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タイトル未設定 - Magic41:奇跡の琥珀石

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Magic41:奇跡の琥珀石

第5章 帝国の終焉
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――サルビアの町。

ソウセイの言うとおり、フィルギニア公爵の趣向で町中に紅い花を植えている。

町の由来となったサルビアを始め、パンジー、チューリップ、ホウセンカ、ガーベラなど、実に様々だ。

「ここまで見事に真っ赤とはな」と晴人は思いながらも、凛子と共にフィルギニア公爵の公爵邸を探していた。


「五色の貴族の一人なら、やっぱりイメージカラーの…赤い屋根なんだろうなぁ」

「そうね…あら?」

「どうした凛子ちゃん」

「見て、あそこ」


凛子が指した先にあったのは、甲冑を着けた男達。

…恐らく、帝国軍の人間だろう。

どうやら出入り制限の影響は武器と言った物資の支給にも関わっているのか、この町に買いに来ているらしい。

見つかったら面倒なことになるな、と思いながら彼らを避けて通ろうとすると…

ある一人の兵士が晴人達に気付き、「おい」と声を上げる。


「おい、――あそこにいるのは…まさか、今俺達が追っている奴らじゃ!」

「何!?」

「捕まえろ!」

「やっべ、一旦逃げるぞ凛子ちゃん。乗れ!」

「えっ、でも…」



「――何の騒ぎですの?」



兵士達の元に、紅い煌びやかなドレスを着た女性が現れる。

…赤の貴族・フィルギニア公爵だ。

凛子は慌てて頭を下げ、晴人も少し遅れる形で会釈する。

一方の兵士達は、フィルギニア公爵の登場に戸惑いながらも、晴人達を捕まえようとしていた…その時だった。

フィルギニア公爵が、「待ちなさい」と兵士達を諌めたのは。


「そちらの二人は、私の客人ですの。手荒な真似はしないで下さらない?」

「しっ、しかし!」

「こいつらは、我々帝国が追っている…」

「――皇帝猊下に対し不敬を働き、ルーク枢機卿の暗殺を企てた上に、ヴィルギニア元帥を殺害した犯人?」

「そ、そうです!」

「…馬鹿言ってはいけないわ、その首謀者はウェルテクス一族の生き残りの娘…更にそれを裏で操っているのは反乱軍の大将と聞いています。そちらの2人には、何の関係もないことですのよ?」


どうやら自分達を庇ってくれている、フィルギニア公爵の発言。

…まあ確かに、帝国絡みの事件の大半はミカのせいではあるのだが…

更にフィルギニアは、兵士達にこんなことを言い放つ。


「あなた達もこんなところで油を売っていないで、帝都に戻ったらどうですの?いつ反乱軍が攻めてもいいよう、守りを固めるのがあなた方の仕事のはず」

「ですが!」

「…それに、元帥・並びにミッドノクス隊長の座が空位ということは、武勲を挙げればあなた方がその座に収まることもできるのです。目の前の些細なものよりも、もっと先にある大きなものを見据えなさいな」

「「「……」」」

「…分かりました。おい、行くぞ!」




フィルギニアの一声で、兵士達は撤退していく。

そんな彼らの背中を見ながら、フィルギニアは鼻で笑っている。


「――まったく、男ってのはどうしてこう、単純なのかしら。そこのあなたは、ああいうちょろい男でないことを祈りたいものだわ」

「あ、はぁ…」

「ところで、どんな御用?確かに、気が向いたら来ればいいとは言いましたが」

「あの!実は私達…仲間を助けたいんです!!」


凛子の言葉に、フィルギニアは眉を上げる。

一応、話は聞いてくれるみたいだ。

立ち話は何だと、晴人の案で近くのテラスつきのカフェで詳しい話を行う…

そしてコヨミもまた帝国に捕まっていると聞くと、フィルギニアは考えるようなしぐさで呟く。


「…あのお人形みたいに可愛らしい子も、人質として捕まっていると言うことね?」

「はい。……お願いします、帝都に入る手助けをしてくれるだけでいいんです!」

「帝国が、ザウバーの持つ力はアムニスフィールドの力を掌握するのに必要なものではないと分かれば、2人の命がどうなるかは分からない…そうなる前に、助けたいんだ!」

「…。……ところで、帝都に入りたいのはあなた達2人?」

「――俺達も含めて、10人です。フィルギニア公爵」



背後から声が聞こえ、フィルギニアが振り向く。

すると、そこにいたのは遅れてサルビアの町に到着したレヴィー達の姿。

フライハウト団の副リーダーでもあるレヴィーもいることに、「あら」と軽く驚きながらも…

フィルギニアは大して気にしていない様子で、話を続けていた。


「あら、揃いも揃って。あなた達も大変ね」

「お願いします!私達、何としても…仲間を助けたいんです!!」

「そんなに叫ばなくとも、帝都に入るまでなら力を貸してあげますわ。可愛いお人形さんのためですもの」

「「「やったあ!」」」

「…そんなアッサリ決めちまっていいのか?公爵」

「最近の帝国の行動は、見ていて見苦しいのよ。イシュトヴァーン猊下も、以前はあんなに凛々しいお方だったのに…ウェルスの町での研究者の事故以降、人が変わったようにも思えるわ」


意外と説得に苦労せず力を借りられ、他でもないバーガーが肩をすくめる。

フィルギニアは紅茶を優雅に飲みつつ、最近の帝国について愚痴をもらしていた。

…その際、“ウェルスの町の事故の真相”を知らないのだと思ったイーヴリンが、フィルギニアに詳しい説明をし…

それを聞いたフィルギニアは、尚更見苦しいと言うかのような顔で頷いていた。



「……ウェルテクス社の兵器、ねぇ。まったく、そんなものを使って世界征服でも始める気なのかしら。ますます、今の帝国は好きじゃないわ」

「それで…一体どうやって、俺達を中に?」

「あら、もしかして具体的な策は私任せだったのかしら?」

「「「…」」」

「一応、あるにはあります。この方法でしたら、フィルギニア公爵も特に怪しまれることなく、帝都の中に入れるかと」


ノープランで突っ込んできたことが見え見えなミカ達に、フィルギニアは苦笑。

レヴィーも、軽く頭を抱えつつ苦笑いしていたが…

戦闘面はてんで駄目だがサポート面では力を発揮できるソウセイが、作戦を提示。

すぐにでも準備できるものばかりだったことから、フィルギニアは「少しだけ時間を欲しい」と言い、ミカ達はその間に帝都に入った後の話し合いをしていた。


「――とにかく、我武者羅に街中を突っ込んでも兵士に見つかるだけだ。まずは、ブリュンヒルド公爵と合流するのが先だ」

「そのことなんだが、現在ブリュンヒルド公爵・アーヒバルド公爵両名は、アーヒバルド公爵邸で監視をつけられた状態で外に出られないでいる。……まずはそれを何とかしないと」

「それに、現在の帝国の状況も気になるし…ここは、二手に分かれて情報収集と公爵達との合流を行ったほうがいいと思うよ」


晴人とレヴィー、イーヴリンが中心となって話をする。

また、公爵邸で話し合うにしても、黄色い屋根の屋敷に複数の人間が出入りすれば、住人から怪しまれるだろう…

そこはレヴィーの案で、【面影堂】を合流拠点とすることで全員納得していた。

問題のチーム分けだが…

情報収集は晴人・凛子・瞬平・ソウセイ・レヴィー、公爵達との合流はミカ・ユーテキ・イーヴリン・ルル・バーガーが行うことで、決定していた。






〜〜〜






リーリエリヒト帝国の門の前に、1台の馬車が現れていた。

見張りの門兵が「今は馬車の出入りを禁止している」と叫ぶが、そこから出てきたフィルギニア公爵に驚きを隠せずにいる。

そして…

彼女は帝都に、数名の護衛と御車2人を含めて入りたいと言う旨を話す。

その要求には、兵士達も難色を示していたが…


「――実は、イシュトヴァーン皇帝猊下にウェルテクスの娘の件でお話したいことがありますの。通していただけないかしら?」

「はっ…しかし、流石にその護衛の人数と御車までは…何とか数人に減らせませんかね」

「あら?いつ何処でどんなことが起こるか分からない…もしかしたらアムニスフィールドの異変に血迷った民衆が、私に襲い掛かるような事態が起こるかもしれないのですよ。今連れている人数は、護衛として…多すぎず少なすぎずのいい人数なのです」

「で、でしたら…せめて御車だけは」

「……この私に、『歩け』と命じるの?」

「「「すっ、すいません!」」」

「おい、急いでお通ししろ!」

「わ…分かりました!」



そこは、伊達に女とはいえ貴族。

圧倒的な威圧感を以って、リーリエリヒト帝国領内に入ることを許されていた。

そんな馬車の中で…

甲冑に身を纏ったユーテキが、同じく甲冑をつけたバーガーやレヴィーに話していた。


「…見る限り、シールドみたいなものはない。空間の捻じれの原因は、何らかの妨害電波によるものなのかもしれないね」

「そうか。しかし、魔法を電波で防げるものなのか…?」

「さあ…だけど、空間転移を得意とするファントムが協力しているのなら、【神の剣】の製作の片手間に作ることもできるし……魔法の力を打ち消すほどの装置を作ることも、可能なんだろう」

「とにかく、分かっていることは装置を切らないと。……それから、ザウバーやコヨミちゃんが捕まっている場所の把握だね」


ユーテキの言葉に、全員頷く。

そうしていると、御車に変装していた晴人が声を掛けていた。

…ちなみに彼が御車にされた理由は、【バイクに乗れるなら馬も引けるはず】。

もう一人は、【ソウセイならきっとできるはず】とポポに言われたソウセイだったりする。


「――おい、そろそろ城下町に入るぞ!」

「馬車は少し目立つので、広い場所に隠しておきましょう。……黄の公爵邸に向かうメンバーは、フィルギニア公爵と行動していたほうが、怪しまれずに接近できます」

「よし、……待ってて2人とも、絶対助けるから…!」


ぎゅ、と拳を握り締めながら、ミカが言う。

そんな彼女の肩をポン、と優しく叩いたのはイーヴリンだ。

「絶対大丈夫」

直接口には出さなかったものの、イーヴリンの言いたいことは分かったのだろう…

ミカは大きく頷き、まずはブリュンヒルド・アーヒバルド両名の救出を視野に入れていた。




馬車はリーリエリヒト城の少し手前で止め、そこから二手に分かれて行動する。

情報収集メンバーである晴人達は、馬車の中で変装に使った服や甲冑を脱ぎ、町の人々から情報を集めようとしていた。

その際、通り過ぎようとしていたのが…ラディス大聖堂。

アムニスフィールドの崩壊でパニックに陥った町中の信者達が、今回のアムニスフィールドの異変について真偽を尋ねようとする者・ラディス神に祈りを捧げようとする者が詰め掛けているのだ。

当然、警備を任されていた聖海騎士団の数人は、それを抑えるのにてんてこ舞い。


「…おい、枢機卿様はいないのか!?」

「ああ、ラディス神にお祈りをしなければ…このままでは、アムニスフィールドが!」

「落ち着きなさい!落ち着きなさいッ!!」

「最近、イシュトヴァーン猊下も滅多に顔を出さなくなった…何かあったのか!?」

「それに…ジュリアス枢機卿が病に倒れたと言うのは、本当なのか!」

「神よ…どうか我々を守り給え…!」

「……ええいっ、静かにしないか!」


ラディス教の信者と聖海騎士団の者が、大聖堂の前で大騒ぎしていると言う光景に…

晴人は複雑そうな顔をし、一方で瞬平は、何故信者達を大聖堂に入れないのか疑問に思っていた。

その疑問については凛子が意見を出し、レヴィーも納得したように頷く。


「――かなりのパニックだな」

「でも、どうして大聖堂の中に入れないんでしょうね?」

「もしかしたら、帝国が…シンボルストーンがアムニスフィールドの力を使うための【石】だと知って、モニュメントに飾られていない状態じゃないかしら」

「成程、シンボルストーンが大聖堂になければ尚更信者達はパニックになる…民の混乱を加速させないためにも、それは正解だな」

「……今でこんな感じなのに、アムニスフィールドの崩壊の原因が帝国の破壊兵器と知ったら…どうなるんでしょうか」

「「「…」」」


ソウセイの言葉には、晴人達も口を噤む。

…もしも民が真実を知れば、これまで以上のパニックが起こることは明白

…そうなれば、リーリエリヒトの国民総てが帝国の敵に回りかねない

…聖地ラディウスにいる者達もそうだが、熱心なラディス教徒までも敵に回せば、帝国はどうしようもないのだろう

ラディス教を国教としているなら、尚更だ。



そんなことを話していると、彼らの前に…

ルーク枢機卿が、偶然現れていた。


「お前達は…!」

「「「ルーク枢機卿!」」」

「参ったな、早速ルーク枢機卿と出くわすなんて…ソウセイ、凛子さん達と一緒に離れてろ!」


レヴィーは舌打ちをしながら、剣を抜こうとする。

晴人も、この場での騒ぎは起こしたくなかったのだが、見つかった以上は致し方ない…

相手を拘束する“バインド”の指輪を指に嵌めながら、ルーク枢機卿を見据えていた。

だが…

ルーク枢機卿はレヴィーの言葉に反応し、一人だけ見慣れない顔の青年を見、尋ねていた。


「……君が、ソウセイか?」

「あ、はい…そうですが。……何か…?」

「…。君に会わせたい人物がいる、一緒に大聖堂の地下に来てもらおうか」

「駄目よソウセイ君!きっと罠よ!!」

「罠ではない。ラディスの神に誓って、いや、この命に代えても誓おう……それに君達も、仲間を探してここに来たのではないのか?」

「コヨミ達を知っているのか!?」



晴人の問いかけに、ルーク枢機卿は頷く。

…ソウセイに会わせたいという人物

…そして、コヨミ達の行方を知っている

罠である可能性は捨てきれないが、それでも、情報が欲しいことに変わりはない。

ルーク枢機卿も暫く考えた後、仕方がないとばかりに晴人に言っていた。


「……心配ならば、君も来るといい。異国の呪術者」

「前から思ってたけど、俺の通り名は【指輪の魔法使い】だから。そこんとこ宜しく」

「…まあいい。あまり大勢の人数を連れて歩けば、目立つのは分かりきっている……残りの者は今日のところは見逃してやろう、ソウセイと指輪の魔法使いのみついて来い」

「って言ってるけど。どうするソウセイ」

「行きましょう。きっと…嘘はついていないと思います」


晴人とソウセイの意見が一致し、二人はルーク枢機卿についていく。

…その際、晴人の指輪を凛子達に預けるよう言わなかった辺りが気になっていたが…

レヴィーは少しばかり考えた後、凛子と瞬平に提案していた。


「……待っていても仕方ない。俺達は、ウェルテクス社に行こう」

「えっ!?そこ、行って大丈夫なの!!?」

「とりあえず、敵の本拠地にも近いんですよね!?」

「大丈夫、俺達に協力してくれている研究員が2人いるんだ。……名前は教えるから、君達が呼びに行ってくれないか。俺は防犯カメラに映ると、すぐ警備が飛んでくるからね」


レヴィーはそう言いながら、苦笑いを見せる。

…この優しそうな青年も、フライハウト団の一員として戦っている…

帝国に顔を覚えられる機会はいくつもあったことだろう、確かにレヴィーが直接呼ぶよりは、凛子達に任せたほうがいい。

「分かりました」と瞬平は頷き、レヴィーの案内でウェルテクス社まで向かっていた。






〜〜〜






ルーク枢機卿の案内で、大聖堂の地下に向かう晴人とソウセイ。

地下への入り口は、大聖堂から少し離れた場所に設置された、不自然な石碑の下。

階段をいくつか下りながら、ルーク枢機卿はソウセイに尋ねていた。


「…ソウセイ、君の父親は、どんな人物だ?」

「コハク父さんですか?……ええと…凄く優しくて、大らかで、力持ちで、俺もシンクも母さんも…そんな父さんが大好きでした。……だけど半年前、」

「帝国軍によって徴兵され、激戦区に投入され…行方知れずになった」

「……どうしてそのことを?」


ソウセイが尋ねるが、ルーク枢機卿は答えない。

一方の晴人は、今の問いに引っかかりを感じていた…

何故、今コハクの話をするのか。

薄々と何かを感じていると、ルーク枢機卿は今度は晴人に尋ねていた。


「…実は、どうやって入り込んだか知らないが、指輪の魔法使い……お前の連れの少女が地下をうろついていた」

「コヨミが?…ところで、オッドアイの男の姿は…ザウバーは」

「私が見たのは、コヨミと言う少女だけだ。……何かあったのか」

「……特務機関のグラントと、そしてオリジンと言うファントムに仲間が連れて行かれた。しかも、そのうちの1人は…早く見つけて助け出さないと、手遅れになる」

「…。……少なくとも、この大聖堂の地下にはいなかった…となれば、可能性が高いのは……ウェルテクス社の地下研究室か、リーリエリヒト城の地下室だろう」



地下室大好きだな、と晴人がぼやいていると…

ある部屋の前に到着し、ルーク枢機卿が扉をゆっくりと開ける。

その中にいたのは、ガルーダを掌に乗せてソファに座っているコヨミと

――コハクに似た、男性の姿が、そこにあった。


「…父さんッ!?」

「おい、ちょっと待て…コハクさんは、ソウセイの親父さんはファントムを生み出して死んだんじゃ!」

「晴人。……この人は、本物のコハクさん。シャドゥは…違う人から生まれたゲートなの」

「……ファントムだかゲートだかはさておき、この男は運よくあの激戦区で生存していた…しかし、ジュリアス枢機卿が見つけた時には記憶を失っていて、ここでこうして保護されていたのだ」




ルーク枢機卿の話によれば…

半年前の徴兵で、コハクや他の民間兵は戦いの最激戦区に投入されていた。

所謂、弾除けといった“盾”として。

当然戦いの規模の激しさから、民間兵の生存者はいないかに思われ、悲惨な戦いの跡地に足を踏み入れたジュリアス枢機卿はラディスの神のために戦った兵士達に追悼の祈りを捧げて回っていた。

…だが…

誰かの掲げていたラディス教のシンボルともいえる十字の旗の下から、何かが動いている。

それを見つけたジュリアス枢機卿は、旗を持ち上げると、そこにいたのは頭部から血を流して唸っているコハクの姿。


『あの戦いで生き残っていた者がいたとは』

『これは、ラディスの神による奇跡だ』

『ラディス教の旗に守られるように倒れていたのが、何よりの証拠』

『彼は恐らく、ラディスの神に守られているのだ』


そう思ったジュリアス枢機卿は、コハクを連れ、この地下の部屋で手厚い看護を施していた。

その際、コハクは戦いのせいで記憶を失ったことが判明し…

記憶が戻るまでの間、ここで保護するべきだとジュリアス枢機卿は考えた。

ルーク枢機卿はその話を聞いて、最初は信じられずにいた…

しかし、コハクを発見した際に彼が身につけていた鎧は、徴兵された民間兵に支給されたもの。

所々壊れてはいたようだが、確かにそれは戦いでついた傷なのだと、ルーク枢機卿も信じざるを得なかった。

記憶に関しては、ここ数ヶ月ほど前から、ある程度の記憶は思い出してきている…

そして、「自分には妻と、息子が二人いる」と話し、

――その時に告げた息子の一人の名前がソウセイだと、知ったのだ。



「ジュリアス枢機卿は、ラディス教の枢機卿としての仕事や、イシュトヴァーン猊下との会談の合間にコハク殿の家族を探すため…奔走していた。だが、彼は病に倒れ…」

「「「…」」」

「病床に伏せるジュリアス枢機卿の代わりに、私がコハク殿の家族を探すことになった。そして、――君の話を耳にしたのだ。ソウセイ」

「そういうこと、ですか…じゃあ、シャドゥは一体……」

「コハク殿には双子の兄…アンバーと言う男がいた、と聞くが」

「……そっか、双子のお兄さんのほうが…シャドゥを生み出したゲートだったのか」


晴人は納得したように頷きながら、コハクを見る。

…シャドゥがコハクの姿でありながら、ソウセイの記憶がなかった理由

コハクにアンバーと言う兄がおり、更に、ソウセイが彼と面識がなかったのならば…納得が行く。

一方で、コハクはソウセイの顔を見て、忘れかけていた記憶が徐々に戻ってきたようだ。

震えるような声で、ソウセイに声を掛けていた。


「……ソウ、セイ?」

「!」

「…ソウセイ…なのか、……本当に…」

「……父さんッ!」




…父さんが生きていた

…死んだと思っていたのに、もう会えないと思っていたのに

嬉しさのあまりソウセイはコハクに抱きつき、コハクもまた、ソウセイを優しく抱きしめる。

そんな二人の姿を微笑ましげに見ている晴人。

そこへ、コヨミがルーク枢機卿にザウバーの行方について尋ねていた。


「ルーク枢機卿、ザウバーは何処にいるか知らないの?」

「さっき指輪の魔法使いには言ったが、少なくともここにはいない。リーリエリヒト城の地下か、ウェルテクス社の地下研究室だろう」

「ところで枢機卿、あんたは今回のアムニスフィールドの崩壊を…どう受け止めているんだ?」

「…。……私はラディス教の枢機卿、そして聖海騎士団を束ねる者として、アムニスフィールドを守るために戦うのみだ」

「「「…」」」

「――イシュトヴァーン猊下は、アムニスフィールドの力を悪用した兵器を使い…ラディス教の教義を忘れ、世界を支配する野望に囚われた。私は、アムニスフィールドを守るため……イシュトヴァーンを止める」


そう言って、ルーク枢機卿はローブを脱ぎ捨て…

その奥から見えたのは、聖海騎士団の隊長に渡される鎧。

聖海騎士団隊長の鎧をつけている人間など、晴人達は2人しか知らない。

一人は、ラディス教に疑問を抱き、今ミカ達と行動している…バーガー。

もう一人は、そんなバーガーの後任として隊長の座に就いた、セデギウス。

「じゃあ」と晴人は声を上げながら、ルーク枢機卿に尋ねていた。



「…セデギウスって、……あんただったのか…ルーク枢機卿」

「その通りだ。バーガーが抜けた後の聖海騎士団の隊長を任せられる人間は、いなかったので…致し方なくな」

「……だけど、今考えると納得いくよ。あんた、防衛省とかで言う背広組みたいな立場なのに…バーガーさんと渡り合えるほど強かったもんな」

「「「…背広組…?」」」

「あ、まあ簡単に言うと、……上で偉そうに命令して実際の現場は部下任せポジション?」


晴人の言葉に、まあまあ納得はしたようだ。

…と同時に、ルーク枢機卿の表情は少し怒りの色が見えたが…

そこはソウセイとコハクが慌ててフォローし、晴人はコヨミに怒られる。

とにかく、ルーク枢機卿もイシュトヴァーン皇帝の暴走を止めるべく、協力するとの事。

その一方でコハクも、状況はあまり飲み込めてはいなかったが、ルキナを揺るがす一大事にソウセイも加わっているということは分かったのだろう。

自分から、戦線に入れて欲しいと志願していたのだ。


「…話はよく分からないが、私も力を貸そう。それが私を助けてくれた、ジュリアス枢機卿やルーク枢機卿への恩に報いるのならば、尚更」

「父さん!」

「しかし、聖海騎士団も加わるとはいえ、帝国と直接ドンパチやるんだぞ。大丈夫か?」

「これでも斧の扱いは得意なんだ、薪割りに使うし。……半年前の戦場でも、渡された槍は扱いにくくて困ったが…倒れた同じ民間兵の持っていた斧を使って、何とか生き延びれた」

「……だったら、コハク殿はフライハウト団のメンバーとして所属したほうがいいだろう。家族がそこに身を寄せているのなら、尚更」




ありがとうございます、とコハクはルーク枢機卿に頭を下げる。

…コハクにとって聖海騎士団に所属するルーク枢機卿は命の恩人だが、帝国軍に父親を奪われたソウセイ達の立場からすれば敵の一つにも近い…

結局彼が生きていたとはいえ、家族は帝国に敵対する立場にいるフライハウト団・父親だけが聖海騎士団とまた別れる結果になることだけは、ジュリアス枢機卿も望んでいないと思ったのだろう。

ルーク枢機卿の提案には、晴人やコヨミ、ソウセイも納得する。


「だけど、ルーク枢機卿。あんたは聖海騎士団のメンバーを…イシュトヴァーン皇帝に知られないように徴集して、説得しておいてくれ」

「何?」

「どこかに空間転移の妨害装置があって、共和連合が到着できないんだ。全員、グリュッグで足止めを食らっている…俺達が装置を切った直後に来る予定だから、それに合わせてほしい」

「……いいだろう。君達の健闘を祈る」


そう言って、ルーク枢機卿はどこかに踵を返す。

そんな彼の背中を見送りながら、晴人達は通ってきた地下道を戻る…

その際コヨミは、晴人に「いいの」と尋ねていた。


「晴人、…大事なことなのに、あの人に話してよかったの?」

「ああ。――ルーク枢機卿の、聖海騎士団のラディス教への深い信仰心はよく知ってる…アムニスフィールドを守るためなら、俺達に協力してくれる。裏切ることはないだろうさ」

「…そうだといいんだけど」

「それよりも、皆と合流するぞ。……そして、帝国のどこかにある装置を…叩く!」


晴人の言葉に、ソウセイやコハクも頷く。

コヨミは一抹の不安を覚えつつも、小さく頷き、ラディスの大聖堂地下から抜け出していた…






***




ルーク枢機卿裏切るの早い(原典的な意味で)w

ちなみに、原典じゃザウバー助けたした後の…次の目的地で和解します。

まあそんなこと言い出すと、原典にあったJMハンターズギルドへの押しかけがなくなっている時点で(ry


サルビアの町はオリジナルの町なんです。

それ以外は…

まあ、基本的には原典にもある町ですね。ただ、サブルムに行く前の小さな名もなき村もオリジナルといえばオリジナル。

むしろ、3章に出てきた初代ウェルテクス屋敷とか…アムニスフィールド関係の研究資料のある場所とかも、オリジナルですね。

とりあえず、自分の中でアムニスフィールドとかウェルテクス一族の設定を固めたかったんで。



御車にされた理由が酷い晴人とソウセイw

でもまあ、分かる気はする…

万能すぎるんだよな、色んな意味で。

そして…

コハクさん生きてましたぁぁぁー!

どうやら、シャドゥを生み出したのは双子のお兄さんだったみたいですね。

ちなみに当初の予定は、ルピートの知り合いであるJMハンターにしたかったんですが…没。

ついでに「シャドウエッジ」を使う関係上、ザウバーと関係性のあるかもしれないファントムフラグもやってみたかったんですが…誰も引っかからなかったので結局没。


コハクさん…

ランドネタの人なのに、ランドさんより運強えぇw

コハクさんはソウセイと違って普通に戦える感じですね。まあ、レヴィーもそうですが、戦闘描写の機会に恵まれるかどうかは…知りません。

こうなると、ハリケーンネタのヒスイさんとフレイムネタのシンクがw

本郷町における変人魔法使いコンビがww

ちなみにソウセイが頭いいのも、たぶんウォーターネタのせい。本郷町のウォーターも頭いいし策士だもんな…




次回はきっと装置破壊。

というか、5章は完全にオリジナルでぶっ飛ばしてますw

おかげで、ユディーヌの死に場所の展開どうしたらいいか迷ってるよ!

いっそ、大体の展開さえ原典に沿ってればオリジナルでいいかなとか思い始めてるよ!!