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タイトル未設定 - Magic26:父と娘

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ツァールハイト王城の一室に閉じ込められた、カルラ。

そこはまるで、誰かが住んでいるかのようにしっかりと整えられた内装…

ベッドや机といった生活用品があり、棚の上には写真立ても飾られている。

カルラはその写真を疎ましげに見ながら、どうやってこの部屋から出るか考えていた。

見張りは当然、部屋の前にいるはず。

どうしたものか…そう思っていると、ドアを開けて一人の兵士が入ってくる。


「…何の用ですか」

「ツァールハイト王の命令です。ここから出てください」

「今更、何を話しても無駄です。国王は戦う気がない以上、私達だけでも…」

「……カルラさん、俺ですよ。俺」


ぷっと小さく笑いながら、兵士は兜を取る。

そこにあったのは、ソウセイの顔…

あなたは確か、とカルラは晴人達と共に行動していたソウセイのことを思い出し、そういえば今朝から姿を見せていないことを思い出していた。


「ブリュンヒルド公爵に頼んで、兵士用の甲冑を取り揃えてもらったんです。こうすれば、何かあった時…皆さんの役に立てると思いまして」

「そう、ですか…」

「話は聞いてます…カルラさん、戦いましょう。他でもない、ジークフリード国王と」

「ですが!……あの人は私達の言葉に、耳を貸す気がない…それでどうやって、私達の話を聞いてもらうんですか!!」

「落ち着いて!…今、国王様は謁見の間に一人でいるみたいです…帝国の人達は晴人さん達狙いなわけですから、当然ですけど。今なら誰の邪魔もなく、聞き入れてくれるはずだ」

「……どうしてそこまで、私に肩入れを…?」


カルラは疑問に思っていた。

晴人達の味方ならば、まずは彼らの救出を優先するべきだ。

しかし…

ソウセイは「晴人さん達は強いから心配要らない」と、苦笑交じりに言う。

それだけ仲間を信頼している。それだけ、彼らの実力を分かっている。

そして、晴人達ではなく真っ先にカルラを助けに来た本当の理由も…ソウセイは話していた。



「――俺は、リーリエリヒトによって父を徴兵され…俺自身も、晴人さん達に助けられなかったら、戦争で自分の父親を奪った奴らのために戦わされ……死んでいたかもしれなかった」

「あなたも…リーリエリヒトの、被害者…」

「俺、これ以上帝国に好き勝手させたくない。戦うことはできないけど、戦える力を持った人達をサポートしたい…力になりたい。だから、反帝国組織【フライハウト団】に入ったんです」

「リーリエリヒトにも、反帝国を掲げる組織が…?」

「はい、それも、ブリュンヒルド公爵の従兄弟…クラウスさんが作った組織です。皆、あなたと同じ気持ちなんです…これ以上、帝国のせいで苦しむ人達を増やしたくないから、戦っている……仲間なんです!」


だから諦めないで、とソウセイは必死でカルラを説得する。

兵力では帝国には劣るが、ツァールハイト大陸において大きな力を持つジークフリード国王の説得は、打倒帝国への大きな一手になるだろう。

それだけではない。

ソウセイ達【フライハウト団】と同じ、帝国によって虐げられる人間のことを考えている…カルラ率いる【ルーキス】と一緒に戦うということは、帝国に『こんなにもお前達のやり方に不満を持っている人間がいる』と呼びかけるための起爆剤でもあるのだ。

…しかし、そういう算段はソウセイの中にはない。

ただ純粋に、同じ気持ち・同じ考えを持った人間と…一緒に戦いたい。一緒にリーリエリヒトを変えていきたい。

そう思っているのだ。


「……分かりました、何とかして…父を説得してみます」

「カルラさん!…って、“父”?」

「ええ。…説明するのは初めてですが、ツァールハイト国王・ジークフリードは……私の、父です」

「…ええっ!?」






〜〜〜






一方、地下牢では…

何とか脱出を試みようとするバーガーであったが、予想以上に頑丈な作りでなかなか壊れない。

ただでさえ、指輪も武器もJMも総て…牢に入れられる前、取り上げられたというのに。

女子とは別々の牢屋に捕まえられ、更にミカは1人別の場所に捕まっているのだそうだ。

晴人も今は体の痺れが治ったが、魔法が使えなければどうすることもできない…


「おい、誰か都合よくブライアン氏のように脱出できないか?」

「おお!確か、手から放った気の力で牢屋をぶち破ったという伝説の、ブライアンさんか!」

「…誰、その人…?」

「さあな。…!静かにしろ」


晴人やバーガーのコントに、ユーテキが戸惑っていると…

ザウバーが何かの気配を感じたのか、全員口を閉じる。

すると…

目の前に映ったのは、ミカを『ベティちゃん』に捕まえさせ牢屋を出ようとする、キルベルト公爵の姿。


「ちょっと、離しなさいよっ!」

「カッカッカ。JMがなければただの娘、ということか…貴様はシラス様の研究材料として引き渡してくれる」

「…ミカッ!」

「くそっ、あいつ…!」

「ん?おお、お前達か。さっきも言ったとおり、この娘はシラス様に引き渡す…この私をコケにし、マロンちゃんや他のペットを殺したクラウスの娘に、相応しい末路だなぁ…クカカ!」



下衆な笑をするキルベルト公爵に、晴人や瞬平は悔しそうな顔を見せる。

ユーテキは「ミカを離せ」と叫ぶが、それを聞き入れる人間ではない…

何とかしてこの牢から出たいところだが、万が一出られたとしても、鋼鉄の肉体を持つアイアンゴーレム…ベティちゃんを倒さなければミカを取り返せない。

そうしていると、ザウバーは少し躊躇っていたようだが…牢の近くにいた瞬平とユーテキに、退くよう言い放つ。


「ユーテキ、瞬平、少し退いてろ」

「ザウバー?」

「って、…あれ…なんか左腕、光ってません……?」

「キルベルト如きに、この方法は取りたくなかったが…致し方ない。――全員、伏せとけよ!」


そう言い放ちながら、左手をベティちゃんに向けるザウバー。

しかし、その腕は紅い光を放っている…

「何」とキルベルトは驚き、ミカも動揺していたようだが

――次の瞬間、強大な衝撃波が放たれていた。




ドゴォォン、と遠くで音が聞こえてくる。

一体何が起きたのか、と凛子やコヨミは思いながらも、どうにかしてルルを助けようと頑張っている。

魔法使いでもあり、晴人と違って指輪のような媒介を必要としないルルには、魔法の力を制限する拘束を行っていたのだ。

何とか解こうにも鍵がないとどうにもできないらしく、どうしたらと凛子が困っていると…

そんな彼女達の元に、フィルギニア公爵がやって来ていた。


「あら、元気そうね」

「「フィルギニア公爵!」」

「ポポー!」

「どうやらキルベルト公爵、大変なことになっているみたいね。まあ、私には関係ないことだけれど」


そう言いながら、フィルギニア公爵は凛子達の牢屋の鍵を開ける。

更に、ルルの拘束を解くための鍵も持っていたのか、彼女を解放…

「一体どうして」と凛子が思っていると、フィルギニア公爵は溜息をつきながら話していた。



「――イシュトヴァーン猊下に取り入るため、ウェルテクスの娘でも捕まえてみようかと思ったのだけれど…やめたわ。あんな子供一人に大人気ないし、何より私…面倒ごとは嫌いですもの」

「フィルギニア公爵…」

「それで、何で私達を?」

「キルベルト公爵を懲らしめて欲しいから、かしら。尤も…その必要はなくなったみたいだけれど」


フッと笑うフィルギニア。

小娘一人にあんな躍起になるキルベルトや帝国の人間を見て、馬鹿らしく思ったのだろう…

まあ無理もないかも、と凛子やコヨミは思いながら、フィルギニア公爵に頭を下げる。

そして…

彼女は「そうだわ」と何かを思い出したかのように、声を上げる。


「あぁそうだ、私、リーリエリヒト付近にあるサルビアの町に屋敷を構えていますの。少しばかりツァールハイトを観光した後、戻る予定ですから…暇なら遊びに来てちょうだいな」

「あ、はい、機会があったら」

「凛子、行こう。晴人達が心配よ」

「あのおじちゃん…ルルをこんな目に遭わせて、許さないんだからぁ!」






〜〜〜






凛子達が来た頃には、凄いことになっていた。

…頑丈な牢屋の鉄柵には大きな穴が開き

…アイアンゴーレムのベティちゃんも、胴体に穴が開いてもはや使い物にならない

…そして、すっかり腰を抜かしているキルベルト公爵

晴人達も突然の事態に動揺しており、ただ一人立っているザウバーは、凛子達に気付いて声を掛けていた。


「……お前達、無事だったのか」

「ええ、うん…あの」

「ザウバー…一体、何が?」

「……それよりも、まずは脱出することが先だ。…ただ、まだ特務機関がいることを考えると…少し、……参加は厳しい…」


よく見れば、相当息が荒い。

一体どうしたというのか?

この状況と何か、関係があるのだろうか?

凛子やコヨミはそう思っていたが、ここで立ち止まっていては敵の思う壺だと思ったのだろう。

晴人達も紅い光に関する疑問を募らせながらも、足を急がせていた。

…まずは指輪や武器などを、取り戻す

彼らが周囲の部屋という部屋を探していると、ヤナとイレナが現れる。


「はぁい♪」

「さっさと牢に戻ってもらおうかしら」

「…特務機関!」

「もーっ、ルル達の邪魔をしないでよぉ!」

「そういうわけにはいかないのよねぇ。…特に、そこのオッドアイのお兄さん」

「先程の紅い光、どういうものなのか…調べさせてもらうわ」


この状況を見て、晴人は「まずい」と思っていた。

武器も指輪もなければ、ザウバーも疲弊している…

変身できなければミカの力も安定できないし、そもそもミカもJMがなければ聖獣にはなれない。

ルル一人で頑張らなければならないが、難しいだろう。



そうしていると…

突然イレナ達の背後から、1つのJMを投げ渡す者がいた。

ミカは反射的にそれを受け取り、その先にいた人間を見る。

そこにいたのは…ルトラ港で別れた、イーヴリンだ。


「まったく、ミカ。大事なものなら手放すんじゃないよ」

「イヴ!…どうしてここに?」

「ソウセイの案内があるなら、ツァールハイト国には来ているだろうと思ってね。情報収集がてら、ブリュンヒルド公爵に会いに行ったら……手紙の内容を知ってここに来たんだ」

「よかったぁ!イヴさん…」

「イヴお姉ちゃんキターッ!だね!!」

「晴人、あんたの指輪…JM扱いされてたのか、JMを保管してある場所にあった。使いな!」


そう言いながら、イーヴリンは晴人に指輪を投げ渡す。

「させるか」とイレナは先に取ろうとするが、ルルがアイスニードルで援護。

晴人は受け取ったハリケーンドラゴンリングを指に填め、ミカに指示する。


<シャバドゥビタッチ、ヘンシーン!シャ…>

「ミカ、ツァターンで行け!」

「分かった!」

<ハリケーン、ドラゴン ビュー、ビュー、ビュービュービュビュー!!>

「…はあああああああっ!」



しまった、とイレナは叫ぶが…

既に晴人はハリケーンドラゴン、ミカはツァターンへと変身していた。

更には、武器の場所もイーヴリンに知られていたのか、ルルが雷の術…ライトニングで指示された壁を破壊する。

ユーテキやバーガーは武器を取り返し、形勢は一気に逆転。

せめてザウバーの腕のことを隊長であるグラントに伝えるべく、ヤナは伝書鳩を飛ばすが…

それが、最期の行動だった。






〜〜〜






下から随分と激しい音がする。

カルラは不思議に思っていたが、「晴人さん達かも」というソウセイの言葉を信じていた。

そして…

カルラは再び謁見の間に辿り着き、ジークフリード国王は驚いたような顔でそれを見ている。

「何故ここに」と兵士達は再び取り押さえようとするが、国王はそれを止めさせ…カルラを見ていた。


「…カルラ」

「父上…私は、やはりリーリエリヒトのやり方は間違っていると思います。現に、あなたもリーリエリヒトによって利用されていた……それは、父上が帝国に何もできないと、あいつらが高を括っているからに他ならない!」

「お前に分かるか、カルラ。――私は…この国の王だ、だからこそ、お前を含めた…ツァールハイトの民を守らなければならない。総ては、民のためなのだ」

「……リーリエリヒトによって民が虐げられ…たくさんの親と子が離れ離れになっているのに、ですか?」


ソウセイの言葉に、ジークフリード国王は目を見開く。

更に彼は、国王に対し…意見を続ける。


「あなたは国を守るために、帝国に頭を下げているに過ぎない。だけど…自分の国の王が、自分達が憎んでいる帝国に頭を下げる姿を……民はどう思っているとお考えなんですか!」

「貴様、国王陛下に向かって…!」

「国王様、話を聞く必要はありません。即刻あの者を、死刑に!」

「――俺だったら、情けないって思います。あなたは民を守っているんじゃない、自分の体裁を守っているだけなんだ…本当にツァールハイトの民のことを思うなら、カルラさんのことを考えているなら、……リーリエリヒト帝国と戦うべきだ!」

「私も、…中立はあくまで中立であって、ただの延命措置でしかない。帝国はいずれ、ツァールハイトをも支配する……その時に私は、戦わずして降伏するぐらいなら…帝国と戦って、最後までこの国のために戦いたい!」



ソウセイ、更にカルラの言葉に…

ジークフリード国王は、少し考えていた。

特にソウセイの言葉は、耳に痛い。

彼の言うとおり、自分は己のことしか考えていない…「民のため」と言い聞かせ、リーリエリヒトに傾倒することしかできなかったのだ。

だが、彼らは違った。

自分の娘や、目の前の若い青年は…リーリエリヒトと勇気と行動力を持って、戦おうとしている。

それが頼もしくもあり、また、……自分が恥ずかしかった。


「――確かに私は、国王としての体裁を守っているにすぎなかった。民のことを考えているつもりでも、本当は…私自身が、民の心を踏み躙っていたのかもしれない」

「父上…では」

「ああ。今ここに、ツァールハイト国王として宣言しよう。――ツァールハイト大陸総ての民を、真の意味で救うべく……帝国の支配から脱却すべく、戦おう」


やった、とソウセイは喜ぶ。

カルラも父親でもあるジークフリード国王のその言葉に、目を潤ませていた




――その時だった。



ジークフリード国王の腹部に、闇の槍が突き刺さる。

口からは血をこぼし、ゆっくりと床に倒れていく…

「国王様」と兵士達は大慌てでやって来て、ソウセイとカルラも突然のことに動揺している。

そして、玉座の影からゆっくりと現れたのは……シャドゥ。


『…追加の依頼があった。ツァールハイト国王に謀反の疑いがある、早急に対処せよ…と』

「ぐ、うぅ…」

「父上…父上ぇっ!」

「そんな、――どうして…なんで国王様を。……どうして今…!」

『繰り返しは必要ない。さあ、――父親の死に苦しめ、ゲート』


ゲート、と言う言葉を聞き、ソウセイが見たのは…カルラ。

――まさか彼女は、デシンと同じゲート?

――ファントムは仲間を増やすために、ゲートを絶望させる

――だとしたら…国王を殺した理由は…

そのことに気付いたソウセイは、急いでカルラとジークフリード国王の下に駆け寄る。

兵士達はシャドゥと戦おうとするが、人間がファントム相手に勝てるはずもなく…一人、また一人と倒れていく。

ジークフリード国王も、この傷では生きているのは難しいと思ったか…カルラに、ソウセイに、総てを託すかのように話していた。


「……カルラ、それから…そこの君」

「ソウセイです」

「ソウセイ…蒼き星の子、か。アムニスフィールドの美しい蒼を象徴する、いい名前だ…」

「父上…父上……ッ」

「カルラ、…後のことは…ツァールハイトのことは、お前に任せよう。必ず、帝国を倒し…労働者達を、救って……ほしい……そしてソウセイ、お前は…」



――私の代わりに、カルラを支えてやって欲しい

そう言い残し、ジークフリード国王は息を引き取った。

それを目の当たりにしたカルラは涙をこぼし、紫色のヒビが発生する。

…まずい

…デシンの時と同じだ

もう二度とファントムを生み出したらいけない。他でもない、ジークフリード国王のためにも。

そう思ったソウセイは、カルラの肩を揺さぶりながら言い放つ。


「カルラさん、負けたら駄目だ!……絶望したらあなたは、あいつと同じ…あなたの父親を殺した、ファントムと同じになってしまう!!」

「だけど、…だけど…!」

「戦うんだろう、ツァールハイトの人達のために!帝国の支配から、ツァールハイトの人達を救うために!!」

「…」

「ここであなたが負けて、ファントムになったら…あなたが帝国に屈したことになる。ジークフリード国王の最期の希望を、あなた自身の手で壊すことになるんだ!」


その言葉に、カルラは父の…ジークフリード国王の最期の言葉を、思い出す。

『ツァールハイトのことは、お前に任せよう』

『必ず、帝国を倒し…労働者達を、救ってほしい』

それが、父の託した最期の希望。

そして…自分に課せられた、王としての宿命。責任。

シャドゥはソウセイを始末してダメ押ししようとするが、最後の1人となった兵士に邪魔をされる。

彼らだけではない。

ジークフリード国王を慕い、愛していた使用人や女中も一緒になって、忘れ形見であるカルラを守ろうとし始めたのだ。


「父上の…希望」

「ジークフリード国王を殺したあのファントムは、帝国が使役している可能性が高い…そして、そのファントムのせいで俺の知り合いも、怪物になって……」

「…ソウセイ、」

「ファントムと戦えるのは晴人さんだけだ。でも、帝国と戦えるのは…帝国に虐げられてきた、俺達なんだ。だから……立てっ!絶望なんてするな、……立ち上がれぇッ!!」




シャドゥが最後の使用人を殺し、ソウセイを始末しようとする。

だが…

その前にカルラは自分の中のファントムを押さえ込み、絶望を免れていた。

「何故」と動揺するシャドゥに、カルラはゆっくりと立ち上がりながら…言い放っていた。


「――父上を、殺したことが仇になりましたね…そのお陰で私は、……あなたの同胞(はらから)にならずに済んだ。帝国に利用されるだけの駒と成り下がらずに…済んだ……!」

『…不可解だ。何故絶望しない、親子なのだろう』

「親子だからこそ!……父上を殺したあなたを、父上についてきた城の人達を殺したあなたを許せない…父の命を奪った帝国を許せない!!」

「お前のやったこと…最低だけど、……悲しみや絶望を怒りのパワーにして…繋ぎ止めることだってある。……彼女の心を!ツァールハイトの民達の想いを!!…壊せると思ったら…大間違いだ!!!」

「私は絶対あなたを…あなた達リーリエリヒト帝国を許さない。この命尽きるまで、民のため…そして父上の託した希望に応えるために、――リーリエリヒト帝国と戦うッ!」


これまでのケースから、今の状況なら確実に絶望しているはずだった。

だが…

カルラは絶望を乗り越え、立っている。

ジークフリード国王と、帝国に虐げられる民への想いと、自分を支援してくれるブリュンヒルド公爵

――そして、自分を立ち直らせようとずっと叫んでいた、ソウセイのお陰で。

シャドゥは絶望しないのなら始末するのみ、とカルラとソウセイを殺そうとしていたが



…そんな彼に、光の槍が直撃していた。


『がっ!?…こ、れは……光の…力。何故……』

「待たせたな!カルラ、ソウセイ!!」

「…いや、……遅かった…」

「酷い…こんな……」


光の槍を放ったのは、バーガー。

元・ラディス教の信者にして聖海騎士団の隊長でもあるバーガー…

そんな彼が、光の術の心得がないはずがない。

「だから『自分に任せろ』と言ったのか」と瞬平やユーテキが納得する一方で、ウィザードHDやミカは自分達が間に合わなかったことに拳を握り締める。

と、同時に、この状況を引き起こしたシャドゥへの怒りが強くなる。

――多勢に無勢

――その上、光の術を使える人間がいる

ここは撤退すべきだと思ったシャドゥだが、ファントム体を維持できず、自分を生み出したゲートの姿になる。

だが…

その姿には、他でもないソウセイが驚いていた。


「……コハク、父さん…?」

「「「えっ!?」」」

「コハクさんって、…ソウセイ君のお父さんの!?」

「…な、に…?……不可解、私はコハクなどではない…お前の記憶もない。……だが…!」


今がチャンスと思ったか、シャドゥは闇に紛れ込むように隠れる。

「しまった」とウィザードHD達は周囲を探すが、シャドゥは影に完全に溶け込んだ後。

くそっと舌打ちしながら、晴人は変身を解除し…ブリュンヒルド公爵邸に戻って体制を立て直すべきだと、提案。

国王を含めた犠牲者を弔う準備をするためにも、全員それに従っていた。







〜〜〜






葬儀に関しては、ブリュンヒルド公爵が中心となって準備を行う。

…カルラは色々と思うところがあり、少し落ち着かせたほうがいいとのことだった。

その一方で、晴人達はソウセイの身を案じる。

自分の父親がゲートで、シャドゥを生み出し、ジークフリード国王を殺害した…

動揺したり落ち込んでも仕方がないと思っていたのだが、意外とソウセイは割り切っていた。


「…晴人さん。ファントムはあくまでファントムであって、生前のゲートとは…まったく違うんですよね」

「あ、ああ。……ソウセイ…その」

「だったら、大丈夫です。……あのシャドゥは父さんの形をした、別の怪物…だから俺はシャドゥが倒されることに、何の躊躇いも無いです。むしろ、自分の手で倒すことができないのが……辛いところですよ」

「…ソウセイ」


晴人は分かっていた。

ソウセイが、無理に強がっていることが。

しかし、「シャドゥはコハクではない」と分かった上で…彼は晴人達に、自分の代わりにシャドゥを止めて欲しいと頼んでいた。

シャドゥを倒せるのはウィザードである晴人、そして、奴に唯一致命傷を与えられるバーガーだと分かっているからこそ、なのだ。

イーヴリンも頭を掻きながら、これからについてカルラとソウセイに尋ねていた。


「それで、…あんた達はこれからどうするんだい?」

「私は…父上達の葬儀をした後、本格的にリーリエリヒトと戦うための準備をします。ルーキスの皆も、城下町の人々も……皆、気持ちを一つにして」

「俺はルーキスのこと、カルラさんのこと、フライハウト団に報告するため…一度、リーリエリヒトに戻ります。ちょうど、イヴさんも戻ってきたことですし」



カルラは、葬儀の場で王位を継承することを宣言し…更に、亡き国王の遺言に従って、リーリエリヒトと戦うため立ち上がると約束。

ソウセイは、ルーキスとの円滑した連携を取るべく、ツァールハイトでのことをベッグフォードに報告するためリーリエリヒトに戻ると言う。

一番危ないのはソウセイだが、彼ならきっとうまく立ち回れるだろう…

晴人達はそう信じ、ブリュンヒルド公爵の屋敷を後にしていた。


「さて、と。俺達もこれからどうする?」

「それだったら…ウェルスという町に、タルボットと言う博士がいるそうだ。彼は現ウェルテクス社に反発し、帝国からのマークを受けているらしいからね」

「ウェルス…タルボット博士、……まさか…」

「イヴ、その博士、帝国に目をつけられてるって…」

「聞いた話だと、先代ウェルテクス一族の理念に同調し、敬愛していた。ウェルテクス一族についての情報も貰えるだろうし、帝国と戦うための大きな助けになるであろう人だ」


イーヴリンの話によれば…

ウェルテクスの軍事兵器に関してどうにかできないか、相変わらず面影堂に入り浸っていたアーヒバルド公爵に尋ねていた。

そんな彼からの情報で、帝国に目をつけられるほどの意志と技術を持った【少し】変人の老人博士がいるとのこと。

先代ウェルテクス一族…つまりはミカの家族の掲げる、「平和のための技術」と言う理念に賛同しており、様々なもの……特にシールド関係の開発もしているそうだ。

ユーテキは何やら頭を抱えていたようだが、ミカ達の次の行く先は決まった。


「――だったら、タルボット博士に会って…協力してもらおうよ!」

「そうだね。ウェルテクス一族の生き残りであるミカなら、話を聞いてくれるだろうし」

「…どうかなー…いきなり、塩をバケツで被せられると思うんだけど……」

「ユーテキ、お前何か知ってんの?」

「っていうか、バケツで塩…撒くの…?」




「――それだったらお土産に、アムニスフィールドに関するウェルテクス一族の資料を渡すのもいいんじゃない?」




と言う話を、瞬平の背後で告げる人間。

…サウルの姿が、そこにはあった。






***




あれ、主人公ってソウセイだっけw

そんな26話…おいホントに主人公誰だよ。

ザウバーの影に飲まれつつあることもそうだけど!これは原典も若干同じだからしょうがないけど!!

でも晴人は、DCDRWの時の士よりはまともだと思う。

士はエイジス・シンジ・ケイスケ・月島兄弟に飲まれすぎてた。


ベティちゃんw

なんでこう…こう、可哀想なのベティちゃん……まあ本家にいないキャラ(モンスター自体は存在しているけど)だからしょうがないけど。

そして…

イレナとヤナは、ここで退場です。どうなったのかはお任せします。

キルベルトは……知りません。



スピンオフにおける、アルティメットキマイラ撃破の理由…

そうです、あの衝撃波です。

鋼鉄の体を持つモンスターすら貫通すりゃ、アルキマなんて一撃ですわザウバーさん…

でも消耗は激しいらしい。

そして、ようやくカルラと国王が分かり合ったと思ったら…

シャドゥお前えええええええ!


※ゲーム中のジークフリード国王と、兵士の皆さんと、下々の方達は生存しています

まさかのシェリールートェ…

そして、絶望を押さえ込んだカルラさんマジパネェ。

ちなみに彼女の中のファントムは、ブリュンヒルデ……にしたかったんですが、ブリュンヒルド公爵とダブるので…ここは無難に、ヴァルキリー辺りで。

なお、「ソウセイ退場」と聞いて…ソウセイが死ぬと思った方、「トマトジュース」と叫んでください(理由:ソウセイはウォータースタイルが元ネタ)




次回!

…サウルさんマジサウル…