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タイトル未設定 - 40話:最後の平和

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「あなたが本当に死守しなければならないのはただ1人…でも、自分の傍に常に置くことはできない事情があった……だから“魔法使い以外で”欲しかったんですよね?」


「……ファントムを、ワイズマンを自分の代わりに倒す魔法使いとは別に…実力的に申し分のないポケモンが。ね?」




オオタチがそう尋ねた次の瞬間、白い魔法使いは“エクスプロージョン”の指輪を手に嵌める。

間髪入れずにそのまま白い魔法使いドライバーに指輪を翳すと、正面に大爆発が巻き起こっていた…

が、煙が晴れた後にあったのは黒焦げた地面のみ。

当のオオタチはと言えば、――白い魔法使いの背後にいた。


「もー、やめてくださいよー。館長ほどじゃないとはいえ、あなたも相当おっかないんですからー」

『……貴様の目的は何だ。まさかとは思うが、』

「私の目的?そーゆーのは一切ないですよー。なんたってオオタチですから」

『…違うな。貴様は既に“オオタチ”という種族でもない、違うか?』

「えーやだなー、どう見たってモフモフぷりちーなオオタチじゃないですかーやだー」

『………』

「あ、ごめんなさい。冗談です、冗談。目的…っていうか、何と言うか、……私って正直なところ、ファントムがこの世界の新たな種族になろうが…ポケモンが種を存続しようが、どっちでもいいんですよねぇ」


オオタチの喉元に、ハーメルケインが突き立てられる。

少しでも動けば、すぐ貫けるように。

しかし、白い魔法使いの態度に何度も頷きながらも、オオタチは話を続けていた。


「…ぶっそーですよー」

『黙れ。……貴様はここで消す』

「別にそれでもいいんですけど、私一応あの【雪花屋】で働いてるわけですしおすし。私みたいなのでもいなくなったら、うちの館長どう思いますかねー?」

『……』

「しかも、私が“白い魔法使いにやられた”って言えば皆一発であなたを敵認識しますよー。まあ、さっきの魔法で跡形も残らず…なんてこともできそうですけど、そんなことしたらますますあなたしか疑いようがなくなりますしー。ただでさえ、口足らず過ぎて誤解されているってのに」

『貴様は何をしようとしている。返答次第によっては、……ッ!』



次の瞬間、白い魔法使いはその場で膝をつき、ハーメルケインを地面に突き立て自分の体を支える。

その間にオオタチは白い魔法使いの攻撃――最低でもハーメルケインの射程圏内から――離れ、息苦しそうにする彼に尋ねる。


「……あなたも大変ですよねー。変身するのにも、魔法を使うのにも命を削っているようなものですから…まあ力の源がない以上、しょうがないんですけどね」

『……貴様は見当がついているのか?【賢者の石】の在り処を…』

「最初はうちの館長かな、とも思いましたけど…どうやら違うっぽいんですよね。オオスバメさんだと隠し場所としては妥当かなって思うけど、そんな都合よく隠すわけないですし。……でもまぁ、3年前の因縁を考えると“あの人”じゃないかなっては」

『…!』

「あ、心配しなくても、私アレに興味ないんですよ。私が興味あるのは、ポケモンとファントム…どっちがこの世界に残るのかなんで。あと、それであなたと取引するほど無謀じゃないですし」


だって勝てっこないですし、と付け加えながらへらへら笑うオオタチ。

…「勝てっこない」と言いながらも、白い魔法使いと口で対等に渡り合えているというのに。

それはさておき、オオタチは構わず【雪花屋】に戻ろうとする

――その前に、白い魔法使いに尋ねていた。


「あ、一つ聞かせてくださいよ。――どうしてあなたは命を削ってまで戦うんです?魔法使いを生み出すんです?」

『…。……ファントムは危険だ、だからこそ、殲滅しなければならない…この世界のためにも』

「ファントムは危険だ(キリッ、ねぇ。でもそのファントムの増殖を自分で手助けしてどーすんですの?あと、ファントムの殲滅だけなら魔法使い要らなくね?ですよね」

『……』

「私の考えでは…ワイズマン含めファントムを全て倒した後、ジュプトルさんの中のファントムを、絶望が上回って誕生される前にビーストが食べる。そのビーストはファントムがいなくなったせいで、中のファントムにより命を食われベルトしか残らない。それが一番理想的な殲滅、なんですよね」

『………そうだ』


重い口を開きながら、一言だけ告げる白い魔法使い。

そんな彼を見て目を見開き、だが次の瞬間にっこりと笑みを見せるオオタチ。




「私はそれでもいいんですけど…それってセイレーンも最終的には死ねと?――そうなったらあなた、神よりもワイズマンよりも怖い人を敵に回しますよ」


「ヘタすりゃ、ジュプトルさんより先にその人が絶望して……最凶最悪のファントムになりかねないですけどねぇ」






〜〜〜






【雪花屋】…

そこではバンギラスの手当てをピカチュウやポポッコが行い、オオタチは……勝手に抜け出したのがばれて、オニゴーリによって頭に“氷の礫”をぶつけられていた。

しかも、2発も。

ジュプトルやリザードンもとばっちりで2発ずつ貰い、最終的には体調のよくなったコータスが「落ち着いてください」と何度も宥めることで、ようやく止まったほどだ。


「うあーっ、館長の鬼ー!私ちゃんと仕事して抜け出しましたもーん!!」

「普通はコータスの看病を大人しくしてるだろうがボケ!…あーもー、留守番してると思って買ってきたケーキはやらん!バンギラスにやる!!」

「うーあーあーあーあー!!!」

「…いや、館長…俺もこんな中途半端にぶった切られたケーキは見た目的にも食いたくないんだが……しかも潰れてるし」

「文句はグレムリンに言え。……薬袋のほうに当たっていたら、俺が消してたぞマジで…!」


この場にいるピカチュウ・ジュプトル・ポポッコ・リザードン・バンギラスは、思った。

…この人ならできるかもしれない、と…

勝手に「イチゴだけでも」と頬張るオオタチを尻目に、ポポッコはメモ帳を取り出しながら溜息をつく。

――【Bバースト】のゴウカザルがファントムとなり、彼が生み出したグレムリンが連続傷害事件の犯人……

普通に考えれば、大スクープだろう。

しかし、ゴールドランクだった探検隊の一人がファントムとなり、平和に暮らしているポケモン達を傷つけているとなったら…探検隊制度始まって依頼の大事件となる。

それだけではない。ゴウカザルの親友であり同じ【Bバースト】の一員でもあったリザードンも、ただでは済まされないだろう…

そんな彼女の様子に気付いたピカチュウとミロカロスが、ポポッコに尋ねる。



「……ねえ、ポポッコさん…その」

「今回の件を記事にするのは、…考えてもらいたいところだわ。少なくとも、今回だけは」

「…と言われましても、私はジャーナリストですよ。きちんとした裏打ちを取って、真実を皆さんに届けるのが仕事です」

「でも!」

「――でも、まぁ確かに今回の件は考え物です。私も真実を伝えなければならない、読者も事件の真相を知らなければならない、メタグロス保安官達も納得する答えが欲しい」

「どうしても、記事をでっち上げる気はないということね」


まあそうなります、とミロカロスの問いに答えるが…

ポポッコは暫く考えた後、はあ、と溜息をつくとこんな提案を出していた。


「……バンギラスはその傷じゃ取材は無理でしょうから、せめて私の目の前で…くれぐれも他の記者や保安官の目に触れるような場所で、グレムリンは倒さないでください」

「…ポポッコさん?」

「追加の依頼内容ですよ。まあ、【ブレイブス】でもリザードンさんでもいいんですが……この追加依頼が成功すれば、…気乗りしませんけど何とかしてみせますよ」

「あっ…ありがとう!ポポッコさん!!」

「あなた、結構優しいのね」

「――まあ、一応バンギラスの友人だったわけですし。でも問題は、どうこの依頼を成功させるかですよ。万が一グレムリンの正体が知られれば、全て水の泡なんですから」


ピカチュウやミロカロスに感謝され、ポポッコは再度溜息をつく。

だが、彼女の言うとおり、真実を知られる前にグレムリンは誰の目もつかない場所で倒さなくてはいけない…

無差別に人を襲っていた以上、グレムリンの動きを把握することはできないのだ。




万事休すか…

誰もがそう思っていると、リザードンが「待てよ」と呟く。


「……あの時グレムリンの奴は、こう言ってたな…『ゲートの絶望も大事だが』。――あいつもしかして、館長を絶望させようとしてたんじゃないか?」

「「「…なんという無理ゲー」」」

「……だよなぁ」


オオスバメ以上に、絶望させづらい…というか、絶望させるのが怖いオニゴーリ。

彼を相手に絶望させられるファントムなど、恐らく歌声で相手を狂わせると言われたセイレーンぐらいだろう。

話は振り出しに戻るか、と思われたその時だった。

昼飯を食べに来たオオスバメが、窓からスバッと登場したのは。


「話は聞かせてもらいマッシュルーム!」

「「「………うわぁ」」」

「よしオオスバメ、帰れ」

「ジュプトル酷くない!?俺の意見も聞いて、お願いだから!!?」

「お前の出した案が何かのヒントになった例があったか?」

「それは…これからそうなるんだよ!」

「「「おいコラ」」」



――なんでヘイガニとギャラドスがいない状況で…

目頭を押さえ、ツッコミ不在を嘆くバンギラス。

しかしオオスバメは構わず意見を出し、それを聞いたポポッコは考える仕草を取っていた。


「ファントムの気持ちになって考えるんだよ!自分がファントムだったらどう絶望させるか、って」

「「「いやいや…」」」

「……む。結構いい線いってるかもしれないですよ?相手の視点になって考え、どう尋ねれば望んだ情報を聞き出せるのか…という考えは記者の常套手段ですし」

「あ、そっか。自分がファントムだったら、何をされたら絶望するか……って考えたら」

「――んー、でも、館長の場合は…結構分かりやすいって言うか。俺も本当はお勧めできないんだけどね?」

「…おい、まさかとは思うが」


ジュプトルが尋ねかけた瞬間、周囲の気温が一気に10度近く下がる。

ひっ、とピカチュウが声を上げて見た先にいたのは…

怒りの表情を表に出す、オニゴーリの姿。

完全に怒っているようで、発言1つ1つから怒りの感情がはっきりと見える。


「……コータスを囮にする。…そう言うんじゃないよな?」

「いや、その、あの」

「…やっぱ、別の方向で行こう。グレムリンより先に、俺らが死にかねない」

「……待ってください。私は、それでも構いません」


誰もが迷っている中、誰よりも先に賛成したのは…コータス本人だった。

流石にジュプトル達も、先程まで寝込んでいた彼女を囮にするわけにはいかず、何とか思い留まらせようとする。

だが…

彼女はそれらを断固として拒否すると、自分の意見をはっきりと言い放っていた。



「…ゴウカザルさんの…いえ、グレムリンのせいで沢山のポケモンが傷ついているのは事実なんです。放っておいたら、犠牲がもっと増えていくばかりです」

「だが、お前にもしものことがあったら!」

「私は元々防御力の高い種族ですから、斬られたぐらいで大怪我を負うことはありません。…オニゴーリさんには何度もお世話になっていますし、拾ってもらってから今まで優しくしてもらいました」

「……」

「だからこそ、…オニゴーリさんのためにも…他のポケモン達のためにもできることをしたいんです」

「――くそ、…だから嫌だったんだ。……お前は一度言い出すと全然聞かない」


俺が止めても無駄だろうしな、と悪態をつくオニゴーリ。

その言葉を聞いたコータスは申し訳なさそうにしながらも、今更意見を曲げることはできないため、「ありがとうございます」とだけ微笑む。

問題は、何処でグレムリンをおびき出すか。

殆どの場所は、連続傷害事件のせいで探検隊や保安官達がうろついていることだろう…

そうしていると、ミロカロスがこんな案を出していた。


「……そうだわ。滅多に人が来ない、いい場所を知ってるの」

「「「え?」」」







〜〜〜






――【森の溜池】

ここを住処とする野生のポケモン達はレベルも低く、依頼のランクも低いため探検隊が足を運ぶことは少ない。

と同時に、お尋ね者にとっては絶好の隠れ家でもあるのだが…野生のポケモンのレベルが低いと言うことは、万全の状態である探検隊と対峙すると言うこと。

流石にそれでは基本1匹であるお尋ね者に分が悪く、軽犯罪を犯したレベルの低いお尋ね者以外が来ることはない。

……そこで、ゴウカザルは木々を巧みに跳び回りながらターゲットを探していた。


「“あいつ”の情報だと、この辺りに……おっと」


ゴウカザルがそう言いながら周囲を探していると、【標的】であるコータスが一人でいた。

籠を背中に載せている辺り、どうやらこの森に生るオレンの実を取りに来たのだろう。

…オニゴーリを絶望させたい彼としては、またとないチャンス。

しかし単独でこのような場所にいるはずがない。充分に警戒し、近くに他のポケモンの気配がないと分かれば、グレムリンの姿を解放し…跳躍で一気に相手との距離を詰めようとしていた。

だが…


『…ッ!?』

「――やぁっと姿を見せたな!グレムリン!!」


突然目の前の【何か】に攻撃を阻まれたかと思えば、現れたのはビースト…

その右肩にはカメレオマントが展開されており、チロチロと金色の舌を出してグレムリンを挑発している。

予めカメレオマントで透明化させたビーストがコータスの護衛についたほうが、相手も『コータス1匹だけ』と誤認して尻尾を出すだろう…というバンギラスの案。

その考えは見事に的中し、草陰からすかさずジュプトルが飛び出すと、ウィザーソードガンでグレムリンを狙撃する。

その間にコータスはポポッコのいる場所まで逃げ、グレムリンは舌打ちする。



『テメェら…!』

「ご生憎様だったな、グレムリン。俺とポポッコは草タイプ、草陰や花に隠れてやり過ごすのは得意分野なんだよ」

「ジュプトルさんのは何処で培った技術かはさておき、私は新聞記者ですよ。気配を殺してシャッターチャンスを待つのは、大の得意なんですから」

「リザードン、――親友(とも)の苦しみをここで…終わらせてやれ!」

「……おうよっ!」


ビーストはそう言うと、ミラージュマグナムをグレムリンの腹に向け、連続で銃弾を放つ。

真正面から攻撃を食らい、グレムリンはよろめきながらもビーストに再度向かってくる…

ジュプトルは先程はグレムリンに不意打ちまがいの攻撃をしたものの、基本はビーストにグレムリンを倒させようとしている。

ドラゴンの力を多用するのも危険だと分かっていることもだが、……他でもないビーストがグレムリンと決着をつけねばならないと思っているのだろう。

それでも、もしもビーストが命の危険に晒されることになれば…助けに入ることも念頭には入れているのか、その手にはハリケーンウィザードリングが握られていた。


『テメェもしつこい奴だなぁ!』

「…お前も大概だろうが、グレムリン!」

『そんなに俺様が憎いか?だが、怨むんなら“俺”を生み出したゴウカザルって奴を怨むんだな!』

「……何?」

『だってそうだろ。ゴウカザルが絶望しなければ、お前がビーストになることはなかった。知ってるんだぜ?…お前の中にいるファントムの魔力が無くなれば、お前の命も食われる。命の時限爆弾付きなんて、随分と可哀想な運命だなぁ!』




――グレムリンの持つ双剣が、ビーストを捕らえる。

だが、一方はミラージュマグナム・もう一方はカメレオマントの舌で受け止められ…

グレムリンの体は、ビーストが右手に持っていたダイスサーベルによって腹を一突きにされていた。

がは、と、グレムリンは大きく咳き込み、よろめく。

対するビーストはハイパービーストリングを指に嵌め、グレムリンに言い放つ。


「ゴウカザルを怨む?――そりゃあ、勝手に逝っちまったあいつに怒ったりはしたけど、“怨む”のは筋違いってもんだ。そもそも俺が強ければ、俺達が迂闊じゃなかったら、…こうはならなかった」

『なん、だと…!』

「それに俺は、今の生活結構気に入ってるんだぜ。…命の時限爆弾だぁ?冗談じゃねぇ、俺の中にあるのは………ただの口煩い爺さんファントムだ!」

<ハイパー、ゴーッ! ハイハイ、ハイ、ハイパー!!>


ビーストは、そのままハイパービーストへと変身。

フリンジフリンガーを巧みに操り、グレムリンと接戦を繰り広げる。

攻撃の勢いは、完全にハイパービーストにある。

「このまま行けば」と喜ぶジュプトルとポポッコだが、…すぐ近くにいたコータスの異変には気付いていない。

ずきり、ずきり。

酷い頭痛が彼女を襲い、息を荒くしながらその場を離れる。

…その間にもハイパービーストはグレムリンを押し、遂にはダイスサーベルの一振りで利き腕である右腕に大きな傷を負わせていた。



『ぐううっ…!?』

「お前に言う必要はないだろうがな、ゴウカザルの利き腕は右。……利き腕を潰せば、こっちのもんだッ!」

<マグナムストラーイク!>

『……ッ!』


ミラージュマグナムによる一撃が、グレムリンに襲い掛かる。

だが、グレムリンは完全に攻撃があたり、ハイパービーストに食われるのを避けるべく…

自分の右腕を自らの剣で切り落とし、素早い跳躍でその場から脱する。

更にその状態から“種”を巻き、ハイパービーストの目の前に現れたのは……グールの群れ。

「あの野郎」とハイパービーストは舌打ちし、流石にこの大人数は無理だと判断したジュプトルも変身して援護する。


<ハリケーン、プリーズ フー、フー、フーフーフフー!>

「……加勢する!」

「おうっ!…しかしあいつ、自分の右腕を切り落とすなんて……キモリ、いや、ヤモリか!?」

「…いやどっちかというとそれ、トカゲ…あ、でも例え的には間違っていないのか…?……いややっぱどうでもいい、さっさと倒すぞ!あの怪我じゃ遠くには行けないはずだ!!」





グレムリンは切り落とした腕を左手で押さえながら、よろよろと歩いている。

今、彼の体には相当の激痛が巡っていることだろう…

しかし片腕を失ってでも生き延びようとしたのは、戦いへの衝動ゆえだろうか。

そうしていると…

激しい頭痛で苦しむコータスの姿が、そこにあった。


(――頭が、痛い…!)


フシギダネの薬の効き目は知っている。

彼女の処方した頭痛薬を飲んでも、治るどころか悪化していく痛み…

いや、効き目はあったのだ。グレムリンとビーストの戦いを目の当たりにするまでは。

これまで、こんなことは一度もなかった。

ファントムとの戦いに遭遇しても、こんな激しい頭痛を感じることはなかったのに。

…まるで、自分の中にある“何か”が反応するかのように…

――当然、グレムリンの接近には気付いていない。

グレムリンも手負いでありながら、このままただで帰るわけには行かないと思ったのか…剣をコータスの頭目掛けて振り下ろそうとしていた。


『せめて、貴様、だけでも…殺してやるッ!!』

「…!」



――グレムリンはミスを犯した。

1つはこのまま素直に撤退していれば、彼はビーストと再戦する機会があたであろうこと。

1つは相手方だのポケモンだと思って、見くびっていたこと。

そして…これが最大のミス。

自分の攻撃による【命の危険】がトリガーとなって、『目覚めてしまった』こと…


『なん、お前、…ファントム…』

『……誰に、手を出してるの…?』

『…ッ!こいつ、まさか』


白い翼。

それを持つファントムを、グレムリンは2体知っている。

1体は、先程自分にゲートを絶望させるための“引き金”がこの森にいると教えた、ペガサス。

そしてもう1体は…噂程度で聞いていた、――セイレーン。

ペガサスに関しては正体不明でグレムリンも特にそれを聞こうとは思わなかったが、セイレーンは違う。

その異常性をワイズマンから聞いたことのある彼は一歩引くが、既に遅かった。



『――あなたは光栄ね…私の歌で、身も心も破滅に追いやられるんだから……?』





グールを全て撃破した後、リザードンとジュプトル、ポポッコは手分けしてコータスを探していた。

いつの間にいなくなったというのか。

もし彼女に危害が加えられていたら…!

オニゴーリからの制裁云々を差し引いても、ジュプトル達は必死でコータスを探す。

そして…

運よく彼女を見つけた場所では、近くにグレムリンの持っていた剣が落ちていた。


「……コータス!大丈夫かッ!?」

「ジュプ、トル、さ」

「怪我とかは無いか?…グレムリンは…」

「………あ、ぁ、…ッ」

「あの、本当に大丈夫なんですか…?顔色が随分と悪いようですけど」

「やっぱ、俺も止めとくべきだったな。この囮作戦…それにしても、」


リザードンは頭を掻きながら、残された剣を見る。

――あんなボロボロの状態だったんだ

――その状態でコータスを手に掛けようとして、力を使い果たして、死んだんだろう

長い間探していた宿敵の1人の呆気ない死に様に、リザードンはなんとも言えない気分になる。



(せめて、俺の手で倒せていたら)


(そうしたら、コータスもこれ以上怖い思いはしなかったんだろうな)




(――ゴウカザル…結果はどうあれ、お前の姿でポケモン達を傷つける奴はいなくなった)


(だから……安心して、天国で笑っていてくれ)



(そしてもし、これから先の未来で互いに生まれ変われるとしたら…)


(その時はまた、探検隊でも何でもいい…一緒に……)






〜〜〜






翌日。

ポケモン通信の一面には、ポポッコの記事が載っていた。



【連続傷害事件の犯人激写! その最期とは】

――昨日、連続傷害事件の犯人でもあるファントム・グレムリンが雪花屋のオニゴーリ館長を襲撃。

魔法使いビースト・ウィザード両名により一度撃退には成功するものの、当社の敏腕記者でもあるバンギラス氏が負傷。

岩タイプを持つ彼の肉体をも傷つけるほど鋭い攻撃で、これが他のポケモンに向けて狙われたとしたら最悪の事態になるほど。

また同日未明、“森の溜池”にて【ブレイブス】主導によるグレムリン討伐作戦が展開。

一度はビーストがグレムリンを追い詰め、止めを刺すかに思われましたが、寸前のところでグレムリンは自らの腕を切り落とし逃亡。

しかしハイパービーストとの戦いのダメージも残っていたためか、逃亡中に消滅。

その正体は依然として知られておらず、その攻撃方法から、現在行方不明になっているお尋ね者の“切り裂きストライク”の生み出したファントムである可能性が高いと予想されており…


「――はー。よくもまぁ、ポンポンと出任せを書けるもんだ」

「こういう真実を隠すようなやり方、ホントは私、好きじゃないんですよ?…だからと言って、【Bバースト】のゴウカザルが生み出したファントム!……って書けます??」

「あー…ごめん、無理だな」


ヘイガニはポケモン通信を見ながら、朝食をちゃっかり食べに来たポポッコと話している。

ちなみに彼女…

『バンギラスがビーストであるリザードンさんと組んでいるなら、【ブレイブス】にも専門の追っかけ記者がいてもいいですよね!』

……というとんでもない理由で、なんと【ブレイブス】に入ったらしい。

ただし基本的には記者としての仕事最優先で、探検隊活動の手伝いはそこまでできないが、記者ならではの情報収集で助けになるとのこと。

「これでピカチュウ以外のタイプが被ったな…」と思いながらも、ヘイガニは次に、こんなことを尋ねていた。



「でも、よくグレムリンをおびき出せたな?相手にピンポイントで情報を流さないと駄目だってのに」

「あ、それ?実はオオタチさんがやってくれたんですよ」

「…オオタチさんが…?」

「最初は皆『いやむしろ館長が直接言いふらしたほうが』って大焦りだったんですけど、確実に相手に情報を流せるいいツテがあるからって…正直、本当に成功するとは思いませんでしたよ?私も」

「……ツテ、ねぇ…」


――なんか怪しい。

ヘイガニはそんなことを思いながら、今日も元気にスライディングたっちーしてるオオタチを見ていた。




そして…

誰もが、今日を境に【平和】だった日々が終わりを迎えるとは……

誰もがこうして雪花屋に集まり、談笑しながら食事をする日が終わることになろうとは……


――今日、この時点で、思えるはずがなかった。






***




最悪な確定フラグ来ちゃいました。

…コータスぅぅぅ…!


オオタチVS白い魔法使い。

結果はオオタチの圧勝でしたね。口で、ですが…

オオタチに悪意は無いと思います。

というか、あのスライディングたっちーする子に悪意とか…ねぇよ……

余談ですが作者、昔(小学校低学年ぐらい?)買ったオオタチのぬいぐるみ……まだ持ってます。

昔は「どんな需要があるんだw」的なポケモンでもぬいぐるみになってましたよねー。

クレーンキャッチャー系だとラフレシアとか。

……ところで、このオオタチに力でも口でも勝てる館長って一体。



ポポッコは自分の信念に基づいて行動する系。

なので、割と似たようなジュプトル・バンギラス・リザードンとは仲良しだと思います。

勿論、女の子同士としてピカチュウとも仲良しですし、女性に対する態度は昔から柔和だったミロカロスとも仲いいです。

でも、彼女の加入なんてギャラドス・ミロカロスもそうですが…誰が予想できるかよ……!

(作者も予想はしてなかった。でも動かしてて楽しいキャラ)

同僚のバンギラス以外には基本敬語口調。それが例え年下のピカチュウでも。

技は眠り粉・飛び跳ねる・宿木の種・メガドレイン…ポケダン世界じゃ相当最悪な技編成です、かなり。性格は真面目さん。性別は当然メスです。


そして、…コータスゥ…!

まあ分かっている方も多かったと思います。

でも、……答え合わせは次回の予定だったんだけどなぁ…

まあいっか…

これを知っているのといないのとでは、次回以降の楽しみ方も違ってくるんですが……まあ、まだ最大のサプライズがいますし。

そしてタイトル&最後の文…

明らかに、誰か死にかねないフラグや……

白魔、コータス、ジュプトル、リザードン、ヨノワール、ブイゼル、オオタチ…うわ誰でもいけるよ。

――逆に、オオスバメは安定して死なない。




次回…

っていうか、次回と次々回はセイレーン編ですね。

後、ついでに館長の悲劇回でもあります。