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タイトル未設定 - 45話:消失

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――ファントム達の隠れ家と化した、廃墟。




その内部の一部分にある部屋の壁に、勢いよく叩きつけられるファントムがいた。

…メデューサだ。

彼女はくっと目の前の相手を睨むように見据える。

目の前にいたのは、ケルベロス…3つの頭を持つ、黒い体毛の獣のファントムだ。

その近くには何体かのファントムがおり、その中にはワイズマンもいる。


『…貴様!』

『あんさん、何をしたか分かってんのやろな?――ワイズマンの命令に背いただけじゃなく、何でレギオンっちゅー面倒な奴を解放したんや!』

『……指輪の魔法使いの中にいるドラゴンは、白い魔法使いが消したがっていた…ファントムでありながら敵に味方するような裏切り者を始末するためにも、多少の犠牲は致し方なかったのよ』

『せやかてメデューサ、それはあくまでもあんさんの都合であって…ワイらにはまったく関係のあらへんことやないか。ワイズマン、こないな危険分子をいつまでも残すわけにはいかないとちゃうんか?』


話を振られ、ワイズマンは考える。

…ゲートを見極めるためには、メデューサの持つ目は必要…

特別な目を持って生まれるファントムの数は少なく、メデューサとグレムリンぐらいしかいなかった。

ベルゼバブが生きていれば、目がなくともゲートを見極められるような策を考えただろうが、いないものに縋っても仕方がない。

……が、メデューサがレギオンを解放したと言うのもまた、事実。

レギオンはゲートを絶望させてファントムを生み出すのではなく、ゲートもただのポケモンも関係なく、心を…アンダーワールドを破壊する。

その危険度はセイレーンと同格だったものの、彼女は封印をする前に白い魔法使いによって行方を眩まされていた…

ワイズマンは暫く考えた後、ケルベロスに告げる。


『――過ぎたことを悔やんでも仕方がない』

『ワイズマン!』

『だが、メデューサ…ケルベロスの言い分にも一理あるのも事実だ。お前は暫くの間、ゲートを見極めることだけに集中し……それ以外はどんな手出しもするな』

『…ですがワイズマン、ケルベロス達でどうにかできるとでも?』

『あんなぁ、メデューサ。“目”があるからって、調子に乗っとるんとちゃうで?こちとら、腕っ節だけならあんさんを軽く捻り潰すぐらいはあるさかい』

『……脳筋が…!』

『なんやと!』



『――いい加減にしなさい、メデューサ…ケルベロス!ワイズマンの御前であることを弁えるのよ』



止めに入ったのは、凍てつくほどの冷気をこちらに向ける…ゲルダ。

強大な魔力を持つ彼女は、1時間もしないうちに一つの集落を雪に埋もれさせてしまうほど。

ゲルダが苦手なケルベロスは「はいはい」と適当に返しながら、メデューサの元を離れる。

メデューサは杖を支えに立ち上がり、まあいい、と考えていた。

…ワイズマンとしても、“目”を持つ自分は切り離せない

…その証拠に、ゲートを見極められる自分を残そうとしている

そんな彼女をよそに、ケルベロスは次の問題点をワイズマンに言及する。


『……まあこんな奴は正直どうでもええねん。ワイズマン、レギオンはどないするつもりや?』

『確かに、それに関しては私も同意です。もう一度封印を施すのですか?』

『奴の動きを制限しておくに越したことはないのだが、――問題は封印の術式を完成させるのにかなりの時間を要する。…が、これは完全な封印の場合だ』

『ほんなら、完全じゃないほうの封印はどのぐらいもつんや?』

『3日だ。……尤も、レギオン…貴様が私の命令を忠実に遂行すると誓うのなら、封印するのは待ってもいい』

『…。……断る、そう言えば』


レギオンが総てを言う前に、ワイズマンがその手の平から闇の魔力を込めた球を放つ。

それはレギオンに直撃し、彼は近くの壁を突き破るように倒れこむ。

その威力に、近くにいたファントム達は息を飲む…

一方のワイズマンは、カツカツと近寄りながら…見下すような目で、レギオンに告げる。


『――貴様に拒否権はない』

『…いいでしょう。こちらとしても、また封印されるのは非常に退屈なので』

『それとメデューサ、私は特に誰かを特別扱いするつもりはない。――これ以上余計な動きをすればこの場で貴様を消すこともできる』

『……!』

『そういうわけだ。――ケルベロス、今回のゲートはお前が絶望させろ…場合によっては、古の魔法使いを消しても構わない』

『任せとき。そういうわけや、メデューサ……サポートよろしゅう頼むで』

『…くっ…!』






〜〜〜






森の片隅に、小さく建てられた石碑…

その前で手を合わせながら、ピカチュウは“あの日”のことを思い出していた。

――仲間だと思っていたセレビィが、メデューサだったこと

――メデューサの策略により、ジュプトルが魔法使いで無くなったこと

――自分を庇うために、オオタチが命を落としてしまったこと

色々ありすぎたせいか…彼女自身、今でも信じられないのだ。

その日から数日が経過しており、魔法使いが1人になったと言うのに不思議とファントム絡みの事件はなかった…


どうして動かないのか。

様々な憶測がピカチュウの頭の中で渦巻くが、一番納得できる理由は…ビーストを潰すためだ。

リザードンのアンダーワールド内にいるキマイラは、自身の中に蓄えられた魔力が尽きるとリザードンの命を食らう。

白い魔法使いもまともに動けないと知った今、ビーストさえどうにかすればファントム達の天下。

最悪の場合、オニゴーリの中にいるファントムを食べてもらうことも考えねばならないが…それを踏まえても、時間があまりない。



ピカチュウが【雪花屋】へと戻ろうとする途中…

偶然にもジュプトルの姿を、見かける。

気になって後をついていくと、彼は人気のない森の中で“ディフェンド”ウィザードリングを指に嵌め、腰のウィザードライバーに翳す。

…しかしその結果は、変わらなかった。


<エラー、エラー>

「……くそっ…!」


ドラゴンが死んだ今、ジュプトルは魔法使いではなくなった。

魔法を使おうとしてもそれが発動することはなく、ウィザードライバーの事務的なエラー音が辺りに響くのみ…

そんな彼の姿を見て、ピカチュウは心を痛めていた。

――そもそもジュプトルは、ミライとポッチャマ…2人が守ったこの世界を守るために、魔法使いとなった。

しかし、大事な仲間であるセレビィがファントムを生み出していたことを知り…

更に、その仲間の慕情を利用されて、魔法使いとしての資格を失った。

…今、何より一番辛いのはジュプトル自身なのだろう…

ピカチュウは声を掛けることなくその場を立ち去り、【雪花屋】に戻っていた。





その頃、【雪花屋】では。



「――本気かよ、館長!この状況で、ポケモンタウンを離れるって…」

「この状況だからこそだ。…じゃあ聞くが、今ファントムは何を優先するべきか?……答えは簡単だ、ビーストの自滅を狙えばいい」

「…それにしたって」

「心配するな。ちょっとその辺にいる、白い魔法使いのケツを叩いてくるだけの話だ……後、そいつに頼んで行方知れずのメイジを召喚させる」


…館長の場合、「叩く」よりも「氷の礫をぶち込む」なんじゃ…

ヘイガニはそんなことを考えながらも、不安そうな面持ちを見せる。

ファントムにしてみれば、オニゴーリも魔法使いの資格を得たとはいえ…実はそこまで脅威ではない。

理由は一つ、……腕のないポケモンは、ウィザードライバーやビーストドライバーと言ったベルトを巻いたり、指輪を翳すことが不可能だからだ。

と言うかオニゴーリは胴体自体ないし。

そんなことはさておき、一番の問題は…以前から言われている『絶望が希望を上回る』ように仕向けさえすれば、今度こそオニゴーリでもファントムの誕生を免れることはできないこと。


「……まあ、その間で一番不安なことと言えば、【雪花屋】の経営だな。…サボリ癖があったとはいえ、オオタチでもいなくなるとキツイな」

「それはオーダイル棟梁に、館長が戻るまでの間【雪花屋】の手伝いがしたいって頼んであるから大丈夫なんだよ。…大丈夫なんだけどさ…」

「ジュプトルとピカチュウのことか?」

「…ああ。二人とも、あの件で相当参っているみたいでさ…もしこんな時に事件があったり、ファンと無関係の依頼が来たりしたら……」

「――あいつらなら大丈夫だろ。それに…こんなことでへこたれるなら所詮それまでだった、それだけの話だしな」

「館長」

「じゃあ、行ってくる。――俺が帰ってきた時に、壁にヒビ一つでも入っていたら……………分かるな?」

「……サー!イエッサーッ!!」




ヘイガニの元気(にして必死)な敬礼を背に、オニゴーリは【雪花屋】を出る。

荷物の中には、白い魔法使いが渡したハーメルケイン…

これさえあれば、【神の頂】への扉は開き、白い魔法使いと会うことが可能とされる。

オニゴーリは小さく溜息をついた後、迷いのない目で【極寒の霊峰】へと向かっていった。

――それから少し遅れてピカチュウが戻り、オオスバメが休日のため遊びに来て、ジュプトルが帰ってくる。

そして…

ヘイガニがジュプトルの分のネコブ茶を渡した瞬間、ドアからノックが聞こえ、コータスが応対に出る。

やって来たのは1匹のルカリオで、きょろきょろと周囲を見回した後、茶を眺めていたジュプトルに気付き尋ねていた。


「……あの、もしかして、【ブレイブス】の方ですか?」

「…そうだが」

「ああ、よかったぁ。よくこの旅館にいるって話を聞いて、試しに来てみたんですが…」

「もしかして、依頼なの?」

「待てピカチュウ、【ブレイブス】への依頼ってことは…」


ルカリオが依頼人だと知り、ピカチュウが顔を少し明るくさせるが…

ヘイガニの言葉に、ハッと我に返る。

ジュプトルも察したようで、ルカリオから目を背けていた。

一方のオオスバメは「え?何??」と言った様子でジュプトル達とルカリオを交互に見ており、ルカリオは勢いよく頭を下げながら【ブレイブス】に頼み込んでいた。


「――はい、こちらの探検隊が、怪物退治の専門だとメガニウムさんから聞いたので」

「…やはり、な」

「……あの、ルカリオさん…気を悪くしないで聞いてほしいんだけど……私達…」



“ファントムをもう倒すことはできない”

ピカチュウがそう言いかけるその前に、オオスバメがテンション高めに割って入る。


「ちょーっっっと待ったー!!!」

「…あの、なんですか、このアホ雲みたいな人」

「あ、えーと…スピデリのオオスバメさん」

「このアホは無視していいぞ…俺達は……」

「無視しないでー取り乱してー自分にーへろぱにゅらりらー!!!」

「歌えないなら無理すんなオオスバメさん!?」

「…とりあえず、話だけでも聞いてみようよ!もしかしたら相手は凄くでっかいファントムで、リザードンの力も必要かもしれないし!!」


オオスバメの言葉に、ピカチュウは現在、リザードンも相当まずい状況だと言うことを思い出す。

彼はバンギラスとポポッコの力を借りて、ファントムの目撃証言がないか調べているが…尻尾を未だに掴めていない。

となれば、彼にとってルカリオの持ってきた『ファントムをどうにかしてほしい』という依頼は、何としてでも欲しいところ…

ルカリオも、ファントムをどうにかしてくれるのなら相手は誰でもいいようで、話を始めていた。


「私、ポケモンタウンのほうで書店のバイトをしているんですけど。――数日前から、変な視線を感じるんです」

「変な…」

「…視線?」

「ただのストーカーとかじゃなくて?」

「はい。自慢じゃないですけど、その辺の雑魚なら軽く殴り飛ばせるぐらいの実力はあるので。――それに…その日から不可解なことが、起こるようになって」



ルカリオの話では…

バイト中に店の裏のほうから音がしたかと思えば、壁にはポケモンがつけたとは思えないほどの深い爪痕がつけられていたり。

帰る途中、なにやら獣の唸り声のようなものが聞こえて背後を振り返ると、すぐその横を何かが通り抜けていったり。

ファントムだと確信できたのは、昨日。

店に向かう途中、3つの首を持った異形の獣が襲い掛かってきたのだ。

その話を聞いたコータスは、驚いた様子でルカリオに尋ねる。


「…ファントムに襲われたって…大丈夫だったんですか?」

「“インファイト”で顎を殴り飛ばしたら、殴られた場所を押さえて撤退したんで…怪我はしませんでした」

(((腕っ節強いってレベルじゃないって…)))


ファントムを直接殴って退けたというルカリオに、ジュプトル・ピカチュウ・ヘイガニが頭を抑える。

偶然そのファントムがただの雑魚だった、という可能性もあるのだが…

こんな終盤まで残っているファントムだ、実力は確かなのだろう。

オオスバメは「3つの首」ということで、他のポケモンの可能性はないのか尋ねていた。


「あくまでも、ドードリオとかじゃなかったんだよね?」

「はい、犬…みたいな感じの化け物でした。3つ首の犬型ポケモンなんていないから、ファントムだと思ったんですけど」

「まあ、そうだよな…」

「3つの首かー……ビーストが食べたら、ファントム3体分にならないかな?」

「「「ならない、ならない」」」




とにかく、依頼の件はリザードンにも相談してから受けるということで、話は纏まった。

問題は、ルカリオがゲートである可能性。

こうなってくると、いくらジュプトルが魔法を使えないとは言っても、ルカリオを護衛する必要が出てくる。

もしかしたらそのファントムが、ジュプトルが魔法を使えないと知らない可能性もあるかもしれない…

ピカチュウはジュプトルを説得しようと試みるが、ジュプトルは首を横に振る。


「……魔法使いじゃなくなった俺に、何ができると言うんだ」

「ジュプトル…でも…」

「リザードンもまだ戦える、メイジもいる、白い魔法使いもいる…俺がいなくても充分だろう」

「だけど…、……」

「――ていやー!!」

「ごふっ!?」


ずっぱーん、という激しい音がジュプトルの頭から聞こえてくる。

原因は一つ…オオスバメが、彼の頭を強打したのだ。

「何をする」と怒るジュプトルだが、オオスバメはクッションを盾にしながら意見する。

ぎゃんぎゃんと騒ぎ立てる彼らに、ヘイガニも止めに入り…ルカリオは訝しげな顔をしながら、ピカチュウとコータスに尋ねていた。


「後ろ向きいくない!いくないよー!!」

「黙ってろこのバカアホ押す××パンツバメ!俺は…」

「だー!お前らちょっとは落ち着けよ!?」

「…いつもこんな感じなんですか?」

「あー、えっと、まあ…うん」

「大体…そんな感じです。オニゴーリさんというストッパーがいないぐらいで…」



「――だ、誰か…俺に牛乳を……気休めでもいい、牛乳をおぉぉ…!」


今度は、牛乳を欲して這いずって来るリザードンがやってくる。

「何してんだよ」とヘイガニがツッコミを入れるも、リザードンは死に掛けの魚のような顔で話していた。

…というのも、ここ暫くファントムの魔力を食べれていないせいか、キマイラの空腹が限界のようで…

リザードン曰く、「牛乳でも飲まないとやっていけない」とのこと。

ちょうどいいとばかりにヘイガニとコータスがルカリオの依頼を話し、それを聞いたリザードンは勢いよく起き上がる。


「……つーことは、やっと飯にありつけるってことか!?」

「まあ、そうなるな」

「問題はルカリオさんがゲートである可能性を踏まえての、護衛なのですが…リザードンさん。……できますか?」

「どうにかなるだろ!というわけで、その依頼は俺が受けさせてもらうぜ…つーかその依頼くださいマジで!!」

「あー、えーっと…私としてはどっちでもいいんですけどね?怪物さえ何とかしてくれたら…」

「イェス!!!」


さっきまで死に掛けていたとは思えないほど、元気になったリザードン…

もはや牛乳、要らないんじゃないかというぐらいに。

その一方で、ピカチュウはさっきのジュプトルの発言に対し、不安を覚えている。

――魔法が使えなくなったことで、自暴自棄になっているのではないか、と…

オオスバメもそれを察していたようで、彼女を呼び出すとリビングから少し離れた場所で話をしていた。


「オオスバメさん…」

「ピカチュウも分かっているんだったら、はっきり言ってあげたほうがいいよ?正直、俺が言うとジュプトル絶対怒るもん」

「だけど、…私がそれを言っていいのかなって…思うんだ」

「なんで?ピカチュウは、ジュプトルのパートナーじゃない」

「それは…館長への借金を返す間、一緒に探検隊をやっているだけの話であって。……ミライさんやポッチャマ、セレビィとは過ごしてきた時間が違うから…」




――ずっと、引け目に感じていた。

時の崩壊から世界を救うため、ジュプトルはミライやセレビィと一緒に戦ってきた。

殆ど絶望的な戦い…本当に時の崩壊から世界を救うことができるのかという、不安。

その分、彼らの中には確かな絆というものがあっただろう。

特に、ミライとジュプトルには…

しかし自分は、そのことを知らない。その時間のことを、何も知らないのだ。

そのことを話すと、オオスバメはきょとんと首を傾げながら、ピカチュウに告げる。


「…そりゃ当然だよ。だってピカチュウは、ミライでもセレビィでもないんだから」

「オオスバメさん…?」

「ピカチュウは、ピカチュウでしょ。それにピカチュウは、ジュプトルが魔法使いとして戦ってきたことを知っている…ずっと一緒に戦ってきている。それは、ミライもセレビィも知らない……ピカチュウや俺達しか知らないことなんだ」

「私達しか、知らないこと」

「だからこそ、今のジュプトルの悩みをどうにかできるのも、俺達なんだよ。それなのに遠慮なんてしてたら、どうにかできるのもできなくなっちゃうよ」


けらけらと明るい笑みを見せながら言うオオスバメの言葉に、ピカチュウは考えていた。

…私は、私

…私には、ミライさんやセレビィの知らないジュプトルとの時間がある

…そして、今自分を見失っているジュプトルをどうにかできるのは

…ミライさんやセレビィじゃない。私なんだ、私達【ブレイブス】なんだ


「……ありがとう、オオスバメさん。…私ね、本当は自信がなかったんだ」

「んー?何で??」

「ミライさんは実際にこの世界を救った、凄い人だし…セレビィは結果的にファントムを生み出してしまったけど、ジュプトルのことを本当に大事に想っていたし……ジュプトルもそうだったから」

「まあね。昔から仲いいと思うよ、ジュプトル自身が鈍いのが難だけどね」

「だけど、――私はジュプトルの知っているミライさんやセレビィにはなれない。私は私だから…私にしかできないことを、するしかない。そうなんだよね」

「うんうん、自分らしいのが一番!」






〜〜〜






メデューサは、イラついていた。

原因は一つ、――ケルベロスのやり方だ。

自分だったらゲートにわざと分かってビーストに感付かれるより、ビーストが自爆するまで待つ。

それは他のファントムも、同じだろう…

しかしケルベロスはここ数日、わざとゲートの周囲で事件を起こしている。昨日など、直接姿を見られた挙句に殴られて帰って来た。

メデューサはセレビィの姿で、目つきを鋭くさせながらケルベロス…ウインディに言い放つ。


「…何をやっているの、ケルベロス。どうしてビーストが自滅するまで待たずに、ゲートを……!」

「ワイにはワイのやり方ちゅーのがあるって言うてるやろ。そもそも、あんさんはワイズマンの命令で…暫くはゲート探ししかできない。他のファントムのやり方に口出しすることは、できないはずやで?」

「……貴様!」

「何なら、ここでワイを石にするなり何なりして、好きにしたらええやん。――尤も、そんなことをしたらあんさんの立場はホンマにやばくなるけどなぁ」


つーか、とウインディは姿をケルベロスのものに変えながら、セレビィの首を掴む。

3つの首にある6つの目はギラギラと赤く輝いており、3つの口は鋭い牙を彼女に向ける。


『――そもそもあんさん、最初からワイにゲートを教えるつもりなんてないのやろ?脳筋やから嘘教えてもどうにでもなる思うてな』

「…何を根拠に…」

『分かってんねんで?あのルカリオはゲートちゃう、ワイの直感と嗅覚がそう告げとるんや』

「そんなことで……。もし…私が真実を言っていたらどうするの?」

『それは絶対ありえへんねん。あんさんは正直言って、ワイズマンを盲信するあまり命令にないことまでやらかす奴っちゃ。それが例え、ワイズマンに不審を持たれることになっても、や』

「……」

『でも、まあ、ワイの役目は【ゲートの絶望】か【魔法使いの排除】。っちゅーことで、わざとあんさんに騙されといてやるわ』



そう言いながら、ケルベロスはセレビィから手を離す。

その際、乱暴に投げ飛ばす形になってしまったのか、セレビィは大きく飛ばされる。

が、背中の羽を使い空中で上手く姿勢を取ると、ケルベロスをキッと睨みつける。

――ケルベロスの言うとおりなのだ。

メデューサはそもそも、ケルベロスに従う気など毛頭ない。彼のことを「脳筋」と見下しているのなら尚更。

適当にその辺のポケモンをゲートに仕立て上げ、どんな手段を用いても絶望させてファントムを生み出すことのできないという状況を作り出せば……ケルベロスは即刻【役立たず】のレッテルを貼られる。

……だが、ケルベロスはメデューサのことを「陰険」と心の中で罵りながらも、彼女のことはよく分かっていた。

ワイズマンのためならどんなことでもやる、もはや恋愛感情に近いものをワイズマンに抱いている彼女。

その暴走はワイズマンの命をも逸脱し、そして遂に、レギオンを解放し…「放置」と言われていた指輪の魔法使いの中のファントムを倒した。

しかもプライドだけはいっちょ前で、彼女の無駄なプライドの強さがベルゼバブの足を引っ張ったと言うこともよく知っている。


「…そうは言うけれど、ゲートでもないポケモンを使ってどうするつもり?」

『そんなもん簡単や。――尤も、あんさんの協力が必要やけどな』

「何ですって?」

『ワイはあんさんが好きそうなえげつない方法で、魔法使いを倒す。…あんさんはそれに乗っかってくれれば、それでええんや』

「私に、ワイズマンの命に背けと?」

『せや。……できへん、とは言わせへんで…あんさんは都合よく忘れとるかもしれへんがな、ワイはあんさんがどんだけワイズマンの命令にない行動を取って来たか分かっとるし、他の奴らも知っとる。……当然、ワイズマンにも教えとるさかい』

「…何ですって!?」


――これは、ケルベロスの嘘だ。

メデューサがワイズマンの命令にない行動を取ってきた内容と回数は覚えているが、それをワイズマンにばらしたことはない。

…と言っても、ばらす必要がないほど筒抜けだったわけだが。

しかしセレビィそれを確かめる術はなく、唇を噛み締めながらケルベロスに言い放つ。


「……貴様…ケルベロス!」

『あんさんは自分で、もう取り返しのつかないところまで堕ちとるんや。――なあに、憂さ晴らししたらええやん…指輪の魔法使いを使うてな』




ケルベロスはにやりと怪しげな笑みを見せ…

セレビィに作戦の概要を、話す。

もし失敗したとしても、「私は止めたがケルベロスに強要された」とでも言えばこれ以上立場が悪くなることはない。

成功すればケルベロスがワイズマンに褒めて遣わされるという、腹正しいことこの上ないことになるが…

脳筋が一度手柄を立てたぐらいなら大した問題ではないし、正直彼女としても、ジュプトルの心を壊し足りなかったところだ。


「…いいわ。但し、失敗しても私は責任を取らないわよ」

『構わへん…つーか、あんさんのことやから……ワイの作戦を失敗させつつ、指輪の魔法使いぶっ壊すつもりでおるんやろ?』

「……」

『図星かいな。……まあええわ、やったるで』






***




頭が眠いテンションで書いた。

……あれ、ケルベロスと戦闘できる機会が作れなかった……←

これちょっとケルベロスが噛ませになる気配すら出てくるぞ…

……

とか思ったけど、デュラハン・レギオンも能力的に強くても○○○○○戦・ジュプトル復帰戦と相手の悪すぎる戦いだから……

というか、こいつら完全に可哀想になる戦いの予定だから…

ビーストと接戦を繰り広げると言う意味では、あと若干濃いキャラ付けという意味でも、ケルベロスはまだまともなのかなぁ……Episode5終わらないことには分からない。


メデューサ…

そりゃ怒られますよーw

ケルベロスの関西弁は、某ケロちゃんを意識してたんです…が……

途中から服部とか、オズモーン(漫画版)みたいなノリでやってましたw

若干頭が切れるっていう面では、服部っぽいかなぁとは思ってます。 実は中の人のイメージボイスも服部になっていたと言う…



ジュプトル…

ちなみにルカリオ、っていうのに特に狙いはないです。

後このルカリオ、メスです。特に意味は無いですが。

オオスバメはオオスバメで、色々考えているんですよ………空気ブレイカーだけどな!

ジュプトルに関しては頑張って立ち直ってくれ…

――と言いたいけど、次回辺りがちょっとえげつないのか?


メデューサ嘘ついてやがったw

この時点で駄目だと思います…メデューサさん……

後、個人的にはケルベロス凄い好きになったわ…メデューサより一枚上手って時点で←

ウィザダン書いてる中で気に入ってるファントムの人、というとベルゼバブだったりします。

時点でケルベロスかな…

味方キャラだと館長とかオオタチ、ヘイガニにバンギラス…あとはルージュラでしょうか?

たっちぇ、キャラ的に愛着湧くとは思わんかったなーってぐらい………まあもともとオオタチ好きだったのもあるんですが、ね…

逆に印象悪くなりかねんのがセレビィとリーシャンとニョロトノ。

いや、セレビィはアレ中身がメデューサと言う別物ですし、リーシャンは勘違いが激しいだけで根はいい子なんだ…!

ニョロトノ?……うーん。




ちなみに、この話って更新日(1/17)に書いてるので次回のことなんてまったく考えてないです。

ピカチュウがヒロインとなれるのかが掛かってはいますが。