ツァールハイト王城の一室に閉じ込められた、カルラ。
そこはまるで、誰かが住んでいるかのようにしっかりと整えられた内装…
ベッドや机といった生活用品があり、棚の上には写真立ても飾られている。
カルラはその写真を疎ましげに見ながら、どうやってこの部屋から出るか考えていた。
見張りは当然、部屋の前にいるはず。
どうしたものか…そう思っていると、ドアを開けて一人の兵士が入ってくる。
「…何の用ですか」
「ツァールハイト王の命令です。ここから出てください」
「今更、何を話しても無駄です。国王は戦う気がない以上、私達だけでも…」
「……カルラさん、俺ですよ。俺」
ぷっと小さく笑いながら、兵士は兜を取る。
そこにあったのは、ソウセイの顔…
あなたは確か、とカルラは晴人達と共に行動していたソウセイのことを思い出し、そういえば今朝から姿を見せていないことを思い出していた。
「ブリュンヒルド公爵に頼んで、兵士用の甲冑を取り揃えてもらったんです。こうすれば、何かあった時…皆さんの役に立てると思いまして」
「そう、ですか…」
「話は聞いてます…カルラさん、戦いましょう。他でもない、ジークフリード国王と」
「ですが!……あの人は私達の言葉に、耳を貸す気がない…それでどうやって、私達の話を聞いてもらうんですか!!」
「落ち着いて!…今、国王様は謁見の間に一人でいるみたいです…帝国の人達は晴人さん達狙いなわけですから、当然ですけど。今なら誰の邪魔もなく、聞き入れてくれるはずだ」
「……どうしてそこまで、私に肩入れを…?」
カルラは疑問に思っていた。
晴人達の味方ならば、まずは彼らの救出を優先するべきだ。
しかし…
ソウセイは「晴人さん達は強いから心配要らない」と、苦笑交じりに言う。
それだけ仲間を信頼している。それだけ、彼らの実力を分かっている。
そして、晴人達ではなく真っ先にカルラを助けに来た本当の理由も…ソウセイは話していた。
「――俺は、リーリエリヒトによって父を徴兵され…俺自身も、晴人さん達に助けられなかったら、戦争で自分の父親を奪った奴らのために戦わされ……死んでいたかもしれなかった」
「あなたも…リーリエリヒトの、被害者…」
「俺、これ以上帝国に好き勝手させたくない。戦うことはできないけど、戦える力を持った人達をサポートしたい…力になりたい。だから、反帝国組織【フライハウト団】に入ったんです」
「リーリエリヒトにも、反帝国を掲げる組織が…?」
「はい、それも、ブリュンヒルド公爵の従兄弟…クラウスさんが作った組織です。皆、あなたと同じ気持ちなんです…これ以上、帝国のせいで苦しむ人達を増やしたくないから、戦っている……仲間なんです!」
だから諦めないで、とソウセイは必死でカルラを説得する。
兵力では帝国には劣るが、ツァールハイト大陸において大きな力を持つジークフリード国王の説得は、打倒帝国への大きな一手になるだろう。
それだけではない。
ソウセイ達【フライハウト団】と同じ、帝国によって虐げられる人間のことを考えている…カルラ率いる【ルーキス】と一緒に戦うということは、帝国に『こんなにもお前達のやり方に不満を持っている人間がいる』と呼びかけるための起爆剤でもあるのだ。
…しかし、そういう算段はソウセイの中にはない。
ただ純粋に、同じ気持ち・同じ考えを持った人間と…一緒に戦いたい。一緒にリーリエリヒトを変えていきたい。
そう思っているのだ。
「……分かりました、何とかして…父を説得してみます」
「カルラさん!…って、“父”?」
「ええ。…説明するのは初めてですが、ツァールハイト国王・ジークフリードは……私の、父です」
「…ええっ!?」
〜〜〜
一方、地下牢では…
何とか脱出を試みようとするバーガーであったが、予想以上に頑丈な作りでなかなか壊れない。
ただでさえ、指輪も武器もJMも総て…牢に入れられる前、取り上げられたというのに。
女子とは別々の牢屋に捕まえられ、更にミカは1人別の場所に捕まっているのだそうだ。
晴人も今は体の痺れが治ったが、魔法が使えなければどうすることもできない…
「おい、誰か都合よくブライアン氏のように脱出できないか?」
「おお!確か、手から放った気の力で牢屋をぶち破ったという伝説の、ブライアンさんか!」
「…誰、その人…?」
「さあな。…!静かにしろ」
晴人やバーガーのコントに、ユーテキが戸惑っていると…
ザウバーが何かの気配を感じたのか、全員口を閉じる。
すると…
目の前に映ったのは、ミカを『ベティちゃん』に捕まえさせ牢屋を出ようとする、キルベルト公爵の姿。
「ちょっと、離しなさいよっ!」
「カッカッカ。JMがなければただの娘、ということか…貴様はシラス様の研究材料として引き渡してくれる」
「…ミカッ!」
「くそっ、あいつ…!」
「ん?おお、お前達か。さっきも言ったとおり、この娘はシラス様に引き渡す…この私をコケにし、マロンちゃんや他のペットを殺したクラウスの娘に、相応しい末路だなぁ…クカカ!」
下衆な笑をするキルベルト公爵に、晴人や瞬平は悔しそうな顔を見せる。
ユーテキは「ミカを離せ」と叫ぶが、それを聞き入れる人間ではない…
何とかしてこの牢から出たいところだが、万が一出られたとしても、鋼鉄の肉体を持つアイアンゴーレム…ベティちゃんを倒さなければミカを取り返せない。
そうしていると、ザウバーは少し躊躇っていたようだが…牢の近くにいた瞬平とユーテキに、退くよう言い放つ。
「ユーテキ、瞬平、少し退いてろ」
「ザウバー?」
「って、…あれ…なんか左腕、光ってません……?」
「キルベルト如きに、この方法は取りたくなかったが…致し方ない。――全員、伏せとけよ!」
そう言い放ちながら、左手をベティちゃんに向けるザウバー。
しかし、その腕は紅い光を放っている…
「何」とキルベルトは驚き、ミカも動揺していたようだが
――次の瞬間、強大な衝撃波が放たれていた。
ドゴォォン、と遠くで音が聞こえてくる。
一体何が起きたのか、と凛子やコヨミは思いながらも、どうにかしてルルを助けようと頑張っている。
魔法使いでもあり、晴人と違って指輪のような媒介を必要としないルルには、魔法の力を制限する拘束を行っていたのだ。
何とか解こうにも鍵がないとどうにもできないらしく、どうしたらと凛子が困っていると…
そんな彼女達の元に、フィルギニア公爵がやって来ていた。
「あら、元気そうね」
「「フィルギニア公爵!」」
「ポポー!」
「どうやらキルベルト公爵、大変なことになっているみたいね。まあ、私には関係ないことだけれど」
そう言いながら、フィルギニア公爵は凛子達の牢屋の鍵を開ける。
更に、ルルの拘束を解くための鍵も持っていたのか、彼女を解放…
「一体どうして」と凛子が思っていると、フィルギニア公爵は溜息をつきながら話していた。
「――イシュトヴァーン猊下に取り入るため、ウェルテクスの娘でも捕まえてみようかと思ったのだけれど…やめたわ。あんな子供一人に大人気ないし、何より私…面倒ごとは嫌いですもの」
「フィルギニア公爵…」
「それで、何で私達を?」
「キルベルト公爵を懲らしめて欲しいから、かしら。尤も…その必要はなくなったみたいだけれど」
フッと笑うフィルギニア。
小娘一人にあんな躍起になるキルベルトや帝国の人間を見て、馬鹿らしく思ったのだろう…
まあ無理もないかも、と凛子やコヨミは思いながら、フィルギニア公爵に頭を下げる。
そして…
彼女は「そうだわ」と何かを思い出したかのように、声を上げる。
「あぁそうだ、私、リーリエリヒト付近にあるサルビアの町に屋敷を構えていますの。少しばかりツァールハイトを観光した後、戻る予定ですから…暇なら遊びに来てちょうだいな」
「あ、はい、機会があったら」
「凛子、行こう。晴人達が心配よ」
「あのおじちゃん…ルルをこんな目に遭わせて、許さないんだからぁ!」
〜〜〜
凛子達が来た頃には、凄いことになっていた。
…頑丈な牢屋の鉄柵には大きな穴が開き
…アイアンゴーレムのベティちゃんも、胴体に穴が開いてもはや使い物にならない
…そして、すっかり腰を抜かしているキルベルト公爵
晴人達も突然の事態に動揺しており、ただ一人立っているザウバーは、凛子達に気付いて声を掛けていた。
「……お前達、無事だったのか」
「ええ、うん…あの」
「ザウバー…一体、何が?」
「……それよりも、まずは脱出することが先だ。…ただ、まだ特務機関がいることを考えると…少し、……参加は厳しい…」
よく見れば、相当息が荒い。
一体どうしたというのか?
この状況と何か、関係があるのだろうか?
凛子やコヨミはそう思っていたが、ここで立ち止まっていては敵の思う壺だと思ったのだろう。
晴人達も紅い光に関する疑問を募らせながらも、足を急がせていた。
…まずは指輪や武器などを、取り戻す
彼らが周囲の部屋という部屋を探していると、ヤナとイレナが現れる。
「はぁい♪」
「さっさと牢に戻ってもらおうかしら」
「…特務機関!」
「もーっ、ルル達の邪魔をしないでよぉ!」
「そういうわけにはいかないのよねぇ。…特に、そこのオッドアイのお兄さん」
「先程の紅い光、どういうものなのか…調べさせてもらうわ」
この状況を見て、晴人は「まずい」と思っていた。
武器も指輪もなければ、ザウバーも疲弊している…
変身できなければミカの力も安定できないし、そもそもミカもJMがなければ聖獣にはなれない。
ルル一人で頑張らなければならないが、難しいだろう。
そうしていると…
突然イレナ達の背後から、1つのJMを投げ渡す者がいた。
ミカは反射的にそれを受け取り、その先にいた人間を見る。
そこにいたのは…ルトラ港で別れた、イーヴリンだ。
「まったく、ミカ。大事なものなら手放すんじゃないよ」
「イヴ!…どうしてここに?」
「ソウセイの案内があるなら、ツァールハイト国には来ているだろうと思ってね。情報収集がてら、ブリュンヒルド公爵に会いに行ったら……手紙の内容を知ってここに来たんだ」
「よかったぁ!イヴさん…」
「イヴお姉ちゃんキターッ!だね!!」
「晴人、あんたの指輪…JM扱いされてたのか、JMを保管してある場所にあった。使いな!」
そう言いながら、イーヴリンは晴人に指輪を投げ渡す。
「させるか」とイレナは先に取ろうとするが、ルルがアイスニードルで援護。
晴人は受け取ったハリケーンドラゴンリングを指に填め、ミカに指示する。
<シャバドゥビタッチ、ヘンシーン!シャ…>
「ミカ、ツァターンで行け!」
「分かった!」
<ハリケーン、ドラゴン ビュー、ビュー、ビュービュービュビュー!!>
「…はあああああああっ!」
しまった、とイレナは叫ぶが…
既に晴人はハリケーンドラゴン、ミカはツァターンへと変身していた。
更には、武器の場所もイーヴリンに知られていたのか、ルルが雷の術…ライトニングで指示された壁を破壊する。
ユーテキやバーガーは武器を取り返し、形勢は一気に逆転。
せめてザウバーの腕のことを隊長であるグラントに伝えるべく、ヤナは伝書鳩を飛ばすが…
それが、最期の行動だった。
〜〜〜
下から随分と激しい音がする。
カルラは不思議に思っていたが、「晴人さん達かも」というソウセイの言葉を信じていた。
そして…
カルラは再び謁見の間に辿り着き、ジークフリード国王は驚いたような顔でそれを見ている。
「何故ここに」と兵士達は再び取り押さえようとするが、国王はそれを止めさせ…カルラを見ていた。
「…カルラ」
「父上…私は、やはりリーリエリヒトのやり方は間違っていると思います。現に、あなたもリーリエリヒトによって利用されていた……それは、父上が帝国に何もできないと、あいつらが高を括っているからに他ならない!」
「お前に分かるか、カルラ。――私は…この国の王だ、だからこそ、お前を含めた…ツァールハイトの民を守らなければならない。総ては、民のためなのだ」
「……リーリエリヒトによって民が虐げられ…たくさんの親と子が離れ離れになっているのに、ですか?」
ソウセイの言葉に、ジークフリード国王は目を見開く。
更に彼は、国王に対し…意見を続ける。
「あなたは国を守るために、帝国に頭を下げているに過ぎない。だけど…自分の国の王が、自分達が憎んでいる帝国に頭を下げる姿を……民はどう思っているとお考えなんですか!」
「貴様、国王陛下に向かって…!」
「国王様、話を聞く必要はありません。即刻あの者を、死刑に!」
「――俺だったら、情けないって思います。あなたは民を守っているんじゃない、自分の体裁を守っているだけなんだ…本当にツァールハイトの民のことを思うなら、カルラさんのことを考えているなら、……リーリエリヒト帝国と戦うべきだ!」
「私も、…中立はあくまで中立であって、ただの延命措置でしかない。帝国はいずれ、ツァールハイトをも支配する……その時に私は、戦わずして降伏するぐらいなら…帝国と戦って、最後までこの国のために戦いたい!」
ソウセイ、更にカルラの言葉に…
ジークフリード国王は、少し考えていた。
特にソウセイの言葉は、耳に痛い。
彼の言うとおり、自分は己のことしか考えていない…「民のため」と言い聞かせ、リーリエリヒトに傾倒することしかできなかったのだ。
だが、彼らは違った。
自分の娘や、目の前の若い青年は…リーリエリヒトと勇気と行動力を持って、戦おうとしている。
それが頼もしくもあり、また、……自分が恥ずかしかった。
「――確かに私は、国王としての体裁を守っているにすぎなかった。民のことを考えているつもりでも、本当は…私自身が、民の心を踏み躙っていたのかもしれない」
「父上…では」
「ああ。今ここに、ツァールハイト国王として宣言しよう。――ツァールハイト大陸総ての民を、真の意味で救うべく……帝国の支配から脱却すべく、戦おう」
やった、とソウセイは喜ぶ。
カルラも父親でもあるジークフリード国王のその言葉に、目を潤ませていた
――その時だった。
ジークフリード国王の腹部に、闇の槍が突き刺さる。
口からは血をこぼし、ゆっくりと床に倒れていく…
「国王様」と兵士達は大慌てでやって来て、ソウセイとカルラも突然のことに動揺している。
そして、玉座の影からゆっくりと現れたのは……シャドゥ。
『…追加の依頼があった。ツァールハイト国王に謀反の疑いがある、早急に対処せよ…と』
「ぐ、うぅ…」
「父上…父上ぇっ!」
「そんな、――どうして…なんで国王様を。……どうして今…!」
『繰り返しは必要ない。さあ、――父親の死に苦しめ、ゲート』
ゲート、と言う言葉を聞き、ソウセイが見たのは…カルラ。
――まさか彼女は、デシンと同じゲート?
――ファントムは仲間を増やすために、ゲートを絶望させる
――だとしたら…国王を殺した理由は…
そのことに気付いたソウセイは、急いでカルラとジークフリード国王の下に駆け寄る。
兵士達はシャドゥと戦おうとするが、人間がファントム相手に勝てるはずもなく…一人、また一人と倒れていく。
ジークフリード国王も、この傷では生きているのは難しいと思ったか…カルラに、ソウセイに、総てを託すかのように話していた。
「……カルラ、それから…そこの君」
「ソウセイです」
「ソウセイ…蒼き星の子、か。アムニスフィールドの美しい蒼を象徴する、いい名前だ…」
「父上…父上……ッ」
「カルラ、…後のことは…ツァールハイトのことは、お前に任せよう。必ず、帝国を倒し…労働者達を、救って……ほしい……そしてソウセイ、お前は…」
――私の代わりに、カルラを支えてやって欲しい
そう言い残し、ジークフリード国王は息を引き取った。
それを目の当たりにしたカルラは涙をこぼし、紫色のヒビが発生する。
…まずい
…デシンの時と同じだ
もう二度とファントムを生み出したらいけない。他でもない、ジークフリード国王のためにも。
そう思ったソウセイは、カルラの肩を揺さぶりながら言い放つ。
「カルラさん、負けたら駄目だ!……絶望したらあなたは、あいつと同じ…あなたの父親を殺した、ファントムと同じになってしまう!!」
「だけど、…だけど…!」
「戦うんだろう、ツァールハイトの人達のために!帝国の支配から、ツァールハイトの人達を救うために!!」
「…」
「ここであなたが負けて、ファントムになったら…あなたが帝国に屈したことになる。ジークフリード国王の最期の希望を、あなた自身の手で壊すことになるんだ!」
その言葉に、カルラは父の…ジークフリード国王の最期の言葉を、思い出す。
『ツァールハイトのことは、お前に任せよう』
『必ず、帝国を倒し…労働者達を、救ってほしい』
それが、父の託した最期の希望。
そして…自分に課せられた、王としての宿命。責任。
シャドゥはソウセイを始末してダメ押ししようとするが、最後の1人となった兵士に邪魔をされる。
彼らだけではない。
ジークフリード国王を慕い、愛していた使用人や女中も一緒になって、忘れ形見であるカルラを守ろうとし始めたのだ。
「父上の…希望」
「ジークフリード国王を殺したあのファントムは、帝国が使役している可能性が高い…そして、そのファントムのせいで俺の知り合いも、怪物になって……」
「…ソウセイ、」
「ファントムと戦えるのは晴人さんだけだ。でも、帝国と戦えるのは…帝国に虐げられてきた、俺達なんだ。だから……立てっ!絶望なんてするな、……立ち上がれぇッ!!」
シャドゥが最後の使用人を殺し、ソウセイを始末しようとする。
だが…
その前にカルラは自分の中のファントムを押さえ込み、絶望を免れていた。
「何故」と動揺するシャドゥに、カルラはゆっくりと立ち上がりながら…言い放っていた。
「――父上を、殺したことが仇になりましたね…そのお陰で私は、……あなたの同胞(はらから)にならずに済んだ。帝国に利用されるだけの駒と成り下がらずに…済んだ……!」
『…不可解だ。何故絶望しない、親子なのだろう』
「親子だからこそ!……父上を殺したあなたを、父上についてきた城の人達を殺したあなたを許せない…父の命を奪った帝国を許せない!!」
「お前のやったこと…最低だけど、……悲しみや絶望を怒りのパワーにして…繋ぎ止めることだってある。……彼女の心を!ツァールハイトの民達の想いを!!…壊せると思ったら…大間違いだ!!!」
「私は絶対あなたを…あなた達リーリエリヒト帝国を許さない。この命尽きるまで、民のため…そして父上の託した希望に応えるために、――リーリエリヒト帝国と戦うッ!」
これまでのケースから、今の状況なら確実に絶望しているはずだった。
だが…
カルラは絶望を乗り越え、立っている。
ジークフリード国王と、帝国に虐げられる民への想いと、自分を支援してくれるブリュンヒルド公爵
――そして、自分を立ち直らせようとずっと叫んでいた、ソウセイのお陰で。
シャドゥは絶望しないのなら始末するのみ、とカルラとソウセイを殺そうとしていたが
…そんな彼に、光の槍が直撃していた。
『がっ!?…こ、れは……光の…力。何故……』
「待たせたな!カルラ、ソウセイ!!」
「…いや、……遅かった…」
「酷い…こんな……」
光の槍を放ったのは、バーガー。
元・ラディス教の信者にして聖海騎士団の隊長でもあるバーガー…
そんな彼が、光の術の心得がないはずがない。
「だから『自分に任せろ』と言ったのか」と瞬平やユーテキが納得する一方で、ウィザードHDやミカは自分達が間に合わなかったことに拳を握り締める。
と、同時に、この状況を引き起こしたシャドゥへの怒りが強くなる。
――多勢に無勢
――その上、光の術を使える人間がいる
ここは撤退すべきだと思ったシャドゥだが、ファントム体を維持できず、自分を生み出したゲートの姿になる。
だが…
その姿には、他でもないソウセイが驚いていた。
「……コハク、父さん…?」
「「「えっ!?」」」
「コハクさんって、…ソウセイ君のお父さんの!?」
「…な、に…?……不可解、私はコハクなどではない…お前の記憶もない。……だが…!」
今がチャンスと思ったか、シャドゥは闇に紛れ込むように隠れる。
「しまった」とウィザードHD達は周囲を探すが、シャドゥは影に完全に溶け込んだ後。
くそっと舌打ちしながら、晴人は変身を解除し…ブリュンヒルド公爵邸に戻って体制を立て直すべきだと、提案。
国王を含めた犠牲者を弔う準備をするためにも、全員それに従っていた。
〜〜〜
葬儀に関しては、ブリュンヒルド公爵が中心となって準備を行う。
…カルラは色々と思うところがあり、少し落ち着かせたほうがいいとのことだった。
その一方で、晴人達はソウセイの身を案じる。
自分の父親がゲートで、シャドゥを生み出し、ジークフリード国王を殺害した…
動揺したり落ち込んでも仕方がないと思っていたのだが、意外とソウセイは割り切っていた。
「…晴人さん。ファントムはあくまでファントムであって、生前のゲートとは…まったく違うんですよね」
「あ、ああ。……ソウセイ…その」
「だったら、大丈夫です。……あのシャドゥは父さんの形をした、別の怪物…だから俺はシャドゥが倒されることに、何の躊躇いも無いです。むしろ、自分の手で倒すことができないのが……辛いところですよ」
「…ソウセイ」
晴人は分かっていた。
ソウセイが、無理に強がっていることが。
しかし、「シャドゥはコハクではない」と分かった上で…彼は晴人達に、自分の代わりにシャドゥを止めて欲しいと頼んでいた。
シャドゥを倒せるのはウィザードである晴人、そして、奴に唯一致命傷を与えられるバーガーだと分かっているからこそ、なのだ。
イーヴリンも頭を掻きながら、これからについてカルラとソウセイに尋ねていた。
「それで、…あんた達はこれからどうするんだい?」
「私は…父上達の葬儀をした後、本格的にリーリエリヒトと戦うための準備をします。ルーキスの皆も、城下町の人々も……皆、気持ちを一つにして」
「俺はルーキスのこと、カルラさんのこと、フライハウト団に報告するため…一度、リーリエリヒトに戻ります。ちょうど、イヴさんも戻ってきたことですし」
カルラは、葬儀の場で王位を継承することを宣言し…更に、亡き国王の遺言に従って、リーリエリヒトと戦うため立ち上がると約束。
ソウセイは、ルーキスとの円滑した連携を取るべく、ツァールハイトでのことをベッグフォードに報告するためリーリエリヒトに戻ると言う。
一番危ないのはソウセイだが、彼ならきっとうまく立ち回れるだろう…
晴人達はそう信じ、ブリュンヒルド公爵の屋敷を後にしていた。
「さて、と。俺達もこれからどうする?」
「それだったら…ウェルスという町に、タルボットと言う博士がいるそうだ。彼は現ウェルテクス社に反発し、帝国からのマークを受けているらしいからね」
「ウェルス…タルボット博士、……まさか…」
「イヴ、その博士、帝国に目をつけられてるって…」
「聞いた話だと、先代ウェルテクス一族の理念に同調し、敬愛していた。ウェルテクス一族についての情報も貰えるだろうし、帝国と戦うための大きな助けになるであろう人だ」
イーヴリンの話によれば…
ウェルテクスの軍事兵器に関してどうにかできないか、相変わらず面影堂に入り浸っていたアーヒバルド公爵に尋ねていた。
そんな彼からの情報で、帝国に目をつけられるほどの意志と技術を持った【少し】変人の老人博士がいるとのこと。
先代ウェルテクス一族…つまりはミカの家族の掲げる、「平和のための技術」と言う理念に賛同しており、様々なもの……特にシールド関係の開発もしているそうだ。
ユーテキは何やら頭を抱えていたようだが、ミカ達の次の行く先は決まった。
「――だったら、タルボット博士に会って…協力してもらおうよ!」
「そうだね。ウェルテクス一族の生き残りであるミカなら、話を聞いてくれるだろうし」
「…どうかなー…いきなり、塩をバケツで被せられると思うんだけど……」
「ユーテキ、お前何か知ってんの?」
「っていうか、バケツで塩…撒くの…?」
「――それだったらお土産に、アムニスフィールドに関するウェルテクス一族の資料を渡すのもいいんじゃない?」
と言う話を、瞬平の背後で告げる人間。
…サウルの姿が、そこにはあった。
***
あれ、主人公ってソウセイだっけw
そんな26話…おいホントに主人公誰だよ。
ザウバーの影に飲まれつつあることもそうだけど!これは原典も若干同じだからしょうがないけど!!
…
でも晴人は、DCDRWの時の士よりはまともだと思う。
士はエイジス・シンジ・ケイスケ・月島兄弟に飲まれすぎてた。
ベティちゃんw
なんでこう…こう、可哀想なのベティちゃん……まあ本家にいないキャラ(モンスター自体は存在しているけど)だからしょうがないけど。
そして…
イレナとヤナは、ここで退場です。どうなったのかはお任せします。
キルベルトは……知りません。
スピンオフにおける、アルティメットキマイラ撃破の理由…
そうです、あの衝撃波です。
鋼鉄の体を持つモンスターすら貫通すりゃ、アルキマなんて一撃ですわザウバーさん…
でも消耗は激しいらしい。
そして、ようやくカルラと国王が分かり合ったと思ったら…
シャドゥお前えええええええ!
※ゲーム中のジークフリード国王と、兵士の皆さんと、下々の方達は生存しています
まさかのシェリールートェ…
そして、絶望を押さえ込んだカルラさんマジパネェ。
ちなみに彼女の中のファントムは、ブリュンヒルデ……にしたかったんですが、ブリュンヒルド公爵とダブるので…ここは無難に、ヴァルキリー辺りで。
なお、「ソウセイ退場」と聞いて…ソウセイが死ぬと思った方、「トマトジュース」と叫んでください(理由:ソウセイはウォータースタイルが元ネタ)
次回!
…サウルさんマジサウル…