翌朝。
久し振りにぐっすりと眠れた晴人達は、朝食の席でこれからについて話し合っていた。
ちなみに、ユーテキと瞬平は未だ深い眠りの中
…というわけではなく、ルルが魔法で作り出した目覚まし時計によって叩き起こされ、黙々と朝食を食べていた。
今現在、晴人達の状況は最悪…
リーリエリヒト帝国からも狙われ、聖海騎士団からも追われ、ミッドノクスにも目を付けられ、帝国の内部にはファントムもいる。
見事に、身動きが取れない状況なのだ。
このことについて、晴人とイーヴリンが話しているところへ…ミカが意見を出していた。
「私、昨日の町長やザウバーの話を聞いて…リーリエリヒト国外に出てみるのもいいんじゃないかな、って思うの。そのほうが、色んなウェルテクスの技術にも触れられるし…一族のことも、何か分かるかも」
「成程。どうせ国内じゃ追いかけられるしかないんだ…国外なら俺達への関心も薄いだろうし、いいかもしれない」
「問題は、このご時勢で船が出ているかどうかだね。……ここから一番近いのは、やはりルトラ港か…」
「ルトラって…大丈夫なの?この間、帝国軍がいたけど…」
「――帝国軍は、グリュッグ国との戦争に向かった。更に、明日の昼に一便だけツァールハイト大陸行きの船が出る」
突然、彼らの話に割って入る男。
「誰」とミカやルルが武器を構えながら叫ぶが、男は慌てたような顔で帽子を取る。
その顔を見て、見覚えがあったのか…凛子は声を上げていた。
「えっと、確か…そう!ソウセイ君!!」
「お久し振りです、皆さん」
「えっ、どうしてここに?家は大丈夫?」
「そうよ。それに、私達が何でここにいるって…」
「実は俺、あの後、フライハウト団に入ったんです。シンクや母さんも、一緒に」
ソウセイの話によれば…
ヴォルトを生み出すたゲートの親に、『彼はフライハウト団に入り、帝国に対抗するため国外で諜報活動をしている』と説明していたフライハウト団のメンバーに、自分も入れてほしいと志願したそうだ。
もしかしたら、また誰かが徴兵されて…父・コハクを奪われた自分達のような思いをするものが、出てくるのではないか。
このまま、帝国を放っておくわけには行かない。
そんな一心で彼はフライハウト団の所属を決め、同時に、ヒスイやシンクも加わったそうだ。
「俺はレヴィーさんに頼まれて、セラピアにいるであろう皆さんに…国外行きの便が出ることを教えるために来たんです。俺だったら、帝国の奴らも気に止めないし…皆さんの顔を覚えているから」
「そうか。確かレヴィーは、ベッグフォードさんと共に警戒されている…迂闊に動けない以上、ソウセイを使ったほうが確実か」
「はい。…ただ、この便を逃すと、次はいつ船に乗れるのか分からないんです。……原因としては、ルーク枢機卿暗殺を目論んだ罪人を国外に逃がさないように、ということなんですが」
「…やっぱそうなるかー…」
晴人はソウセイの話を聞き、頭を抱える。
しかし、逆に明日までに国外に逃げ出すことさえできれば…
相手は自分達が未だ国内にいるものと思い込み、国外での動きが取りやすくなる。
ソウセイは乗船券を2枚も晴人に渡しながら、話をしていた。
「一応…部屋は予め、5人分のものを2つ取ってあります。…この間俺と一緒に連れて行かれたミストレイって奴は、船員として働いていたので……皆さんのことを話したら、部屋を空けてくれました」
「そっか。何から何まで、助かる」
「俺こそ、皆さんが来てくれなかったらどうなっていたことか。……デシンのことは残念でしたけど、でも、それもあったからこそ俺…フライハウト団で帝国と戦いたいって、思えたんです」
「…ありがとな」
「そうと決まれば、早速行くぞ。聖海騎士団もいつまでも砂漠を探しているような馬鹿じゃない、それどころか、港で待ち伏せしてくる可能性だってある」
ザウバーの言葉には、全員納得する。
ミッドノクス率いる帝国軍ならともかく、特務機関Gや聖海騎士団が『国外に逃亡する可能性』を考えないはずがない。
早めに行動しなければ、せっかくのチャンスも無駄になってしまうということだ。
「そうなの!だったら、早速ルトラにゴーだね!!」
一緒についてくる気満々のルルに、全員の視線が集まる。
ソウセイは「誰だろうこの子」と思いながらも、近くにいたユーテキと凛子に話を聞く。
一方のザウバーは、頭を抱えながらルルに訊ねていた。
「…何故お前もついて来るんだ…!?」
「だって、ルルの旅の目的も…元々は、魔法の武者修行だもん!それに、ミカちゃん達といたほうが……色々と面白そうだったし」
「面白そうで決めるな!」
「そうだよ。ルルの魔法は凄いから、ついて来てくれるのならすっごくありがたいけど…でも、私達の旅はとても危険なんだよ?」
「だからなの!危険な旅のほうが、武者修行にもいいし…とにかく、ルルも一緒に行くよぉ!!」
「ポポー!」
「やめたほうがいい」というザウバーやミカに対し、ルルは意固地でもついて行くことを決めている。
更には、ポポもザウバーにじゃれてお願いする始末。
「俺に懐かせるな!」と叫ぶザウバーをよそに、コヨミは晴人と話していた。
「どうする、晴人…?」
「うーん…どうせここで別れても、ついてくるだろうし…だったら一緒にいたほうが、戦力的にも何とかなるだろ。それに、ユーテキを放置するよりは安心だし」
「そうね…ユーテキよりは、まだ戦力になるわ」
「確かに…」
「ちょっ!?晴人さんにコヨミちゃんに凛子さん…皆揃って〜ッ!!?」
ユーテキへの言い分が酷い晴人達はさておき…
同行を認めてもらえ、ルルはポポと一緒に大はしゃぎ。
そんな彼らを見てくすくすと笑いながら、ソウセイは瞬平と話していた。
「なんだか、楽しそうな人達ですよね。帝国に追われているのに…」
「うん、僕も最初はとんでもないことに巻き込まれたって思ったけど…心のどこかで皆と一緒に、こんなに大騒ぎしながらやる旅もいいんじゃないかな……って、思うんだ」
「…確かに。色々な意味で、飽きなさそうですよね」
「まあ、…僕やユーテキ君の扱いがぞんざいなのが、ちょっと…アレなんだけどね……」
その頃…
ウェルテクス社では、ギリオンがシラスに報告をしていた。
「シラス様。お呼びでしょうか」
「ウェルテクスの娘と異国の呪術者…奴らの動向を、我々としては把握しておきたい。言っている意味が、分かりますかな?」
「当然。……実はラディウスの聖窟から、シャドゥに奴らを監視させております。これでどこにいても、奴らの監視が可能です」
影に潜み、静かに付け狙うシャドゥ…
確かに彼ならば、監視にも持って来いだろう。
シラスがミカや晴人を監視したいのには、理由がある。
――シャドゥを通して、ミカの聖獣の力や晴人の魔法について、調べようとしているのだ。
「ほっほ、それなら宜しいのです。……ところで、ファントムの数は…」
「ウンディーネが倒れたことで、こちらが把握しているファントムは……シャドゥ・セルシウス・イフリートのみになりました」
「…ふむ…これは、少し手を打たねばなりませんな」
「ご安心ください。【神の剣】さえ完成すれば、大量のファントムが生まれるでしょう……あれはウェルテクス社の技術の結晶であり、ファントムが放つ最強最悪の…絶望の火種ですから」
〜〜〜
ソウセイの案内で、安全なルートを取りながら砂漠を渡る一行。
翌朝には砂漠を渡りきり、太陽が頂点に差し掛かる頃には、ルトラ港の近くまで辿り着いていた…
ソウセイの話では、船が出港するのは午後1時。
それを逃せば、暫くは外国行きの船が出ず、リーリエリヒト国内で立ち往生する結果になるだろう。
「あ、港が見えてきた!」
「ホントだぁ!それに、おっきな船が見えるよ!!」
「恐らく、あれがツァールハイト行きの船ね…」
ミカやルル、凛子が港に停泊している船を見て声を上げる。
遠くから見ても分かるほど、大きくて立派な船。
あれに乗ることさえできれば、追っ手はかけられない!
そんな希望を胸に走っていた彼らの前に、ある一団が立ち塞がる。
――聖海騎士団だ。
「待てッ!」
「「「聖海騎士団!」」」
「あーもう!港はすぐそこなのに!!」
「ちょっと、そこどいてッ!」
「貴様らを他国へ出すわけには、行かないんだよ!」
副隊長であるガルシアが、声を荒げて言い放つ。
そんな彼を制止し、前に出てくる甲冑の男…
その兜は前にバーガーがつけていたものであり、恐らく今は、あの男が聖海騎士団の隊長なのだろうと晴人達は理解していた。
制止されたガルシアは訝しげな顔をしながら身を引くと、甲冑の男がミカに手を差し出しながら、言い放っていた。
「だが、オリジナルJMを渡せば見逃してやらないでもない。どうする?」
「誰があんた達なんかに渡すもんですかっ!」
「そうだよ!これはミカにとっての、大事な形見なんだから!!」
「何でもかんでも、自分達の言い分が通ると思ったら、大間違いよ!」
甲冑の男の言葉に、ミカがはっきりと拒絶する。
ユーテキと凛子もここぞとばかりに文句を言うが、甲冑の男に剣を向けられ黙ってしまう。
一方で、晴人は甲冑の男に…あることを尋ねていた。
それは、自分達を逃がすために自ら体を張って聖海騎士団を食い止めた…バーガーのことだ。
「あんた、新しい聖海騎士団のリーダーか」
「そうだ。我が名はセデギウス…ラディス神の言葉を民に浸透させるべく、この座に就いた」
「…前の隊長はどうした」
「あの反逆者のことを気に掛けてどうする?……とにかく、素直にオリジナルJMを渡さないようなら…この場で全員、ラディス神の名の下に裁くのみ」
「お前ら、掛かれッ!ラディスの神は我々についている!!」
「「「おおおおおっ!」」」
ガルシアの掛け声で、聖海騎士団のメンバーは武器を持ってこちらに向かってくる。
やっぱり戦うしかないのか、と晴人は思いながら、セデギウスと対峙しようとしていた。
だが…
「――ガルシア、俺がいなくなっても隊長にはなれなかったみたいだな」
近くの崖から、声が聞こえてくる。
「誰だ」とガルシアが叫ぶと、崖の上から何者かが飛び降りて来たと思えば…晴人達と聖海騎士団の間に立つ。
現れたのは、――装いを格闘家のように変えた、バーガーの姿だった。
「「「バーガーさん!」」」
「おじちゃん!無事だったんだぁ!!」
「おう!この通り、ピンピンしてるぜ!!」
「…ってか…その格好、本当にどうしたんですか!?」
「うん!なんか…うん、こっちのほうがいい!」
「暑苦しい甲冑よりは…いいんじゃない?」
「似合うだろ!」
瞬平や凛子、コヨミに関してはファッションについてツッコミを入れていたが…それに付き合うバーガー、果たして本当にあの騎士と同一人物なのか。
本人曰く、「堅苦しいのは苦手」とのことだったので、恐らくはこちらが素なのだろうが。
そう思っていると、バーガーは晴人とザウバーに“預かり物”を返していく。
ランドドラゴンリングと、(コヨミに半ば強引に奪われた)刀の片割れだ。
「ほらよ。刀はともかく、そいつは使う機会がなかったからな。返しとくぜ」
「あの状況を、自力で切り抜けたのか…」
「…再会の喜びは後にしろ。……来るぞッ!」
ザウバーの言葉で我に返った晴人達は、「そうだった」と迎撃態勢に入る。
晴人はウィザード・フレイムスタイルに変身すると、ウィザーソードガンで遠距離から攻撃を仕掛ける。
その間にセデギウスが間合いを詰めるも、バーガーが拳に装着したガントレットで受け止める。
そのまま暫く、拳と剣のぶつかり合いが続き…その最中、バーガーはセデギウスに言い放つ。
「セデギウスだったか?俺の後任の名前は」
「…そうだ。貴様、本当に聖海騎士団を捨てたということだな」
「民を傷つけることが正しいと、俺は思えないんでな!新しいリーダーさんよ!!」
「聖海騎士団を捨てた貴様は、今や反逆者…もはや用はない!覚悟しろ!!」
「初対面の割に、いやに前から知っているような口ぶりだな。……ルーク枢機卿にでも聞いたか?」
「反逆者に答える必要など、ない!」
そう言い放ちながら、セデギウスは剣を大きく振るう。
バーガーは身軽にそれをかわすと、背後から狙っていたウィザードFSの銃弾がヒットする。
実際に彼と直接連携をするのは、これが初めて。
しかし互いのことが分かっているかのような動きに、瞬平や凛子は「凄い」と声を上げていた。
一方で、彼らと共に戦うバーガーを見て、フォスターが叫ぶ。
「バーガーさん!…こうなった以上、もう後には引けないんですよ…」
「俺は俺の信じた道を行く。それだけだ!」
「…バーガーさん…」
戦況は、ややウィザード側に傾いている。
とはいえ、このまま時間が経って船に乗れなくては元も子もない…
聖海騎士団の目的は、自分達の国外逃亡の阻止。
戦いが長引けば長引くほど、彼らに有利なのだ。
ウィザードFSも薄々そのことに気付いており、イーヴリンに叫ぶ。
「イヴ!確か、発煙筒を持ってたよな」
「ああ…だけど、こいつらを撹乱させるほどの量じゃない!」
「1〜2本あればそれでいい!俺に方法がある」
<ハリケーン、ドラゴン ビュー、ビュー、ビュービュービュビュー!>
「……そうか!」
ハリケーンドラゴンへと姿を変えるウィザードを見て、イーヴリンは2本の発煙筒を投げる。
その程度の煙幕、とセデギウスは向かってくるが、その直後にウィザードHDはスペシャルリングで巨大な翼を背中に出現させる。
そして、それを使ってセデギウス達に大風を放つ…
すると煙は総て彼らのほうにいき、更に、その風は小規模の竜巻となって聖海騎士団を苦しめる。
あの風で吹き飛ばされたものはいても、大怪我を負うほどではない。
ウィザードHDはソウセイの手を掴み、逃げ足の遅そうな瞬平の手も一緒に掴んで飛行する。
「お前も行くぞ、ソウセイッ!」
「え!?」
「ここで突っ立ってたら、あいつらに捕まるぞ!…早くッ!!」
「…わ、分かりました!」
ソウセイは帝国と水面下で戦う地下組織・フライハウト団の一員になった。
敵は流石にそのことは知らないだろうが、彼がウィザードHD達の国外逃亡を手助けしたと知れば、拷問は確実…
多少危険が付きまとうが、ほとぼりが冷めるまでこのまま一緒に国外に行ったほうが、安全なのだ。
ソウセイはウィザードHDの手を掴むと、彼らはそのまま空で直接移動を始める。
煙が晴れ、セデギウスらが周囲を見る。
だが…
近くにはウィザードHD達の姿はなく、既に逃げられた後。
ガルシアは「どうしますか」と尋ね、セデギウスは憤慨しながらも他の騎士達に言う。
「どうしましょう、隊長!」
「そんなもの決まっている!奴らを探せ、まだそう遠くには行っていないはずだ!!」
〜〜〜
ユーテキと凛子、ルルとバーガーは一緒の方向に逃げていた。
これを逃せば国外行きの船は暫く出ない、というのは本当のようで、人通りがかなりのもの。
このまま正面のルートを進めば、いずれ聖海騎士団に捕まってしまう。
…が、狭い道もかなり入り組んでおり、船まで身を隠しながら進めるルートが見つからない。
そうしていると…
40代ぐらいの小柄な女性が、声を掛けていた。
「あんた達!ほら、そこのあんた達!!」
「えっ、僕達ですか!?」
「すいません、ちょっと急いで…」
「――あんた達、船に乗るならこれ使いな!」
そう言って、女性が見せたのは…2人までなら入れそうな果物を入れるための木の箱と、それを運ぶ荷台。
更に、バーガーと凛子には顔を隠せるほど深いフードがついたローブを手渡す。
これを使えば、船に貨物を運ぶ人間として紛れ込むことも可能…
問題は、どうして彼女が自分達にここまでしてくれるのか。そう思っていると、女性がユーテキの背中を叩きながら快活な笑いを見せる。
「あんた達、この間帝国の奴らに徴兵された若い子を助けてくれた人達だろ!あたしは、デシンって子の母親でね」
「!…デシン、さんの…」
「あの…」
「知ってるよ、あの子…間に合わなかったんだろ?親ってのは、子供のことに関しちゃ敏感でね」
「それだったら尚更、どうして!?」
ユーテキが叫ぶと、デシンの母親はこう話す。
…確かに、自分の息子だけ戻ってこなかったのは悲しかった
…けれど、帝国に捕まるかもしれないってのに助けようとしてくれた…あんた達を恨むのは、お門違いだ
…だったら今度、あんた達がもう一度港に来ることがあったら、力を貸してやりたい
その言葉を聞いたユーテキと凛子は、嬉しさで目が潤んでいた。
バーガーは頭を深く下げると、ユーテキとルル、ついでにポポに箱の中に入るよう指示する。
「……有難く使わせてもらうぜ。ユーテキ、ルル、それからそこのサル!お前らならこれに入れるだろ」
「あっ、あ、はい!」
「おじちゃん、この子はポポだよぉ!」
「ポポー!」
「あのっ、……本当にありがとうございます!」
「頑張りなよー!」
デシンの母親に見送られながら、バーガーと凛子はローブを羽織り、ユーテキ達の入った箱を載せた荷台を引く。
…ただ、箱の荷物は必ず乗船チェックの対象になる。
たまに、ではあるが、密入国者が紛れ込んでいる危険があるからだ。
しかしデシンの母親は、箱と一緒に…カモフラージュ用の板と、その上に乗せる果物も持たせてくれた。
ちなみにその果物は食べてもいいとのことで、凛子は何度も彼女に頭を下げながら、バーガー達と共に船に向かっていた。
コヨミとザウバー、ミカとイーヴリンも安全なルートをガルーダやクラーケンに探してもらいながら、船まで近づいていた。
他の仲間とは散り散りになったが、彼らなら恐らく大丈夫だろう…
そう思っていると、後方の様子を見ていたガルーダから反応があり、コヨミは水晶玉を見ながら声を上げていた。
「…!どうしよう、聖海騎士団が追って来るわ!!」
「うそっ、早くない!?」
「それに…殆どの通路も、回り道されて塞がれてる」
「だったら、塞がれてない道を…」
「待った。――多分それは、わざと一ヶ所だけ道を開けておいて一網打尽にする…捕獲するときの常套手段だよ」
「確かに…だがこのまま立ち往生していても追い詰められる、数が多いからこそできることだな」
イーヴリンとザウバーの冷静な意見に、ミカは「そっか」と考え直す。
予めいくつかの通路を塞ぎ、相手の進路を制限することで一気に追い詰める…
更に、逃げ道を1つだけ残しておけば、そこにまんまと現れた所へ総力を持って捕らえる。
一体どうしたら、と考えていると、イーヴリンがこんなことを言う。
「ちょうど気になることもあったし、私が囮になるよ」
「えっ!?駄目だよイヴ、危険すぎる!」
「大丈夫。ミカ達と出会うまでは、1人で何度も危ない橋を渡ってきたもんさ…必ず合流する!」
「イヴ!待って…イヴッ!!」
ミカの静止を聞く前に、イーヴリンは唯一聖海騎士団が進路を塞いでいないルートに向かう。
追いかけようとするミカの手を、ザウバーが掴もうとするが…
その前にコヨミがクラーケンに頼んでミカの前を塞ぎ、コヨミが言い放っていた。
「…今ここであなたがついて行ってどうなるの!?」
「だけど、放っておけないよ!」
「落ち着いて!……あいつらの狙いはミカと晴人なの、ミカがここで捕まったら…何のためにイヴが囮を買って出たと思ってるの!!」
「そうだ。それに…あいつはそう簡単に聖海騎士団には捕まらない。必ず俺達と合流する…お前がそれを信じなくてどうする!」
コヨミに、そしてザウバーに言われ、ミカは納得の行かないような表情をしながらも…
2人の言い分は最もだと思い、イーヴリンのことを気に掛けながらも、船着場に向かう。
遠くからは「反逆者の仲間がいたぞ」という声が聞こえ、激しい喧騒と足音が聞こえる…
ガルーダやクラーケンに道を確認してもらい、完全に聖海騎士団が近くからいなくなったのを確認すると、ミカ達は急いで走り去っていった。
晴人・瞬平・ソウセイは、一足先にツァールハイト行きの船に乗っていた。
そうしていると、貨物を載せた荷台を引く2人の男女に出会い、晴人と瞬平は道を明けようとしていた…
しかし、彼らの前で2人はフードを取ると…そこから現れたバーガーと凛子の顔に、驚いていた。
「凛子ちゃん!バーガーさん!!」
「よかったぁ、無事だったんですね!」
「ええ!…あ、ちなみにこの中には…ルルちゃん達が」
「急いで部屋に行こうぜ。カモフラージュ用の荷物が多くて、押し潰されてるんじゃないか不安なんだ」
「だったら俺、残りの人達を迎えに行ってきます。晴人さん、預けておいた乗船券を1枚渡してください」
「ああ、任せたぞソウセイ」
晴人は予め、昨日のうちに預かっていた乗船券の1枚を渡す。
後から連れが来るとは言ってあるが、直接行かなくては船員も誰が連れなのか分からないだろう…
だが晴人や瞬平は聖海騎士団が来たとき、確実に面倒なことになる。
ここはソウセイに任せるしか、ないのだ。
晴人達は部屋に向かう途中で、バーガーに訊ねていた。
「それにしても…よく無事だったな」
「まあな」
「だけど、どうして聖海騎士団を抜けたの?危険だって分かっていたのに…」
「暫く考えて…お前らの言っていることが正しいって思ったからだ。俺は、俺が正しいと思ったことをしたまでだ」
まあ、元々堅苦しいことは嫌いなだけってのもあるがな…というバーガーの表情に、迷いはない。
そんな彼を見て、凛子は嬉しそうな顔を見せる。
ずっとラディス教の予言を実現させるため、神の使いとは思えない帝国や聖海騎士団の行動を見てきた…
そんな中でようやく、今の聖海騎士団や帝国のやり方は間違いだと気付き、共に戦ってくれる人が現れた。正義感の強い凛子にとって、これほど嬉しいことはないのだ。
晴人や瞬平も気持ちは分からなくもないのか、互いに笑みを見せつつ…
瞬平は、素朴な疑問を口にしていた。
「ところで、聖海騎士団にいた時は剣を使ってましたよね?何で格闘家にジョブチェンジしたんですか?」
「そりゃあ、こっちのほうが俺らしいからな!……それに、セイバー・両手剣・刀の二刀流・銃剣って…偏りすぎなパーティにも程があるだろお前ら…?」
「ストップ!大人の事情!!」
「というか…バーガーさん!早く荷物を何とかしないと、箱が…箱が限界を訴えてるから!!」
メタな話をするバーガーに、晴人と凛子は待ったをかける。
特に、…凛子の言うとおり、箱の中の2人と1匹がガタガタと暴れ始めている…どうやら、限界なのだろう。
それはそうだ。カモフラージュ用の果物と板が、上に乗っていれば…
「やばっ」と思った晴人達は、ユーテキ達を解放するべく、急いで部屋に向かう。
だが…
(…潜入成功。監視を続ける…)
――そんな彼らの姿を、シャドゥは影の中から監視していた。
ミカ・コヨミ・ザウバーも、ソウセイの案内で何とか船の中に入る。
彼らでちょうど最後だったらしく、船は予定通り出発…
一度船が出れば、どうやっても追いかけることは不可能だろう。
そう安心する彼らをよそに、イーヴリンのことを晴人達を耳にし…一抹の不安を感じながらも、イヴならば大丈夫だろうという結論に至った。
「…まあ、イヴなら大丈夫だろ。ユーテキと瞬平なら分からないけど」
「そうね、ユーテキ君や瞬平君だと心配だけど…イヴさんなら、きっと凄い情報を仕入れて戻ってくるわ!」
「ええ。ユーテキや瞬平より、イヴの単独行動のほうが幾分か気持ちが楽だわ」
「だからミカ、イーヴリンのことは心配するな。瞬平とユーテキよりは、いくつか安心できる」
「そうなの!ユー君やシュー君はルルでも不安だけど…イヴお姉ちゃんなら絶対大丈夫なの!」
「……そうね。うん、イヴは大丈夫」
「ちょっ…皆、……相変わらず…僕達の扱い…」
「…酷く、ないですか…?」
晴人・凛子・コヨミ・ザウバー・ルル・ミカの言葉に、ユーテキと瞬平が、がっくりと肩を落とす。
そんな彼らを見ながら、バーガーはソウセイに尋ねる。
「…こいつら、いつもこうなのか?」
「さあ…それに関しては、俺も聞きたいんですが…」
「まあいいか。お前らが信じるものを、俺も信じる…これから宜しくな!」
「俺も…戦闘はまだ覚束ない部分がありますけど、ツァールハイト国のことなら大体は案内できます。一応、店の手伝いの他に…観光案内もやっていましたから」
瞬平とユーテキの扱いに関して、「まあいいか」で一蹴したバーガー。
スルーすることに決めたソウセイ。
…どうやら瞬平とユーテキの味方、0の模様。
晴人はバーガーに右手を差し出しながら、互いに握手を行う。
「宜しく頼む、バーガーさん。ソウセイ」
「『さん』はいらねぇよ、晴人!」
「この船は、ツァールハイト大陸唯一の港、港町パテオに向かっています。現在パテオでは祭りが行われていて、この船に乗っている乗客の殆どもそれ目的みたいですよ」
ソウセイの話を聞きながら、ミカとルルは目を輝かせる。
特にミカは祭りというものに疎く、今まで参加したことがないほど…
凛子もコヨミを交えて祭りの出し物を見て回ろうと提案し、そんな彼女達に晴人とバーガーは失笑した様子でそれを見ていた。
―――そして物語の舞台は、新たな大陸へ…
***
離脱者はイヴでした。
…
瞬平やユーテキよりは、確かに安心できるけどw
でも戦力低下してるよ!
入れ代わりに入ったの、ソウセイだし!!
全体的にユーテキと瞬平の扱いがヒデェw
あ…でも、いつもどおりか…←
まさかの再登場・ソウセイ。
どうやら彼は、フライハウト団に入ったようで。ちなみに、シンクやヒスイさんも一緒に。
性格は生真面目。店の手伝いの他にも、観光案内業みたいなこともやっていたので、案内役には十分でしょう。
バーガーさんキタァァァー!
…はい、10人目のメインキャラクターは彼でした!!
思えばバーガーさんの扱いって、悪いんですよね…漫画で。
漫画はね…バーガーさん、出てないんですよ…!
なので自分、反撃に当時ブレイカーの漫画が乗っていたGファンに絵を送ってました。バーガー込みでな!!←
そしてこのバーガー(40歳・格闘家)、…とんでもない術を覚えます…
キュアとか!
ホーリーランスとか!!
正直、ドスの利いた声で「ホーリーラァァァーンス!」って言いますからね!?あれは逆に凄いインパクト!
※原典ではイーヴリンは船に乗った直後に降りて離脱します
それも、そう、…甲板から…飛び降りて……
携帯アプリなのでそこまでツッコみませんでしたが、冷静に考えるとあれは凄すぎるだろ。
なので、船に乗る前に離脱させました。
ちなみに…
貰った果物は、コネクトで面影堂に置いて必要な時に取り寄せます。
まぁ何個かは輪島のおっちゃんがつまみ食いするでしょうが。
Q.ところで、シャドゥって追跡向けなのになんで今までそれをしなかった。ウェルテクス社
A.シャドゥにだって戦いのダメージの回復とか、色々あるんです