翌日…
【面影堂】に集まった晴人達は、ステイアの界域に向かうかどうかの最後の決断をしていた。
ソウセイも最初は晴人達と最後まで同行しようとしていたものの、父コハクに止められてしまう。
確かに、『二度と戻れない』可能性を考えると、非戦闘員で尚且つ肉親がいるソウセイは残したほうがいいだろう。
ソウセイは残念そうな顔をしながらも、晴人達に全てを託す。
「…皆さん。後のことはお願いします」
「ああ、任せろ」
「でも…晴人達も行くのかい?」
「そうなの。はるとん達は、この世界とは…」
「確かに関係ないかもしれない。だけど、ステイアは俺達がシラスやオリジンの計画を許してしまったからこそ絶望し、暴れている……だからこそ最後まで戦う。そして、ステイアを…救いたい」
「僕達も…戦うことは出来ないけど、何としても最後まで見届けたいんです!」
晴人達4人がついてくることに、イーヴリンとルルが止めようとするが…
彼らは既に、最後までこの旅に付き合う覚悟を決めていた。
深く関わった以上、自分達だけのうのうと帰ることはできない。
自分達をファントムとして作り変えてまでも、人間を排除しようとするステイアを絶望から救いたい…
そんな彼らの気持ちに触れたイーヴリンは「仕方ないね」と諦めた顔を見せる。
だが、どの道こうなることは分かっていたのだろう…その表情には、笑みが見えていた。
その一方で、バーガーは『一番決断の早そうな2人』が来ていないことに疑問を漏らす。
「ところで、――ミカとザウバーは?」
「二人でしたら、今朝パヴェル様と一緒にウェルテクス屋敷のほうに向かったみたいです。そんなに時間は取らないみたいですが」
――ウェルテクス屋敷。
かつてここでステラとバグバード・タルムードが殺され…
そして、特務機関Gの手によってクラウスも死んだ。
悲しい惨劇の起きた屋敷…
それでもこの屋敷は、兄妹にとっては懐かしい我が家なのだ。
パヴェルには外のほうで待ってもらい、ミカとザウバーは屋敷の中を歩く。
ここに来た理由は2つ。1つはステイアとの最終決戦に向かう前に、ここに来ておきたかったこと…
もう1つは、ステイアに関する情報がないか探しに来たのだ。
しかし、目新しい情報はなかなか見つからず…ミカは小さく溜息をついていた。
「…ウェルテクスとステイアは何かしらの関わりがあるから、ステイアに関する情報が分かると思ったんだけどな……駄目か」
「……ミカ」
「どうしたの、ザウバー」
「…何があっても、お前は俺の妹であることに変わりはない。俺達は、ステラ母さんとバグバード父さんから生まれた子供だ…れっきとした、家族なんだ」
「うん、そうだけど…本当にどうしたの?そんな当たり前のことを言うなんて」
「……いや、」
ザウバーは何かを言いあぐねているのか、苦い表情を見せる。
それを見たミカは、不審がるものの…
「決戦前だから、当たり前のことでも言っておきたかったのかな」と割り切っていた。
とにかく、情報がなかった以上は晴人達と合流するべき。
ミカとザウバーは入り口前に待たせたパヴェルと合流し、リーリエリヒト城下町に戻る…
2人も合流し、いつもの顔ぶれが並ぶ【面影堂】。
どうやらこれまで旅してきた仲間は、ソウセイ以外全員ステイアの界域に向かうとのこと。
そして…
輪島は練磨したエネルギーJMをタルボットに渡し、タルボットはそれをゲートブレイカーに組み込む。
昨日の段階で晴人達の決断を聞いていた輪島は、こう言葉をかけていた。
「…あんまり無茶はするなよ。皆、絶対無事に帰って来るんだぞ」
「ああ、分かってるよおっちゃん」
「輪島さん…」
「僕達、絶対帰ってきます!だから、安心して待っててください!!」
「そうよ。ソウセイ、残った皆のことはお願いね」
「――言葉も済ませたみたいやな。全員リーリエリヒト城に行くで!これがワシら全人類の存続を懸けた…最後の戦いや!!」
タルボットの啖呵で、ミカ達はリーリエリヒト城まで向かう。
その際、ゲートブレイカーはコハクとウォルフガング・ベックフォードらの協力で運び…
未だ黒い霧に包み込まれているリーリエリヒト城に、集結していた。
タルボットとマルグリットはゲートブレイカーの照準を合わせ、晴人達10人は霧が消えたと同時に走り出すためスタンバイする。
「ゲートブレイカー作動まで、残り10秒!9…8…7…」
「準備はええな!?……3…2…1、――ゲートブレイカー…ぶちかましたれぃ!」
カウントダウンの終了と共に、タルボットがゲートブレイカーのスイッチを押す。
すると、砲台から強力な光線が放たれ、黒い霧に直撃する。
光が収まった後、黒い霧の中央には人が通るには充分すぎるほどの大きさの穴が開き、そこ目掛けて晴人達は走り出す。
穴は徐々に小さくなっており、最後尾の瞬平は慌てて滑り込む形でステイアの界域に突入することとなる。
そして穴は完全に閉じ…
残されたレヴィーは、霧の向こう側に行ったミカ達に向けて祈っていた。
「……頼むぞ、皆…」
〜〜〜
界域の中は、黒い霧の中に包まれていた。
そこに地面があるのかどうかすら分からず、晴人達ははぐれないよう互いの手を繋いで歩く。
ポポに関しては、ルルから離れないようぴったりと彼女にくっついていた。
本当に正しい道なのか、どこまで続くのか、いつになったら辿り着けるのか…
そんなことを誰もが考え始めていると、小さな光がきらりと光り、「出口かも」とミカが急かす。
ここまで来た以上、罠であったとしても後戻りすることは出来ない。
全員の意見が一致し、晴人達はその光の方向に向かって歩き始めていた。
そして…
――急に白い光が周囲を覆ったかと思えば、目を開けた時に広がっていたのは、前後左右上下と360度に転回する無数のモニターだった。
そのモニターには人の顔が映し出されており、それを見たユーテキと瞬平が驚いて腰を抜かす。
どこを見ても人の顔。
その異様な光景に凛子とルルは身震いし、ミカも正直怖いと思いつつも…自分の正面にいた一人の老人に尋ねていた。
「あの!…あなた達は、誰なの…?どうして、こんなところに…ここは一体……」
『――ウェルテクスの娘よ…私が、いや、我々が何者なのか……それは考えずとも分かることのはずだ』
「もしかして、あんたが…いや。……あんた達が【ステイア】なのか…?」
「えっ、でも晴人さん!…【ステイア】って、あの化け物みたいな姿だったはずじゃあ…」
「いや…ここはあいつらが作り出した空間だ。一時的に、俺達に生前の姿を見せているに過ぎないだろう」
「…それなら、合点が行くな」
晴人の問いには瞬平が異を唱え、しかしザウバーの意見にバーガーを始めとした全員が納得していた。
そうでなければ、納得がいかないことばかりなのだ。
晴人達はいつ戦闘になってもいいよう身構え、凛子・瞬平・コヨミも一歩下がる。
しかし、今のところ【ステイア】から仕掛けてくる様子はなく…一組の男女が、彼らに問いかけていた。
『あなた方の有史以前…我らがルキナのため、そこに生きる人間達のために作り上げたアムニスフィールドが、――よもやその人間の手によって崩壊することになるとは…』
『我々としても、とても残念でなりません』
「有史以前……って、そんな昔から!?」
「…もはや、現代科学を超越した……オーパーツだな」
『事実、そのようなものだろう。我々【ステイア】の持つ技術は、野心を持った人間に悪用されないため、歴史の表舞台に出ることのないよう自分達で処理をした…』
『今、この時代に【ステイア】の持つ技術が存在していれば……今以上にルキナは栄えていましたが、愚かな人間によって大量の破壊兵器を作るための糧となっていた。その可能性は充分考えられるのでは?』
【ステイア】の一人の問いに、晴人達…特にユーテキは、苦虫を噛み潰したような顔を見せる。
――確かに、彼らの技術が今のルキナまで伝わっていれば、著しいほどの発展を遂げていただろう。
だが、それは同時に、その技術を悪用したり兵器に転用したりして、結果的に戦争を巻き起こす道具にされてしまう…
更にはアムニスフィールドのエネルギー消耗も今以上に激しくなり、アムニスフィールドが完全崩壊する未来しかないのだ。
シラスやイシュトヴァーンのことを考えると、彼ら以外にもそのような野心を持って動く者はいずれ出て来ただろう。もしかすれば、ミカ達の世代になるより前に【ステイア】の粛清が始まっていたかもしれない…
『我々の、ルキナへの愛…』
『希望…』
『…願い』
『それを裏切った、お前達現代人類への絶望』
『怒り』
『それら全てが、今の我々…“ステイア”だ』
『そして…今一度思い出せ、ウェルテクス一族よ』
『お前達一族の誕生を』
『その…意味を』
怒り、悲しみ、失望、無表情…
様々な負の表情を見せる【ステイア】達は、モニターから一度姿を消し、代わりに別の映像が流れ始める。
――今思えば、この無数のモニターは…その“真実”から目を背けないようにするためのものだったのだろう。
映し出されたのは、誰かが撮影していたであろう研究記録データ。
一つの大きな培養液の中には、一人の少女が眠りに就いており…更にその姿は、ミカに酷似していた。
「ミカ、もしかしてあれ…前に見た」
「うん…エミルビス塔で見た、記録と同じ…」
「――って、ちょっと待て!あれをよく見ろ!!」
ユーテキとミカが不安げに見ていると、バーガーが突然叫ぶ。
一体どうしたと言うのか。
誰もがそう思いながら培養液の中の女性に目を向けると…
――女性は突然、シアーズの姿へと変化していく。
ミカと同じ、聖獣の姿。
今はまだケースの中で眠り続けているが、自分達の知るシアーズと瓜二つ。
…どういうこと
…もしかして、あの人も聖獣になれるの?
ミカがそんなことを思っていると、凛子は全てを悟ってしまったのか、その場に座り込んでしまう。
「凛子さん!?」
「どうしたの…凛子!しっかりして!!」
「…皆、ちょっと思い出して……これって、エミルビス塔にあった記録装置にそっくりなのよね…?」
「あ、ああ。そのはずだよ…設備も、【ステイア】達の様子も、殆ど酷似している…」
「そうだね…違うのは、女の人が突然聖獣に」
「――私達があの時見たのは、“【鍵】となるアンドロイドに関する資料”のはずよね…?」
そうですけど、と瞬平は言いかけ…口を止めた。
それは彼だけではない。
バーガーも、イーヴリンも、ユーテキも、コヨミも、凛子同様に“その可能性”に気付きつつあったザウバーと晴人も…
そして、ミカ本人も。
誰もが呆然としながら映像を見ていると、一つだけ映像が切り替わり、先程ミカと応対した老人が話しを始めていた。
『……アムニスフィールド計画を始めて2年目だった。我々はようやく【鍵】となる存在を作り出すことに成功した…自己防衛プログラムも正常に起動した状態でな』
「「「…」」」
『そもそもアムニスフィールドは、その膨大なエネルギー故に…人間の私利私欲からは完全に隔絶させなければならなかったのだ』
「そうして造られたのが、シンボルストーンと……【鍵】となる、ヒトに酷似した生命体…」
「優秀な学習能力を持つ、――アンドロイド…」
『そう。…エネルギーの制御を行う【石】と、アムニスフィールドに秘めた全エネルギーを開放するための【鍵】は別々に分け…その【鍵】はヒトと同じ生命として隠したほうが安全だと、我々は判断したのだ』
〜〜〜
【アムニスフィールド】
天上からの大災…宇宙からの隕石群からこの星を守るため、遥か古代に創造されたエネルギーシールド。
そして我々【ステイア】とは……アムニスフィールド創造のため集った、研究者達の総称。
アムニスフィールドは、そのあまりに膨大なエネルギー故に…人間の悪しき私利私欲からは絶対に隔絶されなければならなかった。
そこで我々は、“アムニスフィールドの総てのエネルギーを開放するための【鍵】”と、“アムニスフィールドの力をコントロールするための【石】”を別々に作り上げることにしたのだ。
【鍵】だけあっても、【石】がなければアムニスフィールドの力をコントロールすることは不可能。
【石】だけあっても、【鍵】がなければアムニスフィールドの力を総て扱うことはできない。
しかし…ただ普通に作り出すだけでは、駄目だった。
形あるもの、しかし物も言わぬし動けもしないただの置物では、利用されてしまう可能性が高くなる。
そうして我々は…
【石】は無機物、【鍵】は有機物として隠すことにしたのだ。
我々ステイアの技術ならば、容易かった。
そうすれば、この二つがアムニスフィールドの全エネルギーを扱うために必要なものと知られることはなく、利用される可能性は低くなる。
だからこそ…生み出したのだ。
ヒトと同じ、生命を。
「遂に完成したぞ」
「遂に、我々の“アムニスフィールド計画”」
「その要となるモノが誕生した」
「これで、アムニスフィールドは悪しき者の手から守られる」
「――彼女こそが…我々にとっての、希望だ」
我々は誕生した少女に、万が一の時のための自己防衛プログラムを搭載した。
普段は制御用のピアスを耳につけることで、プログラムの誤作動を起こさないようにした。
自己防衛プログラムとは…“シアーズ”と呼ばれる聖獣のこと。
母なる海…我々の希望といえるアムニスフィールド…それらを意味する、水の聖獣の姿を使うことで、【鍵】は自分自身の手で自らを守ることになる。
……我々としても予想外だったのは…
そもそも最初に防衛プログラムとして搭載したのは、“水”の力だけだった。
しかし、【鍵】の子孫ともいえる…そこのウェルテクスの娘、ミカは“ウィザード”の持つ魔宝石…とやらの魔力と惹かれあい、風・土・火の防衛プログラムを自分で誕生させたのだ。
土に関しては“防衛プログラム”とは言えないものではあったが、進化したことには変わりない。
そろそろ気付いた頃だろう。
【鍵】は、ヒトと同じ姿をした生命ではあるが…ヒトとは違う。
様々な環境に適応し、進化する生命体なのだ。
最初は我々の“言葉”を学び、“考えること”をするようになった。
彼女の進化は我々にとっても嬉しかったよ。
…彼女がよりヒトに近い存在になればなるほど、アムニスフィールドの【鍵】としての正体を知られることがなくなり、アムニスフィールドの平穏は保たれる。
アムニスフィールドは期限の日までに完成し、襲来する隕石群からルキナを守った。
我々は実験の成功、そしてルキナを守ったことに酷く喜んでいたよ。
しかし、先程も言ったとおり我々の技術は後世に残しておけば後々悲劇の火種となる…だからこそ、【ステイア】に所属する大半の者は研究資料を隠すための作業に移行していた。
残っていたのは、【鍵】とも言える“彼女”の進化の過程を観察・記録を自ら進んで志願したサウル・ウェルテクスと…その他数名の研究員、そして私だけだった。
「ねえサウル、ちょっと隠れさせて」
「…君はどうしてこう、落ち着きがないのかな。後で怒られるのは僕なんだけど」
「いいじゃない。だって、他の皆はいつも実験ばかりで口煩いし…あなたぐらいだもの、煩くしないのは」
「怒ってもしょうがないと分かってるからね。フューレ」
「……ねえサウル、フューレって、何?」
「君の名前だよ。名前。君だって、“生体ユニット”なんて名前、好きじゃないんだろう?」
「名前?」
「君は希望なんだ。皆にとっても、僕にとっても、これからずっと先の未来を生きる人々にとっても。……だからフューレ」
“フューレ”と名付けられた彼女は、サウルに心を許していた。
彼と一緒にいる間は、【鍵】としての使命を忘れ、まるで普通の少女のように過ごしていたのだ。
研究者と、単なる生体ユニット…
我々にとってはその程度の関係でしかなかった。
だが、2人はいつしかその垣根を越え、互いを“男”と“女”として認識し始めていたのだ。
【鍵】が誕生して3年の月日が流れ…
殆どの資料はエミルビス塔だけでなく、その他の様々な場所に隠し終えたところで……遂に“その時”は起こってしまった。
互いが互いの衝動を抑えきれずに、抱いてしまったのだ。
人も動物も昆虫も植物も、全ての生きとし生ける者が持つ【生命を残すための本能】…とでも言うのだろうか。
我々はすぐにサウルと【鍵】を引き離し、互いに会うことがないよう監禁していた。
「――答えろ、どうしてあんなことをした!」
「彼女が【鍵】と分かっているのに、どうして!」
「…分からない」
「何!?」
「…分からないんです、僕も。最初は僕も…単なるアムニスフィールドの、生体ユニットとしての彼女と接していた……ですが、……知らないうちに惹かれていたんです。【鍵】でもなんでもない、ただ一人の女性として…フューレを見ていたんだ…!」
掠れた声でそう告げるサウルの身体には、異変が起こっていた。
まるで【鍵】が防衛本能を発動させた時のような紅い瞳が、左の目に宿り…
更に調べたところ、彼の左腕には今までになかった紋章のようなものが刻まれていたのだ。
何故こうなったのか調べているうちに、サウルが【鍵】と行為をしている際…何らかの形で彼女の力が彼の中に流れ込んでしまったことによる、突然変異だと発覚した。
更に問題となったのは…
【鍵】が、サウルとの子を身篭ったこと。
恐らく進化の過程の中で、ヒトの女と同じような特性までもが彼女の中に生まれてしまったのだろう。
我々は何とか彼女から子供を取り上げようとした。
だが、彼女はそれを頑なに拒絶し…こう言っていた。
「私は…確かにヒトじゃない。アムニスフィールドの生体ユニットよ」
「……だけど私は…ヒトとして生きたい、サウルと一緒に……ヒトと同じ生き方をしたい!」
日に日に大きくなっていく、【鍵】の腹部。
【鍵】としての力や使命は、どうやらその身に宿した新たな生命のほうに受け継がれているのか、我々の目の前にいた【鍵】に【鍵】としての力はもはや、なかった。
いつしか我々のほうが折れ、サウルを解放し、二人は平穏を求めて我々ステイアの下を去っていった。
「これで良かったのか」という声も上がったが、――我々の最終目標は、『【鍵】がヒトの世に溶け込む』こと。
遅かれ早かれ、こうなることは明白だった。
【鍵】はサウルに任せ、我々は【石】の保管のほうに焦点を置いた。
「【鍵】は独自の進化を始めた、後は時に任せるのみ。……問題は【石】だ」
「どのように、保管しましょう」
「この研究所に封印しておくのは?」
「それは先の未来…この場所を荒らしに来た賊に盗まれる危険性がある」
「では、いっそのこと……こうしてみてはいかがでしょうか」
その時に出た案が、『わざと人目につく場所に置くこと』。
しかし、ただ置くのでは意味がない…
敢えてその石を神聖化することで、誰もそれを悪用するような発想をしないようにしたのだ。
そして…その方便として生み出したのは、ラディス教。
【石】はラディス教のシンボルストーンとして存在することで、崇高なる神様からの贈り物を悪用するような罰当たりな行為をしないよう戒める…そのためにラディスの予言は存在していた。
『アムニスフィールドから生まれしその力、聖なる蒼き石に封じられたり』
『古き世から存在する【聖なるもの】、蒼き光から紅き光へと変わる時、ラディスの神の審判が下される』
これが元々、我々の作った予言。
万が一アムニスフィールドの力を悪用し、それが崩壊するようなことがあれば…
我々ステイアはこれを許さない。
怨念となってでもこの世界に裁きを下すであろう、と。
――ルキナのためにアムニスフィールドを作った我々としては、この世界の行く末がただ、心配であった。
だからこそ、エミルビス塔にある記憶装置に我々の意思や感情・記憶をコピーしたものを宿し…体を失ったとしてもルキナを見守れるよう、存在し続けることに成功した。
だが…
〜〜〜
『それを、お前達ルキナに住む人間が打ち壊した』
『我々【ステイア】は、アムニスフィールドの力を悪用する人間に絶望し…』
『予言どおり、怨念となってでもこの世界を裁くために、戻ってきた』
『その際我々は、この世界に“異端分子”としてやって来たファントムのデータを、ウェルテクス社のサーバーデータを経由して取得し…』
『“ファントム・ステイア”としての実体を作り上げた』
『『『―――それが、我々の正体だ』』』
その言葉に、晴人やミカ…他の仲間達も、息を飲んでいた。
ステイアの正体。
ウェルテクス一族の誕生の秘密。
そして…文字通り怨念となって再び舞い戻ってくるほど、ルキナを愛していた彼らステイアの…絶望と悲しみの深さ。
特にミカは、「ちょっと待って」とステイアに呼びかける。
「…あなた達の話が本当なら、ウェルテクス一族は…私達は、人間じゃないの……?」
『【鍵】としての使命を受け継いだ貴様は、【鍵】…アムニスフィールドの全エネルギーを開放するための、生体ユニットでしかない』
『その役割は代々、一族の女にのみ継承されて来た…』
『だからこそ、ウェルテクス一族は女しか生まれなかった。【鍵】としての力を、確実に次の世に残すために』
『そして、【鍵】としての使命を無意識のうちに受け継いできていた代々の女も、分かっていたのだろう。…確実に世に子供を、【鍵】の宿命を背負う子供を産み出さなければならないと』
『……そのためか…男が生まれた例は、過去を遡っても…そこにいるオッドアイの男だけだ』
オッドアイ、という言葉を聞き…全員がザウバーのほうを見る。
右に赤、左に青のオッドアイ。
サウルのことをよく知っている“らしい”ステイアが、語り始めていた。
『…サウル・ウェルテクスも最初は…青の瞳だけだった。しかし、【鍵】と行為をしたことにより…アムニスフィールドの力の一部が流れ、瞳の色が変異したのだろう』
「……」
『お前も同じだったはずだ。自らがファントムを生み出し、それをきっかけに片目の色が変異した…と同時に、これまで存在していなかったはずの……サウルの持つ“紋章”も宿ったはずだ』
『そして…その紋章の力を消費して、ヒトとしての営みを続行していただけの話。お前自身はファントムを生み出した直後に死んだも同然なのだろう』
『尤も、……今は劣化アンドロイドの器を借りて生きているに過ぎないようだが』
「……ああ、そうだ。だが、そんな限られた命だったからこそ…何としてでも家族の仇を取りたかった。そして、この紋章の力がどうして宿ったのか…この力は、ウェルテクスとは何なのか知りたかった……そのための命だ」
「…お兄ちゃん」
「そして今は、――俺にとっての【希望】を守る。そのためなら俺は、……相打ち覚悟でお前達【ステイア】を倒す」
そう言いながら、ザウバーは両腰に帯刀した刀を抜く。
他の仲間達も、あまりの真実に一度は躊躇した…
だが、ミカはミカであってそれ以外の何者でもない。自分達の大事な仲間なのだ。
アンドロイドであろうが、人間ではなかろうが、関係ない。
…それに、ミカ達にも今の世界を守りたい理由はある。
「……ステイア…あなた達が本当にルキナのことを思っていたのは、分かるよ。だけど、……それでもこの世界を壊させない…だって私にとっては、――クラウスおじいちゃんやユーテキ達と出会えたこの世界は……かけがえのない、大切なものだから!」
「そうだよ!…確かに、シラスの…いや。僕達ウェルテクス者の研究員がしたことは許されないことかもしれない。だけど、その失敗を二度と繰り返さないために…伝えることは出来る!!」
「…確かに。私もミカ達と出会えたこの世界が大好きだ……だからこそ、守らなくちゃいけない。あんた達【ステイア】がどんなに正しかろうとね」
「そうなの!……それに、アムニスフィールドを悪いことに使ってた皇帝達はもういないから…せめて、ルル達が本当にルキナを変えていけるか見守っていて欲しいの。できればそのほうが、いいと思うよぉ」
「……正しいとか正しくないとかじゃないだろうな。どっちも自分達なりの【正義】を抱えているからこそ、ぶつかり合わなくちゃいけないんだ」
『――人は過ちを犯し続ける』
『今はよくても、遠い未来に同じ過ちを犯す者が現れる』
『これ以上、我々の希望が苦しむのを見続けるぐらいなら』
『我々が今の世代までに託してきた想いを踏み躙られるぐらいならば』
『私達の愛した世界が…ルキナが、我々の希望のせいで壊れていくのなら』
『…我らの手で、この時代で、終わらせる』
『さあ、始めよう……いや、終わらせよう。――最後の審判の時だ…!』
相容れぬ正義。
周囲のモニターは消え、晴人達も知るステイアの巨大な姿がその空間に出現する。
その瞬間から周囲の光景は白一色となり、これから先訪れるであろう虚無を意味しているようにも思える。
晴人は少しばかり唇を噛み締めながらも、この世界での最後の戦いに挑んでいた。
「――変身!」
<フレイム、ドラゴン ボー、ボー、ボーボーボー!>
***
最終決戦らしくなってきました。
しかし…
流石にソウセイは置いていかれましたかw
これまで便利キャラだったがばかりに…まあ、最終決戦はメインメンバー10人でと考えてましたし、しょうがないですね。
なお、ソウセイも“例の可能性”には気付いているんですよねー…
まあ今回は真相まとめ回でしたね。
ちなみに設定を固めるがてら書いてた文章(2013年4月9日と言う日付がついてるもの)を一部流用していますが。
サウルと【鍵】…フューレ辺りの話が特に。
馴れ初めはある程度やっときたかったんですよ…ええ、ある程度。
しかし年齢的にフューレはミカと大差ない(ミカの+2〜3歳)ぐらいなので、……サウルさん10代の女の子とやらかしちゃったことに…
でも、案外年の差結婚なんてありえると思います。あの世界。
――なお、サウルとフューレの歳の差(+出来ちゃった)結婚に関して納得しちゃった人は、ソウセイ×カルラの身分差婚を容認できる人です。
いや、しませんけど。あくまでもソウセイとカルラは共に戦う仲間って感じですねー。
……まあ、原典と大分反れてる小説なので、ソウカルやってもいいとは思うんですが……そこは読者次第と言うことで。
公式成立CPやカズハル・ヨシヒロ・レヴァヒナ・オニコー以外のカップルに関しては、割と適当ですね……いい例がソウジさん。
フューレの名前の由来は、未来=futureから。
…ウィザダンのミライちゃんとあんまり代わり映えしないなw
でもいいですよねー、“未来”って。希望・絶望問わず、自分が歩んだ先にあるものって感じで。
多分ソーマの最強スタイルもフューチャーって名前なんじゃないかな(適当/ただの予想)
というか、フューレもといアンドロイドの生殖能力スゲェ…
ほぼ確実に女しか生まない時点で。
なお、前にサウルが言ってましたが、男が最初に生まれる確率は極端に低いんですよねー…そして、男が生まれたとしても【鍵】の力が遺伝することは絶対にない。
まあ、【鍵】の力を持った女の子を生む前に母体が死んだら、その男が作った娘に隔世遺伝するってことはあるかもしれないでしょうが…
というか、原典自体がアンドロイドに関して本当に唐突だったものだから…
プレイしてて固まりましたよ。
そして、プレイ当時「ザウバーもしかしてアンドロイドか何かか!?目の色も左右違うし」とか思ってた自分の予想が、斜め上の形で当たってて爆笑した覚えが。
…赤い光の衝撃波に関しても、目からビームでも出したんじゃないかと思ってましたよ!
当時の自分はザウバーを何だと思ってたんだ!!
なお、――こういう勘違いがあったからこそウィザブレのザウバーがこうなったわけじゃありません。
まあ、確実に言えるのはミカはアンドロイド確定・ザウバー(原典)は人とアンドロイド半々ってところなんじゃないでしょうか?
少なからずバグバードさんは人間でしょうし。
さて、次回…
最終決戦、そしてオリジナルスタイルの登場!
ここで問題です。
Q.オリジナルスタイルの名称は何でしょう?
1.ホープ(希望)スタイル
2.フューチャー(未来)スタイル
3.アムニスタイル
4.ライフ(命)スタイル
5.プレイ(祈り)スタイル
6.アルティメットマドカスタイル