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タイトル未設定 - Magic46:親父は語る

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Magic46:親父は語る

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「「「―――JMハンターズギルドに隠す?」」」




シラスを、そして人工ファントムを倒したミカ達。

取り返したシンボルストーンを二度と帝国の手に渡らないよう、何処に隠すべきか悩んでいるところへ…

晴人から、『JMハンターズギルドに隠そう』という案が出ていたのだ。

確かに、シンボルストーンも大きさこそ違えど、JMのようなもの…

見た目が宝石に近いJMが多く集まる、JMハンターズギルドに隠せば確実だと思ったのだろう。

ザウバーは少しばかり眉間にシワを寄せていたが、確かにそこ以外に隠せる場所がないのも事実。


「…確かに、JMハンターズギルドなら知られることはないだろうな。問題は、ルピートがそれを了解するか」

「お前の頼みならいけるんじゃないか?」

「……後で覚えてろ、バーガー」


ザウバーから睨まれ、バーガーは「そう怒んなって」と逃げるようにして瞬平の後ろに隠れる。

…正直、身長差と体格差があるので、上手く隠れられていない。

そんな彼らに失笑しつつも…

隠し場所をJMハンターズギルドに決定し、次はシラスが作った【神の剣】のコントロール装置が何処にあるのかを探すことに。

戦いの影響で殆どのパソコンは壊れていたが、唯一1台だけ機能が生きているものがあり、ユーテキを中心に手がかりを探し始めていたが…



「…駄目だ、ここには一切載ってない」

「そう…」

「予めデータを消してあったか、それとも、ここを作った目的からして…最初から兵器に関するデータを入れていなかったか。いずれにしろここは外れ…で間違いないだろうな」


ユーテキの言葉に、凛子は落ち込み、晴人も溜息をつく。

…そもそも【神の剣】はアムニスフィールドのエネルギーを直接発射する仕組みの兵器なので、発射台などは存在しない。

アムニスフィールドのエネルギーを利用するための、コントロール装置があればそれでいいのだ。

ここにないとすると、もっと他の…誰も行かないような場所にあるのでは?

誰もが考え、イーヴリンも色々な情報を手に入れるべく、JMハンターズギルドに向かうことを勧めていた。


「……とにかく、情報収集はレヴィー達の担当だけど、私達もある程度調べていたほうがいいだろうし…そういう意味でも、JMハンターズギルドに寄ろう。そこなら、体も休められるしね」

「そうね。朝から出発して、皆疲れてるはずだし」

「ルルも賛成なの!」

「それじゃ、皆で行くポポー!」


満場一致で、JMハンターズギルドに向かうことになった晴人達。

ここを出る際、…合成獣の研究が世に出回る危険性を考慮して、晴人やルル・ミカを中心にシラスの研究所を倒壊させるのも忘れずに。






――リーリエリヒト帝国の北東に位置する場所にある、ビスマルク港。




アパロス島という南の島に行くための唯一の手段で、そこにはイシュトヴァーンに好意を持つ【白の貴族】ルシーラ公爵がいる。

恐らくそこに皇帝が身を寄せているのでは、というレヴィーの考えでここまで来たのだ。

ゾゾはアウデンティアでは滅多に見られない大きな市場に目を光らせ、はしゃいでいた。

…ちなみに彼、恐らくこの情報収集メンバーの中で2番目に年上。見た目は子供、年齢は大人……というわけだ。


「――うっわ、すっげー!こんな場所初めてだ!!」

「ビスマルク港は市だけでなく、色々な種類のお酒が並んでいることで有名なんだ。また、アパロス島から輸入される果物を市に並べているのもここだけなんだよ」

「へー。ソウセイ、あんた詳しいな」

「一応ガイド業も兼用でやってたから…地理にはそこそこ詳しいんだ。ちなみに、この港町の食べ物でお勧めなのは、アパロスマンゴーを使ったマンゴープティングだって」


へぇー、とキラキラした目でソウセイを見るゾゾ。

彼自身、ルルのように外に出てみたい気持ちが強かったのだろう…

「この戦いが終わったら俺も旅に出ようかな」と話すゾゾをよそに、コハクとレヴィー、カルラは情報収集に専念する。

しかし、彼らはイシュトヴァーン皇帝の姿を見ておらず、それどころかアムニスフィールドに亀裂が入ったことによる不安を口にしていた。


「…アムニスフィールドが突然、こんなことになって…どうしたらいいのか」

「皇帝猊下と何か関係があるんですか?」

「噂じゃあ、反乱軍がアムニスフィールドの力を利用した兵器を発射して、猊下が重傷を受けたと…」

「いや、俺は、猊下の命令でウェルテクス社が兵器を発射して、帝国軍ごとドカンって聞いたぞ?」

「……どうやら、ここにいる彼らも突然のことで錯乱状態になっているみたいだな」

「そうですね…皇帝の情報を聞き出すのも、難しいでしょう。そもそも、昨日の今日ですぐにアパロス島に向かうとも考えられません」



レヴィーやカルラは、難しそうな顔を見せる。

そもそも、イシュトヴァーン皇帝のような身分の持ち主が、こんな場所に堂々と現れるのだろうか。

しかし他にどこか当てがあるわけでもなく、コハクもこれ以上はどうしたらいいのか頭を悩ませていた。

…その時だった。

コハクは海上に深い霧に包まれている場所があることに気付き、そのことについて尋ねる。


「……あの霧は?」

「あぁ、あれなぁ…ワシらが子供の時から、もっと言えば爺さん達が生まれた時からいつもそうだったみたいじゃよ」

「あの霧の向こう側に何があるのか、俺達だって知らない。……船で向かおうにも、真っ直ぐ進んだはずなのにいつの間にか港に戻ってるらしいんだ」

「だから昔から、あの霧には近づくなって言われてる。…好き好んであそこまで行くような物好きも、いないだろ」


どうやらビスマルク港の漁師達の間では、かなり有名な霧らしい。

あの霧の向こう側に何があるのか。

それを探ろうにも、出発した港に逆戻りで分からずじまい…

横で聞いていたゾゾも、「まるでアウデンティアみたいだな」とぼやく。

しかしアウデンティアの霧は、入り口を隠すための魔法の結界のようなもの…もしもあの海上に似たような力が働いているとしたら、あそこに魔法使いがいるということなのだろうか?

だが、ゾゾの話ではルル以外にアウデンティアの外に出ていった――【試練の場所】ともされたファルファラ氷洞は別として――魔法使いはいないとのこと。

謎が謎を呼ぶ中、ソウセイも霧を眺めながら呟く。



「アムニスフィールドは古代人によって作られた、隕石からルキナを守るための障壁…その話が真実だとすれば、古代人の作ったカモフラージュ装置である可能性もあるかもしれないですね」

「……そ、そんなのが実際にあったら、もうそれは【科学】を飛び越えて…魔法そのものじゃないのか?」

「ですが、現代にアムニスフィールドのようなものを作れるほどの技術がない…しかし古代人にはその技術があった…と考えると、できなくはないかと。……まあいずれにしても、今の俺達には関係ないですが…」

「そう……だな。とにかく俺達は、皇帝の居場所を突き止めることに専念しよう。他の場所…例えばサルビアやティエラにも寄ってみよう、何か掴めるかもしれない」


突拍子もない意見に、レヴィーは唖然としながらも…

確かに、古代の技術ならば【魔法】と言えなくもないことを平然とやってのけるだけの技術は、あるのだろう。

だが、あの霧の謎は今、自分達が調べることではない。

そう思ったレヴィーは次の目的地を提示するが、……ゾゾがマンゴープティングの店を見つけ、動かない。


「…なあ、腹が減っては移動はできない…って言うよな……?」

「正しくは【戦はできない】、だな」

「食べたいんですね、ゾゾ君」

「…どうします、レヴィーさん」

「……しょうがない。転移魔法はゾゾ君に負担が大きいわけだし、少し休むか」






〜〜〜






晴人達がJMハンターズギルドに到着したのは、夕方だった。

日は完全に傾いており、夜が訪れつつある…

「今日はここで泊まりかな」と話しながら、晴人はJMハンターズギルドの扉を開ける。

すると…

1階の酒場ではJMハンター達が集まって飲んでおり、2階の階段までの道のりが遠く感じられる。

そうしていると、ユーテキに気付いたJMハンターの一人が、「おぉ」と声を掛けていた。


「お前、この間の坊主じゃないか!」

「えーと……あっ、久し振り……です」

「何で声小さいのよ…」

「…ユーテキの奴、相当弄られてたからなぁ…酒も入っていたから、尚更」


いつも以上に萎縮しているユーテキに呆れるミカだが、晴人の説明には何故か納得。

とにかく、情報収集と平行してルピートにシンボルストーンを託すためにも、何人かに分かれて行動するのが一番いいだろう。

ということで、情報収集にはその手のプロであるイーヴリンを始め、凛子・瞬平・ユーテキ・バーガー・ルル。

ルピートと話しに行くのは、晴人・コヨミ・ザウバー・ミカ…となっていた。

早速晴人達は、近くにいた宿屋の女性からルピートは2階にいると聞き、2階のほうに向かう。

一方でイーヴリン達情報収集メンバーは、JMハンター達から情報を聞いて回っていた。



「あんた達、ちょっといいかい?」

「ん?…あぁ、イヴじゃないか。どうだ、飲み比べでもしないか」

「それは後で受けて立つよ。それよりも……イシュトヴァーン皇帝について、何か知らないかい?」

「イシュトヴァーン皇帝ね…確か、リーリエリヒト城の前で突然起こった爆発の後、姿を忽然と消したんだろ」

「まあ、色々あってね…今、イシュトヴァーン皇帝の後を追っているんだ」

「国外に出たって話はまだ聞かないし、やっぱりまだリーリエリヒト帝国にいるんじゃないか?」

「アパロス島に向かったんじゃないのか?ルシーラ公爵は、皇帝猊下に心酔しているって話だし」

「それはないんじゃないか?俺、今日ビスマルク港から来たんだけど…皇帝が船に乗ったって言う話は聞かなかったな」


他のJMハンター達にも話を聞くが、やはり、皇帝の居場所は掴めない。

一体、何処にいるというのか…

そう思っていると、ユーテキの通信JMから連絡が入る。

通信の相手は、レヴィーだった。


『そっちはどうだ?』

「レヴィーさん!?え、どうして通信JMを…」

『出発前に、パヴェル様から貰ったんだ。情報を供給するのは悪いことじゃない、ってね』

「そ、そうなんだ…ところで、イシュトヴァーンの場所は…分かったの?」

『ビスマルク港だけじゃなく、サルビアの町やティエラの町にも行ってみたが…全然だった』


そうなんですか、とユーテキが呟く。

一日中探し回っていたレヴィー達でさえも、行方を掴めていないイシュトヴァーン…

「一体何処にいるんでしょうね」と瞬平が凛子に話していると、通信の相手がコハクに変わる。




『――その件で、先程ソウセイとカルラ殿がこんな話をしていた』

「あ、コハクさん」

「それで…2人は、何て?」

『イシュトヴァーン皇帝が地下から脱出した際、オリジンと言うファントムが傍にいた…だとしたら、2つの可能性がありえる』

「「「2つの…」」」

「「「…可能性?」」」


カルラとソウセイによって導き出された、【2つの可能性】

1つは、オリジンの空間転移の力で既に国外から逃れた後ではないのか。

確かにオリジンの力ならば、船に乗らずとも国外への逃亡が可能…

「それは盲点だったな」とバーガーが悔しそうに言う一方で、コハクは2つ目について話していた。


『そして2つ目は……帝都を出たと見せかけて、実はリーリエリヒト帝国のどこかに姿を潜めている可能性』

「「「!」」」

「えっ、で、でも…それって結構リスクが高いんじゃ」

『そうでもないんだよ。共和連合・帝国軍・聖海騎士団…殆どの人達は重傷で、すぐ動くことはできない。俺達も、帝国からいなくなったと思い込んで…こうして帝都から出た』

「…それも盲点だったね。逃げたと思い込ませて、その実、帝都から出てなどいなかった…見事にやられたよ」



レヴィーの話に、イーヴリンも舌打ちをしながら、頭を抱える。

更に、レヴィー達情報収集チームは現在リーリエリヒト城下町にある【面影堂】まで戻ってきており、明日の朝一番に怪しそうなウェルテクス社かリーリエリヒト城内を探すとのこと。

そして…

今度は逆に、レヴィー達がユーテキ達に尋ねていた。


『ところで、シンボルストーンは?』

「それだったら、何とかシラスから取り戻してきたよ!」

「うん!ルル達ね、今、JMハンターズギルドにいるの!!」

「ここなら色んなJMがあるから、安心ポポ〜」

『そうか。だったら尚更、捕られることがないようにしないとな…イシュトヴァーンも、シンボルストーンがアムニスフィールドの力を引き出すものだと知った以上は、血眼になってでも捜そうとするだろう』

『…それにしても、アムニスフィールドの亀裂はまだ修復されていない。……この状態で、再び兵器が使われる、という事態になったらどうなるか』


コハクの懸念に、ユーテキ達も息を呑む。

…リーリエリヒト城の地下にあった【神の剣】のコントロールシステムは完全に破壊したが、タルボットの言っていた“別のコントロールシステム”は未だ見つからない。

シラスの研究所にそのヒントがあれば…とも思ったが、結局は見つからずじまいだった。

一体、何処にあるというのか。

ユーテキ達はそんな疑問を感じながらも、レヴィー達からの通信を切っていた。






〜〜〜






人混みを掻き分け、何とか2階にやって来た晴人達。

ドアを大きくノックし、扉を開けると…

そこでは、ルピートが窓から月を見ながら晩酌をしていた。

ルピートも晴人達に気付き、更に後からやって来たザウバーの顔を見て…声を上げていた。


「――ザウバー!お前、元気にしてたか?4年ぶりだなぁ、おい!!」

「…おい、何度も肩を叩くな。痛いだろう」

「そんなつれないこと言うなって。お、どうだ、晴人も加えて晩酌でもするか」

「よしルピート、あんたのペースに巻き込まれる前に、俺達の要件を先に済ませる!……実はあんたに、これを預かっていてもらいたいんだ」


そう言って、晴人が取り出したのは…

蒼く輝く美しい珠…シンボルストーンだった。

それを見たルピートは、信じられないような顔で、晴人達に尋ねる。


「こりゃあ…ラディスのシンボルストーンだな。一体どうして」

「ちょっと事情があってね」

「これが皇帝の手に渡ると、大変なことになるの…だから」

「まあ…事情は大体分かった。よし!お前らの頼みだ、引き受けてやるよ」


やった、と明るい声を上げるミカ。

だが、シンボルストーンとJMは大きさがかなり違う。

こんなものをどうやって隠すのだろう、と思っていると、ルピートはシンボルストーンを眺めながら話していた。



「1階の酒場には、ワインを寝かせるための小さい蔵がある。それも、床にな」

「床に?なんで??」

「俺は詳しく知らないけど…温度とか、湿度とかちゃんとした場所に寝かさないと味が駄目になるから、なるべく温度の安定している床下に入れるのがいいんだってさ」

「ちなみに、冷蔵庫に保存する奴もいるが…温度が低すぎて熟成が止まったり、コルクが乾燥したり、他の食品のニオイも染み付いたりするから……飲み残しのワインを保存する以外ではしたらいけないぞ」

「「へぇー…」」


ミカの疑問には、晴人とザウバーがすぐに答える。

そうそう、とルピートは何度も頷きながら、手頃な大きさの箱にシンボルストーンを入れていた。

こういった床下のワイン倉はいくつかあるらしく、そう簡単には見つけられないだろう。

ルピートは早速、1階の酒場に向かい、シンボルストーンを隠しにいく

…前に、ザウバーにある物を投げ渡していた。

それは以前、ユグムの坑道で(晴人を盛大に巻き込んで)手に入れた…JMだ。


「そうだ、ほらよ」

「…これは?」

「お前に会う機会があったら、渡そうと思ってたんだ。晴人に任せてもよかったんだが、会える保障がなかったからなぁ」

「……ありがとう、親父」

「なーに、代わりに今夜一杯付き合ってくれよ。“これ”隠すために出したワインも飲まなきゃいけないしな」


――もしかして、自分が飲みたいからワイン倉を選んだ…?

ミカとコヨミはそんな疑問が浮かび、晴人も失笑気味になっていた。





その夜。




ユーテキ達は宿屋で割り当てられた部屋で熟睡しており、晴人もそのはず…だった。

だが、なかなか眠れなかったのか、一人ベッドから起き上がる。

誰もが寝静まったギルドは、先程の騒がしさは何処へやら、すっかり落ち着いているほど…

酒場も一応開いてはいたが、そこで飲んでいるのは静かに酒を飲むことを好むJMハンターが1〜2人いるだけ。

ふと、晴人は2階のほうに向かい、ルピートの部屋の扉を開ける。

そこでは、ザウバーが無言でワインを飲んでおり、ルピートは晴人を見つけた瞬間、彼に絡み始める。


「…はーるーとぉぉぉー!」

「どわっ、どうしたんだよルピート!?」

「ザウバーの奴、何も話さないから話し相手がいなくてつまらないんだよ…旅の話ぐらい聞かせてくれたっていいのに!」

「……聞かせるほどのことじゃないから言わないだけだ。話したいなら、そっちが勝手に話せ」

「義理とはいえ親父相手に冷たくね!?パパンショーック!」


あぁ本当にこいつコブラカメワニ親父。

晴人がそう思っていると、いつの間にかルピートはジョッキに晴人の分のワインを1/3ほど注ぐ。

…ジョッキにワインを入れるのもどうなんだよ…

そんなことを考えつつも、寝酒にはちょうどいいと思い一杯。

葡萄の風味が口の中に充満し、恐らくこれはビンテージものだろう…と晴人は思っていた。

すると、晴人は夕方のことを思い出し、ルピートに尋ねる。



「……あんた、そういえばザウバーの肩をバシバシ叩いてたけど…あまり疑問に思わないのか?」

「ん?ああ、体温が異常に低いことか。冷え性の一種だと思って流してた」

「…」

「こういう親父なんだ」

「それにしても、もう11年か…時が経つのは早いなぁ。心を開いてくれるまで、何年掛かったことか」


そこまで掛かっていないだろ、と文句を言いながら一杯飲むザウバー。

本当の話だろ、とやや酔った様子で話すルピート。

楽しそうな親子だと思いつつ、晴人ももう一口ワインを飲む………ただしジョッキ。

そうしていると、ルピートは反撃とばかりに、11年前このギルドに来た当初のザウバーについて話していた。


「そうだ、お前知ってるか?……こいつ、11年前ここに来た時、最初の頃はよく俺を蹴ったりしてたんだぞ」

「いや普通蹴るだろ、あんたがコブラカメワニクソ親父パパンなら尚更」

「ルピートショーック!orz」

「あの時は、自分の身に何が起こったのかよく分からなかったからな。……少ししたら、大体の状況は飲み込めるようになっていたが」

「…ルピートって、その辺の事情は」

「聞かなかった。あんまり、話したくも思い出したくもないことだろうから…聞かないでいたんだ。しかし、……もう11年か」




――11年前。

その日は珍しく、ルピートは朝早くに起きており…酒場のおばちゃんと喋っていた。

そうしていると、小さいノック音が聞こえ、何かと思って扉を開ければ…

衣服もかなりボロボロの状態で、子供が倒れていた。

流石にこれはルピートも大慌てで、酒場のおばちゃんと一緒になって傷の手当をしていた。

体は冷たく、死んでいるのではないのかとおばちゃんは顔を青ざめた様子で言っていたが、息はちゃんとあったことから、懸命に介抱を続けていた…

そして2日後にその子供は目を覚ますが、どうして自分がボロボロになってJMハンターズギルドの前に倒れていたのか、何が起こったのか…それどころか自分の記憶の殆どを失っていたそうだ。

一応、医師に見せたところ、「何らかの精神的ショックが影響しているのか、一時的に記憶喪失になっている」とのこと。


名前は覚えていなかったが、左腕の紋章や紅い右目は元々持っていなかったことは覚えていたのか、そのことに関しても…

そして、自分の家族に関しても激しく動揺しており、ルピートも蹴られたり本を投げられたりすることが多かったようだ。

ある程度記憶が戻ってくると、暴れることなくむしろ落ち込んだり黙ったりしていることのほうが多く、子供らしい笑顔は一切見せない。

一体何があったのか…ルピートはそれを聞く気になれなかった。

あまり過去は詮索しないほうがいいだろうと、代わりに“息子”としてJMハンターについての心得や剣の使い方について教える。

剣の方にはかなり興味があったようで、上達の具合は凄まじいものがある。

それでもやはり笑顔を見せることはなかったが、ある程度心の距離は縮まったようで、今のように軽い冗談を飛ばしあう(ただしたまにブラックジョークが飛ぶ)仲にはなっていた。



「……ルピート、あんたのスルー精神って凄いな」

「えっ、今の話でそこにツッコミ入れんの?」

「…まあ、ルピートだからな…」

「ああ…ルピートならしょうがないか」

「……俺、泣いていい?」

「「人の迷惑にならないようにな」」

「………ルピートパパンショーック…orz」






その頃…

深夜のリーリエリヒト城は、暗く静まっている。

城内には誰もおらず、帝国軍の兵士達は未だに手当てを受けている状況。

…そのはずなのに

…皇帝の寝所では、息を潜めて“機会”を待つ者がいた。

――イシュトヴァーン皇帝と、ユディーヌだ。

イシュトヴァーンはオリジンの力で一旦別の場所に逃げた後、ほとぼりが冷めた頃にリーリエリヒト城に戻ってきていた。

ユディーヌも一度は帝都を離れたが、何とかしてリーリエリヒト城に侵入し、そして、イシュトヴァーンと合流したのである。

彼女は皇帝の前で跪きながら、現在の状況について話していた。


「……猊下。どうやらシンボルストーンは、ウェルテクスの娘達が持っているとのことです」

「本当か?」

「はい、――ギリオン宰相補佐からの情報なので、間違いはないかと」

「くっ…こうなれば、何としてでも奴らからシンボルストーンの在り処を聞き出さなければ」


そう言いながら、イシュトヴァーンが握り締めたのは…

ギリオンによって渡された、【神の剣】の遠隔装置。

彼の話では、城の地下にあったコントロールシステムは“壊されてもいいコピー”だったようで、本物は別の場所にあるとのこと。

そして、この遠隔装置は【神の剣】を遠く離れた場所からでも操作できるためのもの…

これを使えば、ミカ達を誘き出すことができるのだ。

しかしそれを使った時の危険性は熟知しているのか、ユディーヌが咎めていた。



「猊下。…帝都上空のアムニスフィールドは、崩壊したまま…その状態で兵器を使えば、アムニスフィールドが限界に達します」

「構わん、量を抑えればいいだけの話だ」

「猊下!」

「ユディーヌよ…お前は私に忠誠を誓ったはずだ。ならば、私のすることに口出しをするな……ジュリアンのようになりたくなければな」


…そう言い放つイシュトヴァーンの目は、曇っている。

アムニスフィールドの力を使った兵器に魅了され、ラディスの神だけでなく、己さえも見失っている。

それでも、ユディーヌは皇帝を裏切れなかった。

長きに渡り尽くしてきた忠誠心を、胸の中で密かに芽生えていた慕情を、裏切ることはできなかったのだ。


「…分かりました。……猊下」

「まだ何かあるというのか」

「……17年前、アンギュロスという一族を殺したのは…いえ、なんでもございません。必ずや、シンボルストーンをあるべき者の手の中に戻して見せます」

「任せたぞ…ユディーヌ」




一方で、ウェルテクス社。

そこではギリオン宰相補佐が、シラスの研究所の地下に残されていた生物サンプルを元に、新たな人工ファントムを作り上げようとしていた。

その際、媒体として使ったのは…


「……さて、これでより面白くなることだろう」


“それ”を安定させるためには、少し時間が掛かる。

しかし…

完成すれば指輪の魔法使い達にとっても、この世界にとっても厄介な存在となるだろう。

ギリオンは席を立つと、ゆっくりとその姿を変えながら、どこかへと向かう。

そして現れたのは

――総ての悲劇の糸を裏で引いてきていた、オリジン・ファントムの姿。



『準備は整った。後は、……【引き鉄】が引かれるのを待つのみだ』






***




※なるほうの引き鉄ではありません

さて…

オリジン=ギリオンだと皆さんはいつの段階で思ってましたか?

Magic12で分かった方は、――ちっくしょう表記ミスするんじゃなかったあああああ…!orz

(FKRさんに指摘されてやっと分かったレベル。正直、エレン=エグルと同じ時のミス)

基本的にはシラスがオリジンじゃないのか、とMagic40になるまで疑問に持っていただけたのなら、大成功なんですが。


明らかにレヴィーサイドは遊んでますねw

しかし、6章への布石でもあるんですよねー。地味に。

そして久々に発揮される、ソウセイの本職:ガイドw

割と頭脳担当なので、忘れられがちになっています…作者も覚えてはいるんですが。

ちなみに、Magic24での石炭燃やしたら駄目だぞー!的な知識も本当はババックさんの予定でしたw



懐かしいな、ユーテキに絡み酒しちゃったJMハンターw

まあ、名前もないモブなんですけどね…

そして、やっぱソウセイ(+カルラ)って頭脳担当なんですね。

まあカルラさん、戦闘力があるのか本編やってたときでも疑問でしたから…

有能な指揮官、って感じで。王族ですから尚更。

ちなみに本編じゃあ、カルラさんとブリュンヒルド公爵が結構いい仲です。

この小説だと、Magic26のせいでソウセイにフラグがありますが…!

実際カルラさんがいくつなのか、によりますね。

ソウセイは22〜3ぐらい。


晴人の適当なワイン解説→作者の知識

ザウバーの的確なワイン解説→ネットで調べた

ワインを保存する際には、これを気をつけておくといいですよ。

ちなみにザウバーの知識を付け加えるとしたら、飲み残したワインは酸化を防ぐために冷蔵庫に入れるのはOKというだけであって、遅くても2日以内に飲みきってくださいね。

…でも未成年は飲んだら駄目ですよ!

葡萄ジュースで我慢してくださいね。大体味は一緒でしょうし。




次回は…

ユディーヌに敬礼。