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タイトル未設定 - Magic22:とある科学者の昔話

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Magic22:とある科学者の昔話

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翌朝。

ソウセイは出立の準備を進めるべく、港町パテオに残り…

晴人達は昨日彼から聞いた、【初代ウェルテクス一族の住んでいた屋敷】へと向かっていた。

リーリエリヒト以外にも屋敷があることに驚いていたが、「もしかしたらツァールハイトにいたことがあるのかも」というユーテキの言葉に、晴人達は納得していた。

北東の方角にあった森の中を真っ直ぐ進んでいくと、道が開け、目の前には

――誰もいない屋敷とは思えないほど、綺麗な庭が広がっていた。


「…凄い、綺麗…!」

「こんな場所があるんですね…」

「待て、おかしいだろ。ここに人が住んでいないなら…なんでこんなに、庭が綺麗な状態なんだ?」


庭の美しさに見とれている凛子と瞬平をよそに、ザウバーはすぐ手入れが行き届いている庭に不信感を募らせる。

確かに、人がいないにしては手入れが行き届きすぎている。

まるで今も、誰かが手入れをしているかのように…

その話を聞いたユーテキは、「まさか」と思いながらも…近くにいたバーガーやミカと話す。


「……ひょっとして、誰かが住んでいるとか?」

「おいおい、アイザックさんの話じゃ…住んでいる人はいないって話だろ。ソウセイも、屋敷があるって噂を聞いただけだったし…」

「うん。…だけど…人が住んでいないとおかしいわよ、こんなの」

「もしかして、ウェルテクスの生き残りが住んでいるとか…?」

「!」


『ウェルテクスの生き残りがいるかもしれない』

ユーテキの発言には、ミカも目を見開く。

ミカの家族…ではないだろうが、ウェルテクス“一族”と呼ばれるほどだ。

世界のどこかに、生き残りがいてもおかしくはないだろう。

「そんな馬鹿な」とザウバーが呟き、とにかく屋敷に入ってみないことには分からないと晴人達は結論を出し、扉の前に立つ。



しかし、扉は硬く閉ざされており、鍵の開く気配はない。

力自慢のバーガーが強引に開けようとしても、全然開かないのだ。

仕方がない、と晴人が変身しようとしていた、その時だった。

…今まで何をやっても開かなかった扉が開き、まるで晴人達を迎え入れているようにも思える。


「「「……」」」

「こ、これって…入れって、事でしょうか……?」

「で…でも、いきなり開くなんて…どういうことなの…?」

「と、とにかく、言ってみないことには分からないわよ……ユーテキ、ちょっと先頭歩いて」

「ええっ!?み、ミカが歩けばいいじゃないかあっ!」

「煩いわね!それでも男!?」


ぎゃあぎゃあと大騒ぎをしながら、ウェルテクス屋敷に入っていくミカ達。

その際、凛子とミカによって瞬平とユーテキがそれぞれ盾にされる形で先頭を歩き、その後にバーガーとルルが続く。

「何やってんだ」と晴人が思っていると、ザウバーがある方向をずっと見たまま動かない。


「…」

「どうした?」

「いや、…あそこに人が」

「「人?」」


晴人と、近くにいたコヨミがザウバーの視線の先を見る。

すると…

確かに、美しい黄色の花をつける庭木の後ろから、ちょうど晴人やザウバーぐらいの歳の男性が見ていたのだ。

目には眼鏡をかけているが、左目を痛めているのか眼帯をしている。

髪は海のように綺麗な青で、瞳はそれよりやや明るめの青。

誰なんだろう、とコヨミが思っていると…男はニコニコと笑みを見せながら、いつの間にか晴人の後ろに立っていた。


「――やあ、お客さんかい?」

「「うわっ!?」」

「…いつの間にッ!」

「ここに人が来るのは久しぶりだなあ。侵入者が来ないように、プロテクトを掛けていたはずなのに」




うーん、と考えながら思考を張り巡らせる男。

服装は白い白衣を着ていて、まさしく研究者という井出達をしている。

その風体と、『侵入者が来ないよう』という言葉を聞いた晴人は…男に質問していた。


「……あんた、ここに住んでいるのか?」

「さあ…どうだろう。それより君達、ここのプロテクトをどうやって破ったのかな…僕じゃないと空けられないようにしたんだけど?ああ、いつの間にか鍵も開いてるし」

「私達は、森の中を真っ直ぐ歩いていたら…ここに着いただけなの」

「それに鍵は、勝手に開いた。……ここはウェルテクス一族の初代が住んでいた屋敷、と聞いているが…お前はここに住んでいるのか?」


コヨミとザウバーの説明を聞き、男は眉間にシワを寄せながら考える。

その際、難しいことをブツブツと呟きながら話していた辺り…研究者であるのは間違いないだろう。


「――おかしいな…“彼女”を守るという意味でも、僕の力でなければ屋敷の鍵を開けられないように作ったし…そもそも幻影バリア自体、僕の力がないと近くにできた町まで戻るようになっているのに。彼らはまっすぐに森を抜けて、この屋敷に来て、鍵を開けた…そこで考えられる一つの理由は……」

「え、ええーと…お兄さーん。そこのお兄さーん?」

「駄目よ晴人、この人…全然聞いてない」

「…随分と面倒な奴に出くわしたものだ」

「……しかしそれはまずありえない。“彼女”の性質上、99.9%の確率で女子を生むはずだ。その後に子供を作った場合、その子供は男か女のどちらかになる確率は…それでも90.2%という高い確率で女。最初に生まれた女子に使命が受け継がれるから、ただの人間だと思うけど。しかし残りの9.8%の確率で生まれた男にそれが遺伝する確率は極めて低い。だがもしも0.1%の壁を越えて…」

「…長い…長すぎる……!」




「――この推測が正しいとすると…そうか……そういうことか。……君達、ウェルテクス一族が一緒にいたんだね」




男は指を鳴らしながら、真正面にいたザウバーのほうを見て笑う。

近くにいたコヨミと晴人も、「ミカのことか」と納得した様子で…男に話をしていた。


「ええ。…ミカって子が、ウェルテクス最後の生き残りなんです」

「もしかして…ミカがいたから、あんたの言うプロテクトってのが解けた…ということか?」

「ん?ミカ??……ウェルテクス最後の生き残り…???」

「――あの…これから話すこと、あんまり驚かないで聞いてくれるかな」


晴人は首を傾げる男に、ウェルテクス一族のことについて話そうとしていた。

…11年ほど前、ウェルテクス一族はミカを遺して帝国に殺された

…事件が起こる前、ウェルテクス一族は帝国から何かを依頼され、それを断ったがために殺されたのではないか

…その帝国は現在、ウェルテクス社を国営化し、その技術は帝国内でのみ復旧している

…ミカの兄も11年前にファントムという怪物を生み出し、この世にはいない

総ての話を聞いた男は目を細めながら、晴人に尋ねていた。


「……つまり、今現在ウェルテクス一族は…そのミカって女の子だけという?」

「そうなる」

「…そう、そういうことなんだ。――成程、事情は大体分かったよ…僕はサウル。ウェルテクスについてちょっとだけ詳しい、科学者さ」


ウェルテクスに詳しい科学者。

その言葉を聞いた晴人達は、もしかすればミカの家族について…ウェルテクス一族について、詳しい話を知っているのではないか。

それに…彼のことをミカに教えれば、きっと喜んでくれるはず。

晴人やコヨミはミカに会って欲しいとサウルに頼むが…



「……ごめん。実は、こっちにあまり長くいることはできないんだ。だから…その子とは会えないかも」

「そこを何とかできないのか?」

「無理…かなぁ……第一、僕が会ったとしても…彼女の家族の話はしてあげられない。僕がよく知っているのは、一族の初代のことについてだけだ」

「……それだけでも構わない。ウェルテクスについてのことなら、何でも知りたい。…そういう奴だ、ミカは」

「そう。……私も、自分のことについての記憶がないから…一族のことを知りたいミカの気持ち、分かる気がする。だから…」


晴人やザウバー、コヨミが何とかならないのか説得を試みる。

サウルは暫く考えた後…

少し悲しそうな目を見せながら、頷いていた。


「…分かった。だったら、僕が君達に話すから…その言葉をミカって子に伝えてくれないかな」

「直接会わないのか?」

「ウェルテクスの娘ってことは、――フューリ…ウェルテクス一族の礎を作った初代の奥さんに必ず似ている。……だから、ちょっとばかり…会いにくいんだよね」

「?…初代ウェルテクス一族の人と結婚した女の人に似ていると思うなら、尚更会いたいと思わないの?」

「確かに。……本当は何も知らなくて、適当にはぐらかしているんじゃないだろうな」

「とにかく…僕、ちょっとピンク色の髪で澄んだ水色の瞳を持った女の子に、軽いトラウマがあってね。……立ち話もなんだから、歩こうよ」



そう告げるサウルの表情は、先程よりも辛そうなものになる。

何かあったのか、ザウバーがそう疑問に思う横で

…晴人とコヨミは、何故かユーテキのことを思い出し……サウルのトラウマに納得していた。


「………あぁー、そりゃ、トラウマになるよな。ユーテキの扱いみたいなことをされていた前提なら」

「そうね…ユーテキのようなあの地獄の日々を送ったら、……誰だってトラウマになるもの」

「っていうか、あんた、ピンポイントで苦手な女の子の特徴挙げたよな…?ミカ的な女の子に、何か乱暴された説が俺の中で急上昇した」

「最有力なのは、深夜に研究していたところ…勝手に忍び込んだミカみたいな女の子に無理やり殴られ連れ回され、カードキーのためだけに利用されたところ、色々なことに巻き込まれていつの間にか追われる身……みたいな」

「――お前らな…人前でそんな話をするんじゃない」

「はは、なんか面白そうな人達だなぁ」






〜〜〜






その頃…

屋敷の中では、ミカ達が捜索をしていた。

しかし目新しいものは何もなく、これといった手がかりも何もない。

“ウェルテクス一族”だけあってか研究室もあり、その設備はユーテキが思わず立ちくらみをするほど凄いらしい。

何がどう凄いのか、恐らくユーテキ以外には伝わらないだろう。

1階に戻ると、窓の外には美しい庭の光景が綺麗に広がっている…

窓からその景色を眺め、凛子やミカは「やっぱり綺麗」と庭の美しさにうっとりとしていると、あることに気付く。


「あれ?晴人君とコヨミちゃん…なんであんなところに立ってるのかしら」

「ザウバーも一緒ね。…“3人”で何を話してるんだろ」

「――凛子さーん、ミカちゃーん!」

「こっち!すっごいのあったよぉ!!」


凛子とミカが首を傾げ、窓を開けて晴人達を呼ぼうとすると…

瞬平とルルが何かを見つけたようで、そちらのほうに向かう。

そこは書斎部屋で、たくさんの本が本棚に並んでいる。

ユーテキによればそのどれもが科学技術関係の本で、1冊貰って帰りたいほど。

流石に家主がいないのにそれは駄目だと怒られてしまったユーテキはさておき…バーガーは、「あれだ」壁に掛けられている肖像画を指差す。



――そこにあったのは、ピンクの髪に水色の瞳…と、ミカと同じ特徴を持った女性が描かれていた。

絵の中の彼女はとても綺麗で、まるで生きているかのよう。

その姿に、凛子は肖像画とミカを交互に見ながら、「もしかして」と話す。


「…もしかしてあれが、初代ウェルテクス一族の…?」

「なの、かな…なんだか、……凄く…懐かしい感じがする……」

「ミカと違っておしとやかに見え……あだーっ!?」

「ユーテキ蹴るわよ!?」

「蹴ってるよ!もう蹴られてるよ!!」


余計なことを言ったユーテキと、制裁キックをかますミカはさておき。

バーガーもミカの母・ステラを見たことがあったのか、「確かに似てるな」と頷く。

その一方で…

一族というからには、相手の男性もいるはず。

そう思った凛子は男性についての手がかりを探そうとしていたが、まったく見つからない。

ルルはミカに直接、父親について尋ねていた。


「ミカちゃんのお父さんって、どんな感じだったの?」

「そうだな…大きくて、優しくて、いつも楽しい気持ちにさせてくれた。……確かお兄ちゃんと同じ青い髪じゃなかったかな」

「ふうん、凄いパパンだったんだね!」

「…パパン…なんでだろう、今、頭の中で『コブラ!カメ!ワニ!』って音が大音量で鳴ったのは」

「ミカ、僕、…何故か暴れん坊将軍のBGM流れた」

「俺…インドの笛の音色」





「パパンショーック!」と叫ぶコブラカメワニはともかく。

晴人達は、サウルから話を聞いていた。

どうやらこの庭は、初代ウェルテクス一族が作った…人工庭園。

季節ごとに咲く花の種類が変わり、地下に水源代わりの装置を搭載しているため、特に手入れをしなくても美しい光景を春夏秋冬で楽しめる。

サウルの話では、セラピアにある水源JMはかつて初代一族が作ったこの庭の水源装置を参考にして作ったのではないか、とのことだ。


「…彼は愛した女性を楽しませるために、色々したみたいだよ。彼女が屋敷から出なくてもいいように、庭に変化を持たせたり……恐らく、その時の『誰かを喜ばせたい』という想いが、今のウェルテクス一族に受け継がれているんだろうね」

「そうか…どおりで、不思議な庭だと思った」

「他には、どんな研究をしていたの?」

「昔は……シールドを作ったり、今で言うJMに通じるものを作ったり、色々やっていたよ。“その時”の事を生かして、彼は屋敷の周辺に特殊プロテクトを掛けたり、水源装置を作ったりしたし」

「……“その時”?」


それはどの時だ、とザウバーが突っ込みに入る。

聞かれたサウルは、少し困ったような顔をしながら…

話す約束をした手前、それを破るわけにも行かず、正直に話していた。


「…彼は当時、世界各国から集められた高名な科学者達と共に、大きなプロジェクトチームとして参加していた。シールドやJMの作成は、その時に学んだそうだよ」

「そうなんだ…なんだか、凄い」

「それほど凄い科学者がいながら、何故、ウェルテクス一族しかその名が知られていないんだ?」

「それは僕にも…だけど、そのプロジェクトチームではある一つの生命体を作っていた。それこそが、ア――」



何かを思い出したかのように、サウルは言葉を途切る。

ア?と晴人は首を傾げ、次の言葉を待つ。

だが、サウルは慌てたように先程の言葉を取り消し、改めて話を続けていた。


「……とにかく、そのプロジェクトチームに参加できたことは彼にとっても有意義だった。そのお陰で、彼女にも…出会えた」

「それって、…奥さんですか?」

「ああ。――まあ、幸せばかりじゃなかったけどね」

「どういうことだ」

「彼女は…生涯を共にするには、とても重いものを背負っていた。そして…そんな彼女でも構わない、彼女だからこそ好きなんだと……彼は彼女を抱いた。その代償は、…あまりにも重いものだった」


サウルはそう言いながら、ザウバーに視線を向ける。

先程から彼の目に視線を向ける辺り、赤と青のオッドアイが珍しいのだろうか。

それを不愉快に感じたのか、ザウバーはサウルから背を向け、「怒らせたかな」と思いつつも…話を続けていた。


「そのことを知られた彼は、研究チームの仲間によって彼女と引き離された。何ヶ月もね」

「「「…」」」

「……だけどある日、彼は彼女と一緒に解放された…数ヶ月ぶりに見た彼女のお腹は、少し膨らんでいた」

「それってもしかして」

「子供が…」

「…できていたと、いうことか?」

「まあ、そうだね」




でも、とサウルは遠い目をしながら、語る。

まるで…これから先、未来永劫続くであろう【宿命】を、感じているかのように。


「――その時から一族は、ある意味で呪われたのかもしれない」

「「「呪われた?」」」

「女の子しか生まれなくなったんだ、ウェルテクス一族って。……まあ、男の子が生まれることもあったけど…大抵の場合は、先に女の子が生まれた後だからね」

「え、じゃあ、ミカの兄って」

「最初に生まれてくるのが男の子だったのは、相当珍しいパターンだと思うよ。計測史上初、ってところかな」


その言葉を聞いた晴人は、セルシウスのことを思い出す。

セルシウスは相当特殊なゲートから生まれた、とオリジンは言っていた。

サウルの話が本当なら、女の子が最初に生まれることが確定しているウェルテクス一族の中で…男の子が最初に生まれるのは、極めて異質なこと。

その上でゲートだとすれば、……成程、確かに特殊なゲートだと晴人は納得していた。

一方で、サウルは…今度は困ったような顔をしながら、話を続ける。


「それから、……遺伝って言うのかなぁ。歴代のウェルテクスの娘は、必ず研究者とくっついたんだ。そういうところまで、初代夫婦に似なくていいのにねぇ」

「…ザウバー、俺、ユーテキの頭皮が砂漠化する未来しか見えない」

「ザウバー…私、ユーテキの胃がボロボロになって早死にする未来しか見えない」

「何故それを俺に言う!……俺だって、ユーテキが尻に敷かれるんじゃないか…その影響で今より爪楊枝並みに細くなるんじゃないかと、不安なんだ」

「ユーテキ…ミカと結婚して、何年ぐらい生きていられると思う?俺、3年」

「私は…ユーテキの雑草魂が無駄に発揮して、10年」

「ああいうのは意外と長生きする。20年」

「君達なかなか酷いねぇ」



あっはっは、と大笑いしながらサウルは流す。

正直、それで済まされる問題ではないのだが…特に頭皮。

晴人達がユーテキの運命について予想を張り巡らせていると、屋敷の中からミカ達が出てくる。

そしてユーテキの姿を見た瞬間、

…晴人・コヨミはユーテキの心配をし、ザウバーはミカに意見していた。


「ユーテキ………俺は流石に、お前の頭皮の希望にはなれない…だが!諦めるな、いつか自分で効果の高い育毛剤を作れるはずだ!!」

「…ユーテキ…例え胃や肝臓がボロボロになっても、あなたならきっと、人工の臓器を作れる。そうでないと……ユーテキじゃこれから来る運命に耐えられない…!」

「ミカ。――あまりユーテキに負担を掛けるなよ…爪楊枝になる」

「あの…晴人さん、コヨミちゃん。……いきなり何なのこの扱い…?」

「ザウバー…いきなり何言ってるの?ユーテキがもやし並みにひょろいのは、今に始まったことじゃないじゃない」


ユーテキは自らの扱いに涙し、ミカは訝しげな顔でザウバーを見る。

しかし、晴人はすぐにサウルの存在を思い出すと、彼を紹介しようと振り返った。

だが…

既にサウルの姿はなく、凛子も先程窓から見た光景に関して、晴人に尋ねていた。


「あれ?さっきまでここにいたのに…」

「そういえば晴人君、ザウバーやコヨミちゃんと何を話してたの?」

「ユーテキの心配…もそうなんだけど、さっきまでここで……サウルって人の話を聞いていたんだ。ウェルテクス一族について調べているって、言っていたけど」

「え?でも、私達が窓から見た時…晴人君達3人しかいなかったわよ」




ま さ か




信じたくない。

信じたくなどない。

そんな非常識的なもの、信じたくなどない…

だが、信じなくてはならないだろう。

自分はまさに「非常識的なもの」でもある魔法を、使えるのだから。

コヨミもあまりのことに錯乱したが、自分の体質の手前、もはやそれを認めざるを得ない。

同時に…ミカも顔を青ざめ、凛子達も晴人達の沈黙振りに、思うところがあったのだろう。

――全員一斉に、ソウセイの待つ港町パテオに逆走していった。


「「「おーばーけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!!?」」」

「「「ぎゃー!ぎゃー!!ぎゃー!!!」」」

「おいお前ら、たかだか幽霊でそこまで驚く必要……ッ!?」



ザウバーが逃走する晴人達に叫ぶが、彼を引き止めるように左腕を掴む者がいた。

急いで振り返ると、そこには…

何食わぬ顔で姿を現したサウルが、そこにいた。


「やあ?」

「…お前…幽霊だったのか?」

「幽霊とは人聞きの悪い。ただの未練がましい…自縛霊だよ」

「もっと最悪だろうが!」

「冗談、冗談。そもそも、足のある幽霊が何処にいるんだ?」


その言葉に、ザウバーは「確かに」と納得する。

サウルには足があるし、自分の手にも触れられる…

どうせ凛子が目撃した時も、木か何かに視界が遮られて、サウルが見えなかったのだろう。

そう思っていると、サウルは総てを分かっているかのような目で、ザウバーに尋ねていた。


「自分でも分かっているんじゃないのか、――長く続かないって」

「…どういう意味だ」

「それでも、いつ終わるかも分からない復讐を続けたいのか」

「…」

「まあ、――忠告しても聞くようなタイプの人間じゃないだろうし…最後に一つだけ」

「何だ」

「早死にしたくなかったら、必要以上に力を使わないほうがいい。死ぬスピードを速めるだけだ」

「……」


掴まれている手を無理やり振りほどくと、ザウバーは晴人達を追ってパテオに戻る。

そんな彼を見ながら、サウルは小さく呟いていた。




「……俺が幽霊なら、彼は…なんて言うべきかなぁ」






〜〜〜






パテオの町に戻った晴人達は、ゼェゼェと息を切らせながら宿屋の玄関に倒れこんでいた。

一体どうしたのだと他の客が集まり、慌ててやってきたソウセイは、後からやって来たザウバーに話を聞く。

一言で言うなら【幽霊】

二言で言うなら【幽霊】【パニック】

もっと詳しく言うなら、幽霊的な何かに出くわしたせいで大パニックになっているらしい。

ああ成程と、ソウセイは適当に納得すると…とりあえずザウバーと連携して、彼らを部屋に押し込める。

そして…

ある程度落ち着いたところで、ソウセイは晴人達に水を渡しながら、次の目的地を悩んでいる晴人達に提案を出していた。


「そうだ。ここから南東に、炭鉱で有名な町…サブルムがあるんです」

「「「サブルム?」」」

「はい。炭鉱ではJMだけでなく…鉱石や石炭といった、様々な資源が発掘されているんです」

「それが…どうしたの?」

「ミカさんの持つJMは、オリジナルJMです。JMを多く発掘する町なら、何かしらのヒントはあるんじゃないかと思うんです」


成程、とソウセイの言葉に納得するミカ達。

例えミカの持つオリジナルJMとは直接の関係がなくとも、JMの町ならばJMハンターが必ずいる。

そこで情報交換を行うのも、悪くはないだろう。

それから…と、ソウセイはある物をユーテキやルルに渡す。

それは、まだ新品同様のジェネレーターだ。



「ジェネレーター!?嘘ッ、何で!!?」

「すごーい、ピカピカだぁ!」

「実はさっき、ツァールハイト大陸で帝国の動向を探っていた…フライハウト団の仲間からいくつか貰ったんです。確か…バーガーさんは聖海騎士団の一員で、ザウバーさんはJMハンターでしたよね」

「それがどうした」

「2人は持っていると思って、ユーテキ君とルルちゃんの分しか貰わなかったんですが…問題はなかったですか?」


その言葉に、バーガーは「まだまだ現役だぜ」と自分のジェネレーターを見せる。

だが…

ザウバーは軽く溜息をつきながら、ジェネレーターを出す。

それはかなり使い古されたもので、しかもザウバー曰く…


「「「壊れてる!?」」」

「…半年前からな。まあ、15年ほど前に貰ったものだからしょうがないんだが」

「……ジェネレーターなしであれだけ強いってなんなのこれ、不公平だよ…あんまりだよ……」

「すみません、ザウバーさん!予備で1個貰っておくべきでした…」

「いや、俺もこれ以外使うつもりはなかったんだ。お前が謝る必要はない」

「――あ、だったら、僕が直してあげるよ!素材とかの問題で、ちょっと時間は掛かるかもしれないけど」



ここが最年少研究員としての腕の見せ所、とばかりにユーテキが立候補するが

…そんな彼に対し、ミカは不安そうに尋ねていた。

ついでにコヨミもツッコむという、可哀想な展開。


「……本当に大丈夫?」

「魔改造なんてしないわよね…」

「皆、僕を何だと思ってるのさっ!?……大丈夫、この形のまま直して見せるから…ザウバーちょっ、そんな怨念に満ちた顔しないでー!!?信頼っ、僕の信頼どこー!?!?」


ユーテキの悲痛な叫びが響く室内。

そんな彼に、誰もが笑い…「笑い事じゃないよ」とユーテキは、半泣き声で反論していたとか。






***




何だこの暴走話(ユーテキ的な意味で)

何で彼、こんな扱いばっかりw


新キャラ・サウル登場。

なんだかもう、色んな意味で引っ掻き回しそうです。

いや、今予定している話全部、いろいろと引っ掻き回す気でいますが…



ブラカワニパパンw

何でこの人こんなネタにされちゃうのww

サウルの話って、割とネタバレに近いというか…

アウトコースぎりぎり。

ヘタすれば物語の根幹に触れかねないです。

ミカの兄ちゃん、相当低い倍率で生まれてきたんですね…そりゃゲートになったらやばくて当然だw

ユーテキの扱いwww

なんか、最近瞬平より扱い悪い気がする。

そしてなんかさらっとザウバーにフラグがw


研究者としての腕を信用されないユーテキェww

まあ、こっからシアーズ以外の…秘奥義に近い技を解禁していきたい、ですが!

ユーテキの技の一つに、【ファントムスナイパー】があるんですよね…色んな意味で多分ややこしいわwと思ったので、多分これ華麗に没られるとおもいます。

ルルも2つあるうちの1つが、……ポポが分裂してアタックするというカオス。

まあ、作中で2つも出ればいいほうって感じです。

ミカなんて、もう派手にネタバレしますが……ガリナという光・雷の聖獣が出ないこと、確定しちゃいましたしw




次回は…

サブルムに行くか、まだ色々やるかって感じです。