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タイトル未設定 - 56話:最初で最後の嘘

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56話:最初で最後の嘘

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“オオスバメ達が籠を持ってどこかに飛んで行った”

偶然その姿を見かけたリーシャンによって伝えられた話に、リザードン達は手分けして探し始める。

…能天気だとは思っていたが

…あいつ今の状況絶対分かってねぇだろ!

フェニックスの件でも危機感のなさを露呈したオオスバメではあったものの、今回は相手が相手ゆえに確実に殴っておかなければ気が済まない。

リザードンはそんなことを思いつつ空から探していると、突然森の方から光が放たれ…

更には、ビーストドライバーも突然光りはじめていた。

その様子は地上で捜索していたバンギラスにも見えていたのか、空中で停止しているリザードンに「おい」と声を掛ける。


「…おい、リザードン!何があった!?」

「…、……ああ?」

「おい、本当に大丈夫かお前。まさか、まだ怪我が痛むとか弱音を吐くつもりじゃあ」

「いや…キマイラが【賢者の石】の力を感じるってよ。…あと、その近くにブイゼルとヨノワール…更にはワイズマンの臭いもするんだと」

「…やはりワイズマンが…オオスバメは?」

「オオスバメやヘイガニがいるような感じはしないってよ。いずれにしろ、急ぐぞ!」


全速力で飛び出すリザードン、その後を地上から追いかけるバンギラス。

彼らが到着した頃には既に誰もおらず、その場に残っていたのは持ち手の砕けたライドスクレイパーのみ…

バンギラスは粉々に砕けたそれを拾い上げつつ、見て嫌な予感を察したのか周囲を探し始める。

リザードンも空中からブイゼル達を探そうとすると、水辺に向かって歩く謎の影が見えていた。

誰だ、と思いつつも、もしかしたらブイゼルやヨノワールかもしれないということでバンギラスに方角を伝え、向かった先には……

左目を隠すような長い鬣。体には鱗や鰭のようなものが存在し、薄緑色の色をしたそれはまさしく異形と言えるもの。

――ファントム、と言う他ないだろう。

しかもその手にはメイジドライバーが握られており、それを見たリザードンとバンギラスはライドスクレイパーの件も含め、嫌な予感を募らせる。


「――なっ、ファントム!?何だって、ここに…」

『……何だって、だぁ?そんなこと分かりきってるだろーがよぉ…ワイズマン様に頼まれて、【賢者の石】を奪いに来た。…今やあの石は、ワイズマン様の手の中だ』

「な…何だと!?」

「くそっ、遅かったのか…!それで、オオスバメは……!!」



オオスバメ、と言う名前を聞いた瞬間…目の前のファントム・ケルピーは自嘲するように笑い出す。

まるで、何かを知っているかのような…

更にリザードンは、今の状況とキマイラの話が若干食い違っていることに気付きつつある。

キマイラは、『赤い光の方角にワイズマンとブイゼル、ヨノワールがいる』と言った。

だが目の前のファントムは、『ワイズマンに頼まれて賢者の石を奪いに来た』と言っている…キマイラはこのようなファントムがいるなどとは、一言も言っていないのだ。

それをリザードンが指摘する前に、ケルピーは話を続ける。…それも、自分達がこれまで信じていた『前提』を突き崩すかのように。


『オオスバメぇ?…あいつもつくづく災難な奴だよなあ…絶望しないのをいいことに、【賢者の石】も傀儡として生かされていたなんてよぉ』

「なっ、…に?」

「どういうことだ…それにブイゼルは!あいつはどうしたんだ…どうしてメイジドライバーを!!」

『万能の魔法使いはどうした、だってぇ…?そんなの、分かりきってるだろうがよぉ…』


ケルピーはメイジドライバーを強く握り締めたかと思えば、そのまま地面に叩きつける。

「待て」とバンギラスが制止しようとするが、既に遅い。

ケルピーの足の蹄は使い手の存在しないそれを、彼の末路を物語るようにして…踏みつけ、粉々に踏み潰す。

そして…

自嘲めいた笑みをそのままに、リザードンとバンギラスを挑発するかのように言い放つ。


『…死んだよ』

「「な」」

『面白かったぜぇ?無様に抵抗して…そして最後は……“こう”なっちまったんだからよぉ!!!』

「…て、っめぇぇぇぇぇぇ!!」

<L・I・O・N、ライオーン!>

<ハイパー、ゴーッ! ハイハイ、ハイ、ハイパー!!>




リザードンは怒りに身を任せ、ビーストに変身する。

そのままビーストハイパーに姿を変えると、ダイスサーベルを勢いよく振り下ろす。

ケルピーはそれを拳で受け止めると、そのまま激しい肉弾戦に発展…

長い鬣を揺らしつつ、ケルピーは尚もビーストハイパーに言い放つ。まるで、自分達に情報を与えようとしているかのように。


『【賢者の石】の正体は、お前らもよく知っている…ヨノワールだっけかぁ?あいつだったんだよ!』

「なにっ!?そんなわけあるか、だったらみすみすポケモンタウンに戻すような真似…」

『アルセウスの奴は死に掛けていた。そんな奴に止める手段などありはしない…いや、それどころか、あのオオスバメは十二分に囮としての役割を全うしていたんだ。ばれることはないって高を括っていたんだろうよぉ!』

「てめ…っ!」

「待てリザードン!…おいお前、なんでそんなことまで知っている…お前は」

『さっき言っただろうがよぉ?ワイズマンに頼まれて【賢者の石】を奪いに来たってよぉ…ワイズマンは既に賢者の石を持ち帰った。これで…ワイズマンの思い通りの世界ってワケだ!』


ケルピーはそう言いながら、大きく振り上げた右足で回し蹴りを放つ。

ビーストハイパーはそれをかわすが、その勢いを利用して放たれた次の一撃までは…避けきれない。

ならば、とばかりに片方の手に構えたミラージュマグナムでケルピーに攻撃し、辛うじて相討ちに持ち込む。

――おかしい

――こいつ、今までのファントムと何かが違う

ビーストハイパーの中に浮かぶ疑念は募り、だが、ブイゼルの敵を討つためにも…

何より、キマイラの空腹の限界が近い以上、目の前のファントムは確実に倒さなければならない。

そのまま左手の指輪を開き、ミラージュマグナムに差し込み…トドメの一撃を放った。


「そんなことさせてたまるかよ…ヨノワールは絶対に助ける!テメェらに殺された、ゴウカザルやブイゼルの分まで、この世界を救ってみせる!!」

『…』

<マグナムストラーイク!>

「そのためにも、――テメェはここで終わりだあああッ!」



巨大なキマイラのエネルギー体が、ケルピーに襲い掛かる。

だが、彼は抵抗することなくむしろそれを受け入れている…いや、受け入れるしかないのだ。

最初から、そのつもりだったのだから。

ケルピー…ブイゼルは両腕を広げつつ、小さく呟いた。


『…ああ、頼むぜ。リザードン…』

「…!?お前、おい、まさか」


ビーストハイパーがその名を呼ぼうとした、次の瞬間。

ケルピーの体は爆発に巻き込まれ、その肉体は消滅する。

後に残されたのは魔力の塊で、ビーストドライバーはその魔力を容赦なく食らう…

さらに遅れてウィザード・ハリケーンドラゴンとピカチュウがやって来て、変身を解除したリザードンとバンギラスに訊ねる。


「おい、大丈夫か!?」

「リザードンさん、バンギラスさん、どうしたの!?」

「…最悪だ。【賢者の石】が奪われた…それも石の在り処は」

「――くっそおおおおおおおおっ!」


リザードンが、咆哮を上げる。

それにはウィザードHDもピカチュウも、バンギラスでさえも驚き目を見開く…

【賢者の石】が奪われてしまったこと、ブイゼルが犠牲になったこと、色々あったためそうなるのも無理はないとバンギラスは思いつつあったが…リザードンは違った。

最後の最後で、気付いてしまったのだ。

自分が倒した相手が誰なのかを。そして、倒されたその意味を。



(もっと、もっと他にやりようはなかったのかよ)


(…ファントムになったとしても、お前、自我残ってたんだろ…だったら、……なんでそこでオオタチみたいに割り切らねぇんだよ…)


(俺がもっと早くに気付いていれば、別の道も…あったかも、しれねぇじゃねぇかよ……!)




(――ブイゼル…あの野郎、……上等だ。俺はお前の分まで絶対生きてやる、お前の命を食らった、その分まで…!!)






〜〜〜






雪花屋に戻った一同は、バンギラスやリザードンから全ての話を聞いていた。

賢者の石の正体、ブイゼルの死…

その際リザードンは、ブイゼルのことについて詳しく喋ることはしなかった。

絶望しファントムになってしまったことを隠し、リザードンがまだ戦えるように自らの命を賭けたのだ。恐らくは、最後まで黙って死ぬつもりだったのだろう。

そんな彼の気持ちを汲んで、先程のファントムの正体については何も言わず、話を切り替える。


「…ぶっちゃけ、状況は最悪だ。さっきのファントム…との戦いでもう暫く俺はもつとはいえ、ワイズマンはすぐにでも儀式を始めるはずだ」

「じゃあ…もう時間はねぇ、ってことか?」

「そんな…」

「それがそうでもねぇらしい。…キマイラの話だと、【賢者の石】は覚醒したばかりで本来の力を扱えるようになるまで時間が掛かるそうだ」

「そっか、キマイラはワイズマンと一緒にアルセウスのいる【神の頂】を攻めたんだっけか。その時に感じた魔力より弱かった、…ってことか?」


ヘイガニの言葉に、リザードンは小さく頷く。

…ヘイガニは薄々、【賢者の石】の正体に気付きつつあった。

ワイズマンやサイア・ゲルダと対峙した時、ブイゼルはオオスバメではなくヨノワールを守っていた…

氷漬けになった時も、ヨノワールの方を率先して助けるほどだ。暫く一緒に行動していたとはいえ、この行動には些か疑問が残る。

だが、例えそうだとしてもヨノワールはオオスバメと違って自制心がある。

ファントム…それも親玉相手に『ファントムだ』と一般的なものと大差ないような反応を返したり、死に掛けても寝たりするようなことはしないし、何より知恵が回るのだ。

それに、ブイゼルの行動がおかしいと言うだけでヨノワールが賢者の石だという決定的な証拠にはならないため、話さなかったのだ。



「…悪い、皆。俺がもっと早く言ってれば…」

「いや、ヘイガニのせいじゃないだろ。なあ、ミロカロス」

「ええ…私達もオオスバメの方がそうなんじゃないか、って思っていたもの」

「まあ思えば、オオスバメさんは妙に絶望しないってだけで…賢者の石である証拠は何一つとしてなかったわけですからね。…そうなると、一体誰がそうなるように仕組んだかですよ」

「えっ、アルセウスじゃないの?」

「アルセウスもそうですが、そもそもの話、オオスバメさんがジュプトルさん達と関わらなければ成立しなかったんですよ?――アルセウス以外にもいるでしょう、そうしたがっていた人。私はその人のこと、よく知りませんけど」


ポポッコの言葉に、全員やけに頷く。

これまでにオオスバメと接触し、魔法石を渡してきた人物

…オオタチだ。

オオタチ自体はアルセウスと直接の関係はないものの、ファントムと魔法使いを天秤にかけていた以上、【賢者の石】の在り処にはある程度目星を付けていた。

付けていた上で、ファントムや魔法使いをも振り回していたのだ。

思えばオオタチは、最後の最後に『オオスバメに任せた』…もはや賢者の石の行方を有耶無耶にして、オオスバメに全部を丸投げしたとしか思えない。

死んでも尚引っ掻き回すオオタチに、主にコータスとオニゴーリは頭痛を感じ始め…ヘイガニももはや白目を剥くしかない。


「「「…オオタチ(さん)だ…」」」

「あいつ、…最初から最後まで両陣営引っ掻き回しやがって…いや、多分アルセウスすら引っ掻き回してるぞ、あいつ…!」

「…まあその反応を見るに、あんまり碌なことしない人だったんですね…」

「オオタチ、オオタチ…うーん……あっ!」

「どうしたオオスバメ、期待してないから言ってみろ。オオタチへの文句なら思う存分聞いてやる、後でな」

「ジュプトル酷くない!?それよりも…」




「――俺、もしかしたらワイズマンの居場所分かるかも!」




オオスバメの素っ頓狂な発言に、全員が「…は?」と言いたげな顔で彼を見る。

これまでファントムの本拠地は誰にも知られていなかった。

コータスも基本的にはフリーで動いていたため、何処にワイズマンがいるのか…他のファントム達と集まる場を設けているのかは、分からない。

それなのにこのオオスバメはいきなり何を言い出すのか。

誰もがそう思っていると、オオスバメは必死そうに翼をバサバサさせながら話していた。


「いや、だって、オオタチが…オオタチから配達物の依頼を受ける際、必ず“ある場所”に来るように言ってたんだよ」

「で…その場所は?」

「【ゼロの孤島】…絶海の孤島で、そこには凶暴なポケモン達が住んでいるからまず誰も足を踏み入れない所。スピード・デリバリーもここに配達しに来るってことはなかったから、ちょっと気になってて」


【ゼロの孤島】

オオスバメが説明したとおり、ポケモンタウンから海を渡った先にある…小さな孤島。

しかしそこには星の停止の影響で暴走したポケモン達が多く存在し、更にゴールドランクの探検隊でも太刀打ちできない(※ただしオニゴーリは除く)ほどの力と凶悪性を持っており、ここに近寄る無謀なポケモンはまずいないと言われている。

当然、ここ関係の依頼はまず来ないし…オオタチのように、わざわざこんな場所を指定してポケモンタウン宛の荷物を送らせるような手間を掛けるポケモンは絶対にいない。

――そして、いくら仕事とはいえ何の疑いもなくオオタチの指定通りにやって来るオオスバメのような馬鹿は、限りなくゼロに近い希少種。


「ヨノワールさんだって今まで世界を旅して来て、それらしい場所は見てなかったんだろ?ブイゼルだって、普通のポケモンが立ち寄る場所にワイズマンがいたら目の力ですぐ分かっただろうし…」

「…確かに」

「時間も残されていない以上、【ゼロの孤島】である可能性に賭けるべき…ですよね」

「そうだね。それじゃあ、明日にでも皆で」



「――いや、万が一のことを考えると館長は残った方がいい。お前達もだ」


ジュプトルは茶を飲み干しつつ、ピカチュウ達に言い放つ。

…確かに今、雪花屋には避難してきたポケモンタウンの住人達が集まっている。

彼らをファントムの襲撃から守れるほどの実力があるのは、オニゴーリだけ。

しかしワイズマンの力は強大で、彼の力なくして勝てるとは到底思えない。……この点も含めて、ブイゼルという戦力がここに来て失われたのは大きいだろう。

ピカチュウはふるふると首を横に振りながら、ジュプトルを見ている…

恐らくこのまま彼とリザードンだけを行かせたら、絶対に無茶をするだろう。ずっと一緒に探検隊をしてきて、ずっとそばで彼を見ていたからこそ分かるのだ。


「だめ、…そんなの駄目だよ…私達も最後まで一緒に戦う」

「だがピカチュウ」

「だってこのままジュプトル達だけで行かせたら、絶対無茶する…それだけじゃない。ジュプトルが…」

「…」

「分かってるんだよ、ジュプトルがドラゴンと同化しかかっていること…ジュプトルは、隠し事なんて絶対できないんだから、分かるよ…さっき受けた怪我だって、本当はもう……」


ピカチュウの言葉に、周囲にいたポケモン達が反応する。

そして一斉にジュプトルの方を見るが…彼は否定することはしなかった。

そもそもジュプトルにしろリザードンにしろ、タイムリミットが存在する。

本来ならばファントムの力が希望を上回りファントムを生み出してしまうところを、ジュプトルの場合はどうか減少が起こりつつあるのだ…

当然これを止める手立てなど、思いつきようがない。

唯一希望があるとすれば【賢者の石】の力でジュプトルの中にいるファントム・ドラゴンを消し去ることだろうが…恐らくワイズマンもそれを知っている。

【賢者の石】に魔法使い達を近付けさせないよう対策は取って来るだろう。

そうしてタイムリミットが来て、リザードンがキマイラに命を食われ…ジュプトルがドラゴンと同化しファントムになるようなことがあれば、オニゴーリとはいえ命の保証ができない。

それぐらいに、厳しい状況なのだ。


「だが、恐らく敵も総力戦をしてくるだろう。その際、ポケモンタウンのポケモン達を守れるのは…館長やお前達だけだ」

「だけど!…だけどそれじゃあ、ジュプトルとリザードンさんが…ずっと一緒に戦って来たじゃない。最後まで一緒に居させてよ!!」

「ピカチュウ…」

「私の我儘だってことは分かってる。だけど、だけど…それでも……」




ミロカロスやギャラドス、ポポッコは互いの顔に視線を向ける。

ヤミラミも、コータスやヘイガニ・バンギラスも…その表情は浮かない。

ピカチュウの気持ちも分かる。だが、ジュプトルの言うことにも一理あるのだ…

そうしていると、オオスバメは難しい顔をしながら「じゃあさ」とジュプトルに提案する。


「…じゃあさ、戦力を分散させよう!【ゼロの孤島】に行くのはジュプトルとリザードン、ピカチュウとバンギラスさんと俺。残りの皆は、館長と一緒にポケモンタウンの人達を守る……それでもいいじゃないか」

「…」

「空にいれば大抵の攻撃は俺、避けられるから!…何よりこのままじゃ、俺もピカチュウも納得できないよ」

「別にいいじゃねぇか。何だかんだで、長い付き合いなんだろ?それに俺もお前も、無茶しようとすれば絶対止めてくれる奴がいるってのは…結構大事だしな」

「…、……全く、お前達は…。……分かった、ピカチュウ……明日の早朝【ゼロの孤島】に向かうぞ。だが絶対に無茶はするな、不安は大きいだろうがオオスバメから落ちるなよ」

「…!うん!!」

「そうと決まれば、早速準備する必要があるな!よし、牛乳瓶を5本…いや10本持って行くか」

「お前は牛乳から離れろ!」


リザードンに鉄拳を叩き込むバンギラスはさておき。

確かにワイズマンは、今すぐにでも儀式を始めたいはず…しかし未だその前兆がないということは、【賢者の石】が目覚めたばかりで充分に力を使えないのは本当だろう。

ならば早朝に出撃し、儀式が始まる前にそれを阻止する。

その際にメデューサは確実にワイズマンを守るため出てくるだろうが、それに関してヘイガニやコータスは心配している節があった。

…セレビィのことだ。

今はもうジュプトルも割り切れていたとはいえ、自分達以上に深い関係にあった2匹。

それについてジュプトルに訊ねるが、彼は魔法リングを確認しながら返していた。


「…あいつは、メデューサだ。俺の知っているセレビィではない、……倒すことに躊躇いはないさ」

「まあ、そうだろうけどよ」

「それよりも、本当に宜しいのですか?…いくらファントムが残っているのか分からない以上、ピカチュウさんを連れて行くのは……私からしても、危険だと思います」

「…、……大丈夫だ。あいつに危害は加えさせない、あいつもまた…守るべき仲間だ」

「…なあジュプトル、ちょっと聞いていいか」

「何だ」



「……お前、ピカチュウの気持ちに気付いていて言ってるのか?」


ヘイガニが、静かに訊ねる。

その言葉にジュプトルは手を止め、コータスも心配そうな面持ちでそれを見守っていた。

いつも一緒に居たのだ、彼女の好意の変化に気付かないほど…ジュプトルは鈍感ではない。

むしろリザードンやオオスバメですら察しているのだ、それほどまでに彼女の好意の表れと言うのは分かりやすかっただろう。


「お前自身の答え、聞かせてくれよ。…それによっちゃあ、お前がやろうとしていること…許すわけにはいかねぇ」

「…俺は、……あいつの気持ちには薄々感付いていた。だが、…俺はその希望を叶えることはできない」

「なんでだよ!…そこは嘘でも、『絶対生きて帰って来る』って言うもんだろ…なんで、死ぬ前提で話してんだよ……!!」

「その覚悟で行くからだ。…なに、俺も易々と死ぬつもりはない…これまでだってそうだった。必ず生きて帰って来て、そして、――今度は借金返済とかファントムとか関係なく…【ブレイブス】で探検隊をやりたい。それが今の俺の希望で、願いだ」


そう語るジュプトルの眼に、嘘は一切ない。

…本心から、言っているのだ。

最初はファントムとの戦いで壊してしまった雪花屋の修理費を稼ぐため、流れでピカチュウと探検隊をやることになってしまった…

しかし探検隊活動を続けるうちに、ミライやポッチャマがどうして探検隊をしていたのか、その楽しみが分かってきたのだ。

誰かのために何かをしたい、自分の出来ることをやりたい。

それは魔法使いも探検隊も同じで、特にピカチュウはヨノワールに憧れていたというのもあったが…何より、『誰かの力になりたい』と言う気持ちが強かった。

ドラゴンが一度死に、自棄になりつつあったジュプトルを励ましたのは…ピカチュウの言葉だった。

彼女のあの時の言葉が、自分の力になりたいという気持ちが、そしてその眩しさがジュプトルをもう一度立ち上がらせたのだ。

…だからこそ。

だからこそ、ピカチュウには平和になった世界で…ポケモン達のために、探検隊を続けてほしい。




ジュプトルの心情を察してしまったヘイガニとコータスが、何も言えずにいると…

今度はオニゴーリがやって来て、溜息をつく。

それを見てジュプトルは、何かを思い出したかのように細い茶封筒を取り出し、オニゴーリに渡す。

…それは、雪花屋修理のための残りの借金が入った封筒


「そうだ、館長。…あんたにも随分世話になったな」

「馬鹿言え。今渡されたらお前の生存フラグが完全に折れるだろ、――渡したいなら生きて帰って来て、それから渡せ。それまで受け取ってたまるか」

「…随分と無茶を言うな」

「ジュプトル、……たぶんあいつは…諦めないぞ。お前が突き放しても、それでも絶対…追ってくる。オオスバメと言う面倒な奴を連れてな」

「…、……だろうな」

「ジュプトル、これだけは答えろ。――お前あと、どのぐらい保っていられるんだ」

「…それは俺にも分からない。だが、俺は最後の最後まで諦めはしない…絶対に」


そうか、とだけ呟くとオニゴーリはそれ以上ジュプトルと言葉を交わすことはなかった。






〜〜〜






そして…



「……おい、本当にいいのか?」

「ああ。…まあ、ヘイガニや館長辺りは大体察しているだろうがな」

「違いねぇ。館長は元より、ヘイガニは勘が鋭い」


暗い夜の闇が支配する漆黒の海。

その海岸に立ちながら、リザードンとジュプトルは言葉を交わしていた。

…明日の朝出発する、と言うのは嘘だ。

早起きに関してはオオスバメへの勝ち目はないが、彼やピカチュウがぐっすりと眠っている夜ならば…

【ゼロの孤島】に向かうメンバーは、決死隊も同然。

そんな危険な場所にピカチュウを連れて行くことは、当然できない。――メデューサもいるのだ、常に最悪の事態は想定しなければならないだろう。

そうしていると、ゆっくりと自分達の背後に近付く大きな影。

……バンギラスだ。


「バンギラス!」

「お前、なんで…」

「お前らがやろうとしていることはお見通しだっつうの。…見張りがいないとお前らが無茶する、っていうのは確かだからな。その点、俺なら人質にされる心配はない」

「…いいのか?分かっている通り、危険なんだぞ」

「ああ。…それにお前、どうやって島に行くつもりなんだよ」

「危険は承知の上だ、それに俺の守りたい奴は…残して逝けない未練はそこの牛乳馬鹿しかいないんでね。それに渡航手段は……俺自身だ」


…かつて、嵐の海を渡り強行取材をしてきたという逸話を持つバンギラスにとって、夜の闇が支配するだけの暗い海など蚊に刺されたようなものだろう。

むしろ、【ゼロの孤島】まで自力で泳いで体力が持つのか、……と一瞬だけ心配するジュプトルであったが、その心配も必要ない。

それだけバンギラスの体力は底なしで、あの中の誰かがついて行くにしろ、彼以外に安心して同行させられる者がいなかったのも事実だ。



「それじゃあ、行きますか」

「ああ、そうだな」

「行くぞ…これが、最後の決戦だ!」






***




ジュプトルさんもう死亡フラグがゲッタバンバンじゃないですか


ケルピー…

いや、ブイゼル…

他にもやりようはあったと思います。ケルピーのままで一緒に戦うとか、ファントムの内部撹乱とか

だけどそういう器用なことはできなかった。

どの道リザードンがファントムの魔力を食べられなかったら、それこそメイジ以上の戦力を持つビーストを失う羽目になりますからね

最後の最後で気付いたリザードンは、SANチェック1/1D6



儀式を始めるには、まだ時間がある

…とはいえ悠長にはしていられませんよね。一分一秒も無駄にできない状況です

ヘイガニもそりゃあ黙っていたところはありましたが、彼の場合は確信がなかったわけですしね…

それにしてもこのヘイガニINT高いな

ポポッコも結構頭が回る方です。まあ、オオタチの代打ですからね…カオス成分は提供しませんが

(※でもバンギラスとヘイガニとギャラドスにとっては救いでもある)

オオタチは本当に碌なことしないw


しかしそのオオタチ、何とか希望は繋げていてくれたようで

…いやオオスバメも場所の時点で怪しめよ!

仕事馬鹿にもほどがある!!

そしてピカチュウとジュプトル…

互いに大事なパートナーであるからこそ、すれ違うというのはやっぱり辛い

ピカチュウはどんなことがあっても、最後までジュプトルの傍にいて、もしその最後が残酷だったとしてもその目で見届けたい

ジュプトルはピカチュウ達が平和な世界で笑顔で過ごせるためにも、何よりメデューサやワイズマンに利用されて命を奪われるような危険を避けたい



……今思えば、互いに戦闘能力があって尚且つ心配する必要がない館長とコータスって凄いカップルなんだよなあ…

コータスはセイレーンだし最終手段・館長は言わずもがな

安定性のあるカップルって他にいましt………スタトママン(最強の矛)とブラカワニパパン(最狂の盾)だ!!!

エイジスとヒナもまあ安定性はあるんですけど、ケイスケとタケシも心配はいらないんですけど…

ちなみに単独での心配不要枠は数多くあれど、ニールは絶望しない・身体能力高い・そもそも星の精としての能力も高いの三拍子だからなあ

館長は鬼・メガストーン要らず・変身しなくても最凶と言う、別ベクトルで不安しかない三拍子ですけど…


借金…返済間近だったのか…

そりゃ今すぐ返したら死亡フラグ立ちますよね。返さなくても立ちますが

そしてバンギラスェ…

バンギラスも心配不要枠なんですよね。固い・馬鹿力・ツッコミ役

この人はホント、ケルベロスとガチバトルしたりメデューサと戦ったり色々やっていたからなあ…エキサイティンッ!さんと絡まなければ不敗だった

……あ、エキドナの時点で無理か?




次回!

白銀のゼロがご乱心するのは確定・メデューサの末路は未定

ちなみに今回のタイトルに関しては、ブイゼルとジュプトル両方の意味になってます