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タイトル未設定 - Magic23:悲しみの炭鉱

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Magic23:悲しみの炭鉱

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ツァールハイト大陸での旅を続ける晴人達。

彼らはミカのオリジナルJMとの関連性を調べるべく、炭鉱の町サブルムに向かおうとしていた…

その途中にあった小さな村で休息を取るついでに、アイテムの補充などを分担して行うことになった。

ミカはコヨミや凛子、ルルと一緒に防具屋や食料の買出しへ。

ザウバーとユーテキ、バーガーは武器屋…ソウセイと瞬平は道具屋でアップルグミなどを買いに行っている。

当然、一人余った晴人は…別行動。

小さな村なので宿を取るのは一人でも大丈夫だろう、との判断からだった。


「さーてと、宿屋は…っと」


晴人は宿屋を探すうちに、ある“異常”に気付いていた。

この村には女子供に老人と、力仕事を得意とする男達がどこにもいない。

いたとしても、足を怪我していたり…病気で寝込んでいる者ぐらいだそうだ。

だからなのか、食物を耕す仕事も女性達がやっているのだが…やはり力が足りないらしく、種蒔きをする以前の問題だ。

ふう、と汗を拭いながら畑仕事に精を出す女性に、晴人は声を掛けていた。


「――なあ、ちょっといいかな」

「はい…?なんでしょう」

「この村の男達って、どうしたんだ?」

「…知らないんですか?ああ、でも、よく見ればこの辺では見かけない顔ですね…リーリエリヒトから来た人でしょうか」


女性は訝しげな顔で晴人を見ながら、そう言う。

彼女の態度に疑問を感じながらも、放っては置けなかったのか、ランドドラゴンの指輪を取り出す。



「とりあえず、手伝うよ」

「…いえ、結構です」

「女性の細腕じゃ畑を耕すのに1ヶ月は掛かるだろ。大丈夫、この分なら…種蒔き含めて、10分ぐらいで終わるさ」

<ランド、ドラゴン ダンデンドンズドゴン、ダンデンドンゴン!>

<チョーイイネ! スペシャル、サイコー!!>


晴人はウィザード・ランドドラゴンスタイルに変身すると、ドラゴンクローで畑を耕し始める。

そのスピードはかなりのもので、女性が畑を耕すより遥かに速い。

続いてウィザードRDはハリケーンドラゴンに変身すると、そのスピードで一気に畑中に種を蒔き…

最終的にはウォータードラゴンのシューティングストライクで簡易的な雨を降らし、畑全体に水を与えていた。

その力には女性もぽかんと口を開けており、晴人は変身を解除しながら、女性に笑顔で言っていた。


「…とまあ、こんな感じ」

「……あなた、一体何者…?」

「通りすがりの、魔法使いだよ。それよりも、何で男達は…」




「――おーい、晴人!久しぶりだなぁ、お前!!」



…聞き慣れた声。

…できればあまり会いたくない人物。

晴人が恐る恐るその方向を見ると、そこにいたのは……JMハンターズギルドの長、ルピートの姿。

ルピートは気のいい笑いを見せながら、晴人の背中を叩いていた。


「何だ、お前らもツァールハイトに来てたのか?まっ、確かにここはサブルム炭鉱を始めとして…多くのJMが眠っているって噂だからなぁ」

「まあ…色々あってさ」

「そうだ、お前、暇なら一緒にテテル山脈にあるっていうJMを探しに行かないか?お前とはいいコンビだと俺でも思ってる、お前とならどんな難関でも余裕で突破できるぜ!」

「行かなーい!絶対行かなーい!!」

「そんなケチケチすんな、で、お前あれからどんなJM手に入れたんだ?手品のネタ増えたか?」

「俺JMハンターじゃないし…手品師でもないから!魔法使いなのー!!」


やっぱこの人マヨネーズだ!

そんなことを思いながらも、晴人は全力でルピートの誘いを拒否。

そして…

3分間の押し問答の末に、ようやく晴人が会話の主導権を握り始めていた。


「……ところで!あんた一応JMハンターなんだろ、サブルムに興味はないのか?」

「サブルム?まあ、あそこはJMが多く発掘されるって話ではあるな」

「そう、そこ。…サブルムだったら俺達も行くし、不本意だけど、一緒に行ってやらないでもないけど…」

「あーあー、やめとけ。サブルムは確かに俺達JMハンターにとっちゃ宝の山。でもな……【君子危うきに近寄らず】、って知ってるか?」

「どういうことだ?」

「サブルムは帝国軍がいくつか駐屯している。まあ、そいつらが発掘の主導権を握ってるって奴だな」



ルピートの話だと…

炭鉱の町サブルムは、結構前から帝国軍主導で発掘作業が行われているそうだ。

それだけなら、特に問題はないだろう。

しかし、サブルムや近隣の村から男手を徴集しては…彼らを使ってJMを発掘している。

それも休ませることなく、無償で…

女性もルピートの言葉にこくりと頷きながら、鍬の持ち手を握り締める。


「…私の父や兄も、帝国軍に連れて行かれたわ。家には、病気の母親もいるっていうのに…あいつらは私達の話を、聞いてくれやしなかった」

「しかも、聖海騎士団までサブルムに向かってるって、昔なじみからの情報があってな。悪いことは言わねぇ…サブルムには行かないほうが得策だ」

「だけど、」

「――その話、本当なの?」


偶然にも、食料の買い出しを済ませた後のミカが…話を聞いていた。

当然、近くにはルルや凛子、コヨミもいる。

ミカと凛子に聞かれてしまえば、この後の方針は決まったも同然。


「だったら、何としても助け出さないと!」

「そうよ!このまま放っておくなんて、できるはずないじゃない!!」

「…だよねー。じゃあ、瞬平達にも話して……出発の準備でも整えるか」

「おいおい、本当に行くのか?」

「放っておけないのも事実だろ。大丈夫、そんな簡単にやられるような奴ばかりじゃないから」




そんな話をしていると…

「大変だ」と、子供達が大騒ぎしながら走ってくる。

どうしたの、と女性が声を掛けると…子供は慌てたような様子で、説明していた。


「大変だよ!帝国軍が、こっち来てる!!」

「本当なの!?」

「本当だよぉ!だって、遠くに旗が見えたもん!!」

「どうしよう、俺の父ちゃん…この間病気がよくなったばかりなんだ。今度は、父ちゃんが連れてかれちゃうよぉ!」

「――ベム、あなたのお父さんに今すぐベッドに寝るよう言ってきなさい!…そこのあなたも、うちの倉庫に隠れてください……捕まったら、強制労働に連れて行かれます!!」


女性はベムという少年にそう言うと、晴人にも隠れるよう指示する。

確かに、晴人は貴重な若い男性の労働源。捕まえないはずもないのだ。

ミカ達も念のため隠れることにし、凛子はユーテキ達にこのことを伝えるよう走り出す。

一方で…

「帝国軍が来る」という話を聞いたルピートが、いつの間にかいなくなっていることにコヨミが気付く。


「晴人、……あのルピートって人…いない」

「あのおっちゃん、逃げ足は速いからなぁ…大丈夫だろ。仮にもJMハンターズギルドの長を捕まえるわけにも行かないし」






〜〜〜






瞬平とソウセイは、道具屋での買い出しを無事に終えていた。

後は、晴人達に合流するのみ。

宿屋のほうに足を向けていると、ソウセイは「あっ」と声を上げる。


「……しまった…すみません、俺、さっきの店に財布を落としたみたいで」

「えっ、それなら早く行ったほうがいいんじゃ…僕ここで待ってるから」

「すみません、ありがとうございます」


ソウセイは頭を下げると、荷物を置き、財布を取りに戻る…

瞬平も財布を落としたりすることは日常茶飯事なので、うんうんと納得する。

そうしていると…

街中に甲冑の音が響き、なんだなんだと瞬平はうろたえる。

そして、一人の軍人が瞬平の前に来ると、その腕を強引に引っ張りながら馬車に連れて行く。


「お前…旅の者か?腕が細いが、まあいい……来い!」

「え?ちょ、ちょっと…ええー!?」




その頃…

ユーテキやバーガー、ザウバーも買い出しを終え、晴人達に合流しようとしていた。

荷物持ちは、じゃんけんに負けたユーテキという…ある意味可哀想な結果になっていたが。


「…ところで、バーガーさんって…なんでローブ装備できるんですか……?」

「聖職者だからだろ。……むしろお前、ツッコミ入れるべきはクローク・リボン・ミトンと専用装備の多いルルだろ…?」

「確かに。……逆にミカとイーヴリンは、鎧・兜・篭手と…女なのにゴツい装備ができるところにツッコミが…」

「……確かザウバーと一致してたよね、その装備品…」

「剣士系の宿命って奴だな」

「まあ、あいつらにメイドキャップやラブリーリボンもどうかと思うがな」


いや、ルルにセクシーミトンもないだろ…

バーガーがそんなことを話していると、いつの間にかユーテキの背後にぴったりとくっつく青い髪の男がいることに気付き、叫ぶ。

当然、ザウバーもその人間に気付いて驚くし、ユーテキなど叫び声にびっくりして逃げていた。


「やあ?」

「――なんかいたあああああああああああ!!?」

「お前…再登場までの間隔を、1話も空けずにやるのもどうなんだ!?」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!」

「え、お前知り合い?これの知り合い!?」

「前に話していたサウルとかいう奴だ。…というかユーテキの奴、逃げ足速いな」

「失礼するよね?」



ニコニコと笑みを見せながら、そう述べるサウル…

お前確信犯だろ、とバーガーとザウバーは思いながらも、何故ここにいるのか尋ねようとしていた。

だが…

その前にサウルは、メガネを整えながら話を始める。


「……風が荒れてるなぁ」

「「?」」

「あ、四大元素って知ってる?この世にある総てのものを構成するのに必要なもののことで、火・水・土・風の事を指しているんだ。まあ、それより更に上位なのは光や闇なんだけどね。まあそれはともかく、この世界にとって必要な元素は、他のものよりも多くエネルギーが溢れている。アムニスフィールドも四大元素を利用して構築されているからね。だけどある一定の周期で、四大元素のうち一つの力が極端に偏る日があるんだ…今のこの時期だと、風の力が特に強まっているね。たぶん次の周期では、土の力が高まり……更にその次は火。四大元素の力の上昇周期は基本的に火→水→風→土の順だからね」

「…ザウバー………解読できるか?」

「知るか。つまり風が荒れているって事なんだろ」


相変わらず長い話をしたがるサウルに、バーガーはついていくことができず、ザウバーは頭を抱える。

ちなみに彼ら、今、何か重要なことを聞き逃した気がしなくもなかったそうだが…

話の内容の大半すら分かっていないので、超スルー。


「風はいいよ。風が吹くことで空気の循環もできるし、洗濯物もよく乾く。……まあ、時には大きな木をなぎ倒すほど強い暴風となるわけだけど…付き合い方さえ間違えなければ快適なものだ」

「まあ確かに…」

「で、お前は何をしに来たんだ?」

「警告だよ。帝国軍がこの町に来ている、隠れないと面倒なことになるよ」

「「早く言えよ!!」」



風云々よりそっちが大事だろ!…とバーガー。

なんでこう他の奴とテンポがずれているんだ!…とザウバー。

色々と文句を言いたい彼らであったが、遠くから騒ぎの声が聞こえる。

更に、遠くからはリーリエリヒト帝国郡の旗が見え、ザウバーとバーガーは慌ててその場から逃げていた。

…その一方で…


「ちょ、ちょっと…何なのさああああああ!?」

「大人しくしろ!」

「おい、このガキ大丈夫か?」

「文句も言ってられないだろ、貴重な労働源なんだ」


ユーテキもまた、瞬平同様に誘拐されていた。





その様子は、シャドゥを通してシラスとギリオンに伝わっていた。

まさか彼らがツァールハイト大陸にいることもそうだったが、うまいこと帝国軍や聖海騎士団とぶつかってくれるとは。

ミカの聖獣の力や晴人の魔法使いとしての力を見るには、ちょうどいい実験台だろう。

シャドゥにはそのまま監視を続けさせ、更にただの人間ではミカも力を使わないかもしれないと思ってか、イフリートと連携を取らせるよう指示。


「シラス様。イフリート、準備万端のようです。ウェルテクスの娘達が炭鉱に来れば、戦闘を行うとの事でした」

「いいでしょう。……さて、奴らがツァールハイトにいることが分かりましたが…どうしますかな?キルベルト殿」


シラスがそう言いながら、視線を向けた先にいたのは…キルベルト公爵。

ウェルテクスの研究資料をミカ達に奪われたのがシャドゥ経由で知られ、こうして呼び出されていたのだ。

彼としても、名誉を挽回するためには…何としてもミカ達を捕まえなければならない。

土下座をするようにシラスの前に頭を下げ、自分に向かわせるよう頼み込む。


「…お、お願いしますシラス様!私にもう一度チャンスを…あのウェルテクスの娘には、大事な大事なマロンちゃんを殺された恨みがあるのです!!」

「ふむ…そう言っていますが、どうしましょうかな?ギリオン殿」

「私としても、よろしいかと思います。……できる、できないは別にして…何かの役には立ちそうです」

「成程、そういう見方もありますな。――キルベルト公爵…失敗すれば、どうなるか…あなたならば分かりますな?」

「……誠心誠意、頑張らせていただきますッ!」



ははー、と頭を下げながら、キルベルトは早速ツァールハイト大陸に向かうための船を手配する。

その一方で…

ギリオンはくすりと笑いながら、シラスに話をしていた。


「【神の剣】、ほぼ完成しつつあります。最後の仕上げは、シラス様がお願いします」

「分かりました。……くく、【神の剣】が完成すれば、恐れるものなど何もない…まさに天から来る裁きの神剣、と言いましょうか」


……その話を、イーヴリンは物陰で隠れながら聞いていた。

アーヒバルド公爵の知り合いである研究員の力を借り、侵入することは容易だった。

彼女は【神の剣】というものが、アーヒバルド公爵の言っていた破壊兵器だと睨み…それをどうやって止めるべきか、考えていた。

ここでウェルテクス社のシステムをダウンさせようにも、リスクが大きすぎる…

かといって、発動を阻止しなければどこがどうなるか…


(……とにかく一度、アーヒバルド公爵の元に戻るか)






「――瞬平とユーテキが、いなくなった!?」

「はい。僕が戻ってきた時には…荷物だけが、乱雑に落ちていて」

「俺達もだ。…直前にユーテキが、いつの間にかいなくなった幽霊みたいな奴のせいで驚いて逃げたから……それから後は」


ソウセイやバーガーは、頭を抱えながら晴人に話す。

…どうやら、二人は帝国軍に連れて行かれた可能性が非常に高い。

まったく、と思いながらも、どうやって二人を取り戻すべきか考えていた。

彼らだけではない…炭鉱に連れて行かれたという、他の人々もだ。

晴人は頭を掻きながら、少し危険ではあるが…一番確実な作戦を話す。


「……しょうがない。今は、これしかないか」






〜〜〜






炭鉱の町・サブルム。

この町ではやはり兵士達が駐屯しており、なかなか動きが取りづらい…

しかし、単独ではやはり微力な辺り、主力の大半は炭鉱にいるのだろう。

凛子とコヨミが兵士を一人ずつ人気のない場所に誘いこみ、そこを隠れていたバーガーが気絶。

そうすることで、全員分の鎧を手に入れていた。

問題は人によっては体格が合わずぶかぶかで、しかも汗臭い。

ミカは難しげな顔をしながら、晴人に尋ねる。


「…もうちょっと他になかったの…?」

「しょうがないだろ。兵士に成りすまして潜入するほうが、確実なんだから」

「あれ…あれれ?」

「どうした、ルル」

「ザウちゃん、ポポがどこか行っちゃったの!」


ルルの言葉に、ザウバーだけでなく他のメンバーも周囲を探し始める。

だが、珍しいとはいえ小柄なサルであるポポを見つけるのは、難しい。

鎧に既に着替えた晴人達はおおっぴらに町を歩くわけにも行かず、まだ着替えていないルルやミカ、コヨミに凛子が探すことになった。

その間に、晴人達は捕まえた兵士達を何処に隠すか悩み…

満場一致で、資材置き場に捨てることになった。




ルル達がサブルムの町を探していると、やはりここも男の数が少ない。

町もどこか活気が少なく、先程までいた村のように耕す男手のいない畑は…未だ、種を蒔ける状態ではない。

そうしていると…

ポポは一人の少年と一緒に遊んでおり、ルルは声を掛けていた。


「あ、ポポ!どっか行っちゃ駄目だよぉ!!」

「ポポ〜」

「…君、こいつの飼い主?」

「ううん。ルルとポポは仲良しなんだよ!ねー、ポポ」

「ポポッ、ポポー!」


ポポは身軽にルルの肩に飛び乗ると、頬ずりをする。

そんな彼女達を、羨ましそうに見ている少年…

どうしたのだろうか。

ミカが気になっていると、凛子は「もしかして」と少年に尋ねていた。


「……あなたのお父さん、もしかして今、炭鉱にいるの?」

「…そうだよ。あいつらさえ……帝国軍さえ来なかったら、父ちゃんはちゃんと毎日家に帰ってこれたんだ…だけど……!」

「そっか…あなたも、被害者なのね」

「お姉さん達も…?」

「そうよ。私達も、大事な仲間を炭鉱に連れて行かれたの…だから、これから取り返しに行くところ」



どうやって、と少年が声を上げる。

すると…

鎧を着た晴人達が、元々の兵士達を隠し終えたのか、こちらにやってくる。

それを見た少年は怯えていたが、コヨミが「大丈夫」と彼を宥めていた。


「大丈夫、晴人達は私達の味方。リーリエリヒトの軍じゃないわ」

「…本当に?」

「兵士達、隠し終えたぜ。……その子は?」

「帝国軍に、お父さんを強制労働されている子らしいの。…ねえ、瞬平達と一緒に、この子のお父さんも連れてこようよ!」

「そうね、それがいいわ!」


ミカの案に、凛子も賛成する。

確かに、とバーガーも頷きながら…遠い目をして、少年の頭を撫でていた。


「小せぇ子供が親に会えねぇなんて…そんな辛いことはないぜ。安心しろ、俺達が連れてきてやる」

「そうだね!それに…待ってる間、ポポと一緒に遊んでればいいよぉ!!」

「本当に!?……あ、僕、タフィーって言うんだ」

「タフィーか。それじゃあタフィー、俺達に任せて家で待ってるんだ。……そうだ、コヨミに凛子ちゃんも、ここで残っていてくれ」


分かった、と晴人の言葉に頷くコヨミと凛子。

そんな彼らの優しさに、嬉しくなったタフィー…

ごしごしと目を擦りながらも、父親の特徴について話していた。


「……父ちゃんは…ババックって名前。ブロンズの髪をして、首に僕の作ったペンダントをかけてるはずなんだ」

「炭鉱に勤めているなら、強制労働に連れてこられた農家の人よりも体格のいい人だと思います。タフィー君の年齢から考えて、バーガーさんより歳は若いかと」

「さっすがソウセイ、推理力があるな。……さて、それじゃあ行きますか」





アキドゥム炭鉱。

サブルムの町から少し離れた場所にあるここには、労働者だけでなく兵士達も多く存在している。

労働者達は殆ど碌に食べていないのか、少しやつれている…

「酷いな」と思いながらも、鎧をつけた晴人達は見張りの兵士に話をしていた。


「…交代の時間だ」

「交代の時間だって?早くないか」

「気のせいじゃないのか」

「今日はまだまだ長いんです、早めに休憩を取るのもいいでしょう。酒場は今、空いてますよ」


ソウセイの言葉に、「それもそうか」と見張りの兵士達はこの場を晴人達に任せる。

兵士達がいなくなったのを見届けると、彼らは急いで炭鉱の中に行き…

ミカとルルは近くに兵士がいないことをいいことに、鎧を脱ぎ捨てていた。

ザウバーや晴人、ソウセイにバーガーも…他人の汗臭い臭いがついた鎧は長く着ていられないのか、その場に脱ぎ捨てる。


「…あー、臭かった!」

「臭い凄かったの〜」

「さて、問題はババックという男だが」

「ソウセイ…何か分からないか?」

「炭鉱で元々働いている人なら、当然力もあるでしょうし…まだ発掘の進んでいない奥のほうにいるのではないでしょうか。俺の勘ですけど……」

「お前の勘ってあんまり外れないからな。行ってみようぜ」



炭鉱を進むと、モンスターの巣穴らしきものがいくつか点在しているのを見かける。

更に、そこから出てくるモンスターを駆除しているJMハンターも。

こういうことは、ソウセイよりザウバーのほうが事情を知っているだろうと、晴人は彼に尋ねる。

彼の話だと、アキドゥム炭鉱のような場所は少なくないらしく…そのモンスターを駆除するためにJMハンターを雇うことがあるのだそうだ。

JMハンターと言っても、情報屋をしていたりモンスター駆除したり色々なんだな、と晴人は呟く。


「ルピートのおっちゃんみたいに、JM収集を中心にしている人もいれば…イヴみたいな情報屋も、さっきのハンター達みたいなモンスターの駆除を生業としている奴もいる。様々なんだな、JMハンターって」

「……ルピート?」

「はい。JMハンターは帝国によって、自由に活動できる権限を与えられていますから…JMハンターと言う肩書きを利用して、色々な生業をしている人も多いそうです。だから、ギルドには様々な情報が集まるんですよ」


ルピート、と言う名前にザウバーが反応していたが…

その前にソウセイがJMハンターについて話し、へぇー…とミカや晴人は納得していた。

一方で、炭鉱を進むと…やはり、顔色のよくない労働者ばかり。

中には、「どうして自分達がリーリエリヒトのために働かないといけないんだ」とぼやく者も。

炭鉱を掘って出てくるのは殆どが石炭で、ミカ達が見た限りではJMが発掘された様子はない。

ソウセイの話では、元々アキドゥム炭鉱は石炭を掘るための場所。

たまたま十数年前にJMが大量に発掘されたこともあったが、それ以降はあまり見つかっていないそうだ…

しかしJMを求める帝国は、それを独占しようと労働者達を使って炭鉱を掘り進めているのだろう。


「やっぱり納得できない。ここにいる人達だって、家族が家で待っているはずなのに…」

「だが、流石に全員は無理そうだな。足並みもなかなか揃わないだろうし、また帝国軍が労働者達を連れ戻す事だってあるわけだ」

「…」

「――おい、あそこ。あそこにいるのが、ババックじゃないか?」

「――それに……あっ、瞬平とユーテキもいるな」




ザウバーの言葉に、ミカは何かを考えていたようだが…

バーガーと晴人の声で、前のほうを見る。

そこにいたのは、つるはしを持って労働に勤しむ二人の不憫と…タフィーから特徴を聞いていた通りの男。

ソウセイの推測どおりの出で立ちで、貫禄すら感じられる。


「うわああああああ、ミカああああああああああ!」

「はーるとさあああああああああん!」

「あんた達煩い!」

「…あんたがババックさん?」

「そうだが…あんた達は?」

「俺達、そこの二人と一緒に…あんたもここから出しに来たんだ。早いところ、ここから出ようぜ」


わあわあ泣き叫ぶ不憫にはミカが一喝し。

晴人の言葉を聞いたババックは、首を横に振る。

「どうして」とルルが声を上げると…

タフィーには一人で待っているよう言い聞かせており、そもそも自分がここから抜け出そうものなら、それこそあの町に住むことなどできなくなる。

その上、自分がここから離れれば…一緒に働いている者達に迷惑が掛かり、何をされるか分からないとの事。



「あいつに寂しい思いをさせていることは、分かっている。だが、あいつらがいる限りどうしようもないんだ!」

「ババックさん…」

「だったら、だったらせめて顔だけでも見せてあげて!お父さんが無事だと分かったら、タフィーもきっと元気になる……だから!!」

「俺からも頼む。……親と子供が離れ離れで暮らしているなんて、子供にとっちゃ辛いことこの上ない。俺も親だから分かるんだよ…あんたの気持ちも、父親がいなくて寂しいタフィーの気持ちも」


ルルとバーガーは、一緒になってババックを説得しようとする。

そんな彼らの言葉に、思うところがあったのだろう…

しかし、騒ぎは奥のほうにいるミッドノクスのメンバーにも伝わり、彼らは急ぎ足でやってくる。

「しまった」と晴人が叫ぶが、既にミッドノクスは到着した後。

ライムント・デュラ・マクシミリアンの三人は、リーリエリヒトにいるはずの彼らがここにいることに最初は驚いていた。


「まさか、この炭鉱の奴らを助けるとか言わないだろうな?」

「…無駄なことを」

「おめぇらみたいなのがいるから、子供が辛い思いをするんだろうが!」

「ラディス教のためなら女子供でも容赦しない聖海騎士団の隊長さんとは思えないセリフだな!…おっと、今はただの裏切り者だったか」

「おじちゃんをあんた達と一緒にしないで!あんた達のせいで、ルル…今すっごく機嫌悪いんだからぁ!!」





このまま、一触即発の戦いが起こるかに思われていた…

その時だった。

急に坑道の中の熱気が高まり、ユーテキもマフラーを取る。

何なのこの暑さ、と彼がぼやいていると…

――次の瞬間、ライムント達のいる壁を突き破り…ファントム・イフリートが現れていた。

当然、落石が頭に当たったミッドノクス3人は……そのまま気絶。


『…ぬごおおおおおおおお!』

「「「ぐあっ!?」」」

「うわっ、…あの人達、運ないですね…」

「日頃の行いだろ。……それよりも、あれもファントムか」

『俺様はイフリート…炎のファントムだ!お前達には、たっぷりと礼をしてやらないといけないと思っていたところなんだよォ!!』


瞬平はザウバーの後ろで十字を切り、「日頃の行い」とぶった切りながらザウバーは刀を構える。

一方で、イフリートはまるで自分達を知っているかのような言動…

一体何処で会ったと言うのか。

少なくとも、晴人達はイフリートと初対面だと言うのに。


「……とりあえず、あの敵は俺やミカ、ルルを中心に戦ったほうがいいな。ルル、火のファントムだけど…大丈夫か」

「ちょ、ちょっと怖いけど…タフィーのためだもん!頑張るよ!!」

「そっか。…バーガー、ユーテキ、一応ルルのフォローを頼みたい。瞬平とソウセイは、なるべくここから離れるよう…炭鉱の人達を避難させるんだ!」

<ウォーター、プリーズ スィ〜スィ〜スィ〜スィ〜♪>


晴人はウォータースタイルに変身し、コネクトでウィザーソードガンを取り寄せる。

一方で、イフリートは憎しみの炎を体から噴出させながら…

ウィザードWSに炎の拳を振るっていた。






***




悩んで、サブルムのほうをやりました。

ちなみに…

ウィザダン更新したいです。

したいですけど、やっぱ本編町の部分が色々ありますねー…

まあ、予定では賢者の石とか何それ美味しいの?になりそうですがw

(そもそもウィザダンにコヨミポジションがいない時点で…)


ルピートまさかの再登場w

ユーテキと瞬平…は、やっぱりこうなりますよねーww

そして、お前もかブルータスなサウル。

この人は基本的にフリーダム。そして、彼の話は次回以降でのフラグ成立回。



キルベルトも再登場しましたね。

何だ、この再登場祭り。

…まあ、ミッドノクスのメンバーはほぼ影が薄いのでどうでもいいんですがw

むしろ…ファントムいるのにお前らまで消化しきれねーよ状態。

でも、聖海騎士団のフォスターは回収したいですね。あの人、結構いい人なので。


イフリートもようやく出てきました。

しっかし、「運がない」とか「日頃の行い」とか、結構酷いなお前らw

まあ…うん、しょうがないですけどね!

でも、壁を突き破ってきたイフリートさんも相当の馬鹿だと思うんだ。

イフリート自体はセルシウスよりたぶん…弱いと思います……

むしろセルシウスが異常。




次回は…

VS聖海騎士団までこぎつけられるかがw

無理ならイフリートに1話費やして、次々回でVS聖海騎士団&サウルの立てたフラグ回収。