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タイトル未設定 - Magic48:アパロス島

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Magic48:アパロス島

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――晴人達がJMハンターズギルドに到着した時には、既に壊滅状態だった。




建物は殆ど壊され、上空のアムニスフィールドにはヒビが入っている…

この時点でイシュトヴァーンが【神の剣】を使ったのは、明白だった。

ギルドの中にいたJMハンター達は、皇帝かオリジン…どちらにやられたかはともかく、大怪我をしている者が多い。

だが、どれも命に別状がない辺り、ある程度加減はされていたのだろう。

シンボルストーンの奪還を目的とするならば、当然なのだが。

怪我人の手当てはミカ達に任せ、晴人・コヨミ・凛子・瞬平はルピートを探す。

すると…

酒場のカウンターの裏から、よろよろと出てくるルピートの姿があった。


「…お〜、いててて……散々な目に遭ったなぁ」

「「「ルピートさん!」」」

「良かった、あんた…やっぱり生きてたのか」

「おい晴人、『やっぱり』ってどういうこった。……まあ、俺様はただじゃやられないのが心情だからな!」


ははっと笑うルピートに、瞬平は正直に「ごめんなさい」と土下座していた。

…自分がユディーヌに、JMハンターズギルドのことを教えてしまったこと

…そのせいで皆が危険に晒されてしまったこと

そのことを謝り、更にミカとルル、イーヴリンらも頭を下げる。

しかし…

ルピートを始めとしたJMハンターズギルドの人々は、笑って許してくれた。


「何言ってんだ。別にお前らを責める気なんか、俺達にはねぇって」

「そうそう」

「それにしても、皇帝め!前から気に入らなかったけど、形振り構わず兵器をドカンしやがって」

「帝国、随分前からキナ臭い噂を聞いてたから…いつかこうなるとは思ってたけどなぁ」



彼らの優しさに、晴人達は頭を下げる。

しかし、問題はこれで皇帝の居場所探しが振り出しに戻ったということ…

帝国軍との戦闘の様子が気になった晴人は、ユーテキに頼んでレヴィー達に通信を取る。

すると、通信JMから聞こえてきたのは、ルーク枢機卿の声だ。


『…どうかしたのか?』

「ルーク枢機卿!……すまない、皇帝にシンボルストーンを奪われた」

『何!?…また兵器が落とされる音が聞こえたから、まさかと思っていたが……今、何処にいる?』

「JMハンターズギルド。そっちの様子は?」

『帝国軍は総て取り押さえた。ただ、ミッドノクス唯一の生き残りであるデュラは…前の戦いで大怪我をしていたのに、無理をして戦って…最後まで必死で戦った後……。彼と似たような者は、まだ何人かいる』

「そうか。――ちゃんと、弔ってやってくれ」


ああ、とルーク枢機卿は低い声で答える。

…帝国軍は皇帝が再度自分達に接触してきた時点で、2つに分かれていたそうだ。

1つは、“恐ろしい兵器を振るう皇帝に恐怖し、従うしかなかった者” …帝国軍の大半は、こういった心情の者達がいたことだろう。

もう1つは、“皇帝への忠誠を貫こうとした者” …こちらに関しては数こそ少なかったものの、捨て駒と知ってもなお皇帝のために最後まで戦い、必死で抵抗したため、倒さざるを得なかったようだ。

裏切られてもなお、イシュトヴァーンのために尽くそうとするデュラ達…

彼らは恐らく、イシュトヴァーンへの忠誠心に縋るしかなかったのだろう。軍の要でもあるヴィルギニア元帥を失っていたのなら、尚更。


『だが、問題はイシュトヴァーンが何処にいるのか、だな』

「ああ…そのことについて、心当たりがないか調べる意味でもあんたに尋ねたいんだが」

『ふむ…。イシュトヴァーンが大々的に、アムニスフィールドにダメージを与える兵器を使い始めたことによって…行く場所が制限されつつあるのも確かだ。人の噂話は、悪い話のほうがすぐ届くと聞くからな』

「…だろうな。それで、皇帝の行き先は分かるのか?」

『――恐らくは…アパロス島にある、ルシーラ公爵の元ではないだろうか』




アパロス島。

リーリエリヒト帝国の南東に位置する島で、定期船はビスマルク港から出ている。

【白の貴族】ルシーラはイシュトヴァーンに好意を持っており、彼女ならばどんな事情があったとしても、彼を匿うだろう…

そうしていると、通信JMを勝手に奪い取ったのか、タルボットが代わりに話し始める。


『――シンボルストーンを奪われたっちゅーのはホンマか!このアホンダラ!!』

「どわっ!?」

「た、タルボット博士…いきなり大声を出すのは」

『まあええわ、皇帝もそれだけ必死っちゅーことやからな。問題はや!……いくら威力を抑えていると言っても、兵器の乱発でアムニスフィールド…特にリーリエリヒト大陸全域が今にも壊れそうな勢いなんや』

『ああ。…帝都上空のアムニスフィールドも、いつ壊れるか分からない状態だ。あと一発放てば…リーリエリヒト周辺のアムニスフィールドは、完全崩壊するだろう』


そんな、とユーテキや凛子が叫ぶ。

現に窓からリーリエリヒト帝国方面の空を観察してみると、…確かに亀裂が凄まじい。

この状態で兵器を使ってしまえば、リーリエリヒト大陸外で使ったとしても…帝都を中心に、アムニスフィールドが崩壊しかねない。

タルボットも通信JMの奥で頭を掻きながら、溜息交じりに話す。


『唯一の救いは、【石】と【鍵】が完全に揃った状態じゃないっちゅーことやな。……もしもそれが揃えば、あのバカチン皇帝は…アムニスフィールドの状態も知らんで兵器を撃つやろ』

「「「…」」」

「【鍵】はあくまで全エネルギーを解放する役割にすぎない、今はそれがないからストッパーが利いてるけど、【石】と【鍵】が揃った状態で兵器のエネルギーを使えば……」

『――奴らはそれを利用して、ストッパー掛けて使えずにいたエネルギーも使って兵器をチュドン…そんなことすれば、確実にアムニスフィールドはお仕舞いやな』



その話を聞いていた晴人達は、ごくりと息を呑む。

それと同時に、急いでアパロス島に向かって皇帝から石を取り返さなくてはいけなくなった。

しかし、万が一のこともあるせいか、ザウバーはミカをJMハンターズギルドに残したほうがいいと提案。

確かにギリオン…もといオリジンもいる以上、どんな罠が仕掛けられているか分からない。

この状況下でもしもシンボルストーンとミカを奪われるようなことがあれば、アムニスフィールドが手遅れになる可能性すらあるのだ。

だがミカは、それでも付いていくことを決意。


「…私は行くよ。私のせいでこうなったんだし、それに、……皇帝を何とかして止めたいの」

「だが、それでもしも万が一のことがあれば!」

「お父さん達を…あんな兵器を造るために殺されて、それでたくさんの人々が悲しんで…それなのに黙って待っていることなんてできない。だから私も!」

「……あんたの気持ちも分かるけどさ、ザウバー。むしろ単独行動のほうが危険じゃないかと思うんだよ。空間を自由に移動できるファントムが相手なら、尚更ね」

「それだったら、ミカが近くにいたほうが守りやすいってもんだろ」

「ルルも、ミカちゃんをお守りするの!」

「僕も…ミカを守る!それにミカだったら、いざとなったらウェルテクスの力を使えば、誰よりも強いんだし」


ミカが必死で説得する横に、イーヴリンが割り込む。

バーガーやルル、更にはユーテキもミカを同行させるべきだと言い始め…

はあ、と盛大な溜息をつきながらも、大多数VS1では勝ち目がないも同然だと思ったか、最終的にはザウバーのほうが折れていた。

ルーク枢機卿はいささか不安を覚えていたようだが、ミカなら心配は要らないだろうと思い、こう話していた。


『空間を自由に移動できるファントムが相手なら、船で向かっては手遅れになる可能性もある。……転移魔法を使える者を、そっちに寄越そう』

「ああ、頼む」

『それから…アパロス島は自然が多く、地元の人間かガイドでなければ迷いやすい。ソウセイも同行させておけば、何かと役に立つだろう』

「……あいつなら、アパロス島のガイドもできそうだな…」

「リーリエリヒト大陸内なら、尚更ね…」





ソウセイやゾゾと合流し、晴人達がアパロス島に向かった…

その同時刻。

シンクやヒスイは、救護メンバーと一緒になって共和連合軍の人々の手当てをしていた。

そこにコハクが現れ、シンクは明るい笑顔を見せながら抱きついていた。


「父ちゃん!…あれ、ソウセイ兄ちゃんは?」

「少し用事があって、別行動することになったんだ。今頃は、アパロス島にいるだろうな」

「えーっ…まあいいや、兄ちゃんも色々忙しいもんな」

「ええ、そうね。でも、それだけ皆さんの力になれているってことなのかもしれないわね」


そうしていると、彼らの元に一人の人間がやってくる。

左目には眼帯をつけている、青い髪の男…

それを見たコハクは一瞬ザウバーを思い出していたが、ヒスイが首を傾げながら尋ねる。


「あの…どうかしましたか?」

「いや、仲のいい家族だなぁ、と思って」

「「はあ…」」

「それで兄ちゃん、あんた誰?」

「ああ、そうだった。僕は…サウル、ただの放浪者だよ」


そう言いながら、サウルはコハクにある物を渡す。

――それは水のように美しい、綺麗な石の塊

例えるならそれは、アムニスフィールドと同じぐらいに綺麗な青…



「これ…は?」

「オリジナルJM」

「…これが、か?」

「JMって…確か、こんぐらいちっちゃな宝石じゃなかったっけ?」

「だと、思うけど…でも……」


コハクやヒスイは、信じられないような顔で“オリジナルJM”と言われたそれを見る。

JMは一般的に、宝石ぐらいの大きさの石…

晴人の使っているウィザードリングよりは、多少小さいぐらいだろう。

しかしサウルの持ってきたそれは、直径15cmぐらいはある大きな石。むしろ持ち運びできる岩だ。

サウルはニコニコと笑顔を見せながら、コハクに頼みごとをしていた。


「これを、暫く預かっていてほしいんだ。……それが必要になる日が来るその時には、僕は多分ここにはいないだろうから」

「…しかし、必要な時が来ると言っても…こんな大きな石を使えるジェネレーターなんて、存在しないのでは」

「大丈夫。この石の声に耳を傾けて削れば、力はそのままに…このJMの力を使うことができる」


そんなこと言われても、とドラジウ一家は一斉に石を見る。

そして、やはり返したほうがいいのではないかというヒスイの言葉で、コハクはサウルに石を返そうとするが

――既にサウルの姿は、そこにはなかった。




「……え?」

「さっきまで、そこにいたのに…」

「…もしかして、お化け…?」

「いや、それは…多分…ないだろう。多分」

「え、ええ…恐らく」

「だよねー…お化けなんて、いるわけないよ……きっと」


「「「…はははははは……」」」






〜〜〜






ゾゾ・ソウセイと合流した晴人達は、アパロス島にある海辺の町・フリッシュに到着。

ソウセイの話では、この町から北西に向かった先に、ルシーラ公爵が構えている屋敷があるそうだ。

ゾゾは朝から転移魔法の連発で疲れているようで、仕方なく彼はこの町で休ませていくことになる。

すると…

海の向こう側に霧の強い場所を見つけたルルは、声を上げていた。


「ねえねえ、あそこ、すっごく霧が濃いよぉ!」

「…本当だ、まったく見えない」

「あそこは、かなり昔から深い霧に覆われていて…霧の中を調べようとすると、必ず元来た場所に逆戻りしてしまうそうですよ。前に、ビスマルク港の方から聞きました」

「まるで、アウデンティアの魔法の霧だな…」


ソウセイの話を聞きながら、バーガーは遠くに見える霧を見る。

確かに原理は同じなのだろうが、魔法の霧を発生させるのにもかなりの力が必要だ。

海岸沿いに住まう人間が、その霧を見かけない日がないということは…かなりの長い年月の間、あの場所に霧が張られていることになる。

ユーテキも「一体どうなっているんだろう」と呟きながら、ちらりとミカを見る。

…すると、ミカは不思議そうな顔をしているのに気付き、声を掛けていた。


「…ミカ、どうしたの?」

「ユーテキ。……うん、なんか、あの霧の向こうに…何か、懐かしいものを感じるような……そんな不思議な気分なの」

「あの霧の向こう…って、誰も行ったことのない場所なんだよ?それにミカ、ここに来るのは初めてじゃないの??」

「初めて、だと思うんだけど…どうしてなんだろう……」



そんなことを言いながら、ミカは軽く亀裂の入ったアムニスフィールドを見る。

――思えば、アムニスフィールドにヒビが入ったその日から、“何か”の声が聞こえてくる…

だが、どうやらそう感じているのはミカだけで、晴人達に聞いても何も聞こえないと言う。

ミカと一番繋がりのある、ウェルテクス一族の力を持ったザウバーですら…だ。

一方で、サウルも声は聞こえていないものの…何となくミカが感じている“何か”に見当が付いている様子なのは、明らか。

今度サウルに会った時聞いてみようかな、とミカが考えていると、ソウセイが地図を広げて話し始める。


「ルシーラ公爵のいる屋敷までの道のりは、地元の人間でも迷いやすいんです…なので、ルートを外れることがないようにお願いします」

「…だとさ、瞬平。ユーテキ」

「ええー!?晴人さん、酷くないですか!!?」

「そうだよ!それに、僕達よりルルのほうが…」

「ルルは転移魔法ですぐ合流できるだろ。…お前らは迷子になりやすい上に、酷い目に遭うのがデフォルトだからさ……本当に気をつけろよ?」

「「…ぐすっ」」


晴人の言い分に、ユーテキと瞬平は顔を手で覆う。

…しかも、ミカや凛子を初めとした他の面々も、晴人に同意する始末…

一番酷かったのは凛子の、「手錠付きロープで引っ張れば迷わないんじゃ?」

安定した自分達の扱いに二人は涙し、ソウセイやゾゾは苦笑ぎみ。

そして、ゾゾだけをフリッシュに残し、残りは全員ルシーラ公爵邸に向けて歩き始めていた……






予め話がされていた通り、公爵邸までの道のりは迷いやすい。

だが、それでも晴人達はソウセイの案内にしたがい、足を勧めていく。

道中、モンスターが襲ってくることはあったが、今の彼らには敵わないものばかり。

ユーテキもミカと旅をするようになって、かなり強くなっているのも事実。最初の頃、大怪我をしてすぐアップルグミのお世話になっていた彼とはまるで別人だ。

そして…


「見えました。あれが、ルシーラ公爵邸です」


目の前には、白く美しいお屋敷。

周囲にある庭園の樹は、たった1本を除いて綺麗な花を咲かせており、噴水の水も湧き出ている。

自然に囲まれたこの空間に住んでいるのだ、恐らく心の美しい人間が住んでいるに違いない…

瞬平はそんなことを言うが、凛子は腕組みをしながら「そうかしら」と呟く。


「イシュトヴァーン皇帝を匿っている可能性があるのよ?…本当にそういう人なのかしら」

「で、でも、惚れた弱みっていうのもあるかもしれないじゃないですか!」

「まあ…そうかもしれないけど」

「とりあえず、話を聞いてみましょうよ。――あのー、すみませーん」


瞬平が大声を上げ、ルシーラ公爵を呼ぼうとする。

しかし、反応はまったくない。

続いてミカやルルも「こんにちはー!」と叫ぶが、やはり反応はない。

どういうことなのだろう、と晴人が扉に手を掛けると…鍵が開いているようで簡単に開く。

そのまま晴人は中に入り、コヨミやミカ達もその後を追うように部屋の中に入る。

すると…2階へと上がる階段の先に、一人の女性が倒れているのが見えた。

女中にしては白く美しいドレスを着ており、顔立ちも瞬平が一目惚れしてしまいそうになるほど。



「……あんた、大丈夫か!?」

「しっかりして!」

「…う、……あなた達は…?」

「話は後で!とりあえず、近くの部屋で休ませましょう」


凛子の言葉に、イーヴリンやミカが協力して女性を運ぶ。

…ここで男手を借りないのは、「変なところ触ったらセクハラ」になるからなのだろうか。

近くにあった部屋のベッドに女性を横にさせると、ルルは魔法で水を持ってきて、女性に飲ませようとする。

その際、女性は念のために持っていた薬を一緒に飲み…

少し落ち着いたのか、ミカ達に礼を言っていた。


「……どうもありがとうございます。私、昔から病気がちで…さっきも、ノックの音が聞こえたから部屋を出ようとしていたら……突然、発作が起きて」

「ってことは、ここに住んでるのか?」

「じゃあ…もしかして、」

「私はルシーラ、【白の貴族】と呼ばれるものです」


――この女性が、ルシーラ公爵

それを聞いたミカは、早速イシュトヴァーンの居場所を聞こうとしていた。

だが、イーヴリンは「待った」をかけ、何人かを集めて注意を促す。


(……いい?イシュトヴァーンの居場所に関して…こっちが奴を追っているような空気を出したらいけないよ)

(えっ、どうして?)

(ルシーラ公爵を警戒させてしまうからさ。……ここは、それとなくイシュトヴァーンに関する話題を撒いて…情報を聞き出すんだ)

(さっすがイヴさん、話術に関してはかなり詳しいね!)

(分かったの!)




作戦会議が済んだ所で…

ルルは早速、ルシーラ公爵に話をしていた。


「ねえねえ!皇帝って何処にいるか知ら…」

「「「馬鹿ーッ!!?」」」

「いや、違うんです!えーと、その……あっ、今日はいいお天気ですね!?」

「ユーテキ、それ誤魔化せてない!ええと…きょ、今日の昼食は鯖味噌なんて…」

「ミカそれ絶対違うだろ!?…皇帝……そうだ、皇帝ペンギンって知ってるか!」

「そうじゃないですよバーガーさん!?あー、えっと…こうてい……校庭でランニングしたいですねー!」

「ちょっと瞬平、校庭って…ここ学校じゃないから!ええと……ここに来るまでの行程はかなり大変だったけど、ルシーラ公爵は大丈夫なんですか?」

「あ、そうそう、ここの土地って高低差が凄いありますよねー!」

「凛子ちゃん…それもどうかと……ここの公邸は綺麗ですねー、とか、他にあるだろ」

「…あんた達ねぇ…」

「み…皆さん落ち着いて……あぁ、もうメチャクチャだ…」


ルルの発言から総崩れになっていくミカ達。

イーヴリンも頭を抑え、ソウセイも両手で顔を押さえるほど。

…途中から「こうてい」ギャグになりつつあるし。

ルシーラがそんな彼らに多少の不信感を抱いていると、ザウバーが話を盛大に反らし始めていた。



「……庭の苗木だが、あれは誰が手入れしているんだ?」

「庭師の方が。それが…どうかしましたか?」

「いや、…一本だけ花をつけていない樹があって、それが気になっていたんだ。それに、あの噴水…」


ザウバーの言葉に、ルルが窓から噴水を眺める。

すると…

その噴水は上からよく見れば、セラピアの町の水源JMの安置所と似たような紋様が掘られている。

それだけではない。噴水自体も、水源JMと似たような装置によって水が湧き出ているのだ。


「あ!セラピアの水源JMと同じだぁ!!」

「凄いポポ!でも、これがあるってことは…」

「もしかしてルシーラ公爵、ウェルテクス一族と関わりがあるんですか?」

「…はい。私が小さい頃、ウェルテクス一族の方がこの屋敷にやって来て…あの噴水を作ってくれたのです。そしてその際に、苗木を一本植えてくれて」


ルシーラの話では…

ウェルテクス一族はルシーラの両親から、病気がちで屋敷の庭でしか遊ぶことのできない彼女のために庭園を作りたい…そのため無尽蔵に水が湧き出て、緑を保つための噴水が欲しいと依頼していたのだ。

その依頼をステラとバグバードは受け、アパロス島に向かい、セラピアに設置した水源JMを応用した技術で噴水を作り上げ…

更に、バグバードの案で白い花を咲かせるバラの樹の苗を1本、植えたのだ。



「――ですが、その苗木は11年前にウェルテクス一族の方々が亡くなってから…花を咲かせなくなりました。まるで彼らの死を、悲しむかのように」

「「「…」」」

「世間ではリーリエリヒトが…イシュトヴァーン様が事故に見せかけ殺したのでは、という噂が立っていますが……到底信じられないのです。あの方が、そのようなことをするなんて…しかも、あんなに優しい方々を」

「ルシーラ公爵…」


心配そうにルシーラを見つめるミカ。

しかし…

そんなミカの瞳を見て、ルシーラは何かを思い出し、声を上げる。


「……あなたの瞳、ステラさんにそっくり」

「え?」

「アムニスフィールドの美しい蒼を思わせるような、透明感のある綺麗で…真っ直ぐな目。……とても素敵ね」

「あ、ありがとうございます」

「ところで、あなた達はここへ何をしに来たのですか?」


ルシーラの問いかけに、「やはりそう来たか」と晴人達は頭を抱える。

…いつか聞かれることとはいえ、これ以上誤魔化せないのも事実。

晴人はふう、と溜息をつくと、ルシーラに話を始めていた。




「――そんな。イシュトヴァーン猊下が、そのようなことを…」



話を聞いた当初、ルシーラは酷く落ち込んでいた。

無理もない。これまで敬愛していた皇帝が、世界を手にする野望に囚われ…アムニスフィールドを崩壊させていると知れば、誰だってショックを受ける。

一方でユーテキは、皇帝の居場所を知らないかルシーラに尋ねるが…

彼女はイシュトヴァーンに会っていないらしく、首を横に振っていた。

その一方でショックが大きかったのか、暫く一人にして欲しいと言い出す始末。

無理もない、と思いながらも、ミカ達はルシーラが落ち着くまで一人にしておいたほうがいいだろうと思い、部屋を後にしていた。


「…何とか元気付けられないかな」


部屋を後にしながら、ミカがポツリと呟く。

彼女の意見には晴人達も賛成しているのだが、どうやって元気にすればいいのか分からずにいる…

そうしていると、瞬平が「そうだ」と案を出す。


「晴人さん!ルルちゃんの魔法の力で、ミカちゃんの家族から貰った樹に…花を咲かせるっていうのはどうでしょう!?」

「…そうか、それならきっと喜んでくれるはずだ。……だけど、問題は果たして魔法で解決できるのかってところだが…」

「大丈夫なの!ルルの魔法は、枯れ木にも花を咲かせられるんだからぁ!!」

「……何処の花咲か爺さんだ?」



ルルの言葉にザウバーが静かに突っ込みながらも…

庭に出て一本だけ花をつけていない樹のところに向かうと、ルルは早速魔法の粉を呼び出す。

…まさしく花咲か爺さんだな…

バーガーや晴人がそう思いながら、粉を振り掛けるルルを見ている。

だが、効果はないようで、ルルも「あれ?」と首を傾げていた。


「…おかしいなぁー、今頃、チューリップやひまわりが咲いてるはずなのに」

「謎ポポ」

「いや…待って、樹にチューリップやひまわりが咲いたら……それこそ絶叫ものだよ?逆にルシーラさん、寝込んじゃうよ……??」

「いっそ、ザウバーのウェルテクスの力で活性化させるとか」

「動かないものを一時的に再起動させることならできるだろうが…この樹は枯れていない、まだちゃんと生きているものだ。……生きているもの相手にちゃんと作用するかどうか」


うーん、と考えるユーテキ達。

ミカも、自分の両親がルシーラに贈ったという樹を、優しく撫でていたが…

彼女の手が触れた瞬間、ルルの魔法の粉の効果がやっと現れたのか、満開の白い薔薇を咲かせ始める。

屋敷にあるどの樹よりも美しく、気高い白薔薇の樹…

「凄い」と感嘆の声を上げる凛子とコヨミだが、そんな彼女達の後ろから、異変に気付いたルシーラが現れていた。




「!……ステラさん達から貰った、あの樹が…」

「「「ルシーラ公爵!」」」

「凄いでしょ!ミカちゃんが触れたら、いきなりたくさん花が咲いたんだよ!!」

「ええ…本当に、……綺麗…」


白い薔薇の樹を見つめながら、ルシーラは一粒の涙を零す。

そして、慌ててその目を擦ると…

思い出したことがあったのか、「そうだわ」と近くにいたソウセイとザウバーに言う。


「……そういえば、山を挟んだ北東の森の中にある研究所…そこは、かなり古くからあるアムニスフィールドのエネルギーをコントロールする施設があるんです」

「アムニスフィールドのエネルギーを…コントロール?」

「はい。そこではウェルテクス一族も時折、訪れていたみたいです…もしも猊下がここに来る用があるとすれば、そこの可能性が高いかと」

「…確かに、他に手がかりがあるとするならばそこしかないだろうな」

「ええ。――お願いします、何としても猊下をお止め下さい。……ウェルテクスの方々の技術を悪用して、アムニスフィールドを傷つけるようなことは…あの方達も、望んではいないでしょうから」


ルシーラの言葉に、ミカは大きく頷きながら「任せて」と頼もしそうに言う。

ソウセイは地図で場所を確認し、晴人達を案内し始める…

そんな彼らを見送りながら、ルシーラは小さく呟いていた。


「……ステラさん、バグバードさん…」






***




何故か書くのに1週間近く掛かった。

まあ、合間合間にNOVEL大戦のやつ書いてたからなんですが。

ちなみにこの時点で、第5部の5話まで書き終わってます。大戦。


流石に、ルピートは生きてましたねw

いや、かなり加減をしてあったみたいなので、当然といえば当然なんですが。

しかしデュラェ…

事態は一刻を争うものになってきていますね。最初からそうでしたが。

でも…

何か最近の傾向だと、ミカの発案がDCDRW時の某もやしレベルに失敗フラグ満載だなw

ついでに、ザウバーの意見の聞き入れられなさはDCDRW序盤のエイジスを髣髴とさせているという…

しかし、遂にコハク・ヒスイ・シンクにまで「お化け」と言われたサウルェw



やっぱり、霧のある島って今後(と言っても最終章)で行くフラグ満載ですね。

しかもそのフラグ、ミカが立てちゃいましたし。

瞬平とユーテキは安定している扱い。


ルシーラ公爵への失言レベル凄まじいなお前らw

ザウバーのフォロースキルがどんどん上がっていくだろ!こいつがいなくなったらどうするんだお前ら!!

…まあ、その時はソウセイが頑張るんでしょうが。

そして、ミカが触れた瞬間に花が咲いた件に関しては…特別な力を使ったわけではなく、しいて言えば樹自体が「ウェルテクス一族の血を持つものの生存」を理解+ルルの粉の力で花を咲かせた……という不思議ミラクル。




次回は…

ザウバーはそろそろ怒っていいと思うぞw