リーリエリヒト城前。
そこでは現在、フィルギニア公爵やフライハウト団に所属する非戦闘員メンバーによって共和連合軍・帝国軍問わず手当てを受けていた。
彼らは予め、怪我人の手当てをするためにアーヒバルド公爵邸で待機していたようだ。
突然の帝国側の兵器投入に、共和連合軍や聖海騎士団だけでなく、帝国軍の人間も重傷を負っている。
アウデンティアの魔法使い達が魔法による障壁を張り、更に直前にウィザードが合成獣の強靭な肉体を利用して威力を緩和していなければ、死者が大勢出るところだった…
「…う、うう…」
「一体何が…」
「ああ、空が…アムニスフィールドが……」
「……これは酷いな」
「――晴人さーん!」
「…晴人!」
「酷い…自分の国の軍隊もいたのに、こんな……」
ゾゾによって【面影堂】の前まで飛ばされたコヨミ達は、主に凛子とコヨミがアーヒバルド公爵を説得し、ブリュンヒルデ公爵と共に薬や包帯などを大量に支給するように頼んでいた。
そのお陰で、今は全員に充分な手当てができている状態。
一方で晴人達は、リーリエリヒト城の真上に浮かぶアムニスフィールドを見上げる。
……上空に起こる亀裂は、ウェルスの町の比ではない。
リーリエリヒト帝国全体だけでなく、その周辺の町…恐らくミカとレヴィーが育ったというティエラの町まで広がっていることだろう。
そうしていると、彼らの元へ右腕を負傷したセデギウス
…ではなく、ルーク枢機卿がやってくる。
「……君達の話は、本当のようだな」
「「「ルーク枢機卿」」」
「あの…その腕、大丈夫なんですか…?」
「ああ…とはいえ、これでは暫く満足に剣も握れないだろうがな」
兵器が魔法衝撃に直撃したその前…
ルーク枢機卿は、一番近くにいたカルラを庇って右腕を折るほどの怪我を負ったと言う。
そのお陰でカルラは軽傷で済み、他の者達と一緒に救護活動を進めている。
更に、遅れてミカ達もリーリエリヒト城を出、互いに状況を確認しあう。
――イシュトヴァーンとシラス、ギリオンはどこかへと姿を消したとのこと
――ユディーヌは不明だが、恐らくイシュトヴァーンに付き従っているはず
――リーリエリヒト城地下にあったウェルテクス社の兵器も破壊した
――しかしシンボルストーンは敵に奪われたままで、隠し場所に見当がまったくつかない
その話を聞いていたルーク枢機卿は、暫く考えながら…ミカ達にこんな話をする。
「……噂で聞いたのだが、このリーリエリヒト帝国から北に進んだ場所に、シラスは個人の研究所を構えていたそうだ。どうやらそこは、彼個人の生物兵器研究所だとか…」
「「「生物兵器!?」」」
「噂に過ぎないがな。…シラスはそもそも、そこにいるウェルテクスの娘…ミカを自分の研究の実験台にちょうどいいと、考えていた部分もあるだろう。彼女が獣のような姿になったという報告を聞いた時、一番目の色を変えていたからな」
「多分、俺がウェルテクス社で戦ったのもその“生物兵器”とやらの一種かもしれないな」
恐らくは、と晴人の言葉に頷くルーク枢機卿。
しかし、問題はまだまだ山積みだ…
皇帝も姿を消し、アムニスフィールドが崩壊寸前の状態で、帝都に住む人間の混乱は加速することだろう。
ラディス教の枢機卿でもあるルークぐらいしか、帝都の治安維持を任せられる人間がいないのも事実。
腕を追っていることもあってか、シンボルストーンを取り返すのはミカ達に託す…とのことだ。
そんな話をしていると…
凛子達と一緒にいたコハクの姿を見たヒスイとシンクが、驚いたように声を掛けていた。
「…あ、……あなた…?」
「父ちゃん…コハク父ちゃんだーっ!」
「ヒスイ、シンク!…そうか、お前達もフライハウト団にいたのだったな」
「今まで、…今までどれだけ心配したと……っ」
「そうだよ!帝国の奴らに連れて行かれて、父ちゃんはもういなくなっちゃったのかな…って思ってたんだぞ!!……よかった、父ちゃん生きててよかったよぉ…」
「……ソウセイ共々、今まで心配かけてすまなかったな」
泣きつくシンクを優しく抱きしめながら、その頭を撫でるコハク。
その姿を見ていたミカやユーテキは、“家族”の大切さを再認識している。
その一方で、ミカは以前『兄を帝国に連れて行かれ、父も半年前に徴兵された』というシンクの言葉を聞いた後のザウバーの態度も何処となく分かるような気がしていた。
…家族を、それも帝国に奪われた立場だったからこそ、シンクを放っておけなかったのだ
ふと、ミカはザウバーに詳しい話を聞こうとしていたが
――そんな彼らの前に、聞き覚えのある訛りをした老人が現れていた。
タルボット博士だ。
「……かーっ!帝国のアホ共め、まさか自分の国にも容赦なくドカンとは…アムニスフィールドを作ったワシらのご先祖さんが泣いとるで!!」
「「「タルボット博士!?」」」
「えっ、どうしてここに!」
「どうしたもこうしたもあるかい。ウェルテクス一族の研究をあんなモンのために使っとる帝国に、一言文句言いに行ったろ思ってな」
「……何言うてますのん、博士…兵器が実際に落ちて警備が混乱してなかったら、ウチらずっとサルビアの町で待ちぼうけでしたやん……」
ゼェゼェと息を荒げながら、助手のマルグリットも現れる。
そんな彼女に、ユーテキは心の中で手を合わせつつも…
話をいつから聞いていたのか、タルボットは耳の穴を穿りながら話していた。
「……ええか、そもそも、あのシラスっちゅー奴が城の中にある兵器しか造っとらんことは、まったくあらへんねん」
「どっ、どういうことですか!?」
「兵器1つ潰しただけじゃ終わらんっちゅーことや!……とはいえ、帝国からアッサリ逃げ出したっちゅーことはや、少なくとも帝国内にはないわな」
「じゃあ、やっぱり、シラス個人の研究所にも攻め込まないといけないか…」
「……だけど、そこには生物兵器もいると聞きます。果たして、そんないつ暴走するかも分からないモンスターのいる場所に、大事な【神の剣】のコントロール装置を置くでしょうか」
タルボットの見解に、晴人は頭を悩ませる。
その一方で、ソウセイの言うように…ルーク枢機卿の話が本当ならば、シラスの研究所には晴人が対峙した合成獣が大量にいるはず。
それに、皇帝やユディーヌの行く先も気になる。
……暫く考えた後、レヴィーはこんな提案を出していた。
「――シラスの研究所に攻め込むのも大事だけど、皇帝のいそうな場所を探すのも大事だ。だから、何人かに分かれて行動しよう」
「「「何人かに?」」」
「ああ、…シラスの研究所はルーク枢機卿の話が正しいとしたら、一筋縄じゃいかないだろう…だからそこには晴人達が向かってくれ。情報収集は、ソウセイ…大丈夫か?」
「俺は大丈夫です」
「それでしたら、私も同行します。既にベックフォードさん達に話しておきましたから」
「んー…俺もいたほうが、あんた達も色々行きやすいんじゃないかな?っていうか今さっきパヴェル様に追加の“お使い”頼まれたばっかりなんだけどさ」
「…私も行こう。戦力は多いに越したことはない」
結果、情報収集チームにはレヴィー・ソウセイ・カルラ・ゾゾ・コハクが向かうことに。
シンクは折角父親に会えたのに、また離れ離れになって悲しそうな顔をしていたが…
今度は永遠の別れではないと分かっているのか、最終的にはヒスイと一緒に快く送り出していた。
晴人達も、「救護活動は私達のほうに任せてください」とパヴェルに言われたため、シラスの研究所に向けて歩き始める
…その前に、瞬平の提案で今日は【面影堂】で休むことになっていた。
「とりあえず、相手もすぐには動かないでしょうし…久し振りに戻ってこれたんですから、面影堂で休むのはどうでしょう!」
「確かに…皆もかなり疲れてるだろうし、レヴィーさん達も…今日のところは体を休めて、明日頑張っていきましょ!」
「……まあ、それもそうだな。それに、色々と込み入った話もあるし」
「だったら、ソウセイはヒスイさんやシンクと一緒にいたらどうだ。当然、コハクさんも」
「そうしよう」
瞬平や凛子の気遣いに、晴人やレヴィーらは快く受け入れる。
その際、レヴィーもソウセイ達に家族の団欒の時間を取るように提案。
コハクは深々と頭を下げながら、ソウセイやシンクらと共に別行動…
カルラやレヴィー、ゾゾは今日のうちに旅の支度をする――という建前で、晴人達と別れていた。
…彼ら、特にザウバーに気を遣ったのだろう。
そして晴人達は、面影堂に向けて歩き出す…
〜〜〜
【面影堂】に着いた彼らを出迎えたのは、人のよさそうな輪島の笑顔だ。
早速皆して椅子に座ると、輪島から紅茶やコーヒー、ジュースを貰う。
そして…
ザウバーは何処から話したほうがいいか困った様子で、頭を掻いていた。
「…さて、どう説明すればいいのか…いざ話すとなると、なかなか思いつかないものだな」
「「「…」」」
「だったら…11年前のことについて、話してくれないか。――それなら、セルシウスとの関係についても話しやすいだろ」
「…少しミカには残酷な話になるが、大丈夫か」
「私なら…大丈夫」
「そうか。……11年前、お前達も知っているように…ウェルテクス一族は、特務機関Gによって命を狙われていた」
二階の窓から見えたのは、ウェルテクス屋敷に武器を持って現れた人間が来訪してきたこと。
モンスターから身を守るためなのだろうと普通の子供なら思っていたが、俺は、どうもそいつらが普通の人間とも思えなかった。
1階に下りて、応対に向かう母さんと爺さんを見つけて、声を掛けようとしていた。
…だが二人は、深刻そうな顔をしてなにやら話をしていた。
『…お父さん、また帝国からの使者の人達だわ』
『まったく…何度言っても、私達の答えは変わらないというのに。……帝国も、一体何を考えているのやら』
『だけど嫌な予感がするわ、念のためにクラウスさんに連絡したほうがいいんじゃないかしら』
『まあ大丈夫だろう。しかし奴らも懲りないものだ、我々ウェルテクスの技術は、“あんな物”を作るためのものではないというのに』
“あんな物”
…今思えば、それは【神の剣】という…馬鹿げた破壊兵器だったんだろう。
俺自身も、やってきた集団が信用できず、母さんの言うように嫌な予感を感じ取っていた。
その時父さんはリビングで、新しい研究に関するいいヒントはないか、本を読んでいる最中。
爺さんも一緒にそれを考えていて、母さんは2人に温かいコーヒーを淹れてきていた…そんな時に、ドアを叩く音が聞こえたのだろう。
流石に父さんの邪魔するわけには行かず、ドアに僅かに開いた隙間から様子を覗き込もうとしていた。
――そんな時だった。
『…ッ、……ぐぅ…!?』
家から少し離れた場所で話をしていたのか、母さんの心臓に剣のようなものが突き刺さっているのがよく見えていた。
更に、その剣を勢いよく引き抜き…母さんはその場にどさりと、血を流して倒れる。
それを見て、気が動転した爺さんが急いで逃げようと相手から背中を向けていた…その瞬間に、頭に銃弾を打ち込まれていた。
その光景を見て俺は、暫く何が起こったのか分からなかった。
…夢であって欲しい、そう願っていた…
とにかく俺は何としてもミカを守ろうと、あいつを安全な場所に隠そうとしていた。
だが、すぐに隠れろといっても意味が分からないだろう…そう思った俺は、“かくれんぼ”と称してミカを隠すことにした。場所は2階に限定して。
『これから二人で…かくれんぼして遊ぼう。お兄ちゃんが鬼だ』
『うん!』
――ミカは昔からよく、分かりにくい場所に隠れるのが得意で…探すのに苦労していた部分もある。
一応兄としての意地か、「すぐ見つかる」と言ってはいたが。
大人である父さん達だってなかなか見つけられない上に、小柄な子供だ。絶対見つかりはしないだろう。
一応父さんにも相談したほうがいいと、1階のリビングに戻った俺は…
リビングに父さんの姿がないことに気付き、「まさか」と思って外に出ていた。
外に広がっていたのは…
左肩から深く斬りつけられた、父さんの姿。
脳天に銃弾を打ち込まれた、爺さんの姿。
心臓を一突きにされ、倒れている母さんの姿。
『父さん!じいちゃん、母さん…!!』
どうして
どうしてこんな
誰か嘘だといって
夢なら早く覚めて
頭の中で何度もその言葉が渦巻いていた俺の耳に、父さんの掠れた声が聞こえてきていた。
抜け出る血の量が多く、子供から見ても、助からないような傷だった。
それでも父さんは、最後の力を振り絞ってこう話していた。
『――、……ミッシェルは、あの子は』
『今頃…簡単に見つかりそうにない場所に隠れてる。…それよりも…父さん……!』
『いいか、――…ミッシェルと一緒に、生き延びろ…そして、……帝国を…イシュトヴァーン皇帝を、……止めろ…』
『皇帝って…どうして?何で父さん達が、』
『…ウェルテクスの技術を、奴らは………のために、……頼む、――…代々受け継がれてきた、ウェルテクスの技術を…誇りを、………守…』
……そう言い残し、父さんは完全に息を引き取った。
俺は何度も父さんの体を揺さぶったが、反応することはない…
爺さんも、母さんも、同じだった。
体は完全に冷たくなり、体中の血も抜け出ている。
…嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
何度も否定の言葉を頭の中に響かせた。しかし、目の前の現実がそれを許すことはない。
完全に気が動転した俺は、助けを呼ぼうと森の中に走り出していった。
だが…
『――子供がいたぞ!』
『捕まえろ!』
『子供も殺せという命令だ!』
特務機関の奴らがそれを見つけ、俺は必死で逃げていた。
振り返った際に水色の長髪をした男を見、それは母さんが倒れた間際に見えた男の顔と一致していた。
…それが、グラントだ。
視界の悪い森の中であることを利用し、俺は何とか奴らを撒いていた。
辿り着いた先は、小さな川が流れる見通しの悪い場所…
その場で力なく座り込み、ゼェゼェと息を吐いていた。だが、追っ手は今も自分を追っているだろう。
しかし、『どうして父さん達が殺されたんだ』『自分も殺されるかもしれない』という恐怖で、足が動かない。
『……どうして、どうして父さん達が…』
『…なんで…僕達は、――何もしてないのに…!』
そんな時だった。
ビシリ、と自分の右手に紫色の亀裂が入るのが見える。
…そう…ファントムを生み出そうとしていたんだ。
恐らく【ウェルテクス一族の暗殺】に関して、ファントムも何らかの形で関わっていたんだろうな。
……首謀者に提案するとか、な。
亀裂はどんどん進み、水面には背中から氷柱のようなものが自分の体を突き破ろうとしている。
その光景を見て俺は思った、――ああ、自分も死ぬんだ…と
(僕も、死ぬの…?)
(…嫌だ、死にたくない。死にたくない)
(だけど、…いずれ死ぬことに変わりはない…父さん達も……)
父さん達も、死んだ
…誰のせいで?
…何のために?
…一体どうして
…どうして僕達が死ななくちゃいけないの
…なんで
“帝国を…イシュトヴァーン皇帝を、……止めろ…”
父さんの最期の言葉が、俺の脳裏に蘇る。
…皇帝が、殺した
…どうして
…何のために
…ウェルテクスの技術を何かに使うって言っていた
…何か、って何だ
…それは父さん達が死ななくちゃできないことなのか
…今まで誰かのために尽くしてきた、父さん達が死ななければできないことなのか…!
(…死ねない)
(死にたくないんじゃない、死ねないんだ)
(父さんとの約束もある、だけど、そうじゃない…)
どうして帝国が、ウェルテクス一族を…俺達家族を殺そうとしたのか。
そうしてまで作るものとは何なのか。
母さん達を手に掛けたあの男、その仲間は誰だ。
――突き止めたかった、何としても…この悲劇の真実を
――そのためには死ぬわけにはいかない、何としても生きなくてはいけない
…だが、皮肉にも決断するのが若干遅かった。
俺の体からはファントムが体を突き破り、生まれようとしている。
体中の亀裂は限界に達し、カルラの時のように中のファントムを押さえ込むことは不可能になっていたんだ。
『死にたくない、…何があっても…死にたくない』
『総てを知るまでは…父さん達の敵を討つまでは、――生きたい…!!』
「…気付いたら俺は、JMハンターズギルドに倒れていたそうだ。それも、……今までなかった左腕の紋章と…この紅い右目つきでな」
ザウバーもその辺りの記憶は非常に曖昧で、はっきりと思い出せないそうだが…
ファントムは、セルシウスは確かに生まれた。
だが完全に生まれる直前に、自身の持っていたウェルテクスの力が覚醒したことによって、セルシウスが肉体から弾き出され…体を繋ぎ止めることはできたそうだ。
“ファントムを生み出せば、そのゲートは死ぬ”
その例に漏れず、彼も一度死んでいるということになるのだろう…だが、それでも紋章の力で自分の肉体と命を維持している。
肉体が成長することが可能だったのも、それどころかジェネレーターが壊れているのに高い戦闘力を有していたのも、紋章の力によるものなのだろう。
「…まあ、失ったものがないわけじゃない。精神的に錯乱状態だったこともあってか、過去の記憶が虫食い状態になって…今でもなかなか戻らない」
「「「…」」」
「今使っている名前も、親父…ルピートが名付けたものなんだ。本当の名前は……父さんが、ウェルテクス一族の創始者にあやかって名付けたらしいのは、確かなんだが」
「だけどザウバー、……私と殆ど同じ体ってことは…」
「コヨミが晴人から魔力を貰わなければ生きられないように、俺もこの紋章の力がなければ死ぬだろうな。……問題は晴人の魔力は時間が経てば復活するが、俺のはそうも行かないらしい」
コヨミからの問いかけに、ザウバーは左腕に視線を落とす。
…以前サウルに言われた言葉。
『自分でも分かっているんじゃないのか、――長く続かないって』
『早死にしたくなかったら、必要以上に力を使わないほうがいい。死ぬスピードを速めるだけだ』
ファントムを生み出して死んだ人間の体の維持は、ウェルテクスの力をすり減らしている。
特に一番消費するのは、紅い光を放った時の衝撃波。
使った反動で暫く身体能力が著しく低下するのも、そのためだそうだ。
ミカのようにほぼ無限とは言えない有限の力、…それが尽きれば…今度こそ彼は。
凛子も険しい顔をしつつも、ザウバーに尋ねていた。
「…それで、後どのぐらい生きられるの?」
「さあな。自分でもよくは分からない…今までできるだけ衝撃波の力は控えていたが、もう2回も使った。……恐らく、JMハンターズギルドに着くまでに使った可能性もあるとなると、それがどう響くか……だな」
「ザウバー…」
「言っておくが同情はするな。…あの紅い光の力を使うのは俺が決めたことでもあるし、同時に、こうならなければ11年前の時点で死んでいたんだ。後悔はしていない」
「「「……」」」
「――俺のことよりも、今の状況を打破することが大事だろう。このまま放っておけば、奴らはまた【神の剣】を放つ……そうなれば、総てが手遅れになる」
相変わらずな態度のザウバーだが、帝国への復讐を誓ったその時から、強くあろうとしたのだろう。
…それと同時に、いつ死ぬか分からない身でもあるため、義理の父親であるルピート以外にはあまり心を許すことなく生きてきた…
だからこそ皮肉を言ったり、否定的な意見を言っていたのだろう。
尤もそれは、自分と似通った存在であるコヨミを始め、妹のミカやその仲間でもある晴人達に付き合っているうちに…少しずつ緩和されていったのだが(彼らのお人よしにやや諦め始めたとも言う)。
晴人はふと気になったのか、ザウバーにあることを追求していた。
「……ところでお前って、何で写真撮られるのが嫌いだったんだ?」
「そっ、…それは……単純に、………恥ずかしかった」
「…ぶっ」
「笑うな!」
盛大に噴出す晴人に、ザウバーが怒り出す。
…昔は相当の照れ屋だったのだろう、と思うとバーガーや瞬平も笑い出す。
だが、彼らにはそれぞれ鍋の蓋とまな板が飛んでくる。
バーガーは何とかそれを交わすが、瞬平の顔面にはまな板が叩きつけられるという事態に。
暗い話で下がっていた気分も、少しは晴れたことだろう。
そろそろ日も落ちつつあり、輪島の夕飯の支度をコヨミや凛子が手伝う。
瞬平も(まな板をぶつけられた部分の)顔を真っ赤にしながらも、「僕も手伝います」と挙手していたが
「瞬平君は………あ、ほら、テーブル片付けて?」
「そうね。瞬平は…それがいいわよ……」
「何なんですかこの扱い貴重なギャグ成分ってやつですか!?シュンペーショーック!orz」
…という、不当な扱いを受けていたとか何とか。
〜〜〜
夜。
下の明かりが薄っすらと点いていることに気づいたコヨミが階段を下りると、そこにはザウバーがいた。
コヨミは彼の隣のソファに座り、静かに尋ねる。
「眠れないの?」
「…麻酔を打たれたり、気を失ったりしていたからな。あまり眠る気にならん」
「ザウバーは…私と同じだって言うけど、皆と一緒にご飯を食べられたり、眠れたりするのよね」
「…だが、不便なことはある。ウェルテクスの力が覚醒したと同時に、片目の色が何故か変わった…そのせいで色々な目で見られることもあった」
「……私は、黙っていれば普通の女の子に変わりないから、そこは救いなのかも」
「そうだな」
同じ、ファントムを生み出したにもかかわらず、体を残して生きているゲート同士。
似ているところはある。
だが、似ているところよりも違うところのほうがたくさんある。
似ているようで似ていない、同じ“人形”のようでまったく違う。
コヨミは晴人の魔力がなければ動くことはできないが、ザウバーは自分の力で動ける。
だがそれ故に、力が尽きた時にそれを補充することができない…代わりの効かない体。
「……だが、俺達は心がないわけじゃない。心で考え、動く…そうすることができるのは、人間の特権だ」
「…」
「人としての心を失わなければ、俺達は人間だ。…普通の奴らと少し違うだけの、な」
「……そうね、私もそれを晴人や皆のお陰で分かった。皆がいるから、私は…私達は、人間でいられる」
その話を、階段に立ったまま聞いていたのは…晴人だ。
…そうだ
…コヨミ達は人間なんだ、人形なんかじゃない
…人形には心は存在しない。だけど、コヨミ達にはちゃんとそれがある
そんなことを思いながら、これ以上の立ち聞きは無粋だと思ったのか…晴人は静かに、階段を上っていった。
自分の部屋に戻ると、窓の外から夜空を眺める。
…アムニスフィールドは未だ亀裂が生じており、修復されるような気配はない。
このままアムニスフィールドが崩壊すれば、世界は…
晴人は拳を握り締めながら、夜空に浮かぶ星の美しさと、それを引き裂くような痛々しい亀裂を眺めながら、呟いていた。
「……何としても、シラスを…皇帝を、そしてオリジンを止める。俺達、皆の手で…」
***
すっごい眠気MAXで書いてます。
やっぱり、いくらいがみ合っていても…兵器をぶっぱされたら、皆助け合わないとですね。
帝国軍とも和解…したことに、なるのかなー…?
そしてルーク枢機卿、だから原典より早すぎるんだよあんた(原典ではシラスの研究所で怪我した)w
シンクとヒスイの再登場は予定していましたが、タルボットの再登場は何故か…
自分でも何故か、やっちゃいましたw
まあ、どうせ物語終盤で来てたような気がしますし、いっか。
情報収集チームは役に立つのかは知りません。
戦闘面は…ゾゾ≧レヴィー>コハク>カルラ≧ソウセイですかね?
カルラに戦闘能力があるかは謎ですが。
だけど、その他のスキル(=観光案内、説得)面ならソウセイが群を抜いて強すぎるというw
ザウバーの過去は重いと思う。
目の前で殺されれば尚更、ですよねぇ…
ザウバーの名前に関しては、前々から、というか原典では名乗る際に
「俺のことはザウバーと呼べ」って言ってるので、ワケありなら偽名の可能性もあるんじゃないかなーと。
ゲーム進めるとそうでもなかったわけですが。
むしろミカのほうが偽名なんですけどね?本名:ミッシェル。
コヨミとザウバーは、初期邂逅のMagic9はなんだったのかと思えるほど仲良くなったなw
晴人もそうなんですが。
人形の哀愁は、人形同士にしか分からないんでしょうか。
何気に、Magic18でのミカとザウバーの会話の回収でもあるんでしょうね。
次回は…
ボー、ボー、ボーボーボー!(訳:火の聖獣をここで出さないと出しどころを完全に見失いかねない)