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タイトル未設定 - Magic60:紡ぐ希望

📚 目次

Magic60:紡ぐ希望

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『お前はアムニスフィールドを崩壊に導く兵器の手伝いをした、人の愚かな欲望に利用される形で』


『……それでも人の可能性を信じられるか、人に未来はあると思えるか』




その問いかけに、ユーテキは悩んだ。

自分の答えひとつで、世界の運命が決まるといっても過言ではない。

プレッシャーが掛るのも当然なのだ、そして、それは誰が彼と同じ立場になろうと同じこと…

しかし、先程までと明らかに違うのは、【ステイア】がこちらの話を聞く気でいる。

それはこれまで対話が成り立たなかったのとは大きく違い、自分達の思いを伝えられるチャンスでもあるのだ。

ユーテキは暫く考えた後、答えを出した。


「僕は、僕の答えは…決まってるよ。……その前に、少し…話をしていいかな」

『…構わん』

「……確かに、【ステイア】が僕達人間を信用できなくなるのも分かるよ。そして…僕が今から言う答えも、【ステイア】にとっては一時凌ぎにしか思われないと思う」

『…』

「だけど、それでも!――それでも僕は人の可能性を信じている、同じ過ちは…絶対に繰り返したりしない。僕達の未来は、僕達自身で切り開いていく」


やはりか、と【ステイア】の一人が漏らす。

その答えは、彼らとしても塔の昔に予想できていたのだろう…

だが、一人の女性の声が、ユーテキに尋ねる。

いや…ユーテキだけではない。

ミカやイーヴリン、ザウバーにルル…バーガーにも尋ねているであろうその言葉は、ある意味で心理を突いていた。


『……あなたのその言葉は、ただの偽善者なら誰だってそう答えるわ』

「そんなことない!私達は…」

「ミカ、落ち着くんだ。…あんたの言いたいことは分かってる、――“同じ過ちは繰り返さない” …その言葉に確証が持てないんだろう?」

『ええ、そうよ。口だけなら何とでも言える、それに、もし仮にあなた達やあなた達の次の世代がその約束を実践したとして……その更に先の未来、同じ過ちをする人間が出ないとは限らない』



女性が言いたいのは、――“今より更に未来の人間が過ちを侵すかどうか”なのだ。

そもそも【ステイア】が頑なにミカ達の言葉を…『人は変われる』という言葉を拒んでいたのは、それが理由。

人は確かに代われるだろう、良いようにも…悪いようにも。

数百年後の未来は、恐らく今よりも科学技術が進歩することだろう。

そして…

“アムニスフィールドを軍事利用してはならない”という意識が薄れた子孫が、アムニスフィールドのエネルギーに目をつけ、シラスの作ったそれを超えかねない破壊兵器を生み出す可能性だってある。

…【ステイア】はその可能性を考えていたからこそ、ミカ達の言葉に耳を貸さなかった。

真実は時を経て歪められるもの…人は変わる生き物、それを分かっているからこそ。


「……確かに、そうかもしれない。それでも僕達は、この事を風化させないように…数百年、数千年後の未来にも伝えていく」

『…どうやって?』

「映像記録装置。…ウェルテクス一族が、そして【ステイア】が世界中に遺した研究所にあった映像記録装置を使って……今回の事件の映像を残すんだ。それに…」

「……ルル達魔法使いはとーっても長生きなの!だから、もし誰かが真実を歪めようとしても、本当のことを教えることができる…アムニスフィールドがまた壊されちゃう前に、止めることも!!」

「確かに、俺達の言葉は単なる偽善かもしれない。…特に俺は、数年先の未来にすら責任を持つことができない肉体だからな。だが、――それでも生きている限り…命ある限り、自分にできることをする」

「…俺はこの世界が平和になったら、本来のラディス教の教えを広めるつもりだ。そして、その中で…今回のような事件は絶対に起こしちゃならねぇってことを、伝えていく」


ユーテキの後に、ルルやザウバー、バーガーが続く。

そんな彼らを見て、【ステイア】は暫く考え…

再度、ユーテキに尋ねていた。


『――少年。お前達は様々な形で今回の件を伝え続けると言った、だが、その警告を無視してまでも…罪を犯すものは居るだろう』

「…そう、かもしれない」

『そうなれば、お前達の想いは…希望は壊されることとなる。我らが受けた絶望をその身に受けることになる。それでも人を怨まずに居られるか、人は変われると信じられるか?』

「…信じるよ、そして、僕は絶対怨んだりなんかしない!だって、――過ちを侵す人は確かにいるだろうけれど…その過ちを正そうとする人も絶対いるはずなんだ。間違いを正そうとする人が居る限り、……僕達は絶望したりなんかない!」

『絶望を繰り返す覚悟で、人を守るというのか…それで苦しむのはお前達ではない。アムニスフィールド……いや、ルキナという星だ』

「――それでも僕達は未来を切り拓いていく。未来がどうなるかなんて分からないからこそ、少しでもいい未来になるように…足掻いてみせる!」




次の瞬間

――急速的に周囲の光景が変わり、ミカ達は戸惑う。

ウィザード・アムニスタイルも「どうなってるんだ」と周囲を見渡すが、いつの間にか【ステイア】が化け物のような姿から…人間の集団へと変わっていく。

その誰もが白衣を着ており、まさしく研究者の集団と言えよう。

あれが本来の【ステイア】、と凛子が呟き、コヨミや瞬平は心配そうに眺めている。

そして…

一人の老人が前に立ち、ミカ達に言い放つ。


『……我らのように絶望すると分かっていても尚、希望を捨てずに居るというのか。…ならばその意思を、貫いて見せるがいい』

「【ステイア】…?」

『だが、覚えておくのだ…お前達の言う“間違いを正すもの”が現れなければ、我々は再び甦り……今度こそ人を滅ぼす。絶望の連鎖を完全に断ち切る』

「……【ステイア】…」

「ならないよ、絶対。…そんなことには、絶対させないんだから!」

『そうか…せめてそうであることを、願いたいものだ』


ミカの言葉を聞き、老人は笑う。

【ステイア】の姿は走っても追いつけないほどのスピードで後退していき、周囲の光景も…見慣れたものに変わっていく。

…リーリエリヒト城内。

彼らは今一度眠りに就いたのだろう、……いつか訪れるかもしれない“時”まで。

そして…

ステイアの界域が無くなったことで、城の周辺で待っていたタルボットや輪島、ソウセイにレヴィーらが城の中に押し寄せてくる。


「――お前ら、ようやった!」

「一時はどうなることかと…」

「それで、…【ステイア】はどうなったんですか?」

「様子からして、倒した……ってわけじゃなさそうだけど」

「皆…」



大事な人達の顔を見て、ミカは笑みをこぼす。

パヴェル…

ゾゾ…

ベックフォード…

ウォルフガング…

カルラ…

ルピート…

ルーク枢機卿…

アーヒバルド…フィルギニア…ブリュンヒルド…

ヒスイ…コハク…シンク…

これまでの旅で出会った人々が、思い思いに話をしている中……コヨミは【ある違和感】に気付いた。

――いないのだ。

ステイアの界域からこのリーリエリヒト城に戻ってくるまで、ずっと一緒に居た……“彼”の姿が。


「……晴人…?」






――アムニスタイルは、空にいた。




アムニスフィールドの力を借りて変身出来るこの姿は、アムニスフィールドに干渉することができる。

…すなわち、【鍵】と同等の能力。

それを考えたアムニスタイルは、ある手段を試みていた。

そして宇宙空間を越え、崩壊したアムニスフィールドが肉眼ではっきりと見える場所まで移動すると…右の手を構える。


「このまま放置、なんてルキナの人達が…そして【ステイア】が不安なままだしな。いっちょやってやりますか……【希望】を取り戻すために」


そう言うと、アムニスタイルの手の平から蒼い光が放たれる。

その光はアムニスフィールドを包み込むと、崩壊した部分を再生させていく…

――そして、気付けばアムニスタイルの横には、10…20…数えられないぐらいの水の聖獣・シアーズがいた。

恐らく彼女達は、【鍵】の役目を受け継いできたフューレの子孫達の魂なのだろう。

その中にはミカの母…ステラもおり、彼女は代表してアムニスタイルに礼を言っていた。


『…操真晴人さんですね。ザウバーとミカがお世話になりました』

「ってことは、…あなたが……ステラさん?」

『あなた達のことは、アムニスフィールドを通して見ていました…。この世界を救ってくれて、本当にありがとうございます』

「俺は何もしてない、しいて言えばちょっと手伝っただけだ。――本当にこの世界を救ったのは…ココロからこの世界を救おうとしている、ルキナの人達だ」



謙遜しないその態度に、ステラと思わしきシアーズはくすりと笑う。

そして…

シアーズ達はアムニスタイルを援護するように、アムニスフィールドの再生を行う。

彼女達の魂は一つ、また一つとアムニスフィールドの亀裂を埋める形で溶け込んでいき…ステラもまた、その一つとなろうとしていた。


「ステラさん、…ミカ達に何か言いたいことがあったら、俺が伝えても…」

『いいえ。あの子達は、自分で考え…自分の足で動けます。――特に伝えることはありません』

「…そうか」

『それでは、操真晴人さん。――早いですが…さようなら』

「ああ…さようなら、そして、……ありがとう」






――晴人がいない

コヨミの言葉にミカ達は瞬時にそれを理解し、手分けして晴人を探そうとする。

そうしていると、外に飛び出したコハクとソウセイがすぐにまた戻ってきて、城の中を探すミカ達に言う。

『空にウォータースタイルに似た何かが』

その言葉に凛子達はアムニスタイル…晴人だと理解し、外に駆け出していく。

そして…

空に広がっていたのは、完全に修復され…蒼く美しい光を放つアムニスフィールド。

更に、そのアムニスフィールドの力で世界中に“声”を伝えている……アムニスタイルの姿だった。



『――アムニスフィールドは元に戻った、…ルキナを愛した人達の…希望と共に』


『だけど、覚えていて欲しい』


『もしもう一度、アムニスフィールドを破壊するような武器を作り、ルキナを…この星を愛した人達の想いを穢すようなことがあれば、――同じ悲劇が繰り返されるだけだ』


『だからこそ、忘れないで欲しい。そして…伝え続けて欲しい。アムニスフィールドのエネルギーを過剰消費するようなモノは作ってはいけない、戦争に利用して、ルキナの大地を壊してはならないこと』


『【ステイア】という存在もまた…このルキナを愛していたが故に、今の人間達の愚かな行いのせいで絶望し…世界を救おうとしていた存在だということを』


『真実を歪めることなく、伝えていって欲しい。 ……これが、俺がこの世界に残せる…最後の希望だ』


『後は、このルキナに住む……人間達で、希望を繋げていってくれ。本当に困った時、何かに縋ろうとしないで……自分達で考えて、自分達で動けるように』



その言葉に、リーリエリヒトの住人達は…

世界中の人々は…

歓喜し、そして、考える。

手放しで喜んではいけない…今回の恐ろしい事件は、間違いなく忘れてはならないと。

リーリエリヒト城に戻ってきたアムニスタイルは、変身を解除すると……「ふぃー」と息をつく。


「……慣れないことはするもんじゃないな、うん」

「「「…晴人!」」」

「「晴人さーん!」」

「もう…晴人君!心配したんだからっ!!」


わあああ、と仲間達が駆け寄り、凛子など軽く平手で背中を叩く。

いきなり背中を叩かれ、瞬平とユーテキには抱きつかれた晴人は何とか宥めようとするが…

そんな彼の姿を見ていて、ベスティアはふと…あることを呟いていた。


「『蒼き光の子、聖なる海より生まれし者なり 蒼き光の子、聖なる力を以ってして世界を救う者とならん』…」

「ベスティア?……一体、どうしたんだ」

「我々ガナドール族に伝わる、予言だ。まさかとは思うが………いや、違うな。彼は救世主になろうとしてやったわけではないのだから」

「…そうだね。晴人はただ、伝えたかっただけなんだろうさ。……最後にできることを、やろうとしただけなんだ」


だろうな、とベスティアはイーヴリンの言葉に賛同する。

そして…






〜〜〜






「―――そして?で、どうなったんだよ!教えろ瞬平ー!!」



元通りの場所に戻ってきた面影堂。

そこにやってきた、賑やかな客…仁藤攻介。

ルキナから戻ってきた晴人達は「久しぶり」とつい挨拶してしまうが、仁藤にとっては「何言ってんだ」と首を傾げる始末

…そう、ルキナでのあの長い冒険は……この世界では、たった少しでの出来事でしかない。

晴人達にとっては1〜2ヶ月ぶりの再会でも、仁藤にとっては2日ぶりの再会なのだ。

尚、その間に出たファントムは…彼(の中のキマイラ)の食事になった模様。

そして瞬平は仁藤に詳しい説明をするべく、ルキナでの冒険の話を聞かせ…現在、二等は続きを聞きたいがために瞬平の方をガクガク揺らす始末。

「相変わらず騒がしいな」と思いながら晴人は砂糖たっぷりのコーヒーを飲み、気絶した瞬平の代わりに話す。


「一日ほど宴会みたいな騒がしい祭りをした後、すぐ帰ったからな。その後は知らないんだ」

「何だよ〜…ところで、そのアムニスタイル?ってのになれる指輪は??」

「ルキナに残してきた。だってあれ、多分アムニスフィールドがなきゃ使えないだろうし…それに、もう必要ないものだろうしな」

「だけどよ、その世界の技術力ってすげーんだろ?だったら、ウィザードライバーの複製だってできるんじゃ…」

「そう心配しなくても、信頼できる奴に任せたから大丈夫だっての」


そう言いながらコーヒーを啜る晴人に、仁藤は訝しげな顔を見せる。

彼となっては、この後どうなったのが気になるといったところ…

「どうせならもう一回行ってみれば」と思ったが、その前に水晶玉を見ていたコヨミが叫んでいた。


「……晴人、ファントムが!」

「げっ、あいつら本当に懲りないな!こっちは戻ってきたばかりだってのに…」

「だったら、俺の餌にしてやるぜ!晴人は体休めてろよ、……少し早いランチタイムだー!!」

「ちょっ、待て仁藤!……えーい、コヨミ、瞬平任せた!!」

「任された!」

「凛子ちゃん、ゲートや他の人達の避難を手伝ってくれ!」

「任されたわ!…行ってきまーす!!」



…どたどたと面影堂から出て行く、仁藤・晴人・凛子。

そんな彼らを見て、コヨミは苦笑し、輪島は「帰ってきて早々大変だな」と呟く始末。

瞬平は……気絶したまま。

相変わらず慌しい彼らの日常、そして戦いは…まだまだ続く。




「……予定通り、オリジンは死んだか。奴は全てを知っている様子だったからな、…結果的には良かったと言うべきか」


笛木奏は屋敷で一人、呟いていた。

…そもそも、輪島が持つ魔宝石の中に、“ワールドムーブ”リングを生み出す魔宝石を紛れ込ませたのは……彼。

オリジンはいずれ面倒なことをしでかす。

だからこそ、予め彼には裏切った時のための保険を掛けていた。……が、念には念を入れた…ということだ。

よもやコヨミまで今回の事件に巻き込まれるとは思いもよらなかったが、彼女を動かす魔力の限界が来ても、ザウバーという一時的な延命措置が居てくれたお陰で必要以上に出てくることはなかった。


「ルキナという星の技術は興味深かったが、…不完全な人工ファントムしか作れない以上……やはり暦を取り戻すにはサバトを開く必要があるか。そのためにも……」






そして…





「――あっ、おじちゃんだあ!」

「ルルか、久しぶりだな」


ルルはあの後も、魔法の武者修行の旅を続けていた。

だが、これまでの旅とは違い…

今回の事件の詳細を伝えていくための、旅だ。

最初は自分と馴染みの深いセラピアの町のほうが良いだろう、ということでセラピアに来たのだが…そこで偶然、僧服に身を包んだバーガーと再開したのだ。

バーガーもまた、【ステイア】との約束どおり…ラディス教の本当の教えを説くと同時に、今回の事件が如何なるものであったのかを理解してもらうために世界各地を回っている。

聖海騎士団がこの町にしたことは未だ根強く残っており、理解してもらうためには時間が掛かるだろうが…神が本当に居るとするならば、自分達に与えた試練なのだろうとバーガーは思っていた。


「おじちゃんも大変なんだねぇ」

「まあな。…おっと、そういえば知ってるか?ルシーラ公爵に好きな人ができたんだとよ」

「へぇー、そうなんだぁ!それで、どんな人?」

「さーて、なあ?成就するのが難しい相手だから、どうとも言えねぇんだ。……でも、まあ、イシュトヴァーンへの未練は残ってないみたいでほっとしたぜ」

「ところでおじちゃん、エミィちゃんのママンとは仲直りしたの?」

「仲直り…はしてるが、再婚はないな。昔以上にラディス教に掛りっきりになっちまうわけだし、同じことを繰り返すよりは……たまに会って話すぐらいでいいだろ」



ふうん、とルルはオレンジジュースを飲みながら小首を傾げる。

…しかし、バーガーの気持ちも分からなくはないのだ。

彼の果たすべき使命を考えれば、シルエラと再婚したところで、また彼女を悲しませてしまうだけ…

それならば今の関係を続けたままのほうが、と思う節はあるだろう。

エミィのためにも父親が居たほうがいいとは思うが、それ以上はルルには立ち入れない…バーガーとシルエラの問題がある。


「……よぉし!それじゃあルルも、おじちゃんのお手伝いする!!」

「おいおい、別にいいんだぜ?」

「この町の人達とルルは仲良しだから、そのほうが話も聞いてもらいやすくなるの!」

「そうそう!それに、バーガーは間違ったことしてないポポ。それはきっと、皆分かってくれることだポポ」

「…ありがとよ」




イーヴリンはあの事件の後、情報屋を続けていた。

他の国の者達からしてみれば、リーリエリヒトを中心に起こったあの事件は…何としても得たい情報。

彼女と懇意にしているクライアントは積極的にその情報を聞きだそうとし、中にはかなり高額の大金を出すものもいた。

…だが、イーヴリンはその情報を金目的で売ることはしなかった。

『その情報を握っていたところで、いずれ皆知ること』と言って。

とある一人のクライアントは、イーヴリンに尋ねていた。『ステイアとは、そしてあの蒼い存在は何者だったのか』と。

イーヴリンは差し出される金をクライアントに戻し、話をしていた。


「……ステイアもアムニスタイルも、私らルキナに生きる人間のために行動した。それだけの話だよ」

「…ふうむ。しかし、我々にはステイアはルキナを滅ぼそうとした悪で、もう一つの蒼い存在はルキナを救った…そう、神とも言うべき存在だ。……気に障ったのなら申し訳ない、だが、皆がそのような認識をしているのも事実なのだよ」

「……確かに。だけどね…ステイアもアムニスタイルも、悪ではない。正義なんだ。そして…あなた方の言うような、万能の神でもない」

「正義?」


――誤解がないように言うとね…

あなたも、私も、もっと言えばイシュトヴァーンだって…己の信念に従って行動している。

そしてそれは、その人の持つ【正義】なんだ。

…だけど、正義は異なる正義とは相容れない…

誰もが『世界を救う』という信念を、正義を持っていたとしても、人によってその理由ややり方は変わってくる。

……【ステイア】もまた、同じなんだよ。

彼らはルキナを心から愛していた。愛していたからこそ、アムニスフィールドを崩壊させた私達人類に…怒った。

ルキナを、アムニスフィールドを救う一心で、【ステイア】は行動していたに過ぎないんだ。


「……そして、アムニスタイルは…神、という簡単な言葉で片付けてはいけない。当然、縋ってもいけない相手なんだ」

「…どういうことかね」

「アムニスタイルは、もう二度とこの世界に現れることはない。…この世界は、私達ルキナの人間が何とかしていくしかないんだよ。自分達自身の力で変えられなければ、……過ちは何度でも繰り返されるだけだ」

「……」




――ツァールハイト大陸にある、初代ウェルテクス一族の使っていた屋敷。

そこに、ルシーラはいた。

彼女は病弱な身でありながらも、偶然訪れたザウバーに頼み、ウェルテクス一族の縁の場所に連れて行って欲しいと頼んだのだ。

ザウバーとしては寄り道をしている暇はなかったのだが、彼女もまたウェルテクスによって救われた一人だということを思い出し、ここに案内する。

セラピアの町…は道中砂漠を通らなければならないため、ルシーラの体力では難しいところがあるのだ。


「本当にありがとうございます。無理を言ってしまって」

「別に構わない。俺としても、もう一度この場所には来ておきたかったからな」

「ですが…特に手入れをされているわけでもないのに、この美しい庭園を保っているなんて…凄いです」

「…。……これは、自分が愛したただ一人の女性を喜ばせるために…サウル・ウェルテクスと言う男が作ったものだそうだ」

「サウル…その方が、ウェルテクス一族の先祖なのですか?」

「ああ。……俺が知っているのは、いつも予告無しに現れていつの間にか姿を消す、神出鬼没の変人だったが…これを作ったサウル本人は、どんな男だったのか」

「……優しい、方だと思いますよ」


ルシーラの放った言葉に、ザウバーは彼女のほうを見る。

庭園のほうに目を向けながらも、ルシーラはサウルがどんな人間なのか…自分が思ったことを、話していた。


「そのサウルという方は、愛した人を喜ばせるためこの庭園を造った。……それはつまり、【世界中の人達を幸せにする】という…ステラさんやバグバードさんの想いと、同じです」

「…」

「だから、優しい人だと私は思います。……きっと、サウルさんの優しい心は、ステラさん達にも……ミカという女の子にも受け継がれているんでしょうね」

「……ああ、そうだな。そういう解釈もあるか」



…父さん達も昔から、誰かの笑顔を見るのが好きだった

…だからこそ、自分達の技術で誰かを幸せにできるならと、研究に勤しんでいた

…そんな父さん達だからこそ…


「――ここまで来たんだ。少し、屋敷の中でも見に行くか」

「え?」

「初代ウェルテクスの…サウルがどんな奴だったのか、分かるはずだ。……俺もそれには興味がある」

「……はい!」





ウェルテクス社の研究室。

今回の一件で研究員は再編成され、現在ユーテキは若いながらもあるプロジェクトの責任者を任されている。

尚、ウェルテクス社の社長の座は…空席。

まあ、【名誉会長】がいるにはいるのだが…その名誉会長は大変偏屈で、しかもウェルスの町で今日も元気に助手を巻き込んで研究していることだろう。

そして…


「――ユーテキー!」


ある研究所に、そんな元気な声が響く。

桃色の髪、海のように蒼い瞳、そして…白とピンクを貴重としたワンピースの少女。

いつもの活発な格好とは違って、随分と大人しい格好をしてはいるものの…ミカには違いない。

ユーテキは「声抑えて」とジェスチャーし、ミカは口を押さえ、ユーテキは彼女を連れて研究室を出ていた。


「…で、どうなの?今やってるプロジェクト」

「うん、【記録保持プログラム製造プロジェクト】だね。……設計図はザウバーが【ステイア】の研究室を荒らし…げふん。探し回ってくれたお陰で見つかったけど、今の技術で作るのはやっぱり難しいかな」

「そうなんだ…」

「だけど、希望が見えてきたところなんだ!……ちょっと難しい話になるからカットするけど、大雑把に言うなら、早くて5年後ぐらいには完成するかもしれない!!」

「へえ!凄いじゃない、ユーテキ!!」



【ステイア】の技術で作られた、映像記録装置。

あれは現代に伝わっているどの技術よりも優れており、あれを作り出せれば…いや、劣化しないよう更に改良することさえできれば今回の事件を数百年先の世代まで遺すことができる。

しかし、やはり【ステイア】の技術は相当のもので、難航するかに思われていた…のだが。

つい最近になって、活路が見出せるようになったのだ。


「…そうだ、ミカ。晴人さんはもういないわけだけど…聖獣の力、暴走したりしてない?」

「うん、大丈夫。これのお陰でね」


そう言ってミカが見せたのは、アムニスタイルウィザードリング。

この指輪はミカの持つ力を制御してくれる制御装置にもなってくれるようで、ツァターン・ライサ・ヘルムートの力を自由に使うことはできなくなるが……元々のシアーズとしての能力ならば、問題なく使えるようだ。

尚、ユーテキの作ってくれた指輪型ジェネレーターは…ティエラの町にあるミカの自宅で、形見のオリジナルJMと共に大切に飾られている。


「そっか。……ミカ、その…さ」

「何?」

「いや、今度、時間が開いたら……ツァールハイトに…行こうよ」

「…え?ユーテキ、それ、どういうこと??」

「あー、だから、うん。――そ、ソウセイさんが『ツァールハイトの町を見に来てください』って言ってて!ほら、カルラさんが女王になったじゃない。その即位の記念のお祭りがあるんだって!!」



ソウセイはあの後、家族と共に家に戻った。

コハクはヒスイやシンクと共に店を切り盛りしており、更に、フライハウト団に所属していた頃の知り合いやルーク枢機卿とも今でも懇意にしているそうだ。

ソウセイは相変わらずガイドの仕事を続けている一方で、休みにカルラの居るツァールハイト城下町に遊びに行くことが多いそうだ。

即位記念の祭りを今更、と思うかもしれないが…

カルラの即位はジークフリード王の亡くなった日と同じのため、少なからず日をずらす必要があるのだ。


「お祭りがあるの?…じゃあ、イヴや他の皆も誘おうよ!」

「そ、そう…だね。うん!そうしよう!!」

「それからさ。…時間があったら私、ウェルスの町に行きたいな。今どうなってるか知りたいし」

「…え?それって、」

「……うん!じゃあ私、レヴィーにフライハウト団のコネを使って皆が来るよう頼んで見るから!!じゃあね!!!」

「え、ちょ、ミカ、…ミカー!?」





――これからも続く物語

――これから先の未来を紡いでいくのは、希望を繋げていくのは


――彼ら自身の、物語





…Fin






***




…はい、というわけで、【Wizard of Breaker】…

完結です!

原典とは大幅に改編してはおりますが、まあ、それなりに…うん。それなりに。

個人解釈の部分が大きいのですが、そこはしょうがないですね…

資料が、なにぶん足りなくて…

少なくとも、個人解釈がなかったら(あとソウセイがいなかったら)ここまでは続かなかった。

それどころか、ウィザードとコラボできなかったら…うん。誤魔化せなかった、色々と。


ここではちょっとした裏設定を紹介します。



*アムニスタイル

最終2話で出てきたスタイル。

ネーミング的には「ちょw適当ww」なのですが…アムニスフィールドの力を借りているので、これは仕方ない。

アムニスタイル自身、最初はザウバーとミカの力を借りて指輪誕生→ステイアを倒すの流れのために作ったのです、が。

…どうもステイアが普通に倒しづらくなってしまったので、ああいう形になりましたね。

でもまあ、基本的には派手にラスボスをぶっ飛ばす最終決戦とは違う形なので、珍しかったのでは?

なお、オールドラゴン・インフィニティー無しにした理由も、最終決戦はアムニスタイルで決める!

……という風にしたかったのと、あの2つはチートだしブレイカーのメンバーと少しでも実力差に開きが出ないように……という考えがあってああしました。


*ソウセイ

彼マジ便利キャラ。

基本的に、イーヴリンの抜ける3章序盤〜中盤・ザウバーの抜ける5章序盤・ミカの抜ける6章超序盤&終盤まで抜けるザウバー…という穴埋めのために再利用しました。

レヴィーでも良かったんですけど、忙しそうだしなぁって理由で。

ソウセイは何度も言うように、ウォータースタイルの意味合いで出したキャラ。

ヒスイはハリケーン、コハクはランド、シンクはフレイム…という感じで。

最初の頃は巻き込まれる哀れな市民Aで終わらせるつもりでしたが、イーヴリンの抜ける穴って意外と大きそう(案内的な意味で。少なくともミカ&晴人一行にとっては異国に行くわけだし)だったので、再登場させました。

その結果、――誰よりも万能になってしまったというw

今思えば、彼の優遇=ウォーター系の優遇という謎の共通点…いや、ランド系もそれなりに出番ありましたけど!


*コハク

最初はガチでシャドゥを生み出して死んだゲートってことにする気でした。

が、

…ソウセイじゃ敵討ちできないしなぁ、ってことで、急遽双子の片割れがシャドゥってことにしました。

上述通りのランドスタイルモチーフなんです、が、

・回復しかできないライサ

・安定のディフェンド

・安定の扱いのランド系

…というランド系の宿命を強運で乗り越えた凄い人。この父ちゃん本当に神様に愛されてるんじゃなかろうか。

そして思った、――この親父にしてあの息子(ソウセイ)ありだわ…と。


*ザウバーについて

彼は一番設定をいじくったメインキャラ。

一番は「コヨミ倒れた!でも晴人いないから魔力供給できない!!」

…という窮地を救うため、ああなりました。

それとコヨミになるべく接点を持たせたかった、というのがありますね。

晴人はイーヴリンとルル、凛子はミカとバーガー、瞬平はユーテキといった感じで仲良くなれそうな人達でしたが、……ザウバーとコヨミは普通に組ませるのが…

結果的にかなりいいコンビになったんじゃないでしょうか、ザウバーとコヨミ。


*カップリングどーなの?

これは割と考えてないです。

成立するかどうかは、読者にお任せしますって感じですかね。

…意外だったのは、読者間でソウセイ×カルラがあったことですかね…

ザウコヨはちょっと自分も考えちゃいましたが。ソウカルは想定外だった。

でも、ソウセイとカルラは今でも友好が続いてますよーみたいな感じの後日談を入れたので、後は読者の想像に。


*異なる正義、相容れない正義

これはフォゼブラでも言ってきたことだと思いますが。

(もっといい例を挙げれば、コア大戦のエイジスとスマブラファイター達の正義感の相違かな)

互いに掲げる正義が違えば、対立する。

悪、という構図は自分達側から見た場合のものであって、他の誰かにとっての悪とは限らない。

フォゼブラだと

『ゾディアーツスイッチをばらまくジリス達は悪だ!』

という雰囲気がありましたけど、ジリス達にしてみれば

『自分達のような理不尽な迫害を受けるような世界を作った奴は悪!』

…なんですよね。

この辺の正義感による【悪】という立場の相違は、他の部分でも出てきそうです。

――ま、中にはタナトスのような絶対悪もいますけどね。

ウィザダンは正義と悪がハッキリしてるので、ウィザブレよりはすんなり見れるという……但し、絶望したゲートの数はあっちのほうが上。というか絶望しすぎだポケモン達。




長くなりましたが、これにて。