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タイトル未設定 - 4話:希望を繋ぐ橋

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4話:希望を繋ぐ橋

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夜。

月明かりが夜空に綺麗に輝き、ポケモンタウンに住まうポケモン達の殆どは寝静まっていた…

しかし…遠く離れた何処かの廃墟。

ここでは紫のカーテンの奥にいるポケモンだけでなく、2体のファントムが傍に控えている。

不死鳥の名を持つ、フェニックス。

蛇や石化を操る、メデューサ。

そして、彼らの目の前…紫のカーテンに控えるそのポケモンこそ、ワイズマンと呼ばれるファントムの長。


『成程、ウィザードがポケモンタウンにいるのか』

『どうするつもりなの、ワイズマン。今のウィザードなら、簡単に倒せるわよ』

『それはいい。早速、俺が潰しに行くぜ』

『待て、フェニックス。――確かにウィザードを潰すのは容易い、しかし、それではあまりにもつまらないと思わないか』

『『つまらない?』』


つまらない、というワイズマンの言葉に…フェニックスとメデューサは首を傾げる。

早めに潰したほうがいい事は、彼も承知のはず。

なのに、何故。

そう思っていると、ワイズマンはカーテンの奥で笑いながら2体のファントムに告げていた。



『発達した集落で暮らすポケモンほど、希望から絶望への転落が大きい…確かに我々の同士を増やす意味ではウィザードは早めに潰すべきだが、それではゲームが成立しない』

『ゲーム?』

『恐らくウィザードは、“奴”が作り出した我々ファントムへの対抗手段。ならば、力をつけさせポケモンタウンに住まう奴ら全体の【希望】となったその時に潰せば…』

『希望を抱いていたゲートは総て絶望し、一気にファントムが生まれる。成程、それも “サバト”の一種のやり方でもあるわね』


フェニックスは理解に及んでいなかったようだが、メデューサはワイズマンの意図を汲み取ったようだ。

それに、ウィザードが一定の場所に定着しているのならば、それ以外の場所でファントムを増やすことも可能。

にやり、とメデューサは口元に笑みを見せ、一方のフェニックスはつまらなさそうに近くにあった古いいすを蹴る。


『けっ、要するに今は俺様の出番じゃないってか。まあいい、弱い奴を倒してもつまらないだけだしなぁ』

『そういうこと。――ところでワイズマン、新たなゲートのことだけど』

『それはノームに任せよう。ちょうど明日は、【希望】が架かる日だからな』




その頃、【雪花屋】の一室。

殆どの部屋の探検隊はすぐに寝ているか、依頼を受けて出ているかで…非常に静か。

そんな中、ピカチュウとジュプトルはなかなか寝付けないのか…横になっていても目は開いている。

ちなみに「少なくとも男女が二人で寝るのはまずいでしょ」ということで、オオタチが衝立を持ってきて部屋を仕切ってくれたのだが…

今朝は寝ぼけたピカチュウがジュプトルのところまで“探検”してきて、あの事態になったという。


「……ねぇジュプトル、起きてる?」

「寝ている」

「返事してるってことは起きてるじゃない。…あの、探検隊の名前だけど……【ホープレイ】のこと、ヤミラミから聞いたの」

「…あのお喋りめ…!」

「それでね、……ジュプトルが大事に思っていた人達の探検隊の名前を使うのは、ジュプトルが怒っても仕方ないんじゃないかって思ったの。だから、オオスバメさんに頼んで変えてきてもらった」


探検隊の名前を変えてきた、というピカチュウの言葉に、ジュプトルは耳を傾ける。


「私の…私達の探検隊の名前は、【ブレイブス】にした」

「ブレイブ…“勇敢”か?」

「うん。……私ね、何度も言うけど…ヨノワールさんみたいに、危険に晒されたポケモンを助けられるぐらい強くなりたい。そのためには、今の弱くてちょっと臆病な私から…変わらないといけない」

「…」

「どんな困難にも…勇気を持って、勇敢に立ち向かっていきたい。ヨノワールさんやジュプトル、…ミライさん…ポッチャマのように。だから【ブレイブス】にしたの」

「――別に…いいんじゃないか」



ジュプトルの言葉に、ピカチュウは少し驚いていた。

思ったよりも早く、共感が得られたからだ。

本当は『最初からちゃんと決めとけ』だの『だったら勝手にミライ達の探検隊の名前を使うな』だの、小言を言われそうだと思っていただけに…


「お前の探検隊だ、ちゃんと“意味”があってその名前にしたなら…ホープレイでもブレイブスでも、俺は構わない。あいつらの探検隊の名前というのもあるが、…特に意味もなくその場で決めたことに、俺は怒っていただけだ」

「ジュプトル」

「…とりあえず、当面は依頼探しだな。ついでに魔宝石の一つでも見つかればいいんだが」

「あはは…でも、明日はたぶん立ち寄り所は開いてないと思うよ?だって、橋の完成式典があるもの」


橋の完成式典、と聞いてジュプトルはヘイガニの言葉を思い出す。

『この橋は街の皆の【希望】』

つまり、その希望を壊そうとファントムがゲートを襲う可能性があるということだ。

問題はそのファントムが、今のハリケーンスタイルで何とかなる敵なのかどうか…


「…式典の前に、ヤミラミ宝石店だな。新しい指輪でも作っていればいいんだが、あいつ」

「あ、それだったら…オオスバメさんが、綺麗な黄色の石を渡してたけど」

「は?」

「あれ…言ってなかった?」

「言ってないも何も…初耳だぁぁぁ!そういう大事なことは早く言ってくれ、本当に!!」

「うええええええ、ごーめーんー!!」



ぎゃあぎゃあと大騒ぎするジュプトルとピカチュウ。

だが、この騒ぎがあの鬼館長…もとい、【雪花屋】の主人であるオニゴーリの耳に入らないはずがない。

物凄い勢いで扉を開くと、怒号に近い声でピカチュウとジュプトルに言い放っていた。


「―――おい煩いぞお前らァ!コータスが起きるまで氷漬けにされたいってか!!」

「「すいませんでした館長!」」


素早く、それぞれの空間で土下座する2匹。

ちなみに…そのうちの1匹は、かつて過去の世界に向かって時の崩壊を食い止めたミライとポッチャマの助けとなった、改変の立役者にして指輪の魔法使いなのに。






〜〜〜






翌日。

朝早くからヤミラミ宝石店の扉を蹴り破り、寝ぼけてジュプトルに「ヨノワール様ー…お味噌汁はまだですよー…」と言っていたヤミラミの頭を頭の葉っぱで叩くと、指輪を2つ手に入れていた。

一つは黄色い魔宝石の指輪で、もう一つは魔法リング。


「これが、昨日ピカチュウの言っていた魔宝石の…」

「と、ついでにこの間別のヤミラミが持ってきた魔宝石の指輪だ。昨日貰ったそれは、緑の奴と同じ変身用だから…攻撃と属性の幅がこれで広がったな」

「……どうせなら、青の指輪も欲しかったが…どうせ返してもらえる雰囲気じゃないんだろう」

「まあ…そうだな。それより、お前達は完成式典を見に行くのか?」


ヤミラミの言葉に、ジュプトルとピカチュウは驚く。

今日の式典は、街に住む殆どのポケモンが集まる…

今朝方、コータスやオニゴーリ、オオタチも一緒に行くと話していたのは…いくら寝ぼすけのピカチュウでも覚えている。

ヤミラミは気が向いたら行くようで、彼とはここで分かれた後…ピカチュウとジュプトルは式典の会場に向かっていた。



その途中…

偶然ヘイガニと出会い、互いに軽い挨拶を交わしていた。


「あ、お前らも式典に行くのか?」

「ヘイガニ!」

「まあ…一応」

「そりゃそうだよな〜。なんて言ったって、念願の橋が完成するんだからさ!あの橋作り直すの、苦労したんだぜー」


そういえばヘイガニって大工だったね、とピカチュウは思い出したように言う。

ピカチュウとしては、ヘイガニはむしろ探検隊をやっていてもおかしくないほど…ドサイドンと【芽吹きの森】で邂逅した時の対処が手馴れていた。

探検隊はやらないのかとも尋ねて見るが、ヘイガニは自慢の鋏を横に振りながら


「あー。やりたいとは思ってるし、うちの棟梁も『大工は腕っ節が大事』って人だから探検隊活動自体はOKしてんだよ」

「じゃあ、なんでしないの?」

「んー…自分で作ると大工との兼ね合いが難しいし、でも何処かの探検隊に入るにしても、これだ!ってやつがないからさ」

「……どんな探検隊ならいいんだ、お前は」

「一言で言うなら、『面白そう』かな〜。どうせ探検隊をやるなら、楽しいほうがいいし」



『面白そう』

そう答えるヘイガニに、ジュプトルは頭を抱えるが…ピカチュウはむしろ、その後の『楽しいほうがいい』には少しだけ共感できる部分があった。

確かに、皆で一緒にやるからこそ探検【隊】なのだ。

皆で一緒に戦い、支えあい、時には楽しむ…同じ意識を共有できるものだからこそ感じられることはたくさんあるだろう。


「そういや、【雪花屋】のオニゴーリさんも昔は探検家やってたってさ。その時稼いだポケで【雪花屋】建てたってのは、結構有名な話だぜ」

「へぇ〜、そうなんだ………凄く…納得した……」

「ああ。…あの腕っ節の強さや…恐ろしさや…怖い顔や…鬼や…恐ろしさや…理不尽さや…恐ろしさは……探検隊でもやってなかったら、納得ができなゴフッ!?」


ピカチュウとジュプトルが、やけに納得した様子で頷いていると…

突然、ジュプトルの後頭部に“氷の礫”が直撃する。

あまりの威力にジュプトルはうつ伏せに倒れ、ピカチュウが振り返った先には

――恐ろしいオーラを放つオニゴーリが、そこにいた。

少し離れた場所にオオタチとコータスがおり、彼女達は遠巻きに見ているだけで止めることはしない。というか、できる度胸があったら凄い。


「…人の噂話をしているかと思えば、おいこらジュプトル…テメェ一番好き勝手なこと言ってないかゴルァ」

「 」

「オニゴーリ館長やめてぇ!ジュプトルのライフはもう0よー!!」

「ピカチュウ、お前も楽しんでねぇ…?」




この後、式典のため【スピード・デリバリー】も休みだったのか、オオスバメやムクホークも合流し…コータスも参戦したオニゴーリの説得大会が行われていた。

…基本的に、オオスバメとオオタチは火に油を注ぐだけの立ち位置だったが…

何とかコータスとヘイガニとピカチュウがオニゴーリを落ち着かせ、意識の戻ったジュプトルも懇親の土下座を披露し、オニゴーリの怒りはある程度収まった。

そして全員で完成式典まで向かう途中、ヘイガニがこんなことを言っていた。


「この橋が完成するの、皆もそうなんだろうけど…俺もオーダイル棟梁も、他の大工の皆も楽しみにしてたんだぜ!」

「確かに、今まで商店街まで行くのに不便でしたしね。ということは…今日は皆さんにとっての、【希望】が架かる日でもあるんですよね」

「希望が架かる、か。今度は石造りの橋だから、滅多なことじゃ壊れないと思うけどね」

「カビゴンが3体やって来てマイムマイムでも踊らなければな。…あー、これで急いでいる時に川を凍らせる必要がなくなって助かる」


ヘイガニの後に、コータスやオオスバメ、オニゴーリが楽しげに会話をしていた。

その一方で…

ピカチュウは「なんかフラグが立った気がする」と言うような目でオオスバメを見、ジュプトルは何かに備えるかのように警戒心を剥き出しにしていた。

そんな話をしている間に式典の会場に到着し、ポケモンタウンの町長であるマルノームが既に挨拶をしていた。



『えー、それでは早速、新しい橋の完成を祝い…テープカットを行いたいと思います〜。オーダイル棟梁、並びにお弟子さんの方々…前にどうぞ〜』

「おう!クラブ、キングラー、シザリガー、来い!!」

「「「うす!」」」


前のほうにいたオーダイル棟梁に呼ばれ、3匹は彼の後ろに続く形でテープに向かう。

オーダイル棟梁の率いる大工は、大きく分けて【カイリキー・ゴーリキーなどの資材の運搬専門】と【クラブ・キングラーなどの建築専門】の2つ。

だからだろうか、前のほうで橋が完成し、大泣きしているゴーリキーがやけに目立つ。

ピカチュウは何とかして見えないか体を動かす一方で、ジュプトルはヘイガニに尋ねていた。


「わー、蟹ポケモンを使ってのテープカットかぁ」

「…お前、あれに参加するんじゃないのか?」

「テープカットにそんなに人数いるかよ!…棟梁は当然として、キングラーさんとシザリガーさんは棟梁直々の推薦・クラブは自分から立候補したんだ。テープカットするならあれぐらいで充分だろ」

「まあ、確かにな」


ジュプトルはそう思いながらも、近くにファントムらしいポケモンはいないか探っている。

そんな彼にムクホークは何をしているのか尋ねようとするが、その前にオオスバメが「トイレでも探してるんじゃない」と華麗に冗談をぶちかましていた。

しかし…

クラブがテープを潜り抜け、橋のちょうど真ん中に立ったのを見て、オーダイル棟梁が声を上げていた。


「…おい、何してんだクラブ!橋ができて嬉しいのは分かるが、テープカットをする前に橋を通ろうとする奴があるか!!」

「――すいません棟梁、あんたの知ってるクラブは半年前に死んじゃいました」

「……何?」

「そして、……今から行うのは絶望へのテープカット!橋の解体式でございまぁーっす!!」




そう言い放つと、クラブの姿は変わり…新たなファントム、ノームが立っていた。

突然の怪物の登場に、その場にいた殆どの住人は逃げ始め、ジュプトルは急いで変身をしようとするも…人混みのせいで上手く身動きが取れない。

オオスバメとムクホークは、それぞれピカチュウとヘイガニを連れて空に逃れ、オーダイル棟梁やマルノーム町長のところまで向かう。


「解体式って、…分かってんのか!?その橋は、この街に住む奴らの希望なんだぞ!」

『知ってますよぉ。だから、希望を打ち砕くんです。……他でもない、あんたから新しいファントムを生み出すためにねぇ!』

「待てクラブ、……やめろっ!?」

『…そぉーれっ!』


ノームはそう言い放つと、体をドリルのように回転させながら橋に突っ込んでいく。

元々ノームは、橋の中央部分に…普通に見ただけでは分からない亀裂を、少しずつ作っていった。

亀裂の入った部分にダメージを入れれば、簡単に壊れるぐらいに…

オーダイル棟梁の弟子であるクラブ、という元ゲートだからこそ仕込めたのだ。

そして……ノームの攻撃を受けた新しい石の橋は、中央から音を立てて崩れていく。

両端の部分こそ残ってはいたものの、真ん中をやられれば使い物にはならない。

それを見たオーダイル棟梁は膝をつき、その体に紫のヒビが入っていく。

ピカチュウはオオスバメから降りてオーダイル棟梁に駆け寄り、ヘイガニもムクホークから降りた後…ノームに言い放つ。


「そ、…そんな…皆が楽しみにしていた橋が……」

「と…棟梁さんっ!」

「クラブ!…お前…お前もファントムって奴らの、仲間だったのかよ……」

『だから、あんたがたの知ってるクラブは既に死んでいるんですって。…しっかし、弱くてすぐに気絶する臆病者の真似をするのは、正直疲れたっていうか…まあこれで苦労も報われると思えば、何てことないんですがねぇ』

「…ふざけんなよっ!皆がどんな思いで心待ちにしていたか、棟梁達がどんな気持ちで仕事に打ち込んでいたのか知っているのに……なんでこんな惨いことができるんだッ!!」

『……はぁ。それが分からないんですよねぇ。何でこんな橋に必死になるのか、可笑しくて可笑しくて…笑いを堪えるのが必死だったぐらいですよ』



てめぇ、とヘイガニがクラブハンマーでノームに殴りかかるが、効き目はない。

ノームはヘイガニを蹴りつけ、慌ててムクホークがそれをキャッチする。


「ぐあっ!?」

「ヘイガニ!…クラブと別人、なのは確かみたいだな…」

『ゲートも絶望させましたし、ここからは気晴らしにあなた方を殺しましょう。なあに、ゲートさえ殺さなければ問題ないんですからねぇ』

「――残念だが、…それは無理な話だな!」


そう言い放ちながら、ノームにウィザーソードガンを一閃する存在。

…ウィザードだ。

ハリケーンスタイルとなったウィザードは、ノームを急いで倒し、オーダイル棟梁を救うべく剣を振るう。

そんな彼を呆れ気味な顔で見ながら、ノームは槍を召喚して応戦する。


『あなたもいましたか、指輪の魔法使い。…あなたも、どうして赤の他人のために必死になれるのやら』

「確かに、俺にとってあのオーダイルは別に親しくとも何ともない。だがな、……俺はあの惨劇を繰り返さないために戦っている。たくさんのポケモンが一度に死んで、ファントムを生み出す…あの悲劇は繰り返したらいけないんだ!」

『何を言っているんですか。ファントムは人間もポケモンも超越した、時代の新たなる種族!ワイズマンも種族の繁栄を願っているからこそ、ファントムを生み出しているのです』

「そんなことのために、多くの犠牲を出してきたのか…だったら尚更、思い通りにはさせない!」




ウィザードHSとノームが激しい戦いを繰り広げている最中…

オニゴーリとコータスもようやくピカチュウ達と合流し、オーダイルの様子を見ていた。

ピカチュウはウィザードが勝つまで何とか持ち堪えさせようとしていたが、何を言っていいのか分からない。

どうしよう、どうしたら。

そう思っていると、オニゴーリがオーダイル棟梁に言い放っていた。


「…あんた何こんなことで、人生の終わりだって顔してんだよ…」

「ちょ、ちょっと館長!……もう少し、もう少し言葉選んで…」

「……そんなこと言われてもよぉ、…俺達大工は…皆の希望を背負って物を作るんだ。……それが壊されちまったら…信頼を壊したも、同じなんだよォ……」

「橋はまだ完全に壊れちゃいないだろ。壊れたのなら、また作り直せばいい…前の橋よりももっと、もっと頑丈なものを!それができるのは、大工であるあんただけだ!!」

「館長…」

「――それに…何度壊れても直せるものなら、直し続ければいいじゃないか。……世の中には、直したくても…取り戻したくてもそうすることができないことなんて、たくさんあるんだ」


最後にそう告げたオニゴーリの表情は、何処か辛そうにも見えた。

そんな彼を見て、ピカチュウやヘイガニは首を傾げ、コータスは理由が分かっているのか少し俯いていたが…

その間にもウィザードHSはノームと戦い続けるも、ノームは地面に潜って翻弄する先方を使い続け、ウィザードHSを苦しめる。

ポケモンの時の技が使えれば、ジュプトルには対抗策がある。

だが、ウィザードの時はそうすることができないのか苦戦を強いられる一方…

その時、ウィザードHSは今朝受け取った新しい指輪の存在を思い出し、それを見ていた。



「…いっそ、こいつに賭けてみるのもありかッ!」

<ランド、プリーズ ドッドッドドドドン、ドッドッドドン>


ウィザードHSは左手の指輪を変え、ウィザードライバーにかざす。

すると、地面からゆっくりと魔方陣が上に移動してきたかと思えば、ウィザードの姿が変化する…

ランドスタイルと呼ばれるそれは、パワー・ディフェンスに優れ、更に大地を司る属性を持つ。


『姿が変わればいいと思わないでくださいよぉ!』

「チイッ!」

<ディフェンド、プリーズ>


地面から襲い掛かるノームに、ウィザードRSは地面から土壁を召喚する。

ノームの槍はそれに阻まれ、ドリル状の突進による破壊を試みる。

だが…

土壁を突っ切った先にウィザードRSはおらず、「何処に逃げた」と探すノーム。

しかし、地震の下に大きな穴が開いたかと思えば、ノームは地面の下に派手に落ちていく。


『ぎゃあっ!?…こ、これは…』

「どうやらこの姿の時は、俺自慢の“穴を掘る”が使えるようでな。これで、お前アイデンティティは通用しなくなった」

『なっ…!』

「止めだ!」

<チョーイイネ! キックストライク、サイコー!!>


ウィザードRSはそう言い放つと、自身をドリルのように回転させながらノームに突っ込んでいく。

ノームはそれから逃れようと地上に向かうが、

――それを狙っていたヘイガニの冷凍ビームが直撃し、氷漬けとなり…逆に絶好の的となってしまう。



(なっ…!)

「…ジュプトォォル!突っ込めぇぇぇ!!」

「……ナイスッ!」


ウィザードRSはノームの後を追うように移動し、上半身だけ地上で凍っているノームにストライクウィザードが決まる。

ノームはあっけなく爆散し、ウィザードRSは急いでゲートの元に向かう。

オーダイル棟梁はギリギリのところで持ち堪えている状態で、すぐにエンゲージリングを指に嵌める。


「ゲートは!」

「何とか持ち堪えてる!」

「う、う…」

「よし、後は俺に任せろ。……俺があんたの、そして他の奴らの希望を繋ぐ」

<エンゲージ、プリーズ>


ウィザードRSはエンゲージの魔法を発動させ、オーダイル棟梁のアンダーワールドの中に入っていく。

ムクホークは突然のことで頭がパニックになっていたが、オオスバメとオニゴーリはある意味現場を総て目撃したのは初めてなのに平然としている。

何とか人混みから生還してきたオオタチ曰く、「オオスバメさんと館長だからしょうがないか」で流していたそうな。






〜〜〜






オーダイル棟梁のアンダーワールドでは、激しい戦いが繰り広げられていた。

彼の精神世界で暴れていたのは、サイクロプスという一つ目の巨人…

「これあの鬼館長が飼うべきファントムだろ」と思いながらも、ウィザードRSはマシンウィンガーに跨り後を追う。

ウィザーソードガンで牽制しようにも効果が薄く、先程呼んだウィザードラゴンも協力する気配0。

仕方がなくバイクの車体を上げ、近くにあった小さな外付けの石の暖炉を踏み台に宙へと飛ぶ。


「ドラゴン、…俺に従えぇぇぇ!」

『ガァァァァ!』


なんとかウィザードラゴンの背にバイクをドッキングさせると、暴れるじゃじゃ馬を制御しながらサイクロプスを追う。

図体ばかりでかくて動きは遅いのか、追うのにそれほど苦労はしなかった。

しいて言えば、ウィザードラゴンの制御が難しかったぐらいか。

炎で攻撃してくるウィザードラゴンに対し、サイクロプスは手に持っていた巨大な斧を投げつけるのみ。

おっと、とウィザードRSは攻撃を回避させると、丸腰になったサイクロプスに止めを放っていた。


<チョーイイネ! キックストライク、サイコー!!>

「…おおおおおおおおおおッ!」



ウィザードRSの足には変形したウィザードラゴンが合体し、ウィザードラゴンもろとも派手にサイクロプスにぶつかっていく。

その攻撃でサイクロプスは爆発し、オーダイル棟梁の中にいたファントムは完全に消え去った。

ウィザードRSは手を軽く叩き、ふと、アンダーワールドにある泊まった世界の光景に目を移す。

そこにあったのは、自分の弟子――中には、絶望してファントムを生み出す前のクラブもいる――と大工の仕事をしているオーダイル棟梁の姿。


「……あのオーダイルの絶望の原因は、“橋が壊れたこと”だけじゃなく…“心を許した弟子に裏切られた”事もあったのかもしれない、ということか」


ウィザードRSはそう言いながら、マシンウィンガーで現実世界へと戻っていく。

…失った仲間は取り戻せない

…しかし、それでも、希望を見失わないで再び立ち上がってくれれば

そんなことを、信じながら。





アンダーワールドから戻り、変身を解除したジュプトル。

早速ムクホークから質問攻めを食らうが、ジュプトルはそれを軽くかわし、ヘイガニのほうに向かっていた。


「ヘイガニ、さっきは助かった」

「俺は別に…それよりも、お前ら…確か探検隊だったよな。ブロンズランクだけど」

「まあ、な。それがどうした」

「……この際ランクがどうとかどうでもいい。俺と一緒に、【絶壁の岩場】に行ってくれねーか」

「【絶壁の岩場】…って、そこ結構危ない場所だろ!?そこから届く依頼も、星付きの難しいランクばかり……なんだって、そんな場所に」


ムクホークが驚いたような顔でヘイガニに言うが…決意は固いようだ。

それに彼の話によれば、【絶壁の岩場】の奥地にある岩はとても頑丈で、新しく橋を…それも二度と壊れないような頑丈なものに作り直すとしたら、それ以外はありえないという。

しかし、オーダイル棟梁でも苦戦を強いられるほど厳しい場所で、ヘイガニ一匹では到底行けない。

だが、それでも行かなければならないのだ。


「俺、棟梁ともう一度橋を作りたいんだよ。このままファントムに踏み躙られっぱなしで、いいわけあるか!――少なくともジュプトルは、今まで探検隊やってなかったのが不思議なぐらい強いから、可能性があるならそれに賭けたいんだ」

「成程な。…だが、【絶壁の岩場】は手ごわい岩・地面・鋼のポケモンが生息している。俺はともかく、お前や……特にうちのリーダーであるピカチュウが大丈夫である保障は、少ないぞ」

「それでも行くったら行く!男は度胸だ根性だ!!」

「そ、それに私も…正直怖いけど、……放っておけないもの!」

「…じゃあ決まりだな。そうと決まればすぐに行くぞ」



ジュプトルはそう言いながら、すぐにでも【絶壁の岩場】に行こうとする。

ピカチュウやヘイガニも既に乗り気で、ムクホークは「駄目だって」と大慌て…

基本的に、ランクの低い探検隊が“星付き”に挑むこと自体が異例。

当然これがばれれば探検隊連盟からの厳重な処罰を受けることになるだろう。

そうしていると、コータスがオニゴーリに「あの」と尋ねていた。


「オニゴーリさん、ピカチュウさん達について行ってくれませんか?」

「…なんで俺が」

「昔は探検家をやっていたんですよね、それもゴールドランクの。…今はゴールドランクの探検隊や探検家しかいないから、ゴールドランク到達者なら星付きを受けることもできると聞きました」

「…」

「お願いします、一緒に行ってあげてください!」

「……はぁ、しょうがない…おいムクホーク。ヘイガニの依頼は俺のほうに回せ、そうすれば法には引っかからないだろ」


オニゴーリは盛大な溜息をつきながら、準備をするため【雪花屋】に戻る。

休業中とはいえ、半年近くのブランクがあるオニゴーリが行くのもある意味問題じゃないか

…とムクホークは思っていたが、むしろ、逆に心配がなさ過ぎて怖かった。

むしろこのややこしい事態に巻き込まれたことに、頭が痛くなりつつあるムクホーク…

「せめて大きな問題になりませんように」、と彼は祈ることしかできなかった。






***




長いよ!

長すぎるよ馬鹿!!

…それはさておき、アンダーワールド登場2回目…

おいこれ本家の絶望数より上に行く気じゃないよな。

そしたら、ポケモン達のメンタルすげぇ低いことになるぞ!


新しい探検隊の名前は【ブレイブス】。

ピカチュウ自身、探検隊の名前を勝手に使ったことを反省したと同時に、ホープレイのように勇敢な探検隊になりたいというほう心を決めての名前です。

…実はBraveを勇気と勘違いしていたので焦りましたが、結果的オーライな理由になったのでセーフ。

それに…

【カーリッジ】って探検隊名もあれですしね!



オニゴーリ館長最強伝説w

少なくともジュプトル…お前負けちゃ駄目だよ…!

【暗黒の未来で】的にも…モブABCDEFぐらいでしかなかったオニゴーリに負けたら、駄目だろ…!!←

…ちなみに、ボスであるマンムーのほうが早く倒せるのはほぼ相性のせい。

ヘイガニもコータスもオオスバメもオニゴーリも、フラグ立てんなw

特にオオスバメ!!


4話で登場、26歳ただいま彼女募集中スタイル。

ちなみに…

ジュプトルランドの特徴としては、“ドリルリング無しで地面に潜れる”ですね。

というわけで、ドライバーオンと同じく…残念な結果になったドリルェ…

尚、新しい魔法リングはディフェンド。そういえばなかったなぁ、と1話を見て思ったので。

そして、リーダーであるピカチュウよりも…ヘイガニのほうが役に立っている罠。

…そして何気に判明した、コータス>オニゴーリ>>>越えてはいけない壁>>>ジュプトルの構図。

オオスバメ?オオタチ?

フリーダムでは敵に回せませんね、あいつらw




次回は探検隊らしく探検を。

館長最強伝説になりそうで怖いけどね!←