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タイトル未設定 - Magic54:因果の狭間

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Magic54:因果の狭間

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パヴェルからの通信を受け、リーリエリヒト帝国に戻ってきた晴人達…

リーリエリヒトは指導者を失った打撃が大きいのか、未だ混乱の最中。

ルーク枢機卿らラディス教の聖職者達もその対応に追われるが、やはりそう簡単にはいかないのだろう。

バーガーはやはり“元”とはいえ、自分もラディス教徒として行動していた身。

だからこそ、彼らの手伝いをするべきか悩んでいたようだが…

そんな彼にいち早く気付いたルーク枢機卿が、声をかけていた。


「お前達か。【面影堂】という店で反乱軍…もとい、自由連合軍は待っているそうだ」

「「「ルーク枢機卿」」」

「なあ、ルーク枢機卿。やっぱ俺も手伝うぜ、聖海騎士団を離れたとはいえ、俺もラディス教の一員としてイシュトヴァーンに協力してきた一人なんだ」

「ラディス教を裏切ったお前にしてもらうことなどない。あるとしてもそれは、ステイアという新たな混乱の火種を倒し…真にこの世が平和になってからだ」


最初の言葉だけ聞けば、バーガーを突き放しているようにも聞こえなくはないが…

言葉を好意的に受け取れば、ルーク枢機卿は彼に『自分が今するべきことをしろ』と言っているのだ。

少なくとも、ステイアやオリジンと言った敵勢力が残っている以上、バーガーと言う戦力を失うのは晴人達にとっても辛いこと。

となれば、今はバーガーにステイア・オリジンとの戦いに集中してもらいたい…と思うのは当然のことだ。自分が唯一残された指導者でもあり、怪我でまともに剣を触れないのなら尚更。

ルーク枢機卿なりの優しさを実感しつつ、バーガーは頭を軽く下げる。


「そうか。…じゃあ、早いところ世界を平和にしねぇとな」

「そういうことだ。――とにかくお前達は、先程言った店に行け。何でも、リーリエリヒト城に現れた黒い霧の正体と、それを突破する方法が見つかったらしい」

「本当なのか!?」

「じゃあ、早く行かないとですね!」



晴人と瞬平、そしてコヨミ達はルーク枢機卿に礼を言うと、【面影堂】に向かう。

そこでは、店主である輪島は当然として…

“フライハウト団”の一員であるベックフォード・レヴィー・コハク。

“反帝国組織ルーキス”のリーダーでもあり、ツァールハイト軍の指揮官でもあるカルラ。

亡きウェルテクス一族の理念に賛同する研究者である、タルボット・マルグリット・ユウリ・ミラ。

様々な部族の集まりであるグリュッグ国の指導者・ウォルフガング。

魔法の国アウデンティアの女王であるパヴェル。

そして…【5色の貴族】と呼ばれるアーヒバルド・フィルギニア・ブリュンヒルド、更には体調がよくなりアウデンティアの魔法使いによってリーリエリヒトに足を運んだルシーラ。

――錚々たるメンバーが集まり、瞬平にユーテキは緊張してしまうが…それはある意味、コハクやタルボット以外の研究者達もそうだろう。


「――集まったみたいだな」

「ベックフォードさん。……あの黒い霧に関して、何か分かったって話ですけど…」

「一体、何が分かったんですか!?」

「それに関しては、ワシの管轄やな」


凛子やミカが声を上げると、輪島から出された茶を飲みながらタルボットが言い放つ。

このメンバーを前に堂々とできるタルボットは、心臓に怪我は得ているとしか言えない…

そんなことはともかく、タルボットは携帯用のノートパソコンを取り出し、その画面を見せる。

機材自体はウェルスの街にある自分の研究室から(魔法使い達を扱き使って)持ってきたようで、画面に映し出された映像には誰もが首を傾げていた。

どうやらリーリエリヒト城を覆っている霧についての解析結果のようで、コンピューター関係に強くないユーテキ以外は全員首を傾げてしまう。


「結論だけハッキリ言ったる。…あの霧は、このルキナでは解析不可能な特殊技術で造られた……異空間や」

「「「異空間…?」」」

「それってつまり、ルキナとは違う世界ってことですか…?」

「そらそうや、異空間に繋がっとるんやからな。まあ、問題は…その異空間は空に現れたステイア…っちゅー奴らが作り出したもので、突入できる方法は限られとる上に帰る方法は…分からん」




“行きはよいよい帰りは怖い、とはよー言ったもんや”

タルボットはそう言いながら、禿げた頭のてっぺんを掻く。

彼の話が正しければ、黒い霧の奥はステイアの作り出したい世界…【ステイアの界域】とでも呼ぶべき、特殊な空間。

行く方法ならあるが帰る手段に関してはまったくない…という、ヘタすれば二度と元の世界に戻って来れない危険性のある危ない賭け。

しかし、行く方法があるのなら帰る方法も見つかるのではないか?

ミカとイーヴリン、ルルはその結論に至り、それに関して尋ねる。


「でも、行く方法があるってことは…帰る方法も頑張れば見つかるってことだよね?」

「確かに。――それにしても、行く方法とは一体?」

「もしかして、ルル達の魔法で行くの?」

「アホか。ここにいるパヴェルっちゅー人も含めた居残り魔法使い全員が、黒い霧に覆われたリーリエリヒト城に入ろうとして入れなかったんや。恐らく……魔法による外部からの直接コンタクトができないようになっとるんやな」

「ええ…残念ですが、強大な力に阻まれ、誰も入ることはできませんでした」


魔法で無理ならどうやって、と瞬平が叫ぶ。

確かに、魔法による介入すら遮断してしまうという黒い霧の中に、どうやって入るというのか。

誰もがそう思っていると…

それを可能にする方法がある、とばかりにレヴィーがミカ達に言い放つ。


「可能性は、一つだけあるんだ。――それが、コハクさんの持ってきてくれた……オリジナルJM」

「「「オリジナルJM!?」」」

「…ああ。オリジナルJMというより、私は個人的にこれを“アムニスフィールドの原石”と呼んでいるが」


そう言ってコハクが取り出したのは、以前サウルから受け取った謎の石。

最初は輪島なら何とかできるのではないか、と思って彼を頼ったのだが…興味を持ったタルボットがそれを解析し、衝撃的な事実が判明した。

…何とこの石はただの石ではなく、アムニスフィールドとほぼ同成分の石だという。

それにあの黒い霧も、解析の結果コハクの持ってきた石とほぼ似通った成分だったことも判明。

エネルギー量こそ本来のアムニスフィールドや例の黒い霧には劣るものの、シラスが生きていればこれ一つで大量の武装用兵器を作りかねない力を持つそうだ。



「――【JMはアムニスフィールドから力を得ており、その中でも特に強い力を持つものはオリジナルJMと呼ばれる】…この話が本当ならば、オリジナルJMというのはアムニスフィールドを構成する成分と大差ないもので出来ているのだろうな」

「じゃあ…私の持っている、お母さんの形見のJMは…」

「ミカがアムニスフィールドの全エネルギーを開放する【鍵】であり、その力を借りて聖獣になれる…という事実を基に考えると……」

「アムニスフィールドと同じ成分・同等の純度エネルギーで出来たJM、と考えたほうが妥当かもしれないね」


呆然とするミカに対し、晴人とイーヴリンが結論を出す。

…確かに、ミカはどういう形であれアムニスフィールドの力を開放できる【鍵】である以上、アムニスフィールドの力をいつでも使える状態にしなくてはならない。

他でもなく、アムニスフィールドを悪用するような輩から…それを守るために。

だからこそ彼女の持つJMは、アムニスフィールドの力を完全とは言えないまでも、レプリカJMより強く引き出す必要があった……そして、それを可能とするのがアムニスフィールドと同じ成分の『オリジナルJM』と言うべきもの。


「…だけど、そういうのって可能なの?それにミカの持っているJMとその石じゃ、大きさがあまりにも違うじゃない…」

「いや…案外可能かもしれないぞ。確かにこの石じゃ大きくて目立つけど、JMのように研磨してしまえば……」

「――でも、それが代々ウェルテクス家に受け継がれてきたってことは、……ウェルテクス一族はオリジナルJMを受け継ぐ意味も知っていたってことになるんですかね…?」

「それはないと思います。知っていたら、こういう言い方はアレですが…ミカちゃんの母親であるステラさんは、ウェルテクスの技術やアムニスフィールドを悪用する帝国からそれを守るため、聖獣になっていたでしょうし」


石の大きさに関してはコヨミが指摘するも、すぐ晴人に返される。

一方で瞬平が頭を抱えつつ疑問を口にするが…

それについてはソウセイが、ミカの方を気にしながら話していた。

確かに、代々受け継がれると言うオリジナルJM…どうしてそれを肌身離さず持っていなければならないのか、その理由についてミカは母やクラウスから聞いた覚えは一度もない。

恐らく知っていたとしても初代ウェルテクス一族とその孫世代ぐらいまでで、それ以降は時の流れと共に理由が薄れ…最終的に【一族から代々伝わる大事なもの】と言うだけの認識になっていた。




――しかし、それらの長くなりそうな話をタルボットは盛大に切る。

理由は単純明快。長くなりそうだから。


「とにかく!…ワシらはこれから、このオリジナルJMを使ってあのゲートを突破できる…所謂【ゲートブレイカー】の製造に入る。ま、このごつごつした岩の状態じゃ何かと不便だから、ワジマにはこれを研磨してもらわんとならんけどな」

「えっ、別にそのまま使ってもいいんじゃ…」

「瞬平。魔宝石もそうだが、表面がごつごつした状態じゃあまりにも不恰好だし…何より、輪島のおっちゃんの貴重な仕事を奪うなよ。研磨する役割がなかったら、おっちゃんだけまさしく『何をしにこの世界に来た』状態だろ」

「「「…確かに」」」

「おーい晴人。コヨミに瞬平に凛子ちゃんも。ちょっと酷くないかー…?」


晴人からのメタ発言と、残り3人の非情な納得はさておき。

…そもそもこの状態ではエネルギーが拡散されてうまくそれらを使うことが出来ないので、無駄な部分を削って一番エネルギーの強い部分のみを取り出す。

それは魔宝石もそうだし、コハクが持ってきたオリジナルJMも同じだ。

とにかく、ゲートブレイカー完成のためには人手がいるとのことで、ユーテキは暫くタルボットによって借り出される結果に。

その間、ミカ達はステイアの手がかりを探すと同時に、オリジンの行方も捜す必要がある。

そうしていると、パヴェルが「そういえば」とミカ達に質問していた。



「……つかぬ事をお聞きしますが、ザウバーという人は確かに人工ファントムとなったシラスによって死んだのですよね?」

「「「…」」」

「パヴェル様、…何だってそんな空気が重くなりそうな…」

「いえ、先程入ってきた情報なのですが……アウデンティアを任せているポポキングの元に、彼に似た人がやって来て、『アウデンティアの秘術を授けてほしい』と」


アウデンティアの秘術。

それは、先程エミルビス塔で話に出た…死者蘇生の術・レイズデッドなのだろう。

そして、ザウバーによく似た人間と言えば…限られてくる。

ソウセイもすぐにそれが分かったようで、呟く。


「もしかして、…サウルさん…?」

「もしかしなくても、そうだろ…しかし一体、何のために…」

「分かりません。ポポキングもレイズデッドの魔術書を渡すのは猛反対していたそうですが、『何としても必要だ』との一点張りで…ザウバーと言う人と勘違いしていたこともあってか、根負けして渡してしまったそうなのですよ」

「うーん、でも、あの忍者みたいな人なら悪いことには使わないと思うなぁ…ポポもそう思うよねぇ?」

「そうポポ。それに、ポポキングが間違った人間に大事な魔術書を渡すはずないポポ!」

「――それでも気になるのは、どうしてそれが必要なのかだ。…状況によっては、自分も死ぬかもしれないって言うのに……」


サウルが初代ウェルテクス一族であるサウル・ウェルテクスを模したアンドロイド、と言うのはソウセイから聞いている。

しかし、そんな彼がレイズデッドを使って甦らせたい相手に心当たりがないのだ。

…もしかすれば、記憶装置の中にあった映像の女性か?

誰もがそう思っていたが、そうであったとしても、魂を宿す肉体がなければどうしようもない。

それ以前に、そんなことをしてしまえばサウルの命はないと言うのに…

とにかく今すぐにでもサウルを見つけ出して止めるべきだ。

そう思ったミカ達はすぐさま行動を開始しようとしていた、そこへ一つの影が【面影堂】に訪れていた。



「――あ、あのぅ、…た…助けてほしいニャ!」

「「「え?」」」





その頃…

サウルはある場所で、レイズデッドによる輪廻転生の理への干渉を試みていた。

――元々作り出された命、失ったところで問題ない

――そもそも、残りの期限は僅かしか残されていないのだ

――ならばこの命、何のために使うべきか


「…準備は整った。後はもう……彼次第だ」


一時的に魔力を高めるための術式は、床に書いてある。

更に、台の上には…

サウル・ウェルテクスが自分を造る時に利用したアンドロイド技術を利用して作った、器。

そして

……サウルは術式魔方陣の中央に立つと、詠唱を始めていた。


「魂の輪廻に迷いし者を戻す、現世への扉を開け……“レイズ…デッド” ……!!」






〜〜〜






――目を覚ました時には、花畑しかなかった。

一面に花が咲き乱れ、空には何もない。

あったとしても虚無。太陽も雲も月も星も昼も夜もない、ただ真っ白いだけの空白。

花も、すっかり枯れ果てているものから少し萎れているもの、蕾をつけているものと色々あった。

そんな不思議な世界で彼は、……ザウバーは目を覚ました。



(そうだ、俺は確か、人工ファントムにやられて)


(そうか、――ここが死の世界か)



自分は死んだのだ。

ミカを守る、助けると言っておきながら。

随分と皮肉なものだと思っていると、彼に声を掛ける存在がいる。


「それは違うよ」

「お前は…サウル?――ッ、その目は…」

「あ、そういえば君の前で眼帯を外したことってなかったっけ?僕はウェルテクス一族の創始者、サウル・ウェルテクス………の、アンドロイドだよ」

「アンドロイド、だと?…だいぶ話が飛躍してないか」

「まあ、掻い摘んで説明すると…」


サウルはこれまでのことを、正直に話す。

…自分はサウル・ウェルテクスのアンドロイドだと言うこと

…今現在、ルキナではアムニスフィールドを創造した【ステイア】達の無念の集合体が、ルキナの人間達に制裁を下すために活動していること

…そして自分は、ザウバーを現世に引き戻すために禁断の術を使って干渉していること

…元々の肉体は完全に消滅してしまったが、代わりにサウル・ウェルテクスからコピーされた技術を利用してザウバーに似せたアンドロイドを生成し、それを器としようとしていること

もはや常識を逸脱した状況に、割と常識人の部分があるザウバーは頭を抱える。

しかし、生命の理を反するサウルの行為は危険だと言うのは分かったのか、彼に言い放つ。


「だが、そんなことをすればお前は死ぬんじゃないのか?」

「死ぬって言うか…そもそも僕の生きる意味は、“彼女”がいない時点で無いようなものなんだよね。だけど、君には守るべきものがある…」

「だから自分の代わりに生きろと?」

「どの道、元々長くは生きられない体だったしね。君の場合もそうなんだけど、幸いウェルテクスの紋章も移植できたから…僕よりは長く生きられると思うよ。それでも、不完全なものだから10年生きられればいいって感じかな」

「……」

「ただ、――僕は…というかサウル・ウェルテクスには魔術のセンスはあまりないからね。僕が出来たのは、君が現世に戻るチャンスを1度だけ与えただけなんだ」




どういうことだ、と言うザウバーにサウルは説明を続ける。

――この場所は、【因果の狭間】

簡単に言えば、一般的に広く知られる三途の川…に分類される場所らしい。

生と死の狭間に位置しており、ここで一定期間を過ごせば魂は自動的に輪廻転生の理に回収される。

それまでの間、ここに流れ着いた魂は自分に纏わる過去を見ることが出来る…これが“走馬灯”というものだろう。


「で、死を受け入れて新しく生まれる命に宿る魂は…右にずっと真っ直ぐ行けば白い扉があるから、その中に入ればいい。そうすれば輪廻転生の理に入って、悪い魂は未来永劫転生できない苦痛を味わい…いい魂は死んだ時以外の別の器、つまり新しく生まれ変わるってわけなんだ」

「……それで?俺はそっちに行けばいいのか」

「いや、そっちに行ったら僕の苦労が水の泡だからね?むしろ逆、左に真っ直ぐ行って…赤い扉に入ればいい。そうすれば現世に戻れる…まあ、戻るための器が無ければ自縛霊となって生まれ変わることも出来ず彷徨うだけだけど」

「…、……だが、そう簡単に戻れはしない。だからこうやって、俺の下に来たんじゃないのか?」


正解、とサウルは笑顔を見せながら言う。

彼の話によれば、あくまでもサウルは『輪廻転生の理に入っていたザウバーの魂を、【因果の狭間】まで引き上げた』だけに過ぎない。

つまり、本来なら一発で現世に戻せるはずのレイズデッドが不完全に終わり、現世に戻るにはザウバー自身がどうにかするしかないのだ。

しかも、そう簡単に現世に戻れない理由がある。

サウルもその理由は『ここに来て初めて知った』らしいのだが、問題なく説明していた。



「――そう。死神さん、って言った方が早いのかな?魂を導く存在が、簡単には現世に返してくれないんだよ」

「…やはりそういうことか…大体そうなるとは、予測していたがな……」

「ちなみに、因果の狭間から現世への扉に向かい、死神に挑戦して実際に現世に戻れたのは…0だ。ただの一人もいない……たぶん、イシュトヴァーンも今頃は挑戦に失敗して、魂の廃棄処分場に行ってると思うよ」

「…、……ちなみに、俺も失敗したらその廃棄処分場とやらに行くとかじゃないよな?」

「あっ。安心していいと思うよ、だって君、不法侵入に器物損壊・窃盗に詐欺と悪より悪どいことはしてるけど……その程度だったらギリギリ許容範囲みたいだから」

「……許容範囲広いな…!」


……むしろ俺でギリセーフだとしたら、何をしたら廃棄処分行きになるんだ…?

そんなことを思いつつも、『まあイシュトヴァーンは普通に地獄に落ちるか』と思い、それによって『アレより悪いことをしてるつもりは無いから大丈夫か』と言う結論が出たため…納得していた。

しかし、イシュトヴァーンは少なくとも自分達を苦戦させるほど強い力を持っている。

そんな彼が勝てない死神とは、どういう存在なのか…

ザウバーが首を傾げる一方で、サウルは一輪の花を摘み取り、その花が映し出す走馬灯を見せていた。

――その中にあったのは、クラウスと…サウル。


「これは…!」

「…」

『クラウスさんですね?』

『そうだが…君は一体、誰かね』

『……ウェルテクス一族の娘さんを育てているそうですね』

『何故それを…!まさか!!』

『安心してください、僕は帝国と関係ないですから。その証拠と言っては何ですが、』


そう言いながらサウルが渡したのは、小さな箱だった。

クラウスがその中身を確認すると、そこにあったのは、ピアスとオリジナルJM…

ザウバーの記憶が正しければ、ピアスはステラが身に着けていたもので…オリジナルJMに関しては、ミカが『形見』と言っていたもの。


『…これはステラの…。どうしてこれを、君が』

『僕はウェルテクスについて色々と調べていて…あの事故があった2日後、屋敷のほうに向かいました。そこで、リビングに置いてあったのを見つけて……ウェルテクス一族と仲のよかった、あなたに渡したほうがいいと』

『……』

『嘘か本当かはともかく、それはウェルテクス一族の遺した大事なもの。……娘さんに渡してあげてください、きっと喜びますから』

「――ずっと、どうやって母さんの形見がミカに…いやクラウス爺さんの手に渡ったのか気になっていたが。……お前だったのか」

「ウェルテクス屋敷にある研究資料を押収するため配備された、兵士に紛れ込むのは至難の業だったよ?スリル満点で楽しかったけど」




そう告げた後、ザウバーを赤い扉まで案内するサウル。

その道中、様々な魂の記憶がふよふよと浮遊している。

そして…

一つだけ、ザウバーの足を止めた記憶があった。


「…!」

「どうかしたのかい?」

「一つだけ、再確認していいか。ウェルテクス一族はどうして……ほぼ女しか生まれない。しかも、随分と高い確率で長子が女になる」

「……」

「偶然とか奇跡とかそういうのじゃあない。あるとしても“必然”だ…ウェルテクス一族に女しか生まれなくなったのは、女が確実に生まれる必要があったから。女しか【鍵】の力を継承できないから……違うか」

「………」

「男が【鍵】の力を継承できないのは、男が生まれることを最初から想定していないからだ。必ず女が生まれる、そういうシステムだからじゃないのか…そして、……【鍵】の力を持った女は、決まってピンクの髪に水色の瞳」


ザウバーが足を止めたのは…

母・ステラによく似た女性が、桃色の髪の少女を慈しむように抱いている姿。

その横にいるのは緑の髪の男で、失礼だが少女は父親に似ている要素がまったくと言ってもいいほどない。

それだけなら普通だった。

だが、その他にもいくつか似たような記憶があり、いずれもピンクの髪と水色の瞳を持った女性が、同じ特徴を受け継いだ子供と過ごしている記憶がある。

時々2人以上の子供に恵まれている場合もあるが、それでも母親によく似た娘。



「……そうだね。少なくとも、必要なのは【鍵】の力を継承できる力を持った…ウェルテクス一族の女の血脈だけだよ」

「その女自体は、ウェルテクス一族じゃない。正確に言えば、創始者であるサウル・ウェルテクスに嫁いだ…【鍵】の力を持った女だ」

「…」

「別にウェルテクスでなくともよかったんじゃないか?【鍵】の力を受け継ぐことが出来るなら…親から子へと、その力を遺伝させることさえ出来れば。第2子も女の確率が高いのは、万が一長女が不慮の事故に遭ってもいいよう、緊急時に【鍵】の資格を得られるように出来る……“よくできたシステム”なんだ」

「……」

「そして0.1%の確率で第1子が男だった場合は、その男の子供に【鍵】の力が継承され……隔世遺伝という謳い文句で、祖母に似た桃色の髪・水色の瞳を持った娘が生まれるんじゃないのか?」

「………その真実を抱えたまま輪廻転生の理に戻り、最終的に得た情報を生前の記憶ごと失くされるか…現世に戻って伝えられるかは、君次第。ここで謎解きをすることじゃあない」


そう言うサウルの視線の先には、…赤い扉。

あそこにいるという死神を倒せば、現世に戻れる。

その瞬間、門の前から影のようなものがうねりながら出てきたかと思えば、それはよく見た形を作り出す。

…それはまるで、ザウバーと同じ姿。

違う点があるとすれば、影のように真っ黒であることだろう。


『…』

「これは…!」

「アレが死神。死神は決まった形を持たなくてね、でも頭はいい。だから、現世に戻ろうとする魂によく似た姿を作り出し、その強さも本物と同じ。だけど思考回路は本物の一手先を行く…」

「成程、イシュトヴァーンが勝てないわけだな。尤も、勝ったところで奴の肉体はシラスに消し飛ばされたから意味は無いだろうが」

「言い忘れてたけど、死神と戦うには時間制限がある。この世界の時間間隔で49時間…現実世界だと3時間ほどになるのかな。とにかくこの世界で49時間経過後、死神に認められなければ……二度と『ザウバー』として現世には戻れなくなる」




輪廻転生の理には戻れるけど、果たしてそれまでルキナの人類全てが存続できるかな…とサウルはぼやく。

…確かに、ステイアの目的はルキナに住まう全人類のへの制裁……つまりは消滅だ。

アムニスフィールドを破壊し、ステイアの思いを裏切った以上はそうなってしまうのも当然かもしれない。

――そうなってしまう前に、何としても死神を倒す

――そして、ミカや晴人達と共に、ステイアを止める

死神が剣を抜き、ザウバーも刀を抜く。

構え方もほぼそっくりで、鏡写しであるかのようにも思える。


そして…

二振りの刀が、同時にぶつかり合っていた。






***




注意:実は原典でもザウバー生き返り(?)イベントあるんですよね

…なので、ご都合主義じゃないです。原典沿いなんです。

まあ、原典のほうがご都合主義と言われたらそれまでだけど!←

漫画だとミカが一旦消滅しちゃいましたけどね。

あの漫画、最終回辺りの会話が個人的にちょいとウィザードを連想してしまった。

(「我らステイアの希望〜」とか、「絶望なんかするな!」とか)


――そして理解した。

ディケイドでもオーズでもなく、ウィザードでコラボしたのはこれが原因だったのかー…って。 いや、ザウコヨとか晴人とルルの魔法使いネタをやりたいってのがあったんだけど。

ディケブラだったら…ルキナの謎技術よりも相当謎な技術があるので、色んな意味でゲシュタルト崩壊していたかもしれないw

ダブルだと…どうなんだろうなー……

フォーゼは逆に人数が今よりも多すぎるから、空気化が絶えない人が多かったかもしれない。 我々は…仮面ライダー部と流星の犠牲を忘れてはいけないんだ……!!←



そんな冗談はさておき。

コハクさんの持ってきたオリジナルJMは、黒い霧をぶち壊す【ゲートブレイカー】に必要なものとなりました。

本来だったら、エミルビス塔でステイアと戦った後にエネルギーJMを手に入れて、それをタルボット博士に渡してゲートブレイカー完成……なんですけど、現段階でステイアに勝てそうにないからこうなりましたw

そして、輪島のおっちゃんの存在意義ww

まあ、研磨でもしとかないと、おっちゃん本当に何のために来たんだよ…


因果の狭間に関しては…

ユディーヌとか両親とかやりたかったけど、端折りました。

やりたいけど端折りました!

サウルの説明とかしとかないといけなかったし!!

ある程度の答え合わせはしておこうと思ったし!!!

…で、個人的な疑問【クラウス爺さんはどうやってステラが所持していたピアスとJMを手に入れたのか?】をここでやりました。

いや、疑問と言っても、前半で久々にステラさんに関する話題を出したから出てきたんですけどね。




――フエッキーがレイズデッドの存在知らなくてよかったような、悪かったような…

とりあえず、ザウバーに「静かに眠らせろ」と言う選択肢はないのかw

…いや、ないな……ファントム生み出してもウェルテクス補正で何とかなった(死んだけどウェルテクスの力を消費して生きてる)奴だった………

それにしても、死んだ暦の体内に賢者の石を埋め込み、魔力で体を保ってるコヨミとの謎共通点…

ただの無口コンビじゃなかったよ…ウィザードコラボ効果スゲェ……