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タイトル未設定 - Magic17:バーガー

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ラディウスの聖窟。

奥地にはリーリエリヒト帝国の大聖堂の壁に掛けられている、シンボルストーンが填め込まれたモニュメントと同じものが飾られている。

そこには、各地から集めたオリジナルJMがあり…そこに、セラピアの水源JMもある。

そんなラディウスの聖窟にある、“清めの泉”の近くで……聖海騎士団の隊長、バーガーは考えていた。


「…これが本当に、ルキナに住む総ての人間が幸せになるための方法なのか…?」




数日ほど前だった。

ルーク枢機卿の命令で、聖海騎士団はセラピアの町に訪れていた。

半永久的に水を供給するという、普通では考えられない力を持ったJM…

それは恐らく、ラディスの予言に必要な【聖なるもの】かもしれない。

そうでなくとも、それだけの力を持った強いJMはオリジナルJMだろう…そう推測しての、水源JMの回収だった。

ルーク枢機卿は台座から水源JMを取ると、セラピア中に行き渡っていた水がぴたりと止まる。

それを近くで見ていた子供が、泣き叫びながらルーク枢機卿に言う。


『それもって言っちゃ駄目ー!』

『そうだよ、それがなくなったら、お水がなくなっちゃう!』

『お前たち…やめなさい!……申し訳ございません、枢機卿様…!!』


その子供達の母親らしき女性が、子供が無礼を働いたことに詫びる。

泣き叫ぶ子供達の顔を見て、バーガーはあることを思い出していた…

ラディス教に対する意見の相違で別れた妻と、その妻に引き取られた娘・エミィがいる。

別れた頃はまだ小さかったが、元気に育っていればあの子達と同じぐらいの年齢だろう。

そんなことを思っていると、セラピア町長とその弟のジョージ、彼の婚約者のエルレンが必死に説得していた。



『しかし…枢機卿様、それを持っていかないでください。それがなくては、セラピアは…この町は完全に死んでしまいます』

『そうだよぉ!それがないと、町中の水が3日で枯れちまう…そんなことになったら、セラピアの人間は誰も生きられなくなっちまうんだぁ!!』

『お願いします!どうか、どうかそれだけは持っていかないでください…それが無くなるようなことがあれば……』

『ええい、煩い!枢機卿様はお忙しいのだ!!』


町長達の言葉を突っぱねたのは、ガルシア。

聖海騎士団の副隊長である彼は、いつしか隊長の座に納まる機会を虎視眈々と狙っている…

ルーク枢機卿に取り入るためなら、彼の邪魔をしようとする町長を突き飛ばすほど。

兄貴、とジョージが町長の心配をしていると、ルーク枢機卿は彼らを見下しながら言い放つ。……その手には、水源JMが水色に煌いている。


『…猊下のご命令だ。オリジナルJMはラディス教の下にあるべきもの、よって…これは回収する』

『枢機卿様!』

『あぁっ…』

『え、エルレン!しっかりしてくれ…あぁぁ、どうしよう、どうしたら……!!』


エルレンはその場で膝をつき、ジョージは彼女の体を支えながらうろたえている。

バーガーはそんな町の人達の様子を気にしながらも、セラピアを後にしようとしていた…

その時だった。

先程の少女が、目から大粒の涙を零しながら泣きじゃくっていたのに気付いたのは。


『持って行っちゃだめ…』

『……』




水源JMを奪われた時の、町の人々の悲しみの顔が。

あの少女の涙が。

…どうしても忘れられない。バーガーは一度、どうにかできないのかルーク枢機卿に訊ねたこともある。

セラピアの町があれなくしては機能しないことは、バーガーも知っている。

オリジナルJMがラディス神から贈られたものであるなら、ラディス神がそれを必要としている者達の元に水源JMを贈ったのだとしたら、水源JMはセラピアの町にあるべきものではないのか。

そう説得に近い意見をしたものの、結果は


『皇帝猊下の命令は絶対だ』


…の一点張りで、どうすることもできなかった。

この一件で、バーガーの心の中にはラディス教に対する疑問も浮上する結果になる。

果たしてこの方法で、人々は救われるのか。

ラディスの神は本当に、これを望んでいるのか。

しかし、その考えを認めてしまえば…これまで信じてきたラディスの神を裏切ることにもなりえる。

それだけはできなかった。

妻や娘を捨ててまで選んだ道。犠牲を払ってまで忠誠を誓ってきたもの。



「いや、駄目だ。聖海騎士団の隊長でもある私が、ルーク枢機卿を…皇帝猊下を、ラディスの神を裏切るような考えを持っていては……フォスター達に示しがつかない。……だが…」


帝国と言えば、前にウェルテクス社で聞いた…シラスとギリオンの会話。

彼らと会話していたファントム。

それらのことも、心に引っ掛かりを覚える要因でもある…

“ファントム”とは一体何なのか?

猊下はこのことを知っているのだろうか?

そのことに関しても以前、ルーク枢機卿に訊ねたこともあった。

どうやらファントムはシラスが作り出した生物兵器らしく、帝国に害をなす存在ではないとの事。

しかし…それでもやはり、ファントムに対する疑惑は晴れない。

あれはどちらかと言えば魔物だ。それも、人の心を蝕むかのような、禍々しいもの…


「何が…起こっていると言うのだ、……帝国に…このルキナに……」






〜〜〜






ラディウスの聖窟前で、晴人達はユディーヌから教えられたとおりに聖なる祈りを捧げる。

どうやらユディーヌは本当のことを教えてくれたようで、怪しまれることなく聖窟の中に入り込むことに成功した…

後は、どうやって奥のオリジナルJMの保管庫ともいえる場所まで行くか。

ラディウスの聖窟はまるで迷路のように複雑で、「本当にこんなところを信者が通るんですか」と瞬平が声を上げる。

それについて答えたのは、イーヴリンだ。


「入り口のところに清めの湧き水があっただろう。ほら、近くに小さなラディス神の像が飾られていた…一般の信者は清めの湧き水で手を清め、ラディス神の像に祈りを捧げてそのまま帰るんだ」

「つまり…奥地には誰も行かない、って事ですか?」

「このように複雑な通路が入り組んでいるし、一般信者は入り口の祈りの空間から奥に行くことが禁じられているからね。実際にやったら、懲罰ものだよ」

「…僕達、結構危ない橋渡ってるんですね…」

「いつものことじゃない」


瞬平が苦笑いする横で、コヨミが静かにツッコミを入れる。

まあ確かに、この世界に来てから危ない橋を渡ることなどいくつもあったが。

このまま、順調に…できれば聖海騎士団との誰とも合わずに済んでくれれば。

そう思いながら、清めの泉――入り口の清めの湧き水は、この泉から流れてくるものと言われている――と呼ばれる場所まで足を踏み入れた…その時だった。



「…何故あなた方がここへ!?ここに異教徒が入ることはできないはず…!」

「「「あっ!」」」

「この人…帝国ミサにいた!」


聖海騎士団の隊長・バーガーと晴人達は偶然にも鉢合わせてしまう。

バーガーは剣を構えようとするが、その前にザウバーが「待った」をかける。


「待て。…お前もラディスの聖地で血を流させたくはないだろう、剣を治めろ」

「…。……どうやって入ったかはともかく、何をしにここまで?」

「セラピアの水源JM!あれを返してほしいの、あれがないとセラピアの皆が凄く困っているの!!」

「そうですよ!今はルルちゃんのお陰で何とかなっているけど…いずれ限界が来るかもしれない、そうなったらセラピアの人達は皆死んでしまうかもしれないんですよ!?」


ルルと瞬平の言葉に、バーガーはピクリと反応する。

…今まさに、自分が考えていたことそのままだったからだ。

ミカ達は、ラディス教の力が一番強い場所と知っていて尚…水源JMを取り戻すためにここまで来た。

ひょっとすれば、自分達が捕まるかもしれないのに。

そんな彼女達の行動に揺るがされながらも、バーガーは必死に首を横に振り、言い放つ。


「あのJMは猊下が必要とされているのです、それに元々…オリジナルJMはラディス教に伝わる、大事なものなのですよ」

「でも…」

「今までが異例だったのです。本来ならば…我々ラディスの神に仕えるものが、持つべきものなのです」

「――皇帝の命令だったら、何をしてもいいの?ラディス教のものだからって…JMを強引に取り上げて、それで皆が困ってもいいの!?」


バーガーの言葉に、ミカが反論する。

彼の言っていることは、セラピアの町を犠牲にしてまでラディス教の予言を実現しようとしていると言うこと。

そんなもの、本当の幸せのはずがない。

他人の物を奪ってまで、他の人々を苦しめてまで…それをやっていいのか。

凛子も我慢の限界だったのか、バーガーに言い放つ。




「そうよ…あなた達のやっていることは、皆を苦しめているだけに過ぎない!ラディス教のせいで、住み場所も…大事な家族も奪われた人だっている。それなのに、それを許していいの!?」

「あなた方に何が分かるのです!」

「分からないわよ…分かるわけないじゃない!だって、あなた達の信じている神様は…予言を実現するためなら、戦争を起こしてもいい。この世界に住む人達を苦しめてもいい、大事なJMを奪って集めてもいい……そう言っているようなものでしょ!?」

「…違う!そのようなことは、断じてありません…ラディスの予言の実現は、ルキナの人々に平和や幸福を与えるためのものなのです!!」

「だったら…だったらどうして、―――その予言のせいでセラピアの人達は悲しんでいるのよっ!!」


凛子の言葉に、バーガーははっとなる。

『何故予言の実現のために、セラピアの民達が苦しまなくてはならないのか』

『本当に、これで皆幸せになるのか』

心の片隅に押し込めようとしていた疑問を、凛子の言葉は再び思い出させていた。

晴人も凛子の肩を軽き叩きながら、バーガーを見据えて言い放つ。


「凛子ちゃんはちょっと落ち着いてて。……あんたも知っているだろうけど、俺、ミサの場にいて…皇帝の言葉を聞いていた」

「…」

「それで疑問に思ったことがあるんだよな。皇帝の宣言は、平たく言えばラディス教を広めるためだけに戦争を起こそうとしている…それって、本当に必要なことなのか?」

「何を言うのです…ラディス教を広めるためだけではない、我々のしていることは、あなた方異教徒からアムニスフィールドを守るための戦いなのです……!」

「空にあるアムニスフィールドは、誰のものでもない…皆のものだ。帝国や、ラディス教だけが独占していいものじゃない…だってあれが本当に神様からの贈り物なら、皆平等に使うためにあるんじゃないのか?それこそ……セラピアの水源JMのように」


“ルキナに住む皆が平等に使うため、アムニスフィールドはある”

晴人の言葉に、アムニスフィールドの力を人々のために役立てたいという気持ちでウェルテクス社に入ったユーテキは、大きく頷く。

彼だけではない…

ミカやイーヴリン、瞬平にルルも一緒になって、頷いていた。

他の聖海騎士団の面々なら、晴人の言葉を「異教徒の戯言」と笑っていただろう。

だが…帝国やラディス教に疑問を持ちつつあったバーガーには……



「それに」と言いながら、ザウバーはバーガーにある物を投げ渡す。

それは…キルベルト公爵の屋敷で手に入れた、ウェルテクスの研究報告書。

「何だこれは」と思いながらもバーガーはそれに目を通し、目を見開く。

セラピアの水源JMについての項目…それを見た彼は、声を絞り出していた。


「……なんと…あの水源JMは、……ウェルテクス社の作り出した…レプリカJMだったというのか……!?」

「そうだ。……まあ、知らなくとも無理はないだろうな…俺達も、その報告書を読んで知った事実だ。そうでなければ俺達も、お前達と同じようにオリジナルJMと勘違いしていただろうな」

「まあ、アムニスフィールドの力を利用し…半永久的に水を沸き上がらせるための力だ。オリジナルJMと思っても仕方がない」

「…。……少し、考えさせてください…色々と、……考えたい」


バーガーはそう言いながら、ザウバーに報告書を返し…どこかに向かう。

待って、とミカが声を掛けるが…それを止めたのはイーヴリンだ。


「無理もないよ。彼自身、色々な葛藤があるんだろう…どうやら他の奴らと違って、ラディス教のやり方に疑問を持っていたみたいだしね」

「疑問を?でも…」

「疑問を持っていなかったら、凛子や晴人の言葉を『異教徒の世迷いごと、都合のいい解釈』と罵っていた。それをしなかったということは……」

「――それよりも早く、水源JMを取り返すぞ。セラピアには、もう時間がない」


イーヴリンの言葉を遮るように、晴人が言い放つ。

ここでバーガーのことを考えていても、仕方がないからだ。

ミカは少し気になることがあったのか、バーガーの向かった先を見ていたが…

ユーテキの「早く」と言う声に反応し、聖窟の奥地に向かっていた。






〜〜〜






聖窟の奥地にミカ達が辿り着くと、そこには各地から集められたであろう…オリジナルJMがいくつも祭壇に飾られていた。

更に、奥のほうには…ラディス教のシンボルを象ったオブジェの下に、一際綺麗に輝くJMがある。

まるで、ルルが魔法で作り出した水の珠の様に綺麗なそれは、セラピアの水源JMに他ならない。

その近くには祈りを捧げている男……ルーク枢機卿がおり、ミカとルルはルーク枢機卿に叫ぶ。


「なんですか、あなた方は…ここはラディスの聖なる地。そしてこの場所に、一般の参拝客が立ち入ることは、禁じられているのですが?」

「御託はいいっ!あなたがルーク枢機卿ね!?」

「セラピアの水源JMを返して!」

「いきなりやってきて、何を言うかと思えば…これはラディス教に伝わるオリジナルJM。返す道理などありません」


くすり、と笑いながらミカとルルを見るルーク枢機卿。

そんな彼にユーテキは苛立ちつつも、負けじと言い放っていた。


「それはオリジナルJMなんかじゃない…ウェルテクス社が、ミカの両親が作ったレプリカJMなんだっ!」

「水を作り出す力を持つJMがオリジナルJMでないなど…嘘をついてはいけませんね。これは予言実行のため…皆の幸せのためなのですよ」

「嘘なんかじゃない、ウェルテクスの研究報告書にも書いてあることなんだ!」

「予言の実行のために、皆の幸せを奪って…それがなくて困っている人達がいるのに、何が皆のためなのよっ!!」



ユーテキの後に続く形で、ミカが言い放つ。

すると、次の瞬間、ミカの右手に付けられた指輪型ジェネレーターにあるオリジナルJMが赤い輝きを放つ。

それと同時に、晴人の左指にあるフレイムウィザードリングも赤く光り始め、晴人は慌ててフレイムドラゴンリングを取り出す。

…フレイムドラゴンリングもまた、同じように赤く光り輝く…まるで、シアーズの最初の覚醒と同じ時のように。

それと同時に、一瞬ではあるがミカの姿が…変わる。

赤き竜。それに跨る、力強き聖獣…

シアーズとはまったく違う姿に凛子や瞬平は驚き、ルーク枢機卿はミカの指輪の輝きを見て叫ぶ。


「これは…ウェルテクス屋敷の時と同じ……?だが、反応しているのはフレイムだ…」

「えっ?ど、どういうことなの??」

「それに…ミカちゃんの今さっきの姿、青い姿とまったく違うような…」

「そのJMの輝きは…オリジナルJM、そしてその姿……貴様がウェルテクスの娘か!」

「…それが…どうしたって言うのよ!」

「成程、姿が変わると言うのは本当だったか……お前のその力、そのオリジナルJMの力は、恐らく【聖なるもの】と関係がある…予言の実行のため、協力してもらおうか」


ルーク枢機卿はそう言い放つと、指をパチンと鳴らす。

すると、聖海騎士団の面々がその場に集まり、瞬く間にミカ達を取り囲む…

この状況を切り抜けるには、やはり、戦うしかない。

そして、混乱する戦況を利用して水源JMを取り返す…それを可能とするのは、やはり晴人の魔法しかない。

晴人はフレイムリングを使って変身しようと、変身の構えを取るが




『―――遂に見つけた。これが、セラピアの水源JM…セラピアに住むゲートを総て絶望させるための、大事な大事な希望』




いつの間にか、十字架のオブジェクトの上に…何者かが座っている。

「誰だ」とルーク枢機卿が叫ぶと、ファントム・ウンディーネはくすくすと笑いながらその場から降りていた。

そして、手に掛けたのは…水源JM。


『これは貰っていくわ…だって、これさえあれば一気にファントムがたくさん生まれてくれるんですもの』

「お前…ファントムッ!」

「ファントム…確かシラス宰相が作ったという、生物兵器……何故ここに?」

「そんな生易しいもんじゃない。ファントムは、ゲートと言う人間を絶望させ…仲間を作り出す。多分あんた達ラディス教の人間とは、相容れない部類だよ」

「とにかく、それをルル達に返して!」

『誰が返すものですか。それじゃあね、指輪の魔法使い…次に会う時は、たくさんのファントムがセラピアの町であなたを待ってるわ』


ウンディーネはそういうと、近くにあった水を利用してその場から逃げる。

「待て」と晴人が叫ぶが、その彼に剣を突き立てたのは…ガルシア。


「おっと、無闇に動かないでいてもらおうか?」

「くっ…こんなことしている間にも、水源JMが…!」

「その指輪、貴様が例の呪術者か。――ウェルテクスの娘といい、この場に集まってくれているのは好都合…その2人は何としても捕まえろ!残りは…逆らうようならその場で殺すのだ!!」

「「「おおおおっ!」」」


ルーク枢機卿の一声で、ガルシア達聖海騎士団は襲い掛かる。

ミカはこの状況を切り抜けるべく、オリジナルJMの力を引き出そうとするが…やはりコントロールができない。

そうしている間にも敵は迫り、ミカはアルテマスの剣をダブルセイバーで受け止める。

ユーテキは後ろから銃で援護し、イーヴリンとルルは瞬平や凛子といった非戦闘員を守りながら戦う。

一方の晴人は、ガルシアに襲われなかなか変身できるタイミングが見つからない。

どうしたもんか、と思っていると…ガルシアを突然、闇の槍が襲った。



「ぐおっ!?」

「これは…」

「…いいからさっさと変身しろ!お前の魔法なら、この場の聖海騎士団を蹴散らすことができるはずだ!!」


晴人の危機を救ったのは、ザウバーのシャドウエッジだ。

地中から闇の槍を呼び出す術…それにはかつて戦ったシャドゥを思い出しながらも、晴人は変身する。

しかしその指輪は、フレイムウィザードリングではなく…ウォータードラゴンリング。

この場の聖海騎士団達を何とかするには、一番適したウィザードのスタイルだからだ。


「…だったらこいつでっ!」

<ウォーター、ドラゴン ザバザババシャーン、ザブンザブーン!>

<チョーイイネ! ブリザード、サイコー!!>

「そら…よっ!」


ウィザード・ウォータードラゴンスタイルは変身直後に“ブリザード”リングを使う。

強力な冷気を放つ、ブリザード…

それによって聖海騎士団の面々の体は凍りつき、これである程度の時間は稼げる。

その一方で、ルーク枢機卿はバーガーの姿が見えないことに気付き、「どこにいる」と叫んでいた。

ウィザードWDの攻撃で形勢が一気に逆転し、こうなればとばかりにルーク枢機卿が直接動こうとするが



「――頭を下げなさい!」


その言葉を聞いたミカ達は、一斉に頭を伏せた。

すると、丁度ユーテキの頭上辺りを剣が掠め…それはルーク枢機卿に真っ直ぐ向かっていく。

ルーク枢機卿は素早く身をかわすと、剣を投げた者の姿を確認した。

剣の装飾やその白き刃を見る限り、ミカ達のものでないことは明らかだった。

投げられた剣は、聖海騎士団の者だけが持つ特別な作りなのだ。

聖海騎士団の者は、約一名を除いてすべてこの場に集結している。

となると、考えられるのは一つ

…その剣を投げたのは、バーガーだった。


「あ、さっきのおじちゃんだ!」

「バーガー…これは何の真似だ。剣を捨てたと言うことは…聖海騎士団を抜けるつもりか?何故!」

「……ルーク枢機卿…私達のしてきた行為は、本当に正しかったのでしょうか?力ずくでJMを取り上げるなど、本当に聖職者がとるべき行為なのでしょうか?」

「バーガー、お前は何を言って…」

「それが例え、世界救済の予言実行の為だとしても…それが本当に、正しい事なのでしょうか?」


遠い目をしながらそう語るバーガーを、凛子は見ていた。

「他の奴らとは違って、ラディス教のやり方に疑問を持っている」

イーヴリンが先程言っていた言葉は、間違っていなかった。

それどころか、ラディス教を崇拝する者の中にも…今のラディス教の暴挙は間違いであると、疑問を持ってくれる人はいたのだ。

バーガーと分かり合えたような気持ちになった凛子は微笑むが、ルーク枢機卿は憤慨するばかりだ。


「いいや…聖海騎士団を抜けると言うわけではない。異端に堕ちたという事だ…貴様は、ラディスの教えに背くつもりか!」

「元々、堅苦しいのは性に合わないんですよ。……性格的にね」

「この私に楯突くというのか…面白い!」




ルーク枢機卿はそういいながら、地面に突き刺さった剣を抜き…バーガーに襲い掛かる。

枢機卿、とはいえ、剣の心得はあったのだろう。

流石に手ぶらの状態であるバーガーには分が悪い…

コヨミはザウバーから刀を一本奪い取ると、彼が怒るのを無視してバーガーに投げる。


「おいっ!?」

「…これ使ってッ!」

「すまない!……ここで私が食い止めている間に、あなた方は水源JMを奪ったファントムを!!」

「でもおじちゃんは!?」

「そうよ、せめてあなたも一緒に!」

「私のことはいい…早く水源JMを取り戻すんだ!あれを壊されたら、セラピアの町は死んでしまう…そうだろう!?」


ルルと凛子が説得しようとするが、バーガーはルーク枢機卿を、そして聖海騎士団全員を引き受ける覚悟を既に決めている。

ブリザードによる氷の戒めは溶け始め、このままではバーガーの命が危ない。

「でも」とミカも一緒になってバーガーに加勢しようとするが、それを止めたのはウィザードWDだ。


「ミカ!それに凛子ちゃん達も…この人の想いを無駄にするな!!」

「でも、放っておくことなんて!」

「俺達がこの場で留まって、あのファントムに水源JMを壊されたら…これまでの皆の頑張りだけじゃない、命を懸けて俺達を行かそうとしてくれる…あの人の想いを無駄にすることになるんだ!」



ウィザードWDとしても、バーガーを見捨てて逃げることには正直、反対だった。

だが…

ここで留まって戦えば、それはまさしくバーガーの決意や想いを無碍にしているのと同じ。

それに、水源JMをウンディーネに壊されれば…大量のファントムが誕生し、セラピアは死の町と化す。

ミカ達は納得行かないような顔をしながらも、他でもないウィザードWDが一番その方法を取りたくないのだと…気持ちを必死で押さえ込むようにして力強く握られた拳を見て気付き、この場から離れていた。


「…分かった。……行こう、皆!」

「う、うん!」

「了解!」

「おじちゃん…」

「急ぐぞ!――バーガー…あんたも、俺らが逃げたらこの場から離れて…生き延びてくれ。……絶対死ぬな!!」


ユーテキやイーヴリンがミカの後に続き、ルルはバーガーのほうを振り返りつつも走り出す。

他の仲間もラディウスの聖窟から逃げ、最後尾に続くウィザードWDはある物を投げ渡していた。

バーガーはそれを受け取り、目を見開く。

…彼が受け取ったのは、ランドドラゴンリング…

恐らく、逃げる際はこれで気を逸らして撤退しろと言う意味なのだろう。

いくらウィザードの姿を変えるために必要な指輪でも、ウィザード以外では扱えない…そうすればウォータードラゴンリングの時のように、何かしらの形で取り返すことができる。

バーガーはフッと笑いながらも、セラピアの人々のために奔走する彼らに…最後まで自分の心配をしていたウィザードWDに、小さく呟いていた。




「まったく…最後の最後までお人よしな奴らだ。だが…俺も昔は、あんなんだったな……」

「貴様ら…ただで済むと思うな!この男を葬ったら…すぐ行くぞッ!!」

「ここから先へは…通さないと言ったはずだーッ!」


バーガーはランドドラゴンリングを懐にしまい、刀を持つ手を強く握り締める。

そして…

ルーク枢機卿の剣とバーガーの刀が、激しくぶつかり合っていた。






***




ランドドラゴンリングwww

晴人…お前ランド系に何の恨みがあるんだよ…?←


今回はタイトルどおり、バーガーさん中心で進んだお話。

やっぱり、疑問に思っている人もいるんですよねー…

そうでなくとも、彼、ファントムの件でフラグ立てたって言うのにw

結構前から凛子ちゃんがラディス教のやり方について文句を言っていたので、いざ絡ませる際…公式で色々言っていたミカとユーテキ、ルルよりも、凛子ちゃんのほうが説得力あったのは何故ww

後は、1話辺りの…皇帝の宣言に対する晴人の疑問も、回収していますね。



フレイム系のリングが輝き始めた…?

と言っても、これが出てくるのは結構終盤かもしれません。

実際、終盤に出てくるJMによってミカが使える姿なので…

ちなみにウィザブレ設定では、ミカの持つオリジナルJMは状況に応じて異なる姿を使い分ける…といった設定です。

まあ、怒り以外で安定させるには、ドラゴンスタイル必須だけどね!


尚、微妙にネタバレですが……ミカの聖獣の属性、実は地属性がないんです。

水、雷+光、炎、風、…あと回復系の何か。この5種類です。

雷+光は現段階で安定するための属性がウィザードの中にないので、出番自体がない可能性があります。

ハリケーンドラゴンは……どっちかというと、風属性のツァ○○○…

回復系の何かは…属性は多分光なんでしょうけど、そうなるとランドドラゴン完全にハブになっちゃうので、地属性と言う扱いにしました。

それでも、回復系って時点で割と残念だけどなランドドラゴン!!←




っていうか、バーガーさんのフラグの立てっぷりが凄いw

これは

1.ルーク枢機卿に殺される(現実は非情であるパターン)

2.ランドドラゴンパワーで生き残る(本郷町のランドラさんマジ頑丈パターン)

3.絶望してファントム化(後に敵になって戦うパターン)

4.↑むしろ絶望を乗り越え魔法使いの資格を得る(もれなく白魔さんが勧誘しに来てそのままフェードアウトパターン)

5.ランドドラゴンリングを投げて生き延びる(ランドドラゴンは囮よ!パターン)

……さあ、どれだ!←


※作者はランドドラゴン好きです、悪しからず