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タイトル未設定 - Magic21:神教

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Magic21:神教

第3章 誰の為に
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港町パテオに到着し、祭りを楽しんでいた晴人一行。

別行動をしていた晴人やソウセイの前に、ラディス教のシンボルを模した石碑に石を投げている子供達の姿があったのだ。

その上、近くの立ち寄り所の神父達が大慌てでやって来て…石を投げた子供達と、近くにいた晴人とソウセイを怒鳴っていた。


「こらっ、お前達…何をしているんだ!」

「これが何なのか、自分達のしていることがどんなに悪いことか…分かっているのか!」

「そこの2人も何をしている!?」

「えっ、いや、僕達は何も」

「ああ。まだ、何も」

「――こんなの壊れちゃえばいいんだ!」

「そうだ!ラディス教なんかあるから、父ちゃんが帰ってこないんだ!!」


わあわあと叫ぶ子供達に、神父達は「この」と拳を振るおうとする。

だが…

見かねた晴人が、「待った」と神父達を止める。


「仮にも神様に仕える身なのに、たかだか子供に暴力を振るうのはどうかと思うけどな」

「何!?」

「それに…この子達の父親が帰ってこない、というのは……どういうことなんですか?」



更には、子供達の言葉を聞き…

自身も帝国軍によって父親を奪われたソウセイも、口を出す。

しかし、神父達が口を出す前に、子供の母親らしき女性がやって来て慌てて彼らに頭を下げていた。


「申し訳ありません、きつく叱っておきますので…どうかお許しください!」

「元はといえば、親がしっかりとラディスの教えを守らせないからいけないのだ!」

「お母さんは悪くないもん!悪いのは、お父さんを連れて行ったラディス教だもん!!」

「…あっかんべーっ!」

「こら、リオナ…ベルム、やめなさい!」


リオナと呼ばれた女の子は目に涙を溜め、ベルムという男の子は舌を出して神父達を挑発する。

そんな彼らに、母親は慌てて二人を抑えようとするが…それで神父達の怒りが収まるわけがない。

我慢の限界とばかりに、彼らは子供に手を上げようとする。

どうしよう、とソウセイが声を上げたその時…

晴人は近くにあったバケツを拾い上げ、“コネクト”の魔法で神父の足元に放り投げる。

――すると、バケツの中に神父の一人が足を突っ込み、そのまま転倒してしまう。


<コネクト、プリーズ>

「どわっ!…な、何だこれは…バケツ!?」

「い、今、いきなりバケツが現れたような…」

「――ちょっと晴人、ソウセイ!何の騒ぎなの!?」

「何かあったんですか?」


更に、別行動をしていたミカ達もやってきて…事態は騒がしくなっていく。

周囲で露店を見ていた人達も、露店商達も、「なんだなんだ」「またラディス教か…」と口々に言いながら集まってくる。

そんな彼らの様子を見て、ミカ達はリーリエリヒトからの船を見た時の、ツァールハイト大陸出身の人間の行動を思い出す。

…やはり彼らも、中立国とはいえリーリエリヒトを簡単に受け入れることはできないのだろう。最近の戦争続きも、それに拍車を掛けている。

ザウバーは近くにいた不気味なお面の男(※バーガー)に声を掛け、あの神父達について尋ねる。


「…おいそこの異民族。あの神父達は」

「ラディス教を広めるための宣教師達だ。ここみたいなところは、まだたくさんあると考えていいだろうな」




「――何をしているのじゃっ!」




騒ぎを聞きつけ、出張の教会から老人が現れる。

彼はどうやら神父達を叱り付けに来たようで、石を投げた子供達に関しては、優しげな顔をしながらその場から立ち去るように告げていた。


「…そこの子供たち、お行きなさい。もう石を投げてはいけませんよ」

「「…」」

「ほら、行くわよ。……どうもすみませんでした、後できつく言っておきますので…」


女性は何度も頭を下げながら、不満げな子供達を連れてその場から立ち去る。

その老神父を見た凛子は、これまで見てきたようなラディス教の関係者とは何かが違うと、直感で感じ取ったようだ…

それは瞬平や晴人、ミカ達も同じ気持ちのようで、首を傾げながらも老神父と若い宣教師達のやり取りを聞いていた。


「何故罰を与えないのですか!」

「彼らの行為はラディス教を侮辱しているもの、子供とはいえ許されることではないはずです!」

「相手はまだ子供…手を上げてはなりません。ラディス神も、子供に対して手を上げるような者に信仰などして欲しくはないでしょう」

「それでは甘いのです!そんな考えだから…ラディスの素晴らしい教えが浸透しないのではないですか!」

「子供のうちから叩き込ませなければ分からないのだ!あなたのような人がいるから、改宗する者がいつまで経っても増えないのです!!」

「……話しても仕方がないようですね。あなた達は、もう戻りなさい」


老神父は深い溜息をつき、悲しそうな目をしながら呟く。

そんな彼に、若い宣教師達は「くっ」と舌打ちしながら教会に戻っていく…

一方で、老神父は晴人達の存在に気付き、彼らが異国人と知るや、深々と頭を下げていた。



「…お恥ずかしいところをお見せてしまいましたね、どうかお気になさらず」

「あ、いえ…」

「あの…あなたは、さっきの人達とちょっと違うというか…無理にラディス教を広めようとしているようには、見えないんですが……どうしてですか?」

「何事も、ゆっくりやるしかないのですよ。新しい教義を理解してもらうには、とても時間が掛かるものなのです」


凛子の問いかけに、老神父はモニュメントをたった一人で拭き掃除をし始める。

先程石を投げられた際、たった少しだけついた土だけではなく…念入りに。

そんな彼を見て、凛子と瞬平は「ますます違う」と心の中で声を重ならせていた。

…これまで出会ったラディス教の関係者は、その殆どが無理やりにでもラディス教を広めようとしている者達ばかり。それこそ、先程の宣教師達のように。

だが…目の前の老神父は今すぐに広めようとするのではなく、時間を掛け、ゆっくりと定着させようとしているのだ。

一方で、不気味なお面を外しながらバーガーは遠い目でラディスのシンボルを眺め…それに気付いたルルが声を掛けていた。


「おじちゃん、どうかしたの?」

「俺は…聖海騎士団にいた頃、さっきの奴らと同じようなことをしてきたんだ」

「「「……」」」

「ラディス教は、お前らも知っての通り…他の国にまで信仰を広めている。中には、さっきの宣教師やかつての俺みたいに、力ずくで……ということも多々ある」

「だけど…バーガーさんは違うじゃない!自分のしていることが間違っているって、誰かの幸せを奪ってまでやることじゃないって…気付けたんじゃない!!」

「そうよ、だから聖海騎士団を抜けたんでしょ!?」


凛子とミカがバーガーを庇うように叫ぶ。

すると、その名前に反応した老神父は…「おお」と昔を懐かしむような顔で、バーガーを見ていた。


「バーガー隊長でしたか。お久しぶりでございます…まさか、このような場所で再会するとは」

「まさか……ジエル神父ですか!」

「えっ、バーガーさんって…あの人と知り合いだったの!?」

「昔、別の場所でな…しかし、まさか…こんなところでもう一度会えるとは…」




バーガーの話では…

昔、ジエル神父と出会ったのはこことは違う別の場所。

そこではラディス教はまったく歓迎されておらず、若き日のバーガーはラディス教を何としてでも広めることに必死だった。

それこそ、先程の宣教師のようなことをしてでも。

そんな時にジエル神父と会い、

『焦る必要はありません』

『焦ってはそれだけ、人々はラディスの神から離れていってしまいます』

『力を振るうことだけが、ラディス教を広めることでも…守ることでも、ないのですよ』

…そう声を掛けてくれたそうだ。

若い時は【若気の至り】とも言えるのか、聞き流していたが……今となっては、暴走するリーリエリヒトやラディス教から抜けるためのきっかけをくれたことにもなる。


「あなたがいてくれなかったら俺は、ずっと何の疑問を持たなかったのかもしれない。…そういう意味では、感謝しています」

「ラディス教を広め、たくさんの人に知ってもらいたいのは…私も、若い者達も同じです」

「でも…私達の知っているラディス教の人達は……」

「そう。あのような力ずくなやり方では、間違った印象のラディス教を広めてしまうのです…本来のラディス教とは、力で支配するようなものではなかったはずだというのに」

「…俺達聖海騎士団も、ラディスの神に背く者は女子供関係なく厳しく罰せよ…と言われていた。今考えると、信じられんがな」


バーガーさん、と瞬平は悲しそうな顔でバーガーを見る。

と同時に、晴人も凛子も…ラディス教について、考えを改めていた。

確かに今は、イシュトヴァーン皇帝の宗教統一戦争もあってか、力ずくでもラディス教を広めるべきだと考える者達が増えている…

だが、ラディス教にもジエル神父のような、力だけでなくゆっくりと浸透させていかなければならないと考える人もいるのだ。

これまでラディス教にいる人々は、大半が他人のことなど省みない人々だと思っていた彼らも、バーガーやジエル神父を見て考える部分があるようだ。


「バーガー殿。何があったのかは聞きませんが…あなたは、あなたの道を歩き出したのです、ラディスの神も…きっと喜んでおいでですよ」

「……だと、いいんだが」



その頃…

先程の子供達のいる家に、宣教師の一人がやってくる。

裏に積まれている木箱に火を点け、彼は「ふん」と鼻で笑いながら立ち去っていた。


「…ざまあみろ」






〜〜〜






「――火事だーッ!」




祭りの見物客の一人が、大声で叫ぶ。

その声に、近くにいた者達は全員驚き…当然、ミカ達も反応する。

声を聞いた晴人達は、急いでその場から立ち去り、声の聞こえた場所まで全速力で走る。

すると…

火事の現場の前では、先程のリオナと言う女の子とその母親がうろたえている。

どうやら出火したのは彼女達の家のようで、母親は激しく動揺しながら、近くにいた男性の前で泣き崩れている。


「誰か、誰か…中にベルムがまだいるんです!」

「えっ…もしかしてさっきの男の子、逃げ遅れた!?」

「ううん、さっきお昼寝するって言って…そのまま寝ちゃったの。私とお母さんは、ベルムを置いて買い物に行って……そしたら家が燃えてるって…」

「――お前ら、ボケッとしてる場合じゃねぇぞ!急いでバケツに水を汲んで来い!!」

「わ、分かった!」

「…だったら俺は、子供の救出を優先する!」

<ウォーター、プリーズ スィ〜スィ〜スィ〜スィ〜♪>


バーガーの掛け声で、ユーテキ・ザウバー・瞬平は消火活動を行おうとする。

凛子とコヨミは母親達を落ち着かせ、晴人は中の子供を救出しようと変身を行う。

ウォータースタイルは家の中に飛び込むと、寝室を探し…少しだけ扉の開いている部屋を勢いよく開く。

すると、そこは子供部屋のようで…

リオナが証言していた通り、ベルムはこんな大騒ぎの中でもお昼寝を続行していた。


「くかー…」

「……こいつ、将来大物になるな…。まあいい、連れて行くか!」



コヨミと凛子、ソウセイは念のためにリオナと母親を安全な場所まで避難させる。

その際コヨミは何かに気付いたような、訝しげな顔をしていた。

一方で、ミカはルルの魔法ならば一気に消火することができるのではないかと、ルルに頼もうとしていた。

だが…


「…ルル、大丈夫?震えてるけど…」

「うぅ…」

「もしかしてルル、火が…」


そう言いかけたところで、ミカははっと何かに気付く。

――思えば…

ルルは晴人がフレイムスタイルになると、いつも驚いたようにそれを避けていた。

何か火に対してトラウマでもあるのだろうか、とミカが気にかけていると…

ルルは震えながらも、話をしていた。


「……実は小さい時に、幼馴染の男の子がルルに悪戯して…髪の毛に火を点けたの……」

「あ、――それは辛い…」

「その子も『目の前でちょっと火を出して驚かせるだけだった、髪に火を点けるつもりじゃなかった』って謝ってくれたけど…でも……」

「分かった。ルルはリオナ達と一緒に、安全な場所で待ってて。……バーガー!私、水の術が使えるから手伝えるよ!!」

「おうっ、頼むぞミカ!」




その後、ベルムを連れて出てきたウィザードWSは、その子をミカに任せると…消火活動に協力。

魔法使いでもある彼の力もあって、火は何とか消し止められ、大きな火事にならなくて済んだ。

母親やリオナを始めとした町の人々は、消火活動を手伝ってくれた晴人達に感謝している。

バーガーは「しっかし」と頭を掻きながら、3分の1ほど焼け焦げた家を眺めつつ呟く。


「…なんだって、あんな場所に火が?」

「それは私どもも…たぶん、祭りに使っていた松明か何かが飛び火したと思っているのですが」

「その可能性は薄いんじゃないでしょうか。一番近い松明から、この家までは距離がありますし…飛び火したにしても、火に近い左側ではなく木箱の積んであった右側と言うのも気になります」

「……原因を追究していても仕方がない、全員無事ならそれに越したことはないだろう」


ザウバーの言葉に、「それもそうか」とミカ達は納得する。

家のほうも、家の中は燃えておらず…外側を少し修復すれば大丈夫とのことで、晴人達はその場を後にしていた…

一方で、晴人はうーんと考えながら、ラディスのシンボルのモニュメントを眺めている。

それに気付いたコヨミが、声を掛けていた。


「…晴人?どうかしたの」

「コヨミ。……ラディス教って、本当に何なんだろうなぁ…って思ってさ」

「それは…私達が考えても、仕方がないことだと思うけど」

「だけど気にならないか?皇帝は、ラディスの予言を実行しようとして…戦争を起こしている。そうまでして叶えたい予言って、何なんだろうと思ってさ」



「――ラディス教について知りたいのかね?」



ポツリと呟く晴人の前に、一人の老人が現れる。

その顔を見たバーガーは、どこかで会ったことのある顔だと記憶の中を探る。

そして…

ようやくその名前を思い出し、「そういえば」と声を上げていた。


「まさか…アイザックさんか?」

「はて、どこかで会ったことがあったかの」

「あんた、聖海騎士団のガルシアって奴に『異教徒だ』と言われて連れて行かれたことがあっただろ」

「…ほうほう!そういえば、そんなこともあったのぅ。もしやお前さん、あの時の隊長かね」

「また知り合い出たよ…バーガーさん、本当に、今回の話の間にどれだけの知り合いが出るの…?」


ユーテキのメタ発言はさておき。

アイザックと呼ばれた老人、バーガーの話によればラディス教の信者ではないようで…その上でラディス教を調べると言うかなりの異端者。

当然ラディス教の関係者からは目をつけられており、この町の宣教師達に見つかれば即刻追い出されるほど。

だが、ラディス教を調べているだけあってか…信者であったバーガーよりも詳しいのは確かだそうだ。


「あの時はすまないことをした」

「何を言っておる。お前さんは聖海騎士団の役割を全うした、ただそれだけのことじゃよ」

「それよりも…ラディス教に詳しいって言うのが本当なら、話を聞かせてくれないですか?」

「ちょうど、色々知りたかったことだしね」

「それなら話が早い。立ち話もあれじゃ、ワシの家まで来るといい…お茶の類は出せんがな」


そう言って、アイザックは案内するようにパテオの町を出る。

その一方で…

少しだけ気になったことがあったのか、ザウバーは「後で来る」と言ってどこかに向かっていった。





「おい、あのガキ共の家に火を点けたって本当なのか?」

「ああ。ああでもしないと、いつまで経ってもラディス教の素晴らしさを分かろうとしないだろうからな」


先程の宣教師達が、路地裏でこそこそと話をしている。

火を点けたのは1人だけだが、話を聞いていたもう一人の宣教師は、「確かに」と笑っていた。

そんな時だった。

…彼らの頭の上に突然水が被せられたのは。


「ぶわっ!?」

「な、何なんだ一体!?」


うろたえている彼らを見下ろしながら、空のバケツをその辺に投げ捨てていたのは…ザウバーだ。

…彼は予め、犯人に目星をつけていた。

飛び火するはずのない場所への出火、先程モニュメントに石を投げていた子供達の家からの火災。

決定的だったのは…消火活動の際に見た火元。台所から焼けていたわけでもなく、一番下の木箱に火を点けたかのような焼け方。

その上、消火活動の途中でコヨミから「宣教師の一人が現場から隠れるように逃げていったのを見た」という話を聞き、確信した。

ありえるとすれば、宣教師達が腹いせでやったとしか思えないのだ。

彼らに気付かれないように身軽に屋根から下りると、――晴人とコヨミが苦笑をしながら待っていた。



「お前ら…行ったんじゃなかったのか」

「コヨミがどうしてもって言うからさ。……しっかし、派手に水ぶっかけたなー」

「…ありがとう、ザウバー」

「別に、メタな話…このままあいつらが自分達の行為に何らかの報いを受けないのは、読者的にも納得がいかないだろうと思ってな。……火を点けてもよかったんだが、流石にあいつらと同類にはなりたくない」


だから水にしたのか、と晴人は苦笑しつつザウバーを見る。

コヨミから直接頼んだ…というわけではなく、「もしもあの人達がやったのなら許せない」という言葉を聞いて、仕返しのできない彼女の分まで動いてくれたのは確かだ。

クールな性格のつれない奴、というのはザウバーに対する晴人の初期の印象だったが…

実際は素直じゃないだけで冷たいだけの奴じゃないんだな、と考え直していた。


「俺に頼んでくれれば、北極海並みに冷たい水を提供したのに」

「…お前のほうが楽しんでないか、晴人」

「別に?それよりも、アイザックって人の家に行こうぜ…凛子ちゃん達もそこで待ってる」

「……だな」






〜〜〜






少し遅れて、アイザックの家に到着した晴人・コヨミ・ザウバーの3人。

待っている間に、アイザックの書いた本(という名の研究資料)を見ていたのだろう…

凄いですよ晴人さん!と鼻息を荒くしながらやってくる瞬平を抑えながら、晴人は瞬平の話を聞いていた。


「ラディス教って、アムニスフィールドを創造した神を起源としていて…現在の帝都リーリエリヒト付近から発祥したと言われているんですって!」

「アムニスフィールドの…創造神?」

「はい!…それでこの本によれば、ラディス教は多神教や女神崇拝を禁じ…異教徒がアムニスフィールドの力を得ることも禁じたみたいなんです」

「だから、ウェルテクス一族が亡くなった後、国営化させていたのか」

「アムニスフィールドのエネルギーを使っているであろう…ウェルテクスの技術の他国流出をやめさせて、国内だけにその恩恵を与えていたのね……」


晴人とコヨミは納得した様子で頷きながら、瞬平の話に耳を傾ける。

彼(の読んだ本)によれば…

その後、教えに反する者は厳しく罰せられるようになり、結果としてアムニスフィールドやラディス教の秩序を守ることを目的とした【聖海騎士団】が誕生したとのこと。

思えば、厳しい罰を与え始めた頃から、ラディス教の在り方は歪んでいったのだろう…

バーガーはしみじみとしたような顔をしつつ、ラディス教の予言を復唱する。


「――『アムニスフィールドから生まれしその力は、蒼き石に封じられるが如く消え去らん』」

「バーガー?」

「予言の一部だよ。お前ら、どうせ予言もあまり分からないまま、今まで色々やってきたんだろ」

「「「…はい」」」

「続けるぞ」



『英姿を再び拝まんとするならば、古き世から伝わる【聖なるもの】をその手に持て』


「『ルキナに存在する総ての生き物が、真にラディスの神の子となり』」


「『輝かしい蒼き光を放つ【聖なるもの】が紅き光へと変わる時』」


「『神の国への扉は開き、我らは再びラディスの神の御身へ辿り着かん』」



バーガーから予言の内容を聞いたユーテキやミカは、あまり理解していないのか首を傾げていた…

ルルは元から、考えることを放棄していた。

アイザックによれば、【聖なるもの】や【神の国への扉】が何を意味するのかは分かっていない。

だが、神の国への扉を開くためには【聖なるもの】が必要で…その【聖なるもの】とは、ラディス教のシンボルストーンではないかという話をしてくれた。

シンボルストーンには不思議な力があり、アムニスフィールドとの何らかの関係があるらしい…と。

凛子はううんと唸りながら、バーガーに尋ねる。


「皇帝は…これを実現しようとしているのよね。バーガーさん、神の国への扉が開かれれば…どうなるの?」

「世界中の人々に平等な幸せが訪れる…ルーク枢機卿からは、そう教えられた」

「でも……今のラディス教のやり方って、その幸せが訪れる前に…ソウセイ君を始めとした、皆の幸せを奪っているじゃない!」

「ああ…そうだ。今の俺に取っちゃあ、神の国への扉が開かれても…幸せになれるのはラディス教を崇拝していた奴らと、帝国の恩恵を受けている奴らだけだ。そうでない人々にとっては……虐げられる未来しかない。まさしく絶望って奴だ」


確かに、とミカと晴人は凛子とバーガーの言葉に頷く。

バーガーの言うとおり、このまま皇帝の思惑通りに進めば…待っているのは、ラディス教によって虐げられる人達にとっての、【絶望】でしかない。

帝国上層部にファントムが絡んでいる可能性を考える晴人にとっては、虐げられる人々の中にゲートがいた場合…一斉にファントムが生み出される危険性も孕んでいるのだ。

ずっと気になっていたのか、晴人はバーガーに自分の考えている“可能性”がありえるのか確かめるためにも、上層部について尋ねていた。




「バーガー。帝国内に、ファントム…という怪物がいないか?もしくは、それを知っていそうな奴とか」

「そういえば……ウェルテクス社で、シャドゥという影の化け物とシラス宰相・ギリオン宰相補佐が話しているのを見たことが。

「シャドゥ!?…あいつ、あの時倒したと思っていたのに…」

「影さえあれば何度でも復活できる…とも言っていたな。それと、ついでにあいつの弱点らしいのも聞いたぜ」

「弱点?」

「まあ要するに、俺様に任せとけってことだよ」


どういうことなのだろうか、晴人はそう言いたげな顔で首を傾げていた。

しかし、バーガーのお陰で、帝国上層部にファントムが関わっていることは確定…

ついでに先程懸念していたばかりの考えも、当たっているのだろうと頭を抱え始める。

オリジンは以前、ファントムを増やすためにルキナに来たと言っていた。

ならばこの戦乱を手引きしているのも、オリジンということになるだろう…最悪の場合、11年前のウェルテクス一族暗殺事件にも関わっている可能性が高い。

ミカの兄がセルシウスというファントムを生み出したのなら、尚更だ。

――そんなことを思っていると、アイザックがバーガーと凛子を見ながら、ふぅむと考えていた。


「お前さん達を見ていると、忘れられたラディス教本来の形を見ているような気がするわい」

「忘れられた…とは、どういうことだ?」

「ラディス教は、発祥してから少しずつ形が変わってきておるのじゃ。つまり今のラディス教は、生まれた当時のものとはまったく違ってきているということじゃな」

「まあ、それを知っても予言とはまったく関係がないのは確かだな。……ところで、先程、シンボルストーンはアムニスフィールドと関係があると言っていたらしいが」

「うむ、昔ウェルテクス社を取材した時に聞いた話じゃ」

「「「ウェルテクス社!?」」」



思いもよらぬ人物からウェルテクスの話を聞き、ミカ達は驚く。

そんな彼らに、アイザックは小首を傾げながらも…

「そうじゃ」と何かを思い出したかのように、ミカ達にこんな話をしていた。


「――そういえば、この辺りに…ウェルテクス一族の初代が住んでいたという屋敷の話を聞いたことがある」

「えっ、お屋敷って…リーリエリヒトにある奴だけじゃないの!?」

「それはワシには分からんよ。お前さん達は、どうやらラディス教だけじゃなくウェルテクスにも興味があるらしいの……特に、そこのお嬢さんは」


はっはと笑いながら、ミカを指差すアイザック。

まさか彼からウェルテクス一族についての話を聞かされるとは思わなかったのか、晴人達も「どうする」とミカに尋ねていた。

次の行き先も特に決まっていない以上、そこに行って見るしかない。

何より…他国にあるであろうウェルテクスの技術を見るために、リーリエリヒト大陸を出たのだ。


「どうする?…って言っても、もう決まっているようなもんだよな」

「うん。……私、その屋敷に行ってみたい。お父さん達の手がかりが、あるかもしれないもの!」

「OK、じゃあ、今日はもう遅いからパテオの宿屋に泊まって…明日向かってみるか」

「「「賛成!」」」

「俺も、特に異論はねぇな。……ところでソウセイって、ウェルテクス屋敷のことは…」

「いえ…初耳です。でも、この家からちょうど北東に向かった先に…それらしいお屋敷があると、聞いたことは」




バーガーやソウセイも、寄り道については大賛成だったようで…

明日の朝一番に宿屋を出て、初代ウェルテクス一族の使っていたという屋敷に、向かうことになった。






***




※ゲーム本編では、宣教師達に特にツッコミがないままスルーされました

いや、やっててあんまりスカッとしなかったので…


やるんならミカのほうがよかったんでしょうが、ミカだとかなり派手にやりそう→すぐ見つかる→騒ぎになってヘタしたらウェルテクスの娘とばれる……のコンボが来るので。

ザウバーでも違和感あるんだけど、

ユーテキ→派手にドジしそう

ルル→魔法で派手にやりそう

バーガー→派手に殴りそう

凛子・瞬平・コヨミ・ソウセイ→口論でしかやれない。負けるのは目に見えている

晴人→「モニュメント破壊にランドる」「北極海の冷たい水」の次点でお察し

イーヴリン→動いても一番納得いくのに離脱してる

……ザウバーしかいなかったんだよ!!!



※子供達と老神父に本当は名前はありません

体裁的に、ずっと「子供」とか「老神父」のままじゃアレだったので…

そして…

※ルルの炎嫌いの理由は、本当は全6章のうち4章目中盤で発覚します(ちなみにパテオは3章序盤)

いや、だって、ずっと隠しておくことでもないでしょうしw

むしろルルは年齢のほうg……ゲフンゲフン!

ちなみにブレイカーって、イーヴリン以外は本編中にキャラの年齢を示唆するセリフがあるんで、割と創造しやすいです。

イーヴリン以外。

でもあのおじいちゃん、ラディス教関係者初(※バーガーは仲間なのでノーカン)のまともな人。裏などない。

あ、…フォスターもいたか…←


※今回で消えたもの→ラディスの原書

いや、だって…

セリフのデータが一切ないというか、炭鉱の町・サブルムを終えたら完全に作者の記憶とオリジナリティの戦いになっていくというのに、ラディスの原書の内容なんて思い出せるかー!!!

…という感じで、消えました。原書ェ…

でも、なくても特に問題ないと思いますよー…予言でも充分な感じにしてますので。

原書のほうが物語の根幹に関わっていたのは事実だけど。




次回は…

早速オリジナリティの戦いになってしまいました←