ミカの知り合いにして、地下組織【フライハウト団】に所属しているという、レヴィー。
そんな彼の紹介で、晴人達は一路、フライハウト団のアジトに向かうことになった。
本来なら、アジトの場所はそう簡単には教えられない…
しかし、ミカがウェルテクス一族の生き残りであること、彼女と同行をしている晴人達は信頼できるだろうと言うことで、レヴィーは味との場所を明かすことにしたのだ。
それに何よりも、ミカにはしなくてはならない話もある。
「しかし、どこまで、あるくん、でしょう、ね」
「本当だよ…皆、何であんな、涼しげな顔でいられ…」
「おーい、瞬平。ユーテキ、生きてるか?」
「でも、随分険しい山の中にあるのね…」
背後を振り返りつつ、晴人は瞬平とユーテキの生死を確認する。
その横で、凛子はふう、と一息つきながら遠くに見える山を見ていた…
案内されたのは、人通りも少なく、道も舗装されていない山の中。
大きな石や岩がゴロゴロと存在しており、普通に歩くだけでも体力を消耗するだろう。
太陽は完全に沈み、山全体を夜の闇が覆う。
これ以上進むのは無理だと判断したレヴィーは、今日はここで休もうと提案を出していた。
「……今日はもう遅い。ここでテントを張って、また明日進もう」
「さ、賛成…ガクッ」
「ああ、やっと、休める…バタッ」
「…おいお前ら、倒れるならテントを張ってからにしろ。男は無駄に多いから2つ必要だぞ」
「お、そりゃあいい…俺、レヴィーとザウバーのテントな。いや、瞬平の鼾は煩いし…ユーテキは寝言がなぁ」
山登りに力を使い果たしたのか、ユーテキと瞬平が盛大にその場に倒れていた。
そんな彼らに、晴人は勝手にテントの割り振りを決めつつ文句を言う。
晴人の言葉に、レヴィーは首を傾げていたが…
ザウバーはむしろ、納得した様子で頷くばかりだった。
「………あれは…酷いな」
「うん。ユーテキ、お前…昨日なんて、『ナマコが!巨大なナマコが真珠湾に発生してソーラービームを通りすがりのスーパー1に!!』って、意味不明な寝言を叫んでたんだぞ」
「その前は確か…『ゼークーロースー!』と言う意味不明な叫び声を上げながら、瞬平を蹴り飛ばしていたぞ」
「ザウバーは知らないだろうけど、最初にあいつと一緒に寝たとき…『プットッティラーノザウル〜ス!』って叫んでたんだぞ?どこのプテラトリケラティラノだよ…」
「だが、瞬平もたまに酷い寝言を言うんじゃないのか。……昨日、『26歳ただいま彼女募集中!!』と言う叫び声を上げたかと思えば、その後何事もなかったかのように熟睡して…」
「あるある。俺が前に聞いたのは…『仁藤さんが!仁藤さんがマヨネーズの食べすぎで、マヨネーズに!!』ってやつだったな」
「…マヨネーズは、サラダとかにかけて食べる奴だろう…?」
「いや、それが、色んなものにマヨネーズかけるマヨネーズがいるんだよ!あのマヨネーズ、この間会った時なんて言ったか分かるか?『ウィザードラゴンをマヨネーズでフォンデュして食べる夢見た』って言ったんだぞ!」
「…夢の中で、だろう…?いや、それよりも問題なのは、マヨネーズで何をフォンデュしたと言った?その……マヨネーズ」
「ウィザードラゴン、あ、俺の中にいるファントムね。……ちなみに、一番美味かったのは…翼の部分だったそうだ」
「ドラゴンの手羽先マヨネーズ和え…?」
「もっと最悪だったのが、あいつ、その夢を見た数日後に『思ったんだけど、チョコフォンデュがあるならマヨネーズフォンデュがあってもいいんじゃね?』とか」
「…馬鹿だろう、そいつ」
「ああ、馬鹿だ。マヨネーズだ」
「馬鹿なのか…マヨネーズ」
「ああ、あのマヨネーズ馬鹿、一回マヨネーズの海に溺れて自分がマヨネーズフォンデュされればいいのに…いや駄目だ、逆のあのマヨネーズが元気になってしまう!」
「マヨネーズに色がある程度近い、カスタードや練乳でいいんじゃないか。もう」
「あ、チョーイイネ。俺甘いの大好き。むしろ俺が入りたい」
「お前が入るのか…!」
「チョコの海でもいいぞ!一番は、プレーンシュガーだけど」
ユーテキ・瞬平弄りから一転。
今頃、元の世界のどこかで(無断で)テントを張って、焼きそばにマヨネーズを掛けているであろう仁藤の話題になっていた。
特に仁藤の辺りから、「あー…」と凛子とコヨミも納得したような顔。
レヴィーは腹を抱えて失笑しつつも、ユーテキと瞬平の寝相の悪さはごめんだったのか、晴人の案に乗っていた。
そんな会話をしつつも、3つ分のテントを立てた晴人達は就寝を始めていた。
その際、ミカは眠れなかったのかテントを抜け出し…火の番をしているレヴィーの元に向かう。
レヴィーは優しい笑みで迎え入れながら、ミカと話をしていた。
「…なんか、意外だなって思った」
「何が?」
「レヴィーって、争いごととか嫌いだったじゃない。喧嘩とかもしたことがなかったし…だから、そんなレヴィーが帝国と戦っているって聞いて、驚いてる」
「俺だって、できることなら戦いたくなかったさ。でも、戦わなくちゃいけない時もあるんだ…ミカだって、そうじゃないのか?」
それはそうだけど、とミカは夜空を見上げながら呟く。
夜になると、月や星明りに照らされ、空にあるアムニスフィールドが綺麗に輝いている…
特に空気の綺麗で標高の高いこの山は、一層アムニスフィールドが近くに見え、手を伸ばせば届きそうに思えるぐらい。
「……私がウェルテクスの生き残りだって知って、レヴィーは帝国と戦う地下組織に所属して、皆色々変わったけど…アムニスフィールドは、何も変わらないよね」
「そうだな。…帝国の奴らは、アムニスフィールドが異教徒のせいで穢されていると主張しているけど…全然、そうは見えないよ」
「うん。きっとアムニスフィールドは、皆を平等に見守ってる…アムニスフィールドは、誰のものでもない。この世界皆のものなのに」
「……だよな。帝国はアムニスフィールド独占のため、そしてラディスの予言成就のため戦っているに過ぎない…この空にとっては、ちっぽけな人間のちっぽけな争いに過ぎないのかもな」
ミカとレヴィーが話している近くで、テントからゆっくり抜け出す者がいた。
…晴人だ。
彼はふう、と溜息をつきながら、テントから離れた場所で空を見上げている。
彼もこの世界に来てから、思うことがあるようだ。
特に今日の戦いでは、それがはっきりとした形で目にしている。
(――ミッドノクスの連中が連行した人間が、ファントムになったとコヨミは言っていた…)
(――家族と離れ離れにされ、死がはっきりとしている戦いの場所に連れて行かれることになり、絶望した……と言ったところだろうが)
(――ファントムが関与して絶望させない限り、ゲートがファントムを生み出すことはないはずだ。だとしたら、やっぱり帝国の中に……ファントムが紛れ込んでいる可能性が高い)
(もしかしたら、あのオリジンって奴が…帝国の上層部にいる可能性も、少なくないはずだ)
ミッドノクスによって連行されたゲートが絶望し、ファントム・ヴォルトを生み出した…
今回はミッドノクスの起こした事件であって、ファントムが関与したようには思われない。
だが…あの場に現れたオリジンの存在、そして目的がはっきりしたことで、『帝国内部にファントムがいるのでは』という晴人の疑問が確証に変わった。
もしもオリジンが帝国の上層部の誰かだとしたら、オリジンの策の中で帝国の人間が動くことによって不特定多数のゲートが絶望し、ファントムを生み出すことも可能…
それか、オリジンならば気付かれないうちに帝国内のゲートを絶望させ、その時生まれたファントムを利用している可能性も高いだろう。
「……まさかとは思うが、皇帝がファントムってことも…ない、よな」
ポツリと呟きながら、晴人は空を見上げる。
…気になることは、まだある。
ミカの聖獣。ルピートから渡されたジェネレーターのお陰で、制御をすることは可能なはずだ。
しかし、どうして前に使おうとしたら、使えなかったのか…
まだ自由に扱えるようになるには、時間が掛かるのか?
『――あの少女の力は、強い【怒り】でなければ覚醒することはない』
突然、晴人の背後から声が聞こえ、彼は慌てて振り返る。
そこにいたのは、かつて晴人にウィザードライバーを渡した、白い魔法使い…
どうしてこんな所に、と晴人は思っていたが、そんな彼をよそに白い魔法使いは話を続けていた。
「あんた…何でここに!?」
『フ…それよりも、あの少女の力。制御する方法を知りたくはないか』
「…ミカのあの力を?」
『先程も言ったとおり、あの少女の力は…彼女の【怒り】によって発動する。当然、怒りでその力を発動した時は……暴走してしまうがな』
そう言いながら、アムニスフィールドを眺める白い魔法使い。
晴人はそれを訝しげな顔で見つつも、白い魔法使いはミカの力についてある程度詳しいと推測する。
彼女が力に振り回されない方法があるとしたら…
それを、あの魔法使いが知っているのだとしたら…
晴人の取る行動は、一つだった。
「……教えてくれ。どうやったら、ミカのあの力を…暴走しないで使えるようになるんだ?」
『簡単なこと。――彼女のあの力は、覚醒したばかりで不安定な部分が強い。ならば、それよりも強い魔力で制御してやればいい』
「強い魔力…」
『ドラゴンの力を高め、更に強い4つの属性の力を得たお前が傍で戦えば、彼女の力も安定するだろう…例えば水の力、シアーズならば……同じ属性のウォータードラゴン』
「……………すいませんウォータードラゴンめっちゃ重要だったんですね……!!」
『お前は他に突っ込むところはないのか。他にも聖獣の姿が存在するのかとか、ドラゴンの力を得たスタイル以外では制御できないのかとか』
orzというポーズで落ち込む晴人に、白い魔法使いは即座にツッコミを入れる。
ちなみに彼の出した突っ込み内容に関しては、晴人も割と序盤の段階でそれらしいフラグに足を突っ込んでいたお陰で、訊ねなくても大体分かっていた…
――四大元素の力を使うウィザードと同じように、ミカの聖獣の力も四大元素にまつわるものではないのか
――ウォータースタイルに変身しても暴走を続けていた辺り、ドラゴンの力を最大限に引き上げた上に、現在発動しているミカの聖獣の属性と同じ属性のスタイルでなければ彼女の力は安定しないだろう
「流石にそこは分かっていたようだな」と感心しつつも、白い魔法使いは最後にこんな話をしていた。
『……砂漠にある蜃気楼の森を探せ、そこにお前の求めるものがある』
「俺の求めるもの……………プレーンシュガー?」
『ボケるな。どうせ、コネクトで取り寄せているんだろう』
「ああ。ウィザーソードガンが可能だから、プレーンシュガーも大丈夫なんだろうなって思ったら…できた。コネクトすげぇ」
『まあいいだろう。…健闘を祈る』
<テレポート、ナゥ>
それだけ言うと、白い魔法使いはこの世界からすぐさま立ち去っていく。
「何でそっちは自由に行き来できるんだ」、と思いながらも、晴人は静かにテントの中に戻って行った…
〜〜〜
翌日。
寝ぼけていたユーテキと瞬平は、凛子がお玉とフライパンを装備することで発動した【死者の目覚め】(フライパンとお玉をガンガンぶつけているだけ)によって飛び起きる。
軽く朝食を済ませ、一行は山の中を進む。
その途中で獣道に外れ、深い森の中を進むと…森の奥地に、ひっそりと建物が建っていた。
近くにはフライハウト団の団員の証なのか、緑色のバンダナをつけている男達が出迎える。
「レヴィーさん、その人達は?」
「彼らは俺達の協力者だよ。ベッグフォードさんはいるかな」
「ええ、アジトの中に」
「レヴィーさん。帝国軍の奴ら、戦いに行ったそうですよ。暫くはリーリエリヒトに帰って来れないんじゃないと思われます」
「それと昨日、あいつらの軍事キャンプで火事が起こったみたいですが…」
「そうか、ありがとう。……ミカ、皆、こっちだ」
団員達の報告を聞いた後、レヴィーはミカ達を案内する。
通り過ぎざまに「あ、どうも」とミカや凛子、ユーテキに瞬平はお辞儀をし…団員達も丁寧にお辞儀をする。
皆いい人そうで、あの帝国と戦う地下組織には思えない。
瞬平がそんなことを考えながら、案内されたアジトの中に入ると…
そこには子供や女性、老人といった…まさに老若男女問わない人間が存在していた。
「レヴィーさん、もしかして皆…」
「ああ、帝国によって家族や土地を奪われた人達だ。俺達フライハウト団は、そういった人達が多く集まっている」
「……やっぱり納得できない。皇帝はミサでラディスの予言による平和の実現とか言ってたけど…その予言のために、こんなに苦しんでいる人がいるのに…予言が達成された世界で、皆が幸せに暮らせるとは思えないわよ!」
「り、凛子さん」
「凛子ちゃん」
「…凛子、気持ちは分かるけど…落ち着いて」
レヴィーの話を聞き、実際に帝国の被害にあった者達を目の当たりにした凛子は…憤っていた。
彼女自身、正義感が強いせいか…今の帝国の、予言実現のためならばどんな犠牲をも厭わないようなやり方を、許せない部分があるのだろう。
だが、そんな彼女を宥めるように瞬平、晴人、コヨミが落ち着かせ…冷静になった凛子は、「ごめんなさい」と謝る。
しかし…
凛子の言葉を聞いたフライハウト団の人達は、にっこりと笑みを見せていた。
「…いや、ありがとう。あんた達、服装からして異国の人みたいだけど……俺達と同じ気持ちの人がいるんだなって思えて、嬉しいよ」
「ああ。俺も、戦争に親父と弟を連れて行かれて、失った立場だからさ…」
「納得できないんだよな。皆を平和にする予言を実現するために、何で皆が苦しまなくちゃいけないんだろうって」
「僕も!大きくなったら皆と一緒に、帝国と戦う…そして皆を守るんだ!!」
「私もおじいちゃんも…戦うことはできないけど、それでも、この国を変えることができるための力になるならって……フライハウト団に所属しているんです」
「――そうだ。そしてそれは、今は亡きクラウスさんの意思でもある」
階段を下りてやってきた、40代の男性に…フライハウト団のメンバーは頭を下げる。
誰だろう、とミカ達が思っていると…
レヴィーは彼女達に、説明を始めていた。
「紹介するよ。彼が、俺達フライハウト団を纏めている…ベッグフォードさん」
「とはいっても、元々はクラウスさんがリーダーだったわけで…俺はあの人の意思を継いで、リーダーになったに過ぎないけどな」
「…ええっ!?クラウスおじいちゃん…ここのリーダーだったの!!?」
「クラウスさんって…ミカちゃんの、育てのお爺さんですよね…そんな人がどうして、フライハウト団のリーダーに?」
「その話は、2階でしようじゃないか。そこで話そう」
ベッグフォードに連れられ、ミカ達が向かったのは会議室。
会議室といっても、そんなに立派なものではない…有り合わせの椅子や机を並べただけの、簡素なものだ。
椅子は人数分はちゃんとあり、皆席についたのを確認すると、ベッグフォードは話を始めていた。
「――俺達フライハウト団は、レヴィーからの説明もあっただろうが…リーリエリヒト帝国と戦うため、クラウスさんが組織した地下組織なんだ」
「「「…」」」
「あの、何でクラウスさんはフライハウト団を立ち上げたんですか?」
「いい質問だな。ええと…」
「あ、僕、瞬平です。奈良瞬平」
「瞬平君か。――クラウスさんは11年前のウェルテクス一族暗殺をきっかけに、帝国に対する不信感を募らせ…フライハウト団を結成した。あの人はあの事件からずっと、ラディス教のあり方について疑問を唱えていたんだよ」
瞬平の質問に、ベッグフォードは丁寧に答える。
フライハウト団はレヴィーやベッグフォードを始めとした全員が、ラディス教やリーリエリヒト帝国によって苦しめられてきた人間の集まり。
彼らは自分達と同じ境遇の人間を救うため、戦っているのだそうだ。
「凛子さん…だったかな。さっき1階で、『納得できない』と言っていたのは」
「あ、は、はい!……あの、すみません、騒がしくして…」
「いや、構わない。むしろ俺は、君と同じ気持ちなんだ…それはフライハウト団の全員が、そうだろう」
「…そうなんですか?」
「ああ。ラディスの予言を実現させるために、そうして実現した平和な世界のために、何故今俺達は苦しまなくてはいけないのか。…奴らはそれを【予言実現のための試練】と言うが、……そうまでして作る世界は本当に必要なのだろうか。リーリエリヒトによって虐げられる世界で、幸せに暮らせる人は本当にいるのだろうか……と」
凛子と同じこと言ってる、とコヨミは呟く。
あの時凛子が言った言葉は、むしろ、フライハウト団全員の総意なのだ…
予言のために苦しめられ。
予言のために大事なものを奪われ。
予言のために虐げられ。
…そんな世界で幸せに暮らせるはずがない、ラディス教によって統一された世界は恐らく、今以上に誰かを苦しめる。
瞬平や凛子、ユーテキが今のリーリエリヒトの在り方について考えていると…
ザウバーは腕を組みながら、ベッグフォードに訊ねていた。
「……先程の話にあった、ウェルテクス事件。お前達は、その詳細について知っているのか?」
「それ、私も気になってた。…ベッグフォードさん達は、それについて聞いたことは…」
「当然、ある。――今から11年前だっただろうか…」
今から11年前の話に遡る。
ミカの両親がウェルテクス社を経営していた頃、屋敷で研究中だったウェルテクス一族を…特務機関Gが襲った。
ミカの実の祖父であるタルムード、母ステラ、父バグバード…それらを容赦なく殺害し。
息子に関しては、首のない状態で発見されたそうだ。
世間には『ウェルテクス一族は研究中の事故によって亡くなった』と報道され、リーリエリヒト帝国が国葬を行ったほど。
…当時、その葬儀に参列するフリをして調べていたクラウスは…自分達が殺したウェルテクス一族を、悲しんでいる“フリ”をしながら埋葬している姿に、怒りと疑念が湧き上がったそうだ。
なお、それから数日後、ウェルテクス社はシラスが腹心のギリオンと共に取りまとめ、ウェルテクス社を国営化…つまりはその技術力をリーリエリヒト帝国が独占するようにしたことで、シラスは宰相の座に上り詰めたそうだ。
「…酷い…」
「詳細は不明だが、ウェルテクス一族は帝国から依頼されていた仕事を拒否していた…そのせいか、帝国側は反逆罪と判断し、ウェルテクス一族の殺害を決めたらしい」
「帝国から依頼された仕事…って、お父さん達は何を帝国から依頼されていたの!?」
「……そこまではまだ、我々も掴んでいないんだ…ウェルテクス社を国営化したのも、それが理由だろうが…」
ベッグフォードはそう言いながら、暗い顔をするミカや凛子を見る。
分かってはいたことだが、自分の家族が死んだ話を蒸し返すと、その生き残りである実かは当然落ち込んでしまう…
そんな彼女の気持ちを少しでも明るくしようと、ベッグフォードは別の話をしていた。
「だが、もしかすればまだ希望は残っているかもしれない」
「…希望?」
「ああ。――先程も言ったとおり、君のお兄さんは首がない状態で見つかった…それはつまり、顔が判別できない状態だったと言うことだ」
「うん。特務機関Gのグラントも、そんな話をしていた…それが?」
「…!もしかして、ミカの兄が生きている可能性も?」
ベッグフォードの言葉に、イーヴリンは察したようだ。
彼女の言葉にミカは驚き、当然晴人たちも驚きを隠せず、ベッグフォードの反応を伺う…
どうやらイーヴリンの言っていることは間違いではないらしく、「ああ」と頷きながら話をしていた。
「そうだ。……『事故によって頭部を失った』と言っていたが、もしかすれば奴らはバグバードさん達の息子を取り逃がし…まったく別の、背格好の似た子供を殺したか…同時期に魔物に襲われて死んだ子供の死体を利用したのではないか、と推測される」
「…とにかく、推測の域から出ないということか」
「それでも!……それでも…お兄ちゃんが生きている可能性は、あるんですよね」
「よかったじゃん、ミカ!」
「うん!ミカちゃんは一人ぼっちじゃなかったのよ!!」
「ミカの兄が生きている」
その可能性を聞いたミカも、隣にいたユーテキや凛子も、一緒になって喜び合う。
だが…
一方で晴人は、別の可能性について考えていた。
(……あの時グラントは、『魔物に食い殺された子供』がいると言っていたが…確かに、それがミカの兄である可能性は少ない)
(だが…オリジンがもしも、11年前のこの世界に流れ着いて…ファントムを増やすために画策していたとしたら、)
(――最悪の場合…ミカの兄が、ゲートだったとしたら……)
オリジンは何かしらの方法でこの世界に来て、ファントムを増やそうとしている。
それがもしも、11年前の…ウェルテクス一族暗殺事件から関わっていたとしたら?
…【帝国の内部にオリジンや他のファントムがいる】という晴人の考えが正しければ、そして、もしもミカの兄がゲートと仮定するのならば…
(そう考えると、……シャドゥかセルシウス…今までに会ったファントムで、尚且つゲートの姿をしているのを見たことがないこいつらか。それとも、別のファントムか…?)
「…あくまでも【可能性】の話だろう。――少し風に当たってくる」
「あ、ザウバー!」
「…彼は?」
「ザウバーって言う眉間シワ星人なんですけど、ちょっと無愛想なところがあって…あ、でも、悪い人じゃないから!多分!!」
「ミカ……それ、ザウバーのフォローにもなってない…」
ミカのフォローじゃないフォローに、コヨミが顔を顰める。
むしろベッグフォード達は「眉間シワ星人…?」と首を傾げるばかりだ。
とにかく、ベッグフォード達フライハウト団は、今までどおりリーリエリヒト帝国に苦しめられている人達を救うため活動するだけでなく、ウェルテクス一族について何か分かったことがあれば、ミカ達に連絡すると言ってくれた。
帝国に比べればまだちっぽけな力ではあるが、こうやって協力してくれる人達がいることに、ミカやユーテキは嬉しく思いつつある。
「それで、ミカ達はこれからどこに?」
「私達、セラピアの街に行くことにしたの。あそこには、ウェルテクス一族の技術によって…砂漠の町に水源ができたって聞くから」
「…セラピア…?」
「うん、僕も早く行ってみたいんだ!世界中の人達のために研究していた、ウェルテクス一族の…ミカの一族の技術に触れられるチャンスだし!!」
セラピア、と聞いてレヴィーは眉間にしわを寄せる。
そんな彼に気付いているのかいないのか、ユーテキやミカはまだ見ぬセラピアの町に期待を寄せている。
だが…
そんな彼らの和気藹々とした会話を中断させたのは、他でもない、レヴィーの一言だった。
「――知らないのか?セラピアは今、水源JMが無くなったせいで大変なことになっているんだ」
「「「水源JM?」」」
「確か、ウェルテクスの研究資料にあったやつですよね。……え、どうして!?」
「原因は分からないが…俺の見立てでは、帝国絡みだと思う。それでも……行くのか?」
「…行く。お父さん達の研究に関わることだし…何より、放っておけないよ!」
「確かに。それに、砂漠の町で水がなくなるのは…大変なことだからな。それこそ、ファントムが大量に生まれかねない」
ミカ、そして晴人達の意見は一致する。
それを聞いたレヴィーやベッグフォードも、砂漠を渡るための食料や水と言った、ある程度の支援をしてくれる。
一体何故、水源JMが無くなったのか…
水源JMの行方を知るためにも、それが無くなった理由を調べるためにも、セラピアに向かうことを決意していた。
***
ウォータードラゴンの重要性ェ。
2話連続で重要性について示唆されるって、相当だと思われますが。晴人さん。
仁藤w
出番がないからって、会話で出てくるって…
しかもマヨネーズ認識されてる……いや、間違いじゃないけどさ。
というか、ザウバーと晴人の会話がいつかのルピートと晴人の会話にダブるのは何故だw
白い魔法使いまで出てきやがった。
いや、この人絶対ルキナに来れるだろうな…
ドラゴタイマー回で、晴人を異空間に連れて行った人ですからね!
そして…ウォータードラゴンェ…
でも、セラピアに行くなら奪還はもうすぐだと思います。
凛子ちゃんがベッグフォードのセリフの大半を奪った気がしてならないw
でもまぁ、思うことは皆一緒なんですよね…
というか色々理不尽すぎるんだ。あの帝国。
そしてミカの兄が生きているorファントム化しているorそのまま死んでいる可能性が示唆される中……
水を失った砂漠の町の明日は!?←
というか白い魔法使い、クールすぎる(晴人のボケに対して)