ヨノワール、そしてブイゼルから全ての話を聞き終えたジュプトルたち。
神として伝えられていたアルセウスが、白い魔法使いだったこと…
しかし何よりも、彼が既にこの世にいないことを聞き、誰もが口を閉ざしていた。
何かの間違いだと言おうとしても、ブイゼルが肩掛け鞄から取り出したハーメルケインを見て、誰もがその事実を受け入れざるを得なくなる。
「…本当に、死んだのか」
「ああ。私達の目の前で、アルセウスは力尽きた…他の誰と見間違えようものか」
「だからこそ俺達は、何としても守らなくちゃいけないんだ。他でもない、この世界を…そして【賢者の石】を」
「――ですが、その賢者の石と言うのは結局何処にあるんですか?どうやってそれを守ればいいんですか」
ポポッコからの質問に、バンギラスやミロカロスも頷く。
賢者の石は、アルセウスによってゲートの中に隠されている…
ワイズマンもこれまでゲートを狙っていたのは、ただ同胞たるファントムを増やすだけでなく賢者の石探しを兼ねていたのだ。
彼らが目を付けているゲートも残り少ないだろう。
となれば、まず狙われるのは…絶望しないことに定評のあるオオスバメ。
リザードンはオオスバメを見て真顔になりながらも、「そう都合よく近くにあるはずがない」として諦めに近い溜息をついていた。
「……お前だったら、本当に楽なんだがなぁ」
「えっ?何が!?」
「何でもねぇよ。流石にアルセウスだって、分かりやすいところに隠すはずがねぇ…なんつったって、コータスの…セイレーンの記憶を消して【雪花屋】に預けるために、敢えて館長を魔法使いにしてこなかったんだぞ」
「魔法使いが1つの場所に留まり、ゲートでもないただのポケモンを守るのは不自然。その不自然さを出さないために、実力的に問題のない館長を選んだのでしょうけど…」
「……神様の考えることはよく分かんねぇなぁ。ある程度未来は見れるんだろ?じゃなきゃ、ジュプトルじゃなくて館長に青の魔法石ってのを渡すはずがねぇ」
リザードンの横で、ミロカロスは溜息をつきながら乾燥させたチーゴの実の葉を煎じた紅茶を飲んでおり、ギャラドスは唸りながらこちらもコーヒーを飲む。
しかしギャラドスの言っていることには、ヘイガニを始めとした他のポケモン達も疑問に思っていたことだろう。
『何故、未来を予測できるのに大きな対策に打って出なかったのか』
そのことに関しては、ヨノワールの方が説明する。
「これは仮設でしかないのだが…アルセウスはプレートを奪われ力の大半を失っていた。彼にできること自体は少なく、未来を見れても僅か先のものでしかない」
「「「…」」」
「その僅か先の未来で『ジュプトルに無事青の魔法石の指輪が渡される』光景を見て、オニゴーリ館長に魔法石を渡した。ワイズマンがプレートの力の一部を使って作り出したドラゴタイマーが、『ジュプトルの手に渡ってしまう』未来も見えていた」
「…確かに」
「未来は見れるが、どう足掻いても変えることができなかった。――アルセウスの力が殆ど奪われていたこともそうだが、大きな理由としては“その未来自体を【変えることができなかった】” …所謂【運命(さだめ)】には流石の神も干渉することができなかったというところだろう」
過去の世界で時の破壊を食い止めたことによる未来世界のポケモン達の消滅を、食い止めたのはアルセウス自身だ。
そんなアルセウスが、干渉できないとなれば…
ワイズマンに力を…プレートを奪われたこともそうだが、彼すらも変えることのできない、因果律と呼ぶにも相応しい運命は確かに存在しているのだろう。
そもそも絶望の因子は、暗黒世界を乗り越えたポケモン達にランダムに振り分けられた異分子。新たに世界が構築されたことによる変化の定め。
それを変えることなど簡単なことではない。ましてや、それに対する対抗策を作り終えた所にワイズマンとキマイラに襲撃されれば…
「…とにかく、俺達がすべきなのは一刻も早くファントムの根城を見つけ出し、叩き潰すことだ」
「確かにな。ファントムの数は残り少ないと思っていた方がいい、ビースト・メイジ・ソーサラー…そしてウィザードの4人が揃っている内に、ワイズマンを倒すべきだろう」
今更変えられなかったものを嘆いても仕方がない。
ジュプトルは話の筋道を切り替え、バンギラスもまた彼の意見に納得するように頷き返す。
残るファントムは、ワイズマンとメデューサを除いても少ないだろう。
ジュプトルも魔法使いになってから半年間、マシンウィンガーと共に世界中のファントムを見つけ次第倒していた。
それよりも前に覚醒したブイゼルに至っては、ファントムを見分けられる目を持っているのだ。当てのない旅だったジュプトルよりもより効率的にファントムを見つけ、倒していたことだろう。
それを考えれば、自分達の知らないところで勝手に増えない限りは…まだこちらに分がある。
その際ネックになるのはキマイラの問題であったが、リザードンにエンゲージして彼の中のキマイラを倒すという手段も残っている。
――最悪なのは、それをできるのがジュプトルのみであること…だが。
「そ、そうだよね。…せっかくここまで来たんだもん、皆で最後まで一緒に戦えば、何とかなるよ!」
「そうそう!ピカチュウの言う通り!!」
「ただ…万が一、ファントムがポケモンタウンを襲って来た時のことを考えると、最低1人は残っておく必要があるかもしれないぜ。俺達の拠点はバレバレなんだし…」
「確かに。町のポケモン達のことも考えると、全員行くのはむしろ得策ではありませんよね」
「でもよ、いざって時にはジュプトルのファイナルスタイルがあるんだぜ?今ならワイズマンも簡単にぶっ飛ばせるだろ!」
ピカチュウは何とか自分を奮い立たせるように言い、オオスバメも呑気に賛同。
しかしヘイガニとコータスは不安げな様子を隠すことなく、また、ポケモンタウンが襲撃された時のためにも魔法使いが最低1人は残っておく必要があると言う。
一方で、リザードンはこれまた呑気にジュプトルの肩をバシバシと叩きながら言い放つ。
確かに、ウィザードラゴンを倒されたジュプトルが再び希望を取り戻し、立ち上がった際に産まれたファイナルウィザードリング…
レギオンを圧倒した時のあの戦闘能力はかなりのもので、ソーサラーにすら匹敵するだろう。
だが…
だからこそピカチュウは、それが不安で仕方なかったのだ。
この不安がどうして心の中にあるのか、分からない。
それでも、不安に思わずにはいられないのだ…ジュプトルの中のファントム、ウィザードラゴンの力が増してきていると白い魔法使いに言われていたのを思い出せば、尚更。
(何もないって信じたい。ジュプトルは大丈夫だって信じたい、でも、……やっぱり、不安だよ…)
出来ることなら、残る方の魔法使いにはジュプトルが残っていてもらいたい。
戦力ならばオニゴーリがいれば大体何とかなるし、メイジやビーストだっているのだ。
ジュプトル一人がこれ以上戦う必要はない…
しかし、ピカチュウはそれを口に出すことはできなかった。
(ジュプトルは皆の希望を、ミライ達の希望を守るために戦っている。それがジュプトル自身の願いで、魔法使いになった理由で、――ジュプトルの希望なんだ…)
ジュプトルにこれ以上戦ってほしくない。
中のファントムの力を使ってほしくない、それが無理でも、せめてファイナルスタイルだけは使ってもらいたくない。
…だがそれは、ピカチュウ自身のエゴなのだ。
もしかしたら皆もそれを望んでいるのかもしれない。だが、望まない者も当然いる…ジュプトル本人だ。
ジュプトルは何があっても、戦い続けるだろう。文字通り、命が燃え尽きるまで。
(もしジュプトルとワイズマンが戦うことになったら、…死んじゃうかもしれない)
(勝ったとしても、ジュプトルの希望よりもドラゴンの力の方が強くなって、ワイズマンよりも強いファントムを生み出しちゃうかもしれない)
(だけど、ジュプトルはそれを覚悟で戦っている)
(私は止めたい。止めたいけど、――止められないよ…)
(力で敵わないからとか、そんなのじゃない…今までジュプトル自身が、どれだけ自分の身を犠牲にしてまでゲートのポケモン達を救おうとしているのか。知っているからこそ…止められないんだ……!)
(だからこそ、私は…私は……)
――バン
雪花屋の扉を、誰かが勢いよく開く。
一体誰でしょうかとコータスが様子を見に行くと、その数秒後に彼女の声が聞こえてくる。
「大丈夫ですか」「しっかりしてください」と、異常事態を知らせるには充分だ。
ジュプトルやピカチュウ、ポポッコたちが様子を見に行くと…そこにいたのは、スピード・デリバリーのムクホーク。
しかしかなり衰弱している様子で床に伏せており、それでも、ジュプトル達を見て掠れた声で話し始める。
「「「ムクホーク!?」」」
「う…、……皆、さん」
「一体何があった?まさか、ファントムが…」
「いえ、…ポケモン…です。でも、あんな強いポケモン…なんて……、…ポケモン、タウン…が」
ムクホークはそう言い残すと、そのままガクリと力尽き動かなくなる。
オオスバメやピカチュウは必至で彼を起こそうとしていたが、ヘイガニが確認したところによると、何とかまだ生きているとのこと。
しかしそれでも激しく衰弱しており、危険な状態であることに変わりはない。
「一体どうして」とミロカロスが呟くと同時に、――隕石が落ちたような爆音が響き渡る。
流石にこればかりは全員飛び出すようにして雪花屋を出、ポケモンタウンのある方角から激しく煙が上がっていることに気付く。
…と同時に、ブイゼルはぞくりと背筋が凍るような悪寒を感じ取っていた。
「うそ…ポケモンタウンから、火が…!?」
「…!?…なんだ、これ…」
「どうした、ブイゼル?」
「町のある方角から、嫌な気配を感じるんだ…この距離からでも分かるなんて、相当力のあるファントムだぞ…!?」
「――まさか!」
ジュプトルが叫ぶよりも速く、リザードンが大きな翼を使って飛行し、ポケモンタウンまで飛んでいく。
オオスバメもムクホーク以外のスピード・デリバリーのメンバーが心配になったのか、その後を追う形で飛び…
ミロカロスやギャラドス・ヘイガニは消火活動に、バンギラスはリザードンの援護に、ポポッコはポケモン通信局の記者達の安否を確認しにポケモンタウンへと急ぐ。
コータスは、恐らくここに残ってムクホークを介抱することになるだろう。
雪花屋を攻めて来ないとは限らないため、必然的にオニゴーリもここに残ることになる…が、暫く経ってもジュプトル達が戻らないようなら自らも打って出ることも止む無し、と話してくれた。
ブイゼルはライドスクレイパーに跨り、ジュプトルも久々にマシンウィンガーを呼んで現場に向かおうとするが…その際ピカチュウに、こう言い放つ。
「…ピカチュウ、お前は残っていろ」
「なんで!?私だって…」
「最悪、コータスの力を借りるということにもなりえるかもしれないだぞ!そうなった際、誰がムクホークを…」
「だけどポケモンタウンの方には、もっと大勢の怪我をしているポケモン達がいるかもしれないんだよ!?……お願いジュプトル、戦いの邪魔は絶対にしない…だからせめて、別の形で私も、私達も戦わせて!」
「…それはお前が、探検隊だからか?」
「探検隊とか、魔法使いとか関係ないよ!――私がやりたいからやるの、ファントムと戦えなくても私にできることだから…やらなくちゃいけないの!!」
ジュプトルとしても正直、ピカチュウは必要以上に巻き込ませたくない。
もしファントムが大勢で攻めてきた場合、命を失う危険があるのは…ピカチュウだ。
いくら探検隊としても1匹のポケモンとしても、(主にミロカロスに扱かれたことによって)強くなってきたとはいえ…魔法使いである自分とこれまで深く接して来て、ファントムがまず利用しようと考えるのはピカチュウの命を盾に取ること。
最悪、ジュプトルを絶望させるために殺す…ということもあり得るだろう。
…それでも。
それを覚悟のうえで、自分にできることをしたいと言ってきたピカチュウ自身の『強さ』を、無碍にすることはできない。
初めて会った時の彼女とは考えられないほど、ピカチュウは強くなってきている。特に、心が。
だからこそ今のピカチュウは、ジュプトル自身と重なって見える。
この世界のポケモン達のために自分ができることは何かを考え、限られた命を精一杯煌めかせようとしてきた彼だからこそ…ピカチュウの気持ちが痛いほど分かるのだ。
本当は残したい。
セレビィを守ることはできなかった、だからこそせめて、ピカチュウだけは守りたい。
だが…
「…それは俺自身のエゴ、か」
「え?」
「分かった。だが、約束しろ…決して無茶はするな!」
「……うん!」
ジュプトルの言葉にピカチュウはパッと笑顔になり、マシンウィンガーの後ろに乗る形でポケモンタウンに向かっていた。
しかし、そんな彼らの背を見ながら…
雪花屋に残ったコータスとオニゴーリは、不安げに話していた。
「…大丈夫でしょうか」
「まあ、心配ではあるが…町の方は被害次第だな。だが、それよりも…」
「それよりも?」
「…いや。まずはムクホークの介抱だ、1つでも多くの命は救いたいってのはこっちも同じだからな」
「そう…ですね」
納得したように頷きながら、コータスは館の中に戻っていく。
だがオニゴーリはと言うと、何かを悟ったような顔で…燃え上がるポケモンタウンを見て、呟いていた。
「――“希望”ってのは、どうしてこうすれ違うものなのかね」
〜〜〜
上空から見たポケモンタウンは、凄惨たるものだった。
家という家は燃え、店や大きな建物はまるで嵐が通り過ぎた後のように無残に壊されている…
中には建物の間に下敷きになっているポケモンがおり、軽傷で済んだポケモン達が必死で彼らを救助しようとしていた。
その様子を見ながらリザードンは「これはヒデェ」と呟き、ブイゼルも、ライドスクレイパーを走らせファントムの気配を探る。
…だが…
次の瞬間、強力な磁場……いや、念動力とも言うべきだろうか。
それによってリザードンとブイゼルは地面に引き寄せられ、激しく叩きつけられてしまう。
幸いこれで外傷を負うほど柔ではないためか、2匹ともどうにか立ち上がる。
――するとそこには、見たこともないポケモンがいた。
まるで血管を連想するような管を首筋に持ち、白と紫のボディ…そして何よりも、同じポケモンかと疑問に思うほどの邪悪な魔力。
「…あいつだ!さっき感じ取ったファントムは…」
「なんだと…!?」
「――ほう、貴様、ファントムを見れる目を持つのか。残念だな…その目をこちらが持っていれば、セイレーンを簡単に見つけることはでき…未だ覚醒していないゲートをファントムへと変えられたただろうに」
「その口ぶり、テメェが親玉と見て間違いなさそうだな」
「というより、これが親玉級じゃなかったら何なんだよ。…ジュプトルはまだここまで行っていない分、まだ救いはあるってことか…」
そう言いながら、互いにドライバーを構えるリザードンとブイゼル。
遅れる形でヨノワールやバンギラスも合流し、見たこともないポケモンと対峙する2匹の背中を見ていた。
「テメェを食えば、暫くキマイラの野郎も大人しくなるだろうな!」
「――ゴールデンボイス、黄金の声で…敵も味方も魅了する……閃光のメイジでーす!ヨロシクゥ!!」
「「「おいそこ!」」」
「いや、こういう時にこそ言わせてくれよ…こうでもしてないと、プレッシャーに押し潰されそうなんだ」
「…まあ、そりゃそうだな…。――宇宙で一番熱い男、灼熱のゼロ!宇宙の悪を焼き尽くす!!」
「「おいライダー名を言えライダー名を!!」」
「随分と呑気なものだな。…我が名はミュウツー、そしてファントムが長、ワイズマン…掛かって来るがいい、私はこのままでも充分だ」
ファントムになるわけでもなく、ポケモンの姿のまま戦おうというそれに…ヨノワールやバンギラスは、得体の知れない恐怖を抱いていた。
尤も、この恐怖はメイジも言っていた『プレッシャー』によるものだろうが…
ビーストはダイスサーベルを構え、早速ミュウツーに切りかかる。
しかしミュウツーは掌を広げて正面に突き出しただけで、ビーストの動きを完全に止めてしまう。
ぐぐ、と力を入れても微動だにする様子はなく、――ミュウツーが軽く手を払う動作をすればビーストもまた、彼が手を払った方向へ一直線に飛ばされる。
その先にあったのは廃墟と化した民家の1つで、ただでさえ壊されていた壁が崩される結果になっていた。
「…ぐあああっ!?」
「リザードン!」
「古の魔法使いもこの程度か。…貴様はどうだろうな、万能の魔法使い」
「くそっ!」
<イエス! ライトニング、アンダースタン!!>
メイジはコモンリングを指にはめ、強力な雷を放つ。
しかしミュウツーは紫色の障壁を周囲に張り巡らし、それが反射効果を持っていたのか逆にメイジが雷を食らう結果となる。
跳ね返した際に倍にして返しているのか、威力は比べ物にならないぐらい強い…
一瞬にして魔法使い2人が倒され、ミュウツーはそんな彼らを見てフッと鼻で笑う。
「やはり、貴様らでは話にならないか」
「く、そ…!」
「まだ、やれるってぇの…!」
「やれやれ。雑魚の相手をしている暇などないのだが」
「「!」」
ミュウツーはそう言い放つと、メイジとビーストの体を浮かせる。
すると…
今度は先程とは比べ物にならない威力で2人を地面に叩きつけ、その衝撃で地面が軽く陥没してしまう。
激しく体を叩きつけられ、ビーストもメイジも動かなくなる。
そこへ丁度、ピカチュウを降ろして強い魔力のする方へとやって来たジュプトルが…マシンウィンガーから飛び降り、勢いを付けたバイクをミュウツーに突進させていた。
…しかしミュウツーは自分の念動力を最大限にマシンウィンガーへと集中させ、バイクはぐしゃりと潰されただの鉄の塊となってしまう。
「チッ、やはりこの程度では倒せないか…」
「ジュプトル!…気を付けろ、奴はワイズマン…アルセウスから奪った【不思議なプレート】の力でエスパーの力を高めているようだ!!」
「ほう、漸く来たか…指輪の魔法使い。貴様はどれだけ私を楽しませてくれるだろうな?」
「生憎と、貴様を楽しませるつもりは…俺にはない!」
<ファイナル、プリーズ! エフ・アイ・エヌ・エー・エール、ファーイナールホープ!!>
ワイズマン、と聞いたジュプトルは…
ここで確実に倒すべく、ファイナルスタイルへと変化させていた。
ファイグラスブレードとウィザーソードガンを両手に構え、目にも止まらぬスピードでミュウツーに切りかかる。
ミュウツーは先程のビースト同様に動きを止めようとするが、その前にファイナルスタイルが相手の背後に回り込み、素早く斬り上げる。
寸前のところで自身の体に薄い防御壁を掛けたお陰で軽傷で済んでいたようで、ミュウツーは氷のように冷たい瞳をファイナルスタイルに向けながら言い放つ。
「フッ、流石、ファントムと完全同化して戦っているだけある。その力…実にいい」
「……」
「…完全同化…だと?」
「どういう、ことだ…おい!」
「当然だろう。今の指輪の魔法使いは、自身の中にあるファントムと肉体も精神も同化させて戦っている…そこの万能の魔法使いなら分かるだろう?今の指輪の魔法使いが、どれだけの力を持っているのか」
ミュウツーに訊ねられ、メイジはどうにか起き上がりながらファイナルスタイルを見る。
――先程感じ取った物よりも、魔力が次第に強くなっている
先程見たジュプトルの中のドラゴンの魔力は、セーブされているためか今より強くはなかった。
だが、ファイナルスタイルは。
ウィザードラゴンと完全同化しているという話が本当ならば、ある意味セーフティが外れている状態。
しかも戦えば戦うほどその魔力は強くなり、…ドラゴンそのものと化すのにそう時間は掛からないだろう。
しかし【最初から知っていた上で】戦う覚悟を決めたファイナルスタイルは、ファイグラスブレードを構え…ミュウツーに言い放つ。
「…ならば、俺のドラゴンが出てくる前に貴様を倒せばいいだけの話だ」
「く、くくく。…できるかな?」
ミュウツーはおかしそうに笑いながらも、その姿を変貌させていく。
色や形状自体は、ミュウツーと呼ばれたポケモンの姿にも近い。
しかし、その得体の知れない恐ろしさはこれまで出会ったどのファントムよりも…強い。
戦いの場にはヘイガニやオオスバメもやって来ており、ヘイガニは目の前の光景を見て「どうなってんだ」と呟くことしかできなかった。
ファイナルスタイルは二振りの件で連続攻撃を行うが、ワイズマンはそれら全てをかわしている
――いや、強力な魔力で攻撃の軌道を逸らしているのだ。
『惜しい、実に惜しい。…折角ファントムと完全同化しても、その力を扱いきれていない…』
「…くっ!」
『その程度で私を倒そうなど、片腹痛い!』
「それは…こっちの台詞だぁッ!」
<ハイパー、ゴーッ! ハイハイ、ハイ、ハイパー!!>
<マグナムストラーイク!>
ビーストはどうにか立ち上がると、ビーストハイパーへと変身。
ミラージュマグナムを構え、最大の一撃を放つが…
ワイズマンは攻撃の弾道を途中で止めたかと思えば、それを2分割する形で後方に飛ばす。
対象はヨノワールとバンギラス、ヘイガニとオオスバメの2組。
「しまった」とビーストハイパーは叫び、ファイナルスタイルも彼らを守るべく“ディフェンド”の魔法を使おうとしていたが…
「な…!」
「――ブイゼルッ!?」
「……う、ぐ…」
メイジがバンギラスとヨノワールを庇うかのように、その攻撃を正面から受けていた。
そのダメージは計り知れず、メイジは変身を解除してその場に倒れる…
オオスバメとヘイガニに関しては、オオスバメがヘイガニの頭を掴んで跳び上がることでどうにか回避。
しかしメイジの奇行を見て、ワイズマンは首を傾げる。
そんな彼に対し、「よくも」とビーストハイパーはダイスサーベルを、ファイナルスタイルはファイグラスブレードとウィザーソードガンの攻撃をワイズマンに与えようとしていたが…
ワイズマンの周囲には黒い闇の塊が発生し、それはまるで鋭い棘のようになってファイナルスタイルとビーストハイパーを襲う。
ビーストハイパーもまた、先程のダメージが残っているせいか変身を解除し、倒れる。
ファイナルスタイルはどうにかまだ立てるようだが、戦いが予想以上に長引いてしまったためか、彼の心臓は大きく跳ね上がり…胸が締め付けられるような感覚に襲われる。
「くそ、……ぐうっ!?」
「「「ジュプトル!」」」
『まだドラゴンの力を抑えようとするか。…それで私に勝てるとでも?完全にドラゴンに身を委ねれば、私に勝てるだろうに……それとも、仲間を痛めつければそうしてくれるかな』
「なっ…」
『そこのオオスバメは【賢者の石】の可能性も残っているが…残りは、消えてもらおうか』
ワイズマンは先程の闇を巨大な剣の形に変形させ、その剣は真っ直ぐにバンギラスとヨノワールを狙おうとする。
その際、ブイゼルは掠れた声で「やめろ」と叫ぶが…
<リフレクト、ナウ>
――その窮地を、ソーサラーの放つ魔法の障壁が救っていた。
剣は完全に消えたわけではなく、障壁を突き破るが…
威力自体は先程よりも大きく下がっていたのか、ディースハルバードの一撃で叩き斬られる。
「「「館長!?」」」
「…時間掛けすぎだろお前ら、代打便りにしてんじゃねぇぞ」
『そういえば、貴様もいたか…絶望の魔法使い』
「た・そ・が・れ!…まあ、ファントムに関しちゃ間違ってないし…どうせならテメェも絶望させてやろうか?フリーザもどきが」
『フッ…ならばこちらも、貴様を絶望させるとしようか?』
「やれるもんなら…な」
それだけ言うと、ワイズマンは闇の剣を作り出し…
ソーサラーが振るい上げたディースハルバードを、受け止めていた。
そのまま激しい鍔迫り合いが続き、均衡を先に破ったのはワイズマン。
ソーサラーの周囲に無数の黒い闇の塊を発生させ、ビーストとメイジに致命傷を負わせた鋭い槍状になってソーサラーに襲い掛かる。
…が、ソーサラーはそれら全てを“フィンブル”で凍らせ、ディースハルバードを一閃し氷の槍は呆気なく砕け散っていた。
『惜しい…実に惜しい。戦闘能力ならば他の魔法使いよりも強いだろう、だが、――中のファントムが進化の高みにいない…君さえよければ、ドラゴタイマーに匹敵するものを作ってやれるが?』
「悪いが、怪しい勧誘は凍らせて砕けってのが持論なんでね」
『実に残念だ。――ならばここで、死ね』
「テメェがな!」
――それだけ言い合うと、再びワイズマンとソーサラーは互いの武器を激しくぶつかり合わせていた…
***
結論:館長!あんたが戦ってください!!
…と言っても、やっぱりジュプトル復帰までの「代打」って予定でしたしねぇ。
退場はしないまでも、次回がソーサラーの最後の戦いにしてやりたいところです。
あくまでも、ウィザダンにおける最後の戦いですが。
(この時点と言うか、もはや1話から漂うオニゴーリ館長の生存フラグ)
オオスバメ=賢者の石
…ってことは流石にないですよねー!
ちなみに賢者の石の正体を知っているのは、オオタチとアルセウス、そして…
アルセウスも大がかりな対策を取れなかった理由は、まあ色々ありますしね。
それに神様が関与しすぎても碌なことになりませんので…聞いてるかディケブラワールドよ。
ピカチュウとジュプトル…
やっぱこの二人、似てる部分はあるんですよねぇ。
相手が危険な目に遭うことを止めたい。だけど、それを止めることは自分にはできないから受け入れるだけ…
館長とコータスがどっちか確実に折れる関係なのは、ぶっちゃけ【オニゴーリの弱みがコータス】であることもそうなんですが、【コータスの弱みがオニゴーリ】というのもそうなんですが…
――最大の理由は、【ぶっちゃけどっちもある意味強すぎる】からだと思います。セイレーンは実質ファントム最強の能力保持者ですし、ソーサラーは最凶の魔法使い。
ミュウツーがワイズマンって言うのは最初から決まってました。
いや、だって、…色が!
どう足掻いてもミュウツーにするしかなかった!!
多分同じ題材でウィザード×ポケモンやろう!って思った場合、高確率でミュウツー=ワイズマンにすると思うわ!!!(偏見)
ワイズマン…強すぎますね…
ただそのワイズマンに食い下がるどころか、「もうそのまま倒せるんじゃね?」な雰囲気を漂わせる種族値ALL80とは一体。
そりゃ確かにフィオネと同じ種族値ですが。
次回!
…館長の無敗っぷりって、明らかにサトシのオニゴーリそのものじゃねぇか…
(ファントム側が途中撤退したことに関しては引き分け扱い)