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タイトル未設定 - Magic32:魔法の国

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リーリエリヒトと戦うための戦力を得るべく、ルルの提案でアウデンティアに向かうことになった晴人達。

彼女の住む国は【魔法の国】と言うことで、当然瞬平は浮き足立っている。

元々、小さい頃から魔法使いに憧れていたので無理もない話なのだが。

それよりも、適当に道案内しているようにも見えるルルを見た晴人は、本当に大丈夫なのか尋ねていた。


「…なあ、ルル、なんか適当に歩いている気がするんだが…本当にこの道でいいのか?」

「だいじょーブイだよぉ!ルルがいれば、ちゃんと行けるから!!」

「まあ…お前しか道順を知らないんだから、やってもらわないと困るんだけどな?」

「それにしても、結構歩いたわね…」

「本当に大丈夫なのかしら?」


頭を掻く晴人の後ろで、凛子やコヨミが不安を漏らす。

だが…

歩いていると、次第に霧が出てきて視界が悪くなる。

互いの姿が見えないほど濃い霧のようで、晴人は仲間が道に迷わないよう“ライト”リングで照らす。

一方で、ルルは迷いなど見せずにるんるんと鼻歌を歌いながら歩き続ける。


「おいルル!はぐれるぞ!!」

「だいじょーブイ!だって、霧が出てきたってことは…アウデンティアまでもうすぐだもん!!」

「どういうことなんだ?」

「も、もしかして、……魔法の国ですから、存在を他の人に知られないように、霧の中に隠しているとか!」

「しゅ、瞬平さん…それ非現実的、……いや…晴人さんやルルの魔法を見る限りだと、割とアリなのかも…」


後ろのほうでは、バーガーや瞬平、ユーテキがわあわあ話をする。

だが、魔法使いの住む国に向かっているのだ…

瞬平の言うように、外の人間がうかつに立ち寄らないよう、霧のトラップを張っていても不思議ではない。



そして…

気付けばある人物の影の中に潜んでいたシャドゥだけが、取り残されていた。

…おかしい

…前のように、何かに弾かれる様子などなかった

…一体何故

そう思いながらも、報告はするべきだと思ったか…彼はオリジンに話をしていた。


「オリジン様、――奴らを見失いました…」

『何だと?』

「奴らの目的地は、魔法の国と言われるアウデンティア…しかし……突然霧が現れたかと思えば、奴らだけがいつの間にか霧と共に消えた」

『成程…だとすると、その霧がお前のみを弾き出した。……そういうことになるな』

「…Yes。申し訳ありません」

『構わん、奴らは必ずグリュッグに戻ってくるだろう…その時にもう一度、奴らの影の中に入り込んで尾行を続けるのだ。――それに、既に手は打ってある』






〜〜〜






霧が晴れ、晴人達の目の前に現れていたのは…

ピンクや黄色、黄緑といったファンシーな色の屋根が立ち並ぶ建物。

箒に乗って空を飛ぶ人々。

魔法で物を浮かせて重い荷物を運んだり、魔法で火を点け料理をする者。

――文字通りの【魔法の国】が、そこにあった。


「じゃじゃーん!ここがルルの国、アウデンティアだよぉ!!」

「ポッポー!」

「「「…」」」

「うわぁぁぁ…凄い、魔法の国…本物の魔法の国ですよ!晴人さん!!」

「…いや、なんていうかさ、――ファンシー…」


魔法使いでありながら、「ファンシー」としか言えない晴人。

だが、気持ちは分かる気もする…

まさに絵に描いたような魔法の国や魔法使いばかりで、むしろ手近な指輪の魔法使いが軽く浮いているようにも見える。

そうしていると、ポポによく似たサル達が遊び回っている姿を見て、ミカが訊ねる。



「ルル、あれって…」

「ポポの仲間だよ!ポポは“ポポ族”って言って、魔法使い1人につき1匹のポポ族を連れて歩くのがアウデンティアの決まりなの」

「…あぁ成程、使い魔ってやつか…」

「……何故だろうか、某インキュベーターを想像してしまったのは…」

「それも確かに魔法使い繋がりだけど、ザウバー…インキュベーターなんていたら、ファントムなんて可愛く思えてくるから……」


納得するイーヴリンの横で、ザウバーとコヨミがコソコソと別の世界の使い魔について話している。

まあ、使い魔というより営業サラリーマンみたいなものだが。あのQB。

それはともかく、ルルやポポに気付いたポポ族は

…普通に喋り始めていた。


「……あっ、ルルが帰って来たポポ!」

「ポポもいるポポ!」

「外はどうだったポポか〜」

「「「喋ったあああああああああああああああ!?」」」

「うん!ポポ族はね、パートナーの魔法使いが一人前になると…喋れるようになるんだよ!!」

「え、それじゃあルルの連れているポポが話せないのって…ルルが一人前じゃないから?」


ポポクライシスで激しく動揺する晴人達をよそに、ルルはサラッと今まで黙っていたポポ族の特性を話し始める。

だが、それを聞いたユーテキが余計なことを言うと…

ミカがチョップで黙らせ、バーガーが膝カックンを仕掛けていた。

しかし、ルルの魔法の凄さは…セラピアの水源JMを取り戻すまで、水の珠を作り出して水源が枯れないようにしていたことから、かなりのものであるはず。

それなのに、一人前になれない理由でもあるのか…

そう思っていると、一人の少年がやってきて、話し始めていた。




「――ルルは炎の魔法を得意とする家の生まれなのに、炎が苦手だからな〜」

「「「誰?」」」

「あっ、ゾゾ!」

「ルル、外の世界ってどんな感じだったんだ?色々聞かせてくれよ」

「ねぇルル、この子は?」

「…隣の家に住んでるゾゾっていうの。…そもそも、ルルが炎を苦手になったのはゾゾのせいだよぉ!」


その話を聞き、晴人達は前に起こった火事騒ぎのことを思い出す。

ルルは火を見てかなり怯えており、その理由は幼馴染が炎の魔法を出して、それがルルの髪に引火したから…

それと同時に、ルルが凄い魔法を使えるのに『一人前ではない』という理由も、納得がいく。

…未だに炎が苦手で、炎の魔法だけが使えないからだ。


「そっ、……それについては、悪かったって…俺だってまさか髪に燃え移るなんて思ってなかったんだから。あの時は火野魔法も覚えたてだったし、……反省してるよ」

「もぉー…いいよ、25年も前のことだから、時効にしてあげるもん。それにルルだって、はるとんのお陰で徐々に炎を見るのにも慣れてきてるから」

「……えーと、ルル…なんか今、サラッと凄いこと言わなかった…?」

「25年前って…ルルちゃん、どう見てもまだ子供でしょ…?」

「あれ、ルル、この人達は?」

「ルルのお友達!特にこっちにいるはるとんは、ルル達とは違う魔法使いなんだよ〜」


何気に今、重要なことを暴露した気がするが…

ルルは気にせず、晴人達をゾゾに紹介する。

「いや年齢の謎について教えてくれよ」とバーガーがツッコむが、ルルは盛大にスルーして提案していた。



「あっ、そうだぁ!折角だし、パヴェル様に会う前にルルのお家で休もうよ!!」

「「「いやスルーしないで!?」」」

「晴人さん…もしかしたらルルちゃん達って、長寿タイプの魔法使いなんじゃないですか…?僕が昔読んだ絵本の魔法使いの中に、歳を取らない魔法使いもいたんです」

「瞬平…むしろお前、『チチンプイ』以外にもどんな本読んできたんだよ…正直、適応しすぎだぞお前……」


ちなみに、ゾゾの話だと彼は14歳の見た目に反して40歳らしく

…ルルと幼馴染ということから、大体彼女もそのぐらいの歳なのだと、晴人達も納得していた。

一方でバーガーは、「俺と同い年かよ…」と呟いていたが。

そうなると当然、パートナーであるポポ族も長寿なのだろう。ここに来てパーティの年齢バランスが、大きく崩れた気がする。

しかし、ルルの生まれた家に行ってみたいというのも事実なのか、ミカはルルの提案に乗ることにしていた。


「でも、私達も行ってみない?休みたいのも事実だし、何より尺稼ぎしないと」

「ゲームでも実際、行かないといけないしね」

「ミカ、イヴさん!それメタ…相当のメタだよ!!」

「僕も行きたいです!っていうか、むしろこの国を観光したいです!!」

「観光したら流石に尺が足りなくなるから、やめましょ!?瞬平君!」

「凛子ちゃんもメタいから!?」


沢山のメタが入り乱れる、暴走した会話に…

ザウバーとコヨミは溜息をつき、ゾゾは首を傾げていた。






〜〜〜






ルルの家は、ピンク色の屋根に…花壇にはハート型の花が咲いている可愛らしい家。

さすが魔法の国、咲いている花も独特すぎる。

そんなことを思いながらも、ルルは元気よく家の扉を開ける。

すると…そこでは、魔法である物を作っているルルの母親の姿が。


「ただいまー!ママン!!」

「あら…ルル!あなた、10年も家を空けて何処に行っていたの!?」

「…武者修行の旅、10年前からやってたんだ…」

「うわああああああ!自動的にジュースが出てくるポット、無意味に浮いている球体、勝手に並べられる食器に宙に浮いて勝手に掃除してくれる掃除機…やっぱり魔法の国なんだー!!」

「っていうかドーナッツ!?プレーンシュガー!!?プリーズ、プリーズ!」

「晴人落ち着いて!むしろ、いつも何処からかコネクトして食べてるじゃない!!」


10年前から武者修行の旅をしていたという事実に、顔を引きつらせる凛子。

だが…

ルルの家を見て大ハッスルする瞬平と、ルルの母親が作っているドーナッツを見て暴走しつつある晴人。

瞬平スルーされたが、晴人はコヨミによって止められている状態。

ぎゃあぎゃあと大騒ぎをしていると、魔法で椅子を浮かせながら、一人の老婆が現れていた。


「…ふぉっふぉっふぉ。賑やかなお客さんだねぇ」

「あっ、グランマ!」

「グランマ…ってことは、ルルのおばあちゃん?」

「魔法使いの年齢を考えると、……かなり長生きなのね…」

「おやおや…ルル、なんだかとても面白そうなお客さんがいくつかいるねぇ。特にそこのお兄さん、あんたを見ていると死んだ爺さんの若い頃を思い出すわぁ」



ルルの祖母は晴人を見ながら、昔を懐かしむように目を細める。

彼の旦那…つまりルルの祖父に当たる人物は、火・水・風・土の四大元素といえる魔法を得意としていて、特に火の魔法の扱いにかけてはかなりのものだったそうだ。

「なんだか晴人さんに似ていますね」と瞬平が言う横で、ルルの母親が人数分のドーナッツをテーブルに並べる。

この短時間で多くのドーナッツを作る辺り、魔法は偉大だ。

席に座り、揚げたてのプレーンシュガードーナッツを食べてご満悦の晴人…

ルルの祖母はそんな彼を見て、懐かしそうに話していた。


「……そういえばあの人も、プレーンシュガードーナッツが好きだったねぇ…」

「…晴人君、もしかして晴人君って、ルルちゃんのお爺さんの生まれ変わりなんじゃない…?」

「多分、コーヒーに砂糖を大量に入れそうですよね」

「ルルのお爺さんって、きっと晴人みたいに1日1個プレーンシュガーを食べないと気が済まない人かもね」

「いや、凛子ちゃん…瞬平…コヨミ、……酷くない…?」

「お前さんを見ていると、――アムニスフィールドが空に架かった日を思い出すみたいだよ…あの日はちょうど、お爺さんと初めて出会った日だからねぇ……」


…アムニスフィールドが空に架かった日

その言葉に、誰もが驚く。

しかし魔法使いが年齢の取り方が特殊で更に長寿であることが判明した今、ルルの祖母がアムニスフィールドの誕生を知っていてもおかしくはないと思い始めていた。

「このお婆さんなら、もしかしたらアムニスフィールドのことが分かるんじゃ」

ユーテキの言葉に頷き、晴人はルルの祖母にアムニスフィールドについて尋ねていた。




「お婆さん。…結構長生きみたいだけど、アムニスフィールドがどうして誕生したのか…知らないか?」

「そうだねぇ…昔のことだから、よく覚えてはいないけど……とにかくその日のアムニスフィールドは、今よりもずっと綺麗に光り輝いていたよ」

「今よりずっと…」

「アムニスフィールドのエネルギーが半永久的とは聞いているが、やはり年月が経てばある程度純度も薄くなってくるみたいだな」


今よりずっと綺麗な水の膜。

彼女の話が正しければ、昔は肉眼でもある程度はっきりと見えたことが推測される。

そして…

ルルの祖母は、「そういえば」と晴人達にこんなことを話していた。


「――聞いた話だと、アムニスフィールドは空からの天災からルキナを守るために作られた…と聞いているよ。まあ、昔の話だし…本当にそうなのかは知らないけどねぇ」

「「「空からの天災…?」」」

「どういうことなんだろう、それって」

「空から災害が来る…空……もしかして、――隕石…?」

「待って凛子さん!その話が本当だとしたら、……アムニスフィールドは隕石からルキナを守るために作られた…エネルギーシールドってことになるよ!?」


“隕石”という凛子の言葉に、ユーテキが声を上げる。

しかし…

記憶装置の内容を見た3人は、かつての研究者チームが話していた【あの日】という言葉を思い出し、納得する。

――もしも【あの日】というのが、隕石が襲来する日なのだとしたら

――いや、ルキナの危機が迫っていたのだから、ただの隕石ではなかったはず

――もしかすれば、ルキナと同じ大きさほどの巨大隕石か、ルキナの大地を滅ぼすほどの大量の隕石群が襲来していたのだろう



「…だけど、それがアムニスフィールドの作られた理由としては…一番正しいのかもしれないな」

「そうね。…でも、もしこのままアムニスフィードが壊れたら…」

「……隕石がぶつかるのは遥か昔の話だ、現代にまでその災害が来るはずないだろう。だが、最悪の事態は免れないだろうな…膨大なエネルギー供給源が無くなるのなら、尚更」


晴人・コヨミ・ザウバーが、口々に話す。

ゾゾにとっては、アムニスフィールド云々は分からなかったが…

ルルが外からの客を連れて戻ってきた理由もそれなのかと思うと、不思議と納得していた。


「ルル、お前今、何してんだ…?」

「うーん、ちょっと色々あって。おやつを食べ終わったら、パヴェル様に会いに行くの!」

「…そっか」

「そうだわ、ルル、あなたこれを持っていきなさい」


そう言って、ルルの母親が渡したのは…

まるで真紅の炎のように赤く光り輝く、JMだった。

彼女の話では、ルルの家に代々伝わる家宝のJMで……強力な炎の魔法を使えるようになるとのこと。

炎が苦手なルルにそれは、とミカが言おうと思ったが、それをバーガーが押さえルルに言う。


「ルル。…怖いもんは仕方ねぇと思うが、いつまでもそう言っていられないのも事実だと思うぜ?」

「おじちゃん…」

「いつかお前がそれを必要になる時が来る、だからお前のお袋さんは預けておきたいんだろ…大事な一人娘を守るために、な」

「…」

「……それに、使わなくてもお守りぐらいにはなってくれるだろ。まぁ要するに、失くさないで持ってろよってことだ!」

「……分かった。でもだいじょーブイだよ、これがなくてもルルは充分強いんだから!」



そう言いながらも、バーガーの言うことには一理あると思ったのか、JMをジェネレーターに填めるルル。

充分休んだことだし、アムニスフィールドについて思わぬ情報も貰うことができた。

晴人達はルルの家族に礼を言うと、パヴェルのいるというアウデンティア城に向かっていた。

だが…


「…」


一人、ルルの家に残っていたゾゾ。

彼は少しだけ考えた後、こっそりと彼らの後を尾け始めていた。






〜〜〜






――アウデンティア城。



ツァールハイト城やリーリエリヒト城にも負けないぐらい立派なこの城は、まるで御伽噺に出てくる綺麗なお城のよう。

赤いカーペットが敷かれており、魔法の国ならではの幻想的な雰囲気さえ感じる。

ミカや凛子は、やはり女の子なのかこういうお城に憧れていたようだ。


「うわぁ〜、凄く綺麗!」

「そうね…まるで、御伽噺のお姫様になった気分!」

「しっかし、見張りや兵士なんていないんだな」

「アウデンティアは平和だし、他の人は普通なら入れないから…お城の怖〜い兵士のおじちゃん達がいなくても、平気なの!」


幻想的なお城に目を輝かせるミカや凛子をよそに、晴人は兵士がいないことに疑問を持っていたが…

そこはルルが納得する説明をしてくれたことで、理解していた。

そもそも、霧の中を越えれば今まで何もなかったような場所に…いきなり国が現れるのだ。

外からの部外者から守るためのセキュリティはかなりのもので、今まで帝国に攻め入られなかったのにも納得が行く。

…それと同時に、部外者と知っていて…しかもアウデンティアの平穏を脅かすような自分達をこの国に迎え入れたことに、疑問を持ち始めていた。




ルルの案内で暫く進むと、そこには優しい色合いのピンクを使ったドレスを着た女性が座っている。

更にその隣には、王冠を被った立派なポポ族の姿。


「パヴェル様!ポポキング!!」

「ポポー!」

「ルル、長旅ご苦労様です」

「とても充実した旅だったポポか?」

「皆、ここにいるのがアウデンティアの女王様でもある…パヴェル様。その横にいるのは、ポポ族の王様ポポキングなの!」

「――操真晴人さんに、そのお仲間の方々ですね。あなた方のことは、今まで見てきておりました」


パヴェルは優しそうな笑顔を見せながら、晴人達を知っているかのように話す。

どういうことだ、とザウバーが訊ねると…

そもそもパヴェルこそ…ルルが武者修行の旅に出ることを強く推した張本人。

ルルが一人前になるためならというのも理由の一つだが、彼女をアウデンティアの外に出すことで、その目を通してルキナ全体の状況を見ることが出来るから…なのだとか。

そうなると当然、パヴェルはリーリエリヒト帝国の暴虐の数々を知っていることになる。

…晴人の魔法や、ミカの聖獣の姿、ファントムの存在も含めて。


「特に晴人さん、あなたの魔法は…私達から見ても、とても興味深いものです。あなただったらいずれ、無限の輝きとも言える魔法を手に入れることも出来るでしょう」

「俺の魔法って、やっぱこの国の人達からしたら珍しいほうなのか」

「ええ、とても。……この世界では四大元素の1つが強くなる周期があります。もうすぐ大地の息吹が強まる時期、大地の恵みがあなたや、あなたの仲間達を優しく包み込んでくれることでしょう」

「それより…俺達のことを、ルルを通して知っているのなら……ここに来た理由も、分かっているんだよな?」



何か今、大事なことをスルーした晴人。

ランドがなかなかに哀れになってくるような感覚をコヨミは感じつつも、パヴェルも気にせず話を続けていた。


「はい。――ですが、そう簡単に力を貸すわけにもいきません。我々アウデンティアの者は、何より平穏を望みますから」

「…ま、そうなるよな」

「そこを、どうにかならないんですか?」

「そうですね……それでは、精一杯の譲歩として…ルルの武者修行の成果を試す意味も込めて、あなた方に試練をお与えしましょう」


そう言いながら、パヴェルは小さな小箱を取り出す。

そして、暫く晴人達にそれを見せた後…

魔法の力でどこかに飛ばし、突然消えた小箱に誰もが驚いていた。

ルルによれば転移魔法の一種で、パヴェルほどの魔力の持ち主ならば…アウデンティアに住まう総ての住人を、リーリエリヒト帝国に送ることもできるとのこと。

盛り上がる瞬平を軽く無視しつつ、パヴェルは“試練”の内容を話していた。


「アウデンティアを出て東の方角に、“ファルファラ氷洞”という洞窟があります」

「「「ファルファラ氷洞?」」」

「魔法使いが一人前になるために必要な、試練の場所なの。とても凶暴なモンスターが多いし、それに洞窟の一番奥には……すっご〜く強くて、すっご〜く怖い“主”がいるんだよぉ」

「そうです。…そのファルファラ氷洞の奥地に、先程の小箱を送りました。何人行っても構いません、ファルファラ氷洞にいる主を見事に倒して小箱の中身をここに持ってくれば、あなた達の申し出を受け入れましょう」




聞くだけなら、簡単そうにも見える試練の内容。

だが、ルルによれば氷洞の中の仕掛けも「物凄い」らしく、簡単に奥まで辿り着けないのだとか。

しかし、戦える人間が7人もいればモンスターや主との戦闘も楽なのは事実。

「思ったより簡単そうですね」と瞬平が呟くが…

パヴェルはここで、もう一つ条件を出してきた。


「確かに、あなた方なら簡単に乗り越えてしまうでしょう。……そこで、最奥にいる主…アクアドラゴンと戦うのは、ルルだけにします。残りの方々は、手出しをしない方向でお願いします」

「「「何そのウォータードラゴンの亜種みたいな名前のモンスター」」」

「公式の名称だから仕方ありません。それに、生物学名ではアクアドラゴンといっても…得意とするのは氷の属性。凍てつく冷気の息吹はかなりのものですよ?」

「…らしいけど、大丈夫か?ルル」

「だいじょーブイ!…とは言い切れないけど……だけど、タフィーや皆の未来が懸かってるもん。絶対勝ってみせるよぉ!!」

「ポッ、ポポー!」


その意気だ、とルルを励ますポポ。

途中のモンスターの戦闘はミカ達がやっても構わないということで、彼女の体力を温存させつつ進むのが一番手っ取り早いだろう。

そうと決まれば、すぐに行くべし!

ミカはそう言うが、…ザウバーだけが苦い顔をしながら、同行を断っていた。


「……悪いが、俺は行かない」

「えっ、なんで!?」

「…寒いのは苦手なんだ。それに何人行っても構わないということは、誰かがここに残っていても構わないということだ」

「もーっ、ルキナの未来が懸かってるのに…自分勝手なんだから!」

「別にいいんじゃないか?コヨミも残ってるといい、ザウバー一人だと話し相手がいなくてつまらないだろうし……瞬平はこっち来いよ!」

「ええーっ!?そんなぁー酷いですよ晴人さぁぁぁん!!」



恐らく、ザウバーよりも理不尽な理由で残る機満々だった瞬平。

…彼を野放しにしたら最悪、アウデンティアから離れなくなって困る…

凛子も瞬平の手首に手錠をかけ、更に鎖の部分を紐で括って引っ張れるようにしている始末。


「それじゃあ、ファルファラ氷洞に…レッツゴー!」

「「「おーっ!」」」

「ポポ〜!」

「うう…アウデンティアを、色々見て回りたかったのに……」

「ほら、つべこべ言わないで歩く!」


嘆く瞬平、そんな彼を引きずるように連れて行く凛子辺りがカオスだったが…

彼らを見送った後、コヨミはザウバーに質問していた。


「……本当に寒いのが苦手なの?」

「どういうことだ」

「単なる理由付けなんじゃないかな、って思って。…ああ言えば、寒がりだから長いコートや手袋をつけていても怪しまれないもの」

「…その理由もあるにはあるが、寒いところが苦手なのも事実だ」

「……それは、あなたの…」




「――そこのお二人さん、ちょっとお手伝いを頼んでいいですか?」



コヨミが何かを言いかけたところへ、パヴェルがやってくる。

「お手伝い」という言葉に、2人は首を傾げながらも…

ミカ達を待っている間、暇を持て余すのは事実なので、特に疑うことなく首を縦に振っていた。

だが…

それを見たパヴェルは、魔法の力で二人の服装を着替えさせていた。

しかもそれぞれがメイド服に執事服という、偏ったチョイス。


「ちょうどよかった。実は古くからの友人でもあるギギから、彼の営むカフェのバイトが2人風邪を引いてしまったと相談を受けていたものですから」

「…待て。ちょっと待て、手伝いってまさか」

「私達に…カフェのウエイターをやれってこと…?」

「そうなりますね」

「待て待て待て待て!これはアレじゃないのか、『お帰りなさいませお嬢様』とかそういう店じゃないのか!?」

「『お帰りなさいませ、ご主人様♪』…なんて絶対無理、無理だから…!」

「あら、了承したのはあなた方ですよね?それに安心してください、あなた方の思うようなマニア向けの店ではないので」


……ザウバーとコヨミは、後悔した。

ファルファラ氷洞に行かなかったことを、ついでに、パヴェルの頼みを聞いてしまったことを。

しかし、【後悔後先経たず】とはよく言ったもので…

2人はパヴェルの魔法により、問答無用でカフェまで送り飛ばされていた。

――哀れ、次回の尺稼ぎ組(※メタ発言)…






***




ザウバーとコヨミwww

多分、コヨミは以前(=25話)のリベンジマッチ。

でもザウバーまで巻き込まれた。執事もメイドもどんとこーい!!←

そしてシャドゥ2度目の置いてけぼりw

でも、オリジンには何かあるようで…


インキュベーターのネタはさておき…

まさかのポポ族、喋ったーw

原典でも実は喋れます。魔法使いが一人前にならないと、喋れないのもガチ。

そしてルルの幼馴染も出ましたねー。



プレーンシュガーの登場で壊れる晴人w

でもコヨミの言うように、お前異世界でも食べてたじゃん!

あれか、揚げたてが食べたいって心情か!この世界のプレーンシュガーが食べたいって心情か!!←

それはさておき…

アムニスフィールド、どうやら隕石群からルキナを守るためのシールドだったそうで。

ちなみに、何歳の頃に晴人似のおじいさん(昔)に出会ったんですか。おばあちゃん。


ランドというかミカへのフラグはスルーされました(晴人によって)

字の文で済まされた「行くべし!」は、バトスピソードアイズのツルギネタ。

皆川さんとか福山さんとか、釘宮さんとか地味に豪華な声優陣で構成されているあの。

瞬平に関しては

…自由にさせなくて正解でしたね、としかw




次回は…

パヴェルが地味にインフィニティー的な話をした理由が、色々な意味で分かる回。