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タイトル未設定 - Magic45:人工ファントム

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Magic45:人工ファントム

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――翌朝。

既にレヴィー達はゾゾの魔法で別の場所に向かった後で、晴人達は早いうちから出発の準備を進めていた。

その際、晴人とユーテキはラディスの大聖堂前に向かうが、空に浮かぶアムニスフィールドに突然の亀裂が入ったことで、信者達の混乱は加速している…

ルーク枢機卿を始めとした教会の者達は必死で彼らを落ち着かせようとするが、なかなか事態は収束しないようだ。

一方でリーリエリヒト城の近くを通った凛子とルル、バーガーの話では、皇帝不在の状況に不安を募らせた民が集まってきており、帝国軍の人間はその対応に追われていたようだ。

それを聞いた輪島は難しそうな顔をしながらも、晴人と話をしていた。


「…まさか、こんな大騒ぎになるなんてなぁ」

「自分達の国にも兵器をドカン、と落としたんだ。それに加えて、アムニスフィールドの亀裂…不安にならないほうがおかしいよ」

「それより晴人、ミカちゃんの姿が何処にも見えないんだが」

「ミカだったら…クラウスさんのお墓にお参りに行ってる。それに……」




大樹の森。

クラウスの墓の前でミカは、色々な報告をしていた。

…自分達と一緒に戦ってくれる、たくさんの仲間ができたこと

…ウェルテクス社が破壊兵器を作り上げたこと

…両親や祖父、そしてクラウスの敵であるグラントを倒したこと

…そして


「それからね、――お兄ちゃんが…生きてたんだよ。私、一人ぼっちじゃなかった…」


そう言いながらもミカは、複雑そうな顔をしている。

当然かもしれない。

今まで、兄はセルシウスを生み出して死んだとばかり思っていた…

それが生きている…とは到底言い切れない体だったが、それでも、いつも傍で自分のことを見守っていたのだ。

複雑、という言葉がミカの今の心境を一番物語っていることだろう。

そうしていると、後ろのほうから足音が聞こえ、ミカが振り返る。

……そこにいたのは、ザウバーだ。


「…クラウス爺さんの墓がここにあると、そこにお前がお参りに行ったと凛子から聞いた。……隣、いいか」

「うん。…ザウバーは、クラウスお爺ちゃんのことは…」

「ある程度は覚えている。――家に遊びに行った際、お前がいつも家の中を走り回って騒がしくしていたものだから、…お前爺さんにこっぴどく怒られていたぞ」

「……う。な、なんでそういうのは覚えてるの」

「…俺にとっては、11年前の“あの日”以外でちゃんと覚えている…貴重な過去の記憶だからな。そういうのは、忘れたくないんだ」


まるで虫食いのように、記憶の一部分が欠落している状態。

セルシウスを生み出した影響なのか、目の前で家族を奪われたことによる心因的ショックかは分からない。

だが、その分、ちゃんと覚えている記憶は失いたくないと思っているのだろう…

ミカにとっては忘れたいことでも、ザウバーにとっては忘れてはいけない『在りし日の日常の記憶』なのだから。



「……セイバーはクラウス爺さんから教わったのか?」

「うん。護身用に…でもそのお陰で、今、こうやって皆と一緒に…ルキナのために戦えてる」

「…そうか」

「……ねえ、ザウバー。ザウバーは私が【鍵】だって知ってたの?…アムニスフィールドの全エネルギーを解放するための、鍵だって」


その言葉に、ザウバーは小さく頷く。

…アムニスフィールドの真実を聞いた時から、薄々と、感付いてはいたのだ。

アムニスフィールドの力を、オリジナルJMを通して借りることのできるミカの聖獣の力…

【鍵】との関連性を疑わないほうが、おかしい。

そうなると、“ミカ”は一体どのような存在であるのか。

そもそも“ウェルテクス一族”とは一体…

そんな疑問が尽きなかったが、本当に今、自分の状況に戸惑っているのはミカ本人なのだと思ったザウバーは、彼女を励まそうとする。


「――心配するな。お前は人間だ」

「でも…」

「セラピアの町での話を忘れたのか?……どんな姿になろうとも、お前はお前だ。人は心が動くからこそ、人なんだ…獣や機械にはない、心が存在している限り……ミカは人間だ」

「……そう、だよね。うん、ありがと」


とにかく、これ以上晴人達を待たせても悪いと、暗い話はやめ…

二人は揃ってクラウスの墓に手を合わせた後、リーリエリヒト帝国にある【面影堂】まで戻っていた。




その頃ユーテキはというと。


「――ユーテキ……よかったな、恋敵(?)と思われていたザウバーがミカの兄貴で!」

「そうそう!僕達も、これまで以上に応援するよ!!」

「…そう言って、瞬平。ユーテキを面白おかしく弄り倒したいだけじゃないのか?気持ちは分かるけど」

「ユーちゃん見てると飽きないもんね!」

「でもちゃんと応援してるわ!」

「何だったら、ウォーターで水放出→ミカの服が透けるというハプニングを用意しても…」

「……もーっ!?皆、何だって僕で遊ぼうとするのさー!!?」


バーガー・瞬平・イーヴリン・ルル・凛子・晴人によって、盛大に弄られていた。

コヨミは相変わらずな彼らに肩を落とし、輪島は快活に笑ってその光景を見ている。

…今、この場にユーテキの味方は……存在しなかった。

ちなみにタルボットは、暫くアムニスフィールドの状態を観察したいということで、【面影堂】を拠点としてリーリエリヒト帝国に留まることに。

機材はウェルテクス社のほうが優秀なものが揃っているのだが、彼曰く


「帝国色に染まったエセウェルテクス社の機材なんか使わんでも、この計測装置とパソコンさえあればできるわい!」


――と、いうことだった。

とりあえず彼やマルグリットだけでは大変だろうと、ユウリやミランダも彼らの手伝いをすることに。

最初はタルボットも嫌そうな顔をしていたが、ユーテキを始めとした周囲の面々の説得もあり、彼らも元々平和のための研究をするために研究者になったことを知り、渋々了解していた。





その頃…

シラスの研究所では、シラスが何やら不気味な実験をしていた。

培養液の中には、前にウェルテクス社で晴人が戦った、合成獣と似たようなモノが眠っている。

更に、シラスの目の前には体を縛り付けられ、怯えているキルベルト公爵の姿…


「……ふむ。やはり人工的にファントムを作り出すには、人間を媒体にする必要がありますか…」

「し、シラス宰相…一体何を」

「あなたのような矮小な存在でも、人間であることには変わりありませんからなぁ。モンスターをペットと称して飼い慣らしているあなたなら、むしろ本望ではないのですかな?キルベルト公爵」

「そ、そそそそんな…私はそんなこと望んではいないっ!?」

「役立たずでしかなかったあなたに、もう一度チャンスを与えるだけの話です。あなたも、ウェルテクスの娘やその仲間に、一泡吹かせてやりたいと思うでしょう…?」


そう言って、シラスはゆっくりとキルベルト公爵に近寄る。

縛られているキルベルト公爵は、逃げることも抵抗することもできない。

そして…



「――ぎゃあああああああああああああああああーッッッ!?」






〜〜〜






シラスの研究所に到着した、晴人達。

中の様子は不気味であることこの上なく、人の気配が少ない。

本当にこんな場所に、シラスはいるのだろうか…

そもそも、こんな陰気な場所で研究するほどのものなのか…

しかし、彼がシンボルストーンを持って逃走したのは確かなのだ。これ以上アムニスフィールドを悪用させないためにも、どうにかしなければ。

そう思っていると、ウェルテクス社でも見かけた警備用ロボットが前に立ち塞がる。

だがウェルテクス社で見た警備ロボは薄い赤色、対してこのロボは濃い赤色をしている…

それを見たユーテキは、声を上げていた。


「あれは…レッドガードmk-?!」

「レッド…なんだって?」

「レッドガードmk-?!通常の警備用ロボット・レッドガードより更に強化されたもので、ウェルテクス社でも特に立ち入りの厳しい場所に配置されてるほどなんだ」

「まあ、とにかく、ぶっ壊せばいいってことだな」

「相手も俺達の侵入を、予測していないなんてことはないだろうし…派手にいくか。変身」

<フレイム、プリーズ ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!>


『とにかくぶっ壊す』

そんなバーガーの意見に同意しつつ、晴人もウィザード・フレイムスタイルに変身。

侵入者の出現を察知し、他のレッドガードmk-?も大量にこの部屋に押しかけてくるが、ウィザードFS達の敵ではない。

特に警備ロボの弱点は、ユーテキがよく知っている。


「…他のレッドガードにも言えるけど、精密機械であることには変わりないから、水に濡れたり強い電流を流してショートさせれば動かなくなるはずだよ!」

「よしっ!」

<ウォーター、プリーズ スィ〜スィ〜スィ〜スィ〜♪>



ウィザードFSはウォータースタイルに変身すると、スラッシュストライクによる水の刃で周囲のレッドガードmk-?を攻撃。

すると、ユーテキの言うとおりショートを起こし、そのまま動かなくなる…

一方でミカも、“スプラッシュ”で応戦。

その他の警備ロボに関しては、イーヴリンとルルが中心になって倒していた。


「邪魔よっ!“スプラッシュ”!!」

「“インディグネイション”!」

「“ライトニング”っ!」

『ピ、ピー…ガガガ、ガ、』

『ピー、ピーガガガガガ、ガガガー…』

「よし、抜けるぞ!」


一気にその場を走り抜けようとするウィザードWS達。

しかし…

突然ウィザードWSの通ろうとした道に設置されていたトラップが発動し、レーザー光線が放たれる。

「やばい」と直感で思ったウィザードWSは“スモール”でレーザー光線をかわし、接近しつつあった別のレッドガードmk-?に直撃。

その瞬間レッドガードmk-?は大爆発を起こし…安全な場所まで避難し、元の大きさに戻ったウィザードWSは一息ついていた。


「…危ない危ない、リキッドだったら逆に蒸発してたかも」

「かなり強い熱光線だったのね…」

「で、でも、こんなトラップどうやって避ければいいんですかぁ!?」


コヨミは深い溜息を漏らしながら、トラップの設置されていた柱を見る。

どうやら、他にも似たようなトラップが多数設置されており、どう進めばいいのか分からない…

瞬平の言うように、トラップのかわし方が見つからないのだ。

恐らく、射程範囲は複数存在しているだろうが、そのギリギリの場所が分からない。

そうしていると、ユーテキは柱のトラップを安全な場所から調べながら、ザウバーと話していた。




「うーん…たぶん、これはあそこにある赤い装置の前を通ると、作動する仕組みなんだろうね。射程は、晴人さんに接近していたレッドガードmk-?まで届いたところを見ると…30m強ってところかな」

「かわす手段はあるのか?」

「柱の配置と、シラスの性格の悪さからいって、正攻法で進むと逆に危ないと思う。シラスもここを利用していると言うことは、安全に通れる隠し通路みたいな場所があるはずだから…それを探せば」

「そうか。…流石だな」


ザウバーから発せられた褒め言葉に、ユーテキは石化したように凝固する。

「何故固まる」と呆れ気味に言われていたが…

ユーテキは冷や汗フルスロットルで、「だって」と叫んでいた。


「いや、だって、…ザウバーが人を褒めることなんて滅多にないのに!!!」

「俺だって素直に褒めることはある。…むしろなじられて欲しかったのか?」

「いえそれは結構です!」

「それに一応ウェルテクス一族の血を引いてはいるが、機械技術関係については疎くてな。だから、お前がいてくれて助かっているのは事実だ」

「…あ、そっか、……ザウバーって“あの”ルピートさんのところで暫く育ってたんだっけ…」

「それ以前に、父さん達がどういったことをしていたのか、どんな発明をしていたのかという部分の記憶がない。そういった部分を知りたいことも含めて、ウェルテクスの研究資料を探していたんだ」


“あの”と言う部分は盛大にスルーし、ザウバーはユーテキに話す。

記憶の一部が欠落している、と言う彼にユーテキは同情

…したら殺されるのは目に見えているので、なるべく表情に出さないよう心がけていた。他のメンバーも同様に。

こういう時、仮面で顔を隠せるウィザードWSは便利だろう。

誰もがそんなことを思いながらも、手分けして近くの壁や床を探り…



「……あった!」


――コヨミが、壁に隠されていたエレベーターの入り口を見つける。

ウィザードWS達は早速エレベーターに乗り込み、地下に進もうとするが、エレベーターの動く気配がない。

…恐らくシラスが、自分達の接近を予感して予め電源を落としていたのだろう。

「そんな」と残念がる凛子やミカであったが、ザウバーがユーテキに尋ねる。


「ユーテキ、ボタンの下にある電源装置の分解はできるか」

「一応できるけど…えっ、何するの!?」

「蒼い光の力でエレベーターを起動させる。心配しなくても、こっちのほうはある程度のコントロールが効くから消費は少なくて済む」

「…分かった。多分、その方法じゃないとまともに動かないどころか、エレベーターが壊れる事だってありえるし…こっちから頼みたかったところなんだ」


ユーテキはそう言いながら、十字ドライバーを使って電源装置のパネルを開く。

そして…

ザウバーは左手で何本かのケーブルを掴むと、そこに蒼い光の力を送り、エレベーターは動き始めていた。






〜〜〜






一番最下層まで降り、ウィザードWS達は周囲を散策する。

中は薄暗く、見通しが悪い。

ウィザードWSは“ライト”リングで周囲を照らし始め

――明るくなった室内で、シラスがくすりと笑いながらこちらを見ていた。

更に近くの機械には、シンボルストーンが設置されている。


「おやおや、思った以上に早く来たようですなぁ」

「シラス!…シンボルストーンを、返してもらうぜ」

「何を仰るかと思いきや。このシンボルストーンは、私はアムニスフィールドの力を掌握するために必要なもの…そしてウェルテクスの娘、貴様もその一つに過ぎない!」

「私は、あんたみたいな奴に利用される気なんてないんだからっ!」

「そうだ!それに、これ以上お前なんかに…ウェルテクス一族の遺した技術も、古代の研究者達が作り上げたアムニスフィールドも……穢させやしない!!」


シラスの言葉を、ミカとユーテキが突っぱねる。

それを聞いていたシラスは、「仕方がない」とばかりに指を鳴らし…

奥の部屋から出てきたのは、キルベルト公爵。

「一体何故ここに」と誰もが思う一方で、ウィザードWSは彼の様子がおかしいことに気付く。


「「「キルベルト公爵!?」」」

「なんでここにいるの!?」

「待て、――様子が…おかしい」

「ひ、ヒヒ…ウェヒヒ……お、お前ら、おま、お、おおお…ヒェヒェ、ウヒェヒェヒェェェェ…」

「な、なんだか気色悪くなってる気がするの…」

「前以上に不気味な爺さんポポ!?」



まるで壊れたカセットテープのように言葉を発する、キルベルト。

そんな彼の様子に、誰もが【異常】だと一瞬のうちに理解する。

一方でキルベルトは、ゴキゴキという不吉な音を鳴らしながら首を180度曲げ、瞳孔は既に開ききり、口からだらしなく涎を垂らしながら…尚も喋り続けていた。


「ヒャ、ヒャヒャヒャ…アヒャ、あひゃひゃ……お前らの、せい、…うひゃひゃ……私は、…ワタシハワタシハワタシハワタシハワタシハワタシハワタシハワタシハ」

「……おいっ!シラス、このジジイに何をした!!」

「そうだよ!前以上におかしいっていうか…不気味っていうか、……前に会った時はここまでおかしくなかったのに!?」

「キルベルト公爵には、貴重な実験台となってもらったのです。――人工的に作り出す、人工ファントムとして!」


シラスがそう言い放った瞬間、キルベルトの首が不気味に伸び始める。

更に手足も化け物のように伸び始め、体は肥大化し、背中から竜の翼が生える始末。

…合成獣と融合させられた、というのは、目に見えて分かっていた。

あまりの不気味さに凛子やコヨミ、瞬平は引く。

特にコヨミは、その得体の知れなさに気分を害しているようだ…凛子と瞬平が協力して、彼女をこの部屋から遠ざける。

一方のウィザードWSは、シラスのしていることに憤りを隠せない様子で、言い放つ。


「人工的に、ファントムを作り出した…?――そんなことのために、あのキルベルトって爺さんを!」

「役立たずはこうして再利用してやるのが一番。いやあ…しかし、ファントムは人間の絶望から生まれるとは聞いていましたが、やはり安定のためには人間を使って改造する他なかったわけですな」

「あんた…人の命を、何だと思ってるんだ。……確かに名付けセンスが壊滅的で、モンスターを飼うような変人の爺さんだったけど、…一人の人間に変わりはないんだぞ…!」

「そう焦らずとも、ウェルテクスの娘以外…全員同じようにしてやろうではないか。――特にそこのオッドアイの男は、私の求める究極の兵器と同じほどの…究極の生物兵器になってくれることでしょうなあ!」




人の命を何とも思わない、それどころか開き直るようなシラスの言い分に…

この場にいた全員の、堪忍袋の尾が切れていた。

…絶対に許せない

それは全員がそう思っていたし、特にユーテキは、こんな奴にウェルテクス社の技術や研究者達が利用されていたことに怒りを隠せない。


「そんなの…そんなの、命に対する冒涜じゃないかっ!それだけじゃない、あんたのやってることは…ウェルテクス一族が築き上げてきた、【平和のための技術】への冒涜だ!!」

「平和のため、平和のためと…先代のウェルテクス一族はいつも煩かった。人のために使ったところで何になる、強大な技術力は…力を誇示するためにあるべきもの!」

「違う!…確かに、ウェルテクスの技術なら兵器を造ることも簡単だと思う…だけど、誰かのために自分達の技術を使うべきだと分かっていたから、兵器を造るよりも大変だけど…それでも世界中の皆を笑顔にしたかったから、セラピアの町のように誰かを自分達の技術で救おうとしていたんだ。――自分さえ避ければそれでいい、お前なんかと違う!!」

「……フン、所詮お前達に私の考えなど理解できまい。人工ファントム、奴らを…その圧倒的な力を以って叩き潰すがいい!」

『ひぇ、ウヒェヘヒェヘヒェヘヘヒェヒェ…!』


シラスの命が下された瞬間、人工ファントムは暴れ始める。

長い手足を力任せに振り回し、イーヴリンやミカは慌てて体を屈める。

近くにあった機材はいとも簡単に壊れてしまい、更には後ろにあった壁まで鋭い爪で引き裂いている。

…圧倒的な存在感。

その一方でバーガーは、このままではシンボルストーンも巻き込んでしまうのではないかと懸念し始めていた。

破壊すればシラスの目的も果たせなくなるだろうが、ルーク枢機卿との約束も果たせなくなる…

何より生まれた経緯はどうあれ、ラディスのシンボルストーンであることに変わりはない。

元聖海騎士団の隊長としてもそれだけは避けたいバーガーは、ウィザードWSに提案していた。



「…晴人!お前とルルで連携してあの装置からシンボルストーンを奪い返してくれ!!」

「分かった…ルル、やるぞ!」

「はいなの!……“スラストファング”!!」


ルルは強力な風の刃を繰り出し、人工ファントムを切り刻む。

更にその風はシラスの動きを制限し、その間にウィザードWSは“エクステンド”リングを使用。

自分の腕を巧みに伸ばし、離れた場所にあるシンボルストーンを奪取。

それを見ていたシラスは「何をしている」と人工ファントムに叫ぶが、自我の崩壊スピードが著しく、シラスの言うことすら聞く気配がない。


「何をしている、シンボルストーンを取り返すのだ!」

『ヒェ、ウヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヘイェヒェヘヒェヒェヒェイェェェェ!』

「くッ、やはり、キルベルトを使ったのが間違いだったというのか…!」

「――あんたのしてきたこと自体がッ!」

「間違いに決まってるじゃないかっ!」


イーヴリンとユーテキが叫びながら、それぞれ“猛襲剣(もうしゅうけん)”と“スパイラルショット”で人工ファントムを攻撃。

更に、その状態でバーガーとザウバーが踏み込み、“瓦錬撃(がれんげき)”と“華煉想無(かれんそうぶ)”による接近戦を行う。

前にウェルテクス社で戦った合成獣より巨大ではあるが、防御力が低いのだろう。

すぐさまウィザードWSもシューティングストライクの体勢に入り、ユーテキと共に遠距離攻撃で人工ファントムを追い詰めていた。


<キャモナシューティング、シェイクハンズ!…ウォーター、 スィースィースィー!スィースィースィー!!>

「……はっ!」

「【ベルタカノン】ッ!!」

『げひぇひゃひゃひゃひゃひぇひゅえあああああああっ!!?』

「…ええい、あの役立たずめ…まあいい。まだ出来損ないだが、こいつらも投入するとしよう…!」




シラスはそう言って、あるスイッチを押す。

…すると、近くの培養液のケースが開き、現れたのは2体の合成獣…

人工ファントムだけでも厄介なのに、合成獣まで現れ一気に窮地に落とされるミカ達。

――だが、絶望は誰もしていない

ここで自分達が負ければ、シラスの暴走を止めることができない。

それに、人の命をどうとも思わず、力を誇示するだけのシラスに負けるわけには行かない。

ミカの中にも『許せない』という怒りの炎が燃え滾り、更にそれがオリジナルJMにも伝わっているのか、輝きを放つ。

更に、それに呼応する形で、ウィザードWSの持つフレイム・フレイムドラゴンの指輪も、赤い輝きを仄かに見せていた。


「……あなたみたいな人が、11年間ウェルテクス社を支配していたなんて。お父さん達の思いを、踏み躙るような発明をしてきていただなんて…!」

「ミカ…。……一気に片をつけるぞ!イヴ、シンボルストーンを頼む」

「任せな!」


ウィザードWSは近くにいたイーヴリンに、シンボルストーンを託す。

そして、ミカはオリジナルJMの力を解放し、新たな聖獣の姿を見せ…

ウィザードは、フレイムドラゴンへと変身していた。


「英知を生み出し焔、闇を滅する鎚となれ!――【ヘルムート】ッ!!」

<フレイム、ドラゴン ボー、ボー、ボーボーボー!>



ミカの姿は、赤き巨大な竜を従えし聖獣…ヘルムートへと変化する。

竜は激しい咆哮を上げ、その大きさは人工ファントムにも匹敵するほど。

一方で新たな聖獣の姿を見たシラスは、目をギラギラと輝かせる。


「おぉ…新しい獣の姿かッ!その力…そのオリジナルJM、素晴らしい……私の望む兵器そのものだッ!」

「ミカは…獣でも、兵器でもない。――人間の心を持って生きる、ただの女の子だッ!」

<チョーイイネ! スペシャル、サイコー!!>

『人間の心を捨て去ったあなたに、これ以上…お父さん達の想いを!アムニスフィールドを作った人達の願いを!……穢させはしないッ!!』


ウィザードFDは胸からドラゴンの頭部を呼び出し、ヘルムートは竜に跨る。

そして…

2つの竜から、強力な炎が放たれる。

それを見たルルも、ウィザードFDとヘルムートの援護をするべく、【フレアンインフィニティ】を発動。

竜の息吹と無限の炎が地下の一室を包み込み、2体の合成獣は消し炭となる。

あまりの威力に、シラスはこの場から脱出を試みていたが、その肉体を捕まえるものがいた。

――人工ファントムだ。


「何をしている、離せッ!離さんかッ!?」

『シ、らす…キサマ、キキキキサマダダダダアアア、ゆるゆるゆるゆるゆるゆるゆるゆるゆるゆる…』

「最後の最後まで、――この…役立たずがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」




シラスの悲鳴が聞こえた、次の瞬間。

人工ファントムは、体力の限界だったのだろう…

そのままシラスの上に倒れるようにして、果てていた。

…あのような巨体に上から圧し掛かられれば、まず命はないだろう…

ミカは元の姿に戻りながら、人工ファントムの亡骸を見て、呟いていた。


「……これで、良かったんだよね。お父さん…お母さん、お爺ちゃん……」

「ミカ、まだ終わってないよ」

「そうだよ!…イシュトヴァーンの動きも気になるし、何より、シンボルストーンをどうするか考えないと」

「といっても、ラディスの大聖堂に戻すのはリスクが大きいな。何か他に、いい隠し場所はないものか」


イーヴリンやユーテキが、自分達に残された課題を挙げる。

…まず、最優先で処理するべきなのは、『シンボルストーンを何処へ隠すか』

だが、ザウバーの言うように、ラディスの大聖堂に戻すのはリスクが大きくなる。

「何かいい案はねえかなぁ」とバーガーが呟いていると、突然、晴人が提案を出していた。


「……そうだ。木を隠すなら森の中、宝石を隠すなら…」

「「「?」」」






***




本当はレヴィーサイドもあったんですが…

色んな意味で長くなりそうだったので、次回に回します。

まあ、あっちはあっちでほのぼのしてますw


ザウバーって中途半端に記憶があったりなかったりしている分、実はコヨミよりタチが悪いんじゃ…

というか、皆ここぞとばかりにユーテキで遊んでるなw

まあ、からかい甲斐があるのも事実なんですが…

それにしてもコヨミしか味方がいないんだな、ユーテキ

…いや、コヨミも味方かどうかが怪しいけど…

そして…

キルベルトは明らかにシェリー・ジークフリード国王ルートです。本当は死んでないけど殺された役。

ある意味ザウバーもそっちルートなんだろうけどね、セルシー生み出してますし。



ユーテキが無駄に輝いてるなぁw

まあ、レッドガードの性能だったり、その弱点だったり、トラップだったりと…

ここで【設定:ウェルテクス社の最年少研究員】を生かさないと、王環さんの二の舞になる可能性がw

…王環さん以上に設定が怪しくなってきてるのは、まだいるけどさ…「機械工学に精通しているが、生態学には疎い」という設定のコムセとか……

ところで、ユーテキとザウバーが仲良くなってる気がするw

平川さんか、同じ平川さんだからなのかww


人工ファントム…

まあ、コヨミが気分悪くなる理由は分かりますよね。

色々な生物が混じっている上に、キルベルトを使ってまで作り出した“人工ファントム”ですから、ファントムを察知できるコヨミは特に気分悪くなって当然です。

そして出ました、最後の聖獣・ヘルムート!

ガリナは……インフィニティーがいたら、覚醒できたんだろうな…!←




さてさて、はるとんは何処に隠そうとしてるんでしょうね?

ヒントは…今回の話の中にも、あります。