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タイトル未設定 - 16話:本当の歌

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PURIN-cesのライブ会場。

そこでは客が一杯入っており、ファン達はライブ開始の時を今か今かと待っている。

その一方で…

楽屋で衣装を合わせながら、PURIN-cesは写真を見ていた。

そこにいたのは、優しい笑顔のプクリンの姿。

――そうしていると、楽屋に彼女付きのPPCの一員…ニョロトノがやってくる。

ニョロトノは満面の笑みでPURIN-cesに声を掛けていた。


「いやぁ〜!今日はお客さん凄く一杯入ってるよぉ、この調子ならピクシー・ノートとの売り上げ対決にも勝てるねぇ!!」

「……つき…」

「これも、偏に僕のプロデュースの賜物かなぁ〜。今時、清純派アイドルなんて古いしねぇ」

「…嘘つき!あなたの言うとおりにすれば売れるって言うから、やりたくもないキャラで売ってきたのに…結局すぐ別のアイドルに追い抜かされてるじゃない!!」


PURIN-cesは近くにあった雑誌をニョロトノに投げつける。

だが…

彼は首を傾げつつ、どうして?と言いたげな顔。


「僕は君の適正に合ったプロデュースをしただけだよ?現にほら、高飛車キャラも随分似合ってるじゃない!」

「あたしの適正…?」

「清純派のアイドルは多いからさ〜、同じようなタイプで売ると埋もれがちになるんだよねぇ。そんなありきたりだらけの中に、【高飛車小悪魔系】っていう新しいジャンルを開拓して君を売れるアイドルにした僕を褒めるならともかく、責めるのは筋違いじゃないかなぁ?」

「……信じられない…もういいから出て行って!顔も見たくない!!」



はいはい、とニョロトノは困り顔で出て行き…

そのすぐ後に、警備のポケモンを凍らせてやって来たオニゴーリとコータスが入ってくる。

どうやら話は総て聞いていたようで、コータスはPURIN-cesに詳しい話を聞く。


「…プリンさん、今の話」

「……笑える話でしょ。あたしのキャラって、PPCから派遣されたあいつが考えたの。こうすれば絶対売れるって…その結果がこの体らくよ」

「ところで、その机の上の写真は…」


コータスは机の写真に気付き、PURIN-cesに尋ねる。

彼女は「ああ」と写真のほうを見ながら、話をはじめていた。


「あたしのお母さん。1年前に死んじゃったけど」

「プリンさんの…お母さんですか?」

「プクリン……もしかして、最初にアイドルブームを切り開いたっていう…【RIN-RIN】か?」

「オニゴーリさん……アイドル関係に疎いのでは」

「ユキメノコがファンだったんだよ、だからそいつだけは名前も知ってる。だけど、確か事故で」

「…そう。――あたしはお母さんみたいなアイドルになりたい、って思ってた。お母さんは自分の歌が皆の生きる力になればって思いで、歌を続けていた…」


暗黒の世界に光が戻っても、暫くはどのポケモン達も戸惑っていた。

オオスバメのように前向きな馬鹿だったら、素直に喜び、生きる力を取り戻せただろうが…

他のポケモンは、そうも行かなかった。

そんな時、プクリンことRIN-RINは自分の歌が誰かの生きる活力になればと、各地で歌手活動をしていた。

そんな彼女の姿が有名になって、現在のアイドルブームの火点け役になったそうだが…

1年前、屋外ライブでの落石事故に巻き込まれ、この世を去った。




「あたしはお母さんのように、誰かを元気付けてあげられる歌手になりたかった。…でも、さっきも言われていた通りお母さんの物真似歌手が増えてきたせいで、なかなか売れなかった。歌う機会も自然と減ってきて……そうしたら、あいつがやって来た」

「「…」」

「あいつの言う小悪魔キャラは、確かに最初のうちは受けたでしょうね。高飛車な性格も。……だけど、こんなの本当のあたしじゃない…そこのコータスの言うとおり、やりたくもないことをやらされているだけだった」

「プリンさん」

「……なんか、見透かされているような気分になってさ。今の自分の頑張りを否定されているようで、ついカッとなって…ごめん。あの時叩いて」


PURIN-cesは小さく、コータスに頭を下げる。

そんな彼女の姿を見て、コータスは微笑み、オニゴーリは何かを考えている。

その一方で…

深く溜息をつきながら、オニゴーリはPURIN-cesに話していた。


「……PPCは確かに、フーディンのように売れるようしっかりサポートしてくれる奴もいれば…あのニョロトノみたいに自分の考えを押し付けてプロデュースしたつもりの奴もいる。…当たり外れがあるってことだな」

「確かにね」

「だけどな、本当に自分のやりたいことに誇りを持っていたら、PPCに反対されても通すのが一番だ。結局お前は、売れることに必死になって、自分の最初の目的を忘れていたってことだろ」

「…。……あたしの、最初の目的」

「どんなに売れなくても、お前はお前自身の夢を追えばよかったんだ。――お前の夢って、アイドルとして成功することで成り立つ夢だったのか?」



その言葉に、PURIN-cesは暫く考える。

だが…

時計の針を見て、「いけない」と声を上げていた。


「…もうすぐライブが始まる時間だから、行かないと」

「そうですか。頑張ってくださいね、私…プリンさんの歌、好きですよ。できれば、本当のあなた自身の歌が聞きたいのですが」

「…、……アンコールで考えとく」

「はい、楽しみにしています」


毒気のない笑顔を向けられ、PURIN-cesは戸惑いながらも…

急いでライブ会場のほうに、向かっていた。

オニゴーリとコータスも、ほぼ無断で楽屋に入っている以上は…ばれないうちに退散したほうがいいだろう。

そうしていると、――ヘイガニが慌てた様子でやって来ていた。


「…館長、コータス!ここにいたのか!!」

「ヘイガニさん」

「……お前、今まで何処に行ってたんだ?」

「迷子になってたんだよ!ここ無駄に広いし!!…まあそれはどうでもいいとして、とにかく来てくれ…ジュプトル呼んでる暇はないんだ!!」


ジュプトルを呼ぶ、という時点で大体の察しはついたオニゴーリ。

…と同時に、薄々予感していたことが当たってしまったことに舌打ちする。

コータスもすぐに理解したのか、オニゴーリと共に、ヘイガニの後をついていった……






〜〜〜






コンサート会場は、客が満員御礼。

ニョロトノもウキウキした気分でおり、PURIN-cesはそんな彼を白々しい目で見ながらも、ステージの上に立っていた。

…今日まではこのキャラでいよう

…だけど、あたしのデビュー曲を歌った後は


「――『皆!今日はあたしのコンサートに来てくれて、ありがとうっ!!』」


だが…

静まる会場。空しく響くPURIN-cesの声。

どういうこと、とPURIN-cesが会場全体を見渡すと、集まっていたポケモンの姿を見て目を見開く。

彼女のファンの中に、ピクシー・ノートのファンが会場全体に集まっていたのだ。

…それも、ピクシー・ノートの護衛として雇われたピカチュウやジュプトル、彼女のマネージャーでもあるフーディンまで。

そして…会場にいる総ての者達は、まるで操られているかのような虚ろな目で、退場コールをしていた。


「「「……かーえーれ、かーえーれ…」」」

「『なっ…何、なんなの…これ……』」

「――皆、あなたの歌を聞きたくないんですって。あなたのファン達も、私に乗り換えたみたい」


PURIN-cesの背後に現れたのは、…ここにいるはずのないピクシー・ノート。

「なんであんたが」と叫ぶPURIN-cesだが、ピクシー・ノートは彼女から強引にマイクを奪い取ると、会場中のファン達に声を掛けていた。

その瞬間、会場中のファンは大盛り上がり…ピカチュウやジュプトル、フーディンなども一緒になって盛り上がる始末だ。


「『皆、遅れてごめんなさい!……これから、皆がときめくライブを始めるわ!!』」

「なっ…何言ってるのよ、これはあたしの…」

「「「うわああああああ!」」」

「「「ピクシー・ノート…サイコーッ!」」」

「「「いえーいッ!」」」

「……ど、どうして、なんで…」

「『ほら、皆…私の歌のほうが聞きたいんですって。分かったら、負け犬はさっさと出て行きなさい』」



そう言って、ピクシー・ノートは姿を変え…

ファントム・エキドナへと変貌していく。

それを見たニョロトノは慌てて逃げ出し、PURIN-cesは腰を抜かして動けなくなる。

しかし、そんな彼らには目もくれず、エキドナはマイクを使って歌い始める。

観客も、彼女の歌による洗脳が効いているのか…誰も異を唱えない。


『それじゃあ…皆、まず最初は私のデビュー曲……【愛の花】をお送りするわ!』

「「「わあああああああああー!」」」

「…もーっ、ピクシー・ノート最高!」

「PURIN-cesなんか目じゃないぜ!」

「やっぱ、時代は清純派アイドルだよなー!」

「高飛車なんて時代遅れだよー!前から、PURIN-cesって気に入らなかったんだよねー!!」


…そんな

…どうして

…そいつは化け物なのに、何で皆

PURIN-cesはその場に手を付き、紫の亀裂が発生する。

それを見たエキドナは、後もう一押しだと思っていた。このコンサートで歌を流せば、洗脳が完成された客達は盛り上がり、より一層絶望してくれる。




その頃…

ヘイガニに連れられてコータス達がやって来た先にあったのは、音響室。

しかし、そこは既にグールによる占領が完成されている状態。

……やはり、ゲートはピクシー・ノートではなく…PURIN-cesだったのだ。

グールも手ごわい敵だが、ファントムと違って倒せないわけではない。

殆ど戦闘はオニゴーリ任せだが、音響室のグールは総て倒し、カメラの映像を見て「やばい」とヘイガニが叫んでいた。


「もうライブが始まってやがる!…ジュプトルは何してんだよ!?」

「もしかしたら、エキドナって奴に洗脳されたのかもしれないな。……四六時中ピクシー・ノートについていたら…いくらアイドルに興味がない奴でも、洗脳される」

「そんな…このままじゃ、プリンさんが」

「何とかして相手のライブを妨害して…その間にジュプトルを元に戻さないと!でも、どうやって…」


ヘイガニが何か手はないのか、周囲を探し始める。

だが…

その瞬間、放送用のマイクに気付き、妨害に近い歌を歌い始めていた。

ちなみにこれはボケではない、――ヘイガニの歌の引き出しが…少ないからだ。


「――『父ちゃんも爺ちゃんも婆ちゃんもー、たかし君も、マンドリルも』ー!」

「「えええええええ!?」」

「『ブートキャンプに行くのならー、豆食え!豆ー!!』」

「ヘイガニさん…ヘイガニさん!?」

「選曲…選曲ヒッデェェェェェー…!」




オニゴーリすら動揺し、絶句する選曲…

音を半音上げたがるヘイガニの癖の相俟ってか、壮絶なカオス。

しかし、ライブの妨害には若干成功しており、客も疑問に思いつつある。

エキドナはチッと舌打ちすると、グールの種をばら撒き、音響室の邪魔者を潰すよう命令する。


<モリモリ体が作られるー!壮絶な、色気ェ… 豆は畑のお肉なりー!!>

「な、なんだ…?」

「何が…?」

『チッ…あんた達、邪魔者を始末してきなさいっ!』

『『『グゲー!』』』


グール達はステージの裏にすぐ回ると、迷わず音響室まで突っ走る。

そして音響室の扉を開け放ち、ヘイガニの絶叫が会場に響く。

その数はかなりのもので、オニゴーリでも捌ききれるかが分からないほど。

オニゴーリは舌打ちすると、コータスに言い放つ。


「コータス、お前が歌え!…ヘイガニは俺の気が狂いそうになる!!」

「館長ヒッデェェェー!お、俺だって…俺だって必死になぁ……」

「へ…ヘイガニさん。オニゴーリさんを手伝ってください…お願いしますから」

「――その必要はねぇよ」



その声が聞こえた、次の瞬間。

…入り口前に屯していたグールの軍団を、6体の牛のようなエネルギー体が一掃する。

そして音響室の中に入り、暴れようとしていたグールに剣で切りかかる…黄金のライダー。

それを見たヘイガニ達は、「えっ」と声を上げていた。

――例えるならば、金の獅子。

その右肩にはオレンジのマントが翻っており、手には特殊な形状をした細身の剣。


「あれって、もしかして…」

「新しい…魔法使い?」

「お前は、一体…」

「グールとはいえ、いい狩場に当たったみたいだな」


獅子の魔法使いの背後からは、無数のグールが現れる。

恐らく、エキドナ以外のファントムもここにおり…無尽蔵にグールを生み出しているのだろう。

その魔法使いは剣を構えると、ヘイガニ達に言い放つ。


「ファントムは…今回の所は、ウィザードに譲ってやる。さっさと耳障りなライブを何とかしな!……つっても、俺耳栓してるから意味ねーけど」

「と…とにかく、館長は会場に直接向かってくれ!ジュプトルは物理で叩き起こしたほうが早い!!……コータスは…歌、お願いしまっす……!」

「あ、はい」

「よし、あの馬鹿ぶっ飛ばす!」






〜〜〜






妨害ソングが止み、エキドナはライブを続行。

観客達は大盛り上がりで、PURIN-cesの状態に誰も気付いていない。

彼女の亀裂は大分進んでおり、このままではファントムを生み出す寸前…


「…あたしのやって来たことって、全部無駄だった……意味なんて、まったくなかった…」


もはや手遅れになるかと思われた…

その時だった。

会場内に歌声が響き、会場の空気が変わりつつある。

PURIN-cesもその歌を聴いて、顔を上げ始めていた。


<堪えきれずに今流した君の、涙が光って それでも変わらずに気ままな風は胸を揺さぶるよ>

「…これって…」

<頑張ることは大切だけど、正直な君の弱さを 隠すためだけにある強さなら、なくていいから>

「…あれ?結構いい歌…」

「本当だ…」

「なんか…癒されるって言うか…」

<今は見えなくても、確かに君の胸の中にある 何かを信じぬく強さは、君の笑顔を待ってる…>



その歌を聴いたPURIN-cesの亀裂の発生するスピードは、緩やかになっていく。

それだけではない…

会場にいた客も、次第に正気を取り戻しつつあったのだ。

そして、目の前で歌っているのが怪物だと知り、一匹のポケモンが大声で叫び…観客の洗脳は完全に解ける。


「――おい、あれって…化け物!?」

「「「うわああああ!?」」」

「「「きゃーっ!」」」

『なっ…なんであたしの歌がッ!?』

「…当然だ!」

<シューティングストライク、 スィースィースィー!スィースィースィー!!>


突如、エキドナに水の弾丸が放たれる。

避けることができず、エキドナは弾き飛ばされ…

その先にいたのは、ウィザード・ウォータースタイル。

…その頭はでかいタンコブができているが、それは無視しよう。多分館長のせいだから。


『お前は…指輪の魔法使いッ!?どうして…あんたには、あたしの歌を間近で聞かせて、洗脳下にいたはずじゃ!』

「それは…館長の怒りの鉄槌で、どうにでもなった。まあそれはともかく…お前の歌は人を操れても、心には響かない。それだけの話だッ!」

<ウォーター、ドラゴン ザバザババシャーン、ザブンザブーン!>

<チョーイイネ! スペシャル、サイコー!!>



ウィザードWSはこの間オオスバメから受け取った、ウォータードラゴンリングで強化変身…

更に、ウィザード・ウォータードラゴンは尻尾を生やし、エキドナを攻撃。

エキドナも自らの尾で応戦するが、ウィザードWDはすかさず魔法リングを指に填める。

“ブリザード”

あの館長に渡された魔宝石らしく、氷結系の魔法はエキドナを容赦なく氷漬けにする。

こうなってしまえば身動きは取れなくなり、ウィザードWDは尾の一振りでエキドナを砕いていた。

ウィザードWDは一息つくが、PURIN-cesを保護していたピカチュウの声に気付き、すぐさまエンゲージリングを取り出す。


「…ジュプトル!早く、PURIN-cesが!!」

「ああ、分かっている!」

「……あんた達は…」

「操られていたとはいえ…すまなかった、だが、必ずお前を助けてやる!」

<エンゲージ、プリーズ>




PURIN-ces…プリンのアンダーワールドは、母親・プクリンと過ごした平和な時間。

最初はプクリンのやり方を受け入れられない者もいただろうが、彼女の歌で元気になり、笑顔を見せるポケモン達の姿は…彼女の心の支えとなっても、不思議ではない。

そんなプクリンのようになりたいと願っていたのなら、尚更。

そうしていると、亀裂が発生し…襲い掛かってきたのは、ヨルムンガンド。

ヨルムンガンドは毒液を撒き散らすと、プリンのアンダーワールドを破壊。


『ギシャアアアアア!』

「くっ、随分と暴れん坊のファントムだな…だが!」

<ドラゴライズ、プリーズ>


ウィザードWDはドラゴライズでウィザードラゴンを呼び出し、更にドラゴンの力を使っていたウォータードラゴンスタイルが解除される。

ドラゴンの力を借りるスタイルは、アンダーワールドではドラゴンを呼び出した時点で自動的に解除・下位スタイルになるのだろう。

ウィザード・ウォータースタイルはドラゴンの背に乗り、ヨルムンガンドを追跡。

相手のスピードは恐ろしく速く、「あれ蛇の一種じゃないのかよ」と突っ込みを入れながらも、ウィザードWSは相手の背後からスラッシュストライクを放つ。


<スラッシュストライク、スィースィースィー!スィースィースィー!!>

「…はっ!」

『グギャアアアッ!?』

「そして…これでフィナーレだッ!」

<チョーイイネ! キックストライク、サイコー!!>



ウィザードWSはそのままジャンプすると、右足にウィザードラゴンが合体し、それごとヨルムンガンドに突っ込んでいく。

事前のスラッシュストライクで怯んでいたヨルムンガンドは、そのまま呆気なく撃破…

「ふぅ」と一息つきながら、ウィザードWSは背後を振り返る。

――そこにあったのは、プクリンのステージ。彼女の歌で元気になり、希望を見出すポケモン達の姿…

その客の中には、プリンも勿論いた。


「……歌で希望を作る、か」






〜〜〜






ライブ会場はメチャクチャになり、CD売り上げ勝負どころではなくなる。

いや、それ以前にピクシー・ノートことピクシーはファントムだったのだ…

ゲートであるプリンを絶望させるため、彼女のライブに乗り込んできたことからそれは明らか。

当然、彼女のファンであった者達も激しく落ち込み、ピクシー・ノートのCD総てが廃棄となっていた。

今回の件に関して、フーディンも非常に残念だと話す一方で、自分がファントムに利用されて彼女を有名にさせていたことを悔やむが…

PPCのトップでもあるルージュラは、むしろフーディンの真摯な態度に心を打たれ、今回のことは不問にしていた。

そして…


「…新しい魔法使い、だと?」

「本当に!?」

「ああ…なんっつーか、今までにないタイプだったな。獣っぽかったし」


ヘイガニの話を聞いたジュプトルとピカチュウは、かなり食いついていた。

――新しい魔法使いの登場…

確かに、今までは白い魔法使いとウィザードしかいなかったのが、ここに来て3人目の魔法使いが出てきたのだ。

…となると、これからファントムの猛攻が予測されるのも、確実。

「これから気が抜けなくなるな」とジュプトルが呟く一方で、ニョロトノが営業モード全開でコータスに声を掛けているのに気付く。



「さあ〜!聞いていたよ、君の歌声。まさに天から与えられた才能だよぉ!!」

「…はあ」

「そこで、僕が直々に君をプロデュースしたいと思っているんだけど…どうかな?清純派アイドルなんて古いし、小悪魔系アイドルも最初の頃はよかったけど、売れ筋が伸びないって分かったからね〜」

「……」

「そうだなぁ、ロックンロール系なんてどう?これから流行ると思うよ〜!」


何やってんだあいつ、とジュプトルが呆れる一方で…

コータスはマイクを持ったまま暫く考え、

――ニョロトノ目掛けて、それを投げていた。しかも頭にクリティカルヒット。


「あだっ!?」

「…申し訳ありませんが、謹んでお断りいたします」

「いたた〜…なっ、何言ってんの?僕はPPCの一員だよ?僕の言うこと聞けば、絶対トップアイドルになれるのに!」

「私は【雪花屋】の一員です。今回は仕方なくやりましたが、私が歌を聞いてもらいたい相手は…一人しかいませんので」

「――そ・れ・に…館長から聞いたぜ?あんた、プリンに無理させてたって。自由にプロデュースできる立場だからって…人の人生掛かってんだぞ?」

「それを、自分の適当な意見を押し付けるだけに飽き足らず…コータスを引き抜こうとするたぁ、……命(タマ)取られる覚悟…できてんだろうな?」




ヘイガニと、それからオニゴーリに詰め寄られ…ニョロトノは慌てて逃げ出す。

その際、プリンと鉢合わせ、彼女に媚びようとしていたが…

プリンの反応は、冷たかった。


「――ぷっ、PURIN-ces!……いやー、やっぱり僕の思うとおり、清純派アイドルなんて本性知ったら皆離れていくもんなんだよ。これで君も、僕のプロデュースに納得…」

「悪いけどあたし、もう小悪魔キャラ辞めるから」

「そう、辞め…えっ?」

「やっと分かったの。あたしは売れるために歌っていたんじゃない、お母さんのように皆を元気にさせる歌を歌いたいためだけに歌っていたんだって…だから、もうあんたクビね」

「それはよろしいですね。他の人にプロデュースなんてされないほうが、プリンさんには合ってます」

「え…えええええー!?」


プリンからも、コータスからも言葉の平手打ちを食らい…

ニョロトノは愕然としながら、真っ白になっていた。

――女って恐ろしい…

ジュプトルとヘイガニはそう思いながらも、ニョロトノの様子を見る。

絶望はしているのだろうが、ファントムを生み出さない辺り…ゲートではないのだろう。

そして、プリンは一枚のCDをコータスに渡す。

…それは、彼女のファーストシングルだった。


「……ライブは中止になっちゃったけど、あたしの最初の歌を聞かせるって約束だったから。あたしが小悪魔キャラやる前の歌って、これしかないんだよね」

「プリンさん…はい!大事にします!!」



最初は険悪だったのに、ここまで仲良くなるとは…ジュプトルも、ピカチュウもいい意味で予想外だっただろう。

この友情がずっと続くことを祈りながらも、彼らは微笑ましげにコータスとプリンを見ていた…






その頃。



『よぉ、お前の作戦…失敗に終わったみたいだなぁ?ベルゼバブ』


廃墟では、フェニックスが戻ってきたベルゼバブを冷やかす。

しかし、ベルゼバブはそれに憤ることなく、余裕の表情…

失敗したのに、何をそんなに余裕になっている。

フェニックスは苛立ち始め、ベルゼバブに詰め寄ろうとしていたが……その前に、メデューサが制止させていた。


『やめなさい、フェニックス。……作戦は、成功よ』

『あぁ?だってこいつは…』

『あのプリンを絶望させるだけの作戦だと思っていたの?』

『何…?』

『フッ…私はそもそも、エキドナにあまり期待はしていない。ただ、あのライブ会場で見定めたかっただけなのだよ……次なるゲートを』


…ベルゼバブの作戦。

それは、プリンのライブを利用して…集まったゲートを呼び寄せること。

エキドナの歌は、洗脳効果もあるが…特にゲートに強く作用する。

ただし、最初ジュプトルに効果が薄かったのは指輪の魔法使いであったこと…オニゴーリの場合は何故かエキドナの歌の耐性が強く、効き目が殆どなかった。

オオスバメは…あれで操れたら苦労しない。多分あれは、セイレーンがいても絶望不可。


『私は事前にこの作戦を、メデューサに話していた。中にはゲートではないポケモンも混じっているだろうからな…念には念を入れた、というわけだ』

『そして、今回意外な奴も釣れたわ。……古の魔法使い、ビースト…以前ワイズマンから話は聞いていたけど、まさか本当に存在するとは』

『ぐ…!』

『だけどベルゼバブ、いくらあなたが策を練るのが得意でも…他の誰かの入れ知恵でもあったんじゃないの?……私はそう思うのだけど』




ベルゼバブはフッと笑うと、その場から姿を消す。

そして…

彼が訪れていたのは、静かな森の奥。

そこで花輪を作りながら待っていたのは、――ペガサス。


『……力添え感謝する』

『どうもー。君の力を存分に利用できる作戦、どうだった?』

『ああ。…お陰で、ゲートたるポケモンを大勢見極めることができた。……しかし、お前は一体何者だ?』

『自分は謎のファントム、ってことで。……第一、ファントムは基本的に脳筋ばかりで…メデューサも一体ずつしか見極めないですぐ絶望させようとする』


もう少し頭使えばいいのにねー、とペガサス。

…ベルゼバブは、ジュプトルがポケモンタウンに来る少し前から…このペガサスと接触していた。

最初は自分も知らないファントムということで警戒していたが、ペガサスは

“ゲートを大勢発見し、更に上手くいけばファントムを生み出せるいい作戦がある”

“時間は掛かるが、それなりに効果はある”

“君の所にいる、エキドナというファントムの能力と、君の能力…この2つを合わせれば、必ず成功する”


『…ところでお前は、ビーストという魔法使いを知っているか?』

『全然?でも…』

『でも?』

『……ファントムを嗅ぎ回っているポケモンが、いるらしいね。それがビーストかはともかく、対策は取るに越したことはないんじゃない?』

『……確かにな』


ベルゼバブが思い出したのは、…バンギラス。

彼はファントムへの食いつきが強く、ウィザードのことも調べているような感じだった。

…確かに、あまり周囲をうろつかれても困るのは事実か

そう思ったベルゼバブは、その場から姿を消し…ペガサスもまた、翼を羽ばたかせていた。






***




誰が予測できただろうか…

2話に渡って、オオスバメの出番がないという事態が起きようとは!(ついでにオオタチ)

…でも逆に、こいつらいなくなると空気ブレイカーがいないんだよな…

お陰でヘイガニがボケに走って盛大に滑った感、満載w


ニョロトノは軽く屑ですw

いや、悪意はないんだよ…悪意はない。最初はニョロボンの予定だったし。

でも…ニョロトノのほうがいいや、って思ったからこうなったw

プリンも被害者なんですよねぇ…色んな意味で。

後々ヘイガニが言うように、人の人生懸かってるんですから真剣にしてもらいたいもんです。



エキドナの正体は…ピクシーでした。

そして、フライング登場のビースト!正直、本当は出す予定なかったですw

その上、やっとウォータースタイルでアンダーワールド突入ができました…でもよく考えれば、今回無理にプリンを絶望させる必要なかったような……

ヘイガニw

オオスバメ&オオタチの不在+ピカチュウとジュプトルの洗脳がこんな所で響くとはww

お陰でオニゴーリ館長もメッチャ戸惑ってますがなwww

そしてニョロトノェ。


オオスバメ→前向き意見

コータス→正論+親身になって話す

オニゴーリ→正論+やや自虐+人生経験談

ジュプトル→士の説教みたいな感じ

…メインメンバーの説得って大体こんな感じ。

ヘイガニは思いつく(感情に素直なので想いをストレートにぶつける)けど、ピカチュウはあんまり思い浮かばないなぁ…

劣化コータスって気がする。

逆に、そんなピカチュウよりも遥かに思いつかないオオタチwこいつの説得はオオスバメ以上に分からんww




次回は…

バンギラス回と思ったか?

残念、ヘイガニ回だ!

余談ですけどつい最近、久し振りにキッズステーションでアドジェネ見ました。

ちょうどヘイガニの加入+キバニアの川のお話でした…初期のヘイガニ声低ッw