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タイトル未設定 - 51話:真実

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51話:真実

Episode6 生きている証
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ポケモンタウンに、一つの影が現れていた。



漆黒に近いローブを纏うその風貌は、怪しい以外の何者でもない。

商店街を営むラフレシアやその他のポケモン達は、「アレは誰だ」「保安官を呼ぶべきじゃ」と話していた。

しかし、そんな彼らのことなど気にも留めず、そのポケモンは呟く。


「……ここか」


ローブから僅かに見える、その瞳は…

鈍い紫を宿していた。






「――おらよっ!」

「甘い!」


【雪花屋】近くの森では、ビーストとウィザード・ハリケーンスタイルが剣の打ち込みをしていた。

ジュプトルが魔法使いとして復帰したとはいえ、敵はこれからも強くなってくるだろう…

そして、いずれファントム達の親玉・ワイズマンとの決戦も予想される。

ワイズマンに勝ってその野望を阻止するためにも、ファントムからゲートを…ポケモン達を守るためにも、鍛錬を欠かすわけには行かないと言うことだろう。

現にこれを提案したのはジュプトルであり、リザードンもその方がいいと思っていたのか、二つ返事で返してくれた。

剣の扱いに関してはやはりウィザードのほうが上だが、力はビーストのほうが勝る。

ピカチュウとヘイガニは彼らの手合わせを最初のほうから見ており、後から来ていたオオスバメやコータスに一連の流れを話していた。


「そういうことだったんだー」

「確かに、残っているファントムは強敵ばかりです。油断はできない、と言うのも間違ってはいないと思います」

「コータスさん。…あんまり訊いちゃいけないことかもしれないけど、今残っているファントムの中で、誰が一番強いとかそういうの…分かる?」

「ごめんなさい…ファントムは白い魔法使いと、あの人に操られていた私で執り行った儀式によって、急増したので……その儀式でどんなファントムが生まれて、どれほどの実力を持っているのか。…私にも分からないんです」



そっか、とピカチュウは納得したように呟いた後、コータスに軽く頭を下げる。

だが…

コータスは暫く考えた後、ピカチュウ達に話していた。


「ですが…ワイズマン。彼は、普通に戦ってはまず勝てない相手…だったように思います」

「「「…ワイズマン」」」

「ワイズマンはそもそも、ポケモンの姿の時でも強かった…と思います。それは、メデューサを含めた他のファントム達を纏め上げていることからも、分かることかと」

「コータスさん自身は、ワイズマンのことをどう思っているんだ?…いや、聞いちゃ駄目なことだって分かってはいるんだけど…さ」

「いえ、お気になさらず。――ワイズマンは、一言で言うなら……【闇】そのものです」


【闇】

その言葉に、ピカチュウとヘイガニはぞくりと寒気がする。

得体の知れない相手だと言うのもそうなのだが、そう話した瞬間のコータスの表情が…今までにないものだったからだ。

能力だけなら恐らくワイズマンにも引けを取らないであろう、セイレーン。

そんな彼女が恐れているほどの相手となると、…確かにファントム達を纏め上げるほどの実力は有しているのだろう。

しかしオオスバメは。


「闇かあ…あっちが闇なら、こっちは希望の【光】ってことだよね!」

「いや、まあ、そうなんだけどさ」

「だったら心配要らないって。ジュプトルもいるし、リザードンもいるし、館長もいるし…まだここにはいないけど、4人目の魔法使いでもあるブイゼルもいる。光が束になって掛かれば、きっと勝てるよ!」

「な、なんか、凄く根拠のない自信に感じられるんだけど…でも……そうだよね!うん!!」


オオスバメの言葉に戸惑いながらも、ピカチュウは自分に言い聞かせるように肯定する。

ヘイガニとコータスもオオスバメの楽観的思考には呆れていたが、

――むしろ“あの”オニゴーリがいる時点で納得はできる自信かもしれない、と考えを改めていた。

そんなことを考えていると…

ウィザードとビーストの手合わせに、空から乱入する存在がいた。




「――魔法使い同士の喧嘩なんて、黙って見過ごすわけには行かないってな!変身!!」

<シャバドゥビタッチ、ヘンシーン! シャバドゥビタッチ、ヘンシーン!!>

<チェンジ、ナウ>


そう言って、ウィザード・ハリケーンスタイルとビーストの間に割って入ったのは…

仮面ライダー・メイジ。

左腕の鋭い爪を二人を引き離すように振るうと、ハリケーンスタイルとビーストは咄嗟に回避し、地面にそれが突き刺さる。

「いきなり何なんだ」と叫ぶハリケーンスタイルをよそに、ビーストはメイジを見て声を上げる。


「あれっ!?お前、まさか…あの時の!」

「よお、久しぶりだな!えーと……ビーフジャーキーだっけ」

「ビーストだ!ビ・ー・ス・ト!!」

「まあどうだっていいだろ、そんな変わらないし」

「変わるっての!『ビー』しか合ってねぇし!!白銀→白菜→ザーサイ→野沢菜と、ザーサイから野沢菜に一気に飛ぶほど間違ってはいねぇけど!!!」

「あんたが正気ってことは、操られてるのはあっちの緑の魔法使いか?」

「いや、ちょっと待て、俺は別に操られて…」


何か大きな誤解が生まれている。

そう理解したハリケーンスタイルはメイジの説得を試みるが、彼は聞く耳を持たない。

それどころか、上空に待機させていたライドスクレイパーを呼び、ハリケーンスタイルに構えていた。


「この勝負、大地を潤す緑に染めるぜ!」

「ちょっと待て、貴様の色は赤…いやオレンジだろうが!」

「え?あ、じゃあ……祭りだ祭りだ!木っ端微塵こだぁぁぁ!!」

「木っ端微塵にすんな!焼き尽くすぞテメェ!!」

「えー…だったら……前途洋々、我が行く手に敵はなし!」

「それ勝利セリフだ!言うなら勝ってから言え…いやむしろ、俺達が戦う意味は何処に!?」

「お初にお目にかかります、紫電のゼロでございます!魔力で宇宙を正します!!」

「元ネタ隠せ元ネタ!あとそれ漫画版だ!!」

「――それではまた、素敵な地獄でお会いしましょう!」

「「何で混ざるのオオスバメさん!?」」



暴走するメイジ、それにツッコミを入れるハリケーンスタイルとビースト。

混ざるオオスバメと、即座にツッコむピカチュウ・ヘイガニ…

そして、「早く来てくださいオニゴーリさん」と祈るコータス。

どうやらメイジは人の話を聞く気がないようで、それどころかハリケーンスタイルが敵に操られていると完全に勘違いして襲い掛かってくる。

ハリケーンスタイルはウィザーソードガンでの遠距離攻撃を試みるが、“コモン”ウィザードリングで発動させた“リフレクト”の魔法で銃弾が跳ね返ってくる。

身軽な動きでそれを回避するハリケーンスタイルだが、それを狙っていたのか、メイジは一気に距離を詰めライドスクレイパーで鋭い突きを放つ。

その攻撃はどうにかウィザーソードガンで受け流すが、ふざけているようで意外とやる相手に、ハリケーンスタイルは舌打ちする。


「ちっ…!馬鹿だが意外とやるな…!!」

「そっちも、あんな器用に反応するなんて凄いと思うぜ?中のファントムの力の高まりが、そうさせてんのかね??」

「!…何故、そんなことが」

「俺は誰がファントムで、どんな奴が体の中にファントムを飼っているのか見れる。だからさ…そこにいるリザードンはすぐに魔法使いだって分かったし、あの時一緒にいたオオタチもファントムだってすぐ分かった。……まあ、悪さをする気がなかったからオオタチは放置したんだけどさ」

「…、……オオタチ…」


オオタチ、という名前を聞き、ハリケーンスタイルは“あの時”のことを思い出す。

…メデューサに騙され、ウィザードラゴンを倒され、オオタチも失ったあの時のことを…

それはピカチュウ達にとっても記憶に新しく、特に、彼女に庇われたピカチュウは辛そうな顔を見せる。

妙に暗く沈んだ空気にメイジは「?」となるが、まだ勘違いを続けているようでハリケーンスタイルと対峙し続ける。




――だが、それを止めるのはビーストではなく、……ソーサラーだった。

“テレポート”で瞬時に現れ、メイジの顔面(左顎の辺り)に鋭いアッパーを仕掛ける。


「客が来てんだぞ静かにせんかボケェ!」

「ごっふ!?」

「「「館長キター!」」」

「…で、誰だこいつ」

「知らないで殴ったんですか、オニゴーリさん!?」

「いやまったく。……さて」


ボキボキと拳を鳴らしながら振り向くソーサラー。

その視線の先にいたのは、ハリケーンスタイルとビースト。

――何故自分達が狙われようとしているのか

――いや、それ以前に、狙われる理由がない

メイジは今の一撃で既に沈黙しており、変身を解除されているため頼れない。

そして…


「さて、さっきも言ったとおり、……【雪花屋】のほうに客が来てるってのに、ギャアギャアわあわあドンパチやりやがって…」

「あ、いや、その…」

「それには深い理由が…ありまして……」

「――問答無用!宇宙で一番気高き男、白銀のゼロ…発進!宇宙の悪を駆逐する!!」

「「「やめて(館長/オニゴーリさん)!元ネタ隠してない以前にあなたの【駆逐】は死を意味する!!」」」

「知るかボケ!」

「「駄目だこの人オーディーン要らな………アッー!!!」」



魔法を使うことなく、ディースハルバードを使うこともなく、ただ拳で魔法使いを制圧するソーサラー。

もはや、鬼だ。鬼神だ。

ピカチュウ達が場の惨劇に顔を青ざめていると、件の“客”がやって来て、顔を顰めている。


「……なんだ、またブイゼルが馬鹿をやったのか…」

「えっ!?あ、ああああああ、あなたは…」

「?…君は確か、前に見かけた……ピカチュウか?」


ピカチュウがガクガクと震えながら、尋ねた存在。

この場に現れたのは…彼女の憧れでもあり、探検隊を始めるきっかけとなった存在でもあり、命の恩人。

――ヨノワールその人だった。





宇宙一の鬼神を相手にフルボッコにされた魔法使い3人を、後からやって来たバンギラスとギャラドスに運ばせ…

彼らが意識を取り戻したところで、ヨノワールはブイゼルに拳骨をし、改めて話を始めていた。


「――そうか、ジュプトルの奴は君と探検隊をしているのか」

「は、はい!」

「成程。それとセレビィの件だが、先程ヤミラミ(B)と会った際に話を聞いた。……私としても残念だ、だが、私はアレに関しては特に何も思っていない。だが貴様は…」

「……大丈夫だ。そのことならもう、吹っ切れている。貴様に心配されるほど、柔ではないからな」

「フッ、そうでなくてはな。憎まれ口を叩くのが、貴様らしい」


やや殺伐としている会話の内容だが、何故かピカチュウやヘイガニには、歴戦の戦友同士の会話のように思えてならない。

コータスに出された茶を一服しつつ、ヨノワールは周囲の面々を見る。

その後でブイゼルに目配せをし、ブイゼルは先程ソーサラーに殴られた部分に氷嚢を当てながら、話していた。


「……心配しなくても、この中にワイズマン側と思われるファントムは混じってないって。そこのコータスは…ファントムではあるけど、心配しなくていい部類だ」

「「「!」」」

「…やっぱ、ファントムが分かるってマジなのか」

「ああ、あんたは魔力を求めて暴れる獣。そっちのジュプトルは、さっきも言ったように力が異常に強い…ドラゴンか?……で、そこの鬼ゴーリは………氷河期のように冷たく、恐ろしい、そしてえげつない狼ッス。はい」

「あ?」

(((あ、鬼のファントムじゃなくて、狼のファントムだったんだ…)))



オニゴーリの形相に怯えながらも、ジュプトル達は意外そうな目でオニゴーリを見ており…

その視線に気付いたオニゴーリが彼らを見るが、全員して視線を別方向に向けて誤魔化していた。

そんな彼らに、バンギラスが溜息をついた後…

ヨノワールにあることを尋ねていた。


「……あんた、【神の頂】を探して旅をしていたんだったな?」

「ああ、そうだ」

「ということは、白い魔法使いにも会えたことになる。…もしかすれば、創造神アルセウスにも。……そして、そんなあんたがここに来たと言うことは…」

「…勘のいい者がいてくれて助かる。表情を見る限り、そこのヘイガニとオニゴーリも察してくれているようだな」

「……話を、聞いてきたのか?どうしてファントムが生まれたのか、ワイズマンは何なのか……【賢者の石】が、どこにあるのか」


ヘイガニの言葉に、ヨノワールは頷く。


「ああ。――【賢者の石】に関して、詳しい情報は得られなかったが……その他のことについては、話を聞くことができた」

「そうか。…それでヨノワール、ワイズマンについて…」

「だが、その前に、言っておくことがある」

「…何だ?」




「――アルセウスは息を引き取った。我々の目の前で、だ」






〜〜〜






吹雪が止み、【極寒の霊峰】にようやく突入することができたブイゼルとヨノワール。

彼らは不思議なダンジョンの中を進み、そしてようやく、【神の頂】へと続く扉を発見したのだ。

扉は既に開かれており、白い魔法使いが既に開けておいたのか、それともファントム達に攻め込まれたのか…

前者であることを祈りつつ階段を上ると、そこにあったのは白の世界。

そして、そこで佇むのは…神々しい存在。

まさしく“神”の名に相応しい、その美しさを持つのは……アルセウス。


「…あなたが、アルセウス…」

「……すっげ、俺、初めて見た」

『…ようやく来たか。そして……君がここにいるということは、覚悟を決めたと言うことでいいのかな…ブイゼル。いや、………万能の魔法使い』

「!?…なんで、そんなこと……いや、神様だから当然なのか?」


自分がメイジだと知っていることに、ブイゼルは驚くが…

「むしろ神様なら当然」と、納得していた。

だが、ヨノワールは違う。

確かに神であるアルセウスなら知っていて当然だが、彼の話に、引っかかる部分があったのだ。

“君がここにいるということは、覚悟を決めたと言うことでいいのかな”

ブイゼルに対してそのような発言をするのは、彼にワイズマンと戦う宿命なのだと話した、白い魔法使いだけのはず。

白い魔法使いがアルセウスの護衛なら当然だろうが、それでも、この場にその白い魔法使いがいないことに違和感を覚え始める。

――まさか

一つの結論に彼が行き着いたその時、アルセウスは優しそうな目で語り始めていた。


『……君と私は、2年前に会っている。あの落石事故の日、君は自分の内の絶望に勝ち、魔法使いとなった…』

「えっ?いや、俺が2年前に会ったのは白い魔法使いで…」

「ブイゼル。――彼は、アルセウスは、その白い魔法使いだ」

「……ええっ!?いや、だけど、…」

「私も最初は違うと思った、だが、その反応を見る限り……正しそうだな」

「…、……ああ。もしも、俺のファントムを見る眼が…魔法使いになった瞬間備わったものだとしたら、……白い魔法使いからファントムの魔力を感じ取れなかったのは、おかしい」

『当然だ。――私は…ファントムを持たない、自らの命と言う代償を使ってまで、魔法を使う力を得ていたのだ』



自ら、自分が白い魔法使いだと認めるアルセウス。

その言葉に、ヨノワールは一つの疑問を覚える。

“自らの命と言う代償”

…アルセウスには【賢者の石】と言う、万能の創造物があったはずだ。

他のプレートよりも力が強く、また、アルセウスの命そのものと言ってもいいほど強い力を持つ【賢者の石】。

そのことについて尋ねようとすると、アルセウスはその場に膝をつき、ズズン…と大きな音を立てて倒れていた。


「「アルセウス!」」

『…フ、もはや…限界か……』

「まさか、【賢者の石】は」

『既に、別の場所に隠してある。――ワイズマンに襲撃された、その時にな…』

「それって、何処なんだよ!?」

『……あるゲートの中に、隠した。だが、君の眼をもってしても分からないだろう…君の眼はあくまでも、ファントムを見分けるためのものであり……ゲートを察知する眼ではない』


“尤も、ゲートを判別できる眼であったとしても、そのゲートを絶望させない限り【賢者の石】を持っているとは分からないがな”

そんなことを付け加えるアルセウスであったが、その息は絶え絶えで、限界が近いと言うのも頷ける話だ。

そして…

アルセウスは手当てをしようとするヨノワールやブイゼルを制止させると、全ての真実を話していた。


『――私はもう助からない。それは自分で分かっていること…むしろ、当然の結果だ』

「何…?」

「どういうことだよ…」

『全ては、私が招いたことだからだ』





アルセウスの話によれば…

3年前、ミライとポッチャマの活躍によって、未来世界にも光が訪れるようになった。

しかし、その瞬間、この世界に住むポケモン達は存在を消されようとしていた。

当然だ。過去が変わってしまったことにより、今ある未来世界は書き換えられ、消滅の道を辿るしかなかったのだから。

…だが、アルセウスは【賢者の石】を用いて、未来世界のポケモン達の消滅を阻止した。

光を取り戻した世界で、新しく煌こうとしていた命…それを守るために。


――それが最初の過ちだったとも知らずに。


光を取り戻し、時が動き始めた世界で、ポケモン達は喜んでいた。

誰もが希望を見出し、新しい一歩を進もうとしていた。

…だが、全てのポケモンがそうだったわけではない。

絶望的な暗黒世界で生きてきたポケモン達の中には、心の中に絶望が巣食っていた。

その中でもとりわけ邪悪な“絶望の因子”を持つポケモンは、この時から存在していた…

理由はアルセウスにも分からないが、【賢者の石】を使って世界を変える瞬間、まったく違う世界の則が紛れ込んだのだろう。

絶望の因子を持ったポケモンは、心の中にある希望が絶望に変わった時、まったく別の姿に…ファントムに姿を変えた。

別の形での進化といえばそれまでだが、それは人やポケモン達がこれまで辿ってきた形の進化とはまったく異なり、邪悪そのものだった。



ファントムの存在を危惧したアルセウスは、【賢者の石】を使い、それに対抗する手段を作り上げた。

それが、現在リザードンの使っている、ビーストドライバー。

作られた当初はビーストドライバーと言う名称はなく、中にキマイラというファントムはいなかった。

アルセウスによればこのドライバーはファントムを封印し、その力を使って戦うための手段。

問題は、そのドライバーは“ゲート”と呼ばれる絶望の因子を持つポケモン『以外』にしか使えないこと。

そして、魔力の補給は同じファントムを食らう以外に方法がなく、それが尽きればそのポケモンの命を奪う危険性があったことだ。

この過酷な運命に立ち向かえる存在を探そうとアルセウスが決めた瞬間、――彼らは現れた。


『ほっほっほ。食い応えのある魔力…あれが、お前さんの言っていたアルセウスかえ?』

『――そうだ。だが、【賢者の石】は食うな。……アレは私のものだ』

『貴様らは…!』


キマイラと、ワイズマンだった。

アルセウスがとある遺跡にて儀式を行う、と言うことを何処から知ったのか…彼らは、ビーストドライバーだけでなく、万が一のために作り、隠しておいたミラージュマグナムのあるこの遺跡にやって来たのだ。

ワイズマンとキマイラは容赦なくアルセウスに襲い掛かり、アルセウスはそれに応戦するが…

彼の背後にあるプレートの1つを、キマイラに食われてしまう。

【賢者の石】でなかっただけマシなのだろうが、プレートは1つ奪われるだけでもアルセウスに苦痛を与える。それだけでなく、プレートを失った分だけアルセウスは力を失うのだ。

アルセウスは何枚かのプレートを食われながらも、どうにかキマイラをビーストドライバーの中に封印し…

残ったワイズマンの猛攻を耐えながらも、苦渋の決断を行った。

――【賢者の石】を自ら分離させ、それは流星のように一瞬で消えていく。

それを見たワイズマンは巨大な闇の玉をアルセウスに放ち、激高した様子で言い放つ。


『貴様…!【賢者の石】を何処に隠した!?』

『…それを教える、義理はない…』

『……まあ、いい。【賢者の石】が無くなった以上、貴様に用はない…だが、』

『…があっ!?』

『せめてこれは持って行かせて貰うぞ。力を得られることに、変わりはないのでな』


横たわるアルセウスから、1枚のプレートを奪い取り…

ワイズマンは、その場を去っていった。




あまりにも、邪悪な力。

それに対抗するには、同じプレートの力を…同じファントムの力を、ぶつけるしかない。

運よく残ったプレートで、アルセウスは3つのドライバーを作り出した。

それが…ウィザードライバー・メイジドライバー・白い魔法使いドライバーだ。

生命維持のために氷雪プレートのみを残し、それ以外のプレートは全てワイズマンを倒すためのプレートに変えた。

アルセウスの中にファントムが存在しないのに、白い魔法使いとして変身できたのは…彼自身が、自分の命を削って作り出したからに他ならない。

だが、当然命の期限がついているアルセウスでは、ワイズマンと戦うことはできない…

だからこそ、――再び過ちを犯したのだ。


それが、半年前の日食の儀式だ。


ワイズマン陣営のファントム達が手に負えないほどのファントム・セイレーンを操り。

自ら厳選したゲート達を、日食の魔力の影響が一番強い場所に集め。

――そして、儀式を決行した。

セイレーンの歌声により、自らの中にある絶望の因子を一気に開放させ、次々とファントム達が生まれていく。

中には、ミノタウロスとしてピカチュウを苦しめたミズゴロウ…ヘルハウンドとしてオニゴーリを陥れようとしたユキメノコ…オーダイル棟梁を裏切り絶望させることになるクラブも、いたことだろう。

そして、儀式の存在を察知したワイズマンがその中に紛れ込ませ、絶望し…メデューサを生み出す結果になってしまった、セレビィも……



儀式は失敗だった。

集めたゲートの殆どが、ファントムを生み出してしまったからだ。

ファントム達は好き勝手に散り散りになり、白い魔法使いは膝を突く。

――やはり、無理だったのか

そんな時だった。…一匹のジュプトルが意識を取り戻し、ファントムの一体…リザードマンに襲われている姿を見つけたのは。

あの儀式でファントムを見事押さえつけることのできた彼に、白い魔法使いは即座に接触した。

ジュプトルにハリケーンウィザードリングといくつかの魔法リング、そしてウィザードライバーを渡し、念願の魔法使い……ウィザードを誕生させたのだ。

そして、その後、遺跡の仕掛けを解除できる肉体と、その見た目に合わず知的なバンギラスと接触し…

多少予定は違ったものの、彼の友人であるリザードンがビーストとなり、これでワイズマン達に立ち向かうことができると思っていた。


…思っていたというのに…


ワイズマンはアルセウスから奪ったプレートの力を使い、ジュプトルにある物を送りつけた。

それが、ドラゴタイマー。

ジュプトルの中にいるファントムの力を活性化させ、それを生み出しやすくするための道具。

それが原因でジュプトルの中にいるウィザードラゴンは魔力を高めていき、その力は、ワイズマンをも上回るほどの力を持ったファントムを生み出す危険性を…感じさせるほどだった。

まさか自らの儀式で誕生させた魔法使いを利用されるとは思っておらず、アルセウスは自分の命が残っているうちにジュプトルを始末しようとしていた。

予想外にもリザードンにそれを阻止され、最終的には自ら選んだ魔法使いを2人失ってでも…また新たに儀式を行ってでも、止めようとしていた。





『――今思えば、私のしていたことは、自分勝手なエゴイズムに過ぎなかった』


『そもそも、私がこの世界のポケモン達を全て生かそうと考えなければ、起こりえなかった事故だった』


『過ぎてしまったことを悔やんでも仕方ないと言うのは、分かっている。“もしも”という希望的観測は、――殆ど意味のないものだからな』



『だが、それでも、ワイズマンは止めねばならなかったのだ』


『……それが例え、多くのポケモンの…多くのゲートの犠牲を払う結果になってでも』


『…残酷な宿命を押し付けて、死ぬことになってでもな…』




アルセウスの話を聞き終えたヨノワールとブイゼルは、何も言えずにいた。

確かに、彼の言うとおり、未来世界のポケモン達を全て救おうとしなければ…

今頃、ファントムは生まれていなかったことだろう。

彼の偽善的行為が、今この世界で起こっている危機を齎す結果になった。

…しかし、そうしなければ自分達は今頃、暗黒世界と共に消滅していたというのは……なんとも皮肉な話だ。

ヨノワールは暫く押し黙った後、【賢者の石】の所在について尋ねていた。


「……【賢者の石】は、何処にあるのだ?仮にも神である、あなたが委ねるのだ…知られることがない、或いは、絶望することがないゲートだとは思うが」

『それを、私の口からは…言うことはできない。……それに…』

「それに?」

『――【賢者の石】など、最初からなければよかったのだ。だからこそ、……このまま…知られないほうが、……君達に…とっても……い、い………』

「「アルセウス!」」

『メイジ、…ブイゼルよ……君に、頼みたい、ことが…』

「俺に…何を?」


ブイゼルは横たわるアルセウスの近くに向かい、その言葉を聴く。

声はかなり掠れており、近くにいた彼しか、アルセウスの最後の言葉を聴くことはできなかっただろう。

そして…

アルセウスの話を聞いていたブイゼルは、次第にその表情を変えていく。


『………【賢者の石】…は、―――にある…』

「…は?」

『守るも、壊すも、…君に……任せる。………【賢者の石】を…任せ、た……』

「おい、ちょっと待てよ、…ちょっと待てよ…!」




――こうして、アルセウスはその息を引き取った。

【賢者の石】と言う、謎を残したまま。






***




久々に更新。

いや、どういう感じで運んでいこうかなーと悩んでました。

その結果、…ブイゼルテメェw


前半ギャグ・後半シリアスになるのが、この作者の特徴でもありますが。

…落差激しいわ…

野沢菜とかザーサイとか言ってたのが懐かしいぐらい、落差激しいわ…

そしてブイゼル、後半から全然元ネタ隠してねぇwww

ちなみに漫画の紫電さんは…SPIRITSで言う風見・つくばんポジション(下まつげ的な意味で)

あとエセ紳士レベル増してる気がした。



館長も元ネタ隠してねぇw

色と属性的には否定できないがな!

そしてオーディーン云々で済まされるレベルを超えてるぞ、ジュプトルにリザードン。

今回無実だったけど。

ちなみにジュプトルの借金は、徐々にその額を減らしつつあります。

大体…1500ポケ、ですかね?

さて、これが死亡フラグになるのかならないのか。


アルセウスの真実…

白魔だったのは前から言ってたので当然として、ワイズマン関係とかビースト関係での新事実が分かりましたね。

ちなみに、

ウィザードライバー→緑のプレート、竜のプレート

白い魔法使いドライバー→鋼鉄プレート

メイジドライバー→火の玉プレート

ワイズマンが持っていった奴→不思議なプレート

異世界ウィザードライバー(エイジスの使ってる奴)に入れたの→氷雪プレート

キマイラに食われたの→残り全部

…キマイラさんェ…

後、これでワイズマンの候補も大体絞れてしまうのでは?

ヒントは“奪ったプレート”、“ワイズマンと同じ色”、“実は別作品にも出ている”




次回!

そのワイズマンの答え合わせでーす!!