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タイトル未設定 - 47話:狙われたコータス

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47話:狙われたコータス

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――【凍てつく大地】…




未だ吹雪が止むことのないこの地は、ブイゼル達がここに来たときよりも遥かに雪が積もってきている。

どうやら、明日になれば雪が止むようではあるのだが、ヨノワールにはとてもそうとは思えなかった。

ブイゼルは子供のウリムーとヒーローごっこをして遊んでおり、子供のウリムーが体当たりで怪獣役のブイゼルをやっつける。

とは言っても、子供なのでやはりそこまでのダメージはなく…

ブイゼルはわざとらしく苦しそうに倒れ、迫真の演技で倒れていた。


「ぐ、ぐおおお、まさか…貴様のような奴にぃ〜…!」

「やったー!悪の大怪獣をやっつけたぞー!!」

「…なあ、次は別の遊びしないか?例えば…ほら、あそこにいるヨノワールのおじさんに悪の伯爵をやってもらってさ。二人でヒーローやんの」

「二人で一人のヒーローだね!」

「……おい、勝手に私を巻き込むな。…聞いているのか?」


ヨノワールがブイゼルと子供のウリムーに文句を言うが、2匹とも聞く耳を持たない。

まったく、とヨノワールが呆れ返っていると…

この鎌倉の住人であるウリムー夫妻が戻ってきて、僅かについた雪を、体を震わせて払う。


「うう、随分と酷い雪だ。……何かあったのだろうか」

「そうですねぇ。こんなにも長い間、吹雪が止まないことなんてありませんでしたし…」

「やはり、ここまで長く吹雪が続くのは…滅多にないことなのだろうか」

「はい。――この辺り、と言いますか、【極寒の霊峰】には古くから『神の住まう場所』と言われているのですが……その話は、ご存知で?」



ああ、とヨノワールが頷くのを見ると、父ウリムーは話を始める。

…昔から、【極寒の霊峰】には神と呼ばれるポケモンが住まうと言われている…

それも、この世界を創造した神・アルセウスが。

アルセウスはプレートの力を使ってこの世界に命や自然を与え、更にはこの地に住まうポケモンや…今はもう滅びてしまった人間達に、知恵や言葉を与えたと言われている。

そんなアルセウスの加護を受けた【極寒の霊峰】、【凍てつく大地】は…雪と氷に覆われた地でありながらも、作物が強く育つと言う。

――だが、アルセウスの持つプレートは…どれか一つでも欠けていては駄目なのだと言う。

一つでも欠けてしまえば、アルセウスはその力が弱り…その命さえも危ぶまれると、伝承で伝えられているのだ。


「だとすると、――アルセウスの持つ氷のプレートが暴走しているのか…それとも、氷のプレートが何らかの形で欠けたのか…?いずれにしても、確かめる術がないと言うのは歯がゆいな」

「そんなにプレートって大事なものなのか?」

「アルセウスにとっては、命そのものだからな。大事に決まっているだろう」

「そっか…ん?ってことは、氷以外のプレートが存在しない可能性もあるんじゃないか??」

「……どうしてそう思う?」

「だって、命と同等のものだったら…ポケモンのタイプの数だけ存在するのはおかしいだろ」


ブイゼルの言葉には、父ウリムーも母ウリムーも納得する。

…ヨノワールでさえ、だ。

何故、命と同価値の物が複数存在するのだろうか?

しかも、ポケモンの持つタイプ…17と言う数で。キリよく15や20…もっと言えばもっと少なくてもいい数でもいいはずなのに?

その疑問に関しては、ブイゼルがすぐさま見解を話す。


「俺の推測だけど、アルセウスのプレートはどれか一つでも欠けたら駄目ってことは…17枚総てがアルセウスの命。アルセウスという存在を構成する総て……ってことだろ?」

「…確かに、万物総ての命にプレートの要素が詰まっている。炎・飛行・地面・水・ドラゴン・ゴースト・鋼・虫・格闘・エスパー・岩・悪・電気・毒・草・氷…そして、万能たる【賢者の石】」

「そう。……で、確かヤミラミ達の話だと【賢者の石】は今、アルセウスの元にはない…その影響で、氷属性のプレート以外の総てがバラバラになった、或いは、何らかの形でそうならざるを得なかった…ってことにもなるんじゃないかな?」

「……ふむ。お前は基本的に馬鹿だが、切れる時は切れるな」

「いや、俺、包丁の類じゃないからな?」

「――褒めた私が馬鹿だった」



だが、それでもブイゼルの見解には頷ける節がある。

…同時に、一刻も早くアルセウスに会わなければならないという危機感も覚える。

しかし吹雪は無常にも激しく吹き荒び、ヨノワールとブイゼルは今日もウリムー家のかまくらで立ち往生となっていた。




その同時刻、【極寒の霊峰】前。

――そこでは、既にオニゴーリが到着していた。

氷タイプであることと、この辺りの地理には詳しいこと、それとそう簡単にその辺のポケモンに倒されたりしないほど強いのが功を奏したのだろうか。

ヨノワール・ブイゼル組よりも早く、目的の場所に到着していた。

…尤も、ハーメルケイン…【神の頂】への扉を開くために必要な鍵を持っている彼が先回りできない限り、2匹はどの道目的の場所に行くことすらできなかったのも事実だが。


「……久しぶりに来たが、ここまで凄い吹雪なんてあったか…?まあいい、さっさと行くか」





デュラハンは、退屈だった。

理由は一つ…【古の魔法使いを潰すために、暫く行動を控えろ】という動きがファントム達の中に出てきたからだ。

戦闘狂の彼にしてみれば、戦うことができないのは非常に苦痛。

ケルベロスでもいれば一緒に付き合ってくれただろうが、彼はもうこの世にはいない…

衝動を押さえきれずにいた彼は、構うものかとばかりに出て行こうとする。

――だが、それを止めたのはメデューサだ。


『デュラハン、…戦い足りないのね?』

『ああそうだ。……お前が相手してくれるってのか?』

『そんなわけないでしょう。魂を奪うとまで言われたあなたの相手をしていたら、命がいくつあっても足りないわ』

『チッ、…そんな警戒する必要あるもんかね。いつでも餓死させられる魔法使い・弱っている魔法使い・魔法の使えない魔法使い……あーあ、せめて万能の魔法使いの居場所さえ分かればな』


万能の魔法使い…メイジ。

彼の行方は、ファントム側でも掴むことができないでいる。

他の地方に派遣したファントムからの連絡がない辺り、彼が見つけ次第倒しているとしか思えない。

…だが、メイジの尻尾を掴む必要はない。

最終的に彼が孤立してしまうのなら、無理に今、探して倒す必要はないのだ。

しかし、それでデュラハンの欲求が収まるわけでもなく…

メデューサはくすりと笑いながら、彼に尋ねる。


『……確かに、今魔法使いを狙うと厄介ね。でも…魔法使いじゃない奴で、倒しても支障のない奴ならいるわ』

『本当か?…ワイズマンに目をつけられるような奴じゃないよな』

『ええ、あなたに倒してもらいたいのは、――ファントムでありながら魔法使いに味方する…“裏切り者”だもの』






〜〜〜






本日の【ブレイブス】への依頼は、オーダイル棟梁の手伝いだった。

手伝いと言っても、素人に建物を作らせるような大工は何処にもいない。ヘイガニなら別だが。

建物を造るのに必要な材料の調達、それが今回の依頼の内容だ。

材料に関してはその手の知識があるヘイガニが場所を教える形となり、一定数の材料をオーダイル棟梁のところまで運ぶ。

ジュプトルが魔法を使えない関係上、材料は力のあるギャラドスに運んでもらう他ないだろう。

結果的にオーダイル棟梁の元で働く2匹が活躍する結果の依頼であったが、彼が敢えて【ブレイブス】に頼んだのは理由がある。


「おうっ、ギャラドス。資材はそこに置いておいてくれ」

「ああ。…しっかし、これならわざわざ依頼する必要なかったんじゃないか?棟梁の弟子達も、腕っ節はその辺の探検隊にも劣らないんだからよ」

「だろうな。――けどよ、今のあいつらに必要なのは息抜きだ。怪物騒ぎの鎮圧ばっかじゃあ、気が滅入るだろ?」

「…」

「最近は不気味なぐらい大人しいんだ、ずっと気を張り詰めているより…肩の力を抜いて、『探検隊らしい仕事』に打ち込んでもいいんじゃねぇか?」


オーダイル棟梁は、彼なりにジュプトル達のことを気遣っているのだろう。

彼も、かつてファントムによって絶望の淵に立たされたゲート。

…今のジュプトル達に、力になれることがあるとしたら……“何の変哲もない普通の依頼をさせてやること”だけなのだ。

それを聞いたギャラドスは、感心したように頷く。


「……やっぱヘイガニん所の棟梁だな、ちゃんと考えてる」

「おいおい、人をどこかの頭が花の国したオオタチや、頭の中が天国しかないオオスバメみたいに思ってるんじゃないだろうな?」

「いや、少なくとも俺の知り合いの中ではかなりの常識人のヘイガニ並みとは思ってる」

「あ、そりゃ良かった」



ギャラドスの答えに、オーダイル棟梁はゲラゲラ笑う。

それほど、他の面々はまともでない認識を食らっているのだろか…

……だが、いざギャラドスが同じ立場になったとしても、ヘイガニ以外をまともと言える保証がない。

いたとしてもコータスかポポッコに尽きる。

そうしていると、ヘイガニとジュプトル、ピカチュウがやって来て話に混じっていた。


「棟梁、ギャラドスさん、何を話してたんだ?」

「「いや何も?」」

「声を揃える辺り、何か疑わしいんだが…」

「それよりもオーダイル棟梁、依頼の品全部持ってきたよ!ギャラドスさんが全部運んでるから、確認してみて!!」

「今そうするところだったんだ。どれどれ…っと」


オーダイル棟梁はギャラドスから下ろされた資材を、一つ一つ見ていく。

ヘイガニも着いている以上、ピカチュウ達に限って依頼の材料が抜けている、と言うことはないだろうが…念のためだ。

約5分間の確認作業の後、1つも抜けがないことを確認したオーダイル棟梁は、「よし」と声を上げる。

そんな時だった。

彼のところに1匹のバクフーンがやって来たと思えば、慌てた様子で事情を話していた。


「――おぉい!棟梁、大変だ!!」

「ん?バクフーンじゃねぇか」

「知り合いなの?」

「ああ、ちょっと昔、高原のない薄暗い洞窟に資材を調達しに行った際…一緒に来てもらってな。それ以来、何かあれば相談したりされたりの関係だ。……で、どうした?」

「いや、実は海岸のほうで一匹のジュゴンが倒れていてよ…それだけならまだいいんだが、ファントム……がどうのって」





バクフーンの案内を受け、ジュプトル達は顔を見合わせる。

恐らく彼は、【ブレイブス】がオーダイル棟梁の依頼を受けていることを知っていたのだろう。

彼は常日頃から、日が落ちる前の1時間、ポケモンタウンから少し離れたところにある海岸で散歩をしている。

今日もそうやって散歩をしていると、海岸線に1匹のジュゴンが打ち上げられており…

外傷を負っている様子はないのだが、『ファントム』という妙なうわ言を繰り返しているのだ。

今は近くにあった民家で休ませているが、一応ファントム退治が専門ということで有名な【ブレイブス】に相談したほうがいいと思って、ここに来たのだ。

バクフーンが案内したのは、ロコンの家。

そこでは確かにジュゴンがうんうんと唸るようにして横になっており、ジュプトルはバクフーンに再度、発見当時の状況を尋ねる。


「……それで、他に何か怪しい部分は?」

「まったくなかった。というより、さっき話した以上のことは分からないんだ」

「ねえ、とにかくこの人を【雪花屋】に運ぼうよ。ロコンさんにも迷惑が掛かるし…」

「ああ、そうだな。…ギャラドス、すまないが頼めるか」

「魔法があろうがなかろうが、流石に他人を“コネクト”移動すんなよ?……じゃあ、そいつを乗せてくれ」


ジュプトル・ピカチュウ・ヘイガニ・バクフーンは力を合わせ、ジュゴンをギャラドスの背に乗せる。

そのままロコンやバクフーンと別れると、【雪花屋】へと向かう…

そこではヘイガニの代わりにコータスの手伝いをしていたミロカロスと、取材から帰ってきたポポッコ、ファントムが見つからず戻ってきたリザードン・バンギラスも集まっていた。

すぐに空き部屋の一つにジュゴンを寝かせると、暫くは様子を見たほうがいいとコータスとヘイガニがジュゴンを看病する。

その間、ジュプトル達はビースト組やポポッコから話を聞いていた。


「それで……何か分かったのか?」

「何も分からないことが分かった、としか言えねーよ」

「流石に、敵の本拠地だけあって、簡単に見つけることはできなかった…ポポッコはどうだったんだ?」

「まずはリザードンさん達が以前、遺跡の発掘調査に出かけた時のブイゼルの足取りについてですが……どうやら、あの有名な探険家のヨノワールさんと行動しているみたいですね」

「ヨノワールと?」



ポポッコの話では…

ヤミラミ宝石店で、偶然彼に会いに来たヤミラミ(A)と出会い、彼経由でブイゼルのことを聞いたそうだ。

彼の話によると、ヨノワールは【神の頂】を探す旅の途中、ファントムに狙われていたところを間一髪ブイゼル……仮面ライダーメイジに助けられ、それ以来行動を共にしているとか。

「あのヨノワールさんと一緒に探検できるなんて」と、ピカチュウは羨ましげにしていたが…

昔のヨノワールを知っているジュプトルは「そのブイゼル大丈夫か?」などと思いながらも、ポポッコに改めて尋ねる。


「で、肝心の本人達は?」

「【極寒の霊峰】に行ったみたいですね。ただ、極寒の霊峰は1週間以上前から長期的な吹雪に見舞われて、殆どの探検隊は【凍てつく大地】に行くことすらできないようですよ」

「…そんなことになっていたのか」

「館長は…氷タイプだから、そんなに心配要らないよな。あの辺が地元らしいし」

「強いポケモンがいても一撃で殺れるからな。――最悪、完全に行き違いってこともありえるぞ」


バンギラスの言葉に、「あー…」と納得するピカチュウ達。

分かってはいたのだが、別々に行動している以上、どうしてもすれ違いになってしまう。

情報を交換できる手段があるのならいいのだが、ヤミラミ達の連絡網便りとなると…やはり遅れるのも無理はない。

オオスバメが伝書鳩代わりになってくれればもっといいのだが、…あの燕、寒いところは(配達以外では)行きたがらないらしい。種族上しょうがないのだが。

その気持ちはジュプトルも痛いほど分かるため、責める気にはなれない。


「前に依頼に行った時は、雪が結構降っていたが…吹雪に見舞われることはなかったな」

「うん。そうなると、私達って運がよかったのかもね」

「…俺は風邪を引いたがな」

「ゴメンナサイ」




「――ただ、あのジュゴン、ちょっと気になるんですよね」


ピカチュウがジュプトルに土下座をしている横で、ポポッコが呟く。

どういうことだ、とギャラドスが問いかけると、彼女はうーんと唸るようにしながら考え込む。


「なんというか、どこかで見たことがあるんですよね…」

「単に、同じポケモンをつい最近見かけたとかじゃないのか?」

「それはないです。私、寒い場所への取材なんて絶対行きませんから!……ジュゴンは大抵、進化前のパウワウもなんですけど、【凍てつく大地】に生息しているもんなんです」

「だとすると、【凍てつく大地】で何かファントム絡みの事件に巻き込まれた…ってことか?」

「そう…なのかもしれないですけど、――うーん…何処で見たんだろう。バンギラス、海の中に突撃取材したことあるあなたなら分からないんですか?」

「おい語弊のある言い方すんな!ちょうどその時、ホエルオー便が嵐のせいで運行できなくて、仕方なく嵐の海の中を突き進んで取材先に行っただけだ!!」


それもどうかと、とリザードンは頭を抱える。

ポケモン通信社の所長は、かなり無茶を要求することもあるので有名だ。

その時、バンギラスに課せられた要求とは

『【南海の離島】に行って、その土地の信仰について調べて来て。今日中にね』

…正直この要求には、同僚であるポポッコにウソッキーも、バンギラスにかなり同情していた。

しかし、所長の無茶はそのポケモンにできない範囲では言わない。……バンギラスだけ範囲がかなり(無駄に)広げられているのも事実だが。






〜〜〜






暫く経って、ジュゴンが目を開ける。

周囲にはヘイガニとコータスしかおらず、別の部屋から『バンギラスの仕事先ってブラック企業じゃねーか』『スピデリよりは福利厚生がしっかりしてます』という騒ぎ声が聞こえるが、それは無視して。

コータスは少し冷ましたお茶を出しながら、ジュゴンに尋ねる。


「大丈夫ですか?ファントムに襲われて、海に打ち上げられていたそうですが…」

「…ここは…どこだ?」

「ここは【雪花屋】だぜ。……あんた、何があったんだ?」

「何があった…か。その前に、悪いがちょっと氷を持ってきてくれ。急に、ちょっと頭がぼうっとしてきて」

「ヘイガニさん、お願いできますか?」

「ああ」


ヘイガニは大きく頷き、部屋から出て行く。

彼が氷を持って戻ってくるまで、そこまで時間は掛からない…

コータスはジュゴンが目を覚ましたことを報告しに行こうとするが、そんな彼女を呼び止めるように、ジュゴンが訪ねる。


「――やっぱ人格が消えてるってのはマジなんだな、話で聞いた“あの”セイレーンとは大違いだ」

「…!?あなたは、一体」

「ああ、そういえば自己紹介がまだだったな……俺はこういうモンだ」


そう言って起き上がると、ジュゴンはデュラハンの姿となる。

突然現れたファントムに、コータスは反応しようとするが…

その前にデュラハンの持つ大剣が彼女に直撃し、激しく壁を突き破る。

何かが壊れるような音を聞いたジュプトル達、そしてヘイガニは、『館長に殺される』と一瞬で危険を理解し…音の聞こえた場所へと走る。

その際デュラハンの姿を確認し、ピカチュウは驚いたように叫ぶ。



「…ファントム!?ってことは、あなたがあのジュゴンさんを追ってきた…」

「待てピカチュウ、……何かおかしい!」

「それに、…コータスさん!?一体何が…」

『――はっ、まだ気付いていないとは…お前らの頭の中はお花畑だなぁ?そんなんだからまんまと、本拠地襲撃なんてされるんだよ!』

「…思い出した!」


デュラハンは悪態をつきながら、気付いていない様子のピカチュウを鼻で笑う。

ポポッコはこの場にジュゴンがいないこと、そして、ジュゴンを何処で見たのか思い出し声を上げる…


「私が彼を見たのは、5ヶ月前の惨殺事件で…です。ほら、【月光の湖】にて1匹のパルシェンがバラバラになった変死体で発見されたと言う事件の…」

「そんな事件もあったな…だが、その事件で行方知れずになったポケモンはいない。ファントムとは何の関連もないはずだが…」

「関連がないように仕組まれていたんですよ、きっと。――これまでのファントムの、ゲートを絶望させるための動きは大きく分けて2つ。命の危険に陥れるか…そのゲートに関する人物の、大切な何か」

「……まさか!」

『ご名答!…俺は、親友だったパルシェンの無残な死体を見せられたことによって、絶望し誕生したファントム……デュラハンだ。そして、俺の今回の狙いは一つ…』


そう言いながら、デュラハンが大剣をコータスに向ける。

防御力の高い種族とはいえ、不意の一撃をまともに食らったのだ…大ダメージは免れない。

それを見たジュプトル達は、理解した。

…こいつの目的は、コータスだ

…セイレーンの能力はファントムにも効果がある、いつまでも野放しにするはずがない

リザードンも状況を把握すると、ビーストドライバーを取り出し、変身する。


「悪いが、そう都合よく行ってたまるかよ!変身!!」

<セット、オープン! L・I・O・N、ライオーン!!>

「【雪花屋】壊した上にコータス殺そうとする…お前、館長いたら普通に死んでるぞ!?つーわけで、俺が食ってやる!」

『“つーわけで”に全然繋がってねぇんだよ!』




デュラハンはそう叫びながら、目を緑色に光らせ、大剣を振り下ろす。

ビーストはダイスサーベルで受け止めようとするも、予想外の重い一撃に、押し潰されそうな感覚を覚える。

…それだけではない。

他のファントムとは、何かが違う。まるで、体中の力が徐々に抜けていくような感覚がするのだ。

次第にビーストは圧され、膝をつき、相手の攻撃を受け止められないほどになっていく。

しかし、そんな彼の危機を救ったのは、ジュプトルの“穴を掘る”だ。

地中からの予想外の攻撃にデュラハンは姿勢を崩し、その間にビーストは離れるが…体の重さは変わらない。


「大丈夫か!」

「…全然、大丈夫じゃ、ねぇ…!何なんだ、この、感覚は…」

『――ファントムにとって、魔力とは命…命とは魔力そのもの。魔力を完全に使い切るようなことがあれば、ファントムの命は尽きる……フェニックスとの戦いで分かっていたと思っていたのだけど?』

「「「!」」」


声のしたほうに、全員が目を向ける。

そこにいたのは、メデューサ…

彼女はくすりと笑いながら、こちらにゆっくりと近づいてくる。

だが、決してデュラハンに必要以上に近寄らず…一定の距離を保った状態で話を続けていた。


「メデューサ…どういうことだ!?」

『簡単なこと。――デュラハンの能力は、その目が緑色に光っている間…一定の範囲内にいる者の魔力を奪い続けるのよ』

「何だと!?」

「だから、体が鉛のように重くなったのか…どおりで、コータスも必要以上に弱っているわけだぜ……」

「しかし、魔力が全部無くなればファントムの命が尽きると言うのなら、以前俺が魔力切れを起こした時はどうして…」

「……きっと、ドラゴンが自分で『まずい』と判断したんじゃないか?自分の魔力が完全に無くならないよう、セーフティーを掛けた…そんなところだろ」



魔力ある限り何度でも復活するフェニックスの唯一の弱点が、【再生するための魔力を総て使い切る】こと…

フェニックスも、他のファントムも、魔力が無限にあるわけではない。

そこはジュプトルやブイゼルと同じように、限られた魔力の中で上手くやりくりしているのだ。

キマイラは燃費が悪い上に、他のファントムと違って時間が経っても魔力は回復しない。だからこそ、リザードンにとっては厄介なわけで。

しかし、任意でコントロールできるならまだしも、『他者に魔力を奪われる』となると…非常に面倒だ。

デュラハンは目が光り続けている限り、誰かの魔力を奪い続ける…

つまりは、直接殺さずともデュラハンが近くにいる限り、ビーストもコータスも命を落とす危険性があるということなのだ。


「だったら、あいつから離れれば…!」

『…誰が離すかよ!!』

「くっ!?」


ビーストが距離を取ろうにも、デュラハンは意外にも素早く、追いかけてくる。

キマイラが魔力を奪われ続けていることで、ビーストの身体能力にも大きく影響し、いつも以上にスピードが出ない。

そして…

デュラハンの一撃がまともに入り、ビーストは近くの壁に激しく叩きつけられてしまう。

更に、変身状態を保っていられなくなったのか、ビーストは変身解除…

ジュプトルやバンギラスが止めに入ろうとするが、デュラハンは持っていた大剣を勢いよく振るい、衝撃波を発生させる。

その一撃で2匹は勢いよく吹き飛ばされ、ピカチュウ達が慌てて駆け寄る。


「ジュプトル!」

「バンギラス!」

「コータスさん!」

「ぐ…こいつ、強い…!」

「他の奴から魔力を奪える分、いくら本気を出しても大丈夫って奴か…面倒な……!」

「…くぅ」

「つか、誰も俺の心配しないのかよお前ら…こっちは命の危険なんだぞ、割とマジで……」



――正直言って、勝機は薄い。

ジュプトルが魔法を使えたとしても、このデュラハンを相手に勝てる保障は…限りなく低い。

リザードンはもはやキマイラの中の魔力が限界で、命を食われかねない…

メデューサはくすりと笑いながら、杖を構え…まずはコータスに近づく。


『…まずは、裏切り者のあなたから消してあげるわ……セイレーン』

「……!」

「「コータスさん!」」

「くっ…!」


ミロカロスはメデューサからコータスを守るべく、“アクアテール”を放とうとしていた。

だが、その一撃が振るわれることはなかった。

何故なら…





<エクスプロージョン、ナウ>

『――があっ!?』


次の瞬間、メデューサの体は爆風によって吹き飛び…更に運悪く、デュラハンの能力の射程圏内に入ってしまった。

爆風を食らい、魔力を奪われ、メデューサは何とか起き上がると、総ての魔力を奪われる前にデュラハンから急いで逃げるように離れる。

その際「能力を解除しなさい」とメデューサに叫ばれ、デュラハンは渋々と目の光を抑えていた。

今の魔法は、白い魔法使いが得意とするもの。

彼が救いに来てくれたのだろうかと、誰もが思っていた…しかし、その場に現れたのはまったく違う存在。



――突然現れたそれは、徐々に落ちていく陽を背に受け、現れる

――そのローブは、黄昏時を思わせる金色

白い魔法使いとも、メイジとも、勿論ウィザードやビーストとも違う…




5人目の、魔法使いだ。






***




デュラハン、どう足掻いても噛ませにしかならん気がした。

いや、だって、能力の時点で…

っていうか、【雪花屋を壊す】【コータスに傷を負わせる】の二大死亡フラグを同時に立てた時点で……!

ちなみに、一番の死亡フラグは【オオスバメを狙う】。

いや、だって、オオスバメを狙った結果死んだファントムが3体(ヴァルキリー、フェニックス、テディス)いますし…レギオンの末路もそんな感じですし……

オオスバメいなくてよかったな、デュラハン! どの道死ぬけど!!←


ブイゼルとヨノワールは本当に平和w

こいつら本当に、何しに来たんですか…

まあ、館長先に行かないとどうしようもないからね。仕方ないね。

それにしても…

メデューサも全力で死亡フラグ建ててくるなあ、本当に。

むしろメデューサが何かをする→他のファントムの死亡フラグ…?

下げマンならぬ、殺マンかよ…



棟梁めっちゃいい人。

余談ですけど、金銀の御三家は全部好きです。

チコリータ選んで大変…な目にあった記憶がないですね。オタチとかメリープとかいましたんで。

飛行→虫で「ちょっ待てw」とは思いましたが。

…それよりアカネだよ…ミルタンク本気で初見殺しや……


本拠地襲撃ってありがちなネタなんですけど、それを6回(ヘルハウンド・フェニックス(12話)・フェニックス(18話)・ドワーフ・テディス・デュラハン)されるって雪花屋凄いな…

否応なく巻き込まれたミノタウロス・スパイ活動していたメデューサ・探りを入れていたペガサス・白魔に操られたジュプトルを足してもかなりあるし。

一番酷いのはヘルハウンドですがね…

デュラハンの能力は敵味方関係ないので、厄介と言えば厄介。

しかし…

それにしても…

まさかの…

ここで…

……ソーサラーさん来たァァァァァァァー!!!




次回

――どう足掻いても、死ぬしかないじゃない(デュラハンが)…

あ、ちなみにここのソーサラーは【黄昏の魔法使い】にします。

金色(こんじき)の魔法使いでもいいんですが、黄昏時のほうがカッコいいし、何より映画ソーサラーと違いをつけたいので。


……まあ、一番似合う通り名は【終焉の魔法使い】なんだろうけどさ……

しかし本気で、魔法戦隊できるぞ。ウィザダン。