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タイトル未設定 - 6話:桃色の再会

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――この日、ジュプトルは早朝から受難に遭っていた。



「なー、なー!【スピード・デリバリー】に入ってくれってばー!!」

「断固断るって言ってるだろぉぉぉ!?」

「シフト調整すれば、探検隊活動もできるからー!」

「やらないと言ったらやらない!」

「はーいーれー!」

「やーらーん!!」

「今ならポッポまんじゅうも貰えるよ!」

「菓子に釣られると思ったら大間違いだぞ!?」

「美味しいのに」

「とにかく、やらんと言ったらやらんッ!探検隊だけでなく、配達員にまでさせられてたまるかー!!」



理由は、ただ一つ。

…【スピード・デリバリー】に所属するオオスバメから、熱烈なラブコールを貰っていたのだ。

ラブコールと言っても、『配達員になれ』というスカウトみたいなもの…

どうやらオオスバメはウィザード・ハリケーンスタイルのスピードに見惚れ、スカウトする気満々。

流石のジュプトルも、探検隊活動と兼用できる魔力の余裕はない。

オオタチは大きく溜息をついて、コータスと話していた。


「……見ている分には面白いけど、ねぇ?」

「それを私に聞かないでください…」

「とりあえず、ムクホーク君呼んでくる?」

「あー…どちらかと言うと、オニゴーリさんのほうが早いかと」

「いや、館長呼んだら二人とも死ぬからね?一撃必殺ってレベルじゃないからね??」

「ふみゅああああああ…あれ、なにかあったの…?」


二人が話し合っていると、ピカチュウがようやく現れる。

どうやら今起きてきたばかりのようで、凄い欠伸だ。

今の今まで寝ていられたのが凄い、と思いながらも、コータスが説明をしていた。


「実はオオスバメさんが、ジュプトルさんを【スピード・デリバリー】にスカウトしに来たんです」

「あー…ジュプトルを…………えっ!!?」

「あ、やっと起きた」

「ですね」

「だ…駄目だよ引っこ抜きは!?ジュプトルは一応、私達【ブレイブス】の一員なんだからー!」

「オオスバメさん曰く、『探検隊活動と兼用できる』と言っていましたけど…」

「いやいや、実際のあの仕事のハードさ考えれば…オオスバメさんがあのノルマの量を、残業せずスバッと終わらせられる時点でおかしいからね?自分の観点で話してるからね、あの人??」




「――朝から煩いんだよお前らああああああああああああ!!!」

「「あきゅるもっ!?」」

「「「あ、(館長/オニゴーリさん)が止めた」」」


遂には、この不毛な騒ぎにオニゴーリも参戦…

特大の氷の礫をジュプトルとオオスバメの頭に投げつけ、二人は倒れる。

オオタチはすかさず二人の倒れている周囲にテープを張り、簡易的殺人現場が完成。

「何やってるんですか」とコータスが呆れていると、ヘイガニまでやって来て、収拾がつかなくなる。


「おっはよー………って、何だこの殺害現場ァァァ!?ジュプトルとオオスバメさんが死んでるじゃねーか!!?」

「いや、死んでないです」

「凶器はこの氷の塊ね」

「完全に殺害現場じゃねーかぁぁぁぁー!!?」

「オオタチさん、話をややこしくしないでください!」

「えー、【早朝の殺ポケ事件…消えた凶器の謎】って見出しでポケモンニュースの一面を飾るんだよ?ジュプトルやオオスバメさんも本望じゃない?」

「本望とかそういうのどうでもいいだろ、警察呼べ保安官呼べとりあえずこの事件に相応しい何かを呼べぇぇぇぇぇ!!?」

「ヘイガニさん、息はあるので落ち着いてください!…オオタチさんも、ヘイガニさんからかうのはやめてください!!」

「ふぁーいず」


オオタチはそう言いながら、倒れている二人をハリセンで叩き起こす。

スパーン、スパーン。

いい音が周囲に響き、意識を取り戻したジュプトルとオオスバメはやっと起き上がる。

そしてもう一度冒頭の追いかけっこが始まるかと思いきや、そんな彼らの暴走に「待った」をかける出来事が起こった。

当然その原因はオニゴーリ………ではなく。



「――あっ、いたっ!ジュプトルさーん!!」

「ん?…お前は!」

「「「?」」」


ジュプトルに声をかけてきた、一匹のポケモン。

見たこともない姿で、ピカチュウやヘイガニは首を傾げていたが…

綺麗なピンク色で、小さくて、可憐なポケモンだった。

一体誰だろう。ピカチュウがそう思っていると、ジュプトルがそのポケモンの名前を呼んでいた。


「セレビィ!久し振りだな」

「久し振りだな…じゃないわよっ。あの日から、もう3年経っているんだから。ヤミラミ達はともかく、ヨノワールすらあの日から2回ぐらい顔を見せに来たのに……ジュプトルさんってば、連絡ひとつ寄越さないで」

「そうだったか?」

「一体どこで何をしていたの?まさか、またなんか事件に巻き込まれたとか…」

「――あーあー。ストップ、ストップ…二人だけで会話しないでくれよ。入りづらいじゃんか」


ジュプトルとセレビィというポケモンの会話に、ヘイガニが割って入る。

セレビィが周囲を見ると、そこには唖然呆然とするポケモン達の姿…

この二人が知り合い同士だと言うのは分かったが、それでも、突然見たこともないポケモンとジュプトルが話している姿は衝撃的だったのだろう。

セレビィも自己紹介が遅れたことを思い出し、「ごめんなさい」と謝る。

その際、立ち話もなんだと言うことで、【雪花屋】にあるピカチュウとジュプトルの貸し部屋まで案内していた。





その一方で…

ある廃墟では、一体のファントムが現れていた。

その名はケットシー。

猫のようなしなやかさと鋭い爪を持つファントムで、ケットシーは不機嫌そうな様子でフェニックスと話していた。


『それで、フェニックス様…一体何の用で?』

『実はな。お前に絶望させてもらいたいゲートがいるんだと』

『はあ…』

『何だよ、嫌なのか?』

『嫌と言いますか…なんていうか、面倒なんですよねー。ゲートを絶望させるのって、それなりに手順踏まないといけないから』


ま、気持ちは分かるな。とフェニックスはケラケラ笑いながら話す。

暴れ者であるフェニックスも、ゲートを絶望させるための手順を踏むのは面倒だと思う節がある…

しかし勢いでゲートを殺してしまえば、メデューサやワイズマンが恐ろしい。


『でもよぉ、ワイズマン直々のご指名なんだ。そのゲートはお前に絶望させてもらいたいってな』

『えぇ〜…フェニックス様はともかく、メデューサ様やベルゼバブ様はどうしたんですか?』

『知るか。俺が知ってるのは、メデューサやいけ好かないベルゼバブじゃなくてお前を選んだってことだけだ。ワイズマンも何を考えているんだか』

『ですよねー。あぁ、でも、ワイズマン様のご指名じゃ断れないし…断ったら命が危ないし。行ってきますよォ、行ってくればいいんでしょー』






〜〜〜






ピカチュウとジュプトルの部屋では、改めてセレビィが自己紹介をしていた。



「紹介が遅れたわね。私はセレビィ、【彩りの森】に住んでいるの」



セレビィは3年ほど前、過去の世界に行って時の停止を止めようとしたジュプトル・ミライを…過去の世界に送り飛ばした張本人だという。

彼女の一族は“時の回廊”を使うことで、過去や未来の時間に行くことができる…

セレビィの力添えなくて時の停止を止めることは不可能だっただろう、とジュプトルが話す。

ちなみに彼女の住んでいる【彩りの森】は、時の停止が起こっていた頃には【黒の森】と呼ばれ、あたり一面真っ暗な世界だったそうだが……時の停止が無くなった今は、眩しいほど綺麗な色に溢れ返っていたそうだ。

コータスの話では【彩りの森】は、緑の木々だけでなく、黄色やピンク・赤に青といった綺麗な花が咲き、その光景はまるで虹の中を進んでいるようだ……とのこと。

話を聞いていたピカチュウは、「ねぇ」とジュプトルに尋ねる。


「セレビィが時間を超えることができるなら、ファントムが生まれる前の時間に行って、それを止めることってできないの?」

「…無理だろうな。そもそも、過去と言うのはむやみやたらに変えたらいけないんだ…ヘタをすれば俺達がこうして過ごしている“今”が無くなることにもなりえる」

「そうね…そうなると、今の出会いがなくなるだけじゃない。もしかすれば、皆消滅することだって…」

「「「しょ、消滅!?」」」

「――でも、お前達が過去を変えても…それは起こらなかったんだろう。それについては、どう説明するんだ」


消滅、と聞いてピカチュウ達は驚くが…

オニゴーリはむしろ、『過去を変えたのに自分達が消滅していないのは何故か』と逆に尋ね返していた。

ジュプトルとセレビィも、その理由は未だに分からないのか首を横に振るばかり。

ヨノワールならば知識も豊富であるため、もしかしたら分かったのだろうが…彼もまた、放浪の旅に出ている身。

今はどこにいるのか、かつての部下のヤミラミ達でも分からないそうだ。

ジュプトルはようやく最近になって、ピカチュウ経由で安否を知ったぐらい…




「しかしセレビィ、お前、どうしてここに?」

「この間、1匹のヤミラミが森に探し物に来たついでに聞いたの。ジュプトルさんが今、ポケモンタウンにいるって。……それで、居ても立ってもいられなくなって、…会いに来たの」

「今は危険なんだぞ!ひょっとしたら、お前の力を利用する奴が出てくる可能性だってある…悪いことは言わない。【彩りの森】に帰るんだ」

「だけど!」


ジュプトルは何度も「帰れ」と言うが、セレビィは意固地になって何が何でもここにいようとする。

そんなセレビィの姿を見て、ピカチュウは女の勘か、セレビィが帰りたくない理由が分かる気がしていた…

――彼女はジュプトルのことが好きなのだ、と。

だから命の危険を分かった上で過去を変える手伝いをしたし、ジュプトルがここにいると聞いてわざわざ会いに来た。

ピカチュウはどこか複雑な気持ちになりつつも、セレビィをなるべくジュプトルの近くにいさせてあげたいと思いつつある…

ヘイガニやオオスバメ、オオタチもセレビィのジュプトルへの態度からそう読み取ったのか、説得していた。

…いや、オオタチは微妙だったが…


「…でも、せっかくポケモンタウンに来たんだし、観光だけでもさせてあげようよ!」

「そうだな。それに暫くお前はここにいるんだから、セレビィだっていつでも会いにいけるじゃないか」

「女の子を泣かせる男は、碌な奴にならないよー」

「わぁオオスバメさん爽やかにひっどい☆」

「…お前らな…」


わあわあと好き勝手に言うピカチュウたちに、ジュプトルは頭を抑える。

コータスは言葉に困っているのかなかなか言い出すことができず、オニゴーリはと言うと、むしろジュプトルに賛同している様子だった。



「……俺はジュプトルに賛成だけどな。最近物騒ってのも確かだし、それに今、ジュプトルの近くにいることのほうが余計危ないと思うが」

「「「…館長的な意味で?」」」

「――よぉし、コータス以外全員氷漬けだな」

「おい、俺何も言ってないだろ館長!?」

「私も言ってないわよ!?」

「でも思っただろ」

「……まあ…一応……」

「それに氷タイプだし、…ね…」


余計なことをすぐ言うのは、ジュプトルもセレビィも同じらしい。

それが原因で、オニゴーリに完全に【攻撃対象】として認識された二人…

オニゴーリは笑顔で(ただしその表情は「笑顔」と言えないほど恐ろしいby.ジュプトル)攻撃対象達に言い放ち、唯一(炎タイプだからか)逃れられているコータスが止めに入っていた。


「よしコータス以外全員そこ並べ、絶対零度だ」

「オニゴーリさん…それ溶かすの私なんですから、仕事増やさないでくださいよ……それに、効果抜群が何人いると思っているんですか…」

「絶対零度だから相性の有利不利関係なく、全員“一撃必殺”だろ」

「それはそうですけど…」

「安心しろ、ジュプトルは借金返済するまで殺しはしないから」

「ジュプトルさん以外は!?」





制裁を下そうとするオニゴーリを必死で止めるコータス。

そんな彼女の努力は無駄にしない、とばかりにジュプトル達はその場から逃走。

オオスバメに至ってはその姿すらとっくの昔に視認できないほど、凄まじいスピードで逃げていた。

ジュプトル・ピカチュウ・セレビィの3匹は途中でオオタチ・ヘイガニとバラバラになってしまうが、あの二人なら逃げ切れるだろう。特にオオタチは。

ふー…と一息つきながら、ピカチュウは雪花屋の方角を見る。

……今日は帰れるかなー…

そんな不安を感じながらも、ジュプトルとセレビィの間に会話がないことに焦りを感じつつあった。

厳密に言えば、ジュプトルが無言のため、セレビィだけが一方的に話しかけている状態…どうやら一言も会話しなければ諦めて【彩りの森】に帰るはずと考えているのだろう。


「……もーっ!セレビィさん、ちょっとジュプトル借りるね!!」

「おい、ちょっ……痛い痛い、頭の葉を掴むなー!!」

「えっ、あの、…こ…ここで待ってるから……できれば早くね」

「5分あれば大丈夫。……ほら、ジュプトルこっち来る!」

「分かったから引っ張るなーッ!?」


流石にそれは駄目だと思ったのか、ピカチュウはジュプトルの頭の葉っぱを掴むと、そのままズルズルと引きずるようにセレビィから離す。

そして、建物の陰に隠れるようにそこへ向かうと、どうしてセレビィをそこまで追い返そうとするのか、尋ねていた。


「ねぇジュプトル、大事な仲間だったんでしょ?何でセレビィにそんなに冷たくするの?」

「…大事な仲間だからこそだ」

「え?」

「セレビィはあまり、今の件には関わらせたくない。さっきも言ったとおり、ファントムとの戦いにセレビィが巻き込まれるようなことがあれば…大変なことになる」

「もしかして、…ファントムがセレビィの力を借りて…過去や未来で大暴れするとか?」

「それならまだいいかもしれない。だが、ファントムのことだ…ファントムを唯一倒せる“ウィザード”である俺を消す可能性は、大いにある」



ジュプトルの言葉に、「あ」とピカチュウは声を上げる。

もしもファントムが時間を司るセレビィを捕まえ、時渡りをしてしまえば…

まず考えられるのは、ファントムの天敵であるウィザードを消すこと。

現時点でファントムを倒せるのはジュプトルのみ…セレビィがもしも敵の手に渡ってしまえば、奴らは必ず「ウィザードになる前のジュプトル」を消しに来ると考えるのが普通だ。

それに、とジュプトルは目を逸らしながら話す。


「…例えファントムがセレビィを狙うようなことがなかったとしても、あいつだけは、この戦いに巻き込みたくないんだ」

「え?」

「……」


それだけ言った後、ジュプトルは黙ってしまう。

それを見たピカチュウは、何となくであったが、理由が分かるような気がしていた。

…ジュプトルにとってセレビィは、大事な仲間だ。

そして彼は、セレビィを大切に思っている。

セレビィと違い、LoveではなくLikeなのだろうが…それでもセレビィを好意的に思っているのは間違いない。

ファントムとの戦いに巻き込まれ、もしセレビィに何かあったとしたら…


「……それでも、セレビィは久し振りにジュプトルに会ったんだよ。ジュプトルもそうでしょ?」

「…」

「だったらせめて、今だけは一緒にいてあげないと。ジュプトルに一方的に嫌われている、って思い込んだまま帰しちゃったら…セレビィが可哀想だよ」

「…しかし」

「――はいはーい。私もそれがいいと思いまーす」



突然、ピカチュウとジュプトルの話に割って入る人物。

…オオタチだ。

どうやら二人の会話の一部始終を聞いていたようで、「何やってんだ」とジュプトルに怪訝そうな目で見られる。

しかしオオタチは気にすることなく、話していた。


「オ、オオタチさん…いつの間にいたの?」

「『分かったから引っ張るな』の辺りから立ち聞きしてた。あ、ちなみにヘイガニは、逃げるついでに大工のほうの仕事に行ったよ」

「…あ、そ…」

「ほぼ最初から聞いてたのか、お前…」

「ジュプトルがここにいるって聞いてすぐ行動に出ちゃうような子だし、諦めて帰るなんてしないと思うけどね。だったら最初の通り、ポケモンタウンを一緒に観光してあげるっていうのは?ジュプトルだってあまり、ここのことは知らないでしょ」


これから探検隊として活動するならちょうどいいと思うけどねー、と付け加えながら、オオタチはジュプトルを見る。

確かに彼女の言うとおり、すぐに諦めて帰る性格ではない…

むしろ、何が何でも一緒に行動するつもりだろう。それこそ、自分も【ブレイブス】に加わるほどの勢いで。

ジュプトルとしてはセレビィが【ブレイブス】に所属する=それだけ彼女が危険に晒される可能性が高まると考えているため、その展開だけは何が何でも避けたいところ。

それにピカチュウの説得にも思う部分があったのか、溜息をつく。すると




「……きゃあぁ!?」




セレビィの悲鳴が聞こえ、ピカチュウとオオタチが反応するより先にジュプトルがセレビィの待っている場所へと向かう。

ジュプトルが急いで向かうと、街中に白昼堂々とファントムが現れているではないか。

まさかセレビィを狙って、とジュプトルは危惧していたが、どうやらそのファントム…ケットシーの狙いは彼女ではないようだ。ケットシーの視線の先には、一匹のコロトックがいる。


「セレビィ!」

「ジュプトルさん…!あの怪物は、一体何!?」

「なっ…ファントム!」

『――さーて、恨みはないけど…命令だからしょうがないよなぁ。あんたバイオリニストだって?手っ取り早く、その腕切り落とすほうが楽ッスかね〜』


そう言いながらケットシーは爪を研ぎ、コロトックの腕を狙う。

コロトックの近くにはバイオリンケースが転がっており、彼はそれをちらりと見ながら、ケットシーに言い放つ。

…その腕を、差し出しながら。


『え?』

「…切り落とすならそうすればいい。別にもう、音楽に拘りはない」

『ちょっ、ちょ、…腕切られるかもしれないんスよ?絶望して当然なのに、何でそんな割り切っちゃってるんスか!?』

「……何か様子がおかしいな」

「あ。あの人、確か有名なバイオリニストの…コロトックさんじゃない?って言っても、ジュプトルさん達分かんないよねー」

「「「うん」」」



やれやれ、と思いつつもオオタチは説明を続ける。

…あのコロトックはこの辺りでは有名なバイオリニストで、前はよくコンサートを開いていたそうだ。

しかし半年前から不調(スランプ)気味で、今ではまったく人前で演奏をすることはなくなったらしい。

分かっているのは、彼の妹のコロボーシが事故で亡くなったという話だが…


「成程、妹を失って自棄になっている…といったところか」

「多分ね」

「ああいう奴は、基本的にネガティブに物事を考えるから、あまり絶望しないんだ。……まあ、ファントムに狙われている以上は…守るべき相手であるのに変わりないがな。ピカチュウ!」

「うん!?」

「…セレビィやオオタチと一緒に離れていろ」


分かった、とピカチュウは告げると、オオタチやセレビィと一緒に安全な場所に避難する。

懸念した矢先にファントムの事件が起こるとは想定外だったが、狙いがセレビィでないのなら特に問題はない。

ジュプトルはウィザードライバーを腰に巻き、ウィザード・ハリケーンスタイルへと変身していた。


<シャバドゥビ…>

「変身!」

<ハリケーン、プリーズ フー、フー、フーフーフフー!>

<コネクト、プリーズ>

<コピー、プリーズ>


ウィザードHSはウィザーソードガンを呼び出し、更にそれをコピーで複製しながらケットシーに突っ込む。

その際に2つの銃剣から放たれる銀の弾丸にケットシーは怯み、コロトックは目を見開きながらウィザードHSを見ていた。


「…おらっ!」

『ぎゃー!?ちょっちょちょちょ、一体何なんスかー!!?』

「……お前は…」

「いいから下がれ。俺は力加減がそんなに得意じゃないんでな!」

『うう…ウィザード、早すぎるッス……ここはひとまず退散!』

「待てッ!」




ウィザードHSはウィザーソードガンによる銃弾攻撃を乱射するが、ケットシーは身のこなしが軽く、すぐに逃げられてしまった。

「あのオオスバメがいたら絶対雇おうとしてたな」など思いつつも、ジュプトルは変身解除…

一通り安全を確認したオオタチの案内で、ピカチュウやセレビィも合流しようとしていたが


「…ッ!?」


彼女達の視界に映ったのは、“シザークロス”を突き立てられるジュプトルの姿。

しかも、…ゲートであるはずのコロトックが鎌のような手を向けているのだから、向けられたジュプトル本人も驚くしかない。

何が一体どうなっているのか…

そうしていると、コロトックは怒りを露にしながら、ジュプトルに言い放っていた。


「……貴様…だったのか、……妹を殺したのは…」

「何?…どういうことだ、俺が誰を殺したって」

「嘘をつくな!…忘れもしないぞ…お前は俺の目の前で、妹を殺したんだ!……忌々しい、あの姿で!!」

「妹…?……!待て、まさかあのコロボーシのことを言って」


ジュプトルは身に覚えがあったのか、驚いたような顔でコロトックに尋ねる。

しかし、それを聞いたコロトックは勢いで鋭利な鎌でジュプトルの喉首を刺し貫こうとしていた…

慌ててピカチュウとセレビィが止めに入り、オオタチは不思議そうな顔でジュプトルとコロトックを交互に見ている。


「ちょ、ちょっと落ち着いて!…ジュプトル、何があったの!?」

「さっき、この人の妹をジュプトルさんが殺したって…。どういうこと!?」

「…ッ」


ジュプトルは何とか説明をしようとするも、セレビィに自分の今の事情を…ウィザードとして戦っていることを説明するより難しいのか、言葉を詰まらせている様子。

しかし、この状況で黙っているのは逆効果…

現にジュプトルを完全に妹の仇とみなし、コロトックはピカチュウとセレビィの制止を振り切って、ジュプトルを刺そうとしていた…



…だが。

コロトックの頭にゴローンの石がクリーンヒットし、気絶してしまう。

石の投げられた方角を見ると、そこにいたのは、宝石店を営むヤミラミ。

買い物の帰りに偶然刃傷沙汰に出くわし…しかも刃を向けられているのがジュプトルとあって、思わず投げてしまったらしい。


「おぉい、ジュプトル、お前大丈夫か!?」

「ヤミラミ…、……すまん。助かった」

「なんかワケありみたいだけど…ってセレビィもいるし!」

「久し振りね。……ねぇジュプトルさん、一体何があったの?説明してくれないと、…私も…ピカチュウ達もどうしていいか分からなくなる」

「そうだよ…ジュプトルがコロトックさんの妹を殺したって、どういうこと?」

「……それは…」


説明しようにも、セレビィの前か言いあぐねているジュプトル。

なかなか説明してくれないジュプトルに、ピカチュウもセレビィも焦らされていたが…

ヤミラミは「はぁ」と溜息をつきながら、ジュプトルに言っていた。


「――ウイィ…セレビィを巻き込ませたくないお前の気持ちも分からなくないが、いずれ分かることだぞ。自分でも分かっているんだろ」

「…ヤミラミ」

「セレビィ、ピカチュウも。とにかく今は話のできそうな場所に行ってからでも遅くない。……俺の家ならあまり人は来ないから、ゆっくり話をするのにちょうどいい」


ヤミラミの仲裁の甲斐あってか、3人は素直に、ヤミラミ宝石店に向かおうとする。

しかし…

そんな彼らの背中を見ながら、オオタチは呟いていた。



「……妹殺し、ねぇ」






***




前回行っていた【アレ】とは、セレビィのことでした。

もしカフェとか空の頂とか思っていた方がいたら……………逆に凄い。

その発想に乾杯。


オオスバメw

もう何やってんだよこの人ww

とりあえず後輩のムクホークさん、この先輩迎えに来て引き取ってください。

いや、途中からフェードアウトしてくれたけど…



オニゴーリ館長強えぇ…

ヘイガニェwオオタチェww

とりあえず、本日の苦労人:コータス

むしろ館長の貴重なストッパー過ぎる…絶対炎タイプ以外の理由あるだろ、コータス…

それよりも、初邂逅でいきなり鬼館長に喧嘩売るような発言したセレビィェw


まさかのジュプトル人殺し事件!?

まあ…

説明しなくても、大体分かっているとおりです。たぶん。

発想の斜め上ってことは、たぶんないかと。




とりあえず、ヤミラミもヤミラミで苦労人過ぎるだろ…←