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タイトル未設定 - Magic50:ミカを探せ

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Magic50:ミカを探せ

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突如現れた、人工ファントム・マクスウェルとオリジン。

彼らはこれまで友好関係を築いてきていたイシュトヴァーンを裏切ると、マクスウェルの攻撃でイシュトヴァーンは跡形もなく消滅していた。

これまで、ルキナを…そしてアムニスフィールドを傷つけていた男の死。

世界を手にする野望の行く末としては呆気ないものであったが、それよりもウィザード・ウォータードラゴン達はマクスウェルの攻撃の威力に驚いていた。

人間一人を消し飛ばしただけでなく、周囲の機材にも大きな穴を開けるほど…

吹き飛ばしたものの中には、JMの力を制限するための遮断装置の本体と言える物があり、ミカの姿は元に戻っていたが…急にアムニスフィールドの恩恵を受けられなくなり、疲労していた。


「な、なんてデタラメな威力なんだ…!」

「イシュトヴァーンを消し飛ばすほどの力、…確かに…強すぎる……」

『このようなもの、私が求める究極の兵器に比べれば…ちっぽけなもの。シンボルストーンと、ウェルテクスの娘・ミカ……これらが揃ってこそ、究極の神の剣が完成する!』

「…!」


そう言って、マクスウェルは近くにいたミカの腕を掴む。

いくら聖獣になる力があるとはいえ、疲労している少女を捕まえることなど容易い…

ユーテキやバーガーはミカを助けようと立ち向かうが、その前にオリジンが立ちはだかる。

バーガーは近くにいたザウバーやウィザードWDと連携し、オリジンに接近戦を挑んでいる間にユーテキとルルが術での援護射撃を行う…という作戦だ。

イーヴリンはというと、非戦闘員である瞬平・凛子・コヨミを盾にでも取られたら一気に不利になると思い、彼らの護衛を買って出たのだ。

しかしオリジンは3人の同時攻撃を容易くいなし、ルルの“グランドダッシャー”やユーテキの“シルフィスティア”を食らっても涼しい顔。


「ぜ、全然効かないよぉ!?」

「くうっ…!」

『行きましょう、シラス様。……“あの場所”で、新たなる世界の始まりを行うのです』

『…確かに“あそこ”ならば、滅多に立ち入ることはできませんからなぁ。くくく…長い年月だったが、これで、この私が絶対的な力を手に入れ……世界の頂点に君臨することができる!ふはははははは!!』

「離して!――ユーテキ、晴人、…皆ぁっ!!」

「ま…待てッ!」

「「「ミカ!」」」



ユーテキが手を伸ばそうとするが、その前にオリジンの能力によって…マクスウェルとミカ、オリジン自身がその場から姿を消してしまう。

…こうなることは分かっていたはずなのに

…少し考えれば、分かるはずだったのに

…少なくともザウバーはこの事を予想していた、【最悪の事態】が来る可能性を

…なのに!

ユーテキは自分の愚かさが憎らしくなり、何度も床を叩く。

そんな彼を見て、コヨミやルルはどう声を掛けていいのか分からずにいたが…

「ふっふっふ」と瞬平は、得意げに話していた。


「……大丈夫です、皆さん!希望はまだあります!!」

「「「え?」」」

「どういうことだ、瞬平」

「実は僕…晴人さんに予め、クラーケンを貸してもらえないか頼んでいたんです。そして、予めミカちゃんの服に忍ばせて……」

「――そうか、クラーケンを通してコヨミの水晶玉で見てもらえば!」

「コヨミ!」

「…分かってる!今、様子を見てる……!!」


瞬平の機転によって、繋がれた希望。

コヨミはバーガーやウィザードWDに訊ねられるよりも前に、水晶玉でクラーケンの視点からミカのいる場所を突き止めようとしていた。

――最初に見えたのは、空。

澄み渡るほどの蒼い空…そして、近くには石碑のようなもの。

しかし、突然視点が変わり、今度は森の中。

だがこの森はどこかで見たことがある…そして、森の少し先に見える白い屋根の屋敷。


「これは…」

「もしかしたら、ルシーラ公爵邸かも」

「でも、最初の光景とは違うわね…撹乱かしら?」

「とにかく、行ってみよう。……何にせよ、ここから近いのは分かっているんだ!」




水晶玉の光景を見て、すぐさま研究所を飛び出す晴人達。

その途中でソウセイと合流するも、彼に構わず走り出していく…

「一体どうしたんだろう」とソウセイが首を傾げつつも、最後尾のルルの後ろをついていくように走り、ルシーラ公爵邸周辺の森まで戻る。

だが…

そこで彼らを待っていたのは、しょんぼりと頭を下げるクラーケンの姿。


「クラーケン!…ミカはどうしたんだ?」

『ビチビチ…』

「もしかして、見失ったの…?」

「というより、最初は瞬平の思惑通りに進んだ。だが、相手がそれに気付くのが早すぎた…だからこそ、オリジンの能力でクラーケンだけここに戻されたのだろう」

『ビッチビチ』


ザウバーの言葉に、クラーケンは申し訳ないと思いつつも、何度も頷いていた。

…確かに、ヴィルギニアやオフレッサーならともかく、オリジンやシラスがこんな簡単なものに気付けないわけがないのだ。

これで、振り出しに戻ったというわけか…

誰もがそう思いながらも、事情は大体理解したソウセイが、晴人達に提案する。


「とにかく、ゾゾ君の待つフリッシュの町に戻りましょう。そして、一度リーリエリヒトに戻って……体勢を立て直すんです」

「だけど、そうしている間にミカが…!」

「ミカちゃんが浚われたのなら尚更、慎重に行かないと。……それに、敵も捕まえてすぐ彼女の力を思い通りに使えるはずがない…少なくとも晴人さんの力がなければ、制御はできないんですから」



その言葉に、ユーテキやルルと言った、気持ちばかりが逸って冷静な判断ができなくなっていた者は落ち着く。

…確かに、ミカの力はそう簡単に扱えるものではない…

たとえ【鍵】と【石】が揃っていたとしても、ミカが自分の石で【鍵】の力を…聖獣の姿を解放しない限りは、アムニスフィールドの全エネルギーを操ることなど不可能なのだ。

唯一ありえるとすれば“ミカを怒らせること”だが、その場合は聖獣の力の制御が利かず、あらかた殲滅するまで暴れ続けるだろう…そんなリスクを負うような真似は、敵もしないはずだ。

ザウバーも腕組みをしながら、ユーテキに話す。


「…ソウセイの言うとおりだ。お前の気持ちは分からなくはない、……縛り付けてでもミカをここに来させるんじゃなかった…俺だってそう思っている」

「ザウバー…」

「だが、過ぎたことを悔やんでいても仕方がないのも事実だろう。今は前を見て、――次にどうすればいいのか…何処にミカ達がいるのか、考えることが大事だ」

「……そう、だよね。…駄目だな、僕、もっとしっかりしないと」


自分を励ましてくれていることに気付いたユーテキだが、同時に、複雑な思いを感じていた。

…ミカを目の前で連れ去られて、己の無力を一番悔やんでいるのは…

他でもない、ザウバーなのだと。

晴人達もそれは充分理解しており、とにかく今はリーリエリヒトに戻るため、海辺の町・フリッシュまで戻っていた。






〜〜〜






――リーリエリヒト帝国。

そこではカルラやパヴェル、ベックフォードにウォルフガングと言った、自由連合軍のトップ達が集まっていた。

彼らだけではなく、指導者のいなくなったリーリエリヒト帝国の混乱を収めようと奔走しているルーク枢機卿や、アーヒバルド・ブリュンヒルド・フィルギニアの三貴族、これまで何度か晴人達の助けになってくれたレヴィーもいる。

晴人達の帰還に誰もが驚き、更にミカがいないことに気付いたレヴィーはそのことについて訊ね、晴人が代表して説明をしていた。

…死んだと思われていたシラスが、人工ファントム・マクスウェルとして現れたこと

…マクスウェルの力により、イシュトヴァーンが死亡したこと

…11年前のウェルテクス一族暗殺は、裏でシラスとギリオンが糸を引いていたこと

…そして、シンボルストーンを手に入れ、ミカも敵の手に落ちたこと

話を聞いていたレヴィーは視線を落とし、ウォルフガングは晴人達にミカの居場所を尋ねていた。


「……そうか、そんなことになっていたのか…」

「それで、ミカという少女の居場所に検討は…?」

「俺達にも、よく…恐らく、タルボット博士の言っていた……【神の剣】の本体のある場所だとは思うんだが」

「その特徴は、どんな感じでしたか?」

「…空!お空が見えたよ!!」

「それから、石碑みたいなのも見えたポポ!」


パヴェルに訊ねられ、ルルとポポが答える。

瞬平が忍ばせていたクラーケンが見た、最初に飛ばされた場所…

“空が見え”、“石碑のある場所”など、考えれば何処にでもある。

外であるのは間違いないのだが、その後で屋内に移動したことも考えると、やはり大した手がかりにはならないだろう…



しかし。

ソウセイは暫く考えた後、記憶力に自信のありそうなイーヴリンやザウバーに訊ねていた。


「イヴさん、ザウバーさん、質問してもいいですか?」

「構わないけど」

「…何だ?」

「――空が見えたとルルちゃんが言ってましたけど、空のアムニスフィールドはどんな感じでしたか?」

「どういうことなの、ソウセイ君」

「空が見えたと言うことは、アムニスフィールドが少なからず見えていると言うこと。……現在、アムニスフィールドは兵器の使いすぎで亀裂が入っている…その亀裂の状態やクラーケンの見た位置からの距離によっては、大体割り出せるかも……」


凛子の問いかけに、ソウセイは半信半疑ながらも答える。

…確かに、今現在のアムニスフィールドは、【神の剣】の乱用で亀裂が入っている。

だが、兵器の落とされた場所によっては亀裂の状態が異なり、現に、兵器を一度も使われたことがないダティーバ大陸の空の亀裂は他よりも小さい。

それとは対照的に、国内で何度も落とされたリーリエリヒトから見えるアムニスフィールドの亀裂は、後1発でも使えば完全に壊れてしまうほど。

亀裂の状態によっては、何処の大陸にいるのか大体の目星が点くだろう。


「……私が覚えている限り、亀裂は肉眼でも見えたけど…その状態からして、リーリエリヒト国内である可能性は高いかもしれない」

「上空のアムニスフィールドに亀裂が入っているとはいえ、肉眼で観測できるんだ…ウェルテクス社の空中庭園よりは高い場所だろうな」

「…うーん、これだけじゃあ全然分からないよ…」

「もっとヒント!」

「……待てよ、俺は石碑のほうに見覚えがあったような気がするんだが」


“石碑に見覚えがある”と言ったのは、バーガー。

彼の発言に、流石の晴人達も一斉に彼を見る。

もしもバーガーが石碑のことを知っているのだとしたら、クラーケンが最初に見た光景の場所を割り出せるかもしれない。

誰もが期待と不安が入り混じるような目でバーガーを見、彼は軽く頭を掻いた後、話していた。




「……港町パテオで、晴人達も見ただろ。ありゃあ、ラディス教の石碑だ」

「「「ラディス教の…」」」

「「「…石碑?」」」

「――まさか…そんなはずはッ!」


バーガーの言葉に、一番声を荒げていたのは…ルーク枢機卿。

彼はどうやら、これまでのヒントで判明した“場所”が分かるのだろう。

今度はルーク枢機卿に視線が集中し、誰もがごくりと息を飲む。

だが…

ルーク枢機卿は何度も「ありえない」と呟きながら、晴人達に話していた。


「確かに、“あそこ”ならば総ての条件に一致するだろう…だが、あの場所にウェルテクス社の兵器を搭載できるはずが…!」

「どういうことなんだ?」

「お前達は知っているはずだ。他でもない、その場所に乗り込んだのだからな」

「…も、もしかして…」

「聖地ラディウスにある…」

「…ラディウスの聖窟?」


『自分たちが乗り込んだことのある』場所。

そう聞いた瞬平・凛子・コヨミは、大体の見当がついたようだ。

ユーテキ達も、同じ場所が連想されたようで、何度も頷く。

しかし納得できないのは、ラディウスの聖窟は大聖堂の先にある洞窟の中に作られており、そこから空が見えるはずがない。

その事は即座に晴人が指摘したが、ソウセイによってすぐ返されてしまう。


「だが、ラディウスの聖窟から空は見えないはずじゃあ…」

「もしかして晴人さん、一般信者用の参拝道のことを言っているんですか?」

「一般信者用?」

「はい。…確かに、聖海騎士団が各地から奪ってきたオリジナルJMは、その参拝道のコースを外れた先にある安置場所に作られていますが……ラディウスの聖窟には、ラディス教の聖職者でも限られたものしか入れない場所があるんです」

「そう、ソウセイの言うとおりだ。――その場所に入れるのは、教皇であったイシュトヴァーンは当然として、私のような枢機卿の座に就いている者しか入ることは許されないほどだ」



ルーク枢機卿の話によれば…

“一般の信者”というのは聖海騎士団に所属する者も含まれており、隊長であったバーガーも例外ではない。

しかし、教皇だったイシュトヴァーンや、ルーク枢機卿といった“枢機卿”の名を与えられた聖職者でしか入れない、神聖な【神の祭壇】に続くための道も存在していたのだ。

【神の祭壇】はリーリエリヒト大陸内でも一番高い山岳地帯に作られた聖地ラディウスの中でも、最も一番高い場所にある。

しかも、そこから見える空は……空気が澄み切っているせいか、アムニスフィールドが時折ではあったものの、肉眼で見えるという。

「きっとそこだ」と叫ぶ晴人や瞬平だが、それに待ったをかけたのはユーテキだ。


「だ、だけど、話を聞いている限り…かなり神聖な場所なんでしょ!?しかも、ルーク枢機卿の目が届かないわけがないし……そんな場所に、どうやって兵器を置いたのさ!!?」

「…確かに。入るだけなら、あっちは空間転移のできるオリジンがいるから分かるけれど…あんな大掛かりな装置があったら、普通はばれるだろうね」

「その通り。……私も君達がシラスの研究所に向かった後で、城の地下にあった兵器を見たが…あのようなものがあれば、すぐに分かる」

「…また振り出しに戻っちゃうのぉ?」

「謎は深まるばかりポポ〜」


折角ミカの居場所が分かったかもしれないと言うのに、振り出しに戻る…

ルルとポポが頭を悩ませ、バーガー達もお手上げと言わんばかりに顔を顰める。

そんな時だった。

晴人がポツリと、こんなことを呟いたのは。


「――もしかしたら、俺達は思い違いをしているのかもしれない」

「晴人?」

「城の地下にあったウェルテクス社の兵器は、もしかしたら俺達に“その大きさ”を確認させるためのものだったんじゃないのか、って思うんだ」

「「「!」」」

「あ…そっか!そうだよ、何もあれぐらい大きいものじゃなくても…システム面さえ問題がないのなら、小型のコントロール装置でも事足りる!!」

「確かイシュトヴァーンも、小型の遠隔操作装置を使ってJMハンターズギルドに兵器を落としたらしいしね。……盲点だった…」




晴人の言葉に、ユーテキやイーヴリンも指を鳴らしたり頭を抱えたりする。

…そう、何も兵器の性能に、大きさは問題ではないのだ。

彼の言うように、リーリエリヒト城の地下にあったウェルテクス社の兵器が、“このぐらいの大きさのコントロール装置がまだある”と思わせるためのもの。

そうやって誤認させることで、実際の兵器の大きさを惑わせ、万が一に居場所が知られてもいいようにする。

晴人達の側にいずれルーク枢機卿が付くだろう、と仮定すれば、その可能性は高まる。


「それじゃあ、【神の祭壇】という場所で間違いないってわけか」

「…シラスめ…ラディス教の聖地と言われたラディウスの地の中でも、尤も尊く神聖なる場所に……アムニスフィールドを破壊するような兵器を造るとは!」

「とにかく、今すぐにでもミカを助けに行かないと!!」

「――ちょっと待った。どうせあっちも、すぐにその子をどうすることもできないわけなんだろ?だったら、充分に準備してから行ったらどうなんだい?」

「そうそう…それに、……お前ら魔法使い遣いが荒らすぎだって…ちょっとは休ませてくれよー」


ラディス教を、そしてラディスの神を冒涜するようなシラスたちの行動には、ルーク枢機卿も怒りで肩を震わせる。

居場所が分かり、ユーテキが急いで【神の祭壇】に向かおうとするが…

アーヒバルド公爵やゾゾに止められ、特に転移魔法を使いっぱなしのゾゾの疲労は激しい。

ルルも転移魔法を使えることは使えるのだが、彼女は晴人達にとって貴重な戦力でもある。

アウデンティアに住む他の魔法使い達も色々と事情があるため、フリーで動けるのはゾゾしかいない状況…だとしたら、彼の回復を待っている間に装備や防具などの準備を済ませつつ、自分達も戦いのダメージをなるべく回復させたほうがいいのは明白。

ユーテキはまたも自分の気持ちが先行してしまった、と反省しつつ、頭を下げていた。



「…そうだね、……ごめん」

「まあいいさ。ミカちゃんって、あの海のような綺麗な瞳の女の子だろ?あ〜んな可愛い子がシラスなんかに連れて行かれたら、誰だって心配するよなぁ」

「御託はいいから、いい装備があるなら見せてもらえないか?アーヒバルド公爵」

「イヴ、どういうことだ?」

「この人は貴族だけど、特に武器や防具の輸入関係に強くてね。そっちのパイプは太いほうなんだ。だから私も、彼から仕入れる情報を買ったり…逆に情報を売ったりしているってワケ」


ああ成程ね、と晴人は納得した様子で頷く。

5色の貴族なら、(キルベルト以外)誰と友好な関係を気付いても問題ないはずなのに、どうしてイーヴリンが女好きのアーヒバルド公爵を“お得意様”としているのか。

そのことが晴人や瞬平、凛子などは疑問に思っていたものの…

アーヒバルド公爵が武器・防具の輸入に携わっているのならば、そこから得られる商人達からの情報はイーヴリンにとっても美味しいネタ。

逆に、アーヒバルド公爵にとっても、イーヴリンから買う情報は輸入をする面での参考になる上に美人の情報屋と来れば、二つ返事で了解しないわけはない。

瞬平は苦笑いをしつつも、横にいたザウバーと話していた。


「そういうこと。今回は、特別に2割ほどまけとくぜ〜」

「タダっていうわけには行かないんですね…」

「【タダより怖いものはない】、とはよく言うだろう。それに、アーヒバルド公爵の仕入れる物の中には、滅多に店に並ばないものもあると聞く…それを2割引で貰えるのなら、むしろ安いほうだ」

「おっ、そっちのオッドアイの奴は話が分かるみたいだな。こっちだって商売なんでね、そこん所よろしく頼むよ」


アーヒバルドはそう言うと、休息と武器・防具の確認のため、晴人達を自らの公爵邸に呼ぶ。

その一方で…

彼らがいなくなった後で、コハクが遅れて顔を出し、近くにいたソウセイに尋ねていた。


「ソウセイ、晴人君達は…?」

「晴人さん達なら、今、アーヒバルド公爵の所へ。……何かあったの?」

「いや、忙しいなら別にいいんだ。邪魔をしても悪いだろうしな。――それで…状況は?」

「仲間の一人が、シラス宰相に捕まって…今、それを何とかするために準備している所なんだ」

「そうか…じゃあ、やはり話はしないほうがいいのかもしれないな」

「伝言とかがあるなら、俺が伝えるけど…」


父の様子に疑問を抱くソウセイだが、コハクは「気にするな」と手を横に振る。

ソウセイはどうしたんだろう、と首を傾げるも、すぐにルーク枢機卿に呼ばれ、【神の祭壇】に向かうためのルートを書いた紙を渡され説明を受けていたため、結局話せずじまいだった。

一方で…

コハクは以前、サウルから渡された石を眺めながら、考えていた。


「……晴人君は不思議なJMで色々な力を使えるから、これのことも何か分かるんじゃないかと思ったんだが…今は無理そうだな。次に、彼らが戻ってきてからにしよう」






〜〜〜






アーヒバルド公爵邸。

そこでは、バーガーやルルが武器や防具を見てうんうん唸っていた。


「……確かに、いくつか珍しいものもあるな…」

「見て見て!このメイドキャップって、全然お店じゃ見かけないんだってぇ!!」

「んー!似合うねぇルルちゃん、可愛いよ〜」


きゃっきゃとメイドキャップを頭につけて遊んでいるルルと、親指を上に立てているアーヒバルド。

…楽しそうな面々である。

しかし、バーガーは店に置いてある装備品を見ながら、ボロッと呟いていた。


「…前から思ってたんだが、セクシーミトンとか簪とか覆面とかハチマキって、装備品か…?特に最初の奴、お前しか装備できないって……」

「うーん、何でなんだろうね?ところでおじちゃん、アイフリードハットのアイフリードって、誰?」

「何だ、お前知らないのか。アイフリードってのは、7つの海を股に掛ける伝説の大海賊なんだぞ。ほら、絵本とかでもあるだろ…【アイフリードの冒険】って」

「あ!それ、ゾゾの家でも見た!!確か…大蛇に食べられかけたけど、偶然持っていた物干竿でつっかえ棒をして、その間に逃げ出せたんだよね?」

「「「………」」」

「懐かしいなぁ…そういえば、家にもあったよ【アイフリードの冒険】…」

「あぁ、だから物干竿という装備があるのか…アイフリードの物語に影響を受けたどっかの馬鹿鍛冶職人のせいで……」


アイフリードという人物を思い浮かべる晴人・コヨミ・凛子であったが…

どうしてだろう、ルピートが人物像として思い描かれてしまうのは。

その気持ちは分からなくはないのか、フリーダムにアイフリードの冒険をそのまま準えるルピートを妄想したユーテキと、自分の装備できる武器について若干の愚痴を漏らすザウバー。

更にルルは、「ねえねえ」と他の装備を見せてきた。


「こんなのもあるよ!メイジフィンガーっていう、ルル専用のミトン!!」

「…。……なんだろう、どうして“メイジ”という名前が、これから数ヵ月後に会うことになるであろう魔法使いの名前なんじゃないかと思えるのは」

「晴人も…そう思ったの……?」

「えっ、コヨミちゃんも!?よかった、私だけじゃなかったんだ…」



……何故だろう、先程から瞬平の姿が見えないのは。

晴人は嫌な予感がし、イーヴリンに瞬平が何処にいるのか訊ねていた。


「イヴ、…瞬平の奴見なかったか?」

「いや…見てないけど。何、もしかして、浚われたの?」

「多分トイレなんじゃないかとは思うんだが、…トイレにしては凄い寒気が」

「――晴人さーん!」


そこに立っていたのは…

使わなくなった装備品を装備した、瞬平の姿。

頭にはユーモラスフェイス。

体にはホワイトローブ。

腕にはホワイトグローブ(※本来ならルルしか装備できないけど無理に頑張った)。

武器はホワイトバトン。

――それを見た晴人の第一声は……


「……お前それ何処の白い魔法使い(残念使用Ver.)だぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

「えっ、駄目ですか!?強そうだと思ったのに!」

「強そう以前に、お前なんでそんな変なお面付けてんの!?ひょっとこになってんの!!?お前にとっての白い魔法使いのイメージってひょっとこなの!!??」

「っていうか、…ないわー…」

「しかも瞬平…無理して手袋を手に填めてるから、手がピチピチじゃない……そして、なんで全部ルルのお古なの…?」

(((むしろ、それでミカを助けに行く気だったんだ…)))

「とりあえず、代表として俺が殴っていいだろうか」

「「「どうぞ殴ってやってくださいお兄様」」」

「えええええー!?」




あまりにもカオスな瞬平に、ユーテキ達も声が出ず…

ザウバーはただ、静かに拳を鳴らす。

妹の一大事にあんな格好で駆けつける気でいる瞬平を見れば、誰だってそうするのだろうが。

そんな彼らに、アーヒバルドは口を押さえて失笑。

そして…

瞬平の頭に拳骨が振り下ろされた後、準備を終えた晴人達は城下町の広場まで向かい、ゾゾと合流する。


「おっ、来た来た!」

「待たせたな、ゾゾ。…そっちは大丈夫なのか?」

「ラディウスに行けるだけの魔力は回復できた。聖窟には、道順をルーク枢機卿から教えてもらったソウセイの案内で、直接行ってもらうことになるけど……大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題ない」


そっか、とゾゾは納得すると…

晴人達と一緒に、聖地ラディウスまで向かっていった。






***




原典じゃあ、一旦大樹の森に行くことになるんですが…

帝国領内でやっても問題ないだろ、ってことで、こうなりました。

そして冒頭で連れ去られるミカ…

――って、この展開を懸念していたザウバーが本当に可哀想なことにw

むしろザウバーの意見を聞かない=その通りになるフラグになりつつあるって…


瞬平の機転で居場所判明!

…にはなりませんでしたねー…

でも、ヒントにはなっているようで。

とりあえずソウセイ…お前、本当はガイドじゃなくて探偵なんじゃないか……?←

むしろ何でも屋…?キョウリュウブルーフラグ……??←



兵器の形や大きさなんて、あまり問題じゃないんですよね。

ちゃんと発射さえできれば。

なので、城の地下で見た兵器とは随分と違う形になっていることでしょう

…絵じゃないと分からない残念ぶりだけどな!←

そして…

どうして後半でギャグになってしまったのかw

お前らミカはどうしたミカは!

瞬平は…うん、きっと緊張の糸を解したかったんだ……ザウバーに殴られたけど。

いや殴って当然だけど。


次回から第6章…つまりは最終章。

6章ではウェルテクスの真相やシラス・オリジンの末路、そして誕生する絶望の化身と盛りだくさん

…10話以内に終わるかな…!

ちなみに、オリジナルスタイルを出す予定ではいます。今のところですが。




でもって次回。

…どうしてあの人は本当に幸薄いんだろうか…