反応であったが、大きな肉体的ダメージを受けた人間を殺すには充分な出力。
そして…
【神の剣】の一撃が放たれ、その威力で離れた場所にいる瞬平達も吹き飛ばされてしまう。
周囲には砂塵が舞い、ミカの目の前の視界は見えない。……しかし、悪い予感だけは…ミカにも感じられていた。
景色が晴れ、次の瞬間、ミカの目の前にあったのは…たった一人残された、肉親だったものだ。
それを見たマクスウェルは声高らかに笑い、何かを言っていたようだが、ミカの耳には入らない。
ソウセイは気を失った凛子や瞬平の代わりに、こちらまで吹き飛ばされてきた晴人達の意識確認をしていたが…コヨミは何か嫌なものを感じていたのか、極度に震えている。
「……何、この感じ…」
「コヨミちゃん?」
「…分からないけど、何か……来る。ファントムのようで、ファントムじゃない…何かが」
「――お…にい、ちゃん。…うああああああああああああああああああああああああああああああーッッッ!!!」
目の前で肉親を失い、ミカは大粒の涙を流す。
そして、マクスウェルへの憎しみが抑えきれず、怒りによって聖獣・シアーズの姿を具現化してしまう。
その目は既に紅く、シンボルストーンも紅に染まっている。
それを見たマクスウェルは「おぉ」と喜びの声を上げ、笑い声を強めていた。
『素晴らしい!これでようやく、究極の兵器が誕生する…絶対的な力を手に入れた私が、世界を支配するその時が!!』
『…おめでとうございます、シラス様』
『クカカ、もはやオリジン…貴様も用済みよ。……そうだ、特別に、究極の兵器の力で貴様を葬って…』
『――それはこちらのセリフだ。シラス…貴様のお陰で、筋書き通りに上手く事を進められた』
「…!……そ、空が…!!」
ソウセイの言葉に、マクスウェルは空を見上げる。
…最後のトリガーを引いた影響で、完全に崩壊していくリーリエリヒト大陸一帯の空。
まるで怒りを象徴しているかのように、紅い輝きを放つ、壊れたアムニスフィールド。
「どういうことだ」と戸惑うマクスウェルであったが、遅れてやってきたサウルが空の光景を見て、叫んでいた。
「……何ということを…!まさか、……“彼ら”の作ったアムニスフィールドを…彼らの希望を……こんな惨いことに……!!」
「サウルさん!?どうしてここに…」
「それにあの目、…ザウバーに似ているような…」
『誰だ貴様は!?アムニスフィールドのこの状態に、心当たりがあるというのか…私のアムニスフィールドに!』
「…。……賽は既に投げられた…もはやルキナは、滅ぶしかない。……絶望に怒り狂った、“彼ら”によって……」
次の瞬間、上空の亀裂から見たこともない怪物が現れる。
その姿を見たシアーズは、胸を突くような衝動に駆られ、その姿を凝視する。
そして…
怪物は何重もの声が重なったような声で、“あの言葉”を言い放っていた。
「……オールレクティオ、ディアトゥールスティーム……」
「!――それ、私の知っている言葉…どうして……それにあなたの声、…前にウェルスの町で聞いた……」
『こ…これは、一体どういうことなのだ。……オリジンッ!』
『私が何の見返りもなしに、お前に協力していたとでも?…お前達が兵器…正しい道順では【天の剣】と呼ばれるものを造ることによって、誕生した存在……あれが私の目的だ』
『何ッ!?』
『しかし、人間と言うのは本当に愚かだ。ウィザードの介入で多少は道順が逸れていたと言うのに、結局力に溺れて、自分達で引き鉄を引き続けた……そして道順どおり、アムニスフィールドを崩壊に導いた』
その言葉に、ソウセイやコヨミは首を傾げる。
しかし、あのような存在を誕生させた所で、オリジンにあれを従わせることができるというのか…
だがマクスウェルは、その前にあの存在を破壊するべく、破壊光線を放つ。
…その刹那、黒い霧が彼の体を覆ったかと思えば…
マクスウェルの体が一瞬で燃え始め、その炎はまるで、天からの怒りの焔。
『ぎゃああああああああああっ!?火が、火が…消えない、……ぐぎゃああああああああああッ!?』
「こ、これって…」
「…あの黒い霧が、シラスを焼き尽くそうとしているのよ…!」
『人間よ』
『お前達は大罪を犯した』
『私達の希望を』
『私達の願いを』
『貴様ら人間が壊した』
『アムニスフィールドは貴様らが壊したのだ』
「ッ!?たくさんの人の声が…」
「これは、一体…それに、あの怪物…いや、“あの人達”が言っていることって……」
『世界のためのウェルテクス一族の使命は、最早失せた』
『我ら【ステイア】の手で』
『――この星から人間を殲滅する!』
ステイア、と呼ばれた者“達”が、コヨミやソウセイに言い放つ。
そして…
ステイアから黒い霧が放出されたかと思えば、シンボルストーンに亀裂が入って石碑から抜け落ち、ミカも元の姿に戻っていく。
それだけなら、まだよかった。まだよかったのだろうが…
――リーリエリヒト帝国では、事件が起こっていた。
面影堂を拠点にしていたタルボットは、目の前で起こっている光景に頭が追いついていない。
隣にいたマルグリットや輪島も同様で、ただ呆然と、眺めていることしかできなかった。
「……一体どないなっとんのや…」
「あ、あわわ…こ、これって…」
「ど…どうなっとるんだ、一体…?」
そこでは…
リーリエリヒト城を覆い隠すような巨大な黒い霧が、発生していた。
***
ラスボス登場。
それに伴い、ザウバー死亡確定(描写的に)。
まあ、彼、ワンチャンあるんですけどね…きっと。多分、恐らく。
シラスとオリジンの関係は、語っておかないとなぁと思ったので。
オリジンは上手く取り入ったよなぁ…
と同時に、上手く本来の道筋どおりに事を運んだというか。
ちなみに【真実の目】に関しては…完全にメタ話。
オリジンが介入したことによって、大体の流れは本家「テイルズオブブレイカー」通りではありつつも、本家とは違う話の流れになってますよーって言う。
具体例を挙げるなら、ザウバー(&セルシウス)ですね。っていうかザウバーぐらいしか具体例説明できないだろ…あとオフレッサー(イフリート)。
ちなみに、真実の目で自分の未来を見れるわけではないので、あしからず。
ザウバー…
この後、すっげぇ無残なことになるのに…神の子コントをするなんて……!←
ステファン枢機卿って、原典じゃイシュトヴァーンの野望を聞いて殺される役なんですよね。
…つまり、ジュリアン枢機卿と逆って言う。
でもジュリアン枢機卿って今回のステファン枢機卿のような人でなしじゃありませんので、あしからずw
むしろイシュトヴァーンの教育係として、彼を窘めていた貴重な人です。
遂に誕生!
絶望の化身!!
…というか、彼らが生まれた理由と言うのは…
というのが、6章のメインなんですよねぇ。
まあ簡単に言うと、ステイア怒ってもしょうがないし一番の被害者はステイアだろっていう。
…二番目の被害者はザウバーだけどな…←
ちなみにシラスは今回で終了です。
次回は…
本当にどうなるんだ、次回……?←