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タイトル未設定 - Magic29:崩壊の幕開け

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Magic29:崩壊の幕開け

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帝国の作戦を阻止するべく、ロートゥス塔に向かった晴人達。

晴人は目の前に聳え立つ塔を見ながら、「凄いな」と呟く。


「一体、何の塔なんだか…」

「昔から、ウェルスの町の外れにあるらしいけど…何のための塔なのかは、未だ分からないんだって。タルボット博士は、アムニスフィールドの計測のための装置や…シールド発生装置の動力源を塔の最上階に取り付けたらしいんだけど」

「ソウセイがいたら、詳しい話も聞けたんだろうが…まあ、聞いている暇がないのも事実だしな」

<フレイム、プリーズ ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!>


晴人はそう言いながら、仮面ライダーウィザード・フレイムスタイルに変身。

そして、“エクステンド”リングを使い、塔の最上部まで腕を伸ばす…

今から階段を上っても、既に塔の中にいるヴィルギニア・オフレッサーはどうにもできない。

ここはエクステンドで最上階まで腕を伸ばし、それに捕まって一気に上まで上がったほうがいくらか効率がいいのだ。

ミカ達はウィザードFSに捕まると、ウィザードFSは伸ばした腕を縮め始め、ゆっくりと上に上っていく。


「…もうちょっと早くならない?」

「ただでさえ重いんだから、無理だって…!」

「文句はあまり言わないほうがいいよ。ハリケーンドラゴンのほうが大勢を速く運べるだろうけど、晴人の魔力を無駄に消耗するようなもんだし…ハリケーンで何人か運んで往復するのも、魔力と体力の無駄だ」

「そうそう、そういうこと…でもまあ、意外とこの塔そんなに高くないらしいな……あと数分もすれば、着くだろ」



イーヴリンの言葉に頷きながら、ウィザードFSは上を見る。

ミカとユーテキ、バーガーも上を見上げ…そのついでに、空を見ていた。

今日も、美しいほど青い空。

アムニスフィールドは肉眼で見えることはなく、人の目ではっきり見えたのは、ミカが最初にシアーズの姿になった時だけ…

しかし今、帝国によってアムニスフィールドが危険に晒されている。

何としても止めないとと思う反面、今はウェルスの町を帝国軍から守ることが最優先だということを思い出し、この先に待ち受けるヴィルギニア達との戦闘に向けて気を引き締めていた。

その際、ユーテキは気になったのか…こんなことを話していた。


「……でも、何でヴィルギニア元帥とオフレッサー隊長だけなんだろう。他のミッドノクスのメンバーや、帝国軍も一緒に行くべきなんじゃないかな…?」

「それは…数で私達を抑えたほうが、いいからなんじゃ?」

「それでも、元帥とミッドノクスのリーダー…軍部の中でもトップに値する二人に与える仕事にしては、地味な気もするよ。むしろ装置の破壊を下っ端に任せて、彼らは帝国軍を指揮したほうがやりやすいだろうに」

「…まあ、気にしていてもしょうがないだろ。そろそろ着くみてぇだしな」


バーガーの言葉で、最上階への窓が近づいてきていることに気付くユーテキとミカ、イーヴリン。

そして…




「――よっこい、しょっと!」

「装置は…よかった、無事みたいだ!」

「ヴィルギニア元帥達はまだみたいだね」


最上階に到着し、周囲を見渡すミカ達。

この部屋にはアムニスフィールドの計測器や、シールド発生装置の動力源などが設置されている。

「これ、戦いで巻き込まれて壊れなきゃいいんだが」とウィザードFSが思っていると、階段からヴィルギニアとオフレッサーが現れる。


「お前ら!どうしてここに!?」

「この作戦は、俺達やリーリエリヒトにいる猊下しか知らないはずだぞ!」

「さあね。それより…帝国軍のトップ2人が、随分と地味なことをやってるもんだ」

「煩せぇ!お前らのせいで、俺達帝国軍の立場が危うくなっているんだ…ここでウェルテクスの娘やお前を捕まえれば、猊下からの信頼を取り戻すチャンスなんだ!!」

「そういうことだ。――だが、その前に…」


オフレッサーはそう言うと、槍を構える。

そのままミカ達に刺しかかるかと思いきや、……その矛先は意外な人物に向けられていた。



「…がっ…!?」


――ヴィルギニア元帥だ。

突然、仲間でもあるヴィルギニアを攻撃したオフレッサーに、ウィザード達は驚きを隠せない。

しかしそれは、刺された本人も同じ…

ヴィルギニアは地面に倒れ、腹から血を流した状態で呻くようにオフレッサーに問い詰めていた。


「オフ…レッサー……お前、なんで…!」

「悪いが、あんたはもう用済みなんだと。イシュトヴァーン猊下がそう仰っていた」

「な、に…!?」

「そもそも、何であんたと俺の2人でこんなボロい塔に登れって命令が出たと思う?帝国は完全にあんたを切り捨てに出た、この塔にあるシールド発生装置の動力源を破壊するついでに……俺にあんたを殺させるようにな」

「――あんた達、仲間じゃなかったの!?」


ミカがダブルセイバーを構えながら、叫ぶ。

彼女の言いたいことは、ユーテキ達も同じだった。

仮にも帝国軍のトップの暗殺…しかも、長年世話になってきたであろうヴィルギニアの殺害を、兄弟のような間柄であるオフレッサーがするとは思えなかったのだろう。

だが…




「仲間?俺の仲間は………オリジン様と、その配下の奴らぐらいさ」




そう言いながら、オフレッサーは姿を変え…

火のファントム・イフリートが現れる。

それを見たウィザードFSは、地面に生き埋めになったはずのイフリートの登場に、舌打ちしていた。

しかし…

同時に、ザウバーを憎んでいる理由も分かった気がした。


「…成程、軍事キャンプでザウバーに嵌められたこと、根に持ってたのか……そういやあいつ、ヴォルトとの戦闘のとき『戦いにくい』って理由で眼帯外してたっけ」

『そうだ…この場にはいないようだがな!……まあいい、俺に課せられた使命は…動力源の完全破壊と、ヴィルギニア元帥の暗殺……それともう一つ』


そう言いながら、イフリートはアムニスフィールドの計測装置に目を移す。

その時、【異常】を知らせる警報が鳴り響き、モニターにも何かが赤くチカチカと光っている。

それを見たユーテキは計測器に向かって走り、モニターを見て驚愕していた。


「これは…アムニスフィールドのエネルギーが、異常に消費されている!?」

『どうやら、始まったみたいだな。シラスの旦那の実験が』

「「「実験!?」」」

「何の実験をしようとしているんだ!」

『知れたこと。――ウェルテクス社の兵器が、世界のどこかに落とされようとしているんだよ!どんな気分だろうな、自分の手伝ったプロジェクトの兵器でどこかの町を壊すって気分は!!』



イフリートの言葉に、他でもないユーテキが驚愕していた。

…プロジェクト?

…ちょっと待て、あいつもしかして

ユーテキはゆっくりとイフリートのほうを向くと、目を見開いた状態で尋ねていた。


「…プロジェクトって、……もしかして…【プロジェクト・GS】の…?」

『あ?確かそんな名前だったかな…細かいことは覚えてねぇが、お前が関わっているならそうなんだろ』

「ちょっと待てッ、……それは確か、貧困地域の資源枯渇を救うための企画だって…」

『その企画の立案者、誰だと思ってんだ?』

「それはギリオン、――あ…」

『やっと分かったか。下っ端の研究員に、本当のことを話す馬鹿なんてどこにいる?……お前の関わっていたそのプロジェクトの正式名称は、【God Sword】…【神の剣】。ウェルテクス社の誇る、最新式の大型破壊兵器製作プロジェクトなんだよ!』


大型破壊兵器…

その言葉を聞いて、イーヴリンやミカはタルボットの話にあった、アムニスフィールドのエネルギーを利用した兵器のことを思い出す。

出力を上げれば、国一つ簡単に滅ぼせる悪魔の兵器。

それにユーテキが関わっていたと知り、誰もが彼を見るが…一番ショックを受けていたのは、ユーテキ本人だった。




「――そんな、僕の関わっていたプロジェクトが、……誰かを傷つけるための…兵器を……」



ユーテキはその場に膝をつき、体に紫色のヒビが発生する。

それを見たウィザードFSは、「まさか」と叫ぶ。

…イフリートがやって来た、もう一つの理由。

それは、ゲートであるユーテキを絶望の淵に叩き落すこと…

『誰かが喜ぶための発明をしたい』という希望を胸にウェルテクス社にやって来たユーテキにとって、自分がウェルテクス社にいた頃に関わっていたプロジェクトが大量破壊兵器を造るものだと知らされた時のショックは、相当だろう。

それを見たイフリートは大声で笑い、ミカやバーガーはそれに怒りを募らせる。


『がはははは!絶望しやがった、そのまま元気なファントムを産んで楽になっちまえよ!!』

「あんたっ…あんた達っ!」

「笑える話じゃねぇだろ…ユーテキの夢を、希望を、……土足で踏み躙りやがって!」

『何言ってんだ?兵器を作る手伝いをしたのは、こいつ自身じゃねぇか。自業自得だろ』

「確かに、ユーテキは兵器を造る手伝いをしたかもしれない…だけどそれは、あんた達がユーテキに何も教えなかったから……ユーテキだけじゃない!他の研究者みんなを騙して、造らせていたんじゃない!!」

「許せねぇ!――晴人、あの馬鹿は俺達に任せて…先にユーテキを!!」

「装置を守りながら、だから結構辛いけど…それでもユーテキがファントムを生み出すスピードのほうが速い!あいつの希望を、何とかして繋ぎ止めてくれ!!」

「……分かった!」


バーガーやイーヴリンの言葉に、ウィザードFSはユーテキの元に走る。

そして…

彼の右手に“エンゲージ”リングを填め、アンダーワールドに突入していた。


<エンゲージ、プリーズ>

「ユーテキ……まだ絶望するんじゃない、だから…俺が最後の希望になってやる!」






〜〜〜






ユーテキのアンダーワールド。

そこにあったのは、彼が小さな頃の家での光景…

エルダやミディア、リィアも今よりは若く、ユーテキが長女であるエルダに何かを贈っている光景。

…それは彼の自宅でも見た、全自動皮むき機だ。

思えば彼は、これがきっかけで研究者としての道を歩み始めた。

自分の技術で誰かを喜ばせたいと、思うようになったのだ。


そして…



『――ビシャァァァァァッ!』


そんな彼のアンダーワールドを突き破り、現れたのは…

大きな翼を持ち、風を纏うファントム――シルフ

シルフは何度もアンダーワールドに体当たりを仕掛け、外に飛び出していく。

大きさだけならウィザードラゴンに匹敵するそれを見て、ウィザードFSは舌打ちしながら家を飛び出す。

アンダーワールドを破壊して回るシルフに対抗するには、やはりウィザードラゴンを呼ぶのが定石。


<ドラゴライズ、プリーズ>

「ドラゴン、…頼むぞ!」

『グオォォォ!』

『ピシャアアアアアアア!』


ウィザードラゴンは炎を吐いてシルフを攻撃するが、空中を優雅に飛び回るそれにはなかなか通用しない。

アンダーワールド内ではドラゴンスタイルになれない以上、空中戦はウィザードラゴンが頼りだというのに…

「どうすればいい」とウィザードFSが思っていると、そうだ、と何かを思い出したかのように1つの指輪を取り出す。


「……ドラゴン、先回りしろ!俺に考えがある」

『…。グオォォン!』



ウィザードFSの指示通り、シルフの前に出ようとウィザードラゴンはスピードを上げる。

シルフの進行方向は、タルボット博士の家がある場所…

彼が子供の頃からあったであろうシールド発生装置のかなりスレスレをシルフは飛び、ウィザードラゴンも体を反らして方向転換。

そして…

シルフの次の動きを予測したウィザードラゴンが見事にそれの前を取り、ウィザードFSは魔法を使う。


「そらっ!」

<ライト、プリーズ>

『…ピギャアアアアアアアアアッ!?』


ライトリングによる強い光で、シルフの視界が一瞬だけ潰れた。

…目に太陽の光を反射した鏡を向ければ、眩しくて目を開けていられないのと同じ…

バインドで捕まえようにも、あのような大型の敵を捕まえるには耐久が低い。そのため、ライトで相手の視界を潰す必要があったのだ。

一瞬の隙を利用し、“キックストライク”の指輪を翳すウィザードFS。

彼の右足はドラゴンと一体化し、シルフが避けようとした頃には、――ウィザードラゴンがシルフを貫いていた。





イフリートとの戦いは、ほぼミカ達の防戦一方。

相手はとにかく馬鹿力だ、装置や倒れているユーテキを守るだけでも苦労する…

ミカも晴人がここにいない以上、聖獣の力を借りることは不可能なのだ。

ここで、倒れていたヴィルギニアに動きがあった。

最後の力を振り絞り、彼は自分を裏切ったイフリートに一矢報いるべく、斧を振り下ろすが


「…が…あぁぁ…!」


――その前に、イフリートの炎を浴びて一瞬で灰になってしまった。

それを見たミカ達は、少しでも気を緩めれば自分達がああなると…ヴィルギニアだったものを見ながら、思う。

そこへ、ユーテキの肉体に動きがあった。

ウィザードFSがアンダーワールドから帰還し、ヒビ割れの収まったユーテキの肩を揺する。

ユーテキは意識を取り戻し、起き上がる…

だが、その表情は浮かないままだ。


「…晴人さん、僕…僕は」

「気にする必要なんてない。……お前が今、やらなきゃいけないことは…山のようにある」

「僕が、やらないといけないこと…」

「一つは…お前を利用して兵器を造った帝国を倒すこと、もう一つは…それを償う意味でも、お前が『人々の幸せのための研究』を続けることなんだ。思い出せ、お前が…研究者になった理由を!」



その言葉に、ユーテキは「そうだ」と呟く。

…僕は、最初に作った発明を喜んでくれた姉さん達の笑顔が嬉しくて

…だから、誰かを喜ばせたいと思った

…僕の技術で、皆を幸せにしたいと思った

……僕の技術で、皆が笑顔になって欲しいから……

そのことを思い出したユーテキは、銃を両手に持ち、立ち上がる。


「――僕は、姉さん達が僕の発明を喜んでくれたのが…嬉しかった。だから、他の人たちもこんな気持ちにさせてあげたい…笑顔にしてあげたい。そう思ったから……僕は、研究者になったんだ」

『今更何を言ってやがる。お前の手伝った技術が、兵器がもうすぐどこかにドカンなんだぜ?それで人々の笑顔だと…笑わせるぜ!』

「そうだ…これから、僕の携わったウェルテクス社の兵器のせいで…苦しむ人が出てくるかもしれない。だけど僕は、……その人達に償いをする意味でも…研究者として、皆の笑顔のために尽くしていきたい」

「…ユーテキ…」


ユーテキの目に、迷いはない。

そんな彼の姿を見て、ミカは自分達の家族の…ウェルテクス社の理念が、ここに生きているのだと錯覚していた。

…同じなんだ

…ユーテキもお父さん達と同じ、皆を喜ばせたいから……笑顔にしたいから、

一度は絶望しながらも、今こうして立ち上がり…イフリートと対峙するユーテキを見て、少しだけ彼をカッコいいと思っていた。普段があれなので尚更。




「――こんなことで、僕の夢を…ミカのお父さん達も夢見ていた、【世界中の皆を笑顔にする】夢を……お前達なんかに、潰されてたまるもんか!!」




その瞬間、ユーテキの持つジェネレーターが作動し始める。

その中には以前、タフィーから貰ったJMが装填されている…

彼は二丁の銃を構えると、イフリートに向けて大きな光線を放っていた。


「……【ベルタ…カノン】ッ!」

『なにっ…ぐあああああああああっ!?』

「…晴人さんっ!」

「分かった、お前の一撃は…無駄にしない!」

<ウォーター、ドラゴン ザバザババシャーン、ザブンザブーン!>


【ベルタカノン】

JMの力を通して放たれたその技は、イフリートの体を貫く。

それを見たウィザードFSは、即座にウォータードラゴンに変身する。

彼は“ブリザード”の魔法でイフリートを氷漬けにすると、“スペシャル”リングを使う。

そして…

巨大なドラゴンの尾を振り回し、氷漬けのイフリートを砕くように……一撃、叩きつけていた。



それを見たミカ達は、「やった」と喜ぶ。

一方のイーヴリンは、アムニスフィールドの計測器を見て、難しい顔をする。

…警報は未だに鳴り止まず、どこかに放たれた様子もない

…だとすれば、何処に落ちようとしているのか

そう思っていると、ミカが何かに気付き、晴人達を呼ぶ。


「皆!……これ、何なんだろう…」

「それは…通信機じゃないかな。たぶん、ヴィルギニア元帥かオフレッサー……もとい、イフリートが持っていたものだと思うんだけど…」

『……、…』

「待って、何か聞こえない?」

「ミカ、ちょっと貸して。……ここを少し調節すれば、…よし」


ユーテキがミカから通信機を借り、少し手直しする。

すると、通信の内容が鮮明に聞こえ始め…

――そこからしたのは、シラス宰相の声だった。




『ヴィルギニア元帥、聞こえておりますかな?』

「「「…!」」」

(この声…ミサで聞いた、……確か…宰相シラス)

『返事がないということは…死にましたか。まあ、この辺は予定通りなのでいいことでしょう……』

(バーガー、ちょっと声真似して様子を覗ってくれ。何か聞けるかもしれない)

「(お、おう。できるだけやってみるぜ)……シラス…テメェ……」

『おや、生きていたのですか。案外しぶといですなぁ』


シラスは通信の奥の相手がバーガーと知ってか知らずか、話を続ける。

そして…

バーガーはヴィルギニアの声真似をした状態で、尋ねていた。


「どういうことだ…それに、軍は……」

『軍?あぁ、帝国軍なら炭鉱のような資源採掘場の現場指示の数名を除いて、リーリエリヒトに撤退させました。猊下のご命令なのですよ、“帝都に戻り反乱軍の出方を伺え”、と』

(じゃあ、ヴィルギニアは…)

(利用されるだけされて捨てられた、ということか)

『ですが、あなたは最後の最後で猊下の役に立ちました。……【神の剣】のための、大事な礎として…はっはっはっは』


下衆な笑いをしながら、通信を切るシラス。

こちらから通信を掛けようにも、まったく反応がない…

「礎」とは、どういうことなのか。

そう思っていると……イーヴリンは、頭を抱えながら呟いていた。



「…どういうことだ、ヴィルギニア元帥には暗殺される以外なかったはず……それなのに、礎とはどういう…まさか……」

「どうしたの、イヴ?」

「――まずい、あいつらの…帝国の狙いは!」






〜〜〜






同時刻、ウェルスの町…

タルボット博士の研究室には、凛子やコヨミ、瞬平が晴人達の帰りを待っている。


「…あれ?」


窓から空を眺めていた瞬平が、声を上げる。

一体どうしたというのか。

凛子やコヨミがそう思っていると、彼は窓の外を指差しながら、話していた。


「あ、凛子さん、コヨミちゃん。……なんか、空の様子…おかしくないですか?」

「本当。さっきまで、晴れてたのに」

「うん…何か、空の上がうねっているみたい……」



ルルとザウバーも、空の異変は感じ取っていた。

空自体は、いつもと変わらない晴天…綺麗なほど青かった。

だが…

空の間にある“何か”が大きく歪み、渦のようにも見えるのだ。


「あれ?一体、どうしたのかなぁ」

「ポーポ?」

「あれは…、――まさかッ!?」


ルルは首を傾げる一方だが、ザウバーは急いでどこかに走り出す。

…嫌な予感がしたのだ。

もしかすれば、“アレ”は…

流石にこの予想は外れてほしいと願っているが、難しい話だろう。




ザウバーは大急ぎでタルボットの研究所に戻ると、地下にあるモニタールームに駆け込む。

そこでは、何食わぬ顔でタルボットとマルグリットがいる。

彼らはいつものように帝国の動向を探っていたのだが、突然かなりの大量の電磁波が発生し、通信や映像の乱れが激しいという。

更にはアムニスフィールドの計測装置も、警報を鳴らしており…帝国が何かをしようとしているのは、明白とのこと。

…やはりそういうことか

ザウバーは自分の予想が間違いでなかったと知ると、タルボットに叫ぶ。


「――今すぐシールドを出せ!奴らの対象は、この町だ!!」

「何やて?この町が、エセウェルテクス社の兵器の対象ぅ!?」

「…せやけどお客さん、こんな辺鄙な場所を狙って、帝国に何の得があるんねん?」

「上空のアムニスフィールドが、肉眼ではっきりと見えるほど大きく捻じれていた…手遅れになる前に作動させろ!!」


彼の様子がただならないことを知ったコヨミや凛子、瞬平も、モニタールームのほうに集まる。

通信や映像も未だ戻らない、不確定要素だらけであったが…

アムニスフィールドの異常を知らせる装置が正常なのは、分かっている。

タルボットとマルグリットは多少の疑問は感じながらも、シールド発生装置を起動させていた。

…その時だった。

通信機能のみが回復し、そこから聞こえてくるシラスとイシュトヴァーンの会話を聞いて…誰もが、驚愕していたのは。



『猊下、準備はいつでも出来ております』

『そうか。発射にはどのぐらい時間が掛かる』

『距離によりますが…ウェルスの町なら、15秒後には【神の剣】が落ちている頃でしょう。これであのタルボット博士も、帝国との力の差を思い知るはずです』

『うむ。――世間には、異教徒が実験中に事故を起こしたと広めればいい』

『その手筈は、既に整っておりますゆえ、ご安心を』


――この町に、ウェルテクス社の兵器が放たれる。

それを知ったタルボットは、半信半疑であったザウバーの言葉を信じることにした。

発生装置もミカ達の頑張りのお陰か正常に動き、作動準備もある程度は出来ていたが…シールドの完全展開には、10秒ほどの時間を要する。

更に、相手の兵器を耐え切るほどの強度を持ったシールド出力に掛かる時間は、+3秒…かなりギリギリなのだ。


「……あのリーリエリヒトの罰当たりめがぁっ!マル、シールド出力全開や!!」

「は、はいいいっ!」

「あ、あの…私達は、何をすれば!?」

「そ…そうは言っても凛子さん、今とても聞ける状態じゃありませんって!?」

「ザウバー…!」

「……」






―――シラスの宣言から、15秒後



ウェルスの町に向けて、アムニスフィールドから強大なエネルギー光線が放たれていた。






シールドは放射直前に展開されたが、あまりの威力に崩壊…

しかし、威力はある程度緩和されたようだ。

町は建物の殆どが半壊するだけに留まり、町の人間にも目立った外傷がない。

…シールド発生装置のあるウェルスの町だからこそ、このぐらいで済んだのだ…

これが他の町や国だと考えると、――完全に消滅していただろう。

その映像を見ていたイシュトヴァーンは、「素晴らしい」と呟いていた。


「――これが、我々の求めた天からの剣の威力か…この力があれば、世界は必ずラディスの神の下に平伏すだろう…!」

「…猊下、お言葉ですが…信仰心で少々御眼を塞がれているようですな」

「……どういうことだ、シラス」

「これはアムニスフィールドの、ほんの一部を利用した兵器に過ぎない。そんなものは、我がウェルテクス社の理想ではない…」


シラスはイシュトヴァーンに、言葉を説いている。

それを近くで聞いていたギリオンは、くすりと笑っていた…

【神の剣】の威力を目の当たりにしたイシュトヴァーンは、これまで以上にウェルテクス社を支援するはず。

それだけではない…

これ以上の更なる兵器の開発に尽力するための、方便と大きな後ろ盾を得ることにもなるのだ。



「我々が目指すのは、アムニスフィールドの全エネルギーを司る兵器」


「その世界に無二の…究極の“神の剣”が完成すれば、貴方はもはや【ラディスの神の子】ではありませんか」


「皇帝イシュトヴァーン、――貴方こそがこの世界の神になるのです」






ウェルスから遠く離れた、森の中…

そこで、サウルは悲しげな目で空を見ていた。


「――なんてことを…アムニスフィールドが、……“彼ら”の希望が…壊された」



その視線の先には…

肉眼でもはっきりと見えるほど、大きな亀裂の入ったアムニスフィールドが……あった。

サウルはそれから眼を背けるように踵を返し、小さく呟く。


「…アムニスフィールドの均衡が崩された今、“彼ら”の目覚めも近い。――この世界は…いずれ、終わりを迎えてしまうだろう」






***




もはやサウルさんはサブレギュラー。

そんな気がしてきた29話。


イフリートの正体は、まさかのオフレッサー。

ヴィルギニアwww

でも、お前ゲートじゃなくてよかったよ…ゲートだったら二次災害だよ……

代わりにユーテキがゲートでしたけど。

だけど、確かにショック受けちゃいますよねー…

自分の関わったプロジェクトが、実は兵器を造るためのものでしたーなんて。

割とシュナイド方式だったんですよね。

…しょうがないよ、設計図見て分かるシスがおかしいんだ…



ユーテキのファントムは、シルフ。

…貴重な精霊の名前をここで使用したのには、理由があるんです…

というか!

ユーテキが「シルフィスティア」という風魔法を覚えるのが悪いんです……!!←

そして、今回出てきた【ベルタカノン】。

ブレイカーにおける、秘奥義ポジションの技です。

本当はファントムスナイパーのほうが便利なんですけど、うん、「ファントム」という名前の時点で…


アムニスフィールド…

遂に、崩壊の序曲が成り立ってしまいましたね。

サウルさんの言葉も結構意味深。

さてさて…

帝国の兵器がユーテキの故郷に直撃したわけですが、この辺は次回で。




ついでに、次回が終了した時点でゲーム的には折り返しの部分に入ってきます。

ウィザブレでは…

ファントムの話もあるので、どうなるか分かりませんが。