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タイトル未設定 - 13話:魔法使いの宅配便

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13話:魔法使いの宅配便

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――この日、ジュプトル達【ブレイブス】は…

というよりジュプトルは…



「――どうも、スピード・デリバリーです!」

「あら、いつもご苦労様。ところであなた、見かけない顔d」

「すまん次の配達があるんだそれじゃあな!」

「あ、ちょっと!…オオスバメ君並みに速いと言うか、ただせっかちなだけと言うか…」



「………あぁぁもおおおおおお、何で俺がこんなことおおおおおおお!」






【スピード・デリバリー】でバイトをさせられていた。

理由はただ一つ。

この間のフェニックス襲撃のせいで、配達員がオオスバメ以外全員怪我をしている。

流石に、オオスバメ一人では残業させても無理だろうと思った所長のヨルノズクであったが、オオスバメが


「あ、俺、いい友達知ってるんで大丈夫ですよー」


…ということで、ジュプトルを勧誘

というよりは、ジュプトルに少しの間【スピード・デリバリー】の仕事を手伝ってもらえないか頼みに来たのだ。

フライング土下座で。




「お願いぃぃぃ!ジュプトル、スピデリ暫く手伝ってぇぇぇぇぇ!!」

「断る!誰があんな恐ろしく過酷な労働現場に行くかーッ!!」

「希望の魔法使いがゲートを絶望させてもいいの!?俺絶望しちゃうよ結構本気で!」

「嘘つけお前絶対絶望しないだろ!お前より館長のほうがよっぽど絶望するぞ本気で!!」

「うあああああああ!お願いしますジュプトルさん、ヨルノズクさんも働いた分のお給料出してくれるって言ってるしー!!」

「この間ヘイガニに聞いたぞ、日給にしておよそ500ポケだと!あの忙しさから絶対割に合わん!!」


オオスバメがわあわあ泣きながら説得するが、ジュプトルは彼の頭を掴んで引き剥がそうとする始末。

…朝から仲いいな…

ヘイガニはそんなことを思いながらパンを頬張り、コータスとオニゴーリは静かに茶を飲んでいる。

ピカチュウは……まだ夢の中。

そうしていると、オオスバメは“最後の切り札”としてある物をジュプトルに見せていた。


「お願い!この間貰った【コレ】あげるからー!!」

「何を渡されても…って、お前これは!」



――それは…

行方知れずだったはずの、ウォータードラゴンリングだ。

流石にそればかりはヘイガニやオニゴーリ、コータスも驚いており、何故オオスバメが持っているのか全員で問い詰めていた。

…主にジュプトルの問い詰め方が過激すぎて、ヘイガニに顎を殴られていたが。


「……あだだだだだだだだ」

「で、何でオオスバメさんがそれを持ってるんだ?」

「うん。実は昨日の夜、変なファントムがやって来てね?」


オオスバメの話によると…

昨夜、家に帰る途中で彼はペガサスファントムに出会った。

……互いに『こんばんはー』と挨拶する謎っぷりで。

それはさておき、ペガサスファントムはオオスバメにウォータードラゴンリングを渡しながら、こう言って来た。

“困っているならこれ使いなよ?”

“これを交換条件に差し出せば、指輪の魔法使いも手伝ってくれるでしょ”


「ってことは、ペガサスファントムは…オオスバメさんの事情を知っていた上で、その指輪を?」

「みたい。これって、館長が前に言ってた奴だよね?」

「ああ…もう一方の片割れだ」

「とりあえずオオスバメ、それを寄越し…」

「やだ」

「おい」

「やだ」

「焼き鳥」

「やだ」

「…寄越せって言ってるだろうが根性の意味を履き違えてるボケスバメェェェェェ!!」

「やーだー!ジュプトルが手伝ってくれるまで渡さないー!!手伝ってくれないと指輪捨てるし絶望するよー!!!」

「お前が絶望する時は世界の終わりの時ぐらいだ、それは断じてない!だが指輪は捨てるなー!!」

「だったら手伝ってぇぇぇ!」




「――うるっせぇんだよお前らァァァ!」

「「ぎゃーっす!」」


ジュプトルとオオスバメの論争は、最終的にオニゴーリの武力行使(=氷の礫)で強制解決。

効果抜群の一撃をそれぞれ貰い、その光景に、やっと起きてきたピカチュウは眠気がすっかり覚めるほど。

一方で…

オニゴーリは呆れたように溜息をつきながら、ジュプトルに言っていた。


「働きに応じて変動はするだろうが…3日間手伝えば1500ポケ貰えるし、ウォータードラゴンの指輪も貰える。受けてやってもいいんじゃないか?」

「そうは言うがな…」

「スピデリも大変だって分かるけど、私達だって探検隊の仕事が」

「雪花屋の修理代、まだいくら残ってたっけなー…」

「――ジュプトル、行きなさい。探検隊は私とヘイガニでも何とかなるから」

「おいピカチュウゥゥゥ!?」



最終的に、リーダーの強制命令もあり…

また、ヘイガニとコータスからも


「まあ、……南棟はヘルハウンドに燃やされたとはいえ、元々はお前が2話で派手に壊したのも悪いし…やっとけジュプトル、館長が本気を出せば…誰よりも先にお前が絶望するぞ」

「残りの返済額は1万1700ポケなんです、……頑張ってください」


と言われ、本格的に味方がいない状況。

遂にはジュプトルもがっくり膝を突き、そんな彼の肩を優しく叩いたのは

…そもそもの根源たるオオスバメだった。


「……お前ら…」

「まあまあ、それにノルマ以上の仕事をこなせば500ポケ以上稼ぐことも出来るわけだし…借金返済目指して頑張ろう!」

「いや、――そもそもお前のせいだろうがああああああ!?」

「えー俺濡れ衣ーっ!?」






〜〜〜






【フラワー商店】。

ここは、ラフレシアの道具屋とキレイハナの技マシン屋があり、商店街の美人姉妹として有名でもある。

ジュプトルが最低限のノルマをこなし、ヘトヘトになって歩いていると…

大荷物を持ったオオスバメとラフレシアが、何やら話をしていた。

…巻き込まれたくない

そう思ったジュプトルは通り過ぎようとしていたが、その前にオオスバメに気付かれ、呼ばれていた。


「あ、ジュプトル!……きーいーてー」

「分かった、分かったから泣くな!暑苦しい!!」

「ずびずび。…グミの詰め合わせ20箱、急ぎで届けに来たんだけど…ラフレシアさんはそんなに頼んでないって」

「え、ええ。だって、グミは最低でも1日2箱分しか頼まないのに…そんなに来るはずないもの」

「…発注ミスとかじゃないのか?それよりもどうするんだこれ、持って帰るにしても……多すぎるだろ」


うーん、と頭を悩ませる3人。

だが…

フラワー商店の物陰に隠れながら、ヴァルキリーはくすくす笑っていた。

実は、今回の件は彼が仕組んだ罠。

店員の身に覚えのない発注ミスと言うことは、商品を取り寄せた側のほうに責任がいく…

かといって18箱もどうすることも出来ないだろう。


(くくっ、これなら確実にあのオオスバメも絶望するはずだ…!)


だが。

オオスバメは「んー」と暫く考えた後、笑顔でこんな提案をしていた。



「じゃ、俺が全部買います!」

「「は!?」」

「え?」


ジュプトルの声と重なるように、ヴァルキリーの叫び声がするが…

彼は慌てて口を押さえ、ジュプトルに気付かれることはなかった。

しかし、18箱分も買ってどうすると言うのか。

ラフレシアもそれは結構な金額になると言うが、オオスバメはあまり気にせず、むしろジュプトルをこき使っていた。


「でも、結構お金掛かるんじゃ…」

「あ、大丈夫です。稼いでますんで!……はいジュプトル、運ぶの手伝ってー」

「何で俺が!?」

「暇そうじゃん。俺も休憩時間だし、はいはい行くよー」

「…駄目だ、俺、いつかあのオオスバメ殺しそう…!」


若干の殺意が見え隠れしながらも、素直にグミ入りの箱を運ぶジュプトル。

しかし、流石にこの発注ミスの量はありえないと薄々思っていたのか…

これはファントムの罠ではないのか、と言う疑いの目を向けていた。

だが、――ジュプトルはむしろ、今回オオスバメを絶望させるために派遣されたファントムに……同情心を抱いていた。


(…今回のファントムとは、色々な意味で分かり合えるんだろうなぁ……俺)





オオスバメが向かったのは、サーナイトの保育所。

サーナイトが園長を勤めるこの保育所では、身寄りのないポケモン達が身を寄せ合って生きている。

彼らが今日も元気に遊んでいると、


「こんにちはー!」

「あ、オオスバメのお兄ちゃんだー!」

「「「わー!」」」


ピィにピチューにキャタピーにケムッソと、小さいポケモン達が一斉に群がる。

そうしていると、サーナイトがやって来て、「あら」と声を掛ける。

どうやら知り合いのようで、お辞儀をしながらオオスバメと話をしていた。


「こんにちは。今日はまた、随分と早くに来ましたね」

「あ、そうそう。実はちょっとした理由で、グミの詰め合わせを18箱買い取ることになっちゃって。これで暫くは、子供達のおやつに困らないと思うんだけど」

「そうなんですか…いつもすみません、子供達によくしてもらっているのに、お返しが出来なくて…」

「いいのいいの。俺は、誰かの笑顔を見るのが好きなんだから」

「ありがとうございます。……ほら、皆、オオスバメさんからグミを貰ったから、お礼をしなさい」

「「「はーい!」」」



キラキラと笑顔を見せる保育所のポケモン達。

そんな彼らの姿に、ジュプトルは「もしかして」と思いつつある。

…ついでに様子を見ていたヴァルキリーも…


「なあ、オオスバメ。お前いつもこんなことしてるのか」

「んー…いつも来れるってわけじゃないけどね。3年前まで光のない世界で、その際親と離れ離れになった子はたくさんいるよね」

「…」

「この子達には、いつも笑顔でいて欲しいんだ。だって、くよくよ後ろ向きに考えるより、明るく前向きに生きたほうが楽しいじゃない」


オオスバメ曰く、彼もまた、スバメの頃に親が時間停止の影響で狂い…

それ以来ずっと、一人ぼっちだったそうだ。

…他のポケモン達も、生きることをすっかり諦め

…希望も何もないまま生きることに、絶望して

…生きることに意味がないのなら、いっそ狂ってしまう者もいた

そんな感情を持っているポケモン達は、恐らく、3年前には9割ほどいたことだろう。

それはジュプトルもよく知っているし、彼はこの状況を打破するためにミライと共に過去の世界へと飛んだのだ。


「……でもお前って、暗黒世代の割には馬鹿みたいに突き抜けて明るいよな」

「えー、俺だって昔は根暗でしたー」

「嘘つけこのバカアホ押すバメ」

「それに、――俺…前にジュプトルと会ってるんだよ?」




前から、自分を知っている。

その言葉に、ジュプトルは記憶を辿るが…

目の前にいるオオスバメと一致するような性格のオオスバメなど、一切記憶になかった。


「……嘘つけこの馬鹿アホ押すパンツバメ」

「えー!?」

「お前のような、ファントムを浄化する勢いのシャイニングバカオーラ満載なオオスバメと、過去に出会った記憶が一切ない!あったらかなり覚えてるぞ、俺!?」

「酷いー!俺だって昔は根暗だったのに!!信じてないんだこの失恋燃え尽き症候群ー!!!」

「それはサトシのジュプトルもといサトシのジュカインの古傷だ、それ以上抉ってやるなァァァ!」

「うあー!うあー!!うあー!!!」


「嘘だ」と言い切るジュプトルに、「本当だって」と断言するオオスバメ。

互いに互いの証言の食い違いが発生し、議論は止まらない。

…オオスバメだけ途中から「言葉」ですらなくなっていたが…

そうしていると、これ以上は埒が明かないとばかりにジュプトルが尋ねていた。


「――えぇいこの話はこれで終わりだ!」

「えーっ!」

「それよりも、……ここがお前の【希望】ってことだろ。要するに」

(そうだよ、それだよ指輪の魔法使いぃぃぃ!)


ヴァルキリーも、影でガッツポーズ。

しかし…



「え?違うよ」

「「何ですとーッッッ!?」」


またもジュプトルとヴァルキリーの声が重なり、ジュプトルは流石におかしいと声のしたほうを見る。

だが、気配は殆どなく…

ジュプトルは頭を掻きながら、何がオオスバメの希望なのか聞いていた。


「こいつらの存在がお前の【希望】なんじゃないのか?」

「んー…というよりは、希望の一つに過ぎないってやつなのかな?」

「何?」

「さっきも言ったとおり、3年前まで皆…生きるのも諦めているような顔してたじゃん。だから、今こうして太陽の光を浴びて…皆笑顔でいられるようになって、本当によかったなぁって思うんだ」

「……」

「俺が配達員やってるのも、ここにグミを時々届けに来てるのも、皆の笑顔が見たいから。誰かの笑顔が、俺の【希望】の一つなんだろうね」


誰かの笑顔を見ることが、自分の希望

…その言葉にジュプトルは、どこか納得できる節があった。

そもそも、この世界に光を…時間を取り戻そうとしたのも、このままではいけないと思ったから。

“生きる”という希望を、暗黒の未来世界のポケモン達に与えたかった。

時限の塔の崩壊によって訪れるであろう絶望の未来から、過去のポケモン達を守りたかった。


「……お前もお前なりに、今を生きているということか」

「え、何?」

「なんでもない。…それより、さっさと配達終わらせてさっさと指輪渡せよ!」

「はいはーい」




しかし…


(誰かの笑顔があいつの希望…ならば、目の前でそれを台無しにすれば……!)






〜〜〜






本日分の配達も、粗方終わり。

残るは、小包1箱のみ。

ジュプトルは遂にハリケーンスタイルを悪用(否、有効活用)し始めたので、ノルマ分に加算された仕事を終えていた。

…お陰で、疲労はMAXだったが…


「それで終わりなのか?」

「うん。こればかりは、大事にお届けしないと…」

「割れ物か?」

「じゃ、ないんだけど…あ、ジュプトルには説明しなくても分かるよね?」

「何だと?まさか、魔宝石とかじゃ」

「もー、終わったら【雪花屋】でご飯食べるついでに上げるってばー。そうじゃなくて、」



『――その小包、台無しにさせてもらうぜっ!』



突如、風を切るようにヴァルキリーが現れる。

ファントムか、とジュプトルがウィザードライバーを構えるが、その前にヴァルキリーはオオスバメから小包を奪い取る。

目にも留まらぬ速さ。

それを見たジュプトルは舌打ちし、オオスバメは感心していた。


「くっ!」

「うわー、凄い速いなぁ…ねえねえ、スピデリで働かない?」

「勧誘してる場合か!小包盗られてるんだぞ!!」

「へ?…うわーっ、本当だ!?……ちょっ、それ返して!」

『やなこった。これがお前を絶望させるのに、ちょうどいいと分かったからな!』


そう言って、ヴァルキリーは上空から小包を投げ落とす。

ジュプトルとオオスバメが慌ててキャッチしようにも、間に合わず…

“ぐしゃり”、と音を立てて中の物ごと小包が潰されていた。


「あ。―――あーッッッ!?」

「しまった!」

「ど、どうしよう…これ…この小包……」

『はははっ。絶望して、ファントムを生み出しなぁ!』


オオスバメは小包の前で、がっくりと項垂れる。

…まずい

そう思ったジュプトルはエンゲージリングを取り出し、オオスバメを救う体勢を整えていたが




いつまで経っても、オオスバメに紫のヒビが発生する様子はない。

「ん?」とヴァルキリーとジュプトルが首を傾げていると、

…オオスバメは潰れた小包を持ち上げ、泣きながらジュプトルに訴えていた。


「どうしようジュプトル、この小包…この小包ぃぃぃ」

「泣くな暑苦しい!というか、絶望するな…絶対絶望するなよ!?踏み止まれ!!」




「―――【オニゴーリ館長】宛てのものだったのにぃぃぃぃぃ…!」






それを聞いた次の瞬間、

…ジュプトルは上空のヴァルキリーめがけて、エンゲージリングを投擲していた。

時速にして、およそ170km/hというスピードが出ていることだろう。


「……馬鹿ァァァァァ―――ッッッ!!?」

『おぐっふ!?』

「お前…お前、何してくれちゃってんだ……事もあろうに、事も…あの、……あの鬼館長の…名前を一切裏切っていない鬼ゴーリ館長への届け物を、……ぐっしゃぐしゃに…!?」

『あ、あの、指輪の魔法使いさん?……顔…顔、凄いことになってますが!?』

「誰だってこうなるわアホンダラ!……そりゃオオスバメも絶望するわけないだろ…絶望よりも先に来るのは、【絶対死】…それが、あの鬼館長だ……!!」


ヴァルキリー曰く、「相当凄い顔」になっているジュプトル。

…たぶん、この顔はセレビィとピカチュウに見せてはいけないぐらいに…

オオスバメなど、絶望こそしていないが【オニゴーリ館長に絶対零度浴びせられる】前提で、雪花屋の方向に向かって土下座していた。


「ごめんなさいオニゴーリ館長、荷物…マモレナカッタ……」

『いやちょっと待って、絶望通り越して諦めムード一色!?ねぇ何なのそのオニゴーリ、相性的には分からなくもないけどどういう存在なのそのオニゴーリ!!?』

「知りたいか…だったら言ってやる、そのオニゴーリはなぁ…お前らファントムより絶望を生み出す鬼館長なんだよ……!変身!!」

<ハリケーン、プリーズ フー、フー、フーフーフフー!>



ジュプトルに至っては恐怖と怒りで変身を始め、ハリケーンスタイルとなる。

ウィザードHSは上空に飛び上がると、ヴァルキリーとの空中戦を行う。

だが…

勢いはウィザードHSのほうにあり、いきなり“コピー”からのウィザーソードガン二刀流でヴァルキリーを切り刻む。

更に2つともガンモードに移行すると、銃弾による連続攻撃を行っていた。


『ぐああああ!?……なっ、何故だ、指輪の魔法使いの気迫が…凄すぎるッ!』

「……お前はいいよなぁ…鬼館長に絶対零度を食らう前に、死ねるんだから……」

『や、…あの…ウィザードさん……?』

「俺達は、――この後確実にオニゴーリ館長に…殺される!苦手な氷タイプの技というだけではない、それ以上の何かで……俺とオオスバメは翌日の“ポケモン通信”の一面を飾る!!【謎の氷漬け遺体発見 うち一人は指輪の魔法使い】ってなぁ……!?」


ポケモン通信。

それは人間で言う、新聞のようなもの。

これによって彼らは様々な世界の情報を見ることができ、ピカチュウも探検隊という立場から愛読している

――まあ新聞料も払えない貧乏探検隊なので、ヘイガニやコータスから見せてもらっているのだが。

ウィザードHSはそのまま別のリングを取り出し、強化変身を行う。



<ハリケーン、ドラゴン ビュー、ビュー、ビュービュービュビュー!>

<チョーイイネ! スペシャル、サイコー!!>

『えっ、ちょ、それフェニックス様倒したやつ…オーバーキルすぎじゃねーっ!?』

「オーバーキル?笑わせてくれる…オニゴーリ館長を怒らせた日にはなぁ……オーバーキルすら生ぬるいものが来るっつってんだろうがあああああああああああああ!!!」

『何今日の指輪の魔法使い、怖すぎるーッ!?』


わああ、とヴァルキリーは逃げるが、ハリケーンドラゴンスタイルの飛行スピードに勝てるはずがない。

ウィザードHDはそのまま“サンダー”リングを指に嵌め、ベルトに翳す。

雷を発生させるための魔方陣を前面に出すと、そこにウィザーソードガンを突き立てるように突っ込んでいく。

魔方陣をくぐり抜け、ウィザードHDは翡翠色の雷を纏いながらヴァルキリーに突っ込む。

そして…




<チョーイイネ! サンダー、サイコー!!>

「ちなみにこの攻撃は、――本気を出した館長の10分の1にも満たなーいッッッ!!」

『何そのオニゴーリ怖すぎるーッ!?』



雷を身に纏った一閃が、ヴァルキリーを真っ二つにする。

そのままヴァルキリーは、上空で爆散。

ウィザードHDは地面に降り立ち、オオスバメの横に立つと、

――2匹揃って、どうやってあの館長に言い訳するか考えていた。


「……どうするオオスバメ、この小包…なかったことにするか……!?」

「駄目、それ後でヨルノズクさんに怒られる…!」

「館長とどっちがマシだと思うんだ、お前は…」

「そりゃあヨルノズクさんのほうが100万倍マシだけど、でも、…嘘ついた後の館長は100億倍怖いんだよぉぉぉ……!」

「…。……オオスバメ、謝るか。そして短い人生のピリオドを迎えよう」

「そうだね、うん…さようなら俺……」


絶望を通り越した諦めムード。

お前らは普段、オニゴーリのことをどう思っていたんだ。…そう思っていたのだろうが。






〜〜〜






――【雪花屋】では、全身全霊の土下座を披露するジュプトルとオオスバメの姿があった。

土下座の相手のオニゴーリは潰れた小包に目を通しており、コータスとピカチュウ、オオタチにセレビィは困った様子でそれを見ている。

「一体何があったんだろう」

そう思っていると、一部始終を見ていたらしきヘイガニが、ピカチュウ達に説明してくれた。


「あー…実は、オオスバメさんを絶望させようって言う、無謀なファントムがいたらしくて……しかもそいつ、事もあろうに館長宛ての荷物を…駄目にしちまって……」

「「「何そのファントム命知らず」」」

「み、皆さん。…状況が状況ですし、許してくれそうではあるんですが…ジュプトルさんとオオスバメさんが、……1秒間に20回いくかいかないかの小刻みな震え方をするぐらい怯えていますし…」

「――申し訳ありませんでした、ファントムの出現を予測できなかった…俺の管理不行届けです!」

「俺が荷物を盗られたのが悪いんです、殺るならどうぞ俺を…!」


gkbrしながらも、謝罪は続けているジュプトルとオオスバメ。

だが…

オニゴーリはと言うと、小包の中身を確認していた。

「何あの生殺し」とピカチュウが思っていると、オオタチが声を上げて箱の中身を見ていた。



「……あーっ!これ、有名な和菓子屋さんの和菓子だーっ!!」

「ああ。ここ、一応旅館だしな。知り合いの和菓子職人のチャーレムが、新作の和菓子ができたって言っていたから…旅館に置けるやつかチェックするついでに、皆で食べようと8個入りのやつを頼んだんだ」

「…うあーっ!今日のファントム誰ー、私絶対許せないー!!……ここの和菓子、人気があってなかなか頼めないのにーっ!!!」


オオスバメやジュプトルよりも大騒ぎしているオオタチ。

…何が彼女をそんなに駆り立てるのだろう

…食べ物か、食べ物の恨みは怖いってやつなのか

ヘイガニがそんなことを思っていると、潰れた和菓子を見た後、オニゴーリ達にこう話していた。


「……まあ、確かに中身はぐちゃぐちゃになってるけど…注文したカタログがあるなら見た目は分かるだろうし、砂もついてる様子はないから……食べることはできるんじゃ?」

「まあ、確かに。食えれば何も問題はないだろうな……おいオオタチ、多分見た目まで気にすんのはコータスぐらいなんだから、絨毯の上で泣きながらゴロゴロするな染みになる」

「かーんーちょー、私だって女の子ですー!食べ物の見た目は気にしたい年頃なんですー!!……食べれるなら食べるけど」

「「結局食べんじゃねぇか!」」




オニゴーリとヘイガニのWツッコミを貰い、てへペロしながら復活するオオタチ。

何気に、【見た目を気にしない側】にされたセレビィとピカチュウも軽くショックを受けていたが…

有名店の和菓子が食べられる機会はそうそうないと、前向きに考えていた。

一方で未だ土下座し続けるジュプトルとオオスバメには、オニゴーリが直々に審判を下す。


「とりあえず…お前らも食って感想聞かせろ。オオスバメ相手じゃ相手も骨折り損だったとはいえ、ファントム絡みなら怒るに怒れないだろ」

「「ありがとうございまっす!」」

「…ったく。おーいコータス、こいつら一番ぐちゃぐちゃなの渡せよ」

「オニゴーリさん、1番酷いのとその次に酷いのがありますが…」

「じゃ、1番駄目なのジュプトルにでも渡しとけ」


俺かよ、と心の中で思いつつも…

口に出して言えばそれこそ殺されると思ったか、ジュプトルは言葉を胸のうちに留めていた。

一方で、オオスバメはヨルノズクから預かっていた3日分のジュプトルの給料と、ウォータードラゴンウィザードリングを彼に渡していた。


「あ、そうだ。ジュプトル、3日間ありがとーお陰で助かったよ」

「…まあ、これで少しでも借金の足しになれば問題ないか。新しい指輪も手に入ったし…」

「また困ったことになったら協力してね!」

「断固断る!」



「――うっせぇさっさと和菓子食えトカゲと鳥」

「「はい館長」」


オニゴーリに注意され、0.2秒の速さで土下座をする2匹に…

ピカチュウ達は和菓子を食べながら、大笑いをしていた。






***




オオスバメ回が1話で終わったw

まあ、引き伸ばすほどの内容はなかったですしねー。

だけど、判明したこと…

【オオスバメ回はむしろファントムの絶望回】


まさかの【ウォータードラゴンリングはオオスバメ経由で手に入れる】w

というか、ペガサスもオオスバメも「こんばんはー」ww

むしろ、オニゴーリ館長の武力行使が一番やばすぎるwww

そして、ピカチュウすら言い訳できない「雪花屋の借金返済」…

うん、そりゃあジュプトルが悪いわ。一応謝ったついでに、ピカチュウ達より先に事情を話していると9話で分かったわけですが。



オオスバメのメンタル頑丈すぎるw

こいつの特性は根性じゃなくて頑丈じゃないだろうか。

そして…

オオスバメはジュプトルのことを知っているみたいですね。ジュプトルは覚えてませんが。

というか、あんな絶望ばかりの暗黒世界で、あのオオスバメみたいな底抜け前向きバカがいたら印象に残りまくると思うんですがw


ウィザダン世界の絶対的暗黙の了解:オニゴーリ館長には誰も勝てない

ジュプトルの怯え方とオオスバメの諦めレベルが凄まじいw

いや、でも、館長でこれと考えると…

オオスバメ、多分他の荷物を駄目にされても絶望しなかったと思うの…

そして、サンダーの魔方陣の中を突っ切っての雷を纏った一撃!

TVではやってない技なので、結構楽しみました。

例えるなら……ボルテッカーですかね?反動はないですが。




次回は…

多分コータス回になって欲しい。

8話は一応彼女の過去にも触れましたが、むしろ館長回でしたし…

でも多分、コータス回にはならないんだろうなぁ…!


余談:ファントムを除外すると、「館長」または「オニゴーリ館長」で呼ばないのは現時点でコータスぐらい