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タイトル未設定 - 9話:炎の雪花屋

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――ジュプトルは例のブーバーンを、追い詰めていた。

そもそも、ブーバーンが逃げ出した先は森の中…俊敏性に長け、枝から枝へと飛び移り獲物を狙うジュプトルと言う種族を相手に、相手の得意分野の場所に逃げるのもどうかと思うが。

ジュプトルはブーバーンの前に着地し、ウィザードライバーを構えながら言い放つ。


「ひいっ!?」

「…覚悟しろ、ファントム。コータスを絶望させはしない」

「ふぁ、ファントム…?」

「とぼけるな。お前は窓の外から、コータスを絶望させる機会を伺っていた…違うか!」


ピカチュウとヘイガニを乗せたオオスバメも追いつき、四方を囲まれるブーバーン。

うう、と怯えた様子で彼は周囲を見渡し…

観念した様子で、座り込んでいた。

そして、彼が取り出したのは……一枚のハンカチ。


「「「これは?」」」

「それは…その、旅館の子が落としたハンカチなんだ。何度も渡そうと機会を伺ったけど、僕、恥ずかしがりやだからなかなか返せなくて…いつも館長の近くにいるから、尚更渡しづらくて」

「もしかしてお前、――コータスにハンカチを渡す機会を伺うために…ストーカー紛いのことしてただけなのか?」

「ス、ストーカーだなんてそんな…!そんな勇気あったら、今頃ハンカチも返せてるよ!?」


見た目に反して臆病なのか、ブーバーンはヘイガニの言葉を必死で否定する。

どうやらヘイガニの推測は正しいようで、ブーバーンはただ単に、コータスの落し物を返したかっただけだとか…

「まったく紛らわしい」とジュプトルは思いながらも、まだファントムの脅威は去ったわけではなく、すぐさまポケモンタウンに戻る。

ピカチュウとオオスバメはその後を追いかけるが、ヘイガニはブーバーンのフォローを徹底していた。

かなり苦労人のカニである。


「…とりあえず、俺からコータスに返しとこうか?」

「あ、お、お願いします」

「あと、悪かったな。最近、ファントムって化け物がよく出るようになって…皆過敏になってるんだよ。でも、誤解されるような真似したお前もお前なんだぜ?」

「す、すいません。以後気をつけます…ハイ」



あのブーバーンはファントムではない。

ジュプトルが「紛らわしい」と言うのもどこか分かる、とピカチュウは思いながら、【雪花屋】に戻ろうとしていた。

一応ムクホークが気を使って【雪花屋】に戻したわけだが、その道中で狙われている可能性も少なくない。


「ムクホークがファントムってことは…ないよな。変人燕」

「それはないと思うよー。ムクホークってポケモンタウン住まいだから、失踪事件の際にいなくなっていたら皆分かるだろうし」

「ねえオオスバメさん、もっとツッコミ入れる場所あるよね?……あれ」

「――皆、大変だーっ!」


噂をすれば何とやら、話題の渦中にあるムクホークがやってくる。

どうやらコータスを送り届けてきた後のようだが、その様子はどこか慌しい。

一体どうしたと言うのか?

ジュプトル達がそう思っていると、ムクホークは息を切らしながら説明していた。


「どうしたんだ、ムクホーク」

「何かあったの?」

「ご飯?」

「先輩なんか違う。――いや先輩はどうでもいい、実は、実は【雪花屋】が火事で…!!」

「「「ええっ!?」」」




ムクホークの説明によると…

コータスを送り届けている途中で、【雪花屋】に住まうポケモン達が大慌てで川から水を汲んでいる姿が目に映る。

一体どうしたと言うのだろう、そう思っていると、彼らの目に映ったのは【雪花屋】の南棟が燃えている光景が広がっていた。

南棟は基本的に、探検隊活動を行う探険家達が仮住まいしている場所だ。当然、ジュプトルやピカチュウもここに住んでいる(借金返済も兼ねて)。

それを見たコータスは激しく動揺し、オニゴーリとユキメノコの様子を見に駆け出す。

ムクホークも消火活動に行こうと思ったが、火の回りが想像以上で、自分ひとりが加わっても大した力にはなれない…

そこで思い出したのが、ジュプトルというわけだ。


「確かに、ランドスタイルのディフェンドは土壁…それを崩して消化の手助けはできるだろうが」

「ねえジュプトル、これってもしかして…」

「ああ。もしかしなくても、ファントムの仕業だ……ゲートであるコータスを絶望させるために、【雪花屋】を焼くなんて」

「だったらジュプトルは、ファントムを倒さなきゃ!私はオオスバメさんやムクホークさんと一緒に、水・地面タイプのポケモンをできるだけ集めてくる!!」


頼んだぞ、とジュプトルはコネクトでマシンウィンガーを呼び出し、【雪花屋】に向かおうとする…

だが、そんな彼に待ったを掛けるように声を掛けたのは、オオスバメだ。


「待ったジュプトル」

「何だ変人スピード狂燕…」

「ジュプトル。増えてる、何か増えてる!」

「思ったんだけど、【雪花屋】を焼いてコータスに精神ダメージを与えられる?まあできなくはないだろうけど……むしろ彼女より精神的にダメージを食らうのは…館長だと思うんだ」

「あの鬼館長がそう簡単に絶望…、……」



――雪花屋はユキメノコと共同で営むはずだった旅館

――彼女が失踪した後も、オニゴーリはそれを守り続けていた

そのことを思い出したジュプトルは、「しまった」と声を漏らし、マシンウィンガーのハンドルを叩く。

ヤミラミ宝石店で話していたコータスの事情から、てっきり彼女が次のファントムが狙うであろうゲートと勘違いしていた。

だが…ファントムはむしろ、別のゲートに狙いを絞っていたのだ。

そして同時に理解した、……オニゴーリもゲートなのだと。

もしも彼が絶望したら、彼によって救われたコータスも絶望しかねない。ファントムを生み出すには実に効率的な方法だ。

更に、それを可能とするファントムは…


「くそっ!そういうことか…」

「どうするジュプトル、……館長…エンゲージリング嵌められる場所、ないよ?」

「そこなの!?」

「そうだな…それに、あの館長にエンゲージは色んな意味で複雑だ」

「婚約指輪もまだっぽいのにね」

「ジュプトル、心配する場所違うよ!?オオスバメさんも!ねぇどうでもいいからさっさとしよう、手遅れになっちゃうよ!!?」

「冗談言ってる暇があるなら動こうか二人とも!?」


妙な心配をするスピードボケタッグ。

ピカチュウとムクホークはそんな彼らを叱咤し、当初の取り決め通り行動する。






〜〜〜






『私ね、ここに…探検活動や長旅に疲れたポケモン達が、心や体を休める場所を作りたいの』


『ここに旅館を作って、あなたとそれをすること、それが…私の夢』


『そして、ここに住んでいるポケモン達の笑顔を見ることが……私の希望なの』



――それが、あいつの夢だった。

希望だった。

まだ探検隊制度が始まったばかりの頃、探険家を志す者の殆どは、近くの森や洞窟に住むか…少し離れた場所にある住居区で、高いポケを払いながら部屋を借りるかしかなかった。

そういうこともあってかなかなか探検隊活動は浸透せず、軽い気持ちで始めたやつは脱落していく。

ギルドと言うものがないのも、その要因の一つだろう。

それにポケモンタウンには、たくさんのポケモンが訪れる。そんな彼らが体を休める場所がないというのは、それなりに不便だろう。

…だからユキメノコは、ここに旅館を建てようと決めた。

俺もその夢には賛成だったし、何としても叶えてやりたいと思っていた。


そのために、俺も危険を冒してまで探検家となることを決めた。

ユキメノコも商店街のほうで働いて、結婚しても式を挙げることなくポケを貯めていた。

そうやって貯めたポケで、オーダイル棟梁のところの大工衆に頼んで【雪花屋】を建てられることになって…俺達夫婦だけじゃなく、周辺に住まう人達や偶然工事に立ち会った探検隊達もそれを祝福してくれた。

だから…だろうか。

この【雪花屋】には、ユキメノコの大事な想いが詰まっている。

それだけじゃない。

探検隊活動をするポケモン達にとっても、遠い場所からやってきた旅のポケモン達にとっても希望と言える場所なんだ。




―――しかし…


「おいっ、オーダイル棟梁呼んで来いッ!俺達だけじゃ間に合わねぇ!!」

「地面タイプは砂掛けを中心に火の進行を止めてくれ!北棟にまで火が燃え移ったら、完全にアウトだ!!」

「おぉい、倉庫番のカメックスばあちゃん連れて来たぞ!」


【雪花屋】の南棟は今、炎に包まれている。

偶然戻ってきたニドキングを中心に消火活動が行われ、水と地面、岩に炎タイプのポケモンが中心となって動いていた。

南棟に自室を持っていたオニゴーリも、何とかユキメノコと一緒に逃げ出し、炎に包まれる南棟を見ていた…

そこへ偶然コータスが戻ってきて、炎に包まれた建物を呆然と見ながら、声を漏らす。


「……そんな…」

「…」

「私達は何とか逃げ出せたけど…【雪花屋】が……」


ユキメノコは口で手を覆いながら、悲しそうな目を見せる。

無理もない。

やっと戻ってこれた矢先に、こんな事故が起きて。

コータスがユキメノコに何か声を掛けようとした、その時だった。



「――お前がやったんだろ、…ユキメノコ」



信じられない一言が、オニゴーリから発せられた。

その言葉にコータスはユキメノコのほうを見、ユキメノコはというと、背筋が凍るほど冷たい目で彼を見ている。


「……何を言っているの?」

「大体、都合がよすぎるんだよ。ファントムってのが現れ始めたこの時期に、お前が戻ってくるなんて…」

「オニゴーリさん、…もしかして…」

「ジュプトルが前に言ってくれた、“儀式”の日と…お前がいなくなった時期は一致している。……そして、その儀式で生まれたファントムと言う存在を知った時から…うすうすお前もそうなっているんじゃないかって、思っていた」


オニゴーリは既に、悟っていたのだ。

ジュプトルが【雪花屋】の一部を派手にぶっ壊し、とにかく分かってもらおうと、弁解をしにオニゴーリの部屋で自分のこととファントムのことを話していた。

…ピカチュウやその他のポケモンには説明なしだったのにも関わらず。

“半年前の日食の日、謎の儀式によって、自分以外のポケモンはファントムになった”

“ゲートと呼ばれる、魔力の強いポケモンを片っ端から集めて…絶望させ、ファントムにする相手側の策略だったんだろう”

“俺もどんなポケモンが集められて、どのぐらいの数がファントムとなったか分からない”

“だが確実に言えるのは、ファントムを生み出したポケモンはその場で死ぬ。そして、生まれたファントムはゲートの姿も記憶も写し取り、そいつの代わりに社会に溶け込む”


「それで、――実際にオーダイル棟梁がファントムによって絶望して、何かを生み出しかけている光景を見て…ジュプトルの話を信じた。と同時に、お前の生存も絶望的だと確信した」


オーダイル棟梁が絶望した際、彼に告げた言葉。

『何度壊れても直せるものなら、直し続ければいい』

『世の中には、直したくても…取り戻したくてもそうすることができないことなんて、たくさんあるんだ』

彼はこの時既に、ユキメノコの死を確信していたのだろう。

それと同時に、ユキメノコの姿をしたまったく別の化け物が生まれ、彼女の姿を使って他のポケモンをオーダイル棟梁のような目に遭わせていることも…

関係を修復したくても、ファントムとなったそれを相手にできるはずがない。

元のユキメノコを取り戻したくても、死んでしまった相手を生き返らせるなどできるはずがない。



「…は、あはは、……あはははははは!何だ、気付いてたの…それだったら早く言ってちょうだいよ。それなら無駄に演技なんてせずに、さっさとあんな旅館燃やしてあげたのに」


狂ったような笑いを見せ、本性を現すユキメノコ。

その姿は、ヘルハウンド…氷タイプであったユキメノコと正反対の、炎のファントム。

それを見たコータスは声を上げ、ヘルハウンドに言い放つ。


「もしかして、…オニゴーリさんを絶望させるためだけに、【雪花屋】を燃やしたんですか…!?あそこはお二人だけじゃない、あそこで暮らすポケモン皆にとって、大事な……」

『だからこそ燃やしてあげたのよ。私達ファントムは、他のポケモンにとって大事なものは全部壊したくなる…ゲートを絶望させて、仲間を増やすためならなんだってやるわ』

「それでも、……やっていいことと悪いことがあります…。ユキメノコさんと同じ姿で、…【雪花屋】を燃やして……オニゴーリさんを苦しめるなんて!」

『あなたは黙ってなさい。…それにしても…あんたもあんただわ、何だって絶望しないのよ!まだ何か足りないって言うの!?』


ヘルハウンドの言葉に、コータスはオニゴーリのほうを見る。

…そういえば、彼はまったく絶望する様子がなく、これまでのピカチュウ・オーダイル棟梁・コロトックのように紫の皹も発生していない。

どういうことなのか。

コータスもそう思っていると、ヘルハウンドに突然銃弾が放たれ、その直後にマシンウィンガーで直接ぶつかりに行くジュプトルの姿が見えた。




『ぎゃっ!?』

「ジュプトルさん!」

「…あの館長にはまだ、別の希望があるってことだろ。それが何なのかは俺には分からないし、――分かっても教えるようなことはしないがな!」

<シャバドゥビタッチ、ヘンシーン!シャバ…>

「コータス、その館長は任せた」

<ランド、プリーズ ドッドッドドドドン、ドッドッドドン!>


ジュプトルはそう言うと、ウィザード・ランドスタイルに変身。

ヘルハウンドは炎の剣を作り出すと、そのままウィザードRSを攻撃し始める…

ウィザードRSは相手の攻撃を難なくかわすと、ウィザーソードガンで再度相手を狙撃するが、陰に隠れて出てこない。

どこだ、とウィザードRSが探していると、背後の影からヘルハウンドは攻撃し、振り返ってもすぐに隠れる陰湿な戦い方。

ピカチュウやオオスバメ、ムクホークにヘイガニも水タイプのポケモンを集めるだけ集め、オーダイル棟梁を中心に消火活動を手伝う。

しかしそれでも火の勢いは収まらず、コータスはどうするべきか迷っていた。

だが…

そんな彼女に、オニゴーリがあることを頼む。


「……コータス、お前に頼みたいことがある」

「オニゴーリさん?」

「炎タイプのお前なら、あの炎の中を突っ切っても大丈夫なはずだ。…ある物を取ってきてほしい、それがこの状況を逆転できる……唯一の希望だ」

「…分かりました!」

「あっ、俺も行くぜ。水タイプもいたほうがいいだろ!」



コータスは大きく頷き、近くにいたヘイガニも状況は大体飲み込めたか、コータスに同行する。

炎が未だ広がる玄関から入ると、既に内部は焼け落ちた天井などで遮られており、どこにオニゴーリの部屋があるか分からない。

ヘイガニもある程度は内部のことが分かるが、この状況ではどこに何があるのか判断するのも困難…

そうしていると、美しい白の翼を持ったファントム・ペガサスが現れていた。


『お困りですかー?』

「どわっ!?ファントムッ!」

「…!」

『あぁ安心して、自分はどっちかというと中立。ファントムとウィザード…どっちのほうが自分にとって得か、って考えてる最中なんだ』

「…つまり、ジュプトルとファントムを天秤に掛けてるってか」

「危害を加える様子はないみたいですし…それよりもヘイガニさん、早くオニゴーリさんの部屋を探さないと!」


だった、とコータスの言葉で我に返ったヘイガニは、バブル光線で少しでも消火して道を探ろうとする。

しかし、この火の周りではほぼ無意味に近いだろう…

そうしていると、ペガサスはある小箱をコータスに投げ渡し、手をひらひらと振る。


「…これは…?」

『言ったよね、ウィザードとファントム…どっちが得か考えてるって。そのためなら、敵に塩ならぬ、ウィザードに魔宝石を譲ることだってするよ』

「って、…もしかしてこの間…オオスバメさんが持ってきた石って!」

『その中には、君達の探しているものが入っている。あ、それから』

「「それから?」」

『ヘルハウンドは影から影に移動するファントム、要するに、影に引っ込むことをさせなければいいんだよ』






〜〜〜






ウィザードはハリケーンスタイルに姿を変え、考えていた。

状況はとにかく、ウィザードHSに不利…

今は上空から様子を伺いつつ、影から出てきたら即座に狙撃するが、すぐに逃げられてしまう。

こうしている間にも、【雪花屋】は…

すると南棟からコータスとヘイガニが何とか脱出し、ピカチュウとオオスバメが声を掛ける。


「二人とも!大丈夫!?」

「それで、見つかった?」

「ああ。…館長、これでいいのか!?」

「それでいい。…それをジュプトルに投げろ!」


分かった、とこのメンバーの中で一番腕力があるヘイガニが箱を思いっきりぶん投げる。

ウィザードHSは急降下しつつそれを受け取ると、その箱の中には、青の魔宝石を使ったウィザードリングがそこにあった。

形からして、スタイルチェンジであるのは確定。

何故これをあの館長が、とウィザードHSは思っていたが、今はその場合ではないと思ったか左手の指輪を付け替える。


「…まあいい…火には、水だッ!」

<ウォーター、プリーズ スィ〜スィ〜スィ〜スィ〜♪>

<ウォーター、シューティングストライク スィースィースィー!スィースィースィー!>


ウィザードは姿を変え、ウィザード・ウォータースタイルとなる。

彼はそのままウィザーソードガンの銃口を上空に向けると、シューティングストライクの状態に入る。

水の銃弾は勢いよく空に上り、弾け飛ぶ。

その水はまるで雨のように降り注ぎ、【雪花屋】の南棟の火の勢いも弱まってくる。

「やった」と周囲にいるポケモンたちは喜び合い、コータスはオニゴーリにあることを話す。

ヘルハウンドはちっと舌打ちしながらも、こうなればウィザードだけでも倒すべきだと影の中から飛び出すが



――その瞬間を狙っていたオニゴーリの“吹雪”により、足元が凍り付いていた。

更に彼女の周辺にある影のある場所も総て氷が覆い、これでは影の中に逃げることができなくなってしまう…

まさか。

ヘルハウンドがそう思っていると、キックストライクの体勢に入っているウィザードWSとオニゴーリが言い放つ。


「…成程。飛び出してきたファントムや、周辺の地面を凍らせれば…影に隠れることはできなくなる、か」

「そういうこった。…お前がさっき降らせた雨のお陰で、思った以上に早く凍ってくれたのも事実だが」

『なっ…!』

「借金返し終わってないのに燃やしやがって。お前に修理代を請求しても踏み倒すのは目に見えているからな、――その命で返済してもらおうか!」

<コピー、プリーズ>

<<チョーイイネ! キックストライク、サイコー!!>>


ウィザードWSはそう言い放つと、コピーで分身を呼び出し、分身と一緒になってキックストライクを行う。

寸分狂わぬ見事な動きでヘルハウンドに接近し、水流を纏ったキックでヘルハウンドを捉える。

ヘルハウンドは最後にコータスのほうを見、何かを言おうとしていたが…

……その前にヘルハウンドは爆発し、消滅していた。

その様子を、木の影からメデューサが伺っている。そんな彼女の後ろから、フェニックスもやってくる。


『ヘルハウンドもやられたみたいだな?』

『…そうね。そして、これでウィザードの手元には4属性が揃った。……』

『どうした?』

『腑に落ちないのよ。……ハリケーンスタイルはともかく、フレイム・ウォーターの入手経路は大体予測がつく。けれど、…ランドの魔宝石…あれは誰が、何の目的で渡したのか……』

『やっぱ、ウィザードにベルトを渡した奴じゃねぇの?』

『それならそれでいいけど。――もしかしたら…私達の知らないところで生まれたファントムが、いるのかもしれないわね……』




何とか火は消し止められたが、【雪花屋】の南棟はほぼ全焼に近い…

今回の件に関して、オニゴーリは「自分の不注意」としてその場にいた探検隊達に謝っていた。

ピカチュウは本当のことを話そうにも、「誰も信じてくれるはずがないし、嫁の姿をしたファントムが館長を絶望させるために焼いたのも事実」というジュプトルの言葉に、口を噤んでいた。

そうしていると…

ニドキングは少し考えた後で、軽く笑って許していた。


「まあ…皆無事でよかったからいいとするか。皆もそう思うだろ」

「そりゃあ…確かに」

「燃えて困るものは置いてなかったですしね…」

「それより、ここにいる探検隊皆でお金を出し合って、南棟を早く建て直してもらわないか?オーダイル棟梁も、それでいいよな」

「あ、それ賛成ー!」

「やっぱ、住める場所がないのはキツいしな」

「俺も館長には色々世話になってるからなぁ。橋もヘイガニが持ってきてくれた材料で完成しつつあるし、同時進行でも問題ねぇだろ」


最終的には、その場にいる探検隊全員がお金を出し合い、南棟を再建させようと意気込む始末。

オーダイル棟梁も前にノームの件でオニゴーリに世話になっているのもそうだが、基本的に仕事は断らない性分で…ここにいるポケモン達の思いに動かされた部分もある。

そんな光景を見て、ピカチュウとムクホークはほっと安心したような顔を見せる。

…と同時に、ノーマルランクである上にジュプトルが以前エクステンドやビッグで破壊したことを、ピカチュウは全力で土下座していた。


「ところで館長、……前にジュプトルが遠慮なくぶっ壊しちゃって申し訳ありませんでした…!あとそのときの借金でいっぱいいっぱいで、お金出せませんごめんなさい…!!orz」

「いや…それはお前が土下座することじゃないから。後、気持ちだけで充分だから…」

「それよりも館長、この指輪だが」

「ジュプトルはまず先に、過去の自分の行いに心から謝ろうよ!?」



ピカチュウにギャアギャア注意されつつも、ジュプトルはオニゴーリにウォーターウィザードリングを見せる。

何故オニゴーリがこれを持っているのか。理由は、大体察しがつく。

前にヤミラミから聞いた、生前のユキメノコへの「婚約指輪」なのだろう。

そう考えれば、以前火の魔宝石を見たときに…オニゴーリが何かを思い出したくないような、つらい顔を見せたのも納得が行く。

しかし、問題はこのウィザードリングを作るための魔宝石を、どこで手に入れたか。


「石を手に入れたのは、そうだな…日食の日の1ヶ月前だ。俺は【凍てつく大地】を越えた先にある、【極寒の霊峰】で探検家として依頼の品を探していた」





氷タイプのオニゴーリにとって、【極寒の霊峰】での依頼は容易いものだった。出身地に近い場所なら、尚更。

依頼の品も難なく見つけ、ポケモンタウンに戻ろうとしていた

…その時だった。

少しずつ気候が暖かくなりつつある影響か、氷の崖が崩れ、オニゴーリに襲いかかろうとしてきた。

――こんなところで

オニゴーリは死を覚悟した。しかし、どんなに時間が経っても自分に氷が落ちてくる気配はない。

ゆっくりと目を開けると、そこにあったのは謎の白い人影。

そして…上空で留まる、氷の塊。


『…あんたは?』

『君は探検家か』

『そうだが…あれは一体』

『君に頼みがある。――この石を、ヤミラミ宝石店に持って行ってほしい』


白い存在はオニゴーリに、水のように美しい青色の石を渡す。

石は二つあり、どこかに転売すれば高い金になるだろう…

更に白い存在は、この石でできた指輪は好きなように使って構わないと言い残し、姿を消していたそうだ。





「――俺が思うに、そいつは『俺が何のために指輪を作っても、必ずウィザードの元に辿り着く』自信があったから…そうしたように思える」

「要するに、その白い魔法使いに踊らされていたも同然…ということか?」

「そうなるな」

「魔宝石は二つ、そしてできたのはこの2つの指輪…か」


ジュプトルはそう言いながら、別のリング…ブリザードウィザードリングを取り出す。

しかし、それを見たオニゴーリは目を見開くばかり。

ヤミラミが渡しそびれたから当然とジュプトルは思っていたが、オニゴーリの驚きは別のところにあった。


「…おい、もう1つの指輪は?」

「もう1つ?」

「ああ。箱の中に、さっきのやつと対になる指輪があったと思うんだが」

「いや、箱の中にあったのは…ウォーターリングだけだ。あんたが貰った魔宝石からできたのは、ウォーターリングと…ヤミラミが渡しそびれた、ブリザードリングじゃないのか?」

「違う。俺はヤミラミから、出来上がったリングを2つ受け取っていた…だからお前の手元には、そのリングもないとおかしいんだ」

「……何…?」




その頃…

ペガサスは人気のない岩場にある、1つの大岩に座りながら指輪を眺めていた。

――ウォータードラゴンウィザードリング。

ヘイガニやコータスに箱を渡す前に、予めこのリングだけを抜き取っていたのだ。


『まだこのリングを使うには、ウィザードは経験が足りなすぎる。…幹部の一人でも倒せるようになったら、ってところかな』






***




ウォータードラゴンwww

お前のお預け率高すぎんだろーが!

…まあ、ジュプトルのウィザードはハリケーンがデフォルトなので、ハリケーンドラゴンを最優先しないといけないのも事実ですが。

でもこれで、ハリドラ→ウォドラは確定?


ブーバーンw

なんという人騒がせなww

そして迷惑を掛けたポケモンへのフォロー担当・ヘイガニwww

…お前いい奴すぎだろ…

しかも館長へのエンゲージで悩むジュプトルとオオスバメお前らw



はい、今回のファントム…ヘルハウンドはユキメノコでした。

というか…

・嫁がファントムを生み出して死んだ(コロトックルート)

・嫁との思い出である雪花屋を焼かれた(ピカチュウ+オーダイルルート)

・ヘタをしたら済んでいる客との信頼関係を失いかねない惨状(オーダイルルート)

この絶望的な状況で絶望しない、オニゴーリ館長マジ館長…!←

特性は精神力ですか、そうですか。

つか、オニゴーリ館長にはちゃんと説明したのなジュプトル…

第一…雪花屋はユキメノコの希望であって、オニゴーリの希望も雪花屋とは限らないんですよねー。

オニゴーリ館長にとっての「別の希望」は、また追々。


謎のファントム・ペガサス。

ちなみに、ペガサスは本編のグレムリンみたいなポジションです。

いや、グレムリンよりはタチが悪くないけどw

ややウィザード寄りで力を貸しているのは、ウィザードとワイズマン側の力量の差が大きすぎるからってところです。

ウォータードラゴンをパクったのも、ウィザードの力量を見定めるためですね。

ところで、棟梁とニドキングさんもヘイガニとどっこいどっこいでいい人すぎる。




次回は特に予定がない。