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タイトル未設定 - 20話:ビースト・メモリー

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20話:ビースト・メモリー

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オオタチの案で【雪花屋】に向かうことになったジュプトル達。

大量の客を引き連れて来たので、「何事だ」とオニゴーリがジュプトルを凍らせに来るが…

リザードンの顔を見て、オニゴーリは声を上げる。


「…お前、もしかして【Bバースト】のリザードンか?」

「あんたは…確か、ゴールドランク探険家の……オンドーレ?」

「凍らせるぞボケ」

「館長落ち着け!お前は謝れ今すぐ謝れ!?」

(((ジュプトルがかなり必死だ…気持ちは分からなくもないけど……)))


絶大なボケをかましたリザードンに、オニゴーリは“絶対零度”を浴びせようとするが…

それをジュプトルが必死に抑え、リザードンにすぐさま謝罪するよう叫ぶ。

一方で、そんな彼を見ていたピカチュウ達は、同情に満ちた眼差しでそれを見ている。

しかしそんなボケの空気を破壊したのは、リザードンにドロップキックを放ったバンギラスだ。


「…失礼極まりないだろお前はァァァ!」

「ごふっ!?」

「この度は誠に申し訳ございませんでした。なにぶん常識のなっていない馬鹿なものですから、無礼な口を働いてしまったようで…本当に申し訳ございません、私に免じて許してやってもらえないでしょうか」

「オオスバメさん、あんな丁寧な土下座初めて見たー」

「身代わり土下座?」

「…ウィィ…お前らも見習っとけよ……特に、オオスバメとジュプトル…」



リザードンを蹴り飛ばした後、深々と土下座をするバンギラス。

そんな彼を見て、オオタチとオオスバメは面白そうに話している。

「お前らが逆に怒られるぞ」と思いつつも、毎度オニゴーリに迷惑をかけている面々に釘を刺しながら、ヤミラミは溜息混じりに言っていた。

流石にこんな土下座をされたら、オニゴーリもこれ以上怒るに怒れない。

そして…

今日はここで夕飯を食べる予定だったヘイガニも合流し、ピカチュウは改めてバンギラスとリザードンに話を聞いていた。


「それで…バンギラスさんと白い魔法使いってどんな関係なの?どうしてリザードンさんがビーストに?それから……」

「待った。…聞きたいことが山のようにある、と言うのは分かるが…話は一つずつ、順を立てて聞くもんだろ。それがジャーナリストとしての鉄則だ」

「あ、ごめんなさい!……それで…ううん、まずは何処から聞けばいいんだろう…」

「とりあえず、お前達が説明しやすいように話してくれたらそれでいい。そのほうが、話も分かりやすいだろ」


頭を悩ませるピカチュウの横で、ジュプトルが言う。

…確かに彼の言うとおり、話をするのはバンギラスとリザードンなのだ。

ならば、彼らが説明しやすいように、自分達のペースで話したほうが分かりやすいだろう…

2匹もそれでいいようで、まずはリザードンが口を開いていた。


「……とりあえず、お前らの聞きたい情報は何だ?それが分からないと、話の筋道の立てようが…」

「バンギラスさんと白い魔法使いの関係!」

「何故、奴はビーストドライバーをバンギラスに渡したのにお前が使っているのかだ」

「【Bバースト】って探検隊連盟から除名したって噂だけど、それ本当なのか?」

「それに、お前…ゴウカザルはどうした。【Bバースト】と言えば、ゴウカザルとリザードンの2匹で構成される探検隊だったはずだが」

「バンギラスさんは…どうして、ファントムについて調べているのですか?」

「やっぱそれって、全部ファントム絡み?」

「――だーっ、本当に多すぎねぇ!?おい、どっから話したらいいんだ、これ!」

「…オニゴーリ館長の質問から話してやれよ。多分、そこからなら全部説明しやすいだろ…オオスバメは……無視してよし!」


ピカチュウ・ジュプトル、ヘイガニ・オニゴーリ・コータス・オオスバメから放たれるマシンガントークに、リザードンの頭がパンク寸前。

「自分で自分の首を絞めるからだ」と呆れながらも、バンギラスは渋々救いの手を出し…

リザードンは、総ての質問に繋がるであろう話を…始めていた。




「――ゴウカザルはな…死んだんだよ。今から、4ヶ月前にな」

「「「えっ…」」」

「俺が殺したようなものでもあるんだけどな。……その前に一つ言っておくぜ、ジュプトル」

「何だ」

「…フェニックスはお前が一度倒した、だがこの間…何事もなかったかのように戻ってきたと言うのは、本当か?」


…何故、今フェニックスのことを

ジュプトルは疑問に思いながらも、リザードンからの質問に頷く。


「ああ。…最初は、【スピード・デリバリー】を襲った襲撃事件の際に…ドラゴンの力を借りて倒した」

「……で、この間の連続放火事件で…生き返った」

「…何故、フェニックスについて尋ねる?何かあるのか」

「大有りだよ。…大有りだ…ゴウカザルの死には、――あいつが関わってるんだ……!」






〜〜〜






――俺とゴウカザル、それとバンギラスは…

3年前までの暗黒世界時代を、共に生き抜いた仲だった。

まぁ親友っていうか、腐れ縁っていうか…とにかくそんな感じだな。

ヨノワールによって探検隊制度が始まって、俺とゴウカザルはすぐ探検隊として活動を始めていた。

ゴウカザルは前々から、『困っているポケモンのために何かしたい』って話していた。

今までは、時間停止の影響で狂ったようになっちまったポケモンが多かったし、自分達のことで手一杯だったからどうすることもできなかったが…

時間が動き始めて、皆が生きる希望を取り戻したことで、やっとできるようになったってゴウカザルは喜んでいた。


「あーあ…一番乗りは無理だったよ」

「でもいいんじゃねぇの?俺達が、一番早くスッゲェランクにまで上り詰めればいいんだ」

「そうだな。…あ、でも、早い者勝ちするために探検隊になったんじゃなくて」

「分かってるってーの。困っているポケモンを助けるため、だろ?……だったらさっさと、バンバン依頼こなしてどんどん他のポケモン達の助けになろうぜ」

「…ああ!」


その際俺達は、バンギラスに一緒に探検隊にならないかって誘ったんだが…

『俺はジャーナリストになるよ』

『探検隊活動をもっと多くのポケモンに広めたいってのもあるが、お前らの活躍を記事にするほうがよほど楽しそうだからな』

…とか言って、結局ならなかったんだよな。

とにかく、俺達は困っているポケモンのために、様々な依頼をこなした。

探検隊というか、殆ど救助隊って感じだったな。実際、探検隊制度ってそんな感じだったし。

俺達【Bバースト】はそうやって依頼をこなしていくうちに、誰よりも早くゴールドランクの探検隊になっていた。



そして…

あの、悪夢の日がやって来た。

ある日、俺達宛てに依頼の手紙が直接舞い込んできたんだ。

館長なら知ってると思うが、ゴールドランクで尚且つ住所が特定できる探検隊には、スピード・デリバリーに名指しで依頼の手紙が送られてくることもある。

今回もそのパターンで、バンギラスの家で暮らしていた俺達は、その手紙の封を開けていた。




拝啓 Bバーストの皆さん


2ヶ月ほど前の日食の日を、覚えていますでしょうか?

あの日の1週間ほど前から各地でポケモン達がいなくなり、僕の友人であるピジョットも姿を消してしまいました。

他のいなくなったポケモン達は、少しずつではありますが、何事もなかったかのように戻ってきています。

ですが、ピジョットだけは…一行に姿を現さないのです。

そんな時、【灼熱火山】でピジョットを見たという話を耳にしました。


どうにかして助けたい…

だけど、【灼熱火山】は僕の力では敵わないほど強いポケモン達が生息しています。

お願いします。

僕の代わりにピジョットを、何としてでも連れて帰ってきてください。

大層なお礼はできません。でも、それでも【Bバースト】さん達に助けてもらいたいんです!

何処の探検隊や探検家にも断られ、もう【Bバースト】さん達しかいないんです。

ピジョットを、必ず助けてください!



差出人は不明。

それを見ていたバンギラスは「怪しすぎる」と、俺とゴウカザルに進言していた。

確かに、【灼熱火山】に行けるほどの探検隊は…限られている。

俺とゴウカザルの【Bバースト】

ヤドキング・ニドキング・コイキングで編成された【キングース】

それから…確かオニゴーリ館長。あんたも、ゴールドランクの探検家だったな。

ゴールドランクになったばかりの【キングース】ならともかく、現在休業中とはいえ基本的に依頼は断らないあんたが依頼を放り出すわけがない…バンギラスはそう言っていた。

だが、ゴウカザルは話の真偽はともかく、依頼人が困っているのなら力になるべきだと言い張っていた。


「確かに…そうかもしれないけど、だけどそれだけ必死なんだ!何としても助けてあげないと!!」

「だけどな…」

「――とにかく、行ってみたほうがいいんじゃねーの?からかいの手紙だったらすぐ帰ればいいわけだし、本当だったら放っておくわけにも行かないしな」

「リザードン!…ったく……俺は館長に、似たような依頼の話を聞いていないか聞いてくる。それまで勝手に行動すんなよ!!」


そう言って、バンギラスはあんたの所に向かった。

だが…

『困っているポケモン』を助けるために探検隊になった俺らは、自分達で真偽を確かめたいと…あいつを待たずに【灼熱火山】に向かった。

――今思えば、バンギラスの帰りを待っていれば…あんなことにはならなかっただろう。

今でも、そう思っている。




俺達は【灼熱火山】に到着し、ピジョットを捜索し始めた。

向かってくるポケモンの数は思った以上に少なかったが、それでもかなり強いポケモンがいることに変わりない。

その道中で気に掛かったのは、集落に住まないコータスやマグカルゴなんかが、まるで廃人になったかのようにその場から動いていなかったことだったが…

とにかく俺達は、ピジョットを探して火山を捜索していた。

そして…

火山の奥深くに、ピジョットは一人で立っていた。


「…あっ、ピジョットだ!」

「ってことは、あの依頼は本当だったってことか。――おい、助けに来てやったぜ」

「……」

「ピジョット?」

「おい、話を聞いて…」

「――誰に口を利いてんだよ」


次の瞬間、ピジョットは姿を変え…

見たこともない怪物が、剣で俺の腹を突き刺していた。

それを見たゴウカザルは悲鳴にも近いような声で俺の名前を叫ぶと、“雷パンチ”でその怪物に立ち向かおうとする。

だが、そいつはゴウカザルを呆気なく一蹴すると、俺の首を踏みつけていた。


「ぐっ、がぁぁ…!」

「リ…リザー、ドン……!」

『お前らも馬鹿だな。ノコノコと、あんな手紙を信じて本当にやって来ちまうなんてよ』

「な…んだっ…て?じゃあ…あの依頼の手紙は……」

『嘘に決まってんだろ!…全部は、このフェニックス様が……お前を絶望させるためにな!!』



そういって、怪物…フェニックスは、俺の体を蹴り飛ばすと…

ゆっくりと、ゴウカザルに向かっていく。

「やめろ」と俺は何とか起き上がり、フェニックスに立ち向かうが、逆に返り討ちにされてしまう。

そしてフェニックスは俺の首を掴みながら、ゴウカザルを脅しかける。


『――お前は、ファントムを生み出す因子を持った…ゲートだ』

「ゲート…?」

『お前を絶望させて、新たなファントムを生み出す。それがワイズマンの意思なんだと……まあ俺は、好きなように暴れられればそれでいいんだがな』

「があっ…!?」

「リザードン!」

『…こいつも、お前に巻き込まれて死ぬ羽目になる。俺はゲートを絶望させるためなら、ゲートを直接死の恐怖で怯えさせたり…そいつの目の前で、お仲間を殺すことだってできるんだぜ?』


“仲間を殺す”

その言葉に、ゴウカザルの顔は次第に青ざめていく。

「やめろ」

「ここから逃げるんだ」

俺はそう叫ぼうとするが、俺の首を絞めるフェニックスの手はなかなか緩まる気配がない。

それどころか、本気で殺しに掛かってきている…

ゴウカザルは必死で何度も叫びながら、フェニックスに俺を放すよう叫ぶが、あいつはそれを聞き入れない。


「やめろ…やめてくれ、リザードンは……俺の大事な親友なんだ!――リザードンやバンギラスがいなかったら、俺はずっと一人ぼっちだった…だから……!!」

『お?こいつはいいこと聞いた…こいつを殺して絶望しなかったら、今度はそのバンギラスってのを殺せばいいわけか』

「!…や、やめろ…なんで、なんでそんな……誰かの命をそんな軽々しく奪えるんだよ…どうして……」

『どうして?んなの決まってるだろ、俺がファントムだからだ!――そして、こいつが死ぬのは他でもない…お前のせいだ。お前がゲートだから、ゲートでも何でもないこいつはお前のせいで死ぬ』

「……!!」

『こいつで駄目ならバンギラスを、そいつでも駄目なら…お前以外の周囲のポケモン全員を殺す。そうすりゃいずれ絶望してくれるだろ!!』




――俺のせいで

――俺のせいで、皆が死ぬ

――関係のない人達まで死んでしまう

フェニックスの言葉に絶望したゴウカザルは、紫の亀裂を発生させ……


「や、めっ…ゴウカ……!」

「…俺のせいで…俺の……、――うわああああああああああああッ!」


ゴウカザルは俺の目の前で、ファントムになった。

緑色の、巨大な鋏を持った…グレムリン。それが、ゴウカザルから生まれたファントムだった。

フェニックスは俺の手を離し、鼻で笑いながらグレムリンを見る。


『はっ、自分で自分を追い詰めて絶望しやがった』

「ゴウカ…ザル…!」

『…何言ってんだ?』

「な、に…?」

『ゴウカザルなんてもう死んだ。この世にはいない。代わりにいるのは…この俺、グレムリン様なんだよ』


そう言って、グレムリンは鋏で俺の翼を貫く。

周囲に絶叫が響く。

痛みへの叫びだけじゃない。

――目の前でゴウカザルを殺された、怒りと悲しみが入り混じった叫びだ。

フェニックスはグレムリンを連れ、【灼熱火山】を去っていく。

一人残された俺は、……ただ一人で泣き叫ぶだけだった…






〜〜〜






リザードンの話を聞き終え、ピカチュウ達は掛ける言葉が見つからない。

…ゴウカザルは、フェニックスによってファントムを生み出してしまった

…そして、そのグレムリンは未だ見つかっていない

リザードンはビーストドライバーを取り出しながら、ヘイガニに尋ねていた。


「……お前、さっき除名の噂は本当かって聞いたな。…それは本当だ」

「なんで…そんなことを?」

「俺ら【Bバースト】は、2人揃ってこそ意味がある…ゴウカザルが抜けた【Bバースト】なんて、……辛味の抜けたマトマの実みたいなものだ」

「…リザードン」

「――俺はゴウカザルを失った後、単独でフェニックスやグレムリンの後を追っていた。だけど、何処を飛び回っても見つかりやしねぇ…そう思いながら偶然目にしたポケモン通信に、……ファントムの記事が載っているのを見つけたのが…1ヶ月前だ」


リザードンの話では…

あの事件の後、リザードンは一人で世界中を飛び回り、ファントムを探していた。

しかし、フェニックスどころかグールのような下級すらなかなか見つからず、頭を抑える日々。

偶然立ち寄った休憩所に置かれていたポケモン通信を、オレンジュース片手に見ていると…

『衝撃! 橋の完成式典を壊す異形』

と書かれた見出しと写真を見て、リザードンは驚愕する。

その写真に写っていたのは、今までずっと見つからなかったファントム。

――それだけではない、その記事を書いていたのが…自分の親友の一人である、バンギラスだったのだ。



「…それで、俺はバンギラスに会いに…3ヶ月ぶりにバンギラスに会いに行ったんだ」

「そういえば、バンギラスさんってなんでファントムのことを…?」

「ウイィ…確かに。ゴウカザルをファントムに殺されたって知っていたら分かるけど、そうでもないみたいだしなぁ……」

「俺がファントムを取材していたのは、偶然だよ」


セレビィとヤミラミの質問に、あっけらかんと答えるバンギラス。

そして…

彼もまた、遠い目をしながら話し始めていた。


「日食の後、各地からファントムの目撃情報が出始めていた…俺はジャーナリストとして、ファントムのことを調べたいと思った。……まあ、ファントムを追ってりゃリザードン達に会えるかもしれない、って算段は間違いじゃないがな」

「「「…」」」

「そして…リザードンとゴウカザルが姿を消して、3週間経ったある日だった。……俺の元に、白い魔法使いがやって来たのは」





【Bバースト】の謎の失踪は、ポケモンタウンを賑わせていた。

その話が他の地域…例えばピカチュウの済んでいた集落に伝わっていなかったのは、探検隊立ち寄り所や探検隊連盟本部が遠かったからだろう。

しかしバンギラスは、この失踪はただの失踪ではないと睨んでいた。

…数週間前の謎の手紙

…もしも、それがファントムの仕業だとしたら

バンギラスはファントムの目撃情報を追い始め、同僚達に「都市伝説を追ってどうする」と笑われながらも、ファントムについて調べていた。


――そんなある日のこと…

この日は大雨が降っており、嵐も近かった。

「すげぇ雨」と思いながらも、バンギラスがこれまでの目撃情報が書かれたノートを見ていると、ノックが聞こえてくる。

こんな時間に誰だろうと思いつつ、扉を開けると…そこに立っていたのは、白い魔法使い。

見たことのない異形。雨の中であるにもかかわらず、雨粒一つついていない体。

最初はバンギラスも、彼をファントムだと思っていた。

しかし白い魔法使いは、バンギラスにビーストドライバーとビーストリングを渡しながら…こう話していた。



『このベルトと指輪は、いずれ必要になる時が来る』

『自分で使っても構わない、誰かに渡しても構わない』


『――しかしこのベルトを使えば、このベルトに封じ込めた凶悪で大食いなファントムと…一生付き合わなければならない』

『このファントムは、他のファントムの魔力を欲する…その供給が絶たれれば、使ったポケモンの命を食らうだろう』


『これをどうするのかは…君次第だ』




そう言って、白い魔法使いはその場から姿を消していた。

バンギラスは特に気に留めず、ビーストドライバーも興味こそあったが自分の命が掛かっている以上、手を出すわけには行かなかった。

そして、それから数ヶ月経ったある日…

この日は白い魔法使いと出会った日とほぼ同じ時刻だが、雨は降っておらず、代わりに風が強かった。

ドンドンと荒いノックの音が聞こえ、「まさか」と重い扉を開けると、――そこに立っていたのはリザードン。

彼を家に上げると、バンギラスは事の一部始終をリザードンから聞いていた。


「まさか、そんなことが…」

「…お前、ファントムのこと知ってるんだろ?だったら、フェニックスとかいう奴も…グレムリンって奴も知っているんじゃないのか!?」

「そこまでは、まだ…。だが、そいつらを見つけてどうする。お前一人じゃ太刀打ちできないほどの奴だぞ、どうやって……」

「なればいいんだよ。――指輪の魔法使いに」


そう言って、リザードンが取り出したのは…ノームと戦うウィザードの写真。

…リザードンの意見に、バンギラスは一理あると思っていた。

確かに、指輪の魔法使い…ウィザードならば、ファントムを倒せる希望がある。

そしてバンギラスの手にも、――魔法使いになれる可能性を持ったベルトが…今もタンスの中にしまってある。

バンギラスは暫く考えた後、タンスの引き出しを開け、リザードンにビーストドライバーを見せる。


「……これは?」

「3ヶ月ぐらい前にあった、白い魔法使いが…俺にこれを渡してきた」

「これを使えば、魔法使いになれるのか?――つか、なんでそれを早く…」

「これは!――使うのに代償が発生する、危険なベルトだ…そいつの話では、このベルトに封印されたファントムに魔力の供給をし続けなかった場合、……使用者の命を食らう…!!」



何度も、捨てようと迷った。

しかし…バンギラスがファントムに興味があるのも事実で、なかなか捨てられずにいた。

そのせいで、リザードンに【魔法使いになる】という選択肢を与えてしまったことを、……正直今でも後悔しているらしい。

だがリザードンは暫くビーストドライバーを見ると、それを掴む。


「おい!」

「…命を食らう?上等じゃねぇか……これでゴウカザルの命を奪ったファントムを…俺の手で倒せるなら、安いもんだ」

「馬鹿言うな!お前がフェニックスとか言うファントムを探し出す前に、中のファントムに食われる危険性だってあるんだぞ!!……それに、お前が魔法使いとして戦うということは…ゴウカザルの生み出したファントムを、自分の手で倒すことになる。それでもいいのか!?」

「…。……ああ、それでもいい。俺はフェニックスに復讐する…それと同時に、ゴウカザルが生み出したグレムリンを…ゴウカザルを冒涜される前に止める。それ以外に俺が戦う理由はない!」


その言葉に、…バンギラスのほうが折れた。

昔から、一度言い出せばなかなか聞かない性格…だからこそ、自分もゴウカザルも苦労してきた。

そして、その都度そんなリザードンを叱り飛ばすのがバンギラスで、その仲裁に入って宥めようとするのがゴウカザルだった。

だが、そのゴウカザルはもういない。

ファントムによって、殺された…ならば自分のすべきことは。


「――どうせ言っても聞かないんだろ、好きにしろ」

「バンギラス」

「だが!…ゴウカザルもそうだったが、お前は考えなしに突っ走る癖がある。ファントムとの戦いじゃ、それは絶対通用しない」

「……だろうな」

「そこで、俺ができる限りお前の戦いのサポートをする。…ゴウカザルを殺されて黙っていられないのは、俺も同じなんでな」






「――で、その後俺はビーストドライバーをつけ…晴れて仮面ライダー・ビーストとなった。これで、お前らの聞きたい話は全部だ」



総ての話を聞き終え、ピカチュウ達は話の内容の密度についていける気がしなかった。

しかし、…彼らもまた、複雑な事情を追って戦っているというのは、分かる。

リザードンはジュプトルを指差し、「そういうわけだから」と念を押す。


「……フェニックスとグレムリンを倒すのは、俺だ。そいつらを倒してみろ…俺が貴様の中のファントムを食ってやる」

「…好きにしろ。だが、俺にだって戦う理由…護りたいもの、色々ある。――あっちがそれに手を出してくれば、俺はそれを護るために戦うだけだ」

「…チッ。いけ好かねぇの」

「しかし、フェニックスは不死身だ。それを倒せる方法があれば、俺が教えてもらいたいものだ」

「――俺ならできるぜ。バンギラスの話じゃ、奴の復活の仕組みは自分に残っていた魔力を使って再生する…だが、俺の中のキマイラはそれを復活させる前に、魔力を食いきることができる」


その言葉を聞いたピカチュウとヘイガニは、フェニックスを倒せる希望を見出す。

…確かに、ビーストドライバーの仕組みはハイリスクではあるが…『一度フェニックスの魔力を食べてしまえば、二度と復活しない』という利点もある。

それならば、結果的にフェニックスを倒すのはビーストの役目になるだろう。

ジュプトルも納得したように頷く横で、……コータスが手を上げていた。



「…ところで、プリンさんのライブの際…放送席越しに歌を聴いていたのに、どうしてリザードンさんは操られなかったんですか?」

「あー、それ。――実はその前に、バンギラスの奴がファントムの歌で操られてたみたいでな。その時の経験談からか、『耳栓つけて戦え』って言ってたんだよ」

「「「あー…」」」

「…言うな!思い出しただけで泣けてくる」

「悪ぃな。――ところで、コータス…お前、【灼熱火山】の出身か?」

「え?えぇ、そうですが」


リザードンは何かを思い出したかのように、コータスに尋ねる。

そして…

彼女がそれを肯定した後、コータスと…ついでにオニゴーリにも、話を聞いていた。


「俺とゴウカザルが【灼熱火山】に行った際、そこに住んでいるポケモンの様子がおかしかったんだ。何っつーか…廃人になったというか、燃え尽きているというか」

「「…」」

「そこ出身って言うコータスと、【灼熱火山】に行けるランクである館長なら知ってるんじゃないか…と思ってな。ファントムとは関係ないだろうが、気になったもんだから」

「私は…残念ながら、よく覚えていないんです。すみません…」

「話には聞いたことがあるが…俺も、どうしてそうなったのかは。ジュプトルもここに来る前は旅してたんだろ、何か聞いてないのか」

「俺も噂に聞いたぐらいで、行ったことはないな。――【灼熱火山】は…草ポケモンにとっては、地獄過ぎる……!」




そうだ、この魔法使い基本草タイプだった。

誰もがそんなことを思いつつも、とにかくファントムに関する情報は供給し…可能であれば共闘すべきだという案がバンギラスから出され、ジュプトルとリザードンは共闘関係を結ぶことになった

――但し、先程自身達が言っていたように、考え方の相違から対立することもあるかもしれないが…

そこは、バンギラスとオニゴーリがリザードンとジュプトルを締め上げればいい、というヘイガニの恐ろしい意見で済まされていた。



しかし…

指輪の魔法使いと古の魔法使いの結託を、快く思っていない者が一人だけ……この場にいた。






***




リザードンとバンギラスで話が埋まったw

いや、しょうがないよ…

密度濃いな、って予定を立てた15話の時点で思ってたんだから…!!

それでも、最初辺りしかギャグがないって何これ酷い。

今回はオオスバメとオオタチが空気ブレイクしなかったから、尚更酷い。


オオスバメは無視してよし!の理由→ファントム絡みでしかないから説明する必要がない

ところで、リザードンにも「館長」って呼ばれてるんだな、オニゴーリ館長…

これ、本気でファントム側以外からは「オニゴーリ館長」or「館長」としか呼ばれないんじゃないかw

(※但し、コータスという例外もあり)

そして…

フェニックスゥゥゥ…!



本家と違って、ウィザダンではとことんフェニックスVSビーストのフラグを立てていきます。

ついでに、グレムリンVSビーストも。

対して…ウィザードはもしかしたら、メデューサぐらいしかいなくなるんじゃないかという危険性が。

いや、予定ではVSレギオンもあるんですがね?

…さて、ドラゴタイマーの犠牲者になるのは、本家どおりベルゼバブか。それとも違うファントムか…

ボギーは…出るか知りません。ラームも知りません。

ちなみに、現時点で確定しているのは

・ベルゼバブの正体

・メデューサの正体

・ワイズマンの正体

・セイレーンの正体

・レギオンの正体(ただし、変更される場合あり)

・次回に出てくるリヴァイアサンの正体

・館長とオオスバメが絶望するか否か

・白い魔法使いの正体

…ですかね。


こっちの白魔は積極的に出てきますね。

これまでの話から推測して、

オニゴーリ(日食1ヶ月前)→ジュプトル(日食当日)→バンギラス(日食2ヶ月と3週間後)…の順で、接触していることになるんですよね…

館長どんだけ早く接触してたんだよ。

さて、実はオニゴーリとジュプトルの間に、まだ白い魔法使いが接触している者がいるんですが…

接触順からすると、魔法使いの素質としてはオニゴーリ>ジュプトルで、バンギラス(結果的にリザードンがビーストドライバーを装着するが)は念のための保険って感じですかね?




次回!

前回から予告してあった、ピカチュウ回?です。

そして…リザードンとジュプトルにツッコミを入れるしかない回(の予定)でもある。