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タイトル未設定 - Magic15:永久凍土の真相

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Magic15:永久凍土の真相

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セラピアの町に戻った晴人達は、急いで噴水広場のほうに向かう。

そこでは、ジョージがあわあわとした様子で水の様子を見ており、「相変わらず忙しないな」と晴人は思っていた。

だが、彼が焦るのも当然で…噴水広場やセラピア中の水路の水が、先程よりも大きく減っている状態。

ルルはジョージに声を掛け、彼女の無事な姿を見たジョージは大喜びしていた。


「ジョージおじちゃん!」

「ああっ、ルルちゃん!無事だったのか、よかったぁ!!」

「ちょっと事情があって、昨日来れなかったの。今から水の珠作るから待っててね!」


ルルはそう言うと、噴水広場にある台座の前に立つ。

一体何が始まるのだろう、とミカ達が見ていると…

ルルは白いバトンを構え、何かの呪文を唱え始める。

すると、台座の周辺には大きな水の塊が現れ、それは綺麗な珠となり台座に収まっているではないか…

あれがジョージさんの言っていた水の珠、と瞬平は目を輝かせながら、ルルの魔法を見ている。

晴人も、自分にはできない類の魔法を実際に目の前でやられ…彼女は本当に“この世界の”魔法使いなのだと改めて実感していた。


「これでだいじょーブイっと!」

「凄い!本当に水の珠ができた!!」

「へぇ…これが、この世界の魔法使いの魔法か」

「ごめんよぉ。いつまでも、ルルちゃんの力を借りているわけには行かないのになぁ…」

「そんなことないの!ルルの力が皆の役に立てるなら、ルルも嬉しいの!!」



迷惑をかけていると言うのに、逆にそんなことないと言うルルの優しさと心遣いに、ジョージが感涙する。

その一方で、この原因を作った張本人でもある、聖海騎士団への怒りが強くなる一方…

ジョージは「くそっ」と拳を握り締めながら、悔しそうに言う。


「ちくしょう!聖海騎士団なんて来なきゃよかったのに…そうしたらルルちゃんも旅を続けられて、俺達も辛い思いしなくて済んだのに!!」

「そんなに重要だったんだろうか、その水源JMが」

「オリジナルJMは本来、ラディス教に伝わるものだからね…それがラディスの予言である【聖なるもの】であろうとなかろうと、回収するために必死なんだろう」

「実際、水源JMはウェルテクス一族が作った、レプリカJMに他ならないのに…」


晴人やイーヴリンの言葉を聞きながら、凛子はルルが作り上げたばかりの水の珠を見る。

また今回のように急にルルが来れなくなってもいいように、予め5日は持つように大きめに作られている水の珠…

この町の人達にとって、水源JMは大事なもの。……それこそ、【希望】なのだ。

このまま放っておいたら、たくさんの人々が苦しむ結果になり、セラピアの町から人がいなくなってしまう。

更にこの状況に付け込んだファントムが、誰かを絶望させて仲間を増やす可能性もありえるだろう…


「……やっぱり、何としてでも水源JMを取り返さなくちゃ。この町の人達のためにも!」

「そうね、凛子の言うとおり!それに…このまま帝国にやられっぱなしっていうのも、気に入らないもの!!」

「だったら、ルルも手伝う!ルルだって、セラピアの皆を放っておけないもん!!」

「気持ちは嬉しいけど…それってつまり、ラディス教の聖地でもある聖地ラディウスに攻め込むって事だよ!?ラディス教の教義を重んじる聖海騎士団を敵になんかしたら、何をされるか…」




ジョージはわたわたと慌てながら、凛子やミカ、ルルに言う。

確かに、一見すると若い男女ばかりの晴人達が聖海騎士団を相手に喧嘩を売るなど無謀としか言えない。

しかし、ミカ達は既に決意を決めた後……ザウバーは既に諦めた後。


「だいじょーブイ!だって、皆強いし…特にはるとんは、ルルにも負けないすっごーい魔法があるんだもん!!」

「そうそう、聖海騎士団なんてお茶の子さいさい屁の河童よ!」

「ミカ……ルルの『だいじょーブイ』もだけど、それちょっと古いよ…」

「ユーテキは溺死したいのね。分かった」

「ちょっ!!?」

「ありがとうよぉ…ううっ、今時こんないい人達がいるなんて…人生捨てたもんじゃないなぁ」


ジョージは腕で涙を拭きながら、感謝の言葉を述べる。

その一方で…

ザウバーは聖地ラディスについてある程度知っているのか、晴人やコヨミと話していた。


「聖地ラディスは、この町から出て南の方角に向かい…その先にある山岳地帯を北西に進めば着く。往復のことを考えるなら、水の珠の効力が切れるギリギリだな」

「そっか。それならまぁ…行けないこともないな。場合によっては、俺がハリケーンドラゴンになって水源JMを返しに行けばいいし」

「だが…聖地ラディウスは、その名の通りラディス教の聖地。つまりラディス教の力が一番強い場所だ」

「そんなところに行って、大丈夫かしら…?」

「帝都からは大分離れているし、この辺一体は戦争で慌しいから俺達への関心は低いはずだ。行きは問題がないだろう」


成程な、と晴人は頷く。

確かに、このセラピアにしてもそうだが…帝都リーリエリヒトからはかなり遠く離れている場所に、聖地ラディウスはある。

当然、そんな場所ではミカ達のことなど知っている者は聖海騎士団以外にはいないだろう…

それでもかなり時間が掛かるのは事実なので、まずは準備を万端にしながら、晴人達は聖地ラディウスへと向かっていった。



そんな彼らの姿を、建物の影から見ている人間がいた。

…この町に潜り込んでいる、ファントムだ。


(――奴らは水源JMの在り処を知っている、あれさえあれば…あのゲートを絶望させられる)

(――だとすれば、…何とかして奴らを出し抜いて…水源JMを先に手に入れなければ)






〜〜〜






2日後。

モンスターの存在もあってか、聖地ラディウスへの道のりは想像以上に険しい。

ルルという新しい戦力がいても、少し厳しいほどだ。

アイスウォーリアをウィザード・フレイムドラゴンの一撃で蹴散らした晴人は、「ふぃー」と息をつく。

…しかし、やはり魔力の消耗は激しい。

この世界なら、オレンジグミや料理である程度回復はできるらしいが…そもそもこの世界の人間ではない晴人には、効き目が若干薄いようだ。


「やっぱ、連戦は疲れるな。……そういえばコヨミ、この世界に来てまだ“アレ”やってないけど…」

「私は大丈夫」

「でも、」

「――あっ、見えてきた!あれが聖地ラディウスじゃない?」

「本当だ!」


晴人とコヨミの会話を遮るように、ミカとユーテキが叫ぶ。

ようやく見えてきたゴールに、瞬平や凛子、ルルも安堵の表情。

すぐにでも足を踏み入れようとする彼らについて行くように、コヨミはすっと晴人を避けるように離れる。

おい、と晴人は急いでコヨミの後を追いかけるが、そんな彼女をザウバーは目で追いかけていた。

そんな彼の様子に気付いていたのか、イーヴリンは訊ねる。


「気になるのかい、コヨミのこと?」

「…別に」

「まあいいけど。それよりも、私達も早いところ行かないと…休めるときには休んでおきたいしね」

「……」



その頃…

聖地ラディウスにある大聖堂では、ユディーヌ審問官が不機嫌な様子でいた。

ユディーヌはイシュトヴァーン皇帝から、この聖地ラディウスに向かい、シンボルストーンについて調べるよう言われていたのだが……どうやら、シンボルストーンには何も起こらなかったらしい。

…このままでは猊下の期待を裏切ってしまう

…どうすれば…

そんなことを思っていると、ユディーヌの前に現れたのは……ギリオンだった。


「ユディーヌ様。……その様子だと、シンボルストーンの件…あまり宜しくなかったようですね」

「ギリオン宰相補佐殿。…貴公こそ、何故ここに?」

「私も、成り上がりの身ではありますが皇帝猊下に仕える者…ラディス教の聖地に来ても、何の不思議もありません」

「…私に声を掛けたのは、皮肉でも言いに来たのか?」


ユディーヌの怪訝そうな声に、ギリオンは「滅相もない」と手を横に振る。

彼は不敵な笑みを見せながら、ユディーヌに言い放っていた。


「いいえ。ただ少し、お尋ねしたいことが」

「何だ?」

「あなた様の、皇帝猊下に対する忠誠心は…少々妄信的で、まるで恋焦がれる乙女のようと言う噂を聞いたことがございます」

「……そのような噂を本気にしているのか?」

「いえ、噂はあくまでも噂…それに、女神信仰を禁じるラディス教の審問官であるあなた様が『恋焦がれる乙女』と…まるで女性であるかのように噂をするような者自身が、おかしいことでしょう」


ふふっと笑いながら、ギリオンは告げる。

彼の言葉に、ユディーヌは眉間のシワを深くしながら、彼を睨みつける…

その視線に気付いたギリオンは、「それでは」と静かに礼をした後、その場から立ち去って行った。

恐らく、彼はこのまま帝都に戻り、シラスと共に“例の研究”を進めるつもりなのだろう。

掴みどころのない男だ、とユディーヌは思いながらも、教会の資料に何かヒントはないか、調べ始めていた…





聖地ラディウスに足を踏み入れた晴人達。

やはり聖地だけあってか、建物の外壁は溜息が出るほど美しい白。

花も綺麗に咲いており、道も整備されている。

そして、やはり目を引くのがシンボルストーンやラディス神を象った石碑。


「とりあえず、今日のところは宿屋でゆっくり休もう。それから、帰る際は恐らく聖海騎士団に追われることを想定すると…今のうちに戻る際に必要な物資は買い集めていたほうがいいかもな」

「それだったら、私と凛子は道具屋に行くね!」

「じゃあ、僕とユーテキ君は防具のほうを!」

「だったら…晴人と私は武器屋ってことで。あ、ザウバーとコヨミは宿屋を頼むよ」

「あっ、ルルもはるとんと行くー!」


晴人の話の後で、ミカと瞬平、イーヴリンにルルは勝手に振り分けを行う。

「勝手に決めるな」とザウバーは文句を言うが、その前にイーヴリン達は即座に散った後…

特に晴人は、イーヴリンとルルに無理やり腕を引っ張られ、武器屋に連れて行かれる。

そんな彼らを見ながら、ザウバーは頭を抱えつつ呟く。


「…ったく、あいつら…」

「……」

「…おい、ところでお前、さっきから顔が青いが大丈夫」


先程から様子のおかしいコヨミに声を掛けようとするザウバーだが、

――その直後にコヨミがゆっくり倒れ、彼は慌ててその体を受け止める。

「おい」と声を掛けるが、反応がないどころか…まったく動かない。

それどころか、心臓や脈すら完全に止まっている。

そんなコヨミを見て、ザウバーは思い当たる節があったのか、ポツリと呟いていた。


「……まさか、こいつ…」






〜〜〜






「…コヨミ、大丈夫かな」


晴人はプレーンシュガードーナッツを一口食べながら、コヨミへの心配を口にする。

「どこから出した」と言うツッコミを、イーヴリンはしない。

…もはや、ツッコミを入れる気がしないからだ。

ちなみにルルは、平然と晴人が手に持っている袋からドーナッツを1つ拝借し、ポポと食べている…さすが魔法使い、順応が早い。


「何だ、随分あの子のこと可愛がってるんだね」

「それもあるんだが…ちょっとコヨミは、特別な体質でさ。……俺が魔力供給してやらないと駄目なんだ」

「それって、ルルがやっても駄目なの?」

「多分、な。俺がルルみたいに水の珠を作り出すことができないように、ルルが自分の魔力をコヨミにあげることはできないんだ」

「「ふーん…」」


イーヴリンとルルが不思議そうに晴人を見ていると、自分達を呼ぶ声が聞こえてくる。

瞬平やユーテキ、凛子にミカだ。

彼らも買出しを終えた後のようで、主に瞬平とユーテキが荷物を持っている。

買出しにザウバーつけてやるべきだったんじゃ、と晴人は思いながら、一番ふらついているユーテキの荷物を持とうとしていた……その時だった。

――背筋が凍るような、冷たい冷気

その場にいた人間総てがその寒さに震え、ポポはルルの羽織っているクロークの中に潜り込む。


「きゃっ!?なんか、急に寒くなったの…!」

「ポポ〜…」

「この冷気、……まさかっ!」



晴人が凍えながらも周囲を見ていると、そこにいたのは…氷のファントム・セルシウス。

どうしてここに、と思いながらも、晴人は戦闘態勢を整える。

一方のセルシウスは、ゆっくり…ゆっくりとこちらに歩いて来ている。どうやら、魔力の流れや相手の気配を感じることはできるようだ。

セルシウスの強さを知っているミカ達も、荷物は凛子と瞬平に任せ、晴人の手助けをする態勢。


『……』

「こんなところで会うなんてな…氷のファントムさん」

『…』

「相変わらず無口だな…まあいい、……変身!」

<シャバドゥビ……ハリケーン、プリーズ フー、フー、フーフーフフー!>

<コネクト、プリーズ>


晴人はウィザード・ハリケーンスタイルに変身すると、まずは相手の出方を伺う。

…ここでフレイムスタイルにならなかったのは、以前フレイムドラゴンで戦ったとき、あまりの力量の差に屈したため…

それにこの世界での相反属性の関係からして、フレイム系で勝負を挑むのはむしろ危険だと考えたのだろう。

ならば、スピードに優れるハリケーン系で相手の攻撃をかわしながら、確実な一撃を決めるのが一番。

セルシウスは空気中の水分を凍らせて氷の剣を作り出すと、ウィザードHSに斬りかかる。

ウィザードHSはウィザーソードガンでその攻撃を受け止め、その間にユーテキが炎系の術を相手に浴びせる。


「“ファイアボール”ッ!」

『…』


しかし彼の攻撃も空しく、炎の玉は強力な冷気の風によってかき消されてしまう。

やはり、炎属性で勝つには相手の魔力を上回らなければならない…

かといってルルの“アイスニードル”も効果が薄いのは確かで、援護らしい援護はミカとイーヴリンに委ねられる。




「魔神剣!」

「迅空断!」

『…』

「きゃあああっ!?」

「くうっ…!」


ミカとイーヴリンは両脇から相手を挟みこむようにして攻撃するが、セルシウスはその場で高く跳躍すると、ミカとイーヴリンに強い冷気を浴びせる。

その攻撃で二人の動きは完全に止まり、体も徐々に凍り付いていく…

だが、セルシウスの攻撃を途中で中断させたのは、ウィザードHSの空中からの一閃だ。

セルシウスはそのまま地面に叩きつけられ、その間にルルは魔法で黄金のやかんを作り出し、ミカとイーヴリンの体の氷を溶かし始める。


「大丈夫、ミカちゃん!イヴお姉ちゃん!!」

「だ、大丈夫…さ…寒かった……ッ」

「あいつ…私達が束になっても敵わないなんて……!」

<ハリケーン、ドラゴン ビュー、ビュー、ビュービュービュビュー!>

<チョーイイネ! スペシャル、サイコー!!>

「……おおおおおっ!」


ハリケーンスタイルはハリケーンドラゴンへと変化し、更にスペシャルウィザードリングでドラゴンの翼を発生させる。

彼はそのまま上空から襲い掛かるが、セルシウスはその暴風を利用し、風の流れに冷気を纏わせ周囲を凍らせていく。

当然、ウィザードHDが纏う風も冷気を乗せ、翼が凍り付いてしまう…

「しまった」とウィザードHDは何とか態勢を整えるが、それを狙ったセルシウスの剣の一撃で深手を負ってしまう。



「ぐあああっ!」

「晴人君!」

「晴人さんっ!?」

「……あいつ…ッ、ハリケーンドラゴンでも勝てないのか…!?」

『…』


ウィザードHDは悔しそうな顔でセルシウスを見、ルルはウィザードHDの凍りついた翼にも魔法のやかんを使う。

ユーテキもこれ以上ミカ達に手出しはさせないとばかりに、二丁拳銃の銃弾を連続発射する“クラッチショット”を行うが、やはり効果は薄い。

何とかルルのお陰で氷状態が戻ったウィザードHDは、サンダーウィザードリングでの攻撃を試みていた。

…しかし、サンダーの魔法とセルシウスの強大な冷気がぶつかり合い、威力はセルシウスのほうが勝る。

更にセルシウスはその冷気の風に鋭い氷の刃を含め、物理的なダメージも与える…

それをまともに食らったウィザードHDはその場に倒れ、そのまま変身解除。


「……ッ、…くぅ…!」

「晴人!」

「「晴人さん!」」

「つ、強いの…」

『……』


晴人がやられ、イーヴリンやミカ、ユーテキが駆け寄る。

ルルは僅かに体が凍り付いている彼に、魔法のやかんのお湯をかけながらも…

圧倒的な実力を持ち、未だに言葉一つ発しないセルシウスに恐怖を感じていた。

それは彼女だけではなく、他の皆もそうだろう。

一体どうすれば、あれに勝てると言うのか…




誰もがそう考えていると、突如瞬間移動を使い…セルシウスの横に現れる物がいた。

――オリジンだ。

突然のオリジンの登場に、彼を一度見ているルル以外の全員が、驚きを隠せずにいる…

「どうしてお前がここに」

晴人がそう答える前に、オリジンはくっくと笑いながら…話を始めていた。


『……やはり貴様らが束になっても、セルシウスには敵わないか』

「オリジン…ッ!」

『まあ、お前達も意外と頑張ったほうだ…今回はこれぐらいにしておいてやろう』

「何ですって…!?」

「それって、ルル達のこと馬鹿にしてるでしょお!」


オリジンの言葉が「自分たちを侮辱している」と思ったのか、ミカとルルは憤る。

ユーテキや晴人、イーヴリンも同じ気持ちであったが…なにぶん、力が違いすぎる。

そもそもセルシウスの魔力は、晴人のそれを超えているほど…

一体どんなゲートを絶望させて生み出せば、こんなに魔力の高いファントムが生まれるのか。

そんな言葉が表情に出ていたのだろう。晴人の顔を見てくすりと笑いながら、オリジンは話し始めていた。


『――このセルシウスは、特殊なゲートによって誕生した。指輪の魔法使い…恐らくはお前よりも、素質が高いだろう』

「何…?」

「一体どんなゲートから生み出したって言うの!?」

『……そうだな…直接話す前に、まずはこいつの姿を見てもらおう。セルシウス』

『…』



セルシウスはオリジンの言葉に頷くと、ゲートの姿を現す。

…その姿は、幼い少年の姿。

綺麗な青い髪、青い瞳は海を髣髴とさせる。

少年の姿を見たミカは、ズキ、と頭が痛み…右手で頭を押さえ始める。

一方の晴人は、その姿に見覚えがあったのか…声を失っていた。


「…ッ!」

『ほう、指輪の魔法使いは察したようだな』

「……成程、な…かなり納得した。と、同時に…せめて悪い予感だけは、当たってほしくなかったよ……!」

「晴人さん…どういうこと?あのファントムのこと、知ってるの!?」

『おやおや……妹のほうはまだ分からないのか』

「…“妹”…?」


オリジンの言葉に、ミカの瞳は絶望が色濃くなっていく。

ユーテキも、イーヴリンも、瞬平も、凛子も、

…その可能性だけは、信じたくなかった。その可能性だけはなくてよかったのにと、悔やんでいた。


『セルシウスを生み出したゲートは……11年前、特務機関Gによって家族を殺され…自身も絶望の中でファントムを生み出した、―――お前の兄だ』





11年前だった。

オリジンは『皇帝が特務機関Gにウェルテクス一族の暗殺を依頼した』と言う話を聞き、ウェルテクス屋敷に向かう。

既に屋敷の前にはいくつかの死体があり、近くに特務機関Gがいないのを見ると、生き残りがいないか捜索をしているのだろう。

有名な研究者一族ならば、ゲートの1人ぐらいはいると思っていたのだが、期待外れだったか。

そう思い、オリジンは帝都に戻ろうとしていた…その時だった。


『……』


ガサ、と物音がしたかと思えば、草むらから出てきたのは…1人の少年。

――姿を見られたか

オリジンはその少年を消そうとしていたが、その少年から感じられる“同胞の気配”に、オリジンは目を見開く。

それに、どうやら姿が見えていないらしい上に…何故か声も出ない。

出来損ないのファントムにも思われたが、そこから感じられる魔力は自分にも匹敵するか…下手をすれば自分よりも上かもしれない。

どうやら耳は聞こえるようで、こちらから簡単な質問を少年に投げかけていた。



『“はい”なら縦に、“いいえ”なら横に首を振れ。――お前は…ファントムか?』

『…』

『“はい”か。……目は見えないのか?』

『…』

『口は利けないのか』

『…』

『ふむ…目も見えなければ口も利けない、ファントムとしては問題点だが……声以外で私の気配を、例えば…魔力で感じ取ることは?』

『…』

『できるのか。……念のために聞くが、ゲートの記憶はあるか?』

『……』

『記憶がないだと?お前は、ゲートのことをまったく覚えていないのか』

『…』


まさか自分も、ゲートの記憶を持ち合わせていないファントムなど…初めて見た。

だが、奴も目が見えない上に記憶がない以上は、縋れるものは自分の近くにいる同じファントムだけだと……私だけだというのは、分かっていたらしい。

それに私は、セルシウスを生み出したゲートには心当たりがあった。

蒼の髪、蒼の瞳。

これを持つ者で、この近くに住んでいる者といえば……バグバード博士とその息子しかいない。

――問題は、特務機関Gがウェルテクス一族の子供を捜しているであろうこの状況で、子供の姿がなければ面倒なことになる。

仕方なく私は、瞬間移動で奴と同じ年頃の子供を連れ去り、その首を切り取った後…『バグバード・ステラ夫妻の息子は魔物に頭を食われて死んだ』と言う状況を、作り出したのだ。





オリジンの話を聞き終え、ミカはその場に力なく座っていた。

…それもそうだ…

もしかしたら兄が生きているかもしれないと言う【希望】を、もっとも最悪な形で壊されたのだから。

当然、彼女に抵抗する力は残っていない。

それでなくとも、セルシウスとの戦闘でほぼ全員疲弊しているのに。


「そんな…お兄ちゃんが、……ファントム…」

『この状況でも尚、ファントムを生み出す気配がないということは…やはり貴様はゲートではなかったか。まあいい、セルシウス……行くぞ』

『…』


セルシウスはこくりと首を縦に振ると、オリジンと一緒に聖地ラディウスを離れる。

力なく落ち込むミカを励まそうとするユーテキであったが、どんな言葉を掛けていいか分からない。

それは晴人もだし、イーヴリンやルル…瞬平に凛子、この場にいた全員がそうだった。


「ミカ、…」

「お兄ちゃんだけは…生きているって、信じてた。……なのに…ファントムになって、結局死んでいただけじゃない……私の両親を殺した帝国に関わっているような奴に、いいように使われていたなんて…!」

「「「…」」」

「――私、絶対許せない…。私の家族を奪った帝国も、それに関わっているだけじゃなく…死んだお兄ちゃんを冒涜するようなファントムも、……絶対に…!」


ミカは右手を握り締め、肩を震わせながら言い放つ。

その言葉に共感したユーテキや晴人は、こくりと頷きながら彼女の肩を優しく叩いていた…

とにかく、今はゆっくりと体を休めるべきだ。

そう思ったイーヴリンは、ザウバーとコヨミが待っているであろう宿屋に向かうことを提案し、ミカや晴人達もそれに従っていた。




…その頃、宿屋。

コヨミはベッドの上で静かに目を覚まし、ぼうっと天井を見ていた。

近くでは、ザウバーが椅子に座りながら、宿屋の本を呼んでいる。

――私は確か、魔力が切れて

――魔力を晴人から分けてもらわないと、動けないはずなのに

――なんで動けるの

がばっと勢いよく起き上がるコヨミであったが、まだ不安定なのか、体がフラついてしまう。

そんな彼女の様子をちらりと見た後、再び本に目を通しながら、ザウバーは言い放っていた。


「……無理して起きるな、晴人が来るまで寝ていろ」

「もしかして、…あなたが…?……でも、どうやって…」

「…単なる応急処置に過ぎない。だから、あいつが戻ってきたらすぐお前に魔力を与えさせる」

「……だけど…」

「…。……お前の気持ちは分からないでもないが、あいつの迷惑になるからと魔力供給を拒んで倒れたら、それこそ迷惑になると思わないのか」


ザウバーの言葉はかなり痛いところを突いていたのか、コヨミが苦い顔をする。

…ここ最近、連戦続きで晴人もまともに休めていない…

そんな状況で魔力供給など、できるはずもない。水源JM奪還が掛かっているなら、尚更。

しかし、それで自分が魔力切れで倒れてしまえば……それこそ晴人に迷惑が掛かるのに。


「……ごめんなさい。…それと、ありがとう…」

「別に。お前がいて部屋を取りやすかったのも事実だ、気にするな」

「…、……ねえザウバー…あなたは一体何者なの?」

「……それは今聞くことでもないだろう。いいから寝ておけ」


それもそうね、と呟きながら、無駄な魔力の消耗を避けるべくコヨミは静かに目を閉じた。

ゆっくりと再び眠りに就く彼女を見ながら、ザウバーは小さく溜息をつきつつ、呟く。



「…人形、か」






***




※決してザウ→コヨではありません

というか、晴⇔コヨを薄々感じ取っているであろうザウバーがコヨミに矢印向けるって事はないです。CP的な意味で。

まあイヴには勘違いされてんだけどさw

…でも良識人なイーヴリンで勘違いするなら、ミカとユーテキと瞬平と凛子ちゃんとルルなんて…


だいじょーブイw

お茶の子さいさい屁の河童ww

…ちなみに、ルルの「だいじょーブイ」は公式です。



まさかのセルシウス再登場

…いや、結構前にフラグはあったけどね?

「セルシウスは聖地ラディウスに待機させてる」ってセリフはあったからね?

そして

――お兄ちゃああああああああああああああああん!!!

何これお兄ちゃん薄幸過ぎる。

頭マミられたかと思いきや、生きているかもしれないという希望を抱かせた後の、一気に絶望に叩き落しかねないファントム化…

ミカがゲートなら今回でファントム生み出してるぞw


というか、

ウォータースタイル→バインドを凍らされたのですぐスタイルチェンジ

フレイムスタイル→シューティングストライクが効かない

フレイムドラゴン→相反属性同士だった上に、魔力の差もあってか負けた

ハリケーンスタイル→不意打ちでダメージは与えられたがそれだけ

ハリケーンドラゴン→翼を凍らされる上に、サンダーでも押し負ける

…どうやったらセルシウスに勝てるんですか、晴人ェ…

残っているのはウォドラ・ランド・ランドラだけど……ランド系でセルシウスに勝てる気がしないのは何でだ!←

多分ウォータードラゴンでも無理だけど…本郷町のウォドラさんでも連れてこない限り、ウォドラで勝つのは無理だと思うけど!!

(理由:冷気同士がぶつかったら当然強いほうが勝つ上に、自分の冷気もそのまま返されるから今回のハリドラ以上の惨劇が待っている)

むしろ、ハリケーンドラゴンになったから今回駄目だったんじゃないか………というのは、言わない方向で。




ザウバーの応急処置?次の中から選べばいいんじゃない??

1.オレンジグミといったTP回復系

2.人工呼吸

3.生き血を飲ませた

4.心臓マッサージ

5.その時不思議なことが起こった!←