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タイトル未設定 - Magic6:新たな指針

📚 目次

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明かされた11年前のウェルテクス一族殺害の全容。

クラウスの死。

それら二つが重なり、ミカの姿はこれまで見たこともないものに変化していた。

――それは例えるならば、水の獣。

ある程度人型は保っているが、水のように透き通った肌…腰周りはまるで何枚もの魚の鰭がくっついているかのように見えなくもない。

それは圧倒的な力で、ウェルテクス屋敷に攻め込んだ特務機関Gに執拗に攻撃を続ける。

しかし力をコントロールできていないのか、ミカ“だったもの”は手当たり次第に暴れるため、ユーテキ達の安全も保障できたものではない。

ミカ“だったもの”を見た瞬平は、驚きのあまり腰を抜かしながら…近くにいたコヨミに話していた。


「あ、あれってもしかして、ミカちゃんから生まれた…ファントム…!?」

「違うわ…あれはファントムじゃない。ファントムとは別の…何か……」

「ファントムと違う何か、ねぇ。…凛子ちゃん、どうした?」


晴人はミカ“だったもの”の覚醒に合わせるかのように、突然淡く光り始めたウォーターリングを見ていたが…

ふと、凛子が窓の外を見てぼうっとしていることに気付き、声を掛ける。

周囲は危ない状況だと言うのに、何をしているのだろうか。

誰もがそう思っていると、凛子は小さく呟きながら…晴人達に【別の異変】を話していた。


「――空が、……空が…蒼く光ってる…」

「「「空?」」」

「…ッ、これは…!?」



グラントはミカ“だったもの”の猛攻を耐え凌ぎながら、窓を見て驚く。

そこにあったのは、ルキナを覆う水の膜…アムニスフィールドと呼ばれるそれが、ミカ“だったもの”の変化に伴う形で、蒼い輝きを放っていた。

アムニスフィールドが光り輝くなど、類を見ない事態。


「分からん…。青き姿から赤き姿に変化した異国の呪術者、突然目の色を変え…姿を変えたウェルテクスの娘。光り輝くアムニスフィールド…分からないことだらけだ」

「グラント様、このままでは…全滅してしまいます!」

「ここは一度、帝都に帰還したほうが…!」

「…それに、呪術者の持っていた青い指輪はこっちにあります…まずはこれを調べて見るのが一番では?」

「――確かに。ここは退くぞ!」


ノーマンにイレナ、レナの言葉…そして得体の知れないものを相手に戦い続けるのは無意味だと思ったか、グラントは生き残った特務機関のメンバーを連れて撤退を始めていた。

…今の晴人達には、彼らを追いかける気力はない。

ただでさえ、どうやってミカ“だったもの”を落ち着かせるべきか困っていると言うのに。

気付けばセルシウスと言うファントムも姿を消しており、今、この屋敷にいるのは晴人達のみ…

ユーテキや瞬平、イーヴリンは何度も「止まれ」と呼びかけるが、我を失っている獣が耳を傾けてくれるはずがない。

晴人は何とか立ち上がると、ミカ“だったもの”を止めるべく…再度変身を行う。


「くそっ、俺が止めるしかないか…!」

<フレイム、プリーズ ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!>

<バインド、プリーズ>


ウィザード・フレイムスタイルはバインドでミカ“だったもの”を拘束しようとしたが、動きが止まったのは一瞬だけで、鎖は無残に引き千切られてしまう。

ミカ“だったもの”は水流をぶつけて攻撃してくるが、ウィザードFSは“ディフェンド”による炎の壁で凌ごうとする。

…しかし圧倒的な水の勢いの前に、炎の盾は消され…ウィザードFSに直撃する。

何とか持ち堪えたウィザードFSは、今度はランドスタイルとなりミカ“だったもの”を止めに入っていた。



<ランド、プリーズ ドッドッドドドドン、ドッドッドドン>

「ミカ…大人しくしろっ!」

<ビッグ、プリーズ>

「―――我ガ名ハ“シアーズ”、我、……ヲ守護スル者…」

「シアーズ…何だって!?」


“ビッグ”で手を巨大化させ、直接ミカ“だったもの”…シアーズを止めようとするが、その手は力任せに振り解かれてしまう。

それどころか、水の剣による連続攻撃で攻め始め、ウィザードRSはディフェンドを連発して相手の勢いを殺そうとするが…その突進は止まらない。

恐らく今あるどのリング、どの魔法を使っても、シアーズを止められる気がしない。

何か方法はないのか…ウィザードRSがそう思っていると、リングホルダーにつけているウォーターリングを見て、瞬平が尋ねる。


「はっ、晴人さん!…さっきから気になってたんですけど、なんか光ってるリングがありません!?」

「こいつか!?ウォーターを使っても、止められる気がしないんだが!」

「…いや、それを直接止める必要はない!どんな力にも限界はある、力を使いきらせれば…ミカが元に戻る可能性はある!!」

「そうか……だったら!」

<ウォーター、プリーズ スィ〜スィ〜スィ〜スィ〜♪>

<リキッド、プリーズ>


瞬平やイーヴリンの言葉で、ウィザードRSも閃いたようだ。

すぐさまウォータースタイルに姿を変えると、相手の攻撃を直撃する寸前に“リキッド”リングで相手の攻撃を貫通させる。

攻撃とは、まさしく“川の流れ”

相手が何度でも向かってくるのなら、それに逆らおうとせず、受け流せばいい…

それを続けていればいずれ相手の逆らう力が弱くなり、そこに勝機を見出せる。

先程からフルパワーで暴れていた影響か、シアーズの勢いは次第に弱まっていく。

そして…




「――う、ッ…」



シアーズの目は次第に青い色に戻っていき、姿も少しずつ人へと変わっていく。

そして姿が完全にミカに戻ると、力を使い果たした彼女はそのまま気絶…

そんな彼女を、慌ててユーテキとイーヴリンが受け止め、彼女を止めるために魔力も体力も殆ど使い切ったウィザードWSもまた…変身を解除しながら、膝をつく。

晴人の元にはコヨミや凛子、瞬平が駆け寄る。


「やっと、止まった…」

「晴人!」

「大丈夫、晴人君!?」

「晴人さん!?」

「…しっかし、ウェルテクス一族の真相を探るために来たと思ったら……また謎が増えたってことか。…一体、何なんだ……ウェルテクスって。…どう考えても、【普通の科学者一族】じゃないだろ…」


それは確かに、と言いたげな顔で…コヨミ達はミカを見る。

しかし、ここでこのまま立ち止まっていても事態が動かないのは確か。

クラウスの埋葬もある。

これからどうするか…そう考えていると、イーヴリンがクラウスの亡骸を抱えながら、言っていた。


「とりあえずは…一旦、ミカの秘密基地……【大樹の森】に行こう。そこでクラウスさんを埋葬した後、…ティエラにある彼の家で今後について考えよう」

「イヴさん、僕もクラウスさんを運ぶの手伝いましょうか?」

「…助かるよ瞬平」

「じゃあ、ミカは僕が」


クラウスはイーヴリンと瞬平、ミカはユーテキがティエラの町まで運ぶことになった。

しかし、研究者のユーテキの細腕でミカを支えられるのだろうか…

ただでさえ、ここに来る途中で瞬平と一緒に転んでいたのに。

晴人は「自分はいいから他の皆を手伝ってくれ」と頼んだこともあったか、凛子とコヨミもそれぞれ手伝っていた。



リビングを後にしようとしていた、その時…

晴人の目に、先程の戦闘で本棚から溢れ出した本の中に『Album』と書かれた本を見つける。

ふと興味が湧き、本を拾い上げ…埃を簡単に払った後、中を見ていた。

すると、そこに写っていたのは…

生まれたばかりのミカと、そんな彼女の眠っているベッドを愛おしそうに見る、彼女の兄らしき姿。

暫くページを捲ると、ミカの家族らしき男女と…クラウスと親しげにしている老人の写真も見つける。

――もしも11年前の事件がなければ、今も幸せに暮らしていたのかもしれない

――血の繋がった家族も、クラウスも、無残な死に方をすることがなく…定められた安らかな死を迎えられたかもしれない


「…」

「晴人?どうしたの」

「いや、なんでもない」


晴人はコヨミに呼ばれ、反射的にアルバムを本棚に戻す。

暫く名残惜しそうにリビングを眺めた後、晴人はウェルテクス屋敷から立ち去っていた…






〜〜〜






数日後。




リーリエリヒト帝国・ラディス大聖堂。

ここは普段からラディス教の信者達が参拝に訪れるのだが、暫くの間教会の扉は硬く閉められていた。

その理由は…1つ。

アムニスフィールドが光を放ったと時を同じくして、ラディス大聖堂に掲げられているラディスのシンボルストーンもまた…青から赤へと色を変えていたのだ。

それだけではない。

赤くなったのはほんの数分のみで、青い光を取り戻すと、ラディスのシンボルストーンは壁に掛けられた十字架から抜け落ちた…というのだ。

この光景を目にしたのは、ここで祈りを捧げていた…ラディス教の教皇でもあり、リーリエリヒト帝国の皇帝でもあるイシュトヴァーン。

そして、彼と共に祈りを捧げていたジュリアン枢機卿や、ルーク枢機卿もだ。


「まさか、こんなことが…」

「これは…もしや、災いの兆候か…?」

「ううむ…今の段階では、分かりませんなぁ」


ユディーヌがシンボルストーンの抜け落ちた十字架を見て呆然とし、ヴィルギニア元帥とシラス宰相は小声で話をする。

しかし…

“災い”と言ったヴィルギニアの言葉を諌めたのは、イシュトヴァーンだ。


「ヴィルギニア、これは“災い”などではない。――もしかすれば、ラディスの予言に関連した現象なのかもしれない」

「と、言いますと…?」

「『輝かしい蒼き光を放つ【聖なるもの】が紅き光へと変わる時、神の国への扉は開き、我らは再びラディスの神の御身へと辿り着かん』……現に、シンボルストーンや呪術者、ミカという娘の瞳…これらが蒼から紅へと変わったのをきっかけに、アムニスフィールドも美しい輝きを放っていた」



そう。

あの時、ウェルテクス屋敷で戦闘が起こっていた頃…アムニスフィールド以外の3つの【蒼いもの】が【紅く】変わった。

セルシウスと対峙した時、ウォータースタイルからフレイムスタイルへと変わったウィザード。

クラウスを殺された時、蒼の瞳から紅き瞳へと変わったミカ。

そして、アムニスフィールドの変化と同時に蒼から紅へと変わったシンボルストーン…


「報告はグラントから聞いているか、ユディーヌ」

「はい。……グラントの話によれば、例の呪術者は青から赤の姿となり…ミカという娘に至っては、獣のような姿になったとか」

「獣の姿…それは興味深いですなぁ」

「そのことでシラス殿、あなたに聞きたいことがあるのです。……ウィザードとか言う呪術者は、氷の怪物と戦っていた…ひょっとすればあなたは、その怪物について何かご存知では?」


ユディーヌはフードの奥から銀色の瞳を光らせながら、シラスに訊ねる。

シラスはユディーヌからの質問に、ふうむと頭を困らせていた…

――ファントムの存在が帝国に完全に知られるのは、面倒であることこの上ない

そう思った彼が出した答えは、…自分の研究で生まれたモノということにしておくことだった。


「あれは、私とギリオン殿が作り上げた…戦闘に特化した生物兵器です。残念ながら、あれらを作り出すのには非常に労力が掛かるので実用化は難しいのですが…敵ではないというのは保障いたしましょう」

「……それならばいいのですが。それとは別に、あなたにはこれを調べてもらいたい」

「…ほほう?その指輪は何ですかな」




ユディーヌがシラスに渡したのは、ウォータードラゴンのリング。

…あの時、ヘラルディナに奪われたものだ。

グラント達から報告を受けたユディーヌは、独自に調べようとするも…やはり独力では適わず、ここはウェルテクス社の技術を素直に借りることにした。

興味深い研究対象を手に入れ、シラスはにやりと笑みを見せる。


「例の呪術者が使っていた指輪です。どうせ見つけ次第調べたかったのでしょう、存分に調べるとよろしい……ただしそれについて分かったことは、皇帝猊下に総て報告するのだ」

「分かりました。ウェルテクス社が総力を挙げて、この指輪の石について調べましょう」

「うむ。――して、ユディーヌ。お前にはこれからシンボルストーンを持ってラディスの聖地に向かえ。今回のことについて、何か分かるかもしれん」

「はっ、確かに」


イシュトヴァーンはユディーヌにシンボルストーンを託すと、すぐさまユディーヌは聖地ラディウスの地に向かう。

ルーク枢機卿も個人的に調べているものがあるのか、少し遅れて部屋を退室する。

ヴィルギニアはというと、ミカや晴人の捕獲と平行し、もしも彼らが【聖なるもの】と関係がなかった場合に備え、聖海騎士団や特務機関Gと連携して別の【聖なるもの】と思わしきものを探すよう命令を賜る。

…その際、「異教徒達の力を侮らず、帝国軍の指揮を怠ることなく従事しろ」とも言われ。

聖堂に残っていたのは、イシュトヴァーンとシラスのみ。

イシュトヴァーンはシンボルストーンの抜け落ちた十字架を眺めながら、呟いていた。


「…『蒼き光に守護されし者、紅き光を受けて世界を救う光とならん』」

「陛下?その言葉は…ラディスの予言と違うようですが」

「ダティーバ大陸にあると言われる、アンギュロスという部族に伝わっていた言い伝えだ。ラディス神とは別の救世主とやらを崇め、17年前に滅ぼした」

「ラディス以外の者を信仰するなど、愚かで野蛮な部族らしい。……もしや陛下は、ラディスの予言と何か関係があるとお思いで?」

「いや、少し昔を思い出していただけだ。……シラスよ、自分の研究もいいが…熱を入れすぎて本来の業務を忘れるな」

「…分かっておりますとも」





大聖堂を後にしたシラスは、ウェルテクス社に戻っていた。

ギリオンは小さく頭を垂れた後、現在行われている軍事兵器の進行状況を伝えた後に…別の話をしていた。


「シラス様。ミカという娘はいずれ、ウェルテクスの情報を集めるため…セラピアに向かうでしょう」

「セラピア…あそこは確か、砂漠にある町でしたな。確か、ウェルテクス一族の技術によって、豊かな水を得ることができたとか…」

「あそこにはちょうど、ウンディーネがいたはず…他のファントムと連携を取らせ、娘やウィザードを追い詰めましょう」

「それがいいですな。……しかし…こんな形で【いい研究対象】を得られるとは、思っても見なかった」


そういって、シラスが取り出したのは…先程ユディーヌから受け取ったウォータードラゴンの指輪。

それを見たギリオンは眉を寄せ、指輪を凝視する…

一方のシラスは、その視線に気付いているのかいないのか、怪しげな笑みをしながらギリオンに言う。


「ウィザードの指輪…この力を解析することができれば、私の目指す究極の力を得ることも可能。それに加えて、あのミカという娘を捕らえ…その力をも調べることができれば……ふふふ」

「…それは……いえ、私も確かに興味はあります。ですが、最優先すべきは【神の剣】…あれを一日でも早く完成させ、イシュトヴァーン様の機嫌を取るほうが宜しいでしょう」

「ふむ、確かに。それではギリオン殿、暫く【神の剣】の指揮は頼みましたぞ」

「お任せください」






〜〜〜






ティエラの町。



ミカは今も意識が戻っておらず、ユーテキと凛子が看病している。

晴人達はウェルテクス屋敷での戦いの傷をここで癒しながら、これからについて考えていた…

何があったのかは分からないが、リーリエリヒト帝国は今、出入りを制限されている状態。

当然、お尋ね者になっているであろう晴人達は…リーリエリヒト帝国内に入るのも厳しい。

帝都に残してきた輪島のことが気掛かりであったが、コヨミがガルーダを飛ばし、昨日には手紙をつけて帰ってきた。

それによれば…


「……『一体何処まで様子を見に行っているんだと思ったら、そんなことになっていたのか』…ここら辺、おっちゃんの愚痴も混じってるから…ちょっと飛ばすか」

「「「賛成」」」

「じゃ、満場一致ってことで。――『そういえば』…」




そういえば、この前散歩がてらに大きな聖堂に行ってきたんだよ。

そしたら扉が閉まっていて、入ることができなくてねぇ。

偶然知り合ったおばさんから話を聞くと、なんでも、ラディス教に代々伝わるシンボルストーン…とやらが抜け落ちたらしくって、その原因を調べるために暫く教会はお休み。

当然、熱心な信者の人達は「どういうことだ」「不吉な予兆の前触れではないのか」とごった返していて…正解騎士団?聖海騎士団?

とにかく、そんな人達が信者の人達を落ち着かせるのにてんてこ舞いだったよ。酷い時には、帝国軍まで出てきたそうだ。


今、信者の人達は「シンボルストーンが落ちたのは異教徒のせい」「異教徒が増え続け、お怒りになっているであろうラディス神を静めるために」と聖地巡礼をしているそうだ。

とにかく色んな…ラディス教に纏わる場所を巡って、最終的には聖地ラディスでお祈りして、帝国に戻ってくる……みたいな感じで。

あっと、ここは関係なかったかな。

それよりも、奪われたリングのことだが…

これに関しては、何も心配することはないと思うんだよ。

魔法の指輪は魔法使いである晴人しか使うことはできないんだ、いずれあっちから返してくれるだろう。


問題なのは、ミカという娘さんが変化したと言う獣のような姿をどう制御するか…だな。

私が思うに…砕けた形見のピアスが、彼女の中にある力を制御していて…それが壊れたから今まで隠されていた力が解放された……

とどのつまり、何か別のもので制御することさえできれば…これから旅をする上で、帝国の奴らと会った時に…暴走して味方を巻き込まずに済むだろう。

とはいえ、本当にそんな方法があるかは分からんがね…


とにかく、皆無事で【面影堂】に戻って来るんだよ。

私は晴人達が帰ってくるのを、のんびりと待っているからね。




輪島の手紙を見て、「おっちゃんめ」と晴人は鼻を啜る。

恐らく輪島も、最初に晴人達が送った手紙を見て…『一体どんなことに巻き込まれているんだ』と驚いたことだろう。

しかし、指輪の力で異世界に…というありえない体験をした手前で、『帝国ミサの場で不敬を働いた少女に巻き込まれて、ウェルテクス一族について知る旅に出ている』『しかもその少女は、獣のような姿に変わった』という話をしても、少し驚いたぐらいで後は普通に流したはず。

手紙と言えば、とイーヴリンは難しい顔をしながら話をしていた。


「…そういえば、ミカが見つけたという手紙。あれは恐らく、キルベルト公爵が送りつけたものだね」

「「「キルベルト?」」」

「クラウスさんの弟で、…ちょっと…というかかなり偏屈な人で有名だよ。なんでも、ペットと称して魔物を飼っているとか」

「ま、魔物を飼っているって…」

「…とことん変な人ね、キルベルトさんって」

「しかし…ミカがウェルテクス一族って知っている貴重な人間でもあるしな。……しかし当面は、ミカのあの【力】をどう制御するかだ」


『魔物を飼っている』という情報に、瞬平もコヨミも顔を引きつらせる。

晴人はというと、輪島からの手紙を大事に折りたたみながら、溜息交じりにミカのあの姿…シアーズのことを話題に出す。

あれを止めるために、いちいちウォータースタイルになって、リキッドで相手が疲れるまで攻撃させて……というのをしていたら、自分達ももたない。

しかも、それを晴人の魔力が大きく消耗している時にやることになれば…お手上げだ。

ドラゴンの力を借りても止められるかどうか分からない以上、ここは晴人の言うとおり、まずはシアーズの制御をする方法を見つけることを優先するべきだろう。





その頃、ミカの自室では…

眠り続けていたミカがようやく目覚め、凛子とユーテキが笑みを漏らしていた。


「…ここは…」

「ミカちゃん!…よかった、目が覚めたのね」

「ここはティエラの町、クラウスさんの家だよ。……ミカ…屋敷でのこと、覚えてる?」


ユーテキの言葉に、ミカは小さく頷く。

…一族の死の真相を知り

…クラウスが死に

…そして、そこから自分の意識が途切れ…

膨大な力が溢れ、怒りに任せて暴れていたことは薄々と覚えている。

しかし…それ以外のことが、まったくなのだ。

シアーズ、という姿になったことは覚えていないようで…ユーテキと凛子は彼女に説明を始めていた。

最初はミカも自分が人の姿でなくなったことに驚きを覚えていたが、少し落ち着くと…凛子が渡したココアを飲みながら、彼女に訊ねる。


「……私は人間じゃなかった。凛子達の言う、ファントムなの?」

「それは…違うと思う。ミカちゃんがもしもゲートで、あの場でファントムを生み出していたとしたら…ミカちゃんは今、こうして生きてないわ」

「既にファントムだった可能性は?」

「…分からない。でも、ファントムはゲートの姿をそのまま写し取るみたいだから…もしかすれば、成長することはできないのかも…知れない。私達も、そこまでファントムに詳しいわけじゃないから……断言はできないけど」

「――でも、ミカは絶対ファントムなんかじゃないよ!レムってファントムは、凄くずるくて酷い奴だった…でもミカは違う!人を貶めたり、苦しめたりする子じゃないって言うのは……皆分かってる!!」



自分はファントムではないのか…という不安を口にするミカに、ユーテキが「違う」と言い切る。

出会って少しの間しか一緒にはいないが、これまでのミカを見ていれば分かる…

ファントムはゲートから仲間を生み出すため、ゲートを絶望させるためならば、どんな卑劣なことでもできる。それがファントムだ。

しかし、ミカは何処までも真っ直ぐで…正直で、人を貶めるようなことは絶対にしない。

凛子もユーテキの言葉に何度も頷き、「そうよ」とミカを説得する。


「そう、絶対そうよ!…ミカちゃんはファントムじゃない。晴人君も、コヨミちゃんも、イヴさんも、瞬平君も…皆そう言うわ!!」

「凛子さん…」

「凛子でいいわよ。……ねえミカちゃん、私が思うに…ミカちゃんのつけていたピアス。それが砕けたと同時にあんな姿になったとしたら…それが何かのヒントになると思うの」

「お母さんの形見のピアスが?」


ミカはそう呟きながら、石の部分が砕けたピアスの止め具を見る。

クラウスから貰ったのピアスは元々この一つだけで、もう一方を見つけ出してそれで制御する…というのは不可能のようだ。

ユーテキが何かヒントはないものか、と考えていると…

ミカは一つだけ心当たりがあったのか、服のポケットから綺麗な石を取り出していた。


「――あ、そうだ。この前、凛子にはピアスのことだけ話したけど……実はもう一つ、お母さんからの形見があったの」

「それ、どんなの!?」

「この石。ビー玉みたいで綺麗だから、失くさないようにずっとポケットの中に入れていたの」



そう言ってミカが取り出したのは、宝石のように綺麗な石。

蒼く透き通ったそれは、不思議な雰囲気を漂わせている…

それを見た瞬間、ユーテキは目を見開き、ミカから石を半ば強引に借りると……しばらくそれを調べて、「間違いない」と叫んでいた。


「これ…ジェネスミグレイトだよ!しかも……凄いっ、これ…オリジナル!?」

「「ジェネスミグレイト?」」

「あ、そっか。ジェネスミグレイト…ウェルテクス社が国営化になって、ジェネスミグレイト……JMも帝国内でだけ復旧しているから、研究者じゃないとあまり知らないのか」


そう言いながら、ユーテキはミカや凛子にも分かるように説明を始める…

ジェネスミグレイト、通称JM。

宝石のような見た目をしているが、アムニスフィールドの力の恩恵を受けており…リーリエリヒトにおける軍事用の武器やウェルテクス社の研究品にも使われている。

当然、“ジェネレーター”と言う装置を使えば人の身体能力を高めることも可能で、帝国関係の戦力は皆これを装備していて当然なのだとか。

そのJMでも特に力が強いのは、“オリジナル”と呼ばれるもの。

そうでないJMは基本的に“レプリカJM”と言う通称を使っているが、レプリカでもその力は高く、いくらあっても困ることはない。

多岐の用途があることから、JMは特にリーリエリヒト帝国が買収を行っており、その仲介をするのが【JMハンターズギルド】。

JMハンターは世界各地を自由に旅をする権利を帝国によって与えられているため、貴重な情報を持ってくることが多い。そうしたJMハンター達が集まるのが、JMハンターズギルドだそうだ。


「ミカの姿の変化と同じくして、JMの力の源とも言えるアムニスフィールドが光り輝いた…もしかしたらミカのあの姿は、このオリジナルJMとアムニスフィールドが大きく関わっているのかも」

「だとしたら…このオリジナルJMを自由に使えるようにすれば、」

「ミカちゃんがあの力に振り回されることなく、自由に使えるってことね!」

「そういう意味では、まずJMハンターズギルドに優先していくべきだと思うんだ。ウェルテクス一族については、それからでも遅くないよ」




「――確かにな。だったら行こうぜ、そのJMハンターズギルドに」

「準備なら、もうできてますよ〜!」



扉の奥から聞き耳を立てていたのか、晴人と瞬平が扉を開けながらそう言う。

彼らの登場には、ミカ達は驚きながらも…

ミカは大きく頷き、凛子とユーテキもそれに合わせて頷いていた。


「…ありがとう。でもその前に私、行きたいところがあるの」

「ああ、分かってる。……とんでもなく長旅になりそうだからな、クラウスさんに挨拶しておいたほうがいい」

「……うん」

「それから…これ、クラウスさんが使っていたセイバー。まだ使えるみたいだったし…一緒に連れて行ったほうが、きっとこいつも…クラウスさんも喜ぶだろ」


そう言って晴人は、ミカに筒を投げ渡す。

それは生前、クラウスが使っていたダブルセイバー…

ミカは大事そうにそれを握り締めながら、笑顔を見せ、服を着替えるために凛子以外の男を全員追い出していた。






***




何故ドラゴン使わなかったし、はるとん。

…まあ、「ドラゴンの力を借りても〜」と言っていましたし、どの道ドラゴンの力を使うほどの魔力は残ってなかったでしょうしね。

あれ…前回・今回とハブられたハリケーンェw


フレイムェ…

バインドェ…

ランドェ…

ビッグェ…

ディフェンド(複数回使用)ェ…

しょうがないですよ。属性的にもしょうがない、ポケモンの相性的にもしょうがない!

――それでもウォーター+バインドのかませって……

ちなみに、ブレイカー本編だとシアーズ以外にも色々なれたりするので…ウォーター以外のスタイルはその都度、って感じですかね。



今回、色々と行き先が確定しましたね。

・ウェルテクスについて知っていると言う、【キルベルト公爵の屋敷】

・ウェルテクスの技術と関係の深い砂漠の町【セラピア】

・JMや情報が多く集まる【JMハンターズギルド】

・ラディス教の聖地でもある【聖地ラディウス】

まあ、最初に行くのは3番目ですけどね。

ちなみに…

新しい仲間が出るのは、1番目と2番目の行き先にて。

4番目は……最後の仲間にして、漫画に出られなかった人の加入フラグが立つ場所ですはありますが。


JMに関しては…

本当は出す予定、なかったんですよ…ややこしくなりそうだし…!

でも、出さないとむしろ逆にややこしくて面倒なことになると気付き、出すことにしました。

いやあ…

持っててよかった、【テイルズオブモバイル ザ・コンプリートガイド】。

持ってなかったら逆に詰んでました、ニコニコで上がってる動画って、途中まででもう1年近く放置されてますもん…

3DSでいいから出ないかなー…リメイク……




次回はいざ、JMハンターズギルド。

とりあえず、なんかドタバタしたい。主に晴人とウィザードリング関係で。