この日は、雨だった。
鳥ポケモン達を多く有する【スピード・デリバリー】は、このような場合専用の雨合羽を着て仕事をすることになる。
羽が水を吸って重くなり、思うように飛べなくなるからだ。
当然、雨合羽を着ていても飛びにくいことに変わりはなく、必然的にペリッパーのような雨に耐性のあるもの・フワライドのように鳥ポケモンではないものの仕事量が多くなる。
しかし…
オオスバメだけはいつもと変わらないスピードで、安定した配達と依頼の更新をこなしていた。
「よーっし、今日のノルマ達成ー!」
「先輩早いですね!?…正直、そのスピード…羨ましいですよ……」
「俺らスピデリの生命線だもんな、何気に…」
まだ正午前だというのに仕事の最低限のノルマをこなしたオオスバメに、ムクホークやヤミカラスは驚くばかり。
【スピード・デリバリー】は速さが命、とはいえ、ポケモン離れしたスピードで…しかも自分で進んでノルマ外の仕事まで引き受けるオオスバメには、誰もが舌を巻く。
そうしていると…
所長のヨルノズクがやって来て、オオスバメを見つけるや否や、小包の配達を頼んでいた。
「オオスバメ。帰ってきていたのか」
「「「所長!」」」
「ちょうどよかった、ある場所への配達を頼みたいんだ。依頼人は、お前を名指しで指定していた」
「どういう人でした?」
「う…む。不思議な話なのだが、実は私が所長室で仕事をしていると…物音が聞こえてきて。気付いた時には、いつの間にかこの小包が置かれていたのだ」
「へぇ…随分と不思議な話もあるもんですね」
「それ、大丈夫なんすか?…何か、やばいシロモノとかじゃあ…」
不思議そうに首を傾げるムクホークとは対照的に、ヤミカラスは訝しげな顔で小包を見ていた。
ヤミカラスの言いたいことはヨルノズクも分かっているのか、小さく頷く…
笛の音が聞こえてきて、気付けば得体も知れない荷物が置かれていた。
…しかも、箱の下には『オオスバメに届けさせてもらいたい』という手紙つきで。
もしかすれば、彼の言うようにやばい物ではないのか?
そう思っていると、受け取り先の名前を見て…オオスバメは「あぁ」と声を上げていた。
「これ、ジュプトル宛の荷物だ。じゃあ大丈夫ですよ」
「ジュプトル?」
「ヤミカラス先輩は知らないんでしたっけ。最近噂の、指輪の魔法使い」
「ああ…この間、配達を手伝ってくれたあのジュプトルか。……本当に大丈夫なのか?もしかすれば、彼を狙った危ない荷物なのかも…」
「大丈夫…だとは思いますよ。俺も過去に何度か、人に頼まれて荷物を運んだことがありますし。それもジュプトル宛で」
だから心配要りませんって!と言うオオスバメ。
ヨルノズクやヤミカラスは、一抹の不安を感じていたが…
念のために誰かを同行させたほうがいいと思い、ヨルノズクはムクホークに頼んでいた。
「しかし、念を押しておくに越したことはないだろう。ムクホーク、オオスバメについていってやってくれ」
「早い話が、ちょっと早めの休憩だな。その間、お前の仕事は俺がやっといてやるから…戻ってきたら俺の仕事手伝えよ」
「ありがとうございます、ヤミカラス先輩」
「うーん、本当に大丈夫なんだけどなぁ。まあいいや」
〜〜〜
雨の日の依頼は、【ブレイブス】の得意分野だ。
と言うのも、水タイプであるヘイガニ・ミロカロス・ギャラドスのいる【ブレイブス】は、水の技が強化されやすく多少力押しでも難しい依頼をこなしやすい。
今回、『【デコボコ山】にいる友達のマネネに会いたい』というウソハチからの依頼は彼らのほうに任せ…
ピカチュウはジュプトルと、“アイアンテール”の特訓をしていた。
「……とりゃーっ!…ど、どう?」
「ふむ…ミロカロスが言っていたように、尻尾を硬化させることはできるようになってはいるが……やはり、威力がまだ不十分だな」
「ううーん、難しいなぁ…」
「尻尾を叩きつける際に、回転を加えてみたらどうだ。それなら、非力な部分をカバーできるかもしれない」
「そっか。やってみる!」
雨の中だというのに、外で元気に特訓しているピカチュウとジュプトル…
雪花屋北棟の窓から「あいつら元気だな」と呆れ気味にリザードンは見ており、コータスは2匹のためにタオルと温かいココアを用意している。
そうしていると…
バンギラスが雨の中【雪花屋】の扉を開け、近くにあったタオルで体を拭きながら入ってきていた。
「…あいつら、雨の中で何してるんだ?」
「“アイアンテール”の特訓だと。ちなみに、ヘイガニ達は依頼に行った」
「はあ…元気なこった。風邪引かなければいいんだが」
「馬鹿は風邪引かねーって言うしな!」
「あぁ、じゃあ、お前は一生風邪を引かないな」
「……おいバンギラス、お前ちょっと表出ろ」
「喧嘩なら買ってやるぜボケ魔法使い…」
――お前らは仲いいのか悪いのかどっちなんだ
オニゴーリはそんなことを思いつつ、一触即発の空気を醸し出すバンギラスとリザードンに氷の礫をぶつけていた。
しかもどちらも顔面に直撃。
オオタチが2匹分の卒塔婆を用意し、コータスが「やめましょう」と押さえる一方で…
オオスバメが窓をバンバンと叩き、「開けて」と訴えていた。しかもムクホークまでも巻き込んで。
それに気付いたリザードンが「何やってんだ」と窓を開けると、オオスバメはそこから荷物を渡していた。
「お荷物でーす!」
「いや、それは見れば分かるけど。俺にか?」
「ううん、ジュプトル」
「先輩に直接、ジュプトルに渡して欲しいって依頼があったらしいんです。差出人は書いてないんですが…」
「何か怪しいブツだな。ちなみにジュプトルなら、外でピカチュウの訓練に付き合って…」
――ゴロゴロゴロゴロ…
――ビシャーン!
――バリバリダー!!
いつの間にか雨は激しくなり、雷も降り注ぐ。
そうしていると、ムクホークとピカチュウがほぼ同着で【雪花屋】に転がり込み…
遅れてジュプトルとオオスバメも中に入り、ずぶ濡れのまま歩いてオニゴーリに凍らされる前にタオルで体を拭いていた。
そして…
ピカチュウとムクホークは、声にならない声でわんわん泣いていた。
「雷…雷ビカーッて!ビカー!!ビカビカーッて!!!」
「わああああああああああん、俺鳥ポケモンなんです雷は駄目ぇぇぇぇぇ!!!」
「わ…分かったから落ち着け。そしてピカチュウ、お前電気タイプだろ…」
「とりあえず、体ちゃんと拭けよ…タオルはあるからさ……」
先程喧嘩していたことなどすっかり忘れたのか、リザードンとバンギラスは雷で泣き喚くピカチュウとムクホークにタオルを渡していた。
…同じ鳥ポケモンのオオスバメが雷に怯えていない辺り、ムクホークが極端なのか、それとも何処のオオスバメも雷に打たれて平気なのか…
オニゴーリが呆れ気味にしていると、オオスバメは改めてジュプトルに荷物を渡していた。
「はい、お届け物」
「…お前からの宅配物って、結構怪しさを増してきてるんだが」
「えー、うちはクリーンな会社だよ?差出人不明だけど」
「「「それはクリーンではなくブラックと言います!」」」
「まあ、とにかく開けてみるか」
そう言いながら、ジュプトルが箱の中を開けると…
そこにあったのは、時計のような何か。
見たところ、腕につけるタイプであるのは明らかだが、用途が分からない。
「…これは?」
「さあ」
「誰から貰った?」
「俺が直接貰ったわけじゃないからなぁ。知っていても、お客様の個人情報は教えられないよ」
「でも、これ、何に使うの?」
「さあ…キッチンタイマーとか?」
「おいリザードン、お前カップ麺の時間を測るのにちょうどいいとか思ってないよな?……それにしても…怪しい」
「ジュプトル名指しで、と言うのも気になるな」
「ええ…」
ピカチュウやリザードン、バンギラスにオニゴーリ・コータスが箱の中にあるリストウォッチのようなものを見て色々な意見を出すが…やはり、用途は分からず。
何かの役に立つのは間違いないのだが、魔宝石と違ってどうすればいいのかも分からない。
うーん、と誰もが唸りながら考えていると…再び雷が鳴り始め、雨が屋根に激しく当たる音が聞こえる。
ザアアアアアアアア、というよりも、ダダダダダダダダダダダダ、が正しい擬音だろう。
ガラガラと鳴り続ける雷にピカチュウとムクホークは机の下に隠れ、流石に炎・飛行タイプのリザードンでなくとも参ってくる悪天候。
でもオオタチとオオスバメは仲良くポーカーしていた。お前ら強心臓。
「びゃあああああああああああああああああ(ry」
「ひいいいいいいいいいいいいいいい(ry」
「…うっわー、これ、ヘイガニ達大丈夫かー…?」
「こうなると、スピデリも流石に配達が滞るだろうな」
その頃…
廃墟では、ワイズマンが激しい雨音を聞きながら眠っていた。
すると、そこへ一つの影がやって来る。
…ベルゼバブだ。
『……来たのか』
『申し訳ございません。貴重な就寝中に、邪魔をするような形で』
『構わん。…用件は何だ?』
『そろそろ教えていただきたいのですよ。魔法使いを、しかも2人も野放しにしている理由を』
『語る必要はない。そういえば?』
『困ります。長の真意が分からぬままでは、次の一石を投じようもありませんから』
ベルゼバブの言葉に、ワイズマンは暫く考える。
そして…
フッと笑うと、ワイズマンは静かに語り始めていた。
『ウィザードも、ビーストも、“奴”が作り出した我々への対抗手段。それを潰すのは簡単だが…奴らには、使い道がある』
『使い道、ですか。例えば…どのような?』
『…それを教えてはつまらないだろう。だが奴らの存在は、私の望むファントムの支配する世の中のために必要なのだ。だからこそ……魔法使いという名の【希望】が、大きくなればなるほど…それを失った時の絶望は計り知れないだろう』
『獲物はまず、餌を与えて太らせるに限る…ということですか。気の長い作戦ですね』
ベルゼバブはそういうと、その場を立ち去っていく。
そして…
そんな彼の目の前に現れたのは、ペガサス。
『…君か』
『流石に、ワイズマンの真意は君も分からないかー。まあ無理もないよね、教えるはずないもの』
『どういう意味かな?』
『君も気付いているよね。今のワイズマンのやり方じゃ、ファントムを増やすどころか減らしている。……だけどもし…一発逆転ホームランを打てる“切札”が何処かにあるとしたら?』
『それが、魔法使い達を殺すことではないのか』
『違うと思うなぁ。まあ、自分も詳しいことは知らないけど…それを知るにはやはり、ゲートを絶望させていくしかないと思うよ。その行為にこそ、ワイズマンの真意はあるだろうから』
そう言いながら、ペガサスは鼻歌を歌いつつどこかへと向かおうとする。
ベルゼバブ自身、ワイズマンもだがペガサスの真意が分からない…
自分に情報を与えて、何をさせようと言うのか。
そもそもペガサスは何者なのか。
――ふと思い立った彼は、ペガサスを呼び止める。
『……一つ聞きたい』
『何かなー?』
『セイレーンと言うファントムの居場所を、君は知らないだろうか。……先日、手がかりを持っていたファントムが…倒されてしまったようでね』
『セイレーン…さあ、自分は知らないな?どうかしたの?』
『いや、知らないのならいい。それでは私も、仕事に戻るとしよう…誰かに見られれば面倒だからな』
それだけ言うと、ベルゼバブのほうが先にどこかへと移動する。
恐らくは彼の、いや、彼を生み出したゲートの“職場”なのだろう…
「お仕事熱心だね〜」と思いながらも、ペガサスは再度鼻歌を歌いながら……考えていた。
(――まあ、もう君も指輪の魔法使い達も会っているんだけどね。セイレーンに)
〜〜〜
ポケモンタウンの片隅…
そこには、メデューサがあるポケモンの前に立っていた。
そのポケモンとは、ダグトリオ。
3つの頭を持つ彼らは、ぶるぶると震えながらメデューサを見ていた。――その肉体は、殆ど石になりかけている。
「ひ、ひぃぃ…やめてくれ。やめてくれぇぇぇ…!」
『そう、その調子よ。その調子で絶望してしまいなさい…!』
「い、いやだ、い…やだ……ぁぁぁああぁぁあぁあ…」
次第に固まっていく体。
目の前の怪物。
この要素が揃って、恐怖を感じないはずがない。そのまま、…絶望に陥らないはずがない。
『ああ、自分はもう助からない』
『このまま石になるか、目の前の怪物に食い殺されるんだ』
ダグトリオの体には紫の亀裂が入り、それを止める者は何処にもいない。
そして…
――彼の体は完全に砕け散り、中からドワーフという小人のファントムが現れていた。
『……ふぃー。いい解放感だ』
『ドワーフか…あまり使えそうにないファントムね』
『よぉ、姉ちゃん。小さいからって舐めてると、大変なことになっちまうぜぇ…?』
ドワーフが目を光らせた、次の瞬間。
小さなファントムは無数に分裂し、メデューサの体に纏わりつく。
メデューサはドワーフ達を蹴散らそうとするが、数が多すぎて身動きが取れなくなる。
石化を試みるも、的が多すぎて全く定まらない。
そうしていると…
パンパンと手を叩きながら、ベルゼバブがやって来る。
『実に素晴らしい。面白い能力だ』
『ベルゼバブ…!』
『『『誰だぁ?兄ちゃん』』』
『珍しくメデューサが自分で仕事をして、ファントムを生み出していたのを見かけたのでね。……この能力は、使い方一つでとても面白いことになるだろう』
『…なんですって?まさか、こんな奴に魔法使いが倒せるとでも思っているの』
『戦いは力だけではない、数…そしてその数を統率する、連携力だ。このファントムは知能こそ低いが、この能力は一級品……ドワーフ、私に従う気はないか?』
ドワーフ達は、暫く考えた後…
自分達を見下す発言をしたメデューサより、その能力に意味を見出したベルゼバブのほうがいいと思ったのか、メデューサから離れていた。
『『『いいぜぇ、兄ちゃん』』』
『『『乗った、乗った』』』
『『『あの姉ちゃんは別嬪さんだが、偉そうでついてけねぇしなぁ』』』
『…そういうわけだ。彼らは私に任せてくれ』
『チッ…好きにするといいわ』
メデューサは舌打ちをしつつも、厄介払いを兼ねてベルゼバブにドワーフを任せていた。
――あんなファントムで何ができる
――ただ分裂して数を増やすだけの能力
――体も小さいし、力も弱そうなあのファントムに
しかし、彼女はこの時…気付いていなかった。
“ただ”分裂するだけのドワーフが、あんな恐ろしい事件を仕出かすとは…
……翌日。
昨日の大雨は何処へやら、今日は晴天。
雲ひとつない空の下、ピカチュウは“アイアンテール”の特訓に励んでいた。
そこへヘイガニがやって来て、声を掛ける。
「お、今日も特訓か?」
「うん、そう…でもなかなか上手くいかなくって…」
「うーん。力になってやりたいけど、俺尻尾がないからなー。気長にやっていこうぜ」
「そうだね………うん、…ミロカロスさんはそういうわけにはいかないだろうけど…」
「…あぁー」
ヘイガニはやけに納得した様子で頷く。
そういえば今日は、ミロカロスの姿がまだ見えない。
一体どうしたのだろうか…
ヘイガニがそんなことを考えていると、向こうからノロノロとやって来るミロカロスの姿。
しかし…
そんな彼女の体には、無数の小さい何かがへばりついている。
「「ミロカロスさん!?」」
「ぴっ…ピカチュウ、……電気ショックで取ってーッ!?」
「ななななな何なのあれ!?何なのあれー!!?」
「俺だって知らないよ!とにかく、ミロカロスさんを助けるためにも電撃だ!!」
「う、うん!」
ピカチュウはヘイガニに促される形で、“電気ショック”でミロカロスを攻撃。
すると、小さい何かはぽろぽろと零れ落ちるように剥がれ…
よく見ればそれは、小さい小人のようなもの。
このようなポケモンはいない…とすれば、恐らくファントムなのだろう。
「これって…ファントム?」
「だよ、な」
「あぁ…助かったわ、ありがとう」
「ミロカロスさん、これ、一体何処で?」
「ここに来る途中、いきなり引っ付いてきて…1匹2匹なら大丈夫だったのだけど、流石にこれが20も来られると……対処できなくて」
しかも、ミロカロスの話では…
この小さいファントム…ドワーフは、ミロカロスに20匹ほど引っ付いたかと思えば、その状態で分裂を始めたそうだ。
体にへばりつくドワーフは想像以上に重くなり、ミロカロスは何とか体を引きずりながらここまで来たらしい。
ミロカロスをここまで苦戦させる、謎のファントム。
しかし耐久力とパワーはそこまでないのか、ピカチュウの電気ショックでも倒せるほど弱い。
「でもこいつら、ピカチュウの電気ショックで倒れるほど弱いな…」
「自分で言うと複雑だけど、そうだよね…」
「…でも油断はできないわ。こう見えて意外と……きゃあっ!?」
「おい、どうし…うおわっ!?」
「きゃー!?ちょっ、何なのこれー!!?」
先程倒れたかと思ったドワーフが、数を増やしてピカチュウとヘイガニ、ミロカロスに圧し掛かる。
100…200…300と姿を増やしていくドワーフのせいで、ピカチュウ達は身動きが取れなくなってしまう。
ピカチュウも先程のように電撃で蹴散らそうにも、ドワーフ総てには行き渡らない。
このままドワーフたちの重みで押し潰されるのかと思った、その時。
<シックス! ファルコ、セイバーストラーイク!!>
6体の鳥が飛行してきたかと思えば、ピカチュウ達の周囲にいたドワーフを蹴散らしていく。
更に、残った集団には“ストーンエッジ”の追い討ちが入り…
そこにいたのは、ファルコマントを肩にかけたビーストとバンギラス。
バンギラスはピカチュウ達のほうに向かうと、状況を確認しあっていた。
「おい!大丈夫か」
「ば、バンギラスさん…助かったぁ〜…」
「お前達もファントム騒ぎに巻き込まれたのか…しかし、これほどの数とは」
「…しかも、大量にキマイラが食ってるはずなのに、魔力は1匹頭5円玉チョコ分!数は多いくせにまともな腹の足しにもなりゃしないって、最悪だな」
ビーストも、悪態をつきながらドワーフを次々倒す。
その一方で、彼が倒したドワーフ達は確かにちっぽけな魔力しか生み出さず、これではビーストキマイラも満足しないだろう…
そうしていると、今度は【雪花屋】の裏のほうで大きな炎が上がり、誰もが「火事か」と騒ぐ。
しかし、そこから現れたのは、ウィザード・フレイムドラゴン。
「「「ジュプトル!」」」
「お前も派手にやったなぁ…」
「そっちも、このファントムに襲われていたのか」
「ああ。散歩に出ていたら、いきなり300体という数で襲われてな…しかし何なんだ、こいつらは」
「――大変!大変よーっ!!」
セレビィが、大慌てでウィザードFD達の元にやって来る。
「どうした」とウィザードFDが叫ぶと、セレビィは息を切らしながら、ポケモンタウンでの異変を話していた。
「じ、実は、ポケモンタウン中にドワーフっていうファントムがたくさん溢れかえって…悪さをしてるの!」
「町のほうにも出たのか…!」
「それで、被害のほうはどうなってる!?」
「もうメチャクチャよ…ギャラドスさんや探検隊の皆も戦ってるけど、数が桁違いすぎてどうにもならないし……」
「とにかく、急がないと!」
「ああ。……しかし気になる、ゲートを絶望させるためだけにしても…こんな方法でどうしようと言うんだ」
ウィザードFDはマシンウィンガーに跨りつつも、疑問を漏らす。
確かに、どのゲートを狙うかは定かではないが…こんな数で適当に攻めて、どうゲートを絶望させようと言うのか。
いずれにしても、実際に行かなければ分からない。
そう思ったウィザードFDはマシンウィンガーで先行し、それに続く形でビーストも空を飛んでポケモンタウンに向かっていった。
…ポケモンタウンでは、ドワーフによる暴走が留まる所を知らない。
ある者は店のものを勝手に食べ。
ある者はタマザラシやニャースの髭を引っ張って遊び。
ある者はフシギダネの蔓を蝶結びにし。
ある者は引っ付いたポケモンをくすぐり。
ある者は置かれていたポケモン通信を盛大に破り。
もはや、ドワーフによる無法地帯だ。
ビーストはあまりの状態に頭を掻き、ウィザードFDもウィザーソードガンを取り出しながら溜息をつく。
「…おいおい。多すぎるだろ、好き勝手しすぎだな」
「まあいい…ここにいる全部のファントムを、消し炭にしてやればいいだけの話だ」
「だな!ショボイ魔力なのは残念だが…塵も積もれば山となる、全部片っ端から食っていけば普通のファントム1〜2体分の魔力にはなってくれるだろ!!」
「行くぞ!」
ビーストとウィザードFDが、ドワーフを蹴散らし始める。
遅れてやってきたピカチュウやヘイガニ、ミロカロスにセレビィといった者達も、援護するべくドワーフ達を倒していた。
しかし、いくら倒せどもキリがない…
中にはドワーフに纏わりつかれてしまっているポケモンもいるので、対処の難しい部分もあるだろう。
だが、一見動きに統一性がなく、このままポケモンタウンの住人達を全員助け出し、その後でハリケーンドラゴンによる竜巻で片をつけてしまえば一気に片付く。
誰もがそう思っていた…その時だった。
複数のドワーフが、ビーストを横切る。
しかし、その際…
彼のベルトにつけられていたホルダーから、指輪が総て奪い取られてしまう。
『『『ギギギッ!』』』
「うおっ!?……えっ、ちょっと待…指輪奪われたーッ!」
「何やってるんだ!?」
『コイツにも行けー!』
『『『ギッギー!』』』
「なっ…ぐああっ!?」
動揺するビーストに気を取られていたあまり、ドワーフによって指輪を盗まれてしまうウィザードFD…
それだけではない。
これまで無差別に思えたドワーフ達が、突如綺麗な連携でビーストとウィザードFDを追い詰めたかと思えば、いつの間にか足元に引っ付き数を増やし、動きが取れなくなったところへベルトを外しに掛かる。
そのまま2人のベルトはどこかへと持ち去られ、更には直前までつけていた指輪まで取られてしまう。
『『『ギギッギー!』』』
「あっ、くそ…待ちやがれドロボーッ!?……ぐう…」
「お、…重い…っ!しかし、何故急に連携が……があっ!?」
次第にドワーフの数が増えていき、リザードンとジュプトルは押し潰されてしまう。
更に、ピカチュウ達も捕まって身動きが取れなくなり…
最終的には全員纏めて、体を縛られていた。
しかも、リザードンの尻尾の炎によって縄を焼き切られることを考慮してか、鎖で。
普通、これほどの数を統率するには相当な指揮官が必要だ。
だが…ドワーフ達の知能の低さを見るに、彼らではないだろう。
――じゃあ、一体誰が
ジュプトルがそう思うも、彼と仲間達はドワーフによってどこかへと運ばれていってしまう。
そして…
高みの見物、と言わんばかりにそれを見ていたのは、ベルゼバブだった。
更に彼の元に、ビーストドライバーやウィザードライバー、魔法の指輪を持ったドワーフ達がやって来る。
『ふふふ、流石に数で掛かられれば手も足も出ないか。……勿論、私の能力あってこそだが』
ベルゼバブは、お玉杓子のようなモノを操る対象に仕込むことで、それを受信機とすることで自在に相手を操る能力を持つ。
ドワーフ達の連係プレーも、総て彼が指示したからこそなのだ。
数は多いが、頭脳が低く力の弱いドワーフ。
しかしベルゼバブが指揮することによって、ドワーフ最大の利点である【数の暴力】を存分に生かせるのだ。
『指輪の魔法使いとその仲間達は、ほぼ全員捕まえたも同然。さて……次のステージに移るとしよう』
その頃…
【雪花屋】では、コータスが昼食の準備をしながら首を傾げていた。
その近くではオニゴーリが茶を飲みながら、バンギラスから借りてきた過去のポケモン通信を読んでいる。
「……オオタチさん、遅いですね。ナナの実を買いに行くだけなのに…」
「大方、いつものようにフラッとその辺で遊んでるんだろ。心配しなくても大丈夫じゃないか?」
「そうだといいのですが…それにしてもさっきの騒ぎは、何だったんでしょう」
「またジュプトルがやらかしてなければいいんだが。……」
「ところで、どうしてそんな昔のポケモン通信を?」
「ちょっと気になったことがあってな。……それにしても、さっきの騒がしさが嘘みたいに静かだな。本当に何かやったんじゃないのか、あいつ」
***
館長にめっちゃ疑われるジュプトルェw
まあしょうがないよ…
お前、前科ありすぎるもん……
ところでラストの2人がスゲェのんびりしてる。
バンギラスとリザードンは喧嘩するほど仲良しってやつですw
ゴウカザルは苦労人だったんだろうな…いや、でも案外リザードンと一緒に【灼熱火山】に行く辺り、リザードンとは別ベクトルで言うことあまり聞かないほうだったんじゃないだろうか……
しかしオオタチ、卒塔婆はやめろw
そしてピカチュウ、お前は何タイプだ。オオスバメもだけど。
ペガサスの意味深な発言…
【セイレーンにはもう会っている】
さて、これは一体誰のことを言っているんでしょうか。
セイレーンの登場はEpisode5辺りを予定していますが、逆に言えばそれまで謎のままなんですよね。
…まあ、Episode5は大半のファントムの正体バレをしますし、その前段階であるEpisode4は何らかのフラグが立ったりしますが。
少なくとも今章まではギャグ多めのシリアス少なめ。
メデューサが珍しく仕事をしましたね!
使い道のなさそうなドワーフ…
しかし、ベルゼバブのせいでかなりの難敵に早変わり!
…ジュプトルのウィザードライバーって、シス方式(=持ち歩き方)だからしょうがないんですけどね…
なお、ドワーフは500バカキリバなんて目じゃないほど大量に分裂できます。
その分…1体から取れる魔力の量は、ちっぽけですが。
あぁ、ちなみに追加メンバーの技の内容↓
リザードン→火炎放射、翼で打つ、切り裂く、竜の息吹
バンギラス→噛み砕く、ストーンエッジ、悪の波動、岩なだれ
ギャラドス→ハイドロポンプ、暴れる、龍の舞、火炎放射
ミロカロス→アクアテール、アイアンテール、自己再生、叩きつける