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タイトル未設定 - 36話:恋する乙女

📚 目次

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「――不肖このオオスバメ、無事に退院しましたー!!!」



ようやく3週間の苦行(彼にとっては)から解放されたオオスバメが、ハイテンションで【雪花屋】の扉を開けると

……そこでは、シリアスが展開されていた。

とにかく、空気が重い。

オオスバメが「あれ?」と首を傾げていると、オオタチがやって来る。


「タイミング悪かったねー。今、ちょっと取り込み中なの」

「何かあったの?」

「あったも何も…もー大変。一部は修羅場ってるぐらい、マジヤバちゃけパネェ状態」

「ふーん…?」


ここで白い魔法使い関係だと思った方は…大外れ。

議題の内容は、至ってシンプル。

――そして、その鍵を握っているのは…一匹のリーシャン。

「誰?」とオオスバメがオオタチに訊ねると、彼女はオレンジュースを出しながら話していた。


「で、あのリーシャンは誰?」

「今回のゲート。で、彼女を中心にすっごいややこしいことになっているのでアルデンテ!」

「ふーん」




…ここで、話の内容が掴めないであろう読者のために、2時間ほど時を遡ろう…






ヤミラミが新しい魔法の指輪を作ったと言う話を聞いて、宝石店に向かう。

そして渡されたのは…“フラワー”リング。

名前の響きからして女の子向けのような、と思っているピカチュウをよそに、早速その場で実験をするジュプトル。

すると、薔薇の花束がどこからともなく生み出され、ピカチュウは驚き…ジュプトルは訝しげな顔をする。


<フラワー、プリーズ>

「うわっ、花束!」

「…戦闘じゃ使えそうにないな。というか、ドレスアップといい用法が限られてないか?」

「ウイィ…戦いに役立つものもあれば、そうじゃないものもある……何が出来上がるかは、実際に作ってみないと分からないって言うのもなぁ」

「しかし……俺はこうやって魔法の指輪を魔宝石経由で作っているからいいとはいえ、そもそも白い魔法使いやビースト、メイジの指輪はどうやって作られたんだろうな」


ジュプトルの持った疑問は…

自分はヤミラミが作ってくれる指輪があるが、残りの魔法使いの指輪はどうやって作られたのか。

特に、形状が特殊なビーストの指輪は尚更だろう。

ビーストドライバーは創造神アルセウスが作った…という話だが、ペガサス経由なのでどこまで信じたらいいのか分からない。

そもそも、ビースト以外のベルトや指輪の出所の大半は【不明】なのだ。

ジュプトルも指輪の殆どはヤミラミが作っているとはいえ、ウィザードライバーとハリケーン・コネクト・キックストライクは白い魔法使いが渡したもの。


「…やはり、そういうのも含めて白い魔法使いが鍵…ということか」

「それもあるけど…私が凄く気になるのは、ビーストドライバーが他と違うことかな」

「何?」

「だって、ビーストドライバーって中にキマイラファントムを封印していて…ゲートじゃなくても変身できるけど、魔力がなくなったら命を食われちゃう。でも、ジュプトルの使っているベルトは…中にいるファントムの力を間接的に使えるじゃない」



ピカチュウはずっと、他3人の魔法使いとビーストのベルトの構造の違いが気になっていた。

ビーストは先程彼女が言ったとおりだが、ウィザードライバーは中にいるファントムの力をある程度扱える。

しかし普通に使えば間接的に力を貰っているが、ドラゴン系の指輪やドラゴタイマーを使えばドラゴンの力を直接使うことが可能…だからこそ使った後のリスクも大きい。

恐らくはメイジも、白い魔法使いもそうだろう。

ピカチュウとジュプトルが互いに首を傾げていると、そこへやって来たのはバンギラス。

手には古い本が握られており、…もう片方の手はリザードンの首根っこを掴んでいる……一体何をしたんだあいつは。


「ビーストドライバーに関してだが、カビゴン爺さんから借りてきたこの本に…それっぽいヒントがあったぜ」

「バンギラスさん!」

「それっぽいヒント…とは、どういうことだ?そしてリザードンは大丈夫か」

「…どう見たって、だいじょばねぇよ…!」

「――ビーストドライバーはアルセウスが作り出した。その話を鵜呑みにするとしたら…この本の中に出てくる【賢者の石】の力じゃないのか、ってな」




『創造神・アルセウスは、賢者の石と呼ばれる万能の魔宝石を持つと言われている』

『賢者の石とは、アルセウスの創造する力の源・アルセウスの持つ力の根源たる【プレート】の中でも、最も強い力を持つ』

『アルセウスは賢者の石の力で3つの感情を産み落とし、世界を生み、残るプレートの力で世界に自然を与えた』

『そして、命を作り出した』

『人もポケモンも、17のプレートの恩恵により考えを持ち、生きるための知恵を得、言葉や文化を作り出したとされている』

――これが、バンギラスが持ってきた【創造神話】と言うタイトルの本の前文。

他はかなり難しい話が続いており、ピカチュウやリザードン、ヤミラミは頭がパンクしかねない。

ジュプトルも難しいことは多少聞き流していたものの、バンギラスの言いたいことは分かったのか、「つまり」と簡潔に纏める。


「…その【賢者の石】とやらで、ビーストドライバーを生み出した。そういうことか?」

「だと、思っている。そうなってくると、他のドライバーがどうやって生まれたかだが…それも賢者の石の力なのか、もっと別のものなのかは……白魔でも捕まえないことには」

「ところでバンギラスさん、プレートって17枚もあるの!?」

「ああ。ポケモンのタイプの数ほどあるとされている…つまり、この世界を構成している17の属性ってことだな。その中でもとりわけ力が強く、また、万能の力を持っているとされるのが……カビゴン爺さんやオオスバメ、オオタチなんかの持つ“ノーマルタイプ”のプレート。つまりそれが【賢者の石】だ」


“ノーマルタイプすげぇ”

リザードンとジュプトル、ヤミラミは心の中で声を揃えていた。

なお、「どうしてノーマルだって断定できるの?」と言うピカチュウの問いに関しては、バンギラスがすぐに「一説によればアルセウスは万能属性、つまりノーマルタイプと言われているから」と答える。

そうしていると、ヤミラミ宝石店にヘイガニが駆け込んできて、ジュプトルとリザードンに叫ぶ。


「――ジュプトル、リザードン!大変だ、街中にファントムが!!」

「何だと!?」

「よしっ、ナイスタイミングだファントム!」

「…ところでバンギラスさん、リザードンさんを引きずってきた理由って…」

「ノーコメント」





ヘイガニに連れられ、来た先には…

ククルカンというファントムと、数体のグールがポケモンタウンで暴れている光景だった。

しかも、彼らが追いかけているのは一匹のリーシャン。

リーシャンはファントム達に建物の壁際まで追い詰められてしまい、ククルカンはくすくす笑いながらリーシャンに言う。


『くくくっ。さあ、絶望してファントムを生み出しなよぉ』

「い…嫌、…誰か…!」

『――ぐあっ!?』


突然、ククルカンの背後から銃弾が襲い掛かる。

その先にいたのは、ウィザーソードガンを構えたジュプトル。

グールはある程度リザードンが蹴散らし、その間にピカチュウがリーシャンを助けに行く。


「…白昼堂々楽しそうだな、ファントム」

「昼食タイムと洒落込もうじゃねぇの!」

「大丈夫!?ここはジュプトル達に任せて、早く逃げて!」

「…」

「「変身!」」


ピカチュウが呼びかけても、リーシャンはぽけーとしているのみ。

その間に、ジュプトルとリザードンはそれぞれウィザード・ハリケーンスタイルとビーストに変身し、ククルカンを攻撃する。

ククルカンは胸にある二つの口から泥のようなものを吐き出すと、そこからグールを生み出す。

「あいつ雑魚製造機かよ!」と叫びながらも、いい狩場だと思ったビーストはファルコマントを呼び出し、更に空中からミラージュマグナムで攻撃する。

その間にハリケーンスタイルはククルカンを攻撃し、ククルカンも負けじとデッキブラシで反撃。

――なお、ただのデッキブラシと侮ってはならない。

デッキブラシ【のような形をした無数の針がある杖】なのだから。



『そぉい!』

「くっ、危ないもの振り回すな!?」

『剣か銃かよく分からないものを振り回す、魔法使いに言われたくないねぇ〜』

「銃剣という言葉を知らんのかお前は!まあいい…一気に蹴りをつける!!」

<ハリケーン、ドラゴン ビュー、ビュー、ビュービュービュビュー!>


ハリケーンドラゴンとなったウィザードは、“コピー”からのウィザーソードガン二刀流でククルカンを圧倒。

更に、先程追加したばかりのグール10体もビーストによって殲滅され、魔力を吸収されている。

このままでは、自分が圧倒的に不利になってしまう。

そう思ったククルカンは、回転しながら泥を吐き散らし…グールを30体も呼び出し、一時撤退。

「待て」とそれを追いかけようとするハリケーンドラゴンだが、グールによって阻まれ、仕方なくビーストと共にそれを相手していた。

そして…


<マグナムストラーイク!>

<<スラッシュストライク! ビュービュービュービュー、ビュービュー!!>>


ビーストハイパー・ハリケーンドラゴンの同時攻撃がグールの集団に決まり、爆散。

しかし、ククルカンには逃げられており、これではどうしようもない…

「使い魔みたいなものがいればいいんだけどな」とぼやきながら変身を解除するリザードンに、ジュプトルは同意。

それっぽい扱いができるオオスバメも入院中だし、…何よりオオスバメを使うのは抵抗がある。

そんなことを思っていると、先程のリーシャンが顔を紅くしながらやって来ていた。


「あっ、あ、あのっ!」

「ん?…大丈夫か、お前」

「は、はい…私は大丈夫です。わ、私、リーシャンって言います!よっ、よろしければ、お名前を…」

「名前も何も、お前はリーシャンという種族だし俺はジュプトルという種族。紹介する意味もないだろう」

「……クールでかっこいい…!」

「「「は?」」」



『クールでかっこいい』

そんなリーシャンの言葉に、普段のジュプトルの暴走具合を知るリザードン・バンギラス・ヘイガニ・ピカチュウが声を揃える。

呆然としている彼らをよそに…

リーシャンはきらきらと目を輝かせながら、ジュプトルに言っていた。


「――私と結婚してください!!」

「「「…は!?」」」






〜〜〜






話を聞いたオオスバメは…

「あー」と納得した様子で、何度も頷いていた。


「彼女、もしかして【オボンの森】の近くに住んでるリーシャン?」

「らしいよー」

「あ、それだったら、彼女惚れっぽいことで有名だよ。1ヶ月前なんか、配達に行ったヤミカラス先輩に一目惚れしたらしいし」

「そーですねー」

「…ですが、今回は結構本気らしくて……」

「ピカチュウとセレビィを含めてかなりの修羅場状態、ってワケだよ」


リーシャンの噂を知っているコータスとオニゴーリも、呆れ半分に茶を飲むだけ。

しかも、ジュプトルは『ゲートの近くにいればファントムからも守りやすい』とうっかり発言してしまったらしく、それを『付き合ってもいい』とリーシャンが解釈してしまって話が余計にややこしくなっているのだ。

ジュプトル自身は『付き合うわけじゃない』と何度も説明しているが、全然聞いてくれず…

更には、そこへジュプトルへ矢印を向けているセレビィが居合わせたことで、争いは激化。

――遂にはこの不毛な議論の鎮圧に、ヘイガニがオニゴーリを呼びにいくレベルにまでなっていた。

それを聞いていたオオスバメは、オオタチからモモンジュースを貰いながら、意見をする。


「…もうこれはあれだね!別の誰かに惚れさせるしかないね!!」

「私もそう言ったんだけどねー?」

「そういう対処でいいのかよ!」

「押し付けられる奴の身にもなれよ!」

「後先考えて発言しなさい!」

「ボケだからといってその案は許されねぇぞ!?」

「アホかお前は!」

「オニゴーリさんは絶対駄目です!」

「状況を悪化させてるだけだぞ、それは!」

「――という、言葉のフルボッコを貰いました☆」

「あー、だよねー」


即座にヘイガニ・リザードン・ミロカロス・ギャラドス・オニゴーリ・コータス・バンギラスからのツッコミを浴びるオオスバメ。

しかもヘイガニは、オオタチが『そ』を言った瞬間からツッコミを入れる脅威の速さ。

それ以前に、コータスが一匹だけツッコミとしておかしかったがそれはどういうことなのか。

…とにかく、リーシャンがククルカンに狙われている以上は、敵の襲撃に備える他ないだろう。

つまり、暫くは【雪花屋】にいさせたほうがいいというわけだ。



自分のうっかり発言が原因とはいえ、何度言っても聞く耳持たないリーシャンに、ジュプトルは深い溜息をつきながら机に頭を乗せる。

そんな彼を見て、リーシャンは即座に水を持ってこようと台所に向かい、その間にリザードンが牛乳を飲みながら放していた。


「なんつーか…大変だな、お前も」

「大変すぎてお前に押し付けたいぐらいだ…。いや、あの状況であんな発言をした俺の自業自得と言うべきか」

「はっきり言ってやったほうがいいんじゃねぇの?『好きじゃない』って」

「しかし…相手はゲートだぞ。ヘタに絶望させるわけにも行かないだろ」

「一方的に惚れられた女がゲート…面倒なことこの上ねーな。その点、ピカチュウとセレビィは心配要らないから大丈夫だろ。ピカチュウの中にもうファントムはいないし、セレビィはファントムに襲われる様子がないからゲートじゃなさそうだし」

「まあ、それはそうなんだが。……付き合いの差というものがあるだろう」


成程、と話を聞いていたヘイガニやバンギラスも頷く。

セレビィは暗黒世代時代からジュプトル・ミライに協力していたため、信頼関係はかなりのものだろう…

正直、ジュプトルが仮に誰かと付き合うとしたら、セレビィが一番の有力候補だ。

ピカチュウも最初は(借金関係で)ほぼ強制的に探検隊として組まされたとはいえ、付き合いとしては長いし気軽に漫才ができる仲。

少なくともリーシャンよりは信頼を置いている、と言うのも事実なのだ。


「――こうしてみると、ルージュラって引き際が潔いぶん、結構いい人なんだなって思うんだ…!」

「ああ、俺らの女装作戦に付き合ってくれるしな…」

(((…あれ、館長からの入館拒否さえ耐えれば、女装すればいいんじゃね…?)))

「…ちなみにヘイガニ以下省略、それは最後の手段にしてくれよ。俺以前に、リーシャンに絶望されたらそれこそ救いようがねぇわ……」

「「「ですよねって言うか館長エスパー!!?」」」




その頃…

【神の頂】を目指すブイゼルとヨノワールは、ライドスクレイパーに乗って移動していた。

ポケモンタウンの外でのファントム遭遇率が少ないからこそ、そしてメイジに移動用の手段があるからこその方法だ。

ブイゼルはライドスクレイパーを操りながら、ヨノワールに訊ねていた。


「で、なんて言ったっけ?その…ナントカ神話」

「【創造神話】…この世界を作ったとされる、ポケモンの話だ。この間お前が言っていただろう、賢者の石がどうとか」

「あぁ、そういえば」

「それで思い出したことがある。…確か、その本に【賢者の石】と呼ばれるアルセウスのプレートが存在することを」

「それじゃあ、ファントムの狙いは……賢者の石と呼ばれるプレートを、探すこと?」


恐らくは、とヨノワールは頷く。

以前ブイゼルから聞いた、自分が仮面ライダー・メイジとなった理由。

その中にあった、白い魔法使いの言葉…【賢者の石】というキーワードが、心のどこかで引っかかっていた。

そして、自分の中にある記憶を手探りで探した結果…ようやく、賢者の石についての疑問が解消される。

ただしそれはあくまで『賢者の石とは何か』というだけで、それをワイズマンが狙う理由も…今は何処にあるのかも分からない。


「これは私の仮説だが、…アルセウスはファントムに利用される前に、賢者の石をどこかに隠した。そして、白い魔法使いと呼ばれるものを遣わし……」

「賢者の石を守るために魔法使いを生み出した?」

「…私の仮説だから、はっきりとは断定できないが。だがそうなってくると、賢者の石の存在を知っている白い魔法使いは……アルセウスの使い魔のようなもの、と考えてもよさそうだ」

「…分からないことだらけだな。でも、あんたはその“分からないこと”を知るために、【神の頂】を探している……俺もそうなんだけど」



この世界に起こっている全ての真相を知るために旅をしていた、ヨノワール。

自分が何をするべきか…自分をどうして魔法使いにしたのか、ワイズマンの目的は何なのかを知るために旅をしていた、ブイゼル。

…恐らくこの二人は、出会うべくして出会ったのだろう。

だがそれも、恐らくは以前リザードンやバンギラスが言ったように、『そうなると分かっていた上でブイゼルにメイジドライバーを渡した』ということになる。

それも、本当に未来予知と言えなくもないレベルの先見で…


「それに、思い出したことがあるのだ。……【神の頂】に行くには、“天界の笛”と呼ばれる笛が必要だと」

「あ、なんかそれ、ダイパ発売後のガセネタであったような名前のアイテムだな」

「メタ発言はやめろ。――天界の笛はこの世に1つしかない…すなわちそれを持つ者が、アルセウスに会う資格のある者ということになるだろう」

「ってことは、俺達、一生【神の頂】に行けないんじゃ」

「いや、方法はないわけではない。……仮説とはいえ、先程言ったばかりだろう」

「…白い魔法使い!」


ブイゼルの言葉に、ヨノワールは頷く。

二人は白い魔法使いが、ハーメルケインと呼ばれる笛状の槍を持っていることは知らない。

だが、『アルセウスと何らかの関係がある』という仮説を元に考えれば、この世界で唯一アルセウスに会える可能性を持った魔法使いということになるだろう。

問題は、その白い魔法使いが何処にいるか。

この世界の何処かにあるかもしれない場所を探すよりも、この世界の何処かにいる魔法使いを探すことのほうが大変だろう。


「ジュプトルが半年前の儀式で、白い魔法使いに会ったという話を聞いたことがあるが…ポケモンタウンに戻るのも得策ではないだろうな」

「何でだ?」

「私がゲートで、尚且つ、ポケモンタウンの外にも少数ではあるがファントムがいるからだ。後者に関しては、魔法使いが集中してそこに集まれば外が手薄になる」

「あ、成程。自由に身動きのできる魔法使いがいるのはいいことなのか。――じゃ、【神の頂】の入り口とも言える場所でも探して、そこで白い魔法使いを待ち伏せするしかないかもなー」






〜〜〜






ファントム達のアジトでは、ククルカンとメデューサが会話をしていた。

メデューサは既に、ゲートが指輪の魔法使い達に保護され、暫く【雪花屋】にいることは知っている。

それを聞いたククルカンは、どうやって絶望させたものか頭を抱える…

こういう時に頼りになるベルゼバブは、既に倒されている。

ククルカンが悩んでいると、メデューサが指示を出していた。


『あのゲートは指輪の魔法使いに惚れている。とすれば、指輪の魔法使いから傷つけられれば…確実に絶望するわ』

『そう上手くいきますかねぇ?』

『まあ、そのきっかけはあっちから作ってくれそうだけど…いい作戦があるわ。“惚れっぽい女”を利用した、いい作戦がね』





その頃…

【雪花屋】の一室は、手がかりになるものはないかとカビゴンから借りてきた本で埋まっていた。

一室と言っても、ピカチュウとジュプトルが使っている部屋だ。

2匹は正直迷惑しているが、白い魔法使いの手がかりを手に入れるためだと自分達に言い聞かせ、そして一刻も早く本を撤去するべく調べものを手伝っている。

本を持ってきたのはバンギラス(と手伝いのリザードン)で、調べ物担当には彼らやヘイガニ・オオタチも加わっている。

オオタチはむー、と本と睨めっこしながら、バンギラスに話していた。


「バンギラスさーん、たぶん碌な情報は手に入らないと思いますよー」

「何でそう言いきれるんだよお前は…」

「だって、私カビゴンさんところの本の内容全部知ってますもーん。【創造神話】以外に、白魔さんに繋がるような内容はないようでしたしー」

「(あ、今露骨なギャグ入れたこいつ)……つか、初耳だな。お前、あそこに行った事があるのか?」

「行った事があると言いますか…まあいいや。読み終わった本でトンネルごっこして遊んでまーす」

「――遊ぶな!頼むから手伝ってくれ!?」


ジュプトルが悲痛な叫び声を上げるも、オオタチは無視して本を並べている。

ちゃんと“読み終わった本”で遊んでいる辺り、まだいいほうだろう…

いや、借り物で遊ばれても困るのだが。

そうしていると、リーシャンがやって来てジュプトルにお茶を渡していた。


「あのっ、お茶持って来ました!」

「…あぁ。……ありがとう」

「いえっ、当然のことをしたまでです!だ…だって私、彼女ですし…」

「いや、だから俺はお前を彼女にしたわけじゃないし…というか、これ冷たいな……」

「――つか、俺らには茶がないんだな…茶じゃなくても牛乳でいいけど、俺は」

「あ、私オレンジュースで」

「いやいや。頼むなお前ら!自分で取りに行ってくんね!?本に溢されたら染みになるのばっかり選びやがって!!」



リザードンとオオタチに関しては、ヘイガニが即座にツッコミを入れる。

確かに、とバンギラスは頷きながら本の角でリザードンとオオタチを殴っていた。

…何気に痛い攻撃だ。

仕方なく、2匹は下の階に降りて牛乳やオレンジュースを飲みに行くが…

偶然【雪花屋】で暮らしているヘラクロスと鉢合わせ、「あ」と声を上げた。


「もしかして、【Bバースト】のリザードンさん!?やばい、本物だ!」

「うわー、意外と有名なんですねー」

「『意外と』は余計だっつーの」

「サイン貰わないとサイン…って、その前に。オオタチ、昨日来たあのリーシャンって子、何とかならないか?」

「わっとどぅーゆーどぅー?」

「さっき、コータスから『私が持っていきます!』って強引にお茶を奪っていったんだぜ?しかも、――オニゴーリ館長用に冷やしておいた奴…」


その言葉を聴いた瞬間、リザードンの肝が一気に冷えた。

ヘラクロスの話だと、ジュプトルのために“彼女として”できることはないかと模索していたリーシャンは、コータスが偶然淹れていたお茶を持っていってしまったのだという。

しかも、氷タイプの宿命(?)か、若干猫舌のオニゴーリのものを…

ちょうどその場にオニゴーリがいないのは、ある意味で幸運だっただろう。お茶と言うよりは、コータス関係でアレを怒らせると怖いから。


「あー、だからさっき、『冷たい』ってジュプトルが言ってたのか…」

「昨日だって、ジュプトルと同じ部屋に住んでるピカチュウに『どうして彼女でもないのに一緒の部屋にいるんですか』って言ってるの聞いたし。…まあ、そりゃあ種族が違うとはいえ、男女が同じ部屋にいるのはそういう誤解を受けてもしょうがないんだけど」

「それ言っちゃうと、館長とコータスさんもどっこいどっこいだよね☆」

「…え、あの二人って付き合ってるんじゃなかったの!?」

「いや、それ以前に一緒の部屋にいんのか!?」

「あ、リザードンさんのはちょっと訂正させて。一緒の部屋って言っても、隣の部屋と扉一枚で繋がってる程度だし、むしろ私がコータスさんと一緒に寝てるよ」




――いや、それ、コータスに迷惑なんじゃ…

ヘラクロスとリザードンは、心を一つにしてそう思っていた。

しかし、リーシャンの暴走具合はかなりのもの。

流石は恋に恋する乙女と言うべきなのか、悪気がないのは事実なのだろうが…一生懸命になりすぎて、周りが見えていないのだろう。

今のところ、コータスやピカチュウだからこそ何も言わないでくれているが、これが気の強いセレビィだった日にはどうなるか。

…しかも、ジュプトルとは長い付き合いなのだ。確実に、いざこざが起こるに決まっている。


「――何してるんだお前らッ!!」


そうしていると…

2階からバンギラスの大声が聞こえ、「何が起きたんだよ」とリザードンが急いで駆けつける。

そこでは、一冊の破けた本と、その間にいるピカチュウとリーシャン。

ジュプトルとヘイガニは頭を抱え、バンギラスなど怒りが顔に出ている始末。

バンギラスに事情を聞くと殺されるのは目に見えているのか、リザードンは野次馬に混ざっていたミロカロスに話を聞く。


「おい、何があったんだよ…」

「実は…ピカチュウとリーシャンが本を取り合って、古い本だったから、破けちゃったのよ」



ミロカロスの話によると…

リーシャンはジュプトルの力になりたいあまり、調べている内容と理由は分からなくても、それを手伝おうとしたのだろう。

そこまではまだいい…ミロカロスも、あの本の量ではピカチュウが大変だろうと様子を見に来ていたほどだから。

しかし…


『あ、ジュプトル、この【かみさまのおはなし】って絵本に意外とヒントがあるかも!』

『絵本か…まあ、読んでみるに越したことはないか。でも俺は読まんぞ』

『えぇー…まあいいや。昔むかーし、ある所に…』

『…ちょっと!あなたはやらなくていいの、私が読み聞かせるから!!』


ピカチュウが『彼女である』自分を差し置いてジュプトルと仲良くしていることに、腹を立てたのだろう。

私がやるから、の一点張りで、ピカチュウから本を取ろうとしたのだ。

ピカチュウはつい反射的に抵抗してしまい、ミロカロスの言うように古い本だったせいか…

引っ張った拍子に破けてしまい、本が破けてしまったのだ。

当然、カビゴンから本を借りてきた立場であるバンギラスが怒るのも無理はないだろう。

しかもその本は、昔カビゴンに本を持ってきていた子が最初に持ってきたという、カビゴンにとっても思い入れのあった本。それを無理言って借りてきた以上は、一番扱いに気をつけなければならなかったのに。




「ご、…ごめんなさい…」

「わ…私は、……だってあのピカチュウが…」

「俺に謝ったり、一人のせいにするんじゃなくて…二人でカビゴン爺さんに謝って来い!それができなきゃ、この部屋には入れささん!!」

「と、とりあえず。…バンギラスさんの言うとおりにしたほうがいいって、結果はどうあれ、どっちも悪いのは事実なんだから」

「…確かに…ピカチュウ、リーシャン。お前達でちゃんと謝ってくるべきだ。……それに、俺がピカチュウから本を受け取っていればこうならなかったのも事実だし、俺も謝りに行くから」


激怒するバンギラス、そんな彼を宥めつつピカチュウとリーシャンを窘めるヘイガニとジュプトル。

ピカチュウは自分が悪いことをしたと言う自覚があるのか、尻尾と耳を垂らし、小さく頷く。

しかしリーシャンは、自分はジュプトルのためにしたのであって、自分は悪くないと思っているのか『ごめんなさい』という言葉が出てこない。

ましてや、ジュプトルは何も悪くないのに謝りに行くのは間違いだと、ピカチュウを責める。


「…ジュプトルさんは悪くない。悪いのはあなたよ!彼女でもないのに、勝手なことして!!」

「うええ!?」

「おい、それは流石に…」

「――ふざけないでよ」


『ふざけないでよ』

その言葉を言い放ったのは、予想外の人物で…リザードン達は彼女のほうを見る。

…リーシャンにそう告げたのは、――オオタチだった。






***




ジュプトルの受難・その1。

というか、オオスバメが復帰することも受難の一つなんじゃなかろうかw

いや、色んな意味で防衛ラインだけどね。あいつ…


今回は意外と【賢者の石】関係で進んだ気がする。

アルセウスのプレートにノーマルがないのは、アルセウス自身がノーマルだからなのかなーとか思ってますが…

ウィザダンでは“17枚目のプレートにして万能の力を持つもの”ということで、賢者の石=ノーマルタイプ用プレートってことにしております。

アルセウスと同じタイプ=特別な力を持ったもの、という意味で。

しかし、説明に出されたオオタチとオオスバメが浮いている気がしたのは何故w



ジュプトルw

ククルカンww

とりあえず、リザードンは対象じゃないんですね…←

冷静に考えて、リザードンのフラグの少なさは異常だよ…

個人的には

セレ→←ジュプ←ピカ

オニ←→コー

スバ→←タチ←(?)バン

ヘイ←ミロ←ギャラ

…になっちまえばいいんじゃないかなー、とは思ってます。

1番目は空やってると若干公式っぽいので、それ前提で進めてはいますが。

2番目?

もうお前ら結婚しろよ状態なのは、ヘラクロスもリザードンも…ついでにオオタチも思ってることですよねw


リーシャンは悪い子じゃないんです。

少なくとも、そういうキャラ付けを強制されていたとはいえ…我侭キャラで通っていた時のプリンよりは。

サンドパンみたいに『悪気はないんだけど周りが見えない』系と言いますか。

というか、悪意あってやってるのはファントムぐらいですw

(ニョロトノは一応ファントムよりは外道じゃない。趣味の押し付けとはいえプロデュースをするのが仕事だし、屋台を倒すにしても客の安全は考慮していた)

…それ考えると、ベルゼバブ相当タチ悪かったんだなw

元々善人っぽかったフーディンだったから、尚更だよ!

――さて、以上を踏まえた上で、白魔はどうなるのか…




オオタチも珍しくお怒りモードってスゲェな。

逆に、マジギレしたことないのって…本気でオオスバメぐらいなんじゃあ……

と言ったところで、そういえばミロカロスも怒ったりはするけど、そんなマジギレするタイプじゃないことを思い出したw

(ただ、オニゴーリ・バンギラス・リザードンは三強。次点はギャラドス・ジュプトル。これは多分揺るがない)